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特許7384958改善された接合耐久性を有するアルミニウム合金物品および不活性な表面のアルミニウム合金物品、ならびにそれらを作製および使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】改善された接合耐久性を有するアルミニウム合金物品および不活性な表面のアルミニウム合金物品、ならびにそれらを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/20 20060101AFI20231114BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20231114BHJP
   C22C 21/06 20060101ALI20231114BHJP
   C22C 21/16 20060101ALI20231114BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20231114BHJP
   C22F 1/047 20060101ALN20231114BHJP
   C22F 1/05 20060101ALN20231114BHJP
   C22F 1/057 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C23F1/20
C22C21/02
C22C21/06
C22C21/16
C22F1/00 613
C22F1/00 623
C22F1/00 626
C22F1/00 630M
C22F1/00 640A
C22F1/00 641B
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
C22F1/047
C22F1/05
C22F1/057
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022079367
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2020528313の分割
【原出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2022130360
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】62/608,618
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/741,691
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】リャンリャン・リィ
(72)【発明者】
【氏名】テリーサ・エリザベス・マクファーレン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ロイド・レッドモンド
(72)【発明者】
【氏名】ユディー・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・バッキンガム
(72)【発明者】
【氏名】アルプ・マナヴバシ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ファノル・ベガ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ウー
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-057692(JP,A)
【文献】特開平06-256881(JP,A)
【文献】特開平09-263868(JP,A)
【文献】特開2000-345364(JP,A)
【文献】特開2002-256460(JP,A)
【文献】特表2004-511653(JP,A)
【文献】特開2013-159806(JP,A)
【文献】特開2016-089261(JP,A)
【文献】特開2017-203209(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015110(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00 - 21/18
C22F 1/00 - 1/057
C23F 1/00 - 4/04
C23G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金物品であって、
0.2~1.4重量%のSi、
0.4~5.0重量%のMg、
0.01~2.0重量%のCu、
0.05~0.50重量%のFe、
最大0.25重量%のMn、
最大0.25重量%のCr、
最大0.15重量%のZn、
最大0.20重量%のTi、
最大0.05重量%のZr、
最大0.05重量%のPb、および
最大0.15重量%の不純物、を含み、
残部がAlである、アルミニウム合金材料を含み、
前記アルミニウム合金物品が、表面下部分およびバルク部分を備え、
前記表面下部分が、前記アルミニウム合金物品の外部表面から最大5μmの深さまで延在し、
前記表面下部分の表面を、1000ppm以下の濃度で強酸化剤を含む表面改質組成物と接触させてなり、前記表面は、前記表面改質組成物との接触前の表面であり、
前記アルミニウム合金物品の前記表面改質組成物と接触させた後の表面下部分が、前記バルク部分に比較してより高い濃度のCuを有し、
前記表面改質組成物と接触させた後の前記表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比が、0.2~5.0である、アルミニウム合金物品。
【請求項2】
前記アルミニウム合金材料が、5xxxシリーズのアルミニウム合金、または6xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項3】
前記アルミニウム合金材料が、
0.6~0.95重量%のSi、
0.55~0.75重量%のMg、
0.05~0.60重量%のCu、
0.20~0.35重量%のFe、
0.05~0.20重量%のMn、
最大0.15重量%のCr、
最大0.15重量%のZn、
最大0.15重量%のTi、
最大0.05重量%のZr、
最大0.05重量%のPb、および
最大0.15重量%の不純物、を含み、
残部がAlである、請求項1に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項4】
最大0.10重量%の、Ni、Sc、Sn、Be、Mo、Li、Bi、Sb、Nb、B、Co、Sr、V、In、Hf、Ag、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む、請求項1または3に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項5】
前記アルミニウム合金物品が、圧延アルミニウム合金シェートまたは圧延アルミニウム合金シートであり、前記アルミニウム合金物品が、15mm以下の厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項6】
前記表面下部分の前記アルミニウム合金材料中の前記Cu対Mgの原子濃度比が、前記バルク部分の前記アルミニウム合金材料中の前記Cu対Mgの原子濃度比に基づいて、前記バルク部分の前記アルミニウム合金材料中の前記Cu対Mgの原子濃度比よりも、少なくとも20%大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項7】
前記表面下部分の前記アルミニウム合金材料中の前記Cu対Mgの原子濃度比が、未処理のアルミニウム合金材料の表面下部分の前記アルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比よりも、少なくとも20%大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載のアルミニウム合金物品。
【請求項8】
前記表面下部分の前記アルミニウム合金材料中の前記Cu対Mgの原子濃度比が、0.2~4.5の範囲であり、
前記表面改質組成物が、少なくとも1つの酸化剤を含むエッチング溶液であり、および
前記酸化剤が、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、過酸化バリウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、過酸化水素、過酸化マグネシウム、臭素酸カリウム、塩素酸カリウム、過酸化カリウム、塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、および過酸化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/608,618号、および2018年10月5日に出願された同第62/741,691号の利益を主張し、それらは、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、アルミニウム合金物品およびその表面特徴を提供する。本開示は、物品のある特定の表面に改善された接合耐久性、および耐食性を有するアルミニウム合金物品に関する。本開示はまた、かかる材料を、例えば、選択的なエッチング加工を介して作製する方法、ならびにかかる物品を、他のアルミニウム物品などの他の物品に物品を接合することに関与する用途で使用する方法を提供する。本開示はまた、接合されたアルミニウム物品を含む、かかる物品から作製された製造物品を提供する。本開示はまた、自動車、輸送、電子機器、および産業用途などにおける、かかる物品の様々な最終使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金物品は、いくつかの異なる用途、特に、軽量、高い強度、および高い耐久性が望まれる用途での使用に望ましい。例えば、アルミニウム合金は、自動車および他の輸送機器の構造構成要素として、鋼に取って代わりつつある。アルミニウム合金は、一般的に、鋼の約2.8倍密度が低いため、かかる材料を使用することにより、機器の重量が低減され、エネルギー効率の実質的な改善が可能になる。それでも、アルミニウム合金物品の使用は、ある特定の課題をもたらし得る。
【0004】
1つの特定の課題は、様々なアルミニウム合金物品を一緒に接合して、例えば、車両のフレームまたは他の本体部品などの仕上げられた製造物品を形成することに関する。かかる用途に鋼が使用される場合、様々な個々の物品を、従来の溶接加工によって一緒に接合することができる。しかし、かかる溶接加工は、アルミニウム合金製の物品の接合には必ずしも適切ではない。したがって、かかるアルミニウム合金物品は、多くの場合、接着剤組成物(例えば、エポキシ樹脂)、またはアルミニウム合金物品を他のアルミニウム合金物品もしくは他の材料で作製された物品に接合するのに好適な他の溶接材料を使用して一緒に接合される。それでも、かかるアルミニウム合金物品が、ある特定の市場セグメントで鋼製品と効果的に競合する場合、接合加工は、仕上げられた製造物品の潜在的な寿命にわたって強力で、長期耐久性を示す接合をもたらさなければならない。相手先商標製造会社(OEM)は、安全かつ耐久性もある、よりエネルギー効率の高い車両を提供するように、規制当局および消費者からの圧力に直面し続ける。鋼の使用からアルミニウム合金の使用への移行は、この目標を完遂する上で重要な役割を果たす。したがって、接合加工の状況、例えば、エポキシ樹脂と接着接合する状況において使用される際に高い接合耐久性を示すアルミニウム合金物品を開発する必要性が引き続き存在する。
【0005】
理想的には、アルミニウム合金物品は、強い耐食性も示す。そうでなければ、アルミニウム合金物品は、自動車、輸送、電子機器、および産業用途での使用には適さないであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示の網羅された実施形態は、この発明の概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な態様の高レベルの概観を提供し、以下の「詳細な説明」の節でさらに説明される概念のいくつかを紹介する。この発明の概要は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、任意のまたはすべての図面、および各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0007】
本開示は、改善された接合耐久性を提供する1つ以上の表面を有する新規なアルミニウム合金物品を提供する。本開示はまた、かかるアルミニウム合金物品を作製する方法、および接合された製造物品を含む、かかるアルミニウム合金物品から形成される様々な製造物品を提供する。いくつかの例では、アルミニウム合金物品は、シートの表面が改善された接合耐久性を示すアルミニウム合金シートなどの圧延物品である。
【0008】
第1の態様では、本開示は、合金元素として、とりわけ、CuおよびMgを含むアルミニウム合金物品であって、アルミニウム合金物品が、表面下部分およびバルク部分を備え、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比が、約0.2~約5.0である、アルミニウム合金物品を提供する。いくつかの例では、圧延アルミニウム合金物品は、アルミニウム合金シートである。かかるシートは、任意の好適な調質度(例えば、O調質度もしくはF調質度、またはT1~T9調質度の範囲の任意の調質度)および任意の好適なゲージを有し得る。場合によっては、アルミニウム合金物品は、本明細書に提供される5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金である。
【0009】
第2の態様では、本開示は、表面改質アルミニウム合金物品を作製する方法であって、本方法が、表面下部分およびバルク部分を有するアルミニウム合金物品を提供することであって、アルミニウム合金物品が、合金元素としてMgおよびCuを含むアルミニウム合金材料を含む、提供することと、表面下部分の表面を表面改質組成物と接触させることと、を含み、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、約0.2~約5.0である、方法を提供する。
【0010】
第3の態様では、本開示は、第2の態様またはその任意の実施形態の加工によって作製されたアルミニウム合金物品を提供する。
【0011】
