IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)の特許一覧

特許7384919複数のアンテナからシンボルを送信すること
<>
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図1
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図2
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図3
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図4
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図5
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図6
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図7
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図8
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図9
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図10
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図11
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図12
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図13
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図14
  • 特許-複数のアンテナからシンボルを送信すること 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】複数のアンテナからシンボルを送信すること
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20231114BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20231114BHJP
【FI】
H04B7/06 986
H04B7/0413
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021552790
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056042
(87)【国際公開番号】W WO2020182290
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161470
【弁理士】
【氏名又は名称】冨樫 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(74)【代理人】
【識別番号】100194320
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100150670
【弁理士】
【氏名又は名称】小梶 晴美
(72)【発明者】
【氏名】ロペス, ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルムソン, レイフ
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518332(JP,A)
【文献】特表2013-510538(JP,A)
【文献】特表2018-509816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナからシンボルを送信する方法であって、前記方法は、
各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
を含み、
前記行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の列の数が少なくとも9であり、前記行列が、最大超過の実数アダマール行列の部分行列のうち最大超過の要件を満たす部分行列である、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つのさらなるシンボルを送信することであって、各さらなるシンボルについて、各アンテナから、前記さらなるシンボルに関連する前記行列の列のそれぞれのエレメントで乗算された前記さらなるシンボルを同時に送信することを含む、少なくとも1つのさらなるシンボルを送信すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された列と、各さらなるシンボルに関連する各列とが、前記行列の異なる列を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数のアンテナからシンボルを送信する方法であって、前記方法は、
各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
を含み、
前記行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の行の数が少なくとも9であり、前記行列が、最大超過の実数アダマール行列の部分行列のうち最大超過の要件を満たす部分行列である、
方法。
【請求項5】
少なくとも1つのさらなるシンボルを送信することであって、各さらなるシンボルについて、各アンテナから、前記さらなるシンボルに関連する前記行列の行のそれぞれのエレメントで乗算された前記さらなるシンボルを同時に送信することを含む、少なくとも1つのさらなるシンボルを送信すること
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記選択された行と、各さらなるシンボルに関連する各行とが、前記行列の異なる行を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シンボルと前記少なくとも1つのさらなるシンボルとが、少なくとも9つのOFDMシンボルを備える、請求項2、3、5および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アンテナの前記数が少なくとも9である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記行列が、12×12行列または16×16行列を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記行列が、行列MまたはMの部分行列を備え、Mが、

