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特許7384904金属化合物から微細な金属粉末を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】金属化合物から微細な金属粉末を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/30 20060101AFI20231114BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20231114BHJP
   H01F 1/055 20060101ALI20231114BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B22F9/30 Z
B22F9/30 A
H01F1/057 110
H01F1/055 110
H01F41/02 G
【請求項の数】 59
(21)【出願番号】P 2021516852
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019034752
(87)【国際公開番号】W WO2019232276
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/678,247
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520466788
【氏名又は名称】ヒーラ ノベル メタルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HELA NOVEL METALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カサイニ、ヘンリー ダブリュ.
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-254781(JP,A)
【文献】特公昭47-038417(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第106271554(CN,A)
【文献】英国特許出願公告第00419953(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物粒子から少なくとも第1の希土類金属を含む微細金属粉末を製造するための方法において、
少なくとも第1の希土類金属の金属シュウ酸塩化合物の粒子を含む無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解温度に少なくとも2バールの分解圧力下で加熱し、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解ガス下に保持する工程であって、前記分解ガス及び前記分解温度は、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解し、気体状シュウ酸塩副生成物を形成するのに十分である工程と、
前記気体状シュウ酸塩副生成物が形成されているときに、前記気体状シュウ酸塩副生成物を前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子から分離し、それによって中間金属生成物粒子が形成される工程と、
前記中間金属生成物粒子を前記分解温度よりも高く少なくとも750℃である精製温度に加熱し、前記中間金属生成物粒子を前記精製温度及び精製ガス組成物下に保持する工程であって、前記中間金属生成物粒子中の不純物の濃度を低減し、前記少なくとも第1の希土類金属を含む微細金属粉末を形成する工程と、を備える、方法。
【請求項2】
水和金属シュウ酸塩化合物粒子から水和水を除去すべく前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水し、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子及び水蒸気を形成する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水する工程が、前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水温度に加熱する工程を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱水温度が少なくとも240℃である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水温度が340℃以下である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水する工程の間に、前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子から前記水蒸気を分離する工程をさらに備える、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子から前記水蒸気を分離する工程が、前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を通して脱水ガスを移動させて、前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子から前記水蒸気を分離する工程を備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水ガスが窒素を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水ガスが0.1%以下の酸素を含有