第4の態様では、本開示は、第1もしくは第3の態様、またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品から構成される、製造物品を提供する。いくつかの実施形態では、製造物品は、圧延アルミニウム合金シートを含む。かかる製造物品の例としては、自動車、トラック、トレーラ、列車、鉄道車両、飛行機、先行のいずれかのための本体パネルもしくは部品、橋、パイプライン、パイプ、管材、ボート、船、貯蔵容器、貯蔵タンク、家具、窓、ドア、手すり、機能的もしくは装飾的な建築物、パイプ手すり、電気構成要素、導管、飲料容器、食品容器、またはホイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
第5の態様では、本開示は、接合された製造物品であって、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品を含み、第1のアルミニウム合金物品の表面と第2の金属または合金物品の表面とが一緒に接合され、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方が、第1もしくは第3の態様、またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品である、接合された製造物品を提供する。いくつかの実施形態では、第1のアルミニウム合金物品の表面と第2の金属または合金物品の表面とは、例えば、エポキシ樹脂などの接着剤組成物を使用する接着接合によって一緒に接合される。
【0013】
第6の態様では、本開示は、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品を、第2の金属または合金物品(例えば、第2のアルミニウム合金物品)に接合する方法であって、本方法が、第1のアルミニウム合金物品と第2の金属または合金物品とを提供することであって、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方が、第1もしくは第3の態様、またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品である、提供することと、第1のアルミニウム合金物品の表面と第2の金属または合金物品の表面とを接合することと、を含む、方法を提供する。任意選択で、第2の金属または合金物品は、鋼、または炭素複合体などの複合体材料を含む。いくつかの実施形態では、接合は、例えば、エポキシ樹脂などの接着剤組成物との接着接合を含む。
【0014】
第7の態様において、本明細書に記載されるのは、アルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、表面(例えば、アルミニウム合金の外側表面)、表面下部分(例えば、表面からアルミニウム合金中に約5μmの深さまで延在する部分)、ならびにバルク部分(例えば、表面および/もしくは表面下ではないアルミニウム合金の任意の残部)を含み、表面下部分は、酸化銅含有層を含む。酸化銅含有層は、酸化銅(I)(すなわち、CuO)、酸化銅(II)(CuO)、過酸化銅(CuO)、および/または酸化銅(III)(Cu)を含む。酸化銅含有層は、約0.5~約1の銅イオン(例えば、Cu、Cu2+、および/またはCu3+)濃度対元素銅(Cu)濃度の原子比を含む酸化銅粒子を含み得る。表面下部分は、アルミニウム合金物品の表面から約5μmの深さまで(例えば、アルミニウム合金物品の表面から約2μmの深さまで)の面積を含み得る。
【0015】
第8の態様において、本明細書に記載されるのは、アルミニウム合金物品の表面を処理する方法である。アルミニウム合金物品の表面を処理する方法は、表面下部分およびバルク部分を有するアルミニウム合金物品を提供することであって、表面下部分が、銅(Cu)を含む、提供することと、アルミニウム合金物品の表面を、酸化剤を含むエッチング溶液でエッチングすることと、を含み得る。任意選択で、提供するステップは、少なくとも約0.001重量%のCu(例えば、約0.001重量%~約10重量%のCu)を含むアルミニウム合金物品を提供することを含む。任意選択で、提供するステップは、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、アルミニウム合金物品を提供することを含む。
【0016】
エッチングするステップは、表面下部分中に存在するCuの少なくとも一部分を酸化することを含み得る。任意選択で、エッチングするステップは、表面下部分中に存在するCuの少なくとも30原子パーセント(原子%)を酸化することを含む。エッチング溶液の酸化剤は、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、過酸化バリウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、過酸化水素、過酸化マグネシウム、臭素酸カリウム、塩素酸カリウム、過酸化カリウム、塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、それらの任意の組み合わせ、または任意の好適な酸化剤を含み得る。エッチング溶液は、リン酸、硫酸、フッ化水素酸、酢酸、および/または塩酸などの1種以上の追加の酸をさらに含み得る。任意選択で、エッチング溶液は、硝酸、リン酸、および硫酸を含む。硝酸、リン酸、および硫酸の体積濃度(例えば、体積パーセント、体積%)は、約5体積%~約30体積%の硝酸、約0体積%~約75体積%のリン酸、および約7体積%~約25体積%の硫酸であり得る。いくつかの例では、エッチングするステップにおけるエッチング溶液は、約90℃~約110℃の温度に加熱される。エッチングするステップは、約2秒~約2分の滞留時間にわたって実施され得る。
【0017】
第9の態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される方法に従って調製されたアルミニウム合金物品である。アルミニウム合金物品は、とりわけ、自動車両の本体部品を含み得る。
【0018】
追加の態様および実施形態は、本明細書に含まれる、詳細な説明、特許請求の範囲、および非限定的な例に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】XPSで記録したときの、B1、B2、およびB3の最大125nmの深さでの試験サンプル中のMgの原子濃度を示している。
図2】XPSで記録したときの、B4、B5、およびB6の最大125nmの深さでの試験サンプル中のMgの原子濃度を示している。
図3】XPSで記録したときの、B1、B2、およびB3の最大125nmの深さでの試験サンプル中のCuの原子濃度を示している。
図4】XPSで記録したときの、B4、B5、およびB6の最大125nmの深さでの試験サンプル中のCuの原子濃度を示している。
図5】各サンプルのCu対Mgの原子濃度比の関数として、各サンプルの平均BDサイクル数のプロットを示している。
図6A-6B】本開示のある特定の態様による、様々なアルミニウム合金サンプルの表面のX線光電子分光法の分析を示すグラフ(6A)と、スパッタリング後の様々なアルミニウム合金サンプルの表面のX線光電子分光法の分析を示すグラフ(6B)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施形態では、本開示は、表面付近の新規組成特性、例えば、Mgの部分的除去と連結されたCuの有益な濃縮を示す、アルミニウム合金物品を提供する。いくつかの実施形態では、かかる物品は、かかる特徴を欠く物品に関して驚くほど改善された接合耐久性を示し得る。第2の実施形態では、本開示は、表面付近の新規組成特性、例えば、Mgの部分的除去と連結されたCuの有益な濃縮を示す、アルミニウム合金物品を提供する。いくつかの実施形態では、かかる物品は、かかる特徴を欠く物品に関して驚くほど改善された接合耐久性を示し得る。
【0021】
さらに、本開示は、不活性なまたは中和された表面を有するアルミニウム合金物品を提供する。本明細書で使用される場合、不活性な表面とは、電気化学的に改質されていない表面と比較したときに、表面の陽極および/または陰極の性質が低減されるように電気化学的に改質された表面を指す。本明細書に記載される不活性なまたは中和された表面は、本明細書にさらに記載されるように、酸化銅を含有する表面によって特徴付けられる。本明細書には、不活性なまたは中和された表面を有するアルミニウム合金物品を調製する方法も記載されている。本方法は、酸化体でアルミニウム合金物品の表面をエッチングすることを含む。得られたアルミニウム合金物品は、望ましい接合耐久性性質と優れた耐食性を示す。
【0022】
定義および説明
本明細書で使用される「発明」、「その発明」、「この発明」、および「本発明」という用語は、本特許出願および以下の特許請求の範囲の主題のすべてを広く参照することが意図されている。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定するものでもなく、以下の特許請求の意味または範囲を限定するものでもないと理解されるべきである。
【0023】
この説明では、AA番号によって特定される合金、および「シリーズ」または「6xxx」などの他の関連する記号表示が参照される。アルミニウムおよびその合金の命名および特定に最も一般的に使用される番号記号表示システムの理解に関しては、両方ともThe Aluminum Associationによって出版されている、「International Alloy Designations and Chemical
Composition Limits for Wrought Aluminum
and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form
of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その(the)」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数の言及を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「プレート」は、概して、15mm超の厚さを有する。例えば、プレートは、15mm超、20mm超、25mm超、30mm超、35mm超、40mm超、45mm超、50mm超、または100mm超の厚さを有し得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「シェート」(シートプレートとも称される)は、概して、4mm~15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、または15mmの厚さを有し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「シート」は、概して、4mm未満の厚さを有する。例えば、シートは、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、または0.1mm以下の厚さを有し得る。
【0028】
本出願では、合金の調質度または条件について言及する。最も一般的に使用される合金調質度の説明の理解に関しては、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。F条件または調質度は、製造されたままのアルミニウム合金を指す。O条件または調質度は、アニール処理後のアルミニウム合金を指す。T1条件または調質度は、熱間加工から冷却し、自然時効させた(例えば、室温で)アルミニウム合金を指す。T2条件または調質度は、熱間加工から冷却し、冷間加工し、自然時効させたアルミニウム合金を指す。T3条件または調質度とは、溶体化熱処理(すなわち、溶体化)、冷間加工、および自然時効の後のアルミニウム合金を指す。T4条件または調質度は、溶体化熱処理およびそれに続く自然時効の後のアルミニウム合金を指す。T5条件または調質度は、熱間加工から冷却し、人工時効させたアルミニウム合金を指す。T6条件または調質度は、溶体化熱処理およびそれに続く人工時効(AA)の後のアルミニウム合金を指す。T7条件または調質度は、溶体化熱処理後、および次いで安定化されるアルミニウム合金を指す。T8x条件または調質度は、溶体化熱処理、それに続く冷間加工、およびその後の人工時効の後のアルミニウム合金を指す。T9条件または調質度は、溶体化熱処理、それに続く人工時効、およびその後の冷間加工の後のアルミニウム合金を指す。
【0029】
本明細書で開示されるすべての範囲は、任意のエンドポイント、ならびにそれらに包括される任意およびすべての部分範囲を包含すると理解される。例えば、「1~10」の記載された範囲は、最小値の1と最大値の10との間の(ならびにそれらを含む)任意およびすべての部分範囲、すなわち、1以上、例えば、1~6.1の最小値から始まるすべての部分範囲、および10以下、例えば、5.5~10の最大値で終わるすべての部分範囲を含むと考慮されなければならない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「鋳造製品」、「鋳造金属製品」、「鋳造アルミニウム製品」、「鋳造アルミニウム合金製品」などの用語は、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト式鋳造機、ツインロール式鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機を使用することを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造された製品を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「接合耐久性」とは、接合剤の破壊を開始する環境条件への曝露後のサイクル式の機械的応力に耐えるように、2つの物品を一緒に接合する接合剤の能力を指す。接合耐久性は、接合が失敗するまで、接合された物品に加えられる機械的応力のサイクル数に関して特徴付けられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「室温」は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含み得る。
【0033】
様々な例および実施形態では、アルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、重量パーセント(重量%)で記載される。別様に指摘されない限り、各合金において、残部はアルミニウムである。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される合金は、すべての不純物の合計に対して最大0.15重量%を有する。
【0034】
改善された接合耐久性を有するアルミニウム合金物品
アルミニウム合金物品
