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  • 特許-ダイカスト用射出装置 図1
  • 特許-ダイカスト用射出装置 図2
  • 特許-ダイカスト用射出装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ダイカスト用射出装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
B22D17/20 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022008361
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2023107275
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 京士
(72)【発明者】
【氏名】森安 時宏
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245540(JP,A)
【文献】特開2011-092968(JP,A)
【文献】特開平04-313456(JP,A)
【文献】特開2018-069283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドを有する射出シリンダと、
前記ピストンロッドに連結されたプランジャロッドと、
前記プランジャロッドに、前記プランジャロッドの中心軸線方向に並んで設けられ、冷却水用ポートの開口側から視認したときに同時に視認可能な2つの前記冷却水用ポートと、
前記プランジャロッドの先端に螺着されてスリーブ内に配置されるプランジャチップとを有し、
前記プランジャロッドには、前記プランジャロッド内に冷却水を循環させるための2つの冷却水用ホースが前記冷却水用ポートを介して接続されており、
前記スリーブ内に給湯された金属溶湯を前記プランジャチップによって金型キャビティ内に射出するダイカスト用射出装置において、
前記冷却水用ホースは、前記プランジャチップによって金属溶湯が射出される前進位置において前記プランジャロッドに対して前記プランジャチップとの螺合が締め付けられる締付方向への荷重のみが前記プランジャロッドに掛かるように配置されていることを特徴とするダイカスト用射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型のキャビティ内に溶湯を供給するスリーブ内に進退自在に設けられたプランジャチップを備えるダイカスト用射出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。プランジャチップは、プランジャロッドの先端に螺着されており、プランジャロッドはカップリングを介して射出シリンダのピストンロッドに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-92968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンロッドが押し出されてプランジャチップがキャビティ内の金属溶湯と接触している場合、プランジャチップが金属溶湯との間の摩擦抵抗により回転できないときがあり、このときプランジャロッドが回転するとプランジャチップとの螺合が緩んでしまう場合がある。この場合、プランジャチップとプランジャロッドの螺合状態を頻繁に確認する必要があって、メンテナンスが面倒である。
【0005】
特許文献1のものでは、プランジャロッドに切欠部を形成してプランジャロッドの重心を下方へ位置させることでプランジャロッドが回転し難くなるようにしているが、プランジャロッドに切欠部を形成する必要があるため、製造費が嵩む。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、プランジャロッドに切欠部を形成することなく、プランジャチップとプランジャロッドとの螺合の緩みを抑制することができるダイカスト用射出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のダイカスト用射出装置は、
ピストンロッドを有する射出シリンダと、
前記ピストンロッドに連結されたプランジャロッドと、
前記プランジャロッドに、前記プランジャロッドの中心軸線方向に並んで設けられ、冷却水用ポートの開口側から視認したときに同時に視認可能な2つの冷却水用ポートと、
前記プランジャロッドの先端に螺着されてスリーブ内に配置されるプランジャチップとを有し、
前記プランジャロッドには、前記プランジャロッド内に冷却水を循環させるための2つの冷却水用ホースが前記冷却水用ポートを介して接続されており、
前記スリーブ内に給湯された金属溶湯を前記プランジャチップによって金型キャビティ内に射出するダイカスト用射出装置において、
前記冷却水用ホースは、前記プランジャチップによって金属溶湯が射出される前進位置において前記プランジャロッドに対して前記プランジャチップとの螺合が締め付けられる締付方向への荷重のみが前記プランジャロッドに掛かるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、プランジャロッドが前進位置に位置する場合には、冷却水用ホースによるプランジャロッドへの周方向への押圧力又は引張力がプランジャロッドと金属溶湯によって回転不能なプランジャチップとの螺合を強めるように締め付ける力が加わることとなる。したがって、本発明によれば、プランジャロッドに切欠部を形成することなく、プランジャチップとプランジャロッドとの螺合の緩みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明の実施形態のダイカスト用射出装置が用いられるダイカスト金型を模式的に示す説明図。
