(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
F23Q 3/00 20060101AFI20231114BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F23Q3/00 610E
F23D14/22 E
(21)【出願番号】P 2022004401
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】田口 脩平
(72)【発明者】
【氏名】仲井 和成
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-022718(JP,U)
【文献】国際公開第2021/157302(WO,A1)
【文献】実開平06-022717(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 1/00 - 25/00
F23D 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を供給する燃料管と、
前記燃料管のノズル部を囲むように設けられ、燃焼用空気を供給する空気管と、
前記燃料管の外周側であって、前記空気管の内周側に位置する点火プラグと、
前記点火プラグの点火部と対向し、前記点火部に対して前記燃焼用空気の流れ方向の下流側に位置するように設けられた防風板と、を備え、
前記防風板は、前記空気管の内周面から内方に向けて突出する、バーナ。
【請求項2】
燃料を供給する燃料管と、
前記燃料管のノズル部を囲むように設けられ、燃焼用空気を供給する空気管と、
前記燃料管の外周側であって、前記空気管の内周側に位置する点火プラグと、
前記点火プラグの点火部と対向し、前記点火部に対して前記燃焼用空気の流れ方向の下流側に位置するように設けられた防風板と、
前記点火プラグの点火部及び前記燃料管のノズル部を囲むように設けられ、前記空気管に囲まれる筒状体と、を備え、
前記防風板は、前記筒状体の内周面から内方に向けて突出する、バーナ。
【請求項3】
前記防風板は、前記筒状体の内周面の全周から内方に向けて延びる、
請求項2記載のバーナ。
【請求項4】
前記ノズル部は、先端部近傍の外周面に燃料を噴射する噴射孔が少なくとも1つ設けられており、
前記噴射孔は、前記点火部の前記燃焼用空気の流れ方向の上流側に位置するようになっている、
請求項1~3のいずれか1つに記載のバーナ。
【請求項5】
前記燃料管によって供給される燃料がアンモニアガスである、
請求項1~4のいずれか1つに記載のバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発熱量の燃料を用いるバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用バーナとしては、特許文献1に開示されているように、燃料管の横に点火プラグが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、脱炭素化のため、アンモニアガスを燃料に利用しようとしているが、アンモニアは低発熱量であるため、特許文献1に示されるような従来の工業用バーナの構造では、点火がしにくいという課題が存在する。
【0005】
そこで、本発明では、燃焼用空気を供給する空気管が、燃料管のノズル部を囲むように設けられる従来の工業用バーナにおいて、低発熱量の燃料を用いる場合でも点火が容易なバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バーナであって、
燃料を供給する燃料管と、
前記燃料管のノズル部を囲むように設けられ、燃焼用空気を供給する空気管と、
前記燃料管の外周側であって、前記空気管の内周側に位置する点火プラグと、
前記点火プラグの点火部と対向し、前記点火部に対して前記燃焼用空気の流れ方向の下流側に位置するように設けられた防風板と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、防風板によって燃料と燃焼用空気とが点火プラグの点火部の近傍で混合しやすくなるので、低発熱量の燃料を用いる場合でもバーナの点火を容易とすることができる。
【0008】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記防風板は、前記空気管の内周面から内方に向けて突出する。
【0009】
(2)前記点火プラグの点火部及び前記燃料管のノズル部を囲むように設けられ、前記空気管に囲まれる筒状体を備え、
前記防風板は、前記筒状体の内周面から内方に向けて突出する。
【0010】
(3)前記構成(2)において、前記防風板は、前記筒状体の内周面の全周から内方に向けて突出する。
【0011】
(4)前記ノズル部は、先端部近傍の外周面に燃料を噴射する噴射孔が少なくとも1つ設けられており、
前記噴射孔は、前記点火部の前記燃焼用空気の流れ方向の上流側に位置するようになっている。
【0012】
(5)前記燃料管によって供給される燃料がアンモニアガスである。
【0013】
前記構成(1)によれば、防風板は空気管の内周面から突出するので、防風板を空気管の内周面で保持することができる。
【0014】
前記構成(2)によれば、燃焼用空気の流路面積を確保しながら、燃料と燃焼用空気とが点火部の近傍で滞留しやすくなるので、バーナの点火をより容易とすることができる。
【0015】