本明細書では、アルミニウム合金材料を含むアルミニウム合金物品について説明する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品は、1つまたは2つの圧延表面を含む。いくつかのかかる実施形態では、アルミニウム合金物品は、以下でさらに記載されるように、熱間圧延、冷間圧延、またはそれらの任意の組み合わせによって形成され得る圧延アルミニウム合金シートまたはシェートである。任意選択で、アルミニウム合金物品は、圧延アルミニウム合金シートであり得る。アルミニウム合金物品は、表面下部分およびバルク部分を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「表面下」という用語は、アルミニウム合金物品の外部表面から物品の内部に最大5μm、但し、概してはるかに少ない深さまで延在する、アルミニウム合金物品の部分を指す。例えば、表面下は、外部表面から(および外部表面を含む)合金物品の内部に、0.01μm、0.05μm、0.10μm、0.15μm、0.20μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.50μm、0.55μm、0.60μm、0.65μm、0.70μm、0.75μm、0.80μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、もしくは5.0μmの深さ、またはそれらの間のいずれかまで延在する、合金の部分を指し得る。いくつかの実施形態では、表面下は、外部表面からアルミニウム合金物品の内部内に100nm~200nmの範囲の深さまで延在する。いくつかのさらなるかかる実施形態では、表面下は、外部表面からアルミニウム合金物品の内部内に100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、または200nmの深さまで延在する。表面下部分を除くアルミニウム合金物品の部分(例えば、合金物品の残部)は、本明細書では、アルミニウム合金物品の「バルク」または「バルク部分」と称される。アルミニウム合金のシートまたはシェートなどと共に、2つの圧延表面を有する物品の場合、物品は、2つの表面下部分を、それらの間にバルク部分がある状態で有することができることに留意されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「部分」という用語は、クラッド材料の層のように、層を指すと解釈されるべきではない。むしろ、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品の圧延表面および表面下部分は、一体構造を有するが、その構造内の表面から異なる深さで合金元素中に異なる組成を有する。
【0037】
アルミニウム合金物品中のアルミニウム合金材料は、合金元素として、とりわけ、CuおよびMgを含む。アルミニウム合金物品の部分内の合金元素の原子濃度は、アルミニウム合金物品内の特定の位置(例えば、深さ)、元素の同一性、ならびにアルミニウム合金物品の調製、加工、および処理の方法に基づいて変化する。原子濃度は、X線光電子分光法(XPS)を含む、当業者には既知の技術を使用して測定することができる。
【0038】
例えば、CuおよびMgは、アルミニウム合金物品の表面下部分およびバルク部分の両方に存在し得る。アルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、概して、約0.15~約5.0の範囲の任意の好適な値を有し得る。場合によっては、アルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、少なくとも約0.15、少なくとも約0.16、少なくとも約0.17、少なくとも約0.18、少なくとも約0.19、少なくとも約0.20、少なくとも約0.21、少なくとも約0.22、少なくとも約0.23、少なくとも約0.24、または少なくとも約0.25である。場合によっては、アルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下、または0.5以下である。場合によっては、アルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、0.2~5.0、0.2~4.5、0.2~4.0、0.2~3.5、0.2~3.0、0.2~2.5、0.2~2.0、0.2~1.5、0.2~1.0、または0.2~0.5の範囲である。Cu対Mgの原子濃度比は、表面下部分中のCuの原子濃度とMgの原子濃度との単純な比をとることによって計算することができ、その濃度は、例えば、上に記載されるXPSを使用して測定される。
【0039】
本明細書に記載される方法に従って処理された(例えば、エッチングされた)アルミニウム合金物品は、未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比とは異なる、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比を有し得る。例えば、処理された(例えば、エッチングされた)アルミニウム合金物品は、未処理の(例えば、エッチングされていない)アルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比よりも高い、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比を有し得る。かかる処理された物品は、未処理の物品の表面下部分と比較して、表面下部分中のMg枯渇を有するものとして特徴付けることができる。
【0040】
加えて、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品は、物品の表面下部分およびバルク部分内でMgの分布を変化させることができる。例えば、Mg濃度は、同じ物品のバルク部分と比較して、特定の物品の表面下部分中でより低くなり得る。他の例では、Mg濃度は、同じ物品のバルク部分と比較して、特定の物品の表面下部分中でより高くなり得る。さらに他の例では、特定の物品の表面下部分中のMg濃度は、同じ物品のバルク部分中のMg濃度と等しくなり得る。
【0041】
場合によっては、処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分は、未処理の物品の表面下または処理された物品のバルク部分と比較して、より高い濃度のCuを有し得る。処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分中で、未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分と比較して、または同じ処理されたアルミニウム合金物品のバルク部分と比較して、より高いCu濃度を示すかかる物品は、表面下部分中でCu濃縮を有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、Mg枯渇およびCu濃縮の両方を示す。
【0042】
加えて、本明細書に記載される処理方法は、処理されたアルミニウム合金物品内のある特定の合金元素の濃度を、バルク部分と比較して、表面下部分中で異ならせることができる。例えば、処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分は、処理されたアルミニウム合金物品のバルク部分中のCu対Mgの原子濃度比よりも高い、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比を有し得る。処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分中のより高いCu対Mgの原子濃度比は、例えば、アルミニウム合金物品の表面下部分からのMg損失をもたらす処理加工を使用することによって完遂され得る。いくつかの例では、処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分は、処理されたアルミニウム合金物品のバルク部分中のCu対Mgの原子濃度比よりも低い、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比を有し得る。
【0043】
以下の実施例に例示されるように、かかる組成的特徴を示す物品は、ある特定の有益な性質を有する。例えば、Mg枯渇および/またはCu濃縮を示すアルミニウム合金物品は、改善された接合耐久性を有することができ、これは、かかる物品が、物品を他の物品に接合することが望ましい状況で使用するのにより好適であり得ることを意味する。特に、Cu濃縮は、接合耐久性を驚くほどに改善し得る。したがって、本明細書に記載される方法により、Mgを枯渇させることと連結して、表面付近のCuを濃縮することによって、良好な接合耐久性にとって好適な陰極の特質を有するように表面を調整することができる。
【0044】
上述のように、本明細書に開示される処理方法を使用して、Mg枯渇を有するアルミニウム合金物品を製造することができる。このMg枯渇は、XPSを使用して外部表面から異なる深さでMgの濃度を計算し、次いで、得られた曲線を積分して、アルミニウム合金物品の表面下部分中およびバルク部分中のMgの原子濃度を決定することによって決定され得る。いくつかのかかる実施形態では、処理されたアルミニウム合金物品の表面下部分中のMgの原子濃度は、未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分中のMgの濃度原子よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%低い。
【0045】
さらに、いくつかの追加の実施形態では、本明細書に開示される処理方法を使用して、Cu濃縮を有するアルミニウム合金物品を製造することができる。このCu濃縮は、XPSを使用して外部表面から異なる深さでCuの濃度を計算し、次いで、得られた曲線を積分して、アルミニウム合金物品の表面下部分中およびバルク部分中のCuの原子濃度を決定することによって決定され得る。いくつかのかかる実施形態では、アルミニウム合金物品の表面下部分中のCuの濃度は、(アルミニウム合金物品のバルク部分中のCuの原子濃度に基づいて)アルミニウム合金物品のバルク部分中のCuの原子濃度より、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、または少なくとも200%大きい。この文脈において「より少なくとも100%大きい」とは、濃度が少なくとも2倍であることを意味し、この文脈において「より少なくとも200%大きい」とは、濃度が少なくとも3倍であることを意味し、以下も同様であることに留意されたい。
【0046】
いくつかのさらなる実施形態では、かかる濃度比が上に記載されるように測定される場合、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品(例えば、処理されたアルミニウム合金物品)の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比を、アルミニウム合金物品のバルク部分中のCu対Mgの原子濃度比、または未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比に対して参照することも有用であり得る。概して、表面下部分がMg枯渇および/またはCu濃縮を受けた場合、Cu対Mgの原子濃度比は、アルミニウム合金物品のバルク部分中または未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分中よりも、アルミニウム合金物品の表面下部分中でより高くなるであろう。いくつかのさらなるかかる実施形態では、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、(アルミニウム合金物品のバルク部分中のCu対Mgの原子濃度比に基づいて)ブルク部分中の、または未処理のアルミニウム合金物品の表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比より、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも150%、または少なくとも200%大きい。
【0047】
ある特定の例では、Cuが、金属間粒子(すなわち、200nmより大きい粒子サイズを有する凝集粒子)として金属内に存在する代わりに、アルミニウム合金材料中に溶解すると、ある特定の表面性質を改善することができる。したがって、ある特定の場合では、表面下部分中のCuは、表面下部分が低濃度のCu凝集体を有するような形態で存在することが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、表面下部分中に存在するCuの総量に基づいて、表面下部分中に存在するCuの10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.5重量%、または0.1重量%以下は、凝集した形態で(すなわち、200nmより大きい粒子サイズを有する金属間粒子として)存在する。アルミニウム合金物品は、合金元素としてCuおよびMgを含む任意の好適なアルミニウム合金から構成され得る。いくつかのかかる実施形態では、アルミニウム合金材料は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金である。かかる実施形態では、アルミニウム合金物品は、CuおよびMgが合金中に存在する限り、任意の好適な5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金を用いることができる。
【0048】
いくつかの非限定的な例では、5xxxシリーズのアルミニウム合金は、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110A、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含み得る。
【0049】
いくつかのさらなる非限定的な例では、6xxxシリーズのアルミニウム合金は、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を含み得る。
【0050】
いくつかの非限定的な例では、7xxxシリーズのアルミニウム合金は、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149,7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、表1に記述される元素組成を有するアルミニウム合金材料から構成される。
【表1】
【0052】
いくつかのかかる実施形態では、アルミニウム合金材料は、表2に記述される元素組成を有する。
【表2】
【0053】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、0.2%~1.4%の量でケイ素(Si)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.3%~1.1%のSi、0.4%~1.0%のSi、0.4%~0.9%のSi、0.4%~0.8%のSi、または0.4%~0.7%のSiを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、または1.4%のSiを含み得る。すべて重量%で表している。
