(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】B7‐H3に特異的に結合する分子及びPD‐1に特異的に結合する分子
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231114BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231114BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231114BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28
C12N15/13
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2022013073
(22)【出願日】2022-01-31
(62)【分割の表示】P 2018517717の分割
【原出願日】2016-10-06
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2015-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッセリ ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィギントン ジョン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ボンビニ エツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ケーニッヒ スコット
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/026634(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/075483(WO,A1)
【文献】特表2013-520994(JP,A)
【文献】Critical Reviews in Oncology/Hematology,2014年,89,p.140-165
【文献】Clin. Cancer Res.,2012年,18(14),p.3834-3845
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7‐H3発現性癌を治療するための薬剤の組み合わせの調製における
、活性化されたT細胞、B細胞、又は単球の表面に発現するPD‐1に特異的に結合する抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片と組み合わせた癌細胞の表面に発現するB7‐H3に特異的に結合するヒト化抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片
、及び
活性化されたT細胞、B細胞、又は単球の表面に発現するPD‐1に特異的に結合する抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片の使用であって、
(A)前記薬剤の前記ヒト化抗B7‐H3抗体及び前記その抗原結合断片は、
(1)配列番号22のアミノ酸配列を含むヒト化軽鎖可変(VL)ドメイン;及び
(2)配列番号28のアミノ酸配列を含むヒト化重鎖可変(VH)ドメイン
を含み、及び
(B)前記薬剤の前記抗PD‐1抗体及び前記その抗原結合断片は、
(1)(a)配列番号43のアミノ酸配列を含む、ニボルマブの軽鎖可変ドメイン;及び
(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むニボルマブの重鎖可変ドメイン;
(2)(a)配列番号45のアミノ酸配列を含む、ペムブロリズマブの軽鎖可変ドメイン;及び
(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むペムブロリズマブの重鎖可変ドメイン;又は
(3)(a)配列番号58のアミノ酸配列を含む、抗PD-1抗体PD‐1 mAb 6‐ISQの軽鎖;及び
(b)配列番号59のアミノ酸配列を含む、抗PD-1抗体PD-1 mAb 6-ISQの重鎖;
を含み、及び
(C)(1)前記
ヒト化抗B7‐H3抗体又は
前記その抗原結合断片は、1~15mg/kg体重の投薬量で
1週間に1回投与され、及び
(2)前記抗PD‐1抗体又は
前記その抗原結合断片は、
(a)50mgから500mgの間の固定投薬量
で2又は3週間に1回投与され;又は
(b)1~10mg/kg体重の投薬量で2又は3週間に1回投与され;
前記ヒト化抗B7‐H3抗体又は前記その抗原結合断片を含む前記薬剤、及び前記抗PD‐1抗体又は前記その抗原結合断片を含む別個の前記薬剤が、同時に又は順次投与されるように適合されている、前記使用。
【請求項2】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は
、ニボルマブ
の重鎖可変ドメイン(配列番号42のアミノ酸配列)及び
ニボルマブの軽鎖可変ドメイン
(配列番号43のアミノ酸配列)を含む、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、ペムブロリズマブの重鎖可変ドメイン(配列番号44のアミノ酸配列)及びペムブロリズマブの軽鎖可変ドメイン(配列番号45のアミノ酸配列)を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、Fcドメイン中の、ADCC活性を増強する少なくとも1つの修飾を含む、変異型Fcドメインを備え、
前記修飾は、
(A)F243L、R292P、Y300L、V305I、及びP396Lからなる群から選択される、少なくとも1つの置換;
(B)(1)F243L及びP396L;
(2)F243L及びR292P;並びに
(3)R292P及びV305I;
からなる群から選択される、少なくとも2つの置換;
(C)(1)F243L、R292P及びY300L;
(2)F243L、R292P及びV305I;
(3)F243L、R292P及びP396L;並びに
(4)R292P、V305I及びP396L;
からなる群から選択される、少なくとも3つの置換;
(D)(1)F243L、R292P、Y300L及びP396L;並びに
(2)F243L、R292P、V305I及びP396L;
からなる群から選択される、少なくとも4つの置換;又は
(E)(1)F243L、R292P、Y300L、V305I及びP396L;並びに
(2)L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L
からなる群から選択される、少なくとも5つの置換;
を含む(番号付与はKabatの番号付与スキームに従う)、請求項
1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は:
(a
)Fcドメイン中の、ADCC活性を低減する若しくは消滅させる少なくとも1つの修飾を含む、変異型Fcドメイン
であって、前記修飾は、
(A)L234A、L235A;
(B)D265A;
(C)N297A;又は
(D)N297Q
の置換を含む(番号付与はKabatの番号付与スキームに従う)、
;又は
(b)IgG4 Fcドメイン
を含む、請求項1~
3及び5のいずれか1項に記載の使用
【請求項7】
前記抗B7‐H3抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む
、請求項1~
6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、50mgから500mgの間の固定投薬量で2又は3週間に1回投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、300mgの固定投薬量で2又は3週間に1回投与される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、200mgの固定投薬量で
2又は3週間に1回投与される、請求項
8に記載の使用。
【請求項11】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、1~10mg/kg体重の投薬量で2又は3週間に1回投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、1mg/kg体重、3mg/kg体重、10mg/kg体重又は15mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、15mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項
12に記載の使用。
【請求項14】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、1mg/kg体重、2mg/kg体重、3mg/kg体重又は10mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項
12に記載の使用。
【請求項15】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、3mg/kg体重、10mg/kg体重又は15mg/kg体重の投薬量で投与され、前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、2mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項
14に記載の使用。
【請求項16】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、3mg/kg体重、10mg/kg体重又は15mg/kg体重の投薬量で投与され、前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、3mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項
14に記載の使用。
【請求項17】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片は、3mg/kg体重、10mg/kg体重又は15mg/kg体重の投薬量で投与され、前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、10mg/kg体重の投薬量で投与される、請求項
14に記載の使用。
【請求項18】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は2週間毎に投与される、請求項1~
17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は3週間毎に投与される、請求項1~
17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片及び前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、IV点滴によって投与される、請求項1~
19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
3週間毎に、前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片及び前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片が48時間の期間内に投与される、請求項1~
17及び
19~
20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
2週間毎に、前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片及び前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片が48時間の期間内に投与される、請求項1~
18及び
20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記B7‐H3発現性癌は、頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、神経膠芽細胞腫、腎臓癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、咽頭癌、前立腺癌、腎細胞癌、小円形青色細胞腫瘍、神経芽細胞腫及び横紋筋肉腫からなる群から選択される、請求項
1~22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記B7‐H3発現性癌は、
(a)頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN);又は
(b)非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項
23に記載の使用。
【請求項25】
前記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片及び前記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片は、抗血管新生剤、抗新生物剤、化学療法剤及び細胞毒性剤からなる群から選択される第3の治療剤と更に組み合わせて投与される、請求項1~
24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記抗PD‐1抗体はペンブロリズマブである、請求項1~
25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記抗PD‐1抗体はニボルマブである、請求項1~
25のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許出願第62/239,020号(2015年10月8日出願;係属中)に対する優先権を主張するものであり、上記特許出願は、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
[配列表の参照]
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ又は複数の配列表を含み、これらの配列表は、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1301_129PCT_ST25.txt、2016年9月24日作成、サイズ:89,867バイト)において開示されており、上記ファイルは、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0003】
本発明は、癌及び/又は炎症の治療のために、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子とを被験者に投与することを伴う、併用療法を対象とする。本発明はまた、多様なヒトの癌のうちのいずれに関連する癌細胞に対する免疫系の活性化を仲介でき、より好ましくは増強できる、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子とを含む医薬組成物にも関する。本発明はまた、レシピエント被験者の癌及び他の疾患を治療するための、上述のような医薬組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍の成長及び転移は、これらが宿主の免疫監視機構を回避して宿主の防御を克服する能力に大きく左右される。ほとんどの腫瘍は、宿主の免疫系によって程度が可変であると認識できる抗原を発現するが、多くの場合、エフェクタT細胞の無効な活性化により、不十分な免疫応答が誘発される(非特許文献1)。
【0005】
A.B7スーパーファミリー及びB7‐H3
B7ファミリーのメンバーは、免疫グロブリン‐V様及び免疫グロブリン‐C様ドメイン(例えばIgV‐IgC)を有する、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである(非特許文献2)。B7ファミリーのメンバーのIgV及びIgCドメインはそれぞれ単一のエクソンによってコードされ、追加のエクソンがリーダ配列、膜貫通及び細胞質ドメインをコードする。細胞質ドメインは短く、アミノ酸残基19~62個の長さであり、複数のエクソンによってコードできる(非特許文献3)。B7ファミリーのメンバーは、細胞表面において連続した非共有結合ホモ二量体を形成すると予測され、このような二量体はB7‐1(CD80)及びB7‐2(CD86)に関して発見されている。B7‐1(CD80)及びB7‐2(CD86)は、刺激性CD28受容体及び阻害性CTLA‐4(CD152)受容体に対する二重特異性を呈する(非特許文献8)。
【0006】
B7‐H3は、主要なヒト型が2つの細胞外タンデムIgV‐IgCドメイン(即ちIgV-IgC-IgV-IgC)を含有する点において独特である(非特許文献3)。4免
疫グロブリン細胞外ドメイン変異体(「4Ig‐B7‐H3」)は、最初はIgドメイン(IgV-IgC)を2つだけ含むと考えられていた(非特許文献4、5)が、上記タン
パク質のより一般的なヒト型であることが同定され、発見された(非特許文献2)しかしながら、天然のマウス型2Ig及びヒト4Ig型は、同様の機能を呈する(非特許文献6)。4Ig‐B7‐H3分子は、癌細胞のナチュラルキラー細胞媒介性溶解を阻害する(非特許文献7)。ヒトB7‐H3(2Ig型)は、活性化されるT細胞上の推定受容体に結合することにより、T細胞の活性化及びIFN‐γ産生を促進することが分かっている
(非特許文献4、8)。B7‐H4及びB7‐H1の両方は、腫瘍細胞上に発現した場合、免疫機能の潜在的阻害因子となる(非特許文献9)。
【0007】
B7‐H3の作用の態様は複雑である。というのは、このタンパク質はT細胞共刺激及び共阻害の両方を仲介するためである(非特許文献6、10、11)。B7‐H3は(TREM)様転写体2(TLT‐2)に結合して、T細胞活性化を共刺激するが、まだ識別されていない1つ又は複数の受容体に結合して、T細胞の共阻害を媒介する。更にB7‐H3は、1つ又は複数の未知の受容体との相互作用により、ナチュラルキラー細胞及び骨芽細胞の阻害因子となる(非特許文献6)。上記阻害は、T細胞受容体(TCR)が遺伝子転写を制御するための主要な信号伝達経路のメンバー(例えばNFTA、NF‐κB、又はAP‐1因子)との相互作用によって作用し得る。
【0008】
B7‐H3はCD4+及びCD8+T細胞の増殖を共刺激する。B7‐H3はまた、IFN‐γ産生及びCD8+溶解活性を刺激する(非特許文献4、2)。しかしながらこのタンパク質はまた、NFAT(nuclear factor for activated T cell:活性化されたT細胞のための核内因子)、NF‐κB(核内因子カッパB)、AP‐1(アクティベータタンパク質‐1)因子によって、T細胞活性化を阻害するよう作用する場合がある(非特許文献12)。B7‐H3はまた、Th1、Th2、又はTh17をインビボで阻害するとも考えられている(非特許文献13、14、12)。いくつかの独立した研究は、ヒト悪性腫瘍細胞がB7‐H3タンパク質の発現の著しい上昇を呈すること、この著しい発現が、疾患の重篤度の上昇に関連すること(非特許文献15)を示しており、これはB7‐H3が腫瘍により、免疫回避経路として悪用されていることを示唆している(非特許文献6)。
【0009】
B7分子がT細胞受容体(例えばCD28)に結合する能力をブロックする分子は、免疫系を阻害し、自己免疫疾患の治療法として提案されている(非特許文献16)。抗4Ig‐B7‐H3抗体で治療される、4Ig‐B7‐H3を発現する神経芽腫細胞は、NK細胞に対して感受性がより高かった。しかしながら、この活性が、4Ig‐B7‐H3型に対する抗体のみによるものとすることができるかどうかは不明である。というのは、4Ig‐B7‐H3に対して産生された、報告された抗体は全て、B7‐H3の上記2つのIg様形態にも結合したためである(非特許文献17、7)。
【0010】
B7‐H3は静置されたB若しくはT細胞、単球又は樹状細胞上では発現しないが、IFN‐γによって樹状細胞上に、またGM‐CSFによって単球上に誘発される(非特許文献2)。B7‐H3と結合する1つ又は複数の受容体は、完全には特性決定されていない。以前の研究は、1つのこのような受容体が、活性化後にT細胞上で迅速かつ過渡的に上方制御される必要があることを示唆していた(非特許文献18)。最近、骨髄性細胞上で発現する(TREM)様転写体2(TLT‐2、又はTREML2)受容体(非特許文献19、20、12)は、B7‐H3と結合でき、またこれによって特にCD8+T細胞の活性化を共刺激できることが分かっている(非特許文献21、22、6)。
【0011】
神経芽細胞腫細胞上での発現に加えて、ヒトB7‐H3は、多様な癌及び培養された癌幹様細胞で過剰発現する。特にB7‐H3は:SCCHN(そのレベルは、遠隔転移の発現及び生存率の低下に正比例する)(非特許文献23);膀胱癌(非特許文献24);前立腺癌(B7‐H3の発現は、転移挙動及び不良な転帰に関連する)(非特許文献25、26);腎細胞癌(B7‐H3は腫瘍脈管構造に広く発現する)(非特許文献27);卵巣癌(非特許文献28);結腸直腸癌(非特許文献29);胃癌(非特許文献30);非小細胞肺癌(一次腫瘍におけるレベルが高いほど、転移性疾患の可能性が高い)(非特許文献31);神経膠芽細胞腫(非特許文献32);黒色腫(レベルが高いほど、腫瘍のステージが高く、生存期間が短くなる)(非特許文献33、34);並びに神経芽細胞腫及
び横紋筋肉腫を含む特定の小児期の小円形青色細胞腫瘍(small round blue cell tumor)(非特許文献35)を含む多数の悪性新生物上で広く過剰発現する。
【0012】
B.PD‐1
プログラム死‐1(「PD‐1」)は、免疫応答を幅広く下方制御するT細胞制御因子の拡張CD28/CTLA4ファミリーの、およそ31kDのI型膜タンパク質メンバーである(非特許文献36、特許文献1~9)。
【0013】
PD‐1は、活性化されたT細胞、B細胞及び単球上で(非特許文献37、38)、並びにナチュラルキラー(NK)T細胞中において低レベルで(非特許文献39、10)、発現する。
【0014】
PD‐1の細胞外領域は、CTLA4の同等のドメインに対して23%の同一性を有する単一免疫グロブリン(Ig)Vドメインで構成される(非特許文献10)。細胞外IgVドメインには、膜透過性領域及び細胞内テールが続く。細胞内テールは、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ及び免疫受容体チロシン系スイッチモチーフ内に位置する2つのリン酸化部位を含有し、これは、PD‐1がTCRシグナルを下方制御することを示唆している(非特許文献36、40)。
【0015】
PD‐1は、PD‐L1及びPD‐L2への結合によって、免疫系の阻害を仲介する(非特許文献9、特許文献10~17)。
【0016】
PD‐L1及びPD‐L2は、心臓、胎盤、筋肉、胎児の肝臓、脾臓、リンパ節及び胸腺、並びにマウスの肝臓、肺、腎臓、膵臓の島細胞及び小腸といった、ヒト及びマウス組織の表面上で広く発現する(非特許文献10)。ヒトでは、PD‐L1タンパク質発現は、ヒト内皮細胞(非特許文献41、42、43)、心筋(非特許文献44)、合胞体栄養細胞(非特許文献45)において見られた。上記分子はまた、いくつかの組織の常在性マクロファージによって、インターフェロン(IFN)‐γ又は腫瘍壊死因子(tumor
necrosis factor:TNF)‐αによって活性化されたマクロファージによって(非特許文献46)、及び腫瘍内において(非特許文献47)も発現される。
【0017】
PD‐L1とPD‐1との間の相互作用は、T及びB細胞に対する重大な下方共刺激シグナル(非特許文献10)、並びに細胞死誘導因子としての機能(非特許文献36、11)を提供することが分かっている。より具体的には、低濃度のPD‐1受容体とPD‐L1リガンドとの間の相互作用は、抗原特異性CD8+T細胞の増殖を強く阻害する阻害シ
グナルの伝達をもたらすことが分かっており;高濃度では、PD‐1との相互作用はT細胞増殖を阻害しないものの、複数のサイトカインの産生を明らかに低減させる(非特許文献2)。休止CD4及びCD8 T細胞並びに既に活性化されたCD4及びCD8 T細胞の両方、更には臍帯血由来のナイーブT細胞による、T細胞増殖及びサイトカイン産生は、可溶性PD‐L1‐Fc融合タンパク質によって阻害されることが分かっている(非特許文献48、46、49、2)。
【0018】
T細胞活性化及び増殖におけるPD‐L1及びPD‐1の役割は、これらの生体分子が、炎症及び癌の治療のための治療標的として機能し得ることを示唆している。従って、感染及び腫瘍の治療並びに適応免疫応答の上方調節のための抗PD‐1抗体の使用が提案されている(特許文献18、19、20、2、21、22、23、24、25、26を参照)。PD‐1に特異的に結合できる抗体は、非特許文献20及び35によって報告されている(特許文献27、28、29、30、31、32、33、34、35、27、25、36、25、37、38、39、26、40、41、42、43、44も参照)。
【0019】
C.B7‐H3発現性癌
B7‐H3の過剰発現は、多様な癌及び培養された癌幹様細胞で発生する。上述のように、B7‐H3の過剰発現は、疾患の再発の増加及び不良予後に強く関連する。しかしながらB7‐H3は、受容体の細胞外ドメインを標的とするモノクローナル抗体を含む抗B7‐H3薬剤の強力な標的である。B7‐H3に特異的に結合する抗体及び他の分子は、既に記載されている(特許文献45~66;非特許文献50、51、32、17、8を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】米国特許出願公開第2007/0202100号
【文献】米国特許出願公開第2008/0311117号
【文献】米国特許出願公開第2009/00110667号
【文献】米国特許第6,808,710号
【文献】米国特許第7,101,550号
【文献】米国特許第7,488,802号
【文献】米国特許第7,635,757号
【文献】米国特許第7,722,868号
【文献】国際公開第01/14557号
【文献】米国特許第6,803,192号
【文献】米国特許第7,794,710号
【文献】米国特許出願公開第2005/0059051号
【文献】米国特許出願公開第2009/0055944号
【文献】米国特許出願公開第2009/0274666号
【文献】米国特許出願公開第2009/0313687号
【文献】国際公開第01/39722号
【文献】国際公開第02/086083号
【文献】米国特許公開第2010/0040614号
【文献】米国特許公開第2010/0028330号
【文献】米国特許公開第2004/0241745号
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【非特許文献】
