(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】破裂板装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/24 20060101AFI20231114BHJP
G01M 3/26 20060101ALI20231114BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20231114BHJP
F16K 17/16 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
G01M3/24 A
G01M3/26 J
G01H17/00 Z
F16K17/16
(21)【出願番号】P 2022004403
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】横井 範之
(72)【発明者】
【氏名】林 孝綱
(72)【発明者】
【氏名】池内 雅貴
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211346736(CN,U)
【文献】特開2008-274871(JP,A)
【文献】特開昭63-006280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G01B 21/32
G01H 1/00
G01H 17/00
F16K 17/14- 17/16
F16K 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破裂板装置であって、
管路内に設けられ、前記管路内を遮断する破裂板と、
前記破裂板の管路下流側に位置し、前記破裂板の振動を測定する振動測定装置と、を備え、
前記振動測定装置は、前記破裂板の板厚方向の振動を測定するようになっており、
前記破裂板装置は、前記破裂板の管路下流側に位置し、前記振動測定装置が取り付けられる取付板を備え、
前記振動測定装置は、本体部と測定子とを備えており、
前記本体部は、前記取付板の管路下流側に位置するようになっている、破裂板装置。
【請求項2】
前記振動測定装置は、前記破裂板の板厚方向の振動の変位が所定値以上となった場合には、警告を発するようになっている、請求項1記載の破裂板装置。
【請求項3】
前記振動測定装置は、測定子を前記破裂板に接触させる接触式の振動測定装置である、請求項1又は2に記載の破裂板装置。
【請求項4】
前記破裂板装置は、前記破裂板の管路上流側に位置し、管路を開閉する隔離弁を備え、
前記隔離弁は、前記破裂板を交換する際に前記管路を閉止する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の破裂板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉体や配管等に設けられる破裂板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炉内の雰囲気ガスが何らかの要因で着火し爆発した場合に備えて、安全に爆風を逃がせるよう、炉体や配管等の管路には他の部位と比べて破裂しやすい部分を設けており、例えば特許文献1には、薄いアルミニウムの板を張り詰めて取り付けたものを破裂板として、フランジの開口に取り付ける構成が開示されている。そして、このような破裂板が破裂するのを検知する手段として、特許文献2及び3に示されるような構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭51-21398号公報
【文献】特開昭52-57875号公報
【文献】実開平1-136477号公報
【文献】実公昭49-26439号公報
【文献】実開平1-141973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際には、破裂板が破裂するのは雰囲気ガスの爆発よりも破裂板の腐食や劣化等によることが多く、破裂板の腐食や劣化等という追加で考慮すべき問題が生じる傾向にある。そこで、特許文献4には、破裂板の腐食を防止する構成が開示されているが、これによっては破裂板の寿命を延長するに過ぎない。また、特許文献5には、破裂板を二重に設け、破裂板間の圧力変動によって2つ目の破裂板が破裂する前に検知する構成が開示されているが、これによっては構造が複雑になるという課題が生じる。
【0005】
そこで、本発明では、簡便な構成で破裂板の腐食や劣化によって破裂板が破裂してしまう兆候を検知することができる破裂板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、破裂板装置であって、