を備えるかまたはそれと等価である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記行列が、行列MまたはMの部分行列を備え、Mが、

を備えるかまたはそれと等価である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記行列が、行列MまたはMの部分行列を備え、Mが、

を備えるかまたはそれと等価である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記行列が、行列MまたはMの部分行列を備え、Mが、

を備えるかまたはそれと等価である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記シンボルがOFDMシンボルを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シンボルがロングトレーニングフィールド(LTF)シンボルを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記行列が、
実数アダマール行列を選択することと、
前記行列の第1の超過を決定することと、
前記行列の行および列をネゲートすることと、
前記行列の第2の超過を決定することと、
前記第2の超過が前記第1の超過よりも小さい場合、前記ネゲートすることを取り消すことと、
前記行列が最大超過実数アダマール行列を備えるまで、前の4つのステップを繰り返すことと
を含む、方法に従って構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのプロセッサ上で実行されたとき、前記少なくとも1つのプロセッサに、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法を行わせる命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
複数のアンテナからシンボルを送信するための装置であって、前記装置がプロセッサとメモリとを備え、前記メモリは、前記装置が、
各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算された前記シンボルを同時に送信すること
を行うように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでおり、
前記行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、前記行列の列の数が少なくとも9であり、前記行列が、最大超過の実数アダマール行列の部分行列のうち最大超過の要件を満たす部分行列である、
装置。
【請求項20】
前記メモリは、前記装置が、
請求項2から16のいずれか一項に記載の方法を行うように動作可能であるような、前記プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例は、複数のアンテナからシンボル、たとえば、ロングトレーニングフィールド(LTF)を送信することに関する。
【背景技術】
【0002】
高度アンテナシステムは、アップリンク(UL)方向とダウンリンク(DL)方向の両方において、無線通信システムの性能を著しく向上させるために使用され得る。たとえば、高度アンテナは、たとえば、複数の(時空間ストリームとも呼ばれる)空間ストリームを使用して送信することによって、送信の信頼性および/またはスループットを改善するためにチャネルの空間領域を使用する可能性を提供し得る。
【0003】
802.11-16規格は、たとえば、しばしばP行列と呼ばれる、行列のセットを指定し、行(および、列)が、2つ以上の時空間ストリーム(たとえば、多入力多出力(MIMO)動作)を利用するときにチャネルおよびパイロット推定のために直交カバーコードとして採用される直交ベクトルのセットを規定する。これらのP行列の行または列は、ロングトレーニングフィールド(LTF)と、送信されるときにデータシンボル中に埋め込まれるパイロットとに適用され得る。P行列は、たとえば、アダマール行列であり得る。
【0004】
実数アダマール行列は、エントリが+1および-1(すなわち、実数値のみ)からなり、H・H=nIであるような、次元n×nの正方行列Hである。ここで、上付き文字(.)は行列転置を示し、Iは単位行列である。実数アダマール行列の次数は、n=1,2または4の倍数(すなわち、n=4,8,12,16,...)のいずれかであることが知られている。行列のアダマール性質は以下の動作によって維持されることが確認され得る。
1)行または列のネゲーション(negation)。
2)任意の2つの行または列の置換(すなわち、スワッピング)。
【0005】
その上、アダマール行列は、第1の行および第1の列が、これらの動作によって、+1のみからなる行列に変換され得る。この形式におけるアダマール行列は、正規化されたと言われる。アダマール行列Aが、上記で識別された動作1および2の連続適用によってアダマール行列Bに変換され得る場合、2つの行列AおよびBは等価であると言われる。他の場合、それらの行列は、非等価であると言われる。アダマール行列は、正規化されたアダマール行列と等価である。
【0006】
EHT(極めて高いスループット)が、IEEE802.11規格の拡張として提案されている。特に、EHTは、最高16個の時空間ストリームのサポートを提供するものとする。現在、IEEE802.11-16規格と、IEEE802.11-16規格の修正802.11axとが、最高8つの時空間ストリームをサポートする。したがって、たとえば、最高16個の時空間ストリームのためのロングトレーニングフィールド(LTF)のための直交カバーコードを提供するための、次数9≦n≦16の行列(たとえば、P行列)が必要であり得る。
【0007】