【0021】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これらの進歩にもかかわらず、B7‐H3を発現する癌を治療するため、及びこのような癌に対する免疫応答を促進又は仲介するための、改善された両方に対する需要が存在し続けている。適応免疫系は、癌及び疾患に対する強力な防護機構であり得るものの、共阻害性分子の発現等の、腫瘍の微環境中の免疫抑制機構によって妨げられる場合がある。更に、腫瘍環境において腫瘍細胞、免疫細胞及び間質細胞が発現する共阻害性分子は、癌細胞に対するT細胞応答を支配的に弱化させる場合がある。よって、癌細胞の表面上の標的を特異的に認識し、またこれによって、T細胞の活性化、免疫応答の刺激及びB7‐H3を発現する癌細胞の殺滅を仲介できる、新規の組み合わせ及び治療レジメンに対して、更なる需要が存在している。このような組成物及び治療レジメンを同定することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、癌及び炎症の治療のために、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子(即ちB7‐H3結合分子)と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子(即ちPD‐1結合分子)とを被験者に投与することを伴う、併用療法を対象とする。本発明はまた、多様なヒトの癌に関連する癌細胞に対する免疫系の活性化を仲介でき、より好ましくは増強できる、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子とを含む医薬組成物にも関する。本発明はまた、癌及び他の疾患を治療するための、上述のような医薬組成物の使用にも関する。
【0024】
詳細には、本発明は、B7‐H3に特異的に結合する分子と、PD‐1に特異的に結合する分子とを、それを必要とする被験者に投与するステップを含む、癌の治療方法を提供する。
【0025】
本発明は特に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子が、抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片であり、PD‐1に特異的に結合する上記分子が、抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片である、上述のような方法の実施形態に関する。
【0026】
本発明は特に、上記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片が:
(a)B7‐H3結合に関して、BRCA84D、BRCA69D、PRCA157と、若しくは表5から選択される抗B7‐H3抗体と競合し;又は
(b)BRCA84D、hBRCA84D(1.1)、hBRCA84D(2.2)、hBRCA84D‐2、hBRCA69D(1.1)、hBRCA(2.2)の3つの重
鎖CDR及び3つの軽鎖CDR、若しくは表5から選択される抗B7‐H3抗体の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを有し;又は
(c)BRCA84D、hBRCA84D(1.1)、hBRCA84D(2.2)、hBRCA84D‐2、hBRCA69D(1.1)、hBRCA(2.2)の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン、若しくは表5から選択される抗B7‐H3抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有する、
上述のような方法の実施形態に関する。
【0027】
本発明は特に、上記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片が:
(a)PD‐1結合に関して、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb7、PD‐1 mAb 8と、若しくは表6から選択される抗PD‐1抗体と競合し;又は
(b)ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb7、PD‐1 mAb 8の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR、若しくは表6から選択される抗PD‐1抗体の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを有し;又は
(c)ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb7、PD‐1 mAb 8の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン、若しくは表6から選択される抗PD‐1抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有する、
上述のような方法の実施形態に関する。
【0028】
本発明は更に、上記抗B7‐H3抗体若しくはその抗原結合断片がFcドメインを備える、及び/又は上記抗PD‐1抗体若しくはその抗原結合断片がFcドメインを備える、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、上記抗B7‐H3抗体又はその抗原結合断片が、上記Fcドメイン中の、ADCCを増強する1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ以上の修飾を有する変異型Fcドメインを備える、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、ADCCを増強する上記Fcドメイン修飾が、置換L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396Lのうちのいずれの1つ、いずれの2つ、いずれの3つ、いずれの4つ又は5つ全てを含む、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、上記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片が:(a)上記Fcドメイン中の、ADCC活性を低減する若しくは消滅させる少なくとも1つの修飾を有する、変異型Fcドメイン;又は(b)IgG4 Fcドメインを備える、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、ADCCを低減する又は消滅させる上記Fcドメイン修飾は、好ましくはIgG1 Fcドメインの、L234A;L235A;又はL234A及びL235Aの置換を含む、上述のような方法の実施形態に関する。
【0029】
本発明は更に、上記抗B7‐H3抗体がhBRCA84D‐2であり、上記抗PD‐1抗体がニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ又はPD‐1 mAb 6‐ISQである、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、上記抗B7‐H3抗体がhBRCA84D‐2であり、上記抗PD‐1抗体又はその抗原結合断片が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb 7、PD‐1 mAb 8、又は表6から選択される抗PD‐1抗体のVH及びVLを含む、上述のような方法の実施形態に関する。
【0030】
本発明は更に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に1~15mg/kg体重の投薬量で投与され、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明はまた、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に1~15mg/kg体重の投薬量で投与さ
れ、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、2又は3週間毎に1~10mg/kg体重の投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg及び15mg/kg体重から選択される投薬量で投与され、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg及び15mg/kg体重から選択される投薬量で投与され、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、2又は3週間毎に1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg及び10mg/kg体重から選択される投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は特に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に3mg/kg、10mg/kg及び15mg/kg体重から選択される投薬量で投与され、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、3週間毎に2mg/kg体重の投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は特に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)が、1週間毎に3mg/kg、10mg/kg及び15mg/kg体重から選択される投薬量で投与され、PD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、2週間毎に3mg/kg体重の投薬量で投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)及びPD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、IV点滴によって投与される、上述のような方法の実施形態に関する。本発明はまた、2又は3週間毎に、B7‐H3に特異的に結合する上記分子(特に抗B7‐H3抗体)及びPD‐1に特異的に結合する上記分子(特に抗PD‐1抗体)が、48時間の期間投与される、上述のような方法の実施形態に関する。
【0031】
本発明は特に、上記癌が、B7‐H3を発現する癌である、上述のような方法の実施形態に関する。本発明は更に、上記癌が、B7‐H3を発現する頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、神経膠芽細胞腫、腎臓癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、咽頭癌、前立腺癌、腎細胞癌、小円形青色細胞腫瘍、神経芽細胞腫又は横紋筋肉腫である、上述のような方法の実施形態に関する。
【0032】
本発明は更に、第3の治療剤を投与するステップを更に含み、特に上記第3の治療剤は、抗血管新生剤、抗新生物剤、化学療法剤又は細胞毒性剤である、上述のような方法の実施形態に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、癌及び/又は炎症の治療のために、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子とを被験者に投与することを伴う、併用療法を対象とする。本発明はまた、多様なヒトの癌のうちのいずれに関連する癌細胞に対する免疫系の活性化を仲介でき、より好ましくは増強できる、ヒトB7‐H3に特異的に結合する第1の分子と、ヒトPD‐1に特異的に結合する第2の分子とを含む医薬組成物にも関する。本発明はまた、レシピエント被験者の癌及び他の疾患を治療するための、上述のような医薬組成物の使用にも関する。
【0034】
A.抗体
1.抗体
「抗体(antibody)」は、当該免疫グロブリン分子の可変ドメインに位置する少なくとも1つの抗原認識部位によって、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の標的(「抗原(antigen)」)に免疫特異的に結合できる、免疫グロブリ
ン分子である。よって、上記標的分子が「抗原」である一方で、上記抗原の、抗体によって認識されて上記抗体が結合する部分は「エピトープ(epitope)」である。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、完全なポリクローナル又はモノクローナル抗体、ラクダ化抗体、短鎖抗体、並びに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id及び抗抗Id抗体を含む)だけでなく、これらの突然変異体、自然に発生する変異型、必要な免疫特異性のエピトープ結合部位を備える融合タンパク質、ヒト化抗体、及びキメラ抗体、並びに必要な免疫特異性の抗原認識部位を備える免疫グロブリン分子の他のいずれの修飾された構成を包含する。本明細書において使用される場合、抗体の「抗原結合断片(antigen‐binding fragment)」は、そのアミノ酸配列が当該抗原に対して特異的な抗体の少なくとも1つのエピトープ結合部位を備える、免疫グロブリンである。本明細書において使用される場合、この用語は、断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)2Fv)、ジスルフィド結合した二重特異性
Fv(sdFv)、細胞内抗体、及び短鎖分子(例えばscFv)を包含する。特に抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の断片、即ちエピトープ結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのものとすることができる。
【0035】
天然抗体(IgG抗体等)は、2つの重鎖と複合体化した2つの軽鎖からなる。各軽鎖は、可変軽鎖(VL)ドメイン及び定常軽鎖(CL)ドメインを含有する。各重鎖は、可変重鎖(VH)ドメイン、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)、並びにCH1ドメインとCH2ドメインとの間に位置するヒンジドメインを含有する。従って、自然に発生する免疫グロブリン(例えばIgG)の基本構造単位は、通常は約150,000Daの糖タンパク質として発現される、軽鎖及び2つの重鎖を有する三量体である。各ポリペプチド鎖のアミノ末端部分は、その可変(「V」)ドメインを含み、これは100~110以上のアミノ酸であり、抗原認識において主要な役割を果たす。各ポリペプチド鎖のカルボキシ末端部分は、鎖の定常(「C」)ドメインを定義する。よって、(N末端からC末端への方向における)IgG分子の軽鎖の構造は:VL‐CLであり、(N末端からC末端への方向における)IgG重鎖の構造は:VH‐CH1‐ヒンジ‐CH2‐CH3である。
【0036】
完全な未修飾抗体(例えばIgG抗体)の、抗原のエピトープに結合する能力は、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖上の可変ドメイン(即ちそれぞれVLドメイン及びVHドメイン)の存在に左右される。抗体軽鎖と抗体重鎖との相互作用、及び特にそのVLドメインとVHドメインとの相互作用により、抗体のエピトープ結合部位のうちの1つが形成される。IgG分子の可変ドメインは、エピトープと接触した残基を含有する複数の相補性決定領域(CDR)、及びフレームワークセグメント(FR)と呼ばれる非CDRセグメントからなり、上記フレームワークセグメントは、一般にCDRループの構造を維持してCDRの位置を決定することにより、このような接触を可能とする(ただし特定のフレームワーク残基も抗原に接触し得る)。従って、VLドメインは、(N末端からC末端への方向における)構造:FRH1‐CDRL1‐FRL2‐CDRL2‐FRL3‐CDRL3‐FRL4を有し、VHドメインは、(N末端からC末端への方向における)構造:FRH1‐CDRH1‐FRH2‐CDRH2‐FRH3‐CDRH3‐FRH4を有する。抗体軽鎖の第1、第2及び第3のCDRである(又はこれらとして機能し得る)ポリペプチドを、本明細書ではCDRL1ドメイン、CDRL2ドメイン、及びCDRL3ドメインと称する。同様
に、抗体重鎖の第1、第2及び第3のCDRである(又は第1、第2及び第3のCDRとして機能し得る)ポリペプチドは、本明細書ではそれぞれCDRH1ドメイン、CDRH2ドメイン及びCDRH3ドメインと呼ばれる。よって、CDRL1ドメイン、CDRL2ド
メイン、CDRL3ドメイン、CDRH1ドメイン、CDRH2ドメイン、及びCDRH3ド
メインという用語は、あるタンパク質に組み込まれた場合に、当該タンパク質が、軽鎖及び重鎖若しくは単鎖結合分子(例えばscFv、BiTe等)を有する抗体であるか、又は別のタイプのタンパク質であるかにかかわらず、当該タンパク質を、特定のエピトープに結合できるようにする、ポリペプチドを対象としている。このような抗体とは対照的に、scFV構成は、単一のポリペプチド鎖に含有される抗体のVL及びVHドメインを備え、ここで上記ドメインは、これら2つのドメインが1つの官能性エピトープ結合部位へと自己集合することを可能とするために十分な長さの、可撓性リンカーによって隔てられる。長さが不十分な(約12アミノ酸残基未満の)リンカーによって、VL及びVHドメインの自己集合が不可能となると、scFV構成のうちの2つが互いに相互作用して、一方の鎖のVLが他方の鎖のVHと連結した2価分子が形成され得る(Marvin et al. (2005) “Recombinant Approaches To IgG-Like Bispecific Antibodies,” Acta Pharmacol.
Sin. 26:649-658において報告されている)。
【0037】
抗体は、診断学におけるその公知の使用法に加えて、治療剤として有用であることが示されている。この数十年、抗体の治療的潜在能力に対する関心が再び高まっており、抗体は、生命工学由来の薬剤の筆頭となるクラスの1つとなっている(Chan, C.E. et al. (2009) “The Use Of Antibodies In The Treatment Of Infectious Diseases,” Singapore Med. J. 50(7):663-666)。200近い抗体系薬剤が使用認可済み、又は開発中である
。
【0038】
用語「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」は均質な抗体の集団を指し、上記モノクローナル抗体は、抗原の選択的結合に関わる(自然に発生する又は自然に発生しない)アミノ酸から構成される。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一のエピトープ(又は抗原部位)に対して指向性を有する。用語「モノクローナル抗体」は、完全なモノクローナル抗体及び全長モノクローナル抗体だけでなく、これらの断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等)、単鎖(scFv)、その突然変異体、
抗体部分を備える融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及び必要な免疫特異性及び抗原への結合能力を有する抗原認識部位を備える免疫グロブリン分子の他のいずれの修飾構成を包含する。抗原の源又は抗原を作製する方法(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え発現、遺伝子導入動物等による)に関して、限定は意図されていない。この用語は、免疫グロブリン全体、及び「抗体」の定義において上述した断片等を含む。モノクローナル抗体の作製方法は当該技術分野において公知である。採用してよい1つの方法は、Kohler, G. et al. (1975) “Continuous Cultures
Of Fused Cells Secreting Antibody Of Predefined Specificity,” Nature 256:495-497の方法又はその修正例である。典型的には、モノクローナル抗体はマウス、ラット又はウサギにおいて発現する。上記抗体は、動物を、所望のエピトープを含有する免疫原性量の細胞、細胞抽出物又はタンパク製剤で免疫化することによって産生される。免疫原は、一次細胞、培養された細胞株、癌細胞、タンパク質、ペプチド、核酸又は組織とすることができるが、これらに限定されない。免疫化に使用してよい細胞は、これらを免疫原として使用するよりもある期間(例えば少なくとも24時間)だけ前に、培養してよい。細胞は単独で、又はRibi等の非変性アジュバントと組み合わせて、免疫原として使用してよい(Jennings, V.M. (1995) “Review of Selected Adjuvants Used in Antibody Production,” ILAR J. 37(3):119-125を参照)。
【0039】
一般に細胞は、免疫原として使用される際、完全な状態、及び好ましくは生存できる状態に維持しなければならない。完全な細胞は、破裂した細胞よりも、免疫性を与えられた動物が抗原をより良好に検出できるようにすることができる。変性又は強いアジュバント、例えばフロイントアジュバントの使用は、細胞を破裂させる場合があり、従って推奨されない。免疫原は、2週間に1回若しくは1週間に1回等、周期的な間隔で複数回投与してよく、又は動物中(例えば組織組み換え中)に生存能力を維持できるように投与してよい
。あるいは、所望の病原性エピトープに対する免疫特異性を有する既存のモノクローナル抗体及び他の同等の抗体は、当該技術分野で公知のいずれの手段によって、組み換え配列及び産生できる。一実施形態では、このような抗体を配列し、続いてポリヌクレオチド配列を発現又は繁殖のためのベクターにクローン化する。関心対象の抗体をエンコードする配列は、宿主細胞中のベクター中に保持され、続いて上記宿主細胞を、将来使用するために膨張させて冷凍できる。このような抗体のポリヌクレオチド配列は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはイヌ化抗体を生成するため、又は抗体の親和性若しくは他の特徴を改善するための、遺伝子操作のために使用してよい。用語「ヒト化(humanized)」抗体は、キメラ分子であって、一般に組み換え技術を用いて調製され、非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位と、残りの、ヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づく分子の免疫グロブリン構造とを有する、キメラ分子を指す。本発明の抗ヒトPD‐1抗体は、抗体PD‐1 mAb 1、PD‐1 mAb 2、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 4、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb 7、PD‐1 mAb 8、PD‐1 mAb 9、PD‐1 mAb 10、PD‐1 mAb 11、PD‐1 mAb 12、PD‐1 mAb 13、PD‐1
mAb 14又はPD‐1 mAb 15の、ヒト化、キメラ又はイヌ化変異体を含む。このような抗体の可変ドメインのポリヌクレオチド配列は、上記誘導体を生成するため及び上記抗体の親和性又は他の特徴を改善するための遺伝子操作のために使用できる。抗体をヒト化する際の一般原理は、抗体の抗原結合部分の塩基配列を保持しながら、抗体の非ヒト残部をヒト抗体配列と交換するステップを伴う。モノクローナル抗体をヒト化するためには、4つの一般的なステップが存在する。上記ステップは以下の通りである:(1)開始抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインのヌクレオチド及び予測されるアミノ酸配列を決定するステップ;(2)ヒト化抗体又はイヌ化抗体を設計するステップ、即ちヒト化又はイヌ化プロセス中に使用する抗体フレームワーク領域を決定するステップ;(3)実際のヒト化又はイヌ化法/技術;並びに(4)ヒト化抗体のトランスフェクション及び発現。例えば米国特許第4,816,567号;米国特許第5,807,715号;米国特許第5,866,692号;及び米国特許第6,331,415号を参照。
【0040】
このような抗体のエピトープ結合部位は、定常ドメインに融合する完全な可変ドメイン、又は上記可変ドメイン中で適切なフレームワーク領域にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみを備えてよい。抗原結合部位は野生型であってよく、又は1つ若しくは複数のアミノ酸置換によって修飾してよい。これにより、ヒト個体の免疫原である定常領域が排除されるが、外来可変領域の可能性は残る(LoBuglio, A.F. et al. (1989) “Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man: Kinetics And Immune Response,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 86:4220‐4224)。別のアプローチは、ヒト由来定常領域
を提供することだけでなく、上記可変領域をヒト形態に可能な限り近くなるように変形させるために上記可変領域を修飾することにも、焦点を当てている。重鎖及び軽鎖両方の可変領域は、問題となる抗原に応答して変化して結合能力を決定する、4つのフレームワーク領域(FR)が隣接する3つの相補性決定領域(CDR)を内包することが知られており、上記フレームワーク領域は、ある所与の種において相対的に保存され、またCDRのための足場を提供するものと推定される。ある特定の抗原に対して非ヒト抗体を調製する際、非ヒト抗体由来のCDRを、修飾されるヒト抗体内に存在するFRに移植することによって、可変領域を「再成形」又は「ヒト化」できる。様々な抗体に対するこのアプローチの適用は、Sato, K. et al. (1993) “Reshaping A Human Antibody To Inhibit The Interleukin 6‐Dependent Tumor Cell Growth,” Cancer Res 53:851‐856. Riechmann, L. et al. (1988) “Reshaping Human Antibodies for Therapy,” Nature 332:323‐327; Verhoeyen, M. et al. (1988) “Reshaping Human Antibodies: Grafting An Antilysozyme Activity,” Science 239:1534‐1536; Kettleborough, C. A. et al. (1991) “Humanization Of A Mouse Monoclonal Antibody By CDR‐Grafting: The Importance Of Framework残基 On Loop Conformation,” Protein Engineering 4:773‐3783; Maeda, H. e