【0054】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、0.4%~5.0%の量でマグネシウム(Mg)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.4%~4.5%のMg、0.4%~4.0%のMg、0.5%~3.5%のMg、0.5%~3.0%のMg、または0.5%~2.5%のMgを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、または5.0%のMgを含み得る。すべて重量%で表している。
【0055】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、0.01%~2.0%の量で銅(Cu)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~1.2%のCu、0.05%~1.1%のCu、0.1%~1.0%のCu、0.1%~0.9%のCu、または0.1%~0.8%のCuを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.03%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、または2.0%のCuを含み得る。すべて重量%で表している。
【0056】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、0.05%~0.5%の量で鉄(Fe)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.1%~0.4%のFe、または0.1%~0.3%のFeを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、または0.5%のFeを含み得る。すべて重量%で表している。
【0057】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.25%の量でマンガン(Mn)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.05%~0.20%のMn、0.01%~0.10%のMn、または0.02%~0.05%のMnを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、または0.25%のMnを含み得る。場合によっては、Mnは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0058】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.25%、または最大0.15%の量でクロム(Cr)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~0.10%のCr、または0.02%~0.05%のCrを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、または0.25%のCrを含み得る。場合によっては、Crは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0059】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.15%の量で亜鉛(Zn)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~0.10%のZn、または0.02%~0.05%のZnを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、または0.15%のZnを含み得る。場合によっては、Znは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0060】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.20%、または最大0.15%の量でチタン(Ti)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~0.10%のTi、または0.02%~0.05%のTiを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、または0.20%のTiを含み得る。場合によっては、Tiは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0061】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.05%の量でジルコニウム(Zr)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~0.05%のZrを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、または0.05%のZrを含み得る。場合によっては、Zrは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0062】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、最大0.05%の量で鉛(Pb)を含む。前述の実施形態のいずれかのいくつかのさらなる実施形態では、合金組成物は、0.01%~0.05%のPbを有する。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、または0.05%のPbを含み得る。場合によっては、Pbは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。
【0063】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、合金の総重量に基づいて、最大0.10%(例えば、0.01%~0.10%、0.01%~0.05%、または0.03%~0.05%)の量でSc、Ni、Sn、Be、Mo、Li、Bi、Sb、Nb、B、Co、Sr、V、In、Hf、およびAgからなる群から選択される1種以上の元素を含む。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.10%のSc、Ni、Sn、Be、Mo、Li、Bi、Sb、Nb、B、Co、Sr、V、In、Hf、およびAgからなる群から選択される1種以上の元素を含み得る。すべて重量%で表している。
【0064】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、合金の総重量に基づいて、最大0.10%(例えば、0.01%~0.10%、0.01%~0.05%、または0.03%~0.05%)の量でY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される1種以上の元素を含む。例えば、アルミニウム合金材料は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.10%のY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される1種以上の元素を含み得る。すべて重量%で表している。
【0065】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、アルミニウム合金材料は、0.15%以下、0.14%以下、0.13%以下、0.12%以下、0.11%以下、0.10%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で、不純物と称されることもある他の少量の元素を含む。いくつかの実施形態では、これらの不純物としては、Ga、Ca、Na、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、Ga、Ca、およびNaからなる群から選択される1種以上の元素は、アルミニウム合金材料中で、0.15%以下、0.14%以下、0.13%以下、0.12%以下、0.11%以下、0.10%以下、0.09%以下、0.08%以下、0.07%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で存在し得る。すべての不純物の合計は、0.15%を超えない(例えば、0.10%)。すべて重量%で表した。合金の残りの割合はアルミニウムである。
【0066】
先行の実施形態のいずれかのアルミニウム合金材料を含む、本明細書に開示される合金組成物は、主成分として、例えば、合金の少なくとも95.0%の量でアルミニウム(Al)を有する。先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、合金組成物は、少なくとも95.5%のAl、少なくとも96.0%のAl、少なくとも96.5%のAl、少なくとも97.0%のAl、少なくとも97.5%のAl、または少なくとも98.0%のAlを有する。すべて重量%で表した。
【0067】
この態様およびその様々な実施形態において、アルミニウム合金物品の特徴は、記述される特徴を取得する任意の手段によって必ずしも限定されない。そうであっても、先行の態様は、本明細書に記述されるある特定の特徴を有するアルミニウム合金物品を調製するのに好適な方法の様々な実施形態を記述する。
【0068】
アルミニウム合金物品を調製する方法
ある特定の態様および実施形態では、上に開示されるアルミニウム合金物品は、本明細書に開示される方法の製品である。本明細書に記述されるものの範囲を限定することを意図することなく、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品のある特定の性質は、アルミニウム合金物品の調製中のある特定の組成的特徴の形成によって少なくとも部分的に決定される。
【0069】
少なくとも別の態様では、本開示は、(本明細書では処理されたアルミニウム合金物品とも称される)表面改質アルミニウム合金物品を作製する方法を提供する。本方法は、表面下部分およびバルク部分を有するアルミニウム合金物品を提供するステップであって、アルミニウム合金物品が、合金元素としてMgおよびCuを含むアルミニウム合金材料を含む、提供するステップと、表面下部分の表面を表面改質組成物と接触させるステップと、を含む。表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、約0.2~約5.0である。本方法のいくつかの実施形態では、アルミニウム合金物品は、他のステップの中でも、溶融アルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造製品を形成するステップと、アルミニウム合金鋳造製品を均質化して、均質化されたアルミニウム合金鋳造製品を形成するステップと、均質化されたアルミニウム合金製品を圧延して、圧延アルミニウム合金製品を形成するステップと、圧延アルミニウム合金製品を溶体化して、アルミニウム合金物品を形成するステップと、を含む加工によって形成される。かかる加工ステップおよび処理ステップは、以下でさらに詳細に記述される。
【0070】
さらに、本明細書に開示される方法は、MgおよびCuの両方を含むアルミニウム合金材料を使用する。この態様では、上記の態様の様々な実施形態に記述されるアルミニウム合金組成物を含む、任意の好適なかかるアルミニウム合金を使用することができ、その説明は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
鋳造
本明細書に開示される方法は、溶融アルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造製品を形成するステップを含む。いくつかの実施形態では、合金を、直接チル(DC)鋳造加工を使用して鋳造して、アルミニウム合金インゴットを形成する。次いで、得られたインゴットをスキャルピングすることができる。次いで、鋳造製品をさらなる加工ステップに供することができる。1つの非限定的な例では、加工方法は、アルミニウム合金インゴットを均質化することと、アルミニウム合金インゴットを熱間圧延してアルミニウム合金ホットバンドを形成することと、を含む。次いで、アルミニウム合金ホットバンドを冷間圧延、溶体化熱処理、および任意選択で、前処理ステップに供することができる。
【0072】
いくつかの他の実施形態では、合金は、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、またはブロック鋳造機の使用を挙げることができるが、これらに限定されない、連続鋳造(CC)加工を使用して鋳造される。いくつかの実施形態では、鋳造加工は、CC加工によって実施されて、ビレット、スラブ、シェート、ストリップなどの形態に鋳造製品を形成する。
【0073】
先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、溶融合金は、鋳造前に処理され得る。処理は、脱気、インラインフラクシング、および濾過のうちの1つ以上を含み得る。
【0074】
鋳造製品は、次いで、以下でさらに詳細に記載されるように、さらなる加工ステップに供され得る。いくつかの実施形態では、加工ステップを使用して、アルミニウム合金シートを調製することができる。加工ステップは、当業者に既知であるような改質および技術を使用して、インゴット、ビレット、スラブ、ストリップなどを含むが、これらに限定されない任意の鋳造製品に好適に応用され得る。
【0075】
均質化
均質化ステップは、本明細書に記載される合金組成物から調製されるアルミニウム合金鋳造製品を加熱して、少なくとも約450℃(例えば、少なくとも450℃、少なくとも460℃、少なくとも470℃、少なくとも480℃、少なくとも490℃、少なくとも500℃、少なくとも510℃、少なくとも520℃、少なくとも530℃、少なくとも540℃、少なくとも550℃、少なくとも560℃、少なくとも570℃、または少なくとも580℃)のピーク金属温度(PMT)を達成することを含み得る。例えば、鋳造製品を、450℃~600℃、500℃~590℃、520℃~580℃、530℃~575℃、535℃~570℃、540℃~565℃、545℃~560℃、530℃~560℃、または550℃~580℃の温度に加熱することができる。先行の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、PMTへの加熱速度は、100℃/時間以下、75℃/時間以下、50℃/時間以下、40℃/時間以下、30℃/時間以下、25℃/時間以下、20℃/時間以下、または15℃/時間以下である。いくつかの他のかかる実施形態では、PMTへの加熱速度は、10℃/分~100℃/分(例えば、10℃/分~90℃/分、10℃/分~70℃/分、10℃/分~60℃/分、20℃/分~90℃/分、30℃/分~80℃/分、40℃/分~70℃/分、または50℃/分~60℃/分)である。