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水する工程が、前記水和金属シュウ酸塩化合物粒子から前記水和水の少なくとも99.9%を除去する、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分解温度が少なくとも360℃である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分解温度が700℃以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分解ガスが0.01%以下の酸素を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分解ガスが少なくとも50%の窒素を含有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分解ガスが水素を含有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記分解ガスが20%以下の水素を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分解ガスが一酸化炭素を含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記分解ガスが少なくとも2%の一酸化炭素を含有し、20%以下の一酸化炭素を含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分解ガスが窒素、水素及び一酸化炭素を含有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記分解ガスがアンモニアを含有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記分解ガスがアンモニア、一酸化炭素及び窒素を含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記分解圧力が6バール以下である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記気体状シュウ酸塩副生成物を前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子から分離する工程が、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子を通して前記分解ガスを移動させる工程を備える、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記精製温度が少なくとも800℃である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記精製温度が1300℃以下である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記精製ガス組成物が0.01%以下の酸素を含有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記精製ガス組成物が少なくとも50%の窒素を含有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記精製ガス組成物が水素を含有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記精製ガス組成物が20%以下の水素を含有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記精製ガス組成物が一酸化炭素を含有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記精製ガス組成物が少なくとも2%の一酸化炭素を含有し、20%以下の一酸化炭素を含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記精製ガス組成物が窒素、水素及び一酸化炭素を含有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記精製ガス組成物がアンモニアを含有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記精製ガス組成物がアンモニア、一酸化炭素及び窒素を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
精製組成物は、前記分解ガスと実質的に同じである、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記中間金属生成物粒子を加熱する工程が、高い精製圧力で実施される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記精製圧力が少なくとも2バールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記精製圧力が6バール以下である、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記微細金属粉末が2%以下の非金属不純物を含有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記微細金属粉末が1%以下の非金属不純物を含有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記微細金属粉末が0.1%以下の酸素を含有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記金属シュウ酸塩化合物の粒子は少なくとも第2の希土類金属の金属シュウ酸塩化合物の粒子を含み、前記微細金属粉末はさらに、少なくとも前記第2の希土類金属を含有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記金属シュウ酸塩化合物の粒子は少なくとも第1の卑金属の金属シュウ酸塩化合物の粒子を含み、前記微細金属粉末は少なくとも前記第1の卑金属を含有する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の希土類金属はネオジムであり、前記微細金属粉末はさらに鉄及びホウ素を含有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の希土類金属はサマリウムであり、前記微細金属粉末はさらにコバルトを含有する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の希土類金属はジスプロシウムであり、前記微細金属粉末はさらに鉄を含有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の希土類金属はスカンジウムであり、前記微細金属粉末はさらにアルミニウムを含有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記微細金属粉末が、10μm以下のメジアン(D50)粒子サイズを有する、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記微細金属粉末が、5μm以下のメジアン(D50)粒子サイズを有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記微細金属粉末が、少なくとも1μmのメジアン(D50)粒子サイズを有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子を加熱する工程と、前記気体状シュウ酸塩副生成物を分離する工程と、前記中間金属生成物粒子を加熱する工程とが、前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子及び前記中間金属生成物粒子を攪拌しながら実施される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子及び前記中間金属生成物粒子の攪拌が流動床反応器内で行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記無水金属シュウ酸塩化合物粒子から分離された前記気体状シュウ酸塩副生成物が回収され、再利用される、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記気体状シュウ酸塩副生成物がシュウ酸を含有する、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記気体状シュウ酸塩副生成物がシュウ酸アンモニウムを含有する、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
捕捉された前記気体状シュウ酸塩副生成物が凝縮及び結晶化され、次いで非シュウ酸塩金属化合物粒子と接触して金属シュウ酸塩化合物粒子を形成する、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記非シュウ酸塩金属化合物粒子が、金属塩化物化合物、金属酸化物化合物、金属硫酸塩化合物及び金属炭酸塩化合物からなる群から選択される金属化合物を含有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
酸素が実質的に存在しない状態で前記微細金属粉末を冷却する工程を備える、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記微細金属粉末が0.1重量%以下の炭素不純物を含有する、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末冶金の分野に関連し、特に、金属化合物からの微細金属粉末の製造に関連する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末は、様々な製品の製造に利用されている。多くの製品では、金属粉末は微粒子サイズ(例えば、100μm以下)である必要があり、不純物が少ないなど、高純度である必要がある。ほとんどの場合、元素金属は自然に大量に発生することはなく、金属粉末は金属を含む化合物から製造する必要がある。
【0003】
しかしながら、金属化合物を金属粉末に還元するためのほとんどの工業プロセスは、高い資本コスト及び/又は運用コストを必要とする。例えば、希土類化合物(例えば、希土類酸化物、希土類塩化物)を希土類金属に還元するための1つの方法は、希土類化合物を、還元剤を含む溶融塩浴、例えば、溶融塩化物塩浴に分散させる工程と、希土類化合物を入れる工程と、希土類化合物が還元された後、希土類金属を浴槽内から分離する工程とを備える。他の商業化された方法は、無機酸への金属化合物の浸出(溶解)と、それに続く、金属塩溶液を精製するための溶媒抽出を含む。次に、金属塩溶液を電気分解にかけてバルク金属を形成し、次にこれを溶融及び噴霧して金属粉末を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属化合物から高純度の微細金属粉末を製造するための迅速で低コストの方法が必要である。より詳細には、特殊機器の資本コストが比較的低く、試薬や動力(電気など)の消費量が比較的少ない方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態では、金属化合物粒子から微細金属粉末を製造するための方法が開示される。