t al. (1991) “Construction Of Reshaped Human Antibodies With HIV‐Neutralizing Activity,” Human Antibodies Hybridoma 2:124‐134; Gorman, S. D. et al. (1991)
“Reshaping A Therapeutic CD4 Antibody,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88:4181‐4185; Tempest, P.R. et al. (1991) “Reshaping A Human Monoclonal Antibody To Inhibit Human Respiratory Syncytial Virus Infection in vivo,” Bio/Technology 9:266‐271; Co, M. S. et al. (1991) “Humanized Antibodies For Antiviral Therapy,
” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88:2869‐2873; Carter, P. et al. (1992) “Humanization Of An Anti‐p185her2 Antibody For Human Cancer Therapy,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 89:4285‐4289; 及びCo, M.S. et al. (1992) “Chimeric And Humanized Antibodies With Specificity For The CD33 Antigen,” J. Immunol. 148:1149
‐1154によって報告されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体からの6つのCDR全てを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、オリジナルの抗体に対して配列が異なる改変された1つ又は複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ)を有する。
【0041】
非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を備える多数の「ヒト化(humanized)」抗体分子が説明されており、これらは、げっ歯類又は修飾げっ歯類V領域と、ヒト定常ドメインに融合した、これらに関連する相補性決定領域(CDR)とを有するキメラ抗体を含む(例えばWinter et al. (1991) “Man-made Antibodies,” Nature 349:293-299; Lobuglio et al. (1989) “Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody In Man: Kinetics And Immune Response,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 86:4220-4224 (1989); Shaw et al. (1987) “Characterization Of A Mouse/Human Chimeric Monoclonal Antibody (17-1A) To A Colon Cancer Tumor-Associated Antigen,” J. Immunol. 138:4534-4538;及びBrown et al. (1987) “Tumor-Specific Genetically Engineered Murine/Human Chimeric Monoclonal Antibody,” Cancer Res. 47:3577-3583を参照)。他の参照文献は、適切なヒト抗体定常ドメインと融合する前にヒト支持性フレームワーク領域(FR)にグラフと重合される、げっ歯類CDRについて説明している(例えば、Riechmann, L. et al. (1988) “Reshaping Human Antibodies for Therapy,” Nature 332:323-327; Verhoeyen, M. et al. (1988) “Reshaping Human Antibodies: Grafting An Antilysozyme Activity,” Science 239:1534-1536;及びJones et al. (1986) “Replacing The Complementarity-Determining Regions In A Human Antibody With Those From A Mouse,” Nature 321:522-525を参照)。別の参照文献は、組み換えによってベニアリングされたげっ歯類フレームワーク領域によって支持されたげっ歯類CDRについて説明している。例えば欧州公開特許第519,596号を参照。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエントのこれらの部分の治療的応用の期間及び効果を制限する、げっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫学的応答を最小化するよう設計される。抗体をヒト化するために利用してよい他の方法は、Daugherty et al. (1991) “Polymerase Chain Reaction Facilitates The Cloning, CDR-Grafting, And Rapid Expression Of A マウスMonoclonal Antibody Directed Against The CD18 Component Of Leukocyte Integrins,” Nucl. Acids
Res. 19:2471-2476並びに米国特許第6,180,377号;米国特許第6,054,297号;米国特許第5,997,867号;及び米国特許第5,866,692号によって開示されている。
【0042】
2.二重特異性抗体
天然抗体は、1つのエピトープ種にのみ結合できる(即ちこれらは「単一特異性(mono‐specific)」である)が、これらは上記種の複数の複製に結合できる(即ち2価性又は多価性を示してよい)。抗体の機能性は、2つの別個の異なる抗原(若しくは同一の抗原の異なるエピトープ)に同時に結合できる多重特異性抗体ベースの分子を生成することにより、並びに/又は同一のエピトープ及び/若しくは抗原に関してより高い価(即ち3つ以上の結合部位)を有する抗体ベースの分子を生成することにより、増強で
きる。
【0043】
多様な組み換え二重特異性及び三重特異性抗体フォーマットが開発されており(例えば米国特許第8,277,806号;米国特許第6,994,853号;米国特許第6,551,592号;及び米国特許第6,171,586号;米国公開特許第2010‐0291112号及び米国公開特許第2008‐0057054号;並びに国際公開第2013/070565号、国際公開第2012/156430号、国際公開第2012/009544号、国際公開第2009/132876号、国際公開第2009/018386号、国際公開第2008/003116号、国際公開第2008/003103号、国際公開第2007/146968号、国際公開第2006/072152号、国際公開第2002/020039号、国際公開第2000/018806号;国際公開第1999/042597号、国際公開第1998/006749号、及び国際公開第1998/003670を参照)、これらの大半は、抗体コア(IgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgM)を上記抗体コアに対する若しくは上記抗体コア内の更なるエピトープ結合部位(例えばscFv、VL、VH等)と融合させるため、又は複数のエピトープ結合部位(例えば2つのFab断片若しくはscFv)を互いに融合させるために、リンカーペプチドを使用する。代替的なフォーマットは、リンカーペプチドを用いて、エピトープ結合部位(例えばscFv、VL、VH等)を、CH2‐CH3ドメイン等の二量体ドメイン又は代替的なポリペプチドと融合させる(国際公開第2005/070966号、国際公開第2006/107786A号、国際公開第2006/107617A号、国際公開第2007/046893号)。国際公開第2013/174873号、国際公開第2011/133886号、及び国際公開第2010/136172号は、CL及びCH1ドメインがそれぞれの自然な位置から切り替わり、VL及びVHドメインが多様化する(国際公開第2008/027236号;国際公開第2010/108127号)ことによって、2つ以上の抗原への結合が可能となった、三重特異性抗体を教示している。国際公開第2013/163427号及び国際公開第2013/119903号は、結合ドメインを備える融合タンパク質付加体を含有するようにCH2ドメインを修飾することを開示している。国際公開第2010/028797号、国際公開第2010028796号及び国際公開第2010/028795号は、3価結合分子を形成するためにFcドメインが追加のVL及びVHドメインで置換された、組み換え抗体を開示している。国際公開第2013/006544号は、単一のポリペプチド鎖として合成された後、ヘテロ二量体構造を得るためにタンパク質分解に供される、多価Fab分子を開示している。国際公開第2014/022540号、国際公開第2013/003652号、国際公開第2012/162583号、国際公開第2012/156430号、国際公開第2011/086091号、国際公開第2007/075270号、国際公開第1998/002463号、国際公開第1992/022583号、及び国際公開第1991/003493号は、抗体又は抗体の一部分に追加の結合ドメイン又は官能基を付加すること(例えば抗体の軽鎖及び重鎖に追加のVL及びVHドメインを付加すること、又は異種融合タンパク質を付加すること、又は複数のFabドメインを互いに連結すること)を開示している。米国特許第7,695,936号、及び米国公開特許第2007/0196363号は、2つの抗体の重鎖から形成された二重特異性抗体に関し、上記2つの抗体のうちの一方は、その重鎖に加工された結節を有し、上記2つの抗体のうちの第2のものは、その重鎖に加工された相補的なキャビティを有する。このような相補的な「ノブ(knob)」及び「ホール(hole)」の存在は、同一の抗体の2つの重鎖を含有する単一特異性ホモ抗体に対して、(上述のような抗体それぞれの1つの重鎖を有する)二重特異性ヘテロ抗体を優先的に形成することが教示されている。
【0044】
3.好ましいFcドメイン
2つの重鎖のCH2及びCH3ドメインは相互作用してFcドメインを形成し、このFcドメインは、細胞Fc受容体(FcγR)によって認識されるドメインである。本明細
書において使用される場合、用語「Fc領域(Fc region)」は、IgG重鎖のC末端領域を定義するために使用される。例示的なヒトIgG1のCH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号1):
231 240 250 260 270 280
APELLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
290 300 310 320 330
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
340 350 360 370 380
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
390 400 410 420 430
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
440 447
ALHNHYTQKS LSLSPGX
であり、これはKabatにおけるようなEUインデックスによって番号付与されており、Xはリシン(K)であるか、又は不在である。
【0045】
例示的なヒトIgG2のCH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号2):231 240 250 260 270 280
APPVA-GPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVQFNWYVD
290 300 310 320 330
GVEVHNAKTK PREEQFNSTF RVVSVLTVVH QDWLNGKEYK CKVSNKGLPA
340 350 360 370 380
PIEKTISKTK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDISVE
390 400 410 420 430
WESNGQPENN YKTTPPMLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
440 447
ALHNHYTQKS LSLSPGX
であり、これはKabatにおけるようなEUインデックスによって番号付与されており、Xはリシン(K)であるか、又は不在である。
【0046】
例示的なヒトIgG3のCH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号3):231 240 250 260 270 280
APELLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVQFKWYVD
290 300 310 320 330
GVEVHNAKTK PREEQYNSTF RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
340 350 360 370 380
PIEKTISKTK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
390 400 410 420 430
WESSGQPENN YNTTPPMLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NIFSCSVMHE
440 447
ALHNRFTQKS LSLSPGX
であり、これはKabatにおけるようなEUインデックスによって番号付与されており、Xはリシン(K)であるか、又は不在である。
【0047】
例示的なヒトIgG4のCH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号4):231 240 250 260 270 280
APEFLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSQED PEVQFNWYVD
290 300 310 320 330
GVEVHNAKTK PREEQFNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKGLPS
340 350 360 370 380
SIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSQEEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
390 400 410 420 430
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSRL TVDKSRWQEG NVFSCSVMHE
440 447
ALHNHYTQKS LSLSLGX
であり、これはKabatにおけるようなEUインデックスによって番号付与されており、Xはリシン(K)であるか、又は不在である。
【0048】
本明細書全体を通して、IgG重鎖の定常領域の残基の番号付与は、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5thEd. Public Health Service、NH1、MD (1991)(これは参照により明示的に本明細書に援用される)によるEUインデック
スの番号付与である。「KabatにおけるようなEUインデックス(EU index
as in Kabat)」は、ヒトIgG1 EU抗体の番号付与を指す。免疫グロブリンの成熟重鎖及び軽鎖の可変領域からのアミノ酸は、鎖内のアミノ酸の位置によって指定される。Kabatは、抗体に関する多数のアミノ酸配列を記載し、各サブグループに関するアミノ酸コンセンサス配列を識別し、また各アミノ酸に残基番号を割り当てている。Kabatの番号付与スキームは、保存されたアミノ酸を参照して、問題となる抗体を、Kabat中のコンセンサス配列のうちの1つと整列させることによって、Kabatの概要に含まれていない抗体にまで拡張可能である。残基番号を割り当てるための上記方法は、当該技術分野において標準的なものとなっており、キメラ又はヒト化変異体を含む異なる抗体中の同等の位置のアミノ酸を容易に識別する。例えば、ヒト抗体軽鎖の50位のアミノ酸は、マウス抗体軽鎖の50位のアミノ酸と同等の位置を占有する。
【0049】
境界はわずかに変化する場合があるが、ヒトIgG FcドメインのCH2ドメインは、KabatのEU番号付与システムに従うと、ヒトIgGのアミノ酸231からアミノ酸341までにわたることが多い。ヒトIgGのCH3ドメインは、KabatのEU番号付与システムに従うと、ヒトIgGのアミノ酸342からアミノ酸447までにわたることが多い。「ヒンジ領域(hinge region)」又は「ヒンジドメイン(hinge domain)」は一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230まで伸長するものとして定義される。
【0050】
多型は、抗体定常領域内の多数の異なる位置(例えばKabatにおけるようなEUインデックスによる番号付与で、270位、272位、312位、315位、356位及び358位を含むがこれらに限定されないFc位置)において観察されており、従ってここで提示される配列と従来技術の配列との間にはわずかな差異が存在し得る。ヒト免疫グロブリンの多型形態は、十分に特性決定されている。現在、18個のGmアロタイプが公知である:G1m(1,2,3,17)又はG1m(a,x,f,z)、G2m(23)又はG2m(n)、G3m(5,6,10,11,13,14,15,16,21,24,26,27,28)又はG3m(b1,c3,b3,b0,b3,b4,s,t,g1,c5,u,v,g5)(Lefranc, et al., The human IgG subclasses: molecular analysis of structure, function and regulation. Pergamon, Oxford, pp. 43‐78 (1990); Lefranc, G. et al., 1979, Hum. Genet.: 50, 199‐211)。特に、本発明の方法におい
て有用な抗体が、いずれの免疫グロブリン遺伝子のいずれのアロタイプ、アイソアロタイプ又はハプロタイプを組み込むことができ、本明細書中で提示される配列のアロタイプ、アイソアロタイプ又はハプロタイプに限定されないと考えられる。更に、発現系によっては、CH3ドメインのC末端アミノ酸残基(上記太字)は、翻訳後に除去できる。従ってCH3ドメインのC末端残基は、本明細書に記載のB7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の任意のアミノ酸残基である。本発明によって具体的に包含されるのは、CH3ドメインのC末端残基が欠けた、上述のような結合分子である。また本発明によって具体的に包含されるのは、CH3ドメインのC末端リシン残基を含む結合分子である。
【0051】
CH1ドメイン及び/又はヒンジ領域が存在する場合、これらはいずれのアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のものであってよいが、好ましくは、所望のFcドメインと同一のアイソタイプのものである。
【0052】
例示的なヒトIgG1 CH1ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号8):
ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV
HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKRV
である。
【0053】
例示的なヒトIgG2 CH1ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号60):
ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV
HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSNFGTQT YTCNVDHKPS NTKVDKTV
である。
【0054】
例示的なヒトIgG4 CH1ドメインのアミノ酸配列は、(配列番号61):
ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV
HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTKT YTCNVDHKPS NTKVDKRV
である。
【0055】
IgG4 CH1ドメイン及び安定化ヒンジのアミノ酸配列(配列番号16)を以下に示す。
ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV
HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTKT YTCNVDHKPS NTKVDKRVES
KYGPPCPPCP
【0056】
例示的なヒトIgG1ヒンジ領域のアミノ酸配列は、(配列番号10):
EPKSCDKTHTCPPCP
である。
【0057】
例示的なヒトIgG2ヒンジ領域のアミノ酸配列は、(配列番号62):
ERKCCVECPPERKCCVECPPCP
である。
【0058】
例示的なヒトIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列は、(配列番号11):
ESKYGPPCPSCP
である。
【0059】
活性化及び阻害信号は、Fcドメインへの細胞Fcガンマ受容体(FcγR)のライゲーションに続いて、細胞Fcガンマ受容体(FcγR)によって形質導入される。これらの正反対の機能は、異なる受容体アイソフォーム間の構造的差異に起因する。免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)又は免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)と呼ばれる、受容体の細胞質シグナリングドメイン内の2つの別個のドメインが、異なる応答の原因となる。これらの構造に対する異なる細胞質酵素の補充は、FcγR仲介細胞応答の結果を決定づける。ITAM含有FcγR複合体は、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIAを含み、その一方でITIM含有複合体はFcγRIIBしか含まない。ヒト好中球は、FcγRIIA遺伝子を発現する。免疫複合体又は特異性抗体架橋によるFcγRIIAのクラスタリングは、ITAMを、ITAMリン酸化を促進する受容体関連キナーゼと凝集させる役割を果たす。ITAMリン酸化は、Sykキナーゼのドッキング部位として役立ち、その活性化は、下流基質(例えばPI3K)の活性化をも
たらす。細胞活性化は、炎症促進性メディエータの放出につながる。FcγRIIB遺伝子は、Bリンパ球上で発現し、その細胞外ドメインはFcγRIIAと96%同一であり、またIgG複合体に、区別できない様式で結合する。FcγRIIBの細胞質ドメイン中のITIMの存在は、FcγRの上述の阻害型サブクラスを定義する。最近、この阻害の分子的基礎が確率された。活性化FcγRと共同結紮すると、FcγRIIB中のITIMはリン酸化され、ポリリン酸イノシトール5’‐ホスファターゼ(SHIP)のSH2ドメインを誘引し、これは、ITAM含有FcγR仲介チロシンキナーゼ活性化の結果として放出されたホスホイノシトールを加水分解し、その結果、細胞内Ca++の流入を防止する。従って、FcγRIIBの架橋は、FcγR結紮に対する活性化応答を弱め、細胞応答性を阻害する。このようにして、B細胞活性化、B細胞増殖及び抗体分泌が中断される。更に、新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用は、エンドソームから細胞表面へのIgG分子の再循環及び血中への放出を仲介する。
【0060】
Fcドメインの修飾は通常、表現型の変化、例えば血清半減期の変化、安定性の変化、細胞酵素に対する感受性の変化又はエフェクタ機能の変化につながる。本発明の方法において使用するためのB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子のFcドメイン(例えば抗B7‐H3及び抗PD‐1抗体)をエフェクタ機能に関して修飾して、例えば癌の治療における上記抗体の有効性を増強することが望ましい場合がある。例えば、作用機序が、標的抗原を担持する細胞の殺滅ではなく遮断又は拮抗作用を伴う抗体の場合といった、特定の場合においては、エフェクタ機能の低減又は削減が望ましい。エフェクタ機能の上昇は、FcγRが低いレベルで発現する腫瘍及び外来細胞、例えばFcγRIIBのレベルが低い腫瘍特異性B細胞(例えば非ホジキンリンパ腫、CLL及びバーキットリンパ腫)といった、望ましくない細胞を対象とする場合に一般に望ましい。
【0061】