【0076】
ほとんどの場合では、次いで、アルミニウム合金鋳造製品を、ある期間にわたって均熱化(すなわち、指摘された温度に保持)してもよい。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品を、最大15時間(例えば、包括的に30分~6時間)均熱化してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品は、少なくとも450℃の温度で、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、またはそれらの間の任意の期間にわたって均熱化される。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される均質化は、2段階の均質化加工で実行され得る。いくつかのかかる実施形態では、均質化加工は、上記の加熱および均熱化ステップを含むことができ、これは、第1の段階と称することができ、さらに第2の段階を含むことができる。均質化加工の第2の段階では、アルミニウム合金鋳造製品の温度は、均質化加工の第1の段階で使用される温度よりも高い温度に上げられる。アルミニウム合金鋳造製品の温度は、例えば、均質化加工の第1の段階中で、アルミニウム合金鋳造製品の温度よりも少なくとも5℃高い温度まで上げられ得る。例えば、アルミニウム合金鋳造製品の温度は、少なくとも455℃(例えば、少なくとも460℃、少なくとも465℃、または少なくとも470℃)の温度まで上げられ得る。第2の段階の均質化温度への加熱速度は、5℃/時間以下、3℃/時間以下、または2.5℃/時間以下であり得る。次いで、アルミニウム合金鋳造製品を、第2の段階中にある期間にわたって均熱化してもよい。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品を、最大10時間(例えば、包括的に30分~10時間)均熱化してもよい。例えば、アルミニウム合金鋳造製品を、少なくとも455℃の温度で、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、または10時間均熱化することができる。いくつかの実施形態では、均質化の後、アルミニウム合金鋳造製品を、空気中で室温まで冷却してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、均質化は、かかるステップが必要でない場合がある、ある特定の連続鋳造(CC)方法などで実施されない場合がある。
【0079】
任意選択の焼入れ
いくつかの実施形態では、特に、鋳造製品が連続鋳造(CC)によって形成されたいくつかの実施形態では、熱間圧延の前に鋳造製品を焼入れすることができる。いくつかのかかる実施形態では、上で開示される均質化が実施されないことがある。したがって、CCに関与するいくつかの実施形態では、鋳造ステップの後、鋳造製品を焼入れする。焼入れステップでは、鋳造製品を約300℃以下の温度に冷却することができる。例えば、鋳造製品を、290℃以下、280℃以下、270℃以下、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、または40℃以下(例えば、25℃)の温度に冷却することができる。焼入れステップは、液体(例えば、水)、気体(例えば、空気)、または別の選択された焼入れ媒体を使用して実施され得る。
【0080】
熱間圧延
均質化ステップに続いて、1つ以上の熱間圧延パスを実施することができる。ある特定の場合では、アルミニウム合金鋳造製品は、250℃~550℃(例えば、300℃~500℃、または350℃~450℃)の範囲の温度で置かれ、熱間圧延される。
【0081】
ある特定の実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品は、4mm~15mm厚ゲージ(例えば、4mm~15mm厚ゲージ)に熱間圧延され、これはシェートと称される。例えば、アルミニウム合金鋳造製品は、15mm厚ゲージ、14mm厚ゲージ、13mm厚ゲージ、12mm厚ゲージ、11mm厚ゲージ、10mm厚ゲージ、9mm厚ゲージ、8mm厚ゲージ、7mm厚ゲージ、6mm厚ゲージ、5mm厚ゲージ、または4mm厚ゲージに熱間圧延され得る。
【0082】
ある特定の他の実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品は、15mm厚を超えるゲージに熱間圧延され得る(例えば、プレート)。例えば、アルミニウム合金鋳造製品は、25mm厚ゲージ、24mm厚ゲージ、23mm厚ゲージ、22mm厚ゲージ、21mm厚ゲージ、20mm厚ゲージ、19mm厚ゲージ、18mm厚ゲージ、17mm厚ゲージ、または16mm厚ゲージに熱間圧延され得る。
【0083】
他の場合では、アルミニウム合金鋳造製品は、4mm以下のゲージに熱間圧延され得る(すなわち、シート)。いくつかのかかる実施形態では、アルミニウム合金鋳造製品は、1mm~4mm厚ゲージに熱間圧延される。例えば、アルミニウム合金鋳造製品は、4mm厚ゲージ、3mm厚ゲージ、2mm厚ゲージ、または1mm厚ゲージに熱間圧延され得る。
【0084】
冷間圧延
熱間圧延に続いて、1つ以上の冷間圧延パスを実施することができる。ある特定の実施形態では、熱間圧延ステップからの圧延製品(例えば、プレート、シェート、またはシート)は、薄いゲージのシェートまたはシートに冷間圧延され得る。いくつかの実施形態では、この薄いゲージのシェートまたはシートは、冷間圧延されて、1.0mm~10.0mm、または2.0mm~8.0mm、または3.0mm~6.0mm、または4.0mm~5.0mmの範囲の厚さ(すなわち、第1の厚さ)を有する。いくつかの実施形態では、この薄いゲージのシェートまたはシートは、冷間圧延されて、12.0mm、11.9mm、11.8mm、11.7mm、11.6mm、11.5mm、11.4mm、11.3mm、11.2mm、11.1mm、11.0mm、10.9mm、10.8mm、10.7mm、10.6mm、10.5mm、10.4mm、10.3mm、10.2mm、10.1mm、10.0mm、9.9mm、9.8mm、9.7mm、9.6mm、9.5mm、9.4mm、9.3mm、9.2mm、9.1mm、9.0mm、8.9mm、8.8mm、8.7mm、8.6mm、8.5mm、8.4mm、8.3mm、8.2mm、8.1mm、8.0mm、7.9mm、7.8mm、7.7mm、7.6mm、7.5mm、7.4mm、7.3mm、7.2mm、7.1mm、7.0mm、6.9mm、6.8mm、6.7mm、6.6mm、6.5mm、6.4mm、6.3mm、6.2mm、6.1mm、6.0mm、5.9mm、5.8mm、5.7mm、5.6mm、5.5mm、5.4mm、5.3mm、5.2mm、5.1mm、5.0mm、4.9mm、4.8mm、4.7mm、4.6mm、4.5mm、4.4mm、4.3mm、4.2mm、4.1mm、4.0mm、3.9mm、3.8mm、3.7mm、3.6mm、3.5mm、3.4mm、3.3mm、3.2mm、3.1mm、3.0mm、2.9mm、2.8mm、2.7mm、2.6mm、2.5mm、2.4mm、2.3mm、2.2mm、2.1mm、2.0mm、1.9mm、1.8mm、1.7mm、1.6mm、1.5mm、1.4mm、1.3mm、1.2mm、1.1mm、1.0mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、または0.1mmの厚さを有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、1つ以上の冷間圧延パスは、圧延アルミニウム製品の厚さを、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%低減させる。いくつかの実施形態では、1つ以上の冷間圧延パスは、鋳造製品を、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、または5mm以下の厚さ(すなわち、第1の厚さ)まで低減させる。
【0086】
溶体化
次いで、冷間圧延コイルを溶体化熱処理ステップで溶体化して、アルミニウム合金物品を形成することができる。溶体化は、巻き戻された最終ゲージのアルミニウム合金を、室温から、450℃~590℃(例えば、475℃~585℃、500℃~580℃、515℃~575℃、525℃~570℃、530℃~565℃、535℃~560℃、または540℃~555℃)の温度に加熱することを含み得る。いくつかの例では、溶体化は、560℃以下(例えば、520℃~560℃)の温度で実施される。例えば、溶体化は、450℃、455℃、460℃、465℃、470℃、475℃、480℃、485℃、490℃、495℃、500℃、505℃、510℃、515℃、520℃、525℃、530℃、535℃、540℃、545℃、550℃、555℃、または560℃の温度で実施され得る。
【0087】
最終ゲージのアルミニウム合金を、ある期間にわたって溶体化温度で均熱化することができる。ある特定の態様では、最終ゲージのアルミニウム合金を、最大約5時間(例えば、包括的に約1秒~約5時間)均熱化してもよい。例えば、冷間圧延コイルを、1秒、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、55秒、60秒、65秒、70秒、75秒、80秒、85秒、90秒、95秒、100秒、105秒、110秒、115秒、120秒、125秒、130秒、135秒、140秒、145秒、150秒、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、またはそれらの間の任意の時間にわたって、525℃~590℃の溶体化温度で均熱化することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、より短い均熱化の持続時間が望ましい。例えば、冷間圧延コイルを、約30秒以下(例えば、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、5秒以下、または1秒)にわたって均熱化してもよい。
【0089】
焼入れ
ある特定の態様では、アルミニウム合金物品は、次いで、選択されたゲージに基づく焼入れステップにおいて、50℃/秒~400℃/秒の間で変化し得る焼入れ速度で、約30℃の温度まで冷却される。例えば、焼入れ速度は、50℃/秒~375℃/秒、60℃/秒~375℃/秒、70℃/秒~350℃/秒、80℃/秒~325℃/秒、90℃/秒~300℃/秒、100℃/秒~275℃/秒、125℃/秒~250℃/秒、150℃/秒~225℃/秒、または175℃/秒~200℃/秒であり得る。
【0090】
焼入れステップでは、アルミニウム合金物品は、液体(例えば、水)および/もしくは気体、または別の選択された焼入れ媒体で焼入れされる。ある特定の態様では、アルミニウム合金物品を空気焼入れすることができる。アルミニウム合金物品は、任意選択で、以下でさらに記載されるように、ある特定の処理ステップを受けることができる。
【0091】
表面改質
本明細書で開示される方法は、圧延表面を処理して、処理されたアルミニウム合金物品を形成するステップ(複数可)を含み、本処理は、圧延表面を処理組成物と接触させることを含む。概して、本明細書に記述される表面処理加工は、上に記載されるように、アルミニウム合金物品のMg枯渇および/またはCu濃縮においてある役割を果たす。
【0092】
本方法の処理および他のステップに関して、「表面下部分」および「バルク部分」が参照される。これらの用語は、任意の実施形態およびそれらの実施形態の組み合わせを含む、アルミニウム合金物品に関する態様の説明の中で上に記述されるのと同じ意味を有し、この説明は、参照により本方法のこの議論に組み込まれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、処理は、アルカリ性清浄化組成物で表面を清浄化することを含む。かかる清浄化は、表面から残留油またはある特定の付着酸化物(例えば、MgO)を除去する。いくつかの実施形態では、清浄化組成物は、7.5以上のpHを有するアルカリ性溶液である。いくつかのさらなるかかる実施形態では、アルカリ性溶液のpHは、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、または約13であり得る。いくつかのかかる実施形態では、アルカリ性剤の濃度は、1%~10%(例えば、アルカリ性溶液の体積に基づいて、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%)の範囲である。好適なアルカリ性剤としては、例えば、水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなど)が挙げられる。アルカリ性溶液は、アニオン性および非イオン性の界面活性剤を含む、1つ以上の界面活性剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、アルカリ性溶液は、強酸化剤を含まないか、または非常に低い濃度の強酸化剤(例えば、1000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、25ppm以下、もしくは10ppm以下の濃度)を有する。アルカリ性洗浄は、例えば、表面から、MgOの形態でMgを除去することができるスプレー衝突を使用して実施され得る。さらに、いくつかの実施形態では、アルカリ性洗浄に続いて、洗浄された表面に、高圧下で水または水性媒体を噴霧することができる。洗浄後噴霧は、アルミニウム合金物品の表面から、酸化Mgを(例えば、MgOとして)除去するのに役立ち得る。
【0094】
本明細書に記載される前処理加工は、アルミニウム合金物品の表面をエッチングするステップを含むこともできる。アルミニウム合金物品の表面を、酸エッチング(すなわち、7未満のpHを有する酸性溶液を含むエッチング手順)、アルカリエッチング(すなわち、7超のpHを有する塩基性溶液を含むエッチング手順)、または中性条件下でのエッチング(すなわち、7のpHを有する中性溶液を含むエッチング手順)などの化学エッチングを使用してエッチングすることができる。化学エッチングは、前処理の後続の塗布を受け入れるように、表面を調製する。このステップの間に、Al酸化物およびMgリッチ酸化物(Mg rich oxide)など、任意の緩く付着している酸化物、封入された油、または破片を適切に除去することができる。酸エッチングを実施するための例示的な化学物質としては、硫酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。アルカリエッチングを実施するための例示的な化学物質としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。酸エッチングステップの後、アルミニウム合金物品の表面を水性または有機溶媒ですすぐことができる。