大まかに特徴付けると、この方法は、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解温度に加熱する工程と、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解ガス下に保持する工程とを備え、分解ガス及び分解温度は、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解するのに十分であり、気体状のシュウ酸塩副産物を形成する。気体状シュウ酸塩副生成物は、気体状シュウ酸塩副生成物が形成されるときに無水金属シュウ酸塩化合物粒子から分離され、それによって中間金属生成物粒子が形成される。次に、中間金属生成物粒子は、分解温度よりも高い精製温度に加熱され、精製温度及び精製ガス組成下に保持されて、中間金属生成物粒子中の不純物の濃度を低減し、微細金属粉末を形成する。
【0006】
上記の方法は、改良、特性評価、及び/又は追加の工程の対象となる可能性があり、これらは、単独で、又は任意の組み合わせで実施することができる。このような改良、特性評価、及び/又は追加の工程は、以下の説明から明らかになる。
【0007】
1つの改良では、この方法は、水和した金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水して、そこから水和水を除去し、無水金属シュウ酸塩化合物粒子及び水蒸気を形成する工程を備える。脱水の工程は、水和金属シュウ酸塩化合物粒子を加熱する工程を含んでなることができ、一態様では、水和金属シュウ酸塩化合物粒子を少なくとも約240℃の温度に加熱する工程を備える。別の態様では、加熱工程は、約340℃以下の温度で実施される。別の態様では、水蒸気は、水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水する工程の間に、水和金属シュウ酸塩化合物粒子から分離される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による微細金属粉末の製造方法の概略を示すフロー図。
図2A】市販の金属粉末のSEM顕微鏡写真。
図2B】本発明に従って製造された微細な金属粉末のSEM顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、金属化合物、特に金属カルボキシレート化合物、例えば、金属、炭素、酸素、及び場合によっては水素を含む金属化合物から、微細金属粉末を製造するための方法に関する。この方法は、広範囲の微細金属粉末の製造に適用可能であり、スカンジウム、イッテルビウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどの希土類金属の微細粉末の製造に特に有用である。この方法は、銅、鉄、ニッケル、コバルト、リチウム、白金、及びパラジウムを含むがこれらに限定されない他の金属の製造にも有用であり得る。この方法は、金属合金に容易に製造できる混合金属粉末の製造にも有用である。
【0010】
大まかに特徴付けられるように、この方法は、水蒸気及び酸素を実質的に含まない分解ガス下(例えば、分解ガス雰囲気中)で金属化合物粒子を加熱して、金属化合物粒子を対応する金属に分解する工程を備える。分解ガスは、水素(H)及び/又はアンモニア(NH)、及び窒素(N)を含み得る。微細な金属粉末は、非常に微細な粒子サイズであり、高純度のものであり得る。この方法は、金属化合物から高純度の微細金属粉末を製造するための既知の方法と比較して、迅速かつ経済的である。
【0011】
したがって、本開示の一実施形態は、金属化合物から、例えば、金属化合物粒子から、主に自由流動性元素金属粉末を含む微細金属粉末、例えば、粉末バッチを製造するための方法に関する。金属化合物粒子は、金属カルボン酸塩化合物、例えば、Me、MeC、Me(Cなどの形態の金属シュウ酸塩を含み得、ここで、Meは金属である。以下の説明は、特に金属シュウ酸塩化合物粒子からの微細金属粉末の形成に言及しているが、本明細書に記載の方法は、他の金属カルボン酸塩化合物を使用して実施することもできると考えられる。
【0012】
微細な金属粉末に分解される金属シュウ酸塩化合物粒子は、無水金属シュウ酸塩化合物を含み、すなわち、金属シュウ酸塩化合物は、水和水(すなわち、結晶水)をほとんど、又は全く含有しない。一実施形態では、無水金属シュウ酸塩化合物は、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を第1の温度(例えば、分解温度)に加熱し、無水金属シュウ酸塩化合物粒子をガス組成物(例えば、分解ガス)下に保持することによって分解される。ここで、分解ガス及び分解温度は、無水金属シュウ酸塩化合物を分解し、中間金属生成物粒子及び気体状シュウ酸塩副生成物を形成するために十分である。粒子状の無水金属シュウ酸塩化合物が加熱されて分解している間に、放出された気体状シュウ酸塩副生成物が中間金属生成物粒子状物質から分離され得る。次に、主に金属粒子を含む中間粒子金属生成物を、第2の還元ガス組成物(例えば、精製ガス組成物)の下で、分解温度よりも高い第2の温度(例えば、精製温度)に加熱して、不純物の濃度を減らし、高純度の微細な金属粉末を形成する。
【0013】
したがって、この方法は、金属シュウ酸塩化合物粒子から微細な金属粉末の形成をもたらす。金属シュウ酸塩化合物は、無水金属シュウ酸塩化合物、すなわち、実質的に水和水(すなわち、結晶水)を含まない金属シュウ酸塩化合物であり得る。この場合、無水金属シュウ酸塩化合物の粒子を分解ガス下で直接加熱して、金属シュウ酸塩化合物を分解し、気体状シュウ酸塩副生成物を形成することができる。
【0014】