本発明の方法において使用するためのB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子のFcドメイン(例えば抗B7‐H3及び抗PD‐1抗体)は、完全なFcドメイン(例えば完全なIgG Fcドメイン)であっても、又は完全なFcドメインの断片でしかなくてもよい。よって、このようなドメインを含有する、本発明の方法において有用な分子のFcドメインは、完全なFcドメインのCH2ドメインの一部若しくは全て及び/若しくはCH3ドメインの一部若しくは全てであってよく、又は(例えば完全なFcドメインのCH2若しくはCH3ドメインに対して1つ若しくは複数の挿入及び/若しくは1つ若しくは複数の欠失を含んでよい)変異型CH2及び/若しくは変異型CH3配列を含んでよい。このようなFcドメインは、非Fcポリペプチド部分を含んでよく、又は自然に発生しない完全なFcドメインの一部分を含んでよく、又はCH2及び/若しくはCH3ドメインの自然に発生しない配向(例えば2つのCH2ドメイン若しくは2つのCH3ドメイン、若しくはN末端からC末端への方向に、CH3ドメインと、それが連結するCH2ドメイン、等)を含んでよい。B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子のFcドメインは、1つ又は複数のFc受容体(例えば1つ又は複数のFcγR)に結合する能力を有してよいが、より好ましくは、このようなFcドメインは、(野生型Fcドメインが示す結合に比べて)変化した、FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)若しくはFcγRIIIB(CD16b)への結合を引き起こすか、又はこのようなFcドメインの、1つ又は複数のFcγR(例えば1つ若しくは複数の阻害性受容体)に結合する能力を実質的に除去する。
【0062】
特定の実施形態では、本発明の方法において使用するための分子は、活性化及び/又は阻害Fcγ受容体に関する親和性が変化した変異型Fcドメインを備えてよい。一実施形態では、上記分子は、野生型Fcドメインを備えた同等の分子に対して、FcγRIIBに関する親和性が増大し、かつFcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに関する親和性が低下した、変異型Fcドメインを備える。別の実施形態では、本発明の方法において
使用するための分子は、野生型Fcドメインを備えた同等の分子に対して、FcγRIIBに関する親和性が低下し、かつFcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに関する親和性が増大した、変異型Fcドメインを備える。更に別の実施形態では、本発明の方法において使用するための分子は、野生型Fcドメインを備えた同等の分子に対して、FcγRIIBに関する親和性が低下し、かつFcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに関する親和性も低下した、変異型Fcドメインを備える。更に別の実施形態では、本発明の方法において使用するための上記分子は、野生型Fcドメインを備えた同等の分子に対して、FcγRIIBに関する親和性が変化しておらず、かつFcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに関する親和性が低下(又は増大)した、変異型Fcドメインを備える。
【0063】
特定の実施形態では、本発明の方法において使用するための分子は、免疫グロブリンが増強されたエフェクタ機能を有するように、FcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに対する親和性が変化した変異型Fcドメインを含む。エフェクタ細胞機能の非限定的な例としては、抗体依存性細胞仲介細胞毒性、抗体依存性細胞食作用、食作用、オプソニン作用、オプソニン食作用、細胞結合、ロゼット形成、C1q結合、及び相補性決定細胞仲介細胞毒性が挙げられる。
【0064】
変異型Fcドメインは当該技術分野において公知であり、例えばNK依存性又はマクロファージ依存性アッセイにおいて機能的にアッセイされるような、Fcドメイン(若しくはその一部)を備える分子が呈するエフェクタ機能を付与又は改変するために、いずれの公知の変異型Fcドメインを本発明において使用してよい。例えば、変化したエフェクタ機能として識別されるFcドメイン変異型は、国際公開第04/063351号;国際公開第06/088494号;国際公開第07/024249号;国際公開第06/113665号;国際公開第07/021841号;国際公開第07/106707号;及び国際公開第2008/140603号において開示されており、開示されているいずれの好適な変異体を、本発明の分子において使用してよい。
【0065】
表4は、例示的な単一、二重、三重、四重及び五重Fcドメイン突然変異を列挙する。
【0066】
【0067】
特に好ましい変異型は、群A~AIから選択された1つ又は複数の修飾を含む:
【0068】
【0069】
更に特に好ましい変異型は、群1~105から選択された1つ又は複数の修飾を含む:
【0070】
【0071】
特に好ましい実施形態では、本発明は、変異型Fcドメインを備えるB7‐H3結合分子を包含し、上記変異型は、上昇したADCC活性及び/又はFcγRIIIA(CD16A)への増大した結合を与えるか又は有し、またFcγRIIB(CD32B)への結合が低下している場合がある。CD16Aへの結合が増大し、更にCD32Bへの結合が低下している場合がある、ヒトIgG1 Fcドメインの例示的な変異型は、L235V、F243L、R292P、Y300L、V305I又はP296Lの置換を含有する。好ましいB7‐H3結合分子としては、置換:L235V、F243L、R292P、Y300L、V305I及びP396Lのうちのいずれの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む変異型IgG1 Fcドメインが挙げられる。これらのアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fcドメインにおいていずれの組み合わせで存在し得る。
【0072】
一実施形態では、B7‐H3結合分子は、Fcドメインにおいて少なくとも1つの修飾を有する変異型Fcドメインを含む。特定の実施形態では、上記変異型Fcドメインは、L235V、F243L、R292P、Y300L、V305I、及びP396Lからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0073】
ある具体的実施形態では、変異型Fcドメインは以下を含む:
(A)F243L、R292P、Y300L、V305I、及びP396Lからなる群から選択される、少なくとも1つの置換;
(B)(1)F243L及びP396L;
(2)F243L及びR292P;並びに
(3)R292P及びV305I;
からなる群から選択される、少なくとも2つの置換;
(C)(1)F243L、R292P及びY300L;
(2)F243L、R292P及びV305I;
(3)F243L、R292P及びP396L;並びに
(4)R292P、V305I及びP396L;
からなる群から選択される、少なくとも3つの置換;
(D)(1)F243L、R292P、Y300L及びP396L;並びに
(2)F243L、R292P、V305I及びP396L;
からなる群から選択される、少なくとも4つの置換;又は
(E)(1)F243L、R292P、Y300L、V305I及びP396L;並びに
(2)L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L
からなる群から選択される、少なくとも5つの置換。
【0074】
別の具体的実施形態では、変異型Fcドメインは、以下の置換を含む:
(A)F243L、R292P、及びY300L;
(B)L235V、F243L、R292P、Y300L、及びP396L;又は
(C)F243L、R292P、Y300L、V305I、及びP396L。
【0075】
特定の実施形態ではPD‐1結合分子はある変異型Fcドメインを備え、この変異型は、野生型Fcドメイン(配列番号1)が示す結合に対して、FcγRIIIA(CD16a)に対して低下した結合を与えるか又は有する(又は略結合しない)。
【0076】
FcγRに対する結合が低下したヒトIgG1 Fcドメインの例示的な変異型は、L234A、L235A、D265A、N297A又はN297Qの置換を含有する。好ましいPD‐1結合分子としては、置換:L234A、L235A、D265A、N297A、及びN297Qのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ全てを含む変異型IgG1 Fcドメインが挙げられる。これらのアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fcドメインにおいていずれの組み合わせで存在し得る。
【0077】
一実施形態では、PD‐1結合分子は、Fcドメインに少なくとも1つの修飾を有する変異型Fcドメインを備える。特定の実施形態では、変異型Fcドメインは、L234A、L235A、D265A及びN297Qからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む。L234A、L235A、D265A、N297A及びN297Qの置換はエフェクタ機能を消失させるため、エフェクタ機能が望まれる状況においては、これらの置換を採用しないことが好ましい。
【0078】
ある具体的な実施形態では、変異型Fcドメインは:
(A)L234A、L235A;
(B)D265A;
(D)N297A;又は
(C)N297Q
の置換を含む。
【0079】
本発明の方法において使用するためのPD‐1結合分子のCH2及びCH3ドメインに関する好ましいIgG1配列は、L234A/L235Aの置換(配列番号5):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGX
を有し、ここでXはリシン(K)であるか又は不在である。
【0080】
特に好ましい実施形態では、本発明の方法において使用するためのFcドメイン含有PD‐1結合分子のCH2‐CH3ドメインは、(野生型IgG1 Fcドメイン(配列番号1)が示す結合に対して)低下した(又は実質的にゼロの)FcγRIIIA(CD16a)への結合及び/又は低下したエフェクタ機能を生得的に示すものであってよい。例えば、本発明の方法において使用するためのFcドメイン含有PD‐1結合分子のCH2‐CH3ドメインは、IgG2 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインであってよい。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明の方法において使用するためのPD‐1結合分子は、IgG4 Fcドメインを備える。IgG4 Fcドメインを利用する場合、本発明はまた、鎖交換の発生を低減するための、Kabatに記載のEUインデックスによって番号付与されたS228P(例えばESKYGPPCPPCP(配列番号12))等の安定化ヒンジ突然変異の導入も包含する(Lu et al., (2008) “The Effect Of A Point Mutation On The Stability Of Igg4 As Monitored By Analytical Ultracentrifugation,” J. Pharm. Sci. 97:960-969)。当該技術分野において公知の他の安定化突然変異を、IgG4 Fcドメ
インに導入してよい(Peters, P et al., (2012) “Engineering an Improved IgG4 Molecule with Reduced Disulfide Bond Heterogeneity and Increased Fab Domain Thermal Stability,” J. Biol. Chem., 287:24525‐24533;国際公開第2008/145142
号)。更に上述のように、CH1ドメイン及び/又はヒンジが存在する場合、これは好ましくは、所望のFcドメインと同一のアイソタイプのものである。従ってこのような実施形態では、PD‐1結合分子(例えば抗体)は、IgG4 CH1(例えば配列番号9を参照)、安定化IgG4ヒンジ(例えば配列番号12を参照)、及びIgG4 CH2‐CH3ドメイン(例えば配列番号4を参照)を備える。
【0082】
Fcドメインを備えるタンパク質の血清半減期は、FcRnに関するFc領域の結合親和性を増大させることによって増大させることができる。本明細書において使用される場合、用語「半減期(half‐life)」は、投与後の分子の平均生存時間の尺度となる、分子の薬物動態特性を意味する。半減期は、血清中で(即ち循環半減期)又は他の組織中で測定した場合に、分子の既知の量の50パーセント(50%)が被験者の身体(例えばヒト患者若しくは他の哺乳類)又はその特定の体腔から排除されるために必要な時間として表すことができる。一般に、半減期の増大は、投与される分子の循環における平均滞留時間(MRT)の増大につながる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用するためのB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子は、変異型Fcドメインを備え、上記変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、従って上記分子は、(野生型Fc領域の半減期に対して)増大した半減期を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用するためのB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子は、変異型Fcドメインを備え、上記変異型Fcドメインは、238、250、252、254、256、257、256、265、272、286、288、303、305、307、308、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、428、433、434、435及び436からなる群から選択される1つ又は複数の位置に半減期延長アミノ酸置換を含む。Fcドメイン含有分子の半減期を増大させることができる多数の具体的な突然変異が当該技術分野において公知であり、例えばM252Y、S254T、T256E及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば:米国特許第6,277,375号;米国特許第7,083,784号;米国特許第7,217,797号;米国特許第8,088,376号;米国公開特許第2002/0147311号;米国公開特許第2007/0148164号;並びに国際公開第98/23289号;国際公開第2009
/058492号;及び国際公開第2010/033279号(これらは参照によりその全体が本出願に援用される)に記載されている突然変異を参照。半減期が増強されたFcドメイン含有分子としては、Fcドメイン残基250、252、254、256、257、288、307、308、309、311、378、428、433、434、435及び436のうちの2つ以上における置換、特にT250Q、M252Y、S254T、T256E、K288D、T307Q、V308P、A378V、M428L、N434A、H435K、Y436Iから選択される2つ以上の置換を有するものも挙げられる。
【0085】
ある具体的実施形態では、変異型Fcドメインは:
(A)M252Y、S254T及びT256E;
(B)M252Y及びS254T;
(C)M252Y及びT256E;
(D)T250Q及びM428L;
(E)T307Q及びN434A;
(F)A378V及びN434A;
(G)N434A及びY436I;
(H)V308P及びN434A;又は
(I)K288D及びH435K
の置換を含む。
【0086】
本発明は更に:
(A)エフェクタ機能及び/又はFcγRを変更する1つ又は複数の突然変異;並びに
(B)半減期を延長させる1つ又は複数の突然変異
を含む、変異型Fcドメインを包含する。
【0087】
本発明の方法において使用するためのB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子の2つの相互作用するFcドメイン含有ポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインの2つのCH2及び/又は2つのCH3ドメインは、配列が同一である必要はなく、有利には、これら2つのポリペプチド鎖間の複合体化を促進するよう修飾される(例えば国際公開第98/50431号;国際公開第2007/110205号;国際公開第2011/143545号;国際公開第2012/058768号;国際公開第2013/06867号)。例えば、CH2又はCH3ドメインにアミノ酸置換(好ましくは「ノブ(knob)」を形成する嵩高な側鎖基、例えばトリプトファンを含むアミノ酸による置換)を導入して、立体障害により、同様に変異させたドメインとの相互作用を防止し、上記変化させたドメインを、相補的な又は適応した変異(例えばグリシンによる置換)を施されたドメイン、即ち「ホール(hole)」と対合させることができる。このような一連の突然変異は、本発明のFcドメイン含有B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子のいずれのポリペプチドに施すことができる。ホモ二量体化を抑えてヘテロ二量体化を促進するためのタンパク質加工の方法は、特に免疫グロブリン様分子の加工に関して当該技術分野で公知であり、本明細書に包含される(例えばRidgway et al. (1996) “‘Knobs‐Into‐Holes’ Engineering Of Antibody CH3 Domains For Heavy Chain Heterodimerization,”
Protein Engr. 9:617‐621; Atwell et al. (1997) “Stable Heterodimers From Remodeling The Domain Interface Of A Homodimer Using A Phage Display Library,” J. Mol. Biol. 270: 26‐35;及びXie et al. (2005) “A New Format Of Bispecific Antibody: Highly Efficient Heterodimerization, Expression And Tumor Cell Lysis,” J. Immunol. Methods 296:95‐101を参照(これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に
援用される))。好ましくは、「ノブ」は一方のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工され、「ホール」は、他方のCH2‐CH3含有ポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工される。従って「ノブ」は、第1のポリペプチド鎖がそのCH2及び/又はCH3ドメインを介してホモ二量体化するのを防止する役割を果たすことになる。C
H2‐CH3「ホール担持(hole‐bearing)」ポリペプチド鎖は、CH2‐CH3「ノブ担持(knob‐bearing)」ポリペプチド鎖とヘテロ二量体化することになり、またそれ自体とホモ二量体化することになる。好ましいノブは、天然IgG
Fcドメインを修飾して修飾基T366Wを含有させることによって生成される。好ましいホールは、天然IgG Fcドメインを修飾して修飾基T366S、L368A及びY407Vを含有させることによって生成される。「ホール担持」ポリペプチド鎖ホモ二量体を、好ましいヘテロ二量体分子から精製するのを補助するために、好ましくは、「ホール担持」FcドメインのCH2及びCH3ドメインのタンパク質A結合部位を、位置435(H435R)におけるアミノ酸置換によって変異させる。このようにして、「ホール担持」Fcドメインはタンパク質Aに結合せず、その一方で本発明の方法において使用するためのFcドメイン含有B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子は、第1のポリペプチド鎖のタンパク質A結合部位を介してタンパク質Aに結合する能力を有したままとなる。
【0088】
Fcドメイン含有B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子に関する好ましい「ノブ担持」配列は、配列(配列番号6):
APELLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLWCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGX
を有し、ここでXはリシン(K)であるか又は不在である。
【0089】
Fcドメイン含有B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子に関する好ましい「ホール担持」配列は、配列(配列番号7):
APELLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNRYTQKS LSLSPGX
を有し、ここでXはリシン(K)であるか又は不在である。
【0090】
本発明はまた、上述のようなFcドメインのエフェクタ機能及び/又はFγR結合活性を修飾する追加の置換を含む、上述のようなCH2‐CH3ドメインも包含する。本発明はまた、1つ又は複数の半減期延長アミノ酸置換を更に含む、このようなCH2‐CH3ドメインも包含する。特に本発明は、M252Y/S254T/T256Eの置換を更に含む、このようなホール担持及びノブ担持CH2‐CH3ドメインを包含する。
【0091】
B.B7‐H3結合分子
本発明が包含する、B7‐H3に特異的に結合する分子としては、ヒトB7‐H3の連続又は不連続(例えば配座)部分(エピトープ)に結合できる抗B7‐H3抗体、及びこのような抗体のエピトープ結合部位を含む分子が挙げられる。本発明の方法及び組成物に使用されるB7‐H3結合分子は好ましくは、1つ又は複数の非ヒト種、特にマウス、げっ歯類、イヌ及び霊長類種のB7‐H3分子に結合する能力も示す。B7‐H3に対して特異的な抗体は公知である(例えば米国特許第7,527,969号;米国特許第7,666,424号;米国特許第7,718,774号;米国特許第7,737,258号;米国特許第7,740,845号;米国特許第8,148,154号;米国特許第8,216,570号;米国特許第8,414,892号;米国特許第8,501,471号;米国特許第8,779,098号;米国特許第8,802,091号;米国特許第9,062,110号;米国公開特許第2013/0078234号;米国公開特許第2010
/0143245号;及び国際公開第2004/001381号;国際公開第2008/066691号;国際公開第2008/116219号;国際公開第2011/109400号;国際公開第2012/147713号、並びに表5を参照)。更なる所望の抗体は、B7‐H3発現細胞;B7‐H3又はそのペプチド断片を用いて誘発された抗体分泌ハイブリドーマを単離することによって作製できる。
【0092】
ヒトB7‐H3は、「2Ig」形態及び「4Ig」形態として存在する。(下線を付して示されている29アミノ酸残基のシグナル配列を含む)ヒトB7‐H3の「2Ig」形態のアミノ酸配列は、(配列番号17):
MLRRRGSPGM GVHVGAALGA LWFCLTGALE VQVPEDPVVA LVGTDATLCC
SFSPEPGFSL AQLNLIWQLT DTKQLVHSFA EGQDQGSAYA NRTALFPDLL
AQGNASLRLQ RVRVADEGSF TCFVSIRDFG SAAVSLQVAA PYSKPSMTLE
PNKDLRPGDT VTITCSSYRG YPEAEVFWQD GQGVPLTGNV TTSQMANEQG
LFDVHSVLRV VLGANGTYSC LVRNPVLQQD AHGSVTITGQ PMTFPPEALW
VTVGLSVCLI ALLVALAFVC WRKIKQSCEE ENAGAEDQDG EGEGSKTALQ
PLKHSDSKED DGQEIA
である。
【0093】
ヒトB7‐H3(配列番号17)の「2Ig」形態のアミノ酸配列は、ヒトB7‐H3の「4Ig」形態(配列番号18、下線を付して示されている29アミノ酸残基のシグナル配列)の中に完全に包含される:
MLRRRGSPGM GVHVGAALGA LWFCLTGALE VQVPEDPVVA LVGTDATLCC
SFSPEPGFSL AQLNLIWQLT DTKQLVHSFA EGQDQGSAYA NRTALFPDLL
AQGNASLRLQ RVRVADEGSF TCFVSIRDFG SAAVSLQVAA PYSKPSMTLE
PNKDLRPGDT VTITCSSYQG YPEAEVFWQD GQGVPLTGNV TTSQMANEQG
LFDVHSILRV VLGANGTYSC LVRNPVLQQD AHSSVTITPQ RSPTGAVEVQ
VPEDPVVALV GTDATLRCSF SPEPGFSLAQ LNLIWQLTDT KQLVHSFTEG
RDQGSAYANR TALFPDLLAQ GNASLRLQRV RVADEGSFTC FVSIRDFGSA
AVSLQVAAPY SKPSMTLEPN KDLRPGDTVT ITCSSYRGYP EAEVFWQDGQ
GVPLTGNVTT SQMANEQGLF DVHSVLRVVL GANGTYSCLV RNPVLQQDAH
GSVTITGQPM TFPPEALWVT VGLSVCLIAL LVALAFVCWR KIKQSCEEEN
AGAEDQDGEG EGSKTALQPL KHSDSKEDDG QEIA
【0094】
好ましい抗B7‐H3結合分子は、抗ヒトB7‐H3モノクローナル抗体「BRCA84D」、「BRCA69D」、「PRCA1」又は表5に記載の抗B7‐H3抗体のうちのいずれの、VL及び/又はVHドメインを有し;より好ましくは、このような抗B7‐H3モノクローナル抗体のVL領域のCDRLのうちの1つ、2つ若しくは3つ全て、及
び/又はVHドメインのCDRHのうちの1つ、2つ若しくは3つ全てを有する。特に好
ましいのは、ヒト化VH及び/又はVLドメインを有するB7‐H3結合分子である。このような好ましいB7‐H3結合分子としては、変異型Fcドメインを有する抗体、二重特異性(又は多重特異性)抗体、キメラ又はヒト化抗体等が挙げられる。
【0095】
1.BRCA84D
BRCA84DのVLドメインのアミノ酸配列(配列番号19)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIAMTQSQKF MSTSVGDRVS VTCKASQNVD
TNVAWYQQKP GQSPKALIYS
ASYRYSGVPD RFTGSGSGTD FTLTINNVQS EDLAEYFCQQ
YNNYPFTFGS
GTKLEIK
【0096】
BRCA84DのVHドメインのアミノ酸配列(配列番号20)を以下に示す(CDR
H残基は下線を付して示す):
DVQLVESGGG LVQPGGSRKL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PEKGLEWVAY
ISSDSSAIYY