管路内に設けられ、前記管路内を遮断する破裂板と、
前記破裂板の管路下流側に位置し、前記破裂板の振動を測定する振動測定装置と、を備え、
前記振動測定装置は、前記破裂板の板厚方向の振動を測定するようになっている。
【0007】
前記構成によれば、振動測定装置が破裂板の板厚方向の振動を測定することによって、簡便な構成で破裂板の腐食や劣化によって破裂板が破裂してしまう兆候を検知することができる。
【0008】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記振動測定装置は、前記破裂板の板厚方向の振動の変位が所定値以上となった場合には、警告を発するようになっている、請求項1記載の破裂板装置。
【0009】
(2)前記振動測定装置は、測定子を前記破裂板に接触させる接触式の振動測定装置である。
【0010】
(3)前記破裂板装置は、前記破裂板の管路下流側に位置し、前記振動測定装置が取り付けられる取付板を備え、
前記振動測定装置は、本体部と測定子とを備えており、
前記本体部は、前記取付板の管路下流側に位置するようになっている。
【0011】
(4)前記破裂板装置は、前記破裂板の管路上流側に位置し、管路を開閉する隔離弁を備え、
前記隔離弁は、前記破裂板を交換する際に前記管路を閉止する。
【0012】
前記構成(1)によれば、破裂板の振動の変位が所定値以上となった場合に警告を発することによって、破裂板が破裂する前にその兆候を検知し、事前に破裂板の交換を行うことができる。
【0013】
前記構成(2)によれば、測定子を破裂板に接触させることによって、破裂板の振動を抑制することができ、破裂板の寿命を延ばすことができる。
【0014】
前記構成(3)によれば、振動測定装置の本体部を取付板の管路下流側に配置することによって、破裂板が破裂した場合、炉内の雰囲気ガスが本体部に直接衝突することを取付板によって抑制できる。
【0015】
前記構成(4)によれば、隔離弁によって管路を閉止することによって、破裂板の交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
要するに、本発明によると、簡便な構成で破裂板の腐食や劣化によって破裂板が破裂してしまう兆候を検知することができる破裂板装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る破裂板装置の断面概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る破裂板装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る破裂板装置10の断面概略図である。
図1に示されるように、破裂板装置10は、炉体の配管1の管台2側に設けられている。破裂板装置10は、管路内に設けられ、管路内を遮断する破裂板3と、破裂板3の管路下流側に位置し、破裂板3の振動を測定する振動測定装置4と、を備えている。
【0019】
管台2の管路下流側には、フランジ5が設けられており、破裂板3は、管台2の管路下流側の端部に形成されたフランジ21と、フランジ5とに挟まれ、ボルト6によって締め付け固定されている。破裂板3の材質は、炉内の環境に基づき選定され、一般的に、展延性がよく、耐食性が高いものとしてアルミニウムが用いられやすいが、高温、高圧で使用される場合には、例えばステンレス鋼やニッケル鋼等が用いられる。破裂板3は、炉内が通常使用状態の場合には変形が生じないが、破裂による急激な圧力の上昇や低下が発生したときのみせん断破裂する程度の厚さを有する。
図2は、破裂板3の正面図である。破裂板3は円板形状を有しており、周縁部にボルト6が挿通される孔31が円周方向に均等間隔で例えば4つ形成されている。なお、点線部は、管台2の開口の位置を示している。
【0020】
フランジ5の管路下流側には支柱7が設けられており、支柱7の一端は、フランジ5に固定されている。振動測定装置4が取り付けられる取付板8は、支柱7の他端に固定されている。支柱7は棒形状を有しており、例えば4本が等間隔に設けられている。
【0021】
振動測定装置4は、本体部41と測定子42とを備えており、本体部41は取付板8の管路上流側の面(図では下面)に取り付けられている。振動測定装置4は、接触式の振動測定装置であり、測定子42は、本体部41から管路上流側に延びて、測定子42の先端は、破裂板3の中心に接触するようになっている。振動測定装置4は、破裂板3の中心の板厚方向の変位、変位速度、又は変位加速度等によって、破裂板3の振動を測定する。そして、振動測定装置4は、破裂板3の例えば板厚方向の振動の変位が所定値以上となった場合には、警告を発するようになっている。破裂板3は、本来の作用として破裂する場合には一気に破裂するが、劣化や腐食によって強度が失われた場合には、張り詰めた水平状態の破裂板3が炉内の圧力によって凹状や凸状に変形しようとする力が加わって全面的に伸びが生じ、それが炉内の運転中の装置の振動を受けて、破裂板3も振動し始めるようになる。破裂板装置10は、その現象を利用して、破裂板3の振動を振動測定装置4によって検知することにより、破裂板3の破裂の兆候を検知する。なお、本来の作用で破裂板3が破裂した場合、爆風は支柱7の間隙から外部へ放出される。