しかしながら、ほとんどの場合、金属シュウ酸塩化合物は、水和水を含む水和金属シュウ酸塩化合物であり、例えば、MeC・nHOであり、ここで、nは、例えば、1~12の範囲であり得る。表1は、典型的な水和及び無水金属シュウ酸塩化合物の重量パーセントでの濃度を示している。
【0015】
【表1】
【0016】
表1に見られるように、水和金属シュウ酸塩化合物は、典型的には、約23重量%~約30重量%の水和水を含む。本開示によれば、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解する前に、水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水すること、すなわち、水和水を除去し、無水金属シュウ酸塩化合物粒子及び水蒸気を形成することが望ましい。一実施形態では、水和金属シュウ酸塩化合物粒子は、粒子を高い脱水温度、例えば少なくとも約150℃、例えば少なくとも約180℃、例えば少なくとも約200℃、例えば少なくとも約220℃、例えば少なくとも約240℃、又は少なくとも約260℃の温度に加熱することによって脱水される。そのような脱水温度は、典型的には、水和水を除去し、水分損失の結果として金属シュウ酸塩化合物粒子のサイズを減少させるために十分である。金属シュウ酸塩化合物から水和水を除去できる温度も、加熱を生じる際の圧力の影響を受けます。いずれにせよ、水和された金属シュウ酸塩化合物粒子は、実質的にすべての水和水が粒子から除去される前に、金属シュウ酸塩の実質的な分解(例えば、金属)につながる脱水中に過剰な熱及び圧力の条件にさらされるべきではない。ほとんどの金属シュウ酸塩化合物の場合、水和水を除去するための加熱工程の温度は、約440℃以下、例えば約400℃以下、例えば約360℃以下、約340℃以下、例えば約320℃以下、例えば約300℃以下であるべきである。上記の水和金属シュウ酸塩化合物粒子の脱水のための最低温度と同様に、脱水のために最適な温度は、加熱工程が実行される圧力(例えば、脱水圧力)によって影響されるであろう。1つの特徴付けにおいて、水和された金属シュウ酸塩化合物粒子を加熱する工程は、約240℃~約340℃の範囲の脱水温度で、概ね大気圧で実行される。
【0017】
水蒸気が金属シュウ酸塩化合物と再結合するのを防ぐために、脱水工程中に水和金属シュウ酸塩化合物粒子から放出された水蒸気を分離することも望ましい。例えば、掃引ガス(例えば、脱水ガス)は、金属シュウ酸塩化合物粒子を通過して(例えば、通って)移動して、水蒸気を粒子から分離し、蒸気を反応器から運び出すことができる。脱水ガスは、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどを含み得、そして1つの特徴付けにおいて、脱水ガスは、窒素を含み、本質的に窒素からなり得る。脱水ガスはまた、約12%以下の水素などの比較的低濃度の水素を含み得、一実施形態では、最大約6%の水素を含む。掃引ガスは低酸素含有量を有することが望ましく、一実施形態では、掃引ガスは、約1%以下の酸素、例えば、約0.5%以下の酸素、又は約0.1%以下、又は約0.05%以下の酸素の酸素を含む。1つの特徴付けにおいて、水和された金属シュウ酸塩化合物粒子を含む密閉された反応器が排気され(例えば、真空又はほぼ真空を形成するために)、脱水工程が始まるとき(例えば、加熱が始まるとき)に掃引ガスが導入される。掃引ガス及び生成された水蒸気の存在は、その後、脱水工程中に、例えば、約3バールまで、反応器内の圧力を上昇させる可能性がある。
【0018】
水和金属シュウ酸塩化合物粒子を脱水する工程は、高温下で、水和金属シュウ酸塩化合物粒子から実質的にすべての水和水を除去するためにしばらくの間実施されるべきである。一実施形態では、脱水工程は、水和金属シュウ酸塩化合物粒子から少なくとも約95%の水和水、例えば、水和金属シュウ酸塩化合物粒子から少なくとも約98%の水和水、少なくとも約99%の水和水、少なくとも約99.5%の水和水、又は少なくとも約99.9%の水和水を除去する。
【0019】
水和した金属シュウ酸塩化合物粒子が脱水されると、又は金属シュウ酸塩粒子が無水形態で提供される場合、無水金属シュウ酸塩化合物粒子は分解されて、中間金属生成物粒子及び気体状シュウ酸塩副生成物を形成する。分解は、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を高温に加熱することによって実施することができる。一実施形態では、無水金属シュウ酸塩化合物粒子は、脱水温度よりも高くなり得る温度(例えば、分解温度)に加熱される。一実施形態では、分解温度は、少なくとも約320℃、例えば少なくとも約360℃、例えば少なくとも約400℃、少なくとも約440℃、少なくとも約480℃、さらには少なくとも約520℃である。分解温度は、通常、約720℃以下、例えば、約700℃以下、又は約680℃以下でさえある。
【0020】
分解工程はまた、分解ガスの存在下で(例えば、還元性雰囲気中で)実施されて、無水金属シュウ酸塩化合物の中間金属生成物への分解を促進する。分解ガスは、酸素をほとんど又は全く含まず、一実施形態では、分解ガスは、約0.5%以下の酸素、例えば、約0.1%以下の酸素、例えば、約0.05%以下の酸素、又は約0.01%以下の酸素を含む。
【0021】
一実施形態では、分解ガスは希水素を含む。例えば、分解ガスは、少なくとも約1%の水素、例えば、少なくとも約2%の水素、例えば、少なくとも約3%の水素を含み得る。しかしながら、分解ガスは水素に関して希釈されるべきであり、1つの特徴付けにおいて、約20%以下の水素、例えば、約18%以下の水素、そのような約15%以下の水素、又は約12%以下の水素を含む。いずれにせよ、分解ガスの水素が希薄であり得ることは、本明細書に開示される方法の利点である。必要な水素の量は、形成されるべき微細金属粉末など、いくつかの要因によって異なる。例えば、卑金属シュウ酸塩の分解には、より高い濃度の水素(例えば、2%~4%)が好適であると考えられているが、より低い濃度の水素(例えば、最大約2%)は、希土類金属シュウ酸塩の分解の好適である。