ADTVKGRFTI SRDNPKNTLF LQMTSLRSED TAMYYCGRGR
ENIYYGSRLD
YWGQGTTLTV SS
【0097】
a.hBRCA84D
「hBRCA84D VL1」、「hBRCA84D VL2」、「hBRCA84D VL3」、「hBRCA84D VL4」、「hBRCA84D VL5」、「hBRCA84D VL6」と呼ばれる、BRCA84Dの6つの例示的なヒト化VLドメイン、並びに「hBRCA84D VH1」、「hBRCA84D VH2」、「hBRCA84D VH3」、及び「hBRCA84D VH4」と呼ばれる、BRCA84Dの4つの例示的なヒト化VHドメインを、以下に挙げる。上記ヒト化VLドメインのいずれを、ヒト化VHドメインのいずれと対合させて、B7‐H3結合ドメインを生成できる。従って、上記ヒト化VHドメインと対合した上記ヒト化VLドメインのうちの1つを備えるいずれの抗体を、一般に「hBRCA84D」と呼び、ヒト化VH/VLドメインの特定の組み合わせを、具体的なVH/VLドメインに対する参照によって呼称する。例えばhBRCA84D VH1及びhBRCA84D VL2を備えるヒト化抗体は、具体的に「hBRCA84D(1.2)」と呼ばれる。
【0098】
hBRCA84D VL1のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号21)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD
TNVAWYQQKP GKAPKLLIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0099】
hBRCA84D VL2のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号22)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD TNVAWYQQKP GKAPKALIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0100】
hBRCA84D VL3のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号23)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVS VTCKASQNVD
TNVAWYQQKP GKAPKLLIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0101】
hBRCA84D VL4のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号24)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD
TNVAWYQQKP GQAPKLLIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0102】
hBRCA84D VL5のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号25)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD
TNVAWYQQKP GQAPKALIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0103】
hBRCA84D VL6のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号26)を以下に示
す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD
TNVAWYQQKP GKAPKLLIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFAEYYCQQ
YNNYPFTFGQ
GTKLEIK
【0104】
hBRCA84D VH1のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号27)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSDSSAIYY
ADTVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRDED TAVYYCARGR
ENIYYGSRLD
YWGQGTTVTV SS
【0105】
hBRCA84D VH2のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号28)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSDSSAIYY
ADTVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRDED TAVYYCGRGR
ENIYYGSRLD
YWGQGTTVTV SS
【0106】
hBRCA84D VH3のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号29)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSDSSAIYY
ADTVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRDED TAMYYCGRGR
ENIYYGSRLD
YWGQGTTVTV SS
【0107】
hBRCA84D VH4のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号30)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSDSSAIYY
ADTVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRSED TAVYYCARGR
ENIYYGSRLD
YWGQGTTVTV SS
【0108】
2.BRCA69D
BRCA69DのVLドメインのアミノ酸配列(配列番号31)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQMTQTTSS LSASLGDRVT ISCRASQDIS
NYLNWYQQKP DGTVKLLIYY
TSRLHSGVPS RFSGSGSGTD YSLTIDNLEQ EDIATYFCQQ
GNTLPPTFGG
GTKLEIK
【0109】
BRCA69DのVHドメインのアミノ酸配列(配列番号32)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLQQSGAE LARPGASVKL SCKASGYTFT SYWMQWVKQR PGQGLEWIGT
IYPGDGDTRY
TQKFKGKATL TADKSSSTAY MQLSSLASED SAVYYCARRG
IPRLWYFDVW GAGTTVTVSS
【0110】
a.hBRCA69D
「hBRCA69D VL1」及び「hBRCA69D VL2」と呼ばれる、BRCA69Dの2つの例示的なヒト化VLドメイン、並びに「hBRCA69D VH1」及び「hBRCA69D VH2」と呼ばれる、BRCA69Dの2つの例示的なヒト化VHドメインを、以下に挙げる。hBRCA69D VL2はCDRL1及びCDRL2にアミノ酸置換を含むこと、並びにhBRCA69D VH2はCDRL2にアミノ酸置換を
含むことに留意されたい。上記ヒト化VLドメインのいずれを、ヒト化VHドメインのいずれと対合させて、B7‐H3結合ドメインを生成できる。従って、上記ヒト化VHドメ
インと対合した上記ヒト化VLドメインのうちの1つを備えるいずれの抗体を、一般に「hBRCA69D」と呼び、ヒト化VH/VLドメインの特定の組み合わせを、具体的なVH/VLドメインに対する参照によって呼称する。例えばhBRCA69D VH1及びhBRCA69D VL2を備えるヒト化抗体は、具体的に「hBRCA69D(1.2)」と呼ばれる。
【0111】
hBRCA69D VL1のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号33)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDIS
NYLNWYQQKP GKAPKLLIYY
TSRLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDIATYYCQQ
GNTLPPTFGG
GTKLEIK
【0112】
hBRCA69D VL2のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号34)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQSIS
SYLNWYQQKP GKAPKLLIYY
TSRLQSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDIATYYCQQ
GNTLPPTFGG
GTKLEIK
【0113】
hBRCA69D VH1のVHドメインのアミノ酸配列は、(配列番号35)(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT SYWMQWVRQA PGQGLEWMGT
IYPGDGDTRY
TQKFKGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARRG
IPRLWYFDVW GQGTTVTVSS
である。
【0114】
hBRCA69D VH2のVHドメインのアミノ酸配列は、(配列番号36)(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT SYWMQWVRQA PGQGLEWMGT
IYPGGGDTRY
TQKFQGRVTI TADKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCARRG
IPRLWYFDVW GQGTTVTVSS
である。
【0115】
3.PRCA157
PRCA157のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号37)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
DIQMTQSPAS LSVSVGETVT ITCRASESIY
SYLAWYQQKQ GKSPQLLVYN
TKTLPEGVPS RFSGSGSGTQ FSLKINSLQP EDFGRYYCQH
HYGTPPWTFG
GGTNLEIK
【0116】
PRCA157のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号38)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQQVESGGD LVKPGGSLKL SCAASGFTFS SYGMSWVRQT PDKRLEWVAT
INSGGSNTYY
PDSLKGRFTI SRDNAKNTLY LQMRSLKSED TAMYYCARHD
GGAMDYWGQG TSVTVSS
【0117】
4.更なる抗B7‐H3抗体
本発明の方法及び組成物で利用できる更なる抗B7‐H3抗体を、表5に提供する。
【0118】
【0119】
5.例示的なB7‐H3抗体
特定の実施形態では、本発明の方法及び組成物において有用なB7‐H3抗体は、上述の抗体のうちのいずれのVL及びVHドメイン(例えばhBRCA84D、hBRCA69D、PRCA157、又は表5の抗B7‐H3抗体のうちのいずれのVL及びVHドメイン)、κCLドメイン、並びに(野生型Fcドメインに対して)増強されたADCC活性を有する変異型IgG1 Fcドメインを備える。一実施形態では、CH2‐CH3ドメインは、L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396Lの置換を含む(番号付与はKabatにおけるEUインデックスによるものである)。このような抗体は好ましくは、IgG1 CH1ドメイン及びヒンジドメインを備える。
【0120】
κCLドメインのアミノ酸配列(配列番号13)を以下に示す:
RTVAAPSVFI FPPSDEQLKS GTASVVCLLN NFYPREAKVQ WKVDNALQSG
NSQESVTEQD SKDSTYSLSS TLTLSKADYE KHKVYACEVT HQGLSSPVTK
SFNRGEC
【0121】
IgG1 CH1ドメイン及びヒンジドメインのアミノ酸配列(配列番号14)を以下に示す:
ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV
HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKRVEP
KSCDKTHTCP PCP
【0122】
L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396Lの置換を含むIgG1 CH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列(配列番号15)を以下に示す:
APELVGGPSV FLLPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PPEEQYNSTL RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPLVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGK
【0123】
「hBRCA84D‐2」と呼ばれる例示的な抗B7‐H3抗体は:BRCA84D VL2のVLドメイン(配列番号22)及びκCL(配列番号13)を有する軽鎖;並びにBRCA84D VH2のVHドメイン(配列番号28)、IgG1 CH1ドメイン及びヒンジドメイン(配列番号14)、並びにL235V、F243L、R292P、Y300L及びP396L置換を含む変異型IgG CH2‐CH3ドメイン(配列番号15)を有する重鎖を含む。
【0124】
hBRCA84D‐2の完全な軽鎖のアミノ酸配列(配列番号39)を以下に示す:
DIQLTQSPSF LSASVGDRVT ITCKASQNVD TNVAWYQQKP GKAPKALIYS
ASYRYSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YNNYPFTFGQ
GTKLEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV
DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG
LSSPVTKSFN RGEC
【0125】
hBRCA84D‐2の完全な重鎖のアミノ酸配列(配列番号40)を以下に示す:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFTFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSDSSAIYY ADTVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRDED TAVYYCGRGR
ENIYYGSRLD YWGQGTTVTV SSASTKGPSV FPLAPSSKST SGGTAALGCL
VKDYFPEPVT VSWNSGALTS GVHTFPAVLQ SSGLYSLSSV VTVPSSSLGT
QTYICNVNHK PSNTKVDKRV EPKSCDKTHT CPPCPAPELV GGPSVFLLPP
KPKDTLMISR TPEVTCVVVD VSHEDPEVKF NWYVDGVEVH NAKTKPPEEQ
YNSTLRVVSV LTVLHQDWLN GKEYKCKVSN KALPAPIEKT ISKAKGQPRE
PQVYTLPPSR EEMTKNQVSL TCLVKGFYPS DIAVEWESNG QPENNYKTTP
LVLDSDGSFF LYSKLTVDKS RWQQGNVFSC SVMHEALHNH YTQKSLSLSP
GK
【0126】
C.PD‐1結合分子
本発明が包含する、PD‐1に特異的に結合する分子としては、ヒトPD‐1の連続又は不連続(例えば配座)部分(エピトープ)に結合できる抗PD‐1抗体、及びこのような抗体のエピトープ結合部位を含む分子が挙げられる。本発明の方法及び組成物に使用されるPD‐1結合分子(例えば抗体)は好ましくは、1つ又は複数の非ヒト種、特にマウス、げっ歯類、イヌ及び霊長類種のPD‐1分子に結合する能力も示す。PD‐1に対して特異的な抗体は公知である(例えば米国特許出願第62/198,867号;米国特許第5,952,136号;米国特許第7,488,802号;米国特許第7,521,051号;米国特許第8,008,449号;米国特許第8,088,905号;米国特許第8,354,509号;米国特許第8,552,154号;米国特許第8,779,105号;米国特許第8,900,587号;米国特許第9,084,776号;国際公開第2004/056875号;国際公開第2006/121168号;国際公開第2008/156712号;国際公開第2012/135408号;国際公開第2012/145493号;国際公開第2013/014668号;国際公開第2014/179664号;国際公開第2014/194302号;及び国際公開第2015/112800号、並びに表6を参照)。更なる所望の抗体は、PD‐1又はそのペプチド断片を用いて誘発された抗体分泌ハイブリドーマを単離することによって作製できる。
【0127】
(20アミノ酸残基のシグナル配列(下線を付して示す)及び268アミノ酸残基の成熟タンパク質を含む)ヒトPD‐1は、アミノ酸配列(配列番号41):
MQIPQAPWPV
VWAVLQLGWR PGWFLDSPDR PWNPPTFSPA LLVVTEGDNA
TFTCSFSNTS ESFVLNWYRM SPSNQTDKLA AFPEDRSQPG QDCRFRVTQL
PNGRDFHMSV VRARRNDSGT YLCGAISLAP KAQIKESLRA ELRVTERRAE
VPTAHPSPSP RPAGQFQTLV VGVVGGLLGS LVLLVWVLAV ICSRAARGTI
GARRTGQPLK EDPSAVPVFS VDYGELDFQW REKTPEPPVP CVPEQTEYAT
IVFPSGMGTS SPARRGSADG PRSAQPLRPE DGHCSWPL
を含む。
【0128】
本発明の方法及び組成物において有用な好ましい抗PD‐1結合分子(例えば抗体)は、抗ヒトPD‐1モノクローナル抗体「PD‐1 mAb 1」(ニボルマブ、CAS登録番号:946414‐94‐4、5C4、BMS‐936558、ONO‐4538、MDX‐1106としても公知、Bristol‐Myers SquibbによってOPDIVO(登録商標)として市販);「PD‐1 mAb 2」(ペンブロリズマブ(旧名ランブロリズマブ)CAS登録番号:1374853‐91‐4、MK‐3475、SCH‐900475としても公知、MerckによってKEYTRUDA(登録商標)として市販);「PD‐1 mAb 3」(EH12.2H7;Dana Farber)、「PD‐1 mAb 4」(ピジリズマブ、CAS登録番号:1036730‐42‐3、CT‐011としても公知、CureTech)又は表6の抗PD‐1抗体のうちのいずれの、VL及び/又はVHドメインを有し;より好ましくは、このような抗PD‐1モノクローナル抗体のVL領域のCDRLのうちの1つ、2つ若しくは3つ全て、及び
/又はVHドメインのCDRHのうちの1つ、2つ若しくは3つ全てを有する。本発明の
方法及び組成物において有用な固有の結合特性を有する追加の抗PD‐1抗体が、最近同定された(米国特許出願第62/198,867号を参照)。特に好ましいのは、抗PD‐1抗体「PD‐1 mAb 5」(hPD‐1 mAb 2、MacroGenics);「PD‐1 mAb 6」(hPD‐1 mAb 7、MacroGenics);「PD‐1 mAb 7」(hPD‐1 mAb 9、MacroGenics);又は「PD‐1 mAb 8」(hPD‐1 mAb 15、MacroGenics)のヒト化VH及び/又はVLドメインを有し;より好ましくは、このような抗PD‐1モノクローナル抗体のVL領域のCDRLのうちの1つ、2つ若しくは3つ全て、及び/又はV
HドメインのCDRHのうちの1つ、2つ若しくは3つ全てを有する、PD‐1結合分子
である。このような好ましくは抗PD‐1結合分子としては、変異型Fcドメインを有する抗体、二重特異性(又は多重特異性)抗体、キメラ又はヒト化抗体等が挙げられる。
【0129】
1.PD‐1 mAb 1
PD‐1 mAb 1のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号42)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVESGGG VVQPGRSLRL DCKASGITFS NSGMHWVRQA PGKGLEWVAV
IWYDGSKRYY
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLF LQMNSLRAED TAVYYCATND
DYWGQGTLVT VSS
【0130】
PD‐1 mAb 1のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号43)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRASQSVS
SYLAWYQQKP GQAPRLLIYD
ASNRATGIPA RFSGSGSGTD FTLTISSLEP EDFAVYYCQQ
SSNWPRTFGQ
GTKVEIK
【0131】
2.PD‐1 mAb 2
PD‐1 mAb 2のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号44)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVQSGVE VKKPGASVKV SCKASGYTFT NYYMYWVRQA PGQGLEWMGG
INPSNGGTNF
NEKFKNRVTL TTDSSTTTAY MELKSLQFDD TAVYYCARRD
YRFDMGFDYW GQGTTVTVSS
【0132】
PD‐1 mAb 2のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号45)を以下に示す(
CDRL残基は下線を付して示す):
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRASKGVS
TSGYSYLHWY QQKPGQAPRL
LIYLASYLES GVPARFSGSG SGTDFTLTIS SLEPEDFAVY YCQHSRDLPL
TFGGGTKVEI K
【0133】
3.PD‐1 mAb 3
PD‐1 mAb 3のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号46)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLQQSGAE LAKPGASVQM SCKASGYSFT SSWIHWVKQR PGQGLEWIGY
IYPSTGFTEY
NQKFKDKATL TADKSSSTAY MQLSSLTSED SAVYYCARWR
DSSGYHAMDYWGQGTSVTVSS
【0134】
PD‐1 mAb 3のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号47)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIVLTQSPAS LTVSLGQRAT ISCRASQSVS
TSGYSYMHWY QQKPGQPPKL
LIKFGSNLES GIPARFSGSG SGTDFTLNIH PVEEEDTATY YCQHSWEIPY
TFGGGTKLEI K
【0135】
4.PD‐1 mAb 4
PD‐1 mAb 4のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号48)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVQSGSE LKKPGASVKI SCKASGYTFT NYGMNWVRQA PGQGLQWMGW
INTDSGESTY
AEEFKGRFVF SLDTSVNTAY LQITSLTAED TGMYFCVRVG
YDALDYWGQG TLVTVSS
【0136】
PD‐1 mAb 4のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号49)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
EIVLTQSPSS LSASVGDRVT ITCSARSSVS
YMHWFQQKPG KAPKLWIYRT
SNLASGVPSR FSGSGSGTSY CLTINSLQPE DFATYYCQQR
SSFPLTFGGG
TKLEIK
【0137】
5.PD‐1 mAb 5
PD‐1 mAb 5のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号50)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFVFS SFGMHWVRQA PGKGLEWVAY
ISSGSMSISY
ADTVKGRFTI SRDNAKNTLY LQMNSLRTED TALYYCASLS
DYFDYWGQGT TVTVSS
【0138】
PD‐1 mAb 5のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号51)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DVVMTQSPLS LPVTLGQPAS ISCRSSQSLV
HSTGNTYLHW YLQKPGQSPQ
LLIYRVSNRF
SGVPDRFSGS GSGTDFTLKI SRVEAEDVGV YYCSQTTHVP
WTFGQGTKLE IK
【0139】
6.PD‐1 mAb 6
PD‐1 mAb 6のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号52)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYSFT SYWMNWVRQA PGQGLEWXGV