8つまたはより少数の時空間ストリームのための実数値P行列の構成は簡単であり、検査によって、または、網羅的なコンピュータ検索によって行われ得る。しかしながら、P行列の次元が上がるにつれて、網羅的なコンピュータ検索は実行不可能になる。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様は、複数のアンテナからシンボルを送信する方法を提供する。本方法は、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信することを含む。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過(excess)の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0009】
本開示の別の態様は、複数のアンテナからシンボルを送信する方法を提供する。本方法は、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信することを含む。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0010】
本開示のさらなる態様は、最大超過実数アダマール行列を構成する方法を提供する。本方法は、実数アダマール行列を選択することと、行列の第1の超過を決定することと、行列の行および列をネゲートする(negate)ことと、行列の第2の超過を決定することと、第2の超過が第1の超過よりも小さい場合、ネゲートするステップを取り消すことと、行列が最大超過実数アダマール行列を備えるまで、前の4つのステップを繰り返すこととを含む。
【0011】
本開示のまたさらなる態様は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置を提供する。本装置は、プロセッサとメモリとを備える。メモリは、本装置が、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0012】
本開示の別の態様は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置を提供する。本装置は、プロセッサとメモリとを備える。メモリは、本装置が、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサによって実行可能な命令を含んでいる。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0013】
本開示の追加の態様は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置を提供する。本装置は、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように設定される。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0014】
本開示のさらなる態様は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置を提供する。本装置は、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように設定される。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0015】
本開示の例をより良く理解するために、および本開示の例がどのように実現され得るかをより明らかに示すために、次に、単に例として、以下の図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】次数n=12の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図2】次数n=16の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図3】次数n=16の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図4】次数n=16の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図5】次数n=16の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図6】次数n=16の正規化されたアダマール行列の一例の図である。
図7】複数のアンテナからシンボルを送信する方法の一例のフローチャートである。
図8】複数のアンテナからシンボルを送信する方法の一例のフローチャートである。
図9】次数n=12の最大超過実数アダマール行列の一例の図である。
図10】次数n=16の最大超過実数アダマール行列の一例の図である。
図11】次数n=16の最大超過実数アダマール行列の一例の図である。
図12】次数n=16の最大超過実数アダマール行列の一例の図である。
図13】最大超過実数アダマール行列を構成する方法の一例のフローチャートである。
図14】複数のアンテナからシンボルを送信するための装置の一例を示す図である。
図15】複数のアンテナからシンボルを送信するための装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は、限定ではなく説明の目的で、特定の実施形態または例など、具体的な詳細を記載する。他の例が、これらの具体的な詳細から離れて採用され得ることが当業者によって諒解されよう。いくつかの事例では、よく知られている方法、ノード、インターフェース、回路、およびデバイスの詳細な説明が、不要な詳細で説明を不明瞭にしないように省略される。説明される機能が、ハードウェア回路(たとえば、特殊な機能を実施するために相互接続されたアナログおよび/または個別論理ゲート、ASIC、PLAなど)を使用して、ならびに/あるいは1つまたは複数のデジタルマイクロプロセッサまたは汎用コンピュータとともにソフトウェアプログラムおよびデータを使用して、1つまたは複数のノードにおいて実装され得ることを、当業者は諒解されよう。また、エアインターフェースを使用して通信するノードは、好適な無線通信回路を有する。その上、適切な場合、本技術は、加えて、本明細書で説明される技法を処理回路に行わせることになるコンピュータ命令の適切なセットを含んでいる、固体メモリ、磁気ディスク、または光ディスクなど、任意の形態のコンピュータ可読メモリ内で完全に具現されると見なされ得る。
【0018】