図2】本実施形態の一実施例のダイカスト用射出装置をプランジャロッドが前進位置に位置した状態で模式的に示す説明図。
図3】本実施形態の他の実施例のダイカスト用射出装置をプランジャロッドが前進位置に位置した状態で模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図を参照して、発明の実施形態のダイカスト用射出装置を説明する。本実施形態のダイカスト用射出装置1は、図1に示すダイカスト金型10に用いられるものである。ダイカスト金型10は、固定型11と可動型12とを備えている。固定型11には、固定型11と可動型12とで画定される金型キャビティ13内に金属溶湯を供給するためのスリーブ14が設けられている。このスリーブ14に本実施形態のダイカスト用射出装置1の先端が挿入されている。
【0011】
図2を参照して、本実施形態のダイカスト用射出装置1は、ピストンロッド2を進退自在な射出シリンダ(図示省略)と、ピストンロッド2にカップリング3を介して連結されたプランジャロッド4と、プランジャロッド4の先端に螺着されてスリーブ14内に配置されるプランジャチップ5と、プランジャロッド4に設けられた2つの冷却水用ポート6を介してプランジャロッド4内に冷却水を循環させるための2本の冷却水用ホース7と、を備えている。
【0012】
ダイカスト用射出装置1は、射出シリンダ(図示省略)によってピストンロッド2を進退させることにより、スリーブ14内に供給された金属溶湯をプランジャチップ5によって金型キャビティ13内に射出することができる。
【0013】
ここで、ピストンロッド2が押し出されてプランジャチップ5が金型キャビティ13内の金属溶湯と接触している場合、プランジャチップ5が金属溶湯との間の摩擦抵抗により回転できないときがあり、このときプランジャロッド4が回転すると回転方向によってはプランジャチップ5との螺合が緩んでしまう場合がある。この場合、プランジャチップ5とプランジャロッド4の螺合状態を頻繁に確認する必要があって、メンテナンスが面倒である。
【0014】
そこで、本実施形態のダイカスト用射出装置1においては、プランジャチップ5によって金属溶湯が射出されるようにピストンロッド2が前方へ押し出されている状態の前進位置にプランジャチップ5が位置している場合において、プランジャロッド4に対してプランジャチップ5との螺合が締め付けられる締付方向への荷重がプランジャロッド4に掛かるように冷却水用ホース7が配置されている。
【0015】
例えば、図2を参照して、仮に冷却水用ポート6がプランジャロッド4から横方向に突出しており、更に、この状態から冷却水用ポート6が下方へ移動するようにプランジャロッド4が周方向に回転すると、金属溶湯で回転阻止されたプランジャチップ5とプランジャロッド4との螺合が締め付けられる状態であるとする。この場合、前進位置において、冷却水用ホース7によって冷却水用ポート6が下方へ引っ張られるように冷却水用ホース7を配置する。
【0016】
これにより、プランジャチップ5の回転が阻止された前進位置においては、冷却水用ホース7によって締付方向の回転力がプランジャロッド4に加えられるため、プランジャロッド4とプランジャチップ5との螺合が緩むことを防止又は抑制させることができる。なお、プランジャロッド4が前進位置に位置していない場合には、プランジャチップ5は金属溶湯と接触してないため、プランジャロッド4とともにプランジャチップ5も一体に回転し、螺合が緩むことはない。
【0017】
別の例として、図3を参照して、仮に冷却水用ポート6がプランジャロッド4から横方向に突出しており、更に、この状態から冷却水用ポート6が上方へ移動するようにプランジャロッド4が周方向に回転すると、金属溶湯で回転阻止されたプランジャチップ5とプランジャロッド4との螺合が締め付けられる状態であるとする。この場合、前進位置において、冷却水用ホース7によって冷却水用ポート6が上方へ押し上げられるように冷却水用ホース7を上下方向に押し縮められた状態で配置する。
【0018】
これにより、プランジャチップ5の回転が阻止された前進位置においては、冷却水用ホース7によって締付方向の回転力がプランジャロッド4に加えられるため、プランジャロッド4とプランジャチップ5との螺合が緩むことを防止又は抑制させることができる。
【0019】
なお、上述した2つの例では冷却水の供給源がプランジャロッド4よりも下方に位置していることを前提にしているため、冷却水用ポート6を下方へ下げる場合には冷却水用ホース7で引っ張り、上方へ上げる場合には冷却水用ホース7で押し上げると説明した。しかしながら、冷却水の供給源がプランジャロッド4よりも上方に位置している場合には、冷却水用ポート6を下方へ下げる場合には冷却水用ホース7で押し下げ、上方へ上げる場合には冷却水用ホース7で引っ張るように、冷却水用ホース7を配置すればよい。
【符号の説明】
【0020】
1 ダイカスト用射出装置
2 ピストンロッド
3 カップリング
4 プランジャロッド
5 プランジャチップ
6 冷却水用ポート
7 冷却水用ホース
10 ダイカスト金型
11 固定型
12 可動型
13 金型キャビティ
14 スリーブ
図1
図2
図3