IHPSDSETWL
DQKFKDRVTI TVDKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCAREH
YGTSPFAYWG QGTLVTVSS
ここでXはI又はAである。
【0140】
PD‐1 mAb 6のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号53)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRAX
1
ESVD NYGMSFMNWF QQKPGQPPKL
LIHAASNX
2
GS GVPSRFSGSG SGTDFTLTIS SLEPEDFAVY FCQQSKEVPY
TFGGGTKVEI K
ここで;X1はN若しくはSであり、X2はQ若しくはRであり;又はX1はNであり、X2はQであり;又はX1はSでありX2はQであり;又はX1はSであり、X2はRである。
【0141】
特定の実施形態では、PD‐1 mAb 6は:
(a)配列番号52、ただしXはIである;及び配列番号53、ただしX1はNであり
、X2はQである;又は
(b)配列番号52、ただしXはIである;及び配列番号53、ただしX1はSであり
、X2はQである
を含む。
【0142】
7.PD‐1 mAb 7
PD‐1 mAb 7のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号54)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LX1RPGGSLKL SCAASGFTFS SYLVX
2
WVRQA PGKGLEWX3AT
ISGGGGNTYY
SDSVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSX4RAED TATYYCARYG
FDGAWFAYWG QGTLVTVSS
ここでX1はV若しくはAであり、X2はS若しくはGであり、X3はV若しくはTであり
、X4はL若しくはAであるか;X1はVであり、X2はSであり、X3はVであり、X4は
Lであるか;又はX1はAであり、X2はGであり、X3はTであり、X4はAである。
【0143】
PD‐1 mAb 7のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号55)を以下に示す(CDRL残基は下線を付して示す):
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASENIY
X
1
YLAWYQQKP GKAPKLLIYX
2
AKTLAAGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQH HYAVPWTFGQ
GTKLEIK
ここで:X1はS若しくはNであり、X2はN若しくはDであるか;又はX1はSであり、
X2はNであるか;又はX1はNであり、X2はDである。
【0144】
好ましい実施形態では、PD‐1 mAb 7は:
(a)配列番号54、ただしX1はVであり、X2はSであり、X3はVであり、X4はLである;及び配列番号55、ただしX1はSであり、X2はNである;又は
(b)配列番号54、ただしX1はAであり、X2はGであり、X3はTであり、X4はAである;及び配列番号55、ただしX1はNであり、X2はDである
を含む。
【0145】
8.PD‐1 mAb 8
PD‐1 mAb 8のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号56)を以下に示す(CDRH残基は下線を付して示す):
EVQLVESGGG LVRPGGSLRL SCAASGFTFS SYLISWVRQA PGKGLEWVAA
ISGGGADTYY
ADSVKGRFTI SRDNAKNSLY LQMNSLRAED TATYYCARRG
TYAMDYWGQG TLVTVSS
【0146】
PD‐1 mAb 8のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号57)を以下に示す(
CDRL残基は下線を付して示す):
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASENIY NYLAWYQQKP GKAPKLLIYD
AKTLAAGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQH
HYAVPWTFGQ
GTKLEIK
【0147】
9.更なる抗PD‐1抗体
本発明の方法及び組成物で利用できる更なる抗PD‐1抗体を、表6に提供する。
【0148】
【0149】
10.更なるPD‐1抗体
特定の実施形態では、本発明の方法及び組成物において有用なPD‐1抗体は、上述の抗体のうちのいずれ(例えばPD‐1 mAb 1、PD‐1 mAb 2、PD‐1 mAb 3、PD‐1 mAb 4、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1 mAb 7、PD‐1 mAb 8、又は表6の抗PD‐1抗体のうちのいずれ)のVL及びVHドメイン、κCLドメイン、並びにIgG4 Fcドメインを備え、任意にC末端リシン残基を有しない。このような抗体は好ましくは、IgG4 CH1ドメイン及びヒンジドメインを備え、より好ましくは、S228Pの置換(この番号付与はKabatに記載のEUインデックスによるものである)を含む安定化IgG4ヒンジドメインを備える。
【0150】
κCLドメインのアミノ酸配列(配列番号13)は、上で提示されている。
【0151】
IgG4 CH1ドメイン及び安定化ヒンジドメインのアミノ酸配列(配列番号16)は、上で提示されている。
【0152】
IgG4 CH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列(配列番号4)は、上で提示されている。
【0153】
「PD‐1 mAb 6‐ISQ」と呼ばれる例示的な抗PD‐1抗体は:PD‐1 mAb 6(配列番号53)のVLドメイン(ここでX1はSであり、X2はQである)及びκCL(配列番号13)を有する軽鎖;並びにPD‐1 mAb 6(配列番号52)のVHドメイン(ここでX1はIである)、IgG4 CH1ドメイン、安定化IgG
4ヒンジドメイン(配列番号16)、及びIgG4 CH2‐CH3 ドメイン(配列番号4)を有する重鎖を含む。
【0154】
PD‐1 mAb 6‐ISQの完全な軽鎖のアミノ酸配列(配列番号58)を以下に示す:
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRASESVD NYGMSFMNWF QQKPGQPPKL
LIHAASNQGS GVPSRFSGSG SGTDFTLTIS SLEPEDFAVY FCQQSKEVPY
TFGGGTKVEI KRTVAAPSVF IFPPSDEQLK SGTASVVCLL NNFYPREAKV
QWKVDNALQS GNSQESVTEQ DSKDSTYSLS STLTLSKADY EKHKVYACEV
THQGLSSPVT KSFNRGEC
【0155】
PD‐1 mAb 6‐ISQの完全な重鎖のアミノ酸配列(配列番号59)を以下に示す:
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYSFT SYWMNWVRQA PGQGLEWIGV
IHPSDSETWL DQKFKDRVTI TVDKSTSTAY MELSSLRSED TAVYYCAREH
YGTSPFAYWG QGTLVTVSSA STKGPSVFPL APCSRSTSES TAALGCLVKD
YFPEPVTVSW NSGALTSGVH TFPAVLQSSG LYSLSSVVTV PSSSLGTKTY
TCNVDHKPSN TKVDKRVESK YGPPCPPCPA PEFLGGPSVF LFPPKPKDTL
MISRTPEVTC VVVDVSQEDP EVQFNWYVDG VEVHNAKTKP REEQFNSTYR
VVSVLTVLHQ DWLNGKEYKC KVSNKGLPSS IEKTISKAKG QPREPQVYTL
PPSQEEMTKN QVSLTCLVKG FYPSDIAVEW ESNGQPENNY KTTPPVLDSD
GSFFLYSRLT VDKSRWQEGN VFSCSVMHEA LHNHYTQKSL SLSLG
【0156】
別の例示的な抗PD‐1抗体はPD‐1 mAb 1(ニボルマブ)であり、これは:VLドメイン(配列番号43)及びκCLドメイン(例えば配列番号13を参照)を有する軽鎖;並びにVHドメイン(配列番号42)、IgG4 CH1ドメイン(例えば配列番号9を参照)、安定化IgG4ヒンジドメイン(例えば配列番号12を参照)、及びIgG4 CH2‐CH3ドメイン(例えば配列番号4を参照)を有する重鎖を含む、ヒト
抗体である。
【0157】
別の例示的な抗PD‐1抗体はPD‐1 mAb 2(ペンブロリズマブ)であり、これは:VLドメイン(配列番号45)及びκCLドメイン(例えば配列番号13を参照)を有する軽鎖;並びにVHドメイン(配列番号44)、IgG4 CH1ドメイン(例えば配列番号9を参照)、安定化IgG4ヒンジドメイン(例えば配列番号12を参照)、及びIgG4 CH2‐CH3ドメイン(例えば配列番号4を参照)を有する重鎖を含む、ヒト化抗体である。
【0158】
D.製造方法
本発明が包含するB7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、当該技術分野において公知の方法により、例えば合成又は組み換えによって製造できる(例えばKelley, R. F. et al. (1990) In: Genetic Engineering Principles and Methods, Setlow, J.K. Ed., Plenum Press, N.Y., vol. 12, pp 1-19; Stewart, J.M et al. (1984) Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Co., Rockford, ILを参照;また、米国特許第4,1
05,603号;米国特許第3,972,859号;米国特許第3,842,067号;及び米国特許第3,862,925号;Merrifield, B. (1986) “Solid Phase Synthesis,” Science 232(4748):341-347; Houghten, R.A. (1985) “General Method For The Rapid Solid-Phase Synthesis Of Large Numbers Of Peptides: Specificity Of Antigen-Antibody Interaction At The Level Of Individual Amino Acids,” Proc. Natl. Acad.
Sci. (U.S.A.) 82(15):5131-5135; Ganesan, A. (2006) “Solid-Phase Synthesis In The Twenty-First Century,” Mini Rev. Med. Chem. 6(1):3-10を参照)。
【0159】
あるいは、所望の抗B7‐H3抗体及び/又は抗PD‐1抗体のCDRのうちの1つ又は複数を有する好適なB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するよう加工された市販のマウスを用いて得ることができる。ヒト化又はヒト抗体の生成のために、より望ましい(例えば完全なヒト抗体)又はよりロバストな免疫応答を生成するよう設計された遺伝子組み換え動物も使用してよい。このような技術の例は、XENOMOUSE(商標)(Abgenix,Inc.,フレモント、CA)並びにHUMAb‐Mouse(登録商標)及びTC MOUSE(商標)(いずれもMedarex,Inc.,プリンストン、NJ)である。
【0160】
更なる代替的な方法では、当該技術分野において公知の方法を用いて、上述のような結合分子を組み換えによって作製し、発現させてよい。抗体は、まず宿主動物から作製された抗体を単離し、遺伝子配列を取得し、上記遺伝子配列を使用して宿主細胞(例えばCHO細胞)内で抗体を組み換え発現させることによって作製できる。採用できる別の方法は、植物(例えばタバコ)又はトランスジェニックミルク中で抗体配列を発現させることである。植物又はミルク中で抗体を組み換え発現させるための好適な方法は、開示されている(例えばPeeters et al. (2001) "Production Of Antibodies And Antibody Fragments
In Plants," Vaccine 19:2756; Lonberg, N. et al. (1995) "Human Antibodies From Transgenic Mice," Int. Rev. Immunol 13:65-93; and Pollock et a/.(1999) "Transgenic Milk As A Method For The Production Of Recombinant Antibodies," J. Immunol Methods 231 : 147-157を参照)。例えばヒト化抗体、二重特異性抗体、単鎖等の抗体の誘導体を作製するための好適な方法は、当該技術分野において公知である。別の代替案では、抗体はファージディスプレイ技術によって、組み換えによって作製できる(例えば米国特許第5,565,332号;米国特許第5,580,717号;米国特許第5,733,743号;米国特許第6,265,150号;及びWinter, G. et al. (1994) "Making Antibodies By Phage Display Technology," Annu. Rev. Immunol. 12.433-455を参照)。
【0161】
関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターは:電気穿
孔;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE‐デキストラン又は他の物質を使用したトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;及び感染(例えばベクターがワクシニアウイルス等の感染性因子である場合)を含む多数の適切な手段のうちのいずれによって、宿主細胞に導入できる。ベクター又はポリヌクレオチドの導入の選択は、宿主細胞の特徴に左右される場合が多い。
【0162】
関心対象の抗体、ポリペプチド、又はタンパク質をエンコードする遺伝子を単離する目的で、異種DNAを過剰発現できるいずれの宿主細胞を使用できる。好適な哺乳類宿主細胞の非限定的な例としては、COS、HeLa及びCHO細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、宿主細胞は、対応する関心対象の内因性抗体又はタンパク質(これらが宿主細胞中に存在する場合)より5倍高い、より好ましくは10倍高い、更に好ましくは20倍高いレベルのcDNAを発現する。cDNA発現標的(例えばB7‐H3又はPD‐1)への免疫特異的結合に関する宿主細胞のスクリーニングは好ましくは、イムノアッセイ又はFACSを用いて達成してよい。関心対象の抗体又はタンパク質を過剰発現する細胞を識別できる。
【0163】
本発明は、本明細書に記載の抗B7‐H3抗体及び/又は抗PD‐1抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチド(好ましくはエピトープ結合ドメイン)を含む。本発明のポリペプチドは、当該技術分野において公知の手順で産生できる。上記ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解若しくは他の分解によって、上述のような組み換え法(即ち単一若しくは融合ポリペプチド)によって、又は化学的合成によって産生できる。ポリペプチド、特にアミノ酸最高約50個分の比較的短いポリペプチドは、化学的合成によって便利に作製される。
【0164】
本発明は、いずれの上述のようなB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子のポリペプチドの、このような分子の特性に有意な影響を及ぼさない修飾、及び活性が増強又は低減された変異型を含む。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野において慣用的に実践されており、本明細書で詳細に説明する必要はない。修飾されたポリペプチドの例としては、アミノ酸残基の保存的置換を有するポリペプチド、機能的活性を大きく劣化するように変化させない1つ若しくは複数の欠失若しくは追加、又は化学的類似体の使用が挙げられる。互いを保存的に置換できるアミノ酸残基としては:グリシン/アラニン;セリン/トレオニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;リジン/アルギニン;及びフェニルアラニン/チロシンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリペプチドとしては、グリコシル化及び非グリコシル化ポリペプチド、並びに例えば異なる複数の糖によるグリコシル化、アセチル化及びリン酸化といった、その他の変換後修飾を有するポリペプチドも挙げられる。好ましくは、アミノ酸置換は保存的であり、即ち置換されたアミノ酸は、オリジナルのアミノ酸と同様の化学的特性を有する。このような保存的置換は当該技術分野において公知であり、その例は上述されている。アミノ酸修飾は、1つ又は複数のアミノ酸を変化させるか又は修飾することから、可変ドメイン等の領域の完全な再設計にまで及んでよい。可変ドメインの変化は、結合親和性及び/又は免疫特異性を変化させる。他の修飾方法としては、酵素的手段、酸化的置換及びキレート化を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の連結技術の使用が挙げられる。修飾は例えば、イムノアッセイのための標識の付与、例えばラジオイムノアッセイのための放射性部分の付与等のために使用できる。修飾されたポリペプチドは、当該技術分野において確立された手順を用いて作製され、また当該技術分野において公知の標準的なアッセイを用いてスクリーニングできる。
【0165】
本発明は、本発明の抗体のうちの1つ又は複数を含む融合タンパク質も包含する。一実施形態では、軽鎖、重鎖又は軽鎖及び重鎖の両方を備える、融合ポリペプチドが提供される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、異種免疫グロブリン定常領域を含有する。
別の実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書に記載の又は公的に寄託されたハイブリドーマから産生された抗体のVLドメイン及びVHドメインを含有する。本発明の目的のために、抗体融合タンパク質は、B7‐H3及び/又はPD‐1に免疫特異的に結合する1つ又は複数のエピトープ結合部位、並びにネイティブ分子内では上記抗体融合タンパク質が付着しない別のアミノ酸配列、例えば別の領域からの異種配列又は同種配列に免疫特異的に結合する、1つ又は複数のポリペプチドドメインを含有する。
【0166】
E.医薬組成物
本発明は、B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子又はこれらの分子の組み合わせを含む組成物を包含する。本発明の組成物は、医薬組成物の製造に使用できるバルク薬剤組成物(例えば不純又は非滅菌組成物)、及び単位剤形の調製に使用できる医薬組成物(即ち被験者又は患者への投与に好適な組成物)を含む。このような組成物は、B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子又はこれらの分子の組み合わせと、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。好ましくは、本発明の組成物は、B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子又はこれらの分子の組み合わせと、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。ある好ましい態様では、このような組成物は実質的に精製されている(即ちその効果を制限するか又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。
【0167】
2つ以上の治療剤を投与する場合、これらの作用剤は、同一の製剤中に共に処方してよく、又は別個の組成物へと処方してもよい。従っていくつかの実施形態では、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、同一の医薬組成物に共に処方される。代替実施形態では、これらの分子は別個の医薬組成物中に処方される。
【0168】
B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子、又はこれらの分子の組み合わせの様々な処方を、投与のために用いてよい。1つ又は複数の薬理学的に活性の作用剤に加えて、本発明の組成物は、賦形剤及び助剤といった、好適な薬学的に許容可能なキャリアを含有してよく、これらは、薬理学的に有効な物質の投与を促進する、又は作用部位への送達のために薬学的に使用できる調製物への活性化合物の加工を促進する、比較的不活性の物質である。例えば賦形剤は、形状若しくは一貫性を与えることができ、又は希釈剤として作用できる。好適な賦形剤としては、安定剤、湿潤及び乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル化剤、緩衝剤、及び皮膚浸透促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
ある具体的実施形態では、用語「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して、連邦規制当局若しくは州政府によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。用語「キャリア(carrier)」は、希釈剤、アジュバント(例えばフロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、又は治療薬の投与に用いられるビヒクルを指す。これらの薬学的キャリアは、水及び石油、動物油、植物油若しくは合成油を含む油(例えば落花生油、大豆油、鉱物油、胡麻油等)等の、無菌液体とすることができる。医薬組成物を静脈投与する場合、生理食塩水、水性デキストロース及びグリセロール溶液といった水性キャリアが好ましい。好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。必要な場合は、上記組成物は、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、ピル、カプセル、粉体、徐放性製剤等の形態を取ることができる。
【0170】
一般に、本発明の組成物の成分は、例えば活性作用剤の量を示すアンプル又はサシェ等の気密性コンテナ中の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別個に、又は単位剤形にまと
めて混合された状態で供給される。組成物を点滴によって投与する場合、組成物は、滅菌された薬学的グレードの水又は食塩水を内包する点滴ボトルを用いて吐出できる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合できるように、注射用無菌水又は食塩水のアンプルを提供できる。
【0171】
本発明の組成物は、中性又は塩形態として処方できる。薬学的に許容可能な塩としては:塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等由来の陰イオンを有して形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2‐エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等由来の陽イオンを有して形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
好ましくは、治療剤(即ちB7‐H3結合分子、PD‐1結合分子、又はこれらの分子の組み合わせ)は、上記1つ又は複数の分子の量を示すアンプル又は小袋等の気密性コンテナ内の乾燥滅菌凍結粉末として供給される。一実施形態では、治療剤は、気密性コンテナ内の乾燥滅菌凍結粉末又は無水濃縮物として供給され、例えば水又は食塩水を用いて、被験者への投与に適切な濃度へと再構成できる。ある代替実施形態では、治療剤は、治療剤の量及び濃度を示す気密性コンテナ内に、液体形態で供給される。
【0173】
凍結乾燥された治療剤(即ちB7‐H3結合分子、PD‐1結合分子、又はこれらの分子の組み合わせ)は、その元々のコンテナ内において2℃~8℃で保管するべきであり、また上記治療剤は、再構成後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内又は1時間以内に投与するべきである。ある代替実施形態では、治療剤は、上記1つ若しくは複数の分子、融合タンパク質又はコンジュゲート分子の量及び濃度を示す気密性コンテナ内に、液体形態で供給される。好ましくは、上記治療剤が液体形態で提供される場合、これを気密性コンテナ内に入れて供給する。
【0174】
本発明はまた、B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子又はこれらの分子の組み合わせを、単独で、又は他の作用剤、特に薬学的に許容可能なキャリアと共に内包する1つ又は複数のコンテナを備える、医薬パック又はキットも提供する。更に、疾患の治療に有用な1つ又は複数の他の予防剤又は治療剤も、上記医薬パック又はキットに含めることができる。本発明はまた、本発明の医薬組成物の成分のうちの1つ又は複数で充填された1つ又は複数のコンテナを備える、医薬パック又はキットも提供する。任意に、このような1つ又は複数のコンテナは、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。
【0175】
キットは、B7‐H3結合分子、PD‐1結合分子又はこれらの分子の組み合わせを含むことができる。このキットは更に、癌の治療に有用な1つ若しくは複数の他の予防剤及び/若しくは治療剤を、1つ若しくは複数のコンテナ内に含むことができ;並びに/又はこのキットは更に、1つ若しくは複数の癌抗原に結合する1つ若しくは複数の細胞毒性抗体を含むことができる。特定の実施形態では、他の予防剤又は治療剤は、化学療法剤である。他の実施形態では、予防剤又は治療剤は生物学的治療剤又はホルモン療法剤である。