前記構成(3)によれば、燃焼用空気の流路面積を確保しながら、防風板を筒状体の内周面の全周から内方に向けて突出させることによって、燃料と燃焼用空気とが点火部の近傍でより滞留しやすくなるので、バーナの点火をより容易とすることができる。
【0016】
前記構成(4)によれば、噴射孔を点火部の燃焼用空気の流れ方向の上流側に配置することによって、噴射孔から噴射される燃料と燃焼用空気とが点火部に近傍でより混合しやすくすることができる。
【0017】
前記構成(5)によれば、炭化水素系の燃料の場合、防風板にススが付着し、その結果点火不良になる可能性があるが、燃料にアンモニアガスを用いることによってススの発生を無くし、点火不良の発生を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
要するに、本発明によると、低発熱量の燃料を用いる場合でも点火が容易なバーナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るバーナの概略側面図である。
【
図4】低発熱の燃料を燃料管から供給した場合のバーナの燃焼を示す概略側面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態1に係るバーナの概略側面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態2に係るバーナの概略側面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII断面矢視図である。
【
図9】本発明の別の実施形態3に係るバーナの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るバーナ10の概略側面図である。
図1に示されるように、バーナ10は、燃料を供給する燃料管1と、燃焼用空気を供給する空気管2と、を備えている。空気管2は、燃料管1のノズル部11を囲むように設けられている。
【0021】
ノズル部11は、空気管2内に存在する燃料管1の部分であり、断面円形の燃料供給路を有し、先端が閉じられている。ノズル部11の内径r1は、空気管2の内径r2の半分以下となっている。そして、空気管2及びノズル部11は、同心円状となるように設けられている。したがって、空気管2の中心軸O1は、ノズル部11の中心軸と一致する。
【0022】
燃料管1には、燃料管1を開閉し、燃料供給量を調整する調整弁12が設けられている。また、空気管2には、空気管2を開閉し、燃焼用空気供給量を調整する調整弁21が設けられている。
【0023】
図2は、
図1のII-II断面矢視図である。
図2に示されるように、ノズル部11の先端部近傍の外周面には、燃料を噴射する噴射孔13が、ノズル部11の軸線方向に垂直な断面において、同一円周上に略均等間隔で6つ設けられている。6つの噴射孔13の孔径はそれぞれ同じとなっている。
【0024】
図3は、
図1のIII-III断面矢視図である。
図1及び
図3に示されるように、バーナ10はさらに、空気管2の内周側であり、燃料管1のノズル部11の外周側であって、ノズル部11の外周側(図では上方)に位置する、点火プラグ3を備えている。点火プラグ3の先端には着火のための点火部(電極)31が設けられており、点火部31は、噴射孔13の燃焼用空気の流れ方向(Y方向)の下流側に位置するようになっている。
【0025】
点火プラグ3の点火部31に対して、燃焼用空気の流れ方向(Y方向)の下流側には、燃焼用空気の流れを遮断する防風板4が設けられている。防風板4は、空気管2の内周面の一部から内方に向けて突出しており、点火部31と対向している。炉内側から見て(Y方向の反対方向から見て)、防風板4は、点火部31を含む点火プラグ3の全体を覆うように内方に向けて延びている。防風板4と点火部31との間には、燃焼用空気の流れ方向(Y方向)に5mm程度の間隔が設けられる(
図1中のA参照)。点火部31は、燃焼用空気の流れ方向(Y方向)において、噴射孔13と防風板4との略中間に位置するようになっている。
【0026】
(バーナ10の燃焼の制御)
以下、バーナ10の燃焼の制御について説明する。
【0027】
図4は、低発熱量の燃料を燃料管1から供給した場合のバーナ10の燃焼を示すバーナ10の概略側面図である。低発熱量の燃料とは、例えばアンモニアガスやBFGガス(溶鉱炉から発生するガス)である。
【0028】
図4に示されるように、燃料管1から燃料が供給されると、燃料は、噴射孔13から噴射され、空気管2から供給された燃焼用空気と混合し、そこで点火プラグ3の点火部31から発せられる火花(図中のS参照)によって着火し、火炎が形成される。このとき、燃焼用空気は防風板4によって点火プラグ3の点火部31の近傍で流速が低下する。その結果、燃料管1から供給された燃料が低発熱量であったとしても、火炎が吹き消えにくくなり、着火した火炎が確実に周囲に伝播し、点火部31の近傍を基点として、他の噴射孔13から噴射される燃料に燃え広がり、バーナ10としての火炎を形成できる。
【0029】
前記構成のバーナ10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0030】
(1)防風板4は、点火プラグ3の点火部31と対向し、点火部31に対して燃焼用空気の流れ方向(Y方向)の下流側に位置しているので、防風板4によって燃料と燃焼用空気とが点火部31の近傍で混合しやすくなるので、低発熱量の燃料を用いる場合でもバーナ10の点火を容易とすることができる。
【0031】
(2)防風板4は、空気管2の内周面から内方に向けて突出しているので、防風板4を空気管の内周面で保持することができる。