【0022】
水素に加えて、分解ガスは、窒素などの不活性ガスを含み得る。一実施形態では、分解ガスは、少なくとも約50%の窒素、例えば、少なくとも約60%の窒素、例えば、少なくとも約70%の窒素、さらには少なくとも約80%の窒素を含む。分解ガスはまた、例えば、水素及び窒素に加えて、一酸化炭素を含み得る。一実施形態では、分解ガスは、少なくとも約2%の一酸化炭素など、少なくとも約1%の一酸化炭素を含む。別の実施形態では、分解ガスは、約30%以下の一酸化炭素、例えば、約25%以下の一酸化炭素、例えば、約20%以下の一酸化炭素を含む。
【0023】
1つの特定の実施形態では、金属シュウ酸塩化合物を分解するための分解ガスは、窒素、水素、及び一酸化炭素を含み、約0.1%以下の酸素を含む。1つの特徴付けでは、分解ガスは、約4%~約12%の水素、約2%~約20%の一酸化炭素、及び約68%~約94%の窒素を含む。
分解ガスの上記の説明において、アンモニア(NH)は、水素の全部又は一部の代わりになり得る。1つの特定の実施形態では、分解ガスは、窒素、アンモニア、及び一酸化炭素を含み、約0.1%以下の酸素を含む。例えば、分解ガスは、約4%~約12%のアンモニア、約2%~約20%の一酸化炭素、及び約68%~約94%の窒素を含み得る。
【0024】
無水金属シュウ酸塩化合物粒子を加熱して金属シュウ酸塩化合物を中間金属生成物に分解する工程は、大気圧下で実施することができる。しかしながら、より良い結果は、金属シュウ酸塩化合物を高圧(例えば、分解圧力)で分解することによって達成され得る。一実施形態では、分解は、少なくとも約1.5バール、例えば少なくとも約2バール、さらには少なくとも約2.5バールなどの高圧であり得る。不必要な過圧を回避するために、分解圧力は、約10バール以下、例えば、約8バール以下、例えば、約6バール以下であり得る。1つの特徴付けでは、分解圧力は少なくとも約1バールであり、約4バール以下である。
【0025】
上記のように、気体状シュウ酸塩副生成物(例えば、気体状H)は、金属シュウ酸塩化合物の分解中に無水金属シュウ酸塩粒子から分離される。例えば、分解ガスは、無水金属シュウ酸塩粒子を通って及び/又はその周りを流れることができる。分解ガスが水素を含む場合、気体状シュウ酸塩副生成物の全部又は一部がシュウ酸の形態であり得る。分解ガスがアンモニアを含む場合、気体状シュウ酸塩副産物の全部又は一部がシュウ酸アンモニウムの形態であり得る。
【0026】
無水金属シュウ酸塩化合物(例えば、シュウ酸及び/又はシュウ酸アンモニウム)から分離された気体状シュウ酸塩副生成物が再利用のために捕捉され得ることもまた利点である。一実施形態では、捕捉された気体状シュウ酸塩副生成物は、凝縮され、結晶化され、非シュウ酸塩金属化合物と接触して、金属シュウ酸塩化合物を形成する。例えば、捕捉されたシュウ酸塩結晶は、溶液に入れられ、例えば、メタセシス反応を通じて、非シュウ酸塩金属化合物粒子を金属シュウ酸塩化合物粒子に変換するために使用され得る。1つの特徴付けにおいて、非シュウ酸塩金属化合物は、金属酸化物化合物、金属塩化物化合物、金属硫酸塩化合物及び/又は金属炭酸塩化合物を含む。
【0027】
無水金属シュウ酸塩化合物粒子を分解して中間金属生成物を形成した後、中間金属生成物を精製することができ、すなわち、中間生成物中の不純物の濃度を低減するために、例えば、金属粉末に関連する非金属成分の濃度を低減するために処理することができる。一実施形態では、中間金属生成物は、例えば、無水金属シュウ酸塩化合物を分解するために使用された分解温度よりも高い温度(例えば、精製温度)に加熱される。一実施形態では、中間金属生成物は、分解温度を超えて、少なくとも約700℃、例えば少なくとも約720℃、例えば少なくとも約750℃、さらには少なくとも約800℃の精製温度に加熱される。しかしながら、実質的に不純物のない微細な金属粉末を提供するために、過度の温度に加熱することは一般に必要ではない。例えば、精製温度は、一般に、約1300℃以下、例えば、約1250℃以下、例えば、約1200℃以下、又はさらには約1150℃以下であろう。
【0028】
分解工程と同様に、微細金属粉末を形成するための中間金属生成物の精製は、還元性雰囲気中、例えば、精製ガス組成物中で実施することができる。精製ガス組成物は、分解ガスについて上記したのと同じ組成(例えば、同じ成分及び組成範囲)を有し得、一実施形態では、精製ガス組成物は、分解ガスと実質的に同じである。
【0029】
不純物を除去し、微細な金属粉末を形成するために中間金属生成物を精製する工程はまた、高圧、例えば、精製圧力で実施され得る。例えば、精製圧力は、少なくとも約2バール、例えば、少なくとも約2.5バール、又は少なくとも約3バールであり得る。通常、精製圧力は、約10バール以下、例えば、約8バール以下、例えば、約6バール以下である。希水素精製ガス組成物を用いて高い精製圧力下で加熱すると、精製ガスによる金属微粒子の浸透及び金属粉末からの不純物の除去が容易になる。
【0030】
次に、微細金属粉末は、冷却ガスを使用して、例えば、受動的に冷却され、及び/又は能動的に冷却され得る。望ましくない酸化物の形成を回避するために、冷却は、約1%以下の酸素、例えば、約0.5%以下の酸素、例えば、約0.1%以下の酸素、又は約0.05%以下の酸素を含む雰囲気などの低酸素雰囲気で行われ得る。上記の方法に従って製造された微細金属粉末は、非常に高い純度、例えば、非常に低濃度の非金属不純物を有し得る。一実施形態では、微細金属粉末は、約2%以下の非金属不純物、例えば、約1%以下の非金属不純物、例えば、約0.5%以下の非金属不純物、又は約0.1%以下の非金属不純物を含む。例えば、微細な金属粉末は、非常に低濃度の酸素(例えば、約0.1%以下の酸素)及び炭素(例えば、約0.1%以下の炭素)を含み得る。別の特性評価では、金属微粉末は炭素をほとんど又はまったく含まない。例えば、微細金属粉末は、約0.1重量%以下の炭素、例えば、約0.05重量%以下の炭素、又は約0.01重量%以下の炭素を含み得る。