【0176】
F.使用方法
上述のように、B7‐H3に特異的に結合する分子、及びPD‐1に特異的に結合する分子を、癌又は他の疾患を有する被験者において、治療を目的として使用してよい。従って本発明は、それを必要とする被験者にB7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子を投与するステップを含む、癌の治療方法を提供する。特に本発明は、B7‐H3結合分子が、本明細書に記載の抗B7‐H3抗体のエピトープ結合部位を備え、またPD‐1結合分子が、本明細書に記載の抗PD‐1抗体のエピトープ結合部位を備える、上述のような方法
を包含する。一実施形態では、B7‐H3結合分子は抗体である。一実施形態では、PD‐1結合分子は抗体である。更なる実施形態では、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の両方は抗体である。
【0177】
一実施形態では、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は同時に投与される。本明細書において使用される場合、このような「同時(concurrent)」は:
(A)B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の両方を含有する単一の医薬組成物の投与。これらの分子は同一の分子(例えば二重特異性抗体)であってよく、又は別個(例えば抗B7‐H3抗体若しくはその抗原結合断片、及び抗PD‐1‐抗体若しくはその抗原結合断片)であってよい;あるいは
(B)2つ以上の医薬組成物(そのうちの1つの組成物は、B7‐H3に特異的に結合する分子を含有し、そのうちの別の1つの組成物は、PD‐1に特異的に結合する分子を含有する)の別個の投与であって、これらの組成物は48時間の期間内に投与される、投与
を指すことを意図している。
【0178】
第2の実施形態では、2つの別個の分子を採用し、これらの分子を「順次(sequentially)」投与する(例えば抗B7‐H3抗体を投与し、その後の時点において抗PD‐1抗体を提供するか、又はその逆とする)。このような順次投与において、2番目に投与される組成物は、最初に投与される組成物の投与後、少なくとも48時間以上の時点で投与される。
【0179】
治療を提供すること、又は「治療すること(treating)」は、(例えば乳癌、胃癌若しくは前立腺癌の腫瘍の文脈での)腫瘍のサイズの退縮、癌細胞の成長の遅延、転移の発生の遅延、疾患から発生する症状の低減、疾患に罹患した人物の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬品の用量の低減、標的化及び/若しくは内在化等による別の薬品の効果の増強、疾患の進行の遅延、並びに/又は個体の寿命の延長といった臨床的結果を含むがこれらに限定されない、有益な又は望ましい結果のいずれの指標を指す。
【0180】
治療の被験者としては動物、最も好ましくは、非霊長類(ウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、げっ歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類が挙げられる。ある好ましい実施形態では、被験者はヒトである。
【0181】
本発明の様々な実施形態によって治療できる例示的な障害としては、増殖性障害、細胞増殖性障害及び癌(特にB7‐H3発現性癌)が挙げられるがこれらに限定されない。様々な実施形態では、本発明は、治療的有効量のB7‐H3に特異的に結合する分子及びPD‐1に特異的に結合する分子を被験者に投与することを含む、被験者の疾患又は障害の治療、予防又は管理のための方法及び組成物を包含する。例えば、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は特に、一次腫瘍の成長及び癌細胞の転移の防止、阻害、低減又は退縮のために有用である。特定の作用機序によって束縛することを意図するものではないが、このような結合分子は、癌細胞に対するエフェクタ機能の仲介、癌細胞に対する免疫系の活性化の促進、細胞表面抗原及び/又は癌細胞上の受容体の架橋、細胞死若しくは陰性成長調節シグナリングの増強、又はこれらの組み合わせを行うことができ、これは腫瘍の除去及び/又は腫瘍の低減をもたらす。
【0182】
本明細書において使用される場合、医薬組成物の「有効量(effective amount)」は、一実施形態において:疾患によってもたらされる症状の低減;感染症の症状(例えばウイルス負荷、発熱、疼痛、敗血症等)、又は癌の症状(例えば癌細胞の増殖、腫瘍の存在、腫瘍転移等)を減弱させる疾患に起因する症状の減弱;これによる、疾患に罹患したヒトのQOLの上昇;疾患を治療するために必要な他の投薬量の低減;標的
化及び/若しくは内在化等による別の投薬の効果の増強;疾患の進行の遅延;並びに/又は個体の生存期間の延長を含むがこれらに限定されない、有益な又は所望の結果を得るために十分な量である。単独で投与される個々の有効成分に対して適用される場合、この用語は、当該成分のみを指す。組み合わせに対して適用される場合、この用語は、組み合わせて投与されるか、順次投与されるか、又は同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす複数の有効成分の合計量を指す。特定の投薬量について以下で議論する。
【0183】
一実施形態では、B7‐H3結合分子(例えば抗体)及びPD‐1結合分子(例えば抗体)を用いて、B7‐H3の発現に関連する又はB7‐H3の発現を特徴とする、いずれの疾患又は状態を治療できる。従って限定するものではないが、本発明の方法及び組成物は:急性骨髄性白血病;副腎腫瘍;AIDS関連癌;胞巣状軟部肉腫;星状細胞腫瘍;膀胱癌;骨癌;脳及び脊髄の癌;転移性脳腫瘍;乳癌;頸動脈球腫瘍;子宮頸癌;軟骨肉腫;脊索腫;嫌色素性腎細胞癌;明細胞癌;大腸癌;結腸直腸癌;皮膚の良性線維性組織球腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;上衣腫;ユーイング腫瘍;骨外性粘液型軟骨肉腫;骨性線維形成不全症;線維性骨異形成;胆嚢又は胆管癌;胃癌;妊娠性絨毛性疾患;胚細胞腫瘍;頭頸部癌;肝細胞癌;神経膠芽腫;膵島細胞腫瘍;カポジ肉腫;腎癌;白血病;脂肪腫/良性脂肪腫;脂肪肉腫/悪性脂肪腫;肝癌;リンパ腫;肺癌;髄芽腫;黒色腫;髄膜腫;多発性中皮腫;多発性内分泌腫瘍;多発性骨髄腫;骨髄異形成症候群;神経芽細胞腫;神経内分泌腫瘍;非小細胞肺癌;卵巣癌;膵臓癌;咽頭癌;甲状腺乳頭癌;副甲状腺腫瘍;小児癌;末梢神経鞘腫瘍;褐色細胞腫;下垂体腫瘍;前立腺癌;後部ブドウ膜黒色腫;希少な血液学的障害;腎細胞癌;腎転移性癌;ラブドイド腫瘍;横紋筋肉腫;肉腫;皮膚癌;軟組織肉腫;扁平上皮癌;胃癌;滑膜肉腫;精巣癌;胸腺癌;胸腺腫;甲状腺転移癌;並びに子宮癌の細胞を含むがこれらに限定されない癌細胞の存在を特徴とする癌を含む癌を対象とする免疫療法に使用してよい、このような免疫療法は、癌細胞の細胞分化を低減する、転移の進行(例えば発症及び程度)を遅延させる、並びに/又は癌細胞に対する免疫系の活性を促進するために十分なものであってよい。
【0184】
特に、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の組み合わせは、それぞれB7‐H3を高発現する、頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、胃癌、神経膠芽細胞腫、腎臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、咽頭癌、前立腺癌、腎細胞癌、並びに神経芽細胞腫及び横紋筋肉腫を含む小児期の小円形青色細胞腫瘍の治療に有用である。
【0185】
B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、複数の生理学的(例えばインビボ)状態において結合を促進する濃度で投与されることが理解される。B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子(例えば抗B7‐H3及び抗PD‐1抗体)は、ADCCを強化するか又はT細胞を刺激する作用剤等、個体固有の免疫応答を増強又は指向決定する追加の作用剤と共に投与してよい。
【0186】
更に別の実施形態では、B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子を、放射性分子、毒素(例えばカリチアマイシン)、化学療法用分子、化学療法用化合物を含有するリポソーム又は他の小胞とコンジュゲートさせるか又は結合させ、上記治療を必要とする個体に投与することによって、B7‐H3結合分子によって認識される抗原を含有する癌細胞に対してこれらの化合物を標的化して、癌又は疾患細胞を除去できる。いずれの特定の理論に限定するものではないが、B7‐H3結合分子(例えば抗B7‐H3抗体)を、表面にB7‐H3を支承する細胞によって内在化し、これによって、コンジュゲートされた部分を細胞へと送達して、治療的効果を誘発し、またPD‐1結合分子は免疫系の活性化を促進する。
【0187】
更に別の実施形態では、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子(例えば抗B7‐H
3及び抗PD‐1抗体)を、転移の進行の遅延、抑制又は予防のために、腫瘍の外科的除去の時点においてアジュバント療法として採用できる。上記分子は、腫瘍のサイズの削減によって手術を可能とする若しくは簡略化する、手術中に組織を保護する、及び/又はもたらされるいずれの破壊を低減するために、手術前に投与することもできる(非アジュバント療法)。
【0188】
FcγRIIIA及び/又はFcγRIIAに対する親和性が増大し、また任意にFcγRIIBに対する親和性が低下した、Fcドメインを有する分子は、FcγR結合時の活性化応答の増強につながり得、従って癌の治療及び/又は予防に対する治療的効力が増強される。従って、変異型Fcドメインを備えるB7‐H3結合分子は、FcγRが仲介するエフェクタ細胞機能(例えばADCC)が所望される疾患又は障害(例えば癌)の治療及び/又は予防において特に有用である。例えば、FcγRIIIAへの結合が増強されたB7‐H3結合分子は、免疫エフェクタ細胞(例えばNK細胞)上の細胞表面抗原及びFcγRIIIAに結合して、細胞に対するエフェクタ機能(例えばADCC、CDC、食作用、オプソニン作用等)を刺激できる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のB7‐H3結合分子は、癌の治療に特に適している。標準的なモノクローナル抗体療法の効力は、被験者のFcγRの多型性に左右される。Cartron, G. et al. (2002) “Therapeutic Activity Of Humanized Anti‐CD20 Monoclonal Antibody And Polymorphism In
IgG Fc Receptor FcgammaRIIIa Gene,” Blood 99:754-758; Weng, W.K. et al. (2003)
“Two Immunoglobulin G Fragment C Receptor Polymorphisms Independently Predict Response To Rituximab In Patients With Follicular Lymphoma,” J Clin Oncol. 21(21):3940-3947。これらの受容体は、エフェクタ細胞の表面に発現してADCCを仲介する。高親和性の対立遺伝子は、エフェクタ細胞がADCCを仲介する能力を改善する。特に、本明細書に記載の、(野生型Fcドメインに比べて)エフェクタ細胞上のFcγRIIIAに対する親和性が増強された変異型Fcドメインを備えるB7‐H3結合分子は、患者のFcγRの多型性にかかわらず、患者にとって比較的良好な免疫療法剤となる。
【0189】
G.投与及び投薬量
B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の組み合わせは、治療的有効量の上記組み合わせ、又はこれを含む1つ若しくは複数の医薬組成物を被験者に投与することによって、癌又は他の疾患若しくは障害に関連する1つ又は複数の症状を治療、予防及び改善するために提供できる。以下の実施形態のうちのいずれにおいて、癌は好ましくはB7‐H3発現性癌である。
【0190】
本明細書において使用される場合、用語「組み合わせ(combination)」は、2つ以上の治療剤(例えばB7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子)の使用を指す。用語「組み合わせ」の使用は、障害を有する被験者に複数の治療剤を投与する順序を制限するものではなく、また、これらの作用剤を全く同一の時点で投与することを意味するものではなく、これらの作用剤を被験者に順次、ある時間間隔内に投与することを意味し、これにより、これらの作用剤は、これらを他の様式で投与した場合よりも大きな便益を提供するよう作用できる。例えば所望の治療又は予防効果を提供するために、各治療剤(即ちB7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子)を、同時に、若しくはいずれの順序で順次、及び/又は異なる時点で、投与してよい。更に、各作用剤は、治療の全経過にわたって投与する必要はない。例えば療法の作用剤をある期間にわたって投与し、その後一方の作用剤を中断してよい。各治療剤は、いずれの適切な形態で、いずれの好適な経路で(例えば一方を経口経路、もう一方を非経口経路で)別個に投与できる。
【0191】
B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の組み合わせを提供するために、多様な送達系及び投与経路を利用できる。B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子の投与に使用できる送達系としては、限定するものではないが、抗体又は融合タンパク質を発現できるリ
ポソーム、微粒子マイクロカプセル、組み換え細胞内へのカプセル化;受容体媒介性エンドサイトーシス(例えばWu et al. (1987) “Receptor‐Mediated In Vitro Gene Transformation By A Soluble DNA Carrier System,” J. Biol. Chem. 262:4429‐4432を参照
);レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築等が挙げられる。B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子を投与する方法としては:非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下);硬膜外;並びに粘膜(例えば鼻腔内及び経口経路)が挙げられるがこれらに限定されない。ある具体的実施形態では、分子は、筋肉内、静脈内又は皮下投与される。組成物は、いずれの便利な経路によって、例えば点滴又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚層(例えば口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を通した吸収によって投与してよく、他の生物学的活性作用剤と共に投与してよい。投与は全身性又は局所性とすることができる。更に、例えば吸入器又は噴霧器の使用及びエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与を採用することもできる。例えば米国特許第6,019,968号;米国特許第5,985,320号;米国特許第5,985,309号;米国特許第5,934,272号;米国特許第5,874,064号;米国特許第5,855,913号;米国特許第5,290,540号;米国特許第4,880,078号;国際公開第92/19244号;国際公開第97/32572号;国際公開第97/44013号;国際公開第98/31346号;国際公開第99/66903を参照(これらはそれぞれ、参照により本出願に援用される)。
【0192】
治療的又は予防的有効量のB7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子を用いた被験者の治療は、単回治療を含むことができ、又は好ましくは、複数回の一連の治療を含むことができる。例えば被験者を、B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子で、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、2か月に1回、約2~約52週間にわたって、治療してよい。治療に使用される分子の有効投薬量は、特定の治療の経過にわたって増加又は減少し得る。本明細書に記載されているように、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、同時に、又は同一の間隔で、又は同一回数の治療にわたって、投与する必要はない。
【0193】
好ましくは、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、1回又は複数の用量を含む治療レジメンを用いて投与され、この治療レジメンは、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、又は8週間超にわたって投与される。特定の実施形態では、治療レジメンは、有効量の上記分子の用量を断続的に投与するステップ(例えば1週目及び4週目に1用量を投与し、2週目又は3週目には上記分子の用量を投与しない)を含む。典型的には、1回、2回、3回、4回、5回又は6回以上の治療コースが存在する。各コースは同一のレジメンであっても異なるレジメンであってもよい。
【0194】
患者に投与されるB7‐H3結合分子、PD‐1結合分子、又はこれらの分子の組み合わせの投薬量は典型的には、少なくとも約1.0mg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約15mg/kg体重、又は少なくとも約20mg/kg体重である。本発明が包含する抗体に関して、患者に投与される投薬量は典型的には、患者の体重に対し、1.0mg/kg~20mg/kgである。好ましくは、患者に投与される投薬量は、患者の体重に対し、1.0mg/kg~20mg/kg、1.0mg/kg~10mg/kg、1.0mg/kg~5mg/kg、2.0mg/kg~20mg/kg、又は5mg/kg~20mg/kgである。一実施形態では、患者に投与される投薬量は、1mg/kg~15mg/kg体重である。別の実施形態では、患者に投与される投薬量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、又は15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、又は20mg/kg体重である。算出される用量
は、ベースラインの患者の体重に基づいて投与される。ベースライン又は確立された安定体重からの、体重の有意な(≧10%の)変化は、用量の再計算を要求することになる。
【0195】
あるいは、固定投薬量のB7‐H3結合分子、PD‐1結合分子、又はこれらの分子の組み合わせを、体重に関係なく患者に投与する。本発明が包含する抗体に関して、患者に投与される固定投薬量は典型的には、50mg~500mgである。好ましくは、患者に投与される固定投薬量は、50mg~300mg、100mg~300mg、又は100mg~200mgである。一実施形態では、患者に投与される固定投薬量は、100mg、200mg又は300mgである。
【0196】
様々な実施形態では、第1の治療剤(例えば抗B7‐H3抗体又は抗PD‐1抗体)は、障害を有する被験者に対する第2の(又は後続の)治療剤(例えば抗B7‐H3抗体又は抗PD‐1抗体)の投与の前に(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、若しくは12週間前に)、上記投与と同時に、又は上記投与に続いて(例えば5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、若しくは12週間後に)、投与できる。好ましい実施形態では、2つ以上の作用剤を、患者の同一の受診時に投与する。
【0197】
本明細書に記載されているように、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子は、異なる投薬量、異なる濃度、異なる時点及び/又は異なるスケジュールで投与してよい。
【0198】
上述のように、本発明に従って、B7‐H3に特異的に結合する分子とPD‐1に特異的に結合する分子との組み合わせを、それを必要とするレシピエント被験者に提供するために、様々な投薬レジメン及び投与経路を採用してよいが、このような治療において使用するために、特定の組み合わせ、投薬レジメン及び投与経路が特に好ましい。このような投薬レジメン及び投与経路で、抗B7‐H3抗体(例えばhBRCA84D‐2)を単独で、及び抗PD‐1抗体(例えばペンブロリズマブ)と組み合わせて使用することが、特に好ましい。
【0199】
特定の実施形態では、抗B7‐H3抗体の用量を1週間に1回投与することと、抗PD‐1抗体の1用量を2又は3週間に1回投与することとを組み合わせる(ここで、このような併用治療レジメンの各投与を本明細書では「サイクル」と呼ぶ)。一実施形態では、1~15mg/kg(患者の体重)、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15mg/kg体重の抗B7‐H3抗体を1週間に1回投与する。一実施形態では、1~10mg/kg(患者の体重)、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/kg体重の抗PD‐1抗体、又は100、200若しくは300mgの固定用量の抗PD‐1抗体を、疾患の寛解又は管理不可能な毒性が観察されるまで、2又は3週間に1回投与する。
【0200】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1か月以上、少なくとも3か月以上、少なくとも6か月以上、又は少なくとも12か月以上の期間にわたって、抗B7‐H3抗体をIV点滴によって被験者に1週間に1回投与し、また抗PD‐1抗体をIV点滴によって被験者に2又は3週間に1回投与する。少なくとも6か月以上、又は少なくとも12か月以上、又は疾患の寛解若しくは管理不可能な毒性が観察されるまでの治療期間が特に好ましい。このような2又は3週間に1回のIV投与では、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体は共に投与しても順次投与してもよい。特に好ましい実施形態では、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体を、48時間以下離して、IV点滴によって被験者に順次投与する。このような順次投与では、抗B7‐H3抗体を、抗PD‐1抗体の投与の前又は後に投与し
てよい。
【0201】
被験者に抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体の併用治療を複数用量提供することが特に好ましい。従って治療レジメンは、1サイクル、少なくとも2サイクル以上、少なくとも3サイクル以上、少なくとも4サイクル以上、少なくとも5サイクル以上、又は少なくとも7サイクル以上を含んでよい。このようなサイクルそれぞれにおける各抗体の投薬量は、1回前に投与された投薬量と同一であっても異なっていてもよい。
【0202】
抗体をIVプッシュ又はボーラスとして投与するのではなく、このような投与をIV点滴によって達成することが好ましい。従って抗体は好ましくは、好適な希釈剤、例えば0.9%塩化ナトリウムを含む点滴バッグに入れて希釈される。輸液反応又はアレルギー反応が発生し得るため、このような輸液反応の防止のための予備投薬が推奨され、また抗体投与中にアナフィラキシーを警戒して観察するべきである。IV点滴を、30分~24時間の期間にわたって被験者に投与することが特に好ましい。特定の実施形態では、IV点滴は好ましくは、被験者が不良な輸液反応の兆候又は症状を示さない場合、30~180分若しくは30~120分若しくは30~90分にわたって、又は60分を超える期間にわたって、又はより短い期間にわたって、送達される。
【0203】
従って、癌を治療するための好ましい方法が提供される。この方法は、それを必要とする被験者に、抗B7‐H3抗体と抗PD‐1抗体との組み合わせを投与するステップを含み、ここで抗B7‐H3抗体は、1週間に1~15mg/kg体重の投薬量で投与され、抗PD‐1抗体は、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される。一実施形態では、抗B7‐H3抗体は、1、3、10、又は15mg/kg体重の投薬量で投与される。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体は、1週間に1mg/kg体重の投薬量で投与され、抗PD‐1抗体は、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体は、1週間に3mg/kg体重の投薬量で投与され、抗PD‐1抗体は、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体は、1週間に10mg/kg体重の投薬量で投与され、抗PD‐1抗体は、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体は、1週間に15mg/kg体重の投薬量で投与され、抗PD‐1抗体は、3週間毎に200mgの固定投薬量で投与される。以上の実施形態のうちのいずれにおいて、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体は、IV点滴によって投与され、またこれらが同一週に投与される際、これら両方を48時間、好ましくは24時間の期間内に投与してよい。
【0204】