ハードウェア実装形態は、限定はしないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェアと、縮小命令セットプロセッサと、限定はしないが、(1つまたは複数の)特定用途向け集積回路(ASIC)および/または(1つまたは複数の)フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むハードウェア(たとえば、デジタルまたはアナログ)回路と、(適切な場合)そのような機能を実施することが可能な状態機械とを含むかまたは包含し得る。
【0019】
本開示の少なくともいくつかの実施形態は、送信機および受信機における計算複雑さおよび/またはメモリ要件を低減する行列(たとえば、P行列、および/あるいは、その行または列がLTFシンボルなどのシンボルに適用され得る行列)の設計に関する。この理由で、以下の規定が有用であろう。実数アダマール行列Hの超過σ(H)が、すべての実数アダマール行列Hのエントリの和であるように規定される。たとえば、この性質は、-1を備えるエントリに対する、+1を備えるエントリの超過(または不足)を示す。次数n=12の実数アダマール行列の最大可能超過は36である。同様に、次数n=16の実数アダマール行列の最大可能超過は64である。所与の次数についての最大可能超過を有する実数アダマール行列は、本明細書では最大超過アダマール行列と呼ばれる。行および/または列置換にもかかわらず、次数n=12の1つの正規化されたアダマール行列100のみがあり、これは、図1に示されている。また、次数n=16のちょうど5つの非等価の正規化されたアダマール行列200、300、400、500および600があり、それぞれ、図2から図6に示されている。しかしながら、これらの行列100から600は、最大超過アダマール行列でない。
【0020】
本開示の実施形態は、少なくとも9つの時空間ストリームのサポートを可能にする直交カバーコードを提供するのに好適であり得る行列の使用を提案する。いくつかの例では、提案される行列は、最大可能超過を有する実数アダマール行列である。
【0021】
行列は、たとえば、少なくとも9つの時空間ストリーム、たとえば、最高16個の時空間ストリームのサポートを可能にする直交カバーコードを提供し得る。直交カバーコードが、最大可能超過をもつアダマール行列に関して規定されるので、直交カバーコードは、±1のみからなり、最大可能数の+1を所有する。これらの2つの性質は、いくつかの例では、最大超過を有しない実数アダマール行列を含む、他の行列およびカバーコードを使用することと比較して、送信機における計算複雑さおよび/またはメモリ使用量の最も大きい可能な低減を可能にし得る。
【0022】
図7は、複数のアンテナからシンボルを送信する方法700の一例のフローチャートである。いくつかの例では、シンボルは、ロングトレーニングフィールド(LTF)シンボルまたは1つまたは複数のパイロットシンボルを備えるかまたは含み得、および/あるいはOFDMシンボルを備え得る。本方法は、ステップ702において、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信することを含む。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0023】
したがって、たとえば、シンボルは、送信され、行列の選択された列からの、シンボルが送信されるアンテナに対応するエレメントで乗算され得る。エレメントは、各アンテナについて異なり得るが、いくつかの例では、エレメントの値は同じであり(たとえば、±1から選択され)得る。
【0024】
いくつかの例では、送信されるべきであるかまたは送信されている時空間ストリームの数が、アダマール行列の次数(サイズ、行/列の数)よりも小さい。たとえば、アダマール行列は16×16行列であり得るが、15個の時空間ストリームが送信され得る。いくつかの例では、15個の時空間ストリームのための直交カバーコードを提供するために使用される行列は、15×16行列であり得る。いくつかの例では、時空間ストリームの数は、アンテナの数に等しい。
【0025】
いくつかの例では、2つ以上のシンボル、たとえば、少なくとも時空間ストリームの数が送信される。いくつかの例では、シンボルの送信が時間とともに繰り返される(第1の送信を含む)回数は、行列の列の数(たとえば、16×16アダマール行列の場合、16個の列)に等しい。いくつかの例では、方法700は、少なくとも1つのさらなるシンボルを送信することであって、各さらなるシンボルについて、各アンテナから、さらなるシンボルに関連する行列の列のそれぞれのエレメントで乗算されたさらなるシンボルを同時に送信することを含む、少なくとも1つのさらなるシンボルを送信することを含み得る。すなわち、たとえば、トレーニングシーケンスの一部として、第1の時間期間において、シンボルが送信され、行列の第1の列からのエレメントが使用され、後続の時間期間の間、シンボルが再び送信され、行列の異なる列からのエレメントが使用される。シンボルは、いくつかの例では、毎回行列の異なる列を使用して、トレーニングシーケンスのさらなる後続の時間期間において、再び1つまたは複数送信され得る。したがって、たとえば、選択された列と、各さらなるシンボルに関連する各列とが、行列の異なる列を備える。
【0026】
図8は、複数のアンテナからシンボルを送信する方法800の代替例を示す。方法800は、シンボルが行列の、行の代わりに、選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されるという点で、方法700とは異なる。したがって、方法800は、ステップ802において、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信することを含む。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。図7の方法700に関して上記で説明された代替形態は、必要に応じて列の代わりに行を指すことおよび行の代わりに列を指すこと以外は、図8の方法800にも適用され得る。
【0027】
方法700または方法800の実際の実装は、特異的に、行列の行または列を使用することもしないこともあることに留意されたい。代わりに、たとえば、シンボルの送信を効果的に引き起こす計算または動作が、他の動作、ベクトルおよび/または行列が代わりに使用される場合でも、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である行列からのものであろう値でシンボルが乗算されたかのように実施され得る。
【0028】