【0095】
さらに、いくつかの実施形態では、処理は、加工ごとに先行の実施形態のいずれかに従って、酸エッチングおよびアルカリ性洗浄の両方を実行することを含む。いくつかのかかる実施形態では、酸エッチングがアルカリ性洗浄に先行する。
【0096】
上述のように、処理ステップ(複数可)は、Cuに対してアルミニウム合金物品の表面部分からMgを選択的に除去する。いくつかのかかる実施形態では、処理は、表面部分中のMgの原子濃度を、表面部分中に存在するMgの初期原子濃度に基づいて、すなわち、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%低減させる。酸化形態のMg、例えば、MgOがMgの原子濃度に寄与することに留意されたい。いくつかのさらなるかかる実施形態では、処理は、表面部分中のCuの原子濃度を、表面部分中に存在するCuの初期原子濃度に基づいて、すなわち、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下低減させる。
【0097】
前処理
次いで、アルミニウム合金物品の表面に前処理を塗布することができる。任意選択で、前処理は、接着促進剤、腐食抑制剤、カップリング剤、抗菌剤、またはそれらの混合物を含み得る。すぐ上に開示される表面塗布加工を、任意の好適な組み合わせで前処理加工と組み合わせて使用することができることに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、アルミニウム合金物品の表面を酸性エッチング液組成物と接触させ、かつ次いで、接着促進剤などの前処理と接触させる。いくつかの他の実施形態では、アルミニウム合金物品をアルカリ性組成物と接触させた後、水を強力に噴霧し、かつ次いで、接着促進剤などの前処理と接触させる。いくつかのさらなる実施形態では、アルミニウム合金物品の表面を酸性エッチング液組成物と接触させ、かつ次いで、アルカリ性組成物と接触させた後、水を強力に噴霧し、かつ次いで、接着促進剤などの前処理と接触させる。いくつかの他の実施形態では、アルミニウム合金物品の表面をアルカリ性組成物と接触させた後、水を強力に噴霧し、かつ次いで、酸性エッチング液組成物と接触させ、かつ次いで、接着促進剤などの前処理と接触させる。
【0098】
前処理後のすすぎおよび乾燥
前処理の塗布後、アルミニウム合金物品の表面は、任意選択で、溶媒(例えば、水性または有機溶媒)ですすぐことができる。すすぎステップの後、アルミニウム合金物品の表面を乾燥させることができる。
【0099】
仕上げ
処理ステップ(複数可)およびいずれかの任意選択の追加処理に続いて、仕上げ調質度を有するように、アルミニウム合金物品を仕上げることができる。いくつかの実施形態では、仕上げ調質度は、O調質度、F調質度、またはT1~T9の範囲の任意の調質度である。いくつかのさらなるかかる実施形態では、仕上げ調質度は、F調質度、T4調質度、T6調質度、またはT8x調質度である。
【0100】
1つ以上のさらなる態様では、本開示は、上記に、または任意のその実施形態に記述された加工によって形成されるアルミニウム合金物品を提供する。
【0101】
製造物品
少なくとも別の態様では、本開示は、前述の態様またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品から構成される、製造物品を提供する。いくつかの実施形態では、製造物品は、圧延アルミニウム合金シートを含む。かかる製造物品の例としては、自動車、トラック、トレーラ、列車、鉄道車両、飛行機、先行のいずれかのための本体パネルもしくは部品、橋、パイプライン、パイプ、管材、ボート、船、貯蔵容器、貯蔵タンク、家具、窓、ドア、手すり、機能的もしくは装飾的な建築物、パイプ手すり、電気構成要素、導管、飲料容器、食品容器、またはホイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、自動車両、航空機、および鉄道用途を含む、自動車用途および/もしくは輸送用途、または他の任意の所望の用途において使用され得る。いくつかの例では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、およびCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルなどの自動車両の本体部品製品を調製することができる。本明細書に記載されるアルミニウム合金および方法を航空機または鉄道車両用途に使用して、例えば、外部および内部パネルを調製することもできる。
【0103】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、電子機器用途に使用され得る。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、携帯電話およびタブレットコンピュータを含む、電子デバイス用のハウジングを調製することもできる。いくつかの例では、合金を使用して、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシングおよびタブレットボトムシャシ用のハウジングを調製することができる。
【0104】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、産業用途に使用され得る。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、一般流通市場向けの製品を調製することができる。
【0105】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品は、航空宇宙本体部品として使用され得る。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、翼、胴体、補助翼、方向舵、エレベーター、カウリング、またはサポートなどの構造用航空宇宙本体部品を調製することができる。いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、シートトラック、シートフレーム、パネル、またはヒンジなどの非構造用航空宇宙本体部品を調製することができる。
【0106】
接合された製造物品
少なくとも別の態様では、本開示は、接合された製造物品であって、本明細書に開示される第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金を含み、第1のアルミニウム合金物品の表面と、第2の金属または合金物品の表面とが一緒に接合される、接合された製造物品を提供する。場合によっては、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方は、第1もしくは第3の態様、またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品である。任意選択で、第2の金属または合金物品は、鋼(例えば、亜鉛メッキ鋼)、または炭素複合体などの複合体材料を含む。いくつかの実施形態では、第1のアルミニウム合金物品の表面と、第2の金属または合金物品の表面とは、例えば、エポキシ樹脂などの接着剤組成物を使用する接着接合によって一緒に接合される。いくつかの他の実施形態では、第1のアルミニウム合金物品の表面と、第2の金属または合金物品の表面とは、例えば、溶接組成物を使用する溶接によって一緒に接合される。
【0107】
かかる接合された製造物品の例としては、自動車、トラック、トレーラ、列車、鉄道車両、飛行機、先行のいずれかのための本体パネルもしくは部品、橋、パイプライン、パイプ、管材、ボート、船、貯蔵容器、貯蔵タンク、家具、窓、ドア、手すり、機能的もしくは装飾的な建築物、パイプ手すり、電気構成要素、導管、飲料容器、食品容器、またはホイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を、上に記載されるように接合し、自動車両、航空機、および鉄道用途を含む、自動車用途および/もしくは輸送用途、または他の任意の所望の用途において使用することができる。いくつかの例では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、およびCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルなどの自動車両の本体部品製品を調製することができる。本明細書に記載されるアルミニウム合金および方法を航空機または鉄道車両用途に使用して、例えば、外部および内部パネルを調製することもできる。
【0109】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を、上に記載されるように接合し、電子機器用途に使用することができる。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、携帯電話およびタブレットコンピュータを含む、電子デバイス用のハウジングを調製することもできる。いくつかの例では、合金を使用して、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシングおよびタブレットボトムシャシ用のハウジングを調製することができる。
【0110】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を、上に記載されるように接合し、産業用途に使用することができる。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、一般流通市場向けの製品を調製することができる。
【0111】
いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を、上に記載されるように接合し、航空宇宙本体部品として使用することができる。例えば、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、翼、胴体、補助翼、方向舵、エレベーター、カウリング、またはサポートなどの構造用航空宇宙本体部品を調製することができる。いくつかの他の実施形態では、本明細書に開示されるアルミニウム合金物品を使用して、シートトラック、シートフレーム、パネル、またはヒンジなどの非構造用航空宇宙本体部品を調製することができる。
【0112】
アルミニウム合金物品を接合する方法
少なくとも別の態様では、本開示は、アルミニウム合金物品を接合する方法であって、本方法が、表面を有する第1のアルミニウム合金物品、および表面を有する第2の金属または合金物品を提供することであって、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方が、第1もしくは第3の態様、またはそれらの任意の実施形態のアルミニウム合金物品である、提供することと、第1のアルミニウム合金物品の表面と第2の金属または合金物品の表面とを接合することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、接合は、例えば、エポキシ樹脂などの接着剤組成物との接着接合を含む。いくつかの他の実施形態では、接合は溶接を含む。
【0113】
不活性な表面のアルミニウム合金物品
アルミニウム合金物品
本明細書には、優れた接合耐久性および耐食性を含む、所望の表面性質を有するアルミニウム合金物品が記載されている。他の組成的特徴の中でも、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品は、アルミニウム合金物品の表面下部分内に酸化銅を含有する。酸化銅は、酸化銅(I)(すなわち、CuO)、酸化銅(II)(CuO)、過酸化銅(CuO)、および/または酸化銅(III)(Cu)として表面下部分内に存在し得る。酸化銅含有層は、約0.5~約1(例えば、約0.6~約0.9、または約0.7~約0.8)の、銅イオン(例えば、Cu、Cu2+、および/またはCu3+)濃度対元素銅(Cu)濃度の原子比を含む、酸化銅粒子を含み得る。例えば、酸化銅含有層は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1の、銅イオン対元素銅の原子比を有し得る。表面下内の酸化銅は、物品に耐食性を与えるバリア層として作用する。加えて、酸化銅は、物品に不活性なまたは中和された表面を与え、その結果、物品の高い接合耐久性性質をもたらす。
【0114】
本明細書で使用される場合、「表面下」という用語は、合金物品の外部表面から合金物品の内部に最大約5μmの深さまで延在する、アルミニウム合金物品の部分を指す。任意選択で、表面下とは、合金物品の内部に、約0.01μm、約0.05μm、約0.1μm、約0.15μm、約0.2μm、約0.25μm、約0.3μm、約0.35μm、約0.4μm、約0.45μm、約0.5μm、約0.55μm、約0.6μm、約0.65μm、約0.7μm、約0.75μm、約0.8μm、約0.85μm、約0.9μm、約0.95μm、約1.0μm、約1.5μm、約2.0μm、約2.5μm、約3.0μm、約3.5μm、約4.0μm、約4.5μm、もしくは約5.0μmの深さ、またはそれらの間のいずれかまで延在する、合金物品の部分を指す。いくつかの例では、表面下は、合金物品の内部内で、表面から約2.0μmの深さまで延在する。いくつかの態様では、表面下は、合金物品の任意の外部表面から延在し得る。例えば、表面下は、合金物品の第1の側面(例えば、合金シートの頂部表面)、合金物品の第2の側面(例えば、合金シートの底部表面)、合金物品の第3の側面(例えば、合金シートの第1の縁部)、または合金物品の第4の側面(例えば、合金シートの第2の縁部)から延在し得る。表面下部分を除くアルミニウム合金物品の部分(例えば、合金物品の残部)は、本明細書では、合金物品のバルクと称される。
【0115】