【0022】
破裂板装置10は、破裂板3の管路上流側に位置し、管路を開閉する隔離弁11を備えている。隔離弁11は、破裂板3を交換する際に管路を閉止するようになっている。
【0023】
前記構成の破裂板装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0024】
(1)振動測定装置4が破裂板3の板厚方向の振動を測定することによって、簡便な構成で破裂板3の腐食や劣化によって破裂板3が破裂してしまう兆候を検知することができる。
【0025】
(2)振動測定装置4は、破裂板3の板厚方向の振動の変位が所定値以上となった場合には、警告を発するようになっているので、破裂板3が破裂する前にその兆候を検知し、事前に破裂板の交換を行うことができる。
【0026】
(3)振動測定装置4は、測定子42を破裂板3に接触させる接触式の振動測定装置であるので、測定子42を破裂板3に接触させることによって、破裂板3の振動を抑制することができ、破裂板3の寿命を延ばすことができる。なお、測定子42を破裂板3の中心に接触させることによって、周縁部に接触させる場合と比べて、破裂板3の振動をさらに抑制することができる。
【0027】
(4)破裂板装置10は、破裂板3の管路上流側に位置し、管路を開閉する隔離弁11を備えているので、隔離弁11によって管路を閉止することによって、破裂板3の交換を容易に行うことができる。
【0028】
(5)破裂板3は円板形状を有しており、周縁部にボルト6が挿通される孔31が円周方向に均等間隔で形成されているので、破裂板3の中心で振動の変位が最大になるように構成されている。したがって、振動測定装置4の測定子42を破裂板3の中心に接触させることによって、破裂板3の振動を効果的に抑制することができる。
【0029】
図3は、本発明の別の実施形態に係る破裂板装置10の断面概略図である。別の実施形態では、振動測定装置4が非接触式の振動測定装置である点で上記実施形態と異なっており、その他の構成は上記実施形態と同様である。このため、別の実施形態の説明においては、上記実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、それらの内容については詳しい説明を省略する。
【0030】
図3に示されるように、振動測定装置4は、本体部43と測定子44とを備えており、本体部43は取付板8の管路下流側の面(図では上面)に取り付けられている。振動測定装置4は、非接触式の振動測定装置であり、測定子44は、本体部43から管路上流側に延びて、測定子44の先端は、破裂板3から所定の空間をおいて、取付板8の管路上流側に位置するようになっている。測定子44の延長方向には、破裂板3の中心が位置している。振動測定装置4は、破裂板3の中心の板厚方向の変位、変位速度、又は変位加速度等によって、破裂板3の振動を測定する。そして、振動測定装置4は、破裂板3の例えば板厚方向の振動の変位が所定値以上となった場合には、警告を発するようになっている。
【0031】
上記構成によれば、振動測定装置4の本体部43は、取付板8の管路下流側に位置するようになっているので、破裂板3が破裂した場合、炉内の雰囲気ガスが振動測定装置4の本体部41に直接衝突することを取付板8によって抑制できる。その結果、雰囲気ガスによって本体部43が損傷する可能性を低減することができる。
【0032】
上記実施形態では、接触式の振動測定装置4の本体部41は取付板8の管路上流側に位置し、非接触式の振動測定装置4の本体部43は取付板8の管路下流側に位置するようになっているが、接触式の振動測定装置4の本体部が取付板8の管路下流側に位置し、非接触式の振動測定装置の本体部が取付板8の管路上流側に位置してもよい。
【0033】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明では、簡便な構成で破裂板の腐食や劣化によって破裂板が破裂してしまう兆候を検知することができる破裂板装置を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0035】
1 配管
2 管台
21 フランジ
3 破裂板
4 振動測定装置
41 本体部 42 測定子
43 本体部 44 測定子
5 フランジ
6 ボルト
7 支柱
8 取付板
10 破裂板装置