【0031】
所望の反応を促進するために、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を加熱する工程、気体状シュウ酸塩副生成物を分離する工程、及び/又は中間金属生成物粒子を加熱する工程は、粒子、例えば、無水金属シュウ酸塩粒子及び/又は中間金属粒子を攪拌しながら実施され得る。例えば、プロセスは流動床反応器で実施することができる。
【0032】
上記の方法を使用して、多種多様な微細金属粉末を形成することができる。一実施形態では、微細金属粉末は、希土類金属、イットリウム、スカンジウム、アルミニウム、リチウム、コバルト、ニッケル、銅及び他の卑金属からなる群から選択される金属を含む。この方法は、1つ以上の希土類金属を含む微細金属粉末の製造に特に適用可能である。この方法はまた、例えば、2つ以上の金属シュウ酸塩化合物の混合物から開始することにより、少なくとも2つの金属の微細金属粉末混合物の製造に有用である。そのような混合金属粉末生成物は、磁性生成物を含むがこれに限定されない金属合金生成物の製造(例えば、焼結による)に有用である。一実施形態では、微細金属粉末は、ネオジム、鉄及び/又はホウ素を含む。別の実施形態では、微細金属粉末は、サマリウム及びコバルトを含む。別の実施形態では、金属微粉末は、ジスプロシウム及び鉄を含む。別の実施形態では、微細金属粉末は、ニオブ及び鉄を含む。別の実施形態では、微細金属粉末は、スカンジウム及びアルミニウムを含む。別の実施形態では、微細金属粉末は、リチウム及びアルミニウムを含む。別の実施形態では、微細金属粉末は、リチウムと、マンガン、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される少なくとも1つの追加の金属とを含む。例えば、金属微粉末は、リチウム及びコバルトを含み得る。
【0033】
一実施形態では、微細金属粉末のメジアン(D50)粒子サイズは、約30μm以下、例えば、約25μm以下、例えば、約15μm以下、例えば、約10μm以下、約5μm以下、又は約3μm以下であり得る。一般に、微細金属粉末のメジアン粒子サイズは、少なくとも約0.005μm、例えば、少なくとも約0.01μm、例えば、少なくとも約0.05μmである。1つの特徴付けでは、金属微粉末の粒子サイズのメジアンは、少なくとも約0.01μmであり、約10μm以下である。微細金属粉末生成物はまた、狭い粒子サイズ分布を有し得、金属粉末は、比較的低いアスペクト比(すなわち、最短寸法に対する最長寸法の比)を有し得る。微細金属粉末のメジアン粒子サイズは、主に、入ってくる粒子状金属シュウ酸塩化合物のメジアン粒子サイズの関数である。これに関して、入ってくる粒子状金属シュウ酸塩化合物(例えば、水和又は無水)は、無水金属シュウ酸塩化合物粒子の分解の前に、金属シュウ酸塩粒子の分離(例えば、ふるい分け)及び/又は粉砕などによって、粒子サイズを調整するように操作され得る。一実施形態では、無水金属シュウ酸塩化合物粒子のメジアン粒子サイズは、約400μm以下、例えば、約200μm以下、例えば、約100μm以下、又はさらには約50μm以下である。
【0034】
図1は、本開示による微細金属粉末の形成のための1つの方法を概略的に示している。図1に示される実施形態では、出発物質(例えば、原料)は、非シュウ酸塩金属化合物である。具体的には、図1に示されるように、出発材料は金属酸化物102である。金属酸化物102として示されているが、出発物質はまた、金属塩化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない別の金属化合物であり得る。出発物質は、後続の浸出工程140に報告する不純物の濃度を低減するために、比較的高純度(例えば、98%以上)であり得る。出発物質は、例えば、その後の浸出を容易にするために、粒子又は顆粒の形態であり得る。
【0035】
浸出工程140において、金属酸化物102は、酸と接触されて、金属酸化物102を溶解する(例えば、消化する)。図1に示されるように、酸は塩酸104であるが、酸は、硫酸(HSO)又は硝酸(HNO)を含むがこれらに限定されない他の無機酸を含み得る。HCl 104は、浸出工程140において、温度及び圧力の条件下で時間及び条件下で金属酸化物102と接触されて、金属酸化物102中の実質的にすべての金属を溶解する。例えば、浸出工程140は、金属酸化物102を可溶化するために、約75℃~90℃のわずかに高い温度で実施され得る。図1に示されているように、回収されたHCl 106(以下に記載する)はまた、試薬値を保持するために浸出工程140で使用され得る。
【0036】
浸出工程140は、金属の酸性溶液、この場合は金属塩化物108の溶液を生成する。溶液をシュウ酸塩析出工程142に移し、そこで金属塩化物溶液108を反応器内でシュウ酸110と接触させて、水和金属シュウ酸塩を析出させ、水和金属シュウ酸塩スラリー114(例えば、酸性媒体中に水和金属シュウ酸塩化合物粒子を含む)を形成する。水和シュウ酸塩スラリー114は、固液分離工程144に移され、そこで、酸性媒体からの水和金属シュウ酸塩化合物粒子の分離中に洗浄水116を使用することができ、これは、酸性成分、例えば、HCl及びシュウ酸の回収のための水除去工程150に移される。
【0037】