アルミニウム合金物品は、任意の好適な組成物を有し得る。いくつかの例では、アルミニウム合金物品は、少なくとも約0.001重量%のCuを含む任意のアルミニウム合金から調製され得る。例えば、アルミニウム合金物品は、約0.001重量%~約10重量%(例えば、約0.01重量%~約9重量%、約0.05重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約8重量%)のCuを含むアルミニウム合金から調製され得る。任意選択で、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品に使用するためのアルミニウム合金は、約0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.006重量%、0.007重量%、0.008重量%、0.009重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5.0重量%、5.1重量%、5.2重量%、5.3重量%、5.4重量%、5.5重量%、5.6重量%、5.7重量%、5.8重量%、5.9重量%、6.0重量%、6.1重量%、6.2重量%、6.3重量%、6.4重量%、6.5重量%、6.6重量%、6.7重量%、6.8重量%、6.9重量%、7.0重量%、7.1重量%、7.2重量%、7.3重量%、7.4重量%、7.5重量%、7.6重量%、7.7重量%、7.8重量%、7.9重量%、8.0重量%、8.1重量%、8.2重量%、8.3重量%、8.4重量%、8.5重量%、8.6重量%、8.7重量%、8.8重量%、8.9重量%、9.0重量%、9.1重量%、9.2重量%、9.3重量%、9.4重量%、9.5重量%、9.6重量%、9.7重量%、9.8重量%、9.9重量%、または10.0重量%の量でCuを含む。
【0116】
非限定的な例では、アルミニウム合金物品としては、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を挙げることができ、Cuは合金元素として添加されるか、またはCuは不純物として存在する。
【0117】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な1xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA1050、AA1060、AA1070、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、およびAA1199が挙げられる。
【0118】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な2xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、およびAA2199が挙げられる。
【0119】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な3xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、およびAA3065が挙げられる。
【0120】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な4xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、およびAA4147が挙げられる。
【0121】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な5xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、およびAA5088が挙げられる。
【0122】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な6xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、およびAA6092が挙げられる。
【0123】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な7xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、AA7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、およびAA7099が挙げられる。
【0124】
アルミニウム合金物品として使用するのに好適な8xxxシリーズのアルミニウム合金としては、例えば、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、およびAA8093が挙げられる。
【0125】
本文全体を通じてアルミニウム合金物品が記載されているが、その方法および物品は任意の金属に塗布される。いくつかの例では、金属物品は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムベースの材料、チタン、チタンベースの材料、銅、銅ベースの材料、鋼、鋼ベースの材料、青銅、青銅ベースの材料、真鍮、真鍮ベースの材料、複合材料、複合材料に使用されるシート、またはその他の任意の好適な金属もしくは材料の組み合わせである。物品は、モノリシック材料、ならびに圧延接合材料、クラッド材料、複合材料、または他の様々な材料などの非モノリシック材料を含み得る。いくつかの例では、金属物品は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴットなどである。アルミニウム合金物品中に存在するCuを、アルミニウム合金物品の表面下部分とバルク部分との間に分布させることができる。いくつかの例では、Cuを、アルミニウム合金物品の表面下部分とバルク部分の間に均等に分布させることができる。他の例では、Cuの大部分(すなわち、50%超)を、アルミニウム合金物品の表面下部分内に局在化させることができる。さらに他の例では、Cuの大部分を、アルミニウム合金物品のバルク部分内に局在化させることができる。いずれかの部分(すなわち、アルミニウム合金物品の表面下部分であろうと、バルク部分であろうと)では、その部分の中にCuを均質的に取り込むか、または変動的に取り込むことができる。本明細書で使用される場合、Cuの存在に関連する「均質的に取り込まれた」とは、Cuがアルミニウム合金物品の表面下部分またはバルク部分内に均一に分布していることを意味する。これらの場合、領域ごとの(すなわち、表面下部分の領域内またはバルク部分の領域内の)Cuの濃度は、平均して、領域にわたって比較的一定である。本明細書で使用される場合、Cuの分布に関連する「比較的一定」とは、アルミニウム合金物品の表面下またはバルクの第1の領域中のCuの濃度が、アルミニウム合金物品の表面下またはバルクの第2の領域中のCuの濃度から、最大約20%(例えば、最大約15%、最大約10%、最大約5%、または最大約1%)異なり得ることを意味する。
【0126】
他の場合、ある領域中のCuの濃度は、アルミニウム合金物品の表面下部分またはバルク部分内に変動的に取り込まれている。本明細書で使用される場合、Cuの分布に関連する「変動的に取り込まれた」とは、Cuがアルミニウム合金物品の表面下部分またはバルク部分内に均一に分布していないことを意味する。例えば、より高いCu濃度を、アルミニウム合金物品の表面下の第2部分中(またはアルミニウム合金物品のバルクの第2の部分中)のCu濃度と比較して、アルミニウム合金物品の表面下の第1の部分中(またはアルミニウム合金物品のバルクの第1の部分中)に局在化させることができる。
【0127】
上に記載されるように、アルミニウム合金物品の表面下部分中に存在する少なくとも約30原子%のCuが酸化される。例えば、酸化され得る表面下部分中に存在するCuの量は、少なくとも約30原子%、少なくとも約31原子%少なくとも約32原子%、少なくとも約33原子%、少なくとも約34原子%、少なくとも約35原子%、少なくとも約36原子%、少なくとも約37原子%、少なくとも約38原子%、少なくとも約39原子%、少なくとも約40原子%、少なくとも約41原子%、少なくとも約42原子%、少なくとも約43原子%、少なくとも約44原子%、少なくとも約45原子%、少なくとも約46原子%、少なくとも約47原子%、少なくとも約48原子%、少なくとも約49原子%、少なくとも約50原子%、少なくとも約51原子%、少なくとも約52原子%、少なくとも約53原子%、少なくとも約54原子%、少なくとも約55原子%、少なくとも約56原子%、少なくとも約57原子%、少なくとも約58原子%、少なくとも約59原子%、少なくとも約60原子%、少なくとも約61原子%、少なくとも約62原子%、少なくとも約63原子%、少なくとも約64原子%、少なくとも約65原子%、少なくとも約66原子%、少なくとも約67原子%、少なくとも約68原子%、少なくとも約69原子%、少なくとも約70原子%、少なくとも約71原子%、少なくとも約72原子%、少なくとも約73原子%、少なくとも約74原子%、少なくとも約75原子%、少なくとも約76原子%、少なくとも約77原子%、少なくとも約78原子%、少なくとも約79原子%、少なくとも約80原子%、少なくとも約81原子%、少なくとも約82原子%、少なくとも約83原子%、少なくとも約84原子%、少なくとも約85原子%、少なくとも約86原子%、少なくとも約87原子%、少なくとも約88原子%、少なくとも約89原子%、少なくとも約90原子%、少なくとも約91原子%、少なくとも約92原子%、少なくとも約93原子%、少なくとも約94原子%、少なくとも約95原子%、少なくとも約96原子%、少なくとも約97原子%、少なくとも約98原子%、少なくとも約99原子%、または少なくとも約100原子%である。
【0128】
本明細書に記載されるアルミニウム合金物品は、任意の好適なゲージを有し得る。例えば、アルミニウム合金物品は、約0.5mm~約50mm(例えば、約0.5mm、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約15mm、約20mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、約50mm、またはそれらの間のいずれか)のゲージを有する、アルミニウム合金プレート、アルミニウム合金シェート、またはアルミニウム合金シートであり得る。
【0129】
合金物品を調製する方法
ある特定の態様では、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品を、本明細書に記載される方法を使用して調製することができる。範囲を限定することを意図することなく、アルミニウム合金物品の性質は、物品の調製中にある特定の組成的特徴の形成によって部分的に決定される。例えば、調製の方法は、物品の表面下部分内に酸化銅含有層の形成をもたらす。酸化銅含有層は、物品に不活性な表面品質を与え、その結果、優れた接合耐久性および耐食性をもたらす。
【0130】
本明細書に記載される任意の好適な(すなわち、少なくともいくらかの量のCuを含有する)アルミニウム合金を、任意の好適な方法によって鋳造して、鋳造物品をもたらすことができる。いくつかの例では、合金を、直接チル(DC)鋳造加工を使用して鋳造して、アルミニウム合金インゴットを形成することができる。いくつかの例では、合金を、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、またはブロック鋳造機の使用を挙げることができるが、これらに限定されない、連続鋳造(CC)加工を使用して鋳造して、ビレット、スラップ、シェート、ストリップなどの形成で鋳造物品を形成することができる。次いで、鋳造物品を、物品を調製するために使用される特定のアルミニウム合金シリーズに基づいて、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、焼入れ、および/または時効を含むが、これらに限定されない、加工ステップに供することができる。加工に続いて、アルミニウム合金物品は、以下でさらに記載されるように、表面調製ステップを受けることがある。
【0131】
表面調製
本明細書に記載され、DC鋳造もしくはCC、または他の方法で鋳造され、続いて加工されるアルミニウム合金物品は、以下に記載される表面調製加工に供され得る。
【0132】
清浄化
任意選択で、本明細書に記載される表面調製加工は、クリーナ(本明細書ではエントリークリーナまたはプレクリーナとも称される)を、アルミニウム合金物品の1つ以上の表面に塗布するステップを含む。エントリーリクリーナは、アルミニウム合金物品の表面から、残留油または緩く付着している酸化物を除去する。任意選択で、エントリー清浄化を、7.5以上のpHを有するアルカリ性溶液を使用して実施することができる。場合によっては、アルカリ性溶液のpHは、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、または約13であり得る。アルカリ性溶液中のアルカリ性剤の濃度は、約1%~約5%(例えば、アルカリ性溶液の体積に基づいて、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%)であり得る。好適なアルカリ性剤としては、例えば、ケイ酸塩および水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)が挙げられる。アルカリ性溶液は、例えば、アニオン性および非イオン性の界面活性剤を含む、1つ以上の界面活性剤をさらに含み得る。
【0133】
エッチング
本明細書に記載される表面調製加工は、アルミニウム合金物品の表面をエッチングするステップを含む。アルミニウム合金物品の表面を、酸エッチング(すなわち、酸性溶液を含むエッチング手順)を使用してエッチングすることができる。エッチングするステップは、アルミニウム合金物品の表面下部分内に存在するCuの少なくとも一部分を酸化する。加えて、エッチングするステップは、前処理の後続の塗布を受け入れるように、表面を調製する。このステップの間に、Al酸化物およびMgリッチ酸化物など、任意の緩く付着している酸化物、封入された油、または破片を適切に除去すべきである。
【0134】
エッチングするステップは、少なくとも1つの酸化剤を含むエッチング溶液を使用して実施される。エッチングを実施するのに好適な酸化剤としては、とりわけ、例えば、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、過酸化バリウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、過酸化水素、過酸化マグネシウム、臭素酸カリウム、塩素酸カリウム、過酸化カリウム、塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、および過酸化ナトリウムが挙げられる。任意選択で、エッチング溶液は、リン酸、硫酸、フッ化水素酸、酢酸、および/または塩酸を含む、1種以上の追加の酸を含み得る。エッチングするステップは、任意の好適な温度で実施され得る。
【0135】