【0032】
(3)燃料管1のノズル部11は、先端部近傍の外周面に燃料を噴射する噴射孔13が少なくとも1つ設けられており、噴射孔13は、点火プラグ3の点火部31の燃焼用空気の流れ方向(Y方向)の上流側に位置するようになっているので、噴射孔13から噴射される燃料と燃焼用空気とが点火部31の近傍でより混合しやすくすることができる。
【0033】
(4)炭化水素系の燃料の場合、防風板4にススが付着し、その結果点火不良になる可能性があるが、燃料にアンモニアガスを用いる場合、ススが発生せず、点火不良の発生を低減することができる。
【0034】
図5は、本発明の別の実施形態1に係るバーナ10の側面概略図であり、
図6は、
図5のVI-VI断面矢視図である。別の実施形態では、防風板の形状が上記実施形態と異なっており、その他の構成は上記実施形態と同様である。このため別の実施形態1の説明においては、上記実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、それらの内容については詳しい説明を省略する。以下、その他の別の実施形態の説明についても同様である。
【0035】
図5及び
図6に示されるように、防風板41は、空気管2の内周面の全周から内方に向けて突出している。上記構成によれば、防風板41が空気管2の内周面の一部から内方に向けて突出する場合と比べ、燃料と燃焼用空気とが点火プラグ3の点火部31の近傍でより滞留しやすくなり、バーナ10の点火をより容易とすることができる。しかし、防風板41が燃焼用空気の流路断面積を塞ぐ面積が大きくなり、バーナ10の最大燃焼量が低下する可能性がある。
【0036】
図7は、本発明の別の実施形態2に係るバーナ10の側面概略図であり、
図8は、
図7のVIII-VIII断面矢視図である。
図7及び
図8に示されるように、筒状体5が点火プラグ3の点火部31及び燃料管1のノズル部11を囲むように設けられ、空気管2は筒状体5を囲むようになっている。筒状体5の周面部の一部は、点火プラグ3と空気管2との間に位置している。そして、防風板42は、筒状体5の内周面の一部から内方に向けて突出している。筒状体5は、空気管2の内周面に支持部材6を介して支持され、支持部材6は、筒状体の円周方向に均等間隔に設けられている。
【0037】
上記構成によれば、筒状体5と空気管2との間で燃焼用空気の流路面積を確保しながら、燃料と燃焼用空気とが点火プラグ3の点火部31の近傍で滞留しやすくなるので、バーナ10の点火をより容易とすることができる。
【0038】
また、筒状体5は、空気管2の内周面に支持部材6を介して支持され、支持部材6は、筒状体5の円周方向に均等間隔に設けられているので、筒状体5を空気管2の内周面で容易に保持することができる。
【0039】
図9は、本発明の別の実施形態3に係るバーナ10の側面概略図であり、
図10は、
図9のX-X断面矢視図である。
図9及び
図10に示されるように、筒状体5が点火プラグ3の点火部31及び燃料管1のノズル部11を囲むように設けられ、空気管2は筒状体5を囲むようになっている。筒状体5の周面部の一部は、点火プラグ3と空気管2との間に位置している。そして、防風板43は、筒状体5の内周面の全周から内方に向けて突出している。筒状体5は、空気管2の内周面に支持部材6を介して支持され、支持部材6は、筒状体の円周方向に均等間隔に設けられている。
【0040】
上記構成によれば、筒状体5と空気管2との間で燃焼用空気の流路面積を確保しながら、防風板が筒状体5の内周面の一部から内方に向けて突出する場合と比べ、燃料と燃焼用空気とが点火プラグ3の点火部31の近傍でより滞留しやすくなるので、バーナ10の点火をより容易とすることができる。
【0041】
また、筒状体5は、空気管2の内周面に支持部材6を介して支持され、支持部材6は、筒状体5の円周方向に均等間隔に設けられているので、筒状体5を空気管2の内周面で容易に保持することができる。
【0042】
上記実施形態では、燃料管1のノズル部11は、先端が閉じられており、燃料を噴射する噴射孔13がノズル部11の先端部近傍の外周面に6つ設けられているが、先端部近傍の外周面の噴射孔13に加えて、ノズル部11の先端に、軸方向に燃料を噴射する噴射孔が少なくとも1つ設けられてもよい。
【0043】
上記実施形態では、噴射孔13は6つ設けられているが、噴射孔13は少なくとも1つ設けられればよい。この場合、噴射孔13は、点火プラグ3の点火部31に対向する側に設けられることが好ましい。ただし、通常使用時における火炎の形成を安定させるために、噴射孔13は、ノズル部11の先端部近傍の外周面に、同一円周上に略均等間隔で3つ以上設けられることが好ましい。
【0044】
上記実施形態では、防風板4は、空気管2の内周面又は筒状体5の内周面から内方に向けて突出しているが、防風板は、図示しないが、燃料管1の外周面から外方に向けて突出してもよく、また、燃料管1の外周面の全周から外方に向けて突出してもよい。
【0045】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明では、低発熱量燃料を用いる場合でも点火が容易なバーナを提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0047】
1 燃料管
11 ノズル部 12 調整弁
13 噴射孔
2 空気管
21 調整弁
3 点火プラグ
31 点火部(電極)
4 防風板
41 防風板 42 防風板 43 防風板
5 筒状体
6 支持部材
10 バーナ
r1、r2 内径
O1 中心軸
S 火花