次に、水和した金属シュウ酸塩化合物粒子118は、還元工程146に移されて、微細な金属粉末122を形成する。還元工程146の間に、3つのサブ工程が実行されて、微細金属粉末122を生成する。(i)水和金属シュウ酸塩化合物粒子が脱水されて、無水金属シュウ酸塩化合物粒子を形成する。(ii)無水金属シュウ酸塩化合物の粒子が分解されて中間金属生成物になる。(iii)中間金属生成物は、微細な金属粉末を生成すべく精製される。図1では、同じ反応器で行うものとして(例えば、連続的な多段階方式で)示されているが、3つのサブ工程のいずれか1つ又はそれぞれを別々に実行することができる。
【0038】
図1に示されるように、水和金属シュウ酸塩化合物粒子は、最初に反応器内で脱水温度に加熱されて水を除去し、次により高い分解温度に加熱されて脱水金属シュウ酸塩を中間金属生成物に分解する。最後に、中間金属生成物をさらに高い精製温度に加熱して、微細金属粉末122を形成する。ここではH/Nの混合物120である還元ガス組成物が、脱水ガス、分解ガス、及び精製ガスとして使用される。上記のように、異なるガス組成を、脱水工程、分解工程、及び精製工程に使用することができる。精製工程146のサブ工程は、例えば、流動床反応器、管状炉、又は加圧キルンで実施することができる。
【0039】
精製工程146の気体状副生成物は除去され、凝縮器148に移送され、そこで水の一部が気相から凝縮され、COなどのオフガス124が排出され得る。追加の水は、水蒸気126として排出され得るように、水除去工程150で除去される。水除去工程150を出る流出物の成分は、主にHCl及びHであり、これらは、流出物を冷却工程152に移して、シュウ酸を結晶として凝縮及び析出させることによって分離することができる。固体/液体分離154の後、回収されたシュウ酸112は析出工程142に戻されることができ、そして回収されたHCl 106は浸出工程140に戻され得る。
【0040】
上記の方法は、金属化合物からの微細な金属粉末の迅速かつ経済的な製造を可能にする。例えば、水素が希薄なガス(例えば、約15%以下の水素を含む)の使用は、金属粉末を除去するため、特に微細な希土類金属粉末の場合における炭素や酸素などの不純物を除去するための精製として、より高い温度(例えば、700℃を超える)の使用を可能にする。高圧下でプロセス工程(分解や精製など)を実行すると、希薄水素ガスの微粒子への粒子間拡散が可能になる。金属化合物(例えば、水和した金属シュウ酸塩粒子)が金属に対して高純度である場合、微細な金属粉末も金属について高純度を有するであろう。特定の理論に拘束されることを望まないが、上記の方法は、金属酸化物又は金属水酸化物の中間形成なしに金属シュウ酸塩の金属への分解を可能にすると考えられている。
【0041】
図2A及び2Bは、市販の金属粉末(図2A)及び上記の方法に従って製造された微細な金属粉末(図2B)のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。具体的には、図2Aは、粒子サイズのメジアンが約250μmである市販のランタン粉末を示している。サイズが非常に大きいことに加えて、粒子は板状であり、高いアスペクト比を有する。対照的に、図2Bは、図2Aと同じ倍率での微細なジスプロシウム金属粉末を示している。微細なジスプロシウム金属粉末の粒子サイズのメジアンは10μm未満である。
【0042】
(実施例)
(NdPr粉末)
シュウ酸ネオジム水和物Nd(C・10HOとシュウ酸プラセオジム水和物Pr(C・10HOのモル比(Nd:Pr)1:1の混合物は、2つの粉末を混合することによって調製される。混合物の質量は約105.82mgである。混合物は、流動床反応器内で、温度360℃、620℃、900℃、及び1200℃の4つの連続した工程で加熱される。得られた金属粉末生成物は高純度であり、検出下限以下の炭素及び水素(例えば、<0.5%C及び<0.5%H)及び検出下限以下の酸素、窒素及び硫黄(例えば、<0.1%O、<0.1%N及び<0.1%S)を有する。
【0043】
(NdFeB粉末)
シュウ酸ネオジム水和物Nd(C・10HOとシュウ酸鉄水和物FeC・2HOの混合物は、2つの粉末を混合して調製し、混合物にホウ素金属粉末を添加する。混合物の質量は約158.79mg(42.57mgの水和シュウ酸ネオジミウム、115.45mgのシュウ酸鉄、0.78mgの金属ホウ素)である。混合物は、流動床反応器内で4つの連続した工程で加熱される。第1の工程は、約240℃の温度で実行され、総質量の約24%である水和水を除去する。第1の工程の後の圧力は2.7バールである。温度を320℃に上げ、次に約4バールの圧力下で720℃に上げる。約1時間後、質量はさらに69%減少して約110mgになる。次に、粉末を約1200℃に加熱し、約1時間保持する。得られた金属粉末生成物は高純度であり、検出下限以下の炭素及び水素(例えば、<0.5%C及び<0.5%H)及び検出下限以下の酸素、窒素及び硫黄(例えば、<0.1%O、<0.1%N及び<0.1%S)を有する。)。
【0044】
(コバルト粉末)
微細なコバルト金属粉末は、本明細書に開示された方法に従って、水和シュウ酸コバルト(CoC・nHO)から生成される。コバルト金属微粉末を分析したところ、99.63%のコバルト金属が含まれていることがわかった。
【0045】
(ジスプロシウム粉末)
微細なジスプロシウム金属粉末は、本明細書に開示される方法に従って、水和シュウ酸ジスプロシウム(Dy(C・nHO)から生成される。微細なジスプロシウム金属粉末の分析の結果、0.03%の炭素汚染を伴う99.93%のジスプロシウム金属を含むことが見出された。
【0046】
微細金属粉末を製造するための方法の様々な実施形態が詳細に説明されてきたが、それらの実施形態の修正及び適合が当業者に起こることは明らかである。しかしながら、そのような修正及び適合は、既知の適切な工学的な容器及び反応器の使用を含む、本開示の精神及び範囲内にあることを明確に理解されるべきである。
図1
図2A
図2B