いくつかの例では、アンテナの数は、少なくとも時空間ストリームの数、たとえば、少なくとも9である。行列は、12×12行列または16×16行列を備え得る。たとえば、行列は、行列MまたはMの部分行列を備え、Mは、次数n=12の最大超過実数アダマール行列の一例である、図9に示されている行列900を備えるかまたは行列900と等価である。たとえば、最高12個の空間ストリームを使用する実施形態、および/または最高12個の異なる時間期間においてシンボルを送信する実施形態は、行列900または等価物を使用し得る。同様に、アダマール行列は、次数n=16の最大超過実数アダマール行列の例を示す、それぞれ、図10図12に示されている行列1000~1200を備え得る。たとえば、これらは、最高16個の空間ストリームを用いた実施形態、および/または最高16個の異なる時間期間においてシンボルを送信する実施形態において使用され得る。
【0029】
図10中の行列1000は、たとえば、
として規定され得、ここで、
はクロネッカー積を示し、
である。
【0030】
いくつかの例では、時空間ストリームの数がm=9、10、11である場合、(たとえば、異なる時間期間において)シンボルに適用されるための直交ベクトルを提供するためにアダマール行列の部分行列を使用することが提案される。使用すべき行列は、たとえば、次元m×12のものであり得、したがって、次数12の最大超過アダマール行列の部分行列であり得る。時空間ストリームの数がm=13、14、15である場合、次数16の最大超過アダマール行列の次元m×16の部分行列が使用され得る。
【0031】
図13は、最大超過実数アダマール行列を構成する方法1300の一例のフローチャートである。方法1300は、ステップ1302において、実数アダマール行列を選択することを含む。これは、たとえば、図1図7に示されているものなど、正規化されたアダマール行列、または任意の他のアダマール行列であり得る。方法1300は、ステップ1304において、行列の第1の超過を決定することと、ステップ1306において、行列の行および列をネゲートすることとをも含む。行および列は、連続的に、ランダムに、または任意の他の様式で選択され得る。いくつかの例では、行および列は、ステップ1306のいくつかの繰返しに従って、あらゆる行/列の組合せが少なくとも1回ネゲートされるように選択される。したがって、たとえば、16×16行列の場合、ステップ1306は、(すべての組合せがネゲートされる前に最大超過行列が達成されない限り)少なくとも256回繰り返され得る。
【0032】
次に、方法のステップ1308が、ステップ1306におけるネゲーションの結果として、ステップ1304において決定された第1の超過と異なり得る、行列の第2の超過を決定することを含む。ステップ1310において、方法1300は、第2の超過が第1の超過よりも小さい(または代替的に、第1の超過よりも小さいかまたはそれに等しい)場合、ネゲートするステップを取り消すことを含む。したがって、ステップ1304~1310の後で、行列の超過は減少しないことになり、増加するかまたは同じままであり得る。最後に、方法1300のステップ1312は、行列が最大超過実数アダマール行列を備えるまで、前の4つのステップ(すなわち、ステップ1304~1310)を繰り返すことを含む。方法700または800のいくつかの例では、行列が、方法1300に従って構成される。
【0033】
図1400は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置1400の一例を示す。いくつかの例では、装置1400は、図7を参照しながら上記で説明された方法700、または本明細書で説明される他の例のうちのいずれかを実施するように設定され得る。
【0034】
装置1400は、プロセッサ1402と、プロセッサ1402と通信しているメモリ1404とを備える。メモリ1404は、プロセッサ1402によって実行可能な命令を含んでいる。一実施形態では、メモリ1404は、装置1400が、各アンテナから、行列の選択された列のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサ1402によって実行可能な命令を含んでいる。行列の行の数が少なくともアンテナの数であり、行列の列の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0035】
図1500は、複数のアンテナからシンボルを送信するための装置1500の一例を示す。いくつかの例では、装置1500は、図8を参照しながら上記で説明された方法800、または本明細書で説明される他の例のうちのいずれかを実施するように設定され得る。
【0036】
装置1500は、プロセッサ1502と、プロセッサ1502と通信しているメモリ1504とを備える。メモリ1504は、プロセッサ1502によって実行可能な命令を含んでいる。一実施形態では、メモリ1504は、装置1500が、各アンテナから、行列の選択された行のそれぞれのエレメントで乗算されたシンボルを同時に送信するように動作可能であるような、プロセッサ1502によって実行可能な命令を含んでいる。行列の列の数が少なくともアンテナの数であり、行列の行の数が少なくとも9であり、行列は、最大超過の実数アダマール行列の部分行列を備えるかまたは部分行列である。
【0037】
上述の例は本発明を限定するのではなく例示するものであること、および、当業者であれば添付の記述の範囲から逸脱することなく、多くの代替例を設計することが可能となることに留意されたい。「含む、備える(comprising)」という単語は、特許請求の範囲に列挙されているエレメントまたはステップ以外の、エレメントまたはステップの存在を除外せず、「a」または「an」は複数を除外せず、単一のプロセッサまたは他のユニットが、以下の記述に具陳されているいくつかのユニットの機能を果たし得る。「第1の(first)」、「第2の(second)」などの用語が使用される場合、それらは、単に、特定の特徴の好都合な識別のための標示として理解されるべきである。特に、それらは、別段に明記されていない限り、複数のそのような特徴のうちの第1の特徴または第2の特徴(すなわち、時間または空間において発生することになる、そのような特徴のうちの第1のものまたは第2のもの)を記述するものとして解釈されるべきでない。本明細書で開示された方法におけるステップは、別段に明確に述べられていない限り、任意の順序で行われ得る。記述におけるいかなる参照符号も、それらの範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15