エッチング溶液は、任意の好適な手段によって塗布され得る。任意選択で、エッチング溶液を循環させて、新鮮な溶液がシート表面に継続的に曝露されることを確実にすることができる。エッチングの滞留時間は、約2秒~約2分であり得る。例えば、エッチングの滞留時間は、約2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、10秒、11秒、12秒、13秒、14秒、15秒、16秒、17秒、18秒、19秒、20秒、約21秒、約22秒、約23秒、約24秒、約25秒、約26秒、約27秒、約28秒、約29秒、約30秒、約31秒、約32秒、約33秒、約34秒、約35秒、約36秒、約37秒、約38秒、約39秒、約40秒、約41秒、約42秒、約43秒、約44秒、約45秒、約46秒、約47秒、約48秒、約49秒、約50秒、約51秒、約52秒、約53秒、約54秒、約55秒、約56秒、約57秒、約58秒、約59秒、約60秒、約61秒、約62秒、約63秒、約64秒、約65秒、約66秒、約67秒、約68秒、約69秒、約70秒、約71秒、約72秒、約73秒、約74秒、約75秒、約80秒、約90秒、約100秒、約110秒、もしくは約120秒(すなわち、約2分)、またはそれらの間のいずれかであり得る。
【0136】
上述のように、エッチングするステップは、アルミニウム合金物品の表面下内に存在するCuの少なくとも一部を酸化する。いくつかの例では、エッチングするステップは、アルミニウム合金物品の表面下内の少なくとも約30原子%のCuを酸化する。例えば、エッチングするステップは、少なくとも約30重量%のCu、約35原子%のCu、約40原子%のCu、約45原子%のCu、約50原子%のCu、約55原子%のCu、約60原子%のCu、約65原子%のCu、約70原子%のCu、約75原子%のCu、約80原子%のCu、約85原子%のCu、約90原子%のCu、約95原子%のCu、約100原子%のCu、またはそれらの間のいずれかを酸化し得る。
【0137】
エッチング後のすすぎ
エッチングするステップの後、アルミニウム合金物品の表面を溶媒ですすぐことができる。任意選択で、溶媒を、脱イオン(DI)水、または逆浸透(RO)水などの水性溶液とすることができる。すすぐステップは、任意の好適な温度で実施され得る。
【0138】
前処理の塗布
任意選択で、次いで、アルミニウム合金物品の表面に前処理を塗布することができる。好適な前処理としては、例えば、接着促進剤および腐食抑制剤が挙げられる。前処理は、当技術分野で既知の任意の好適な温度で、任意の好適な持続時間にわたって塗布することができる。
【0139】
前処理の塗布により、アルミニウム合金物品の表面に前処理の薄層が生成される。場合によっては、前処理の塗布後に、アルミニウム合金物品の表面をすすぎ、かつ/または乾燥させることができる。
【0140】
使用の方法
本明細書に記載されるアルミニウム合金物品および方法は、商用車両、航空機、もしくは鉄道用途などの自動車、電子機器、輸送用途、またはその他の好適な用途に使用され得る。例えば、アルミニウム合金物品は、強度を得るために、シャシ、クロスメンバ、およびシャシ内構成要素(これらに限定するものではないが、商用車両シャシ内の2つのCチャンネル間のすべての構成要素を包含する)に使用することができ、高強度鋼の完全なまたは部分的な代替品として機能する。ある特定の例では、アルミニウム合金物品を、F、O、T4、T6、またはT8xの調質度で使用することができる。
【0141】
ある特定の態様では、アルミニウム合金物品および方法を使用して、自動車両の本体部品物品を調製することができる。例えば、開示されるアルミニウム合金物品および方法を使用して、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、およびCピラー)、内部パネル、サイドパネル、フロアパネル、トンネル、構造パネル、補強パネル、インナーフード、またはトランクリッドパネルなど、自動車の本体部品を調製することができる。開示されるアルミニウム合金物品および方法を航空機または鉄道車両の用途に使用して、例えば、外部および内部パネルを調製することもできる。
【0142】
本明細書に記載されるアルミニウム合金物品および方法を電子機器用途に使用して、例えば、外部および内部エンケースメントを調製することもできる。例えば、本明細書に記載されるアルミニウム合金物品および方法を使用して、携帯電話およびタブレットコンピュータを含む電子デバイス用のハウジングを調製することもできる。いくつかの例では、アルミニウム合金物品を使用して、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシングおよびタブレットボトムシャシ用のハウジングを調製することができる。
【0143】
ある特定の態様では、アルミニウム合金物品および方法を使用して、航空宇宙車両の本体部品物品を調製することができる。例えば、開示されるアルミニウム合金物品および方法を使用して、スキン合金のような航空機の本体部品を調製することができる。
【0144】
例示
例示1は、合金元素としてCuおよびMgを含むアルミニウム合金材料を含むアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、表面下部分およびバルク部分を備え、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、約0.2~約5.0である。
【0145】
例示2は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金材料は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金を含む。
【0146】
例示3は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金材料は、0.2~1.4重量%のSi;0.4~5.0重量%のMg;0.01~2.0重量%のCu;0.05~0.50重量%のFe;最大0.25重量%のMn;最大0.25重量%のCr;最大0.15重量%のZn;最大0.20重量%のTi;最大0.05重量%のZr;最大0.05重量%のPb;および最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlである。
【0147】
例示4は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金材料は、0.6~0.95重量%のSi;0.55~0.75重量%のMg;0.05~0.60重量%のCu;0.20~0.35重量%のFe;0.05~0.20重量%のMn;最大0.15重量%のCr;最大0.15重量%のZn;最大0.15重量%のTi;最大0.05重量%のZr;最大0.05重量%のPb、および最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlである。
【0148】
例示5は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、最大0.10重量%の、Ni、Sc、Sn、Be、Mo、Li、Bi、Sb、Nb、B、Co、Sr、V、In、Hf、およびAgからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0149】
例示6は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、最大0.10重量%の、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0150】
例示7は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、圧延アルミニウム合金シェートまたは圧延アルミニウム合金シートである。
【0151】
例示8は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、15mm以下、または14mm以下、または13mm以下、または12mm以下、または11mm以下、または10mm以下、または9mm以下、または8mm以下、または7mm以下、または6mm以下、または5mm以下、または4mm以下、または3mm以下、または2mm以下、または1mm以下、または0.5mm以下、または0.3mm以下、または0.1mm以下の厚さを有する。
【0152】
例示9は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分は、アルミニウム合金物品の外部表面から最大5μmの深さまで延在する。
【0153】
例示10は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分は、アルミニウム合金物品の外部表面から100~200nmの範囲の深さまで延在する。
【0154】
例示11は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比は、バルク部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比に基づいて、バルク部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比よりも、少なくとも20%、または少なくとも40%、または少なくとも60%、または少なくとも80%、または少なくとも100%、または少なくとも150%、または少なくとも200%大きい。
【0155】
例示12は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比は、未処理のアルミニウム合金材料の表面下部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比よりも、少なくとも20%、または少なくとも40%、または少なくとも60%、または少なくとも80%、または少なくとも100%、または少なくとも150%、または少なくとも200%大きい。
【0156】
例示13は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分のアルミニウム合金材料中のCu対Mgの原子濃度比は、0.2~4.5、または0.2~4.0、または0.2~3.5、または0.2~3.0、または0.2~2.5、または0.2~2.0、または0.2~1.5、または0.2~1.0、または0.2~0.5の範囲である。
【0157】
例示14は、いずれかの先行または後続の例示に従って表面改質アルミニウム合金物品を作製する方法であり、本方法は、表面下部分およびバルク部分を有するアルミニウム合金物品を提供することであって、アルミニウム合金物品が、合金元素としてMgおよびCuを含むアルミニウム合金材料を含む、提供することと、表面下部分の表面を表面改質組成物と接触させることと、を含み、表面下部分中のCu対Mgの原子濃度比は、約0.2~約5.0である。
【0158】
例示15は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、提供することは、溶融アルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造製品を形成することと、任意選択で、アルミニウム合金鋳造製品を均質化して、均質化されたアルミニウム合金鋳造製品を形成することと、均質化されたアルミニウム合金鋳造製品またはアルミニウム合金鋳造製品を圧延して、圧延アルミニウム合金製品を形成することと、圧延アルミニウム合金製品を溶体化して、アルミニウム合金物品を形成することと、を含む。
【0159】
例示16は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、アルミニウム合金材料は、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、または7xxxシリーズのアルミニウム合金を含む。
【0160】
例示17は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、アルミニウム合金材料は、0.2~1.4重量%のSi;0.4~5.0重量%のMg;0.01~2.0重量%のCu;0.05~0.50重量%のFe;最大0.25重量%のMn;最大0.25重量%のCr;最大0.15重量%のZn;最大0.20重量%のTi;最大0.05重量%のZr;最大0.05重量%のPb;および最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlである。
【0161】
例示18は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、アルミニウム合金材料は、0.6~0.95重量%のSi;0.55~0.75重量%のMg;0.05~0.60重量%のCu;0.20~0.35重量%のFe;0.05~0.20重量%のMn;最大0.15重量%のCr;最大0.15重量%のZn;最大0.15重量%のTi;最大0.05重量%のZr;最大0.05重量%のPb;および最大0.15重量%の不純物を含み、残部はAlである。
【0162】
例示19は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、最大0.10重量%の、Ni、Sc、Sn、Be、Mo、Li、Bi、Sb、Nb、B、Co、Sr、V、In、Hf、およびAgからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0163】
例示20は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、最大0.10重量%の、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される1種以上の元素をさらに含む。
【0164】
例示21は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、鋳造は、直接チル(DC)鋳造によって実行される。
【0165】
例示22は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、鋳造は、連続鋳造によって実行される。
【0166】
例示23は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、鋳造は、ツインベルト連続鋳造によって実行される。
【0167】
例示24は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、圧延は、熱間圧延、冷間圧延、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0168】
例示25は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、アルミニウム合金物品は、圧延アルミニウム合金シェートまたは圧延アルミニウム合金シートである。
【0169】
例示26は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、アルミニウム合金物品は、15mm以下、または14mm以下、または13mm以下、または12mm以下、または11mm以下、または10mm以下、または9mm以下、または8mm以下、または7mm以下、または6mm以下、または5mm