癌を治療するための別の好ましい方法が提供される。この方法は、それを必要とする被験者に、抗B7‐H3抗体と抗PD‐1抗体との組み合わせを投与するステップを含み、ここで抗B7‐H3抗体の投薬量は、1週間に1~15mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は、2又は3週間毎に1~10mg/kg体重である。一実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は、1、3、10又は15mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗PD‐1抗体の投薬量は、1、2、3又は10mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は1mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は1mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は1mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は2mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は1mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は3mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は1mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は10mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は3mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は1mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は3mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は2mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は3mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は
3mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は3mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は10mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は10mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は1mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は10mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は2mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は10mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は3mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は10mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は10mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は15mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は1mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は15mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は2mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は15mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は3mg/kg体重である。更なる実施形態では、抗B7‐H3抗体の投薬量は15mg/kg体重であり、抗PD‐1抗体の投薬量は10mg/kg体重である。以上の実施形態のうちのいずれにおいて、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体は、IV点滴によって投与され、2又は3週間に1回、これら両方を48時間、好ましくは24時間の期間内に投与してよい。
【0205】
以上の実施形態のうちのいずれにおいて、抗B7‐H3抗体は、hBRCA84D、hBRCA69D、PRCA157のCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3ドメイン、又は表5に記載の抗B7‐H3抗体のうちのいずれのCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3ドメインを備え、また抗PD‐1抗体は、PD‐1 mAb 1、PD‐1 mAb 2、PD‐1 mAb
3、PD‐1 mAb 4、PD‐1 mAb 5、PD‐1 mAb 6、PD‐1
mAb 7、PD‐1 mAb 8のCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3ドメイン、又は表6に記載の抗PD‐1抗体のうちのいずれのCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2及びCDRH3ドメインを備える。以上の実施形態のうちのいずれにおいて、抗B7‐H3抗体はhBRCA84D‐2であり、抗PD‐1抗体は、表6に記載の抗体から選択される。ある好ましい実施形態では、抗B7‐H3抗体はhBRCA84D‐2であり、抗PD‐1抗体はペンブロリズマブである。別の好ましい実施形態では、抗B7‐H3抗体はhBRCA84D‐2であり、抗PD‐1抗体はニボルマブである。別の好ましい実施形態では、抗B7‐H3抗体はhBRCA84D‐2であり、抗PD‐1抗体はピジリズマブである。別の好ましい実施形態では、抗B7‐H3抗体はhBRCA84D‐2であり、抗PD‐1抗体はPD‐1 mAb 6‐ISQである。
【0206】
以上の実施形態のうちのいずれにおいて、治療剤は好ましくは、被験者に周期的に投与される。周期的療法は、1つ若しくは複数の療法に対する耐性の発生を低減でき、療法のうちの1つの副作用を回避若しくは低減でき、及び/又は治療の効力を改善できる。例示的なサイクルは、1週間に約1回、10日に約1回、2週間に約1回、及び3週間に約1回である。各サイクルは、少なくとも1週間の安静時間、少なくとも2週間の安静時間、少なくとも3週間の安静時間等を含むことができる。投与されるサイクルの数は、約1~約12サイクル、より典型的には約2~約10サイクル、更に典型的には約2~約8サイクルである。
【0207】
上述の実施形態のうちのいずれにおいて提供されるような治療的投与のための好ましい投薬レジメンは、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体の上記組み合わせを、レシピエント患者に、最初のサイクル、及び1回又は複数回の後続のサイクルにおいて投与するステップを含む。上述の実施形態のうちのいずれにおいて、抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体は、同一のサイクルスケジュールで投与される。このような実施形態では、各サイク
ルは2又は3週間からなり、抗B7‐H3抗体は被験者に、1週間に1回の投与で提供され、また抗PD‐1抗体は被験者に、2又は3週間の期間それぞれの最初の週に提供される。あるいは抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体は、異なるサイクルスケジュールで投与される。このような実施形態では、抗PD‐1抗体のための各サイクルは2又は3週間からなり、抗PD‐1抗体は被験者に、2又は3週間の期間それぞれの最初の週に提供される。このような実施形態では、抗B7‐H3抗体のための最初のサイクルは好ましくは8週間からなり、抗B7‐H3抗体は被験者に、上記8週間の初期期間のうち最初の4週間にわたって1週間に1回投与され、その後、上記8週間の初期期間のうち第5~8週にわたっては被験者に投与されない。後続の各サイクルは好ましくは4週間の期間からなり、抗B7‐H3抗体は被験者に、上記4週間の後続期間のうち最初の3週間にわたって1週間に1回提供され、その後、上記4週間の後続期間のうち第4週には被験者に投与されない。従って例えば、被験者はB7‐H3抗体を、第1、2、3、4、9、10、11、13、14、15週等において1週間に1回投与されることになり、ここで第1~8週は初期投薬レジメンサイクルであり、第9~12週は第1の後続サイクルであり、第13~16は第2の後続サイクルであり、これ以降も同様である。
【0208】
I.併用療法
本発明は更に、B7‐H3に特異的に結合する分子とPD‐1に特異的に結合する分子との組み合わせを、癌、自己免疫疾患、炎症又は感染症の治療又は予防のための当業者に公知の他の療法(現行の標準的な及び実験的な化学療法、ホルモン療法、生物療法、免疫療法、放射線療法又は手術を含むがこれらに限定されない)と更に組み合わせて、被験者に投与することを包含する。いくつかの実施形態では、B7‐H3結合分子及びPD‐1結合分子(例えば抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体)の組み合わせを、癌、特にB7‐H3発現性癌の治療及び/又は予防のための、当業者に公知の治療的又は予防的有効量の1つ又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与する。
【0209】
細胞増殖性障害の治療のための実施形態では、B7‐H3結合分子及び/又はPD‐1結合分子(例えば抗B7‐H3抗体、抗PD‐1抗体)を、限定するものではないが、アルキル化剤(例えばメクロレタミン若しくはシスプラチン)、血管新生阻害剤、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン/ダウノマイシン若しくはドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン、ブレオマイシン若しくはアントラマイシン)、抗体(例えばベバシズマブ(Genetech, Inc.がAVASTIN(登録商標)として市販)等の抗VEGF抗体、パニツムマブ(Amgen, Inc.がVECTIBIX(商標)として市販)等の抗EGFR抗体、若しくはナタリズマブ(Biogen Idec and Elan Pharmaceuticals, Inc.がTYSABRI(登録商標)として市販)等の抗インテグリン抗体)、代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート若しくは5‐フルオロウラシル)、抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン若しくはパクリタキセル)、細胞毒素(例えば細胞増殖抑制剤若しくは細胞破壊剤)、ホルモン療法剤(例えば選択的エストロゲン受容体調節剤(例えばタモキシフェン若しくはラロキシフェン)、アロマターゼ阻害剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン類似体、プロゲステロン剤、副腎皮質ステロイド、エストロゲン、アンドロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン受容体遮断剤、5αレダクターゼ阻害剤、副腎産生抑制剤等)、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤、放射性元素(例えばα放出剤、γ放出剤)、又は他のいずれの化学療法剤といった、別の治療剤とコンジュゲートさせるか、上記別の治療剤と更に組み合わせて投与する。
【0210】
好適な血管新生阻害剤の非限定的な例としては:ABT‐627;アンジオスタチン(プラスミノーゲン断片);アンジオザイム;抗血管新生アンチトロンビンIII;Bay12‐9566;ベネフィン;ベバシズマブ;BMS‐275291;ビスホスホネート;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;CD59相補性断片;CEP‐7055;Col
3;コンブレタスタチンA‐4;エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片);ファルネシル基転移酵素阻害剤(FTI);フィブロネクチン断片;gro‐β;ハロフジノン;ヘパリナーゼ;ヘパリン六糖類断片;HMV833;ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG);IM‐862;インターフェロンα/β/γ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP‐10);インターロイキン12;クリングル5(プラスミノーゲン断片);マリマスタット;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMP);2‐メトキシエストラジオール;MMI 270(CGS27023A);MoAb IMC‐1C11;ネオバスタット;NM‐3;パンゼム;PI‐88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲン活性化物質阻害剤;血小板因子‐4(PF4);プリノマスタット;プロラクチン16kDa断片;プロリフェリン関連タンパク質(PRP);PTK787/ZK222594;レチノイド類;ソリマスタット;スクアラミン;SS3304;SU5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチゾール‐S;テトラチオモリブデート;サリドマイド;トロンボスポンジン‐1(TSP‐1);TNP‐470;形質転換成長因子β(TGF‐β);バスクロスタチン;バソスタチン(カルレチクリン断片);ZD6126;及びZD6474が挙げられる。
【0211】
細胞増殖性障害の治療のための追加の抗体の非限定的な例としては、17‐1A、αvβ3、AFP、CD3、CD18、CD20、CD22、CD33、CD44、CD52
、CEA、CTLA‐4、DNA関連タンパク質、EGF受容体、Ep‐CAM、GD2‐ガングリオシド、gpIIIb/IIIa、gp72、HLA‐DR10β、HLA‐DR抗原、IgE、ガングリオシドGD3、MUC‐1、nuC242、PEM抗原、SK‐1抗原、腫瘍抗原CA125、腫瘍抗原MUC1、VEGF、及びVEGF受容体に対する抗体が挙げられる。
【実施例】
【0212】
ここまで本発明を概説してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明は更に容易に理解されるだろう。これらの実施例は例示として提供されており、そうでないことが明記されていない限り本発明を制限することを意図したものではない。
【0213】
実施例1
抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体の組み合わせの、用量漸増研究
以下の用量漸増研究プロトコルは、例示的な抗B7‐H3抗体「hBRCA84D‐2」の、抗PD‐1抗体「ペンブロリズマブ」と組み合わせた使用について詳述するが、同様の組み合わせプロトコルを、本明細書の教示に鑑みて、本明細書に記載の抗B7‐H3抗体及び抗PD‐1抗体のいずれを用いて設計してよいことが理解されるだろう。
【0214】
用量漸増研究を実施して、3週間に1回投与される用量2mg/kg体重のペンブロリズマブと組み合わせられた、1週間に1回投与される漸増用量のhBRCA84D‐2の、最大耐量(MTD)又は(MTDが画定されていない場合は)最大投与用量(MAD)を決定する。その後、用量漸増研究において確立されたhBRCA84D‐2の用量との組み合わせの安全性及び初期効力を更に画定するために、コホート拡張段階を続けてよい。hBRCA84D‐2は1週間に1回投与され、ペンブロリズマブは3週間に1回投与される。これらの作用剤は3週間に1回、同一の日に投与され、ここではペンブロリズマブを初めに投与した後にhBRCA84D‐2が続く。しかしながら、合計用量が2,500mgを超える場合、これらの抗体は、連続した複数の日に投与すべきである。抗体を連続した複数の日に投与する場合、ペンブロリズマブを最初の日に投与してよくhBRCA84D‐2を次の日付に投与してよい。各療法サイクルは3週間と定義され、hBRCA84D‐2は1、8及び15日目に投与され、ペンブロリズマブは1日目に投与される。腫瘍の評価は、研究中、好ましくは最初の2回のサイクルの終了時点、並びに後続の治療のサイクルが3回終了する毎(即ち6週間後(サイクル2の終了時)及び15週間、2
4週間、33週間後等(サイクル5、8、11の終了時等)に、実施してよい
【0215】
コホートの患者において、hBRCA84D‐2を、2mg/kg体重のペンブロリズマブと組み合わせた3mg/kg体重、10mg/kg体重、及び15mg/kg体重の3つの順に漸増する用量において評価してよい。MTDが第1の用量のコホートにおいて超過したことが決定された場合、2mg/kg体重のペンブロリズマブと組み合わせた、より少ない用量のhBRCA84D‐2(1mg/kg体重)を評価するための、用量漸減コホートを利用してよい。
【0216】
コホート拡張段階のために、追加の患者を登録し、2mg/kg体重のペンブロリズマブと組み合わせた、本研究の用量漸増段階から確立されたMTD(又はMAD)のhBRCA84D‐2を投与する。
【0217】
最初の2回の3週間サイクルの完了時点で、臨床的に安定したままであり、かつ研究の薬剤の永久的な打ち切りを必要とする許容できない毒性を経験していない患者は、hBRCA84D‐2及びペンブロリズマブを用いた追加の治療を受けるために適格となる。臨床的に安定したままであり、安定した疾患の応答状態又はそれより良好な応答状態を維持しており、かつ研究の薬剤の永久的な打ち切りを必要とする許容できない毒性を経験していない患者は、hBRAC84D‐2及びペンブロリズマブの追加の治療サイクルを受けてよい。このような追加の治療をおよそ1年間継続することにより、患者に51用量のhBRCA84D‐2及び17用量のペンブロリズマブを投与できる。
【0218】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。本発明をその具体的実施形態に関して説明したが、更なる修正形態が可能であり、本出願は、本発明が属する分野の公知の方法又は慣例の範囲内であるような、及びこれまでに挙げた必須の特徴に適用できるような、本開示からの逸脱を含む、本発明の原理に概ね従う本発明のいずれの変形、使用又は改変を包含することを意図していることを理解されたい。
【配列表フリーテキスト】
【0219】
配列表の数字見出し<223>の記載は以下のとおりである。
配列番号1:例示的なヒトIgG1のCH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号2:例示的なヒトIgG2のCH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号3:例示的なヒトIgG3のCH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号4:例示的なヒトIgG4のCH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号5:L234A/L235Aを有する好ましいIgG1のCH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号6:好ましい「ノブ担持」CH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号7:好ましい「ホール担持」CH2‐CH3ドメイン;Xはリシン(K)であるか、又は不在
配列番号8:例示的なヒトIgG1 CH1ドメイン
配列番号9:例示的なヒトIgG4 CH1ドメイン
配列番号10:例示的なヒトIgG1ヒンジ領域
配列番号11:例示的なヒトIgG4ヒンジ領域
配列番号12:10位に安定化ヒンジ突然変異S228Pを含むIgG4 Fcドメイン
配列番号13:κCLドメイン
配列番号14:ヒトIgG1 CH1ドメイン及びヒンジ
配列番号15:L235V、F243L、R292P、Y300L及びP396Lの置換を含むIgG1 CH2‐CH3ドメイン
配列番号16:IgG4 CH1ドメイン及び安定化ヒンジドメイン
配列番号17:29アミノ酸残基のシグナル配列を含む「2Ig」形態のヒトB7‐H3
配列番号18:29アミノ酸残基のシグナル配列を含む「4Ig」形態のヒトB7‐H3
配列番号19:抗ヒトB7‐H3抗体BRCA84DのVLドメイン
配列番号20:抗ヒトB7‐H3抗体BRCA84DのVHドメイン
配列番号21:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL1のVLドメイン
配列番号22:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL2のVLドメイン
配列番号23:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL3のVLドメイン
配列番号24:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL4のVLドメイン
配列番号25:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL5のVLドメイン
配列番号26:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VL6のVLドメイン
配列番号27:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VH1のVHドメイン
配列番号28:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VH2のVHドメイン
配列番号29:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VH3のVHドメイン
配列番号30:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D VH4のVHドメイン
配列番号31:抗ヒトB7‐H3抗体BRCA69DのVLドメイン
配列番号32:抗ヒトB7‐H3抗体BRCA69DのVHドメイン
配列番号33:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA69D VL1のVLドメイン
配列番号34:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA69D VL2のVLドメイン
配列番号35:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA69D VH1のVHドメイン
配列番号36:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA69D VH2のVHドメイン
配列番号37:抗ヒトB7‐H3抗体PRCA157のVLドメイン
配列番号38:抗ヒトB7‐H3抗体PRCA157のVHドメイン
配列番号39:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D‐2の完全な軽鎖のアミノ酸配列
配列番号40:ヒト化抗ヒトB7‐H3抗体hBRCA84D‐2の完全な重鎖のアミノ酸配列
配列番号41:20アミノ酸残基のシグナル配列含むヒトPD‐1
配列番号42:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 1のVHドメイン
配列番号43:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 1のVLドメイン
配列番号44:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 2のVHドメイン
配列番号45:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 2のVLドメイン
配列番号46:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 3のVHドメイン
配列番号47:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 3のVLドメイン
配列番号48:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 4のVHドメイン
配列番号49:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 4のVLドメイン
配列番号50:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 5のVHドメイン
配列番号51:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 5のVLドメイン
配列番号52:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 6のVHドメイン;Xはイソロイシン(I)又はアラニン(A)である
配列番号53:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 6のVLドメイン;26位のXはアスパラギン(N)又はセリン(S)であり;58位のXはグルタミン(Q)又はアル
ギニン(R)である
配列番号54:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 7のVHドメイン;12位のXはバリン(V)又はアラニン(A)であり;35位のXはセリン(S)又はグルタミン(Q)であり;48位のXはバリン(V)又はスレオニン(T)であり;86位のXはロイシン(L)又はアラニン(A)である
配列番号55:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 7のVLドメイン;31位のXはセリン(S)又はアスパラギン(N)であり;50位のXはN又はDである
配列番号56:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 8のVHドメイン
配列番号57:抗ヒトPD‐1抗体PD‐1 mAb 8のVLドメイン
配列番号58:例示的な抗PD‐1抗体「PD‐1 mAb 6‐ISQ」の完全な軽鎖
配列番号59:例示的な抗PD‐1抗体「PD‐1 mAb 6‐ISQ」の完全な重鎖
配列番号60:例示的なヒトIgG2 CH1ドメイン
配列番号61:例示的なヒトIgG4 CH1ドメイン
配列番号62:例示的なヒトIgG2ヒンジ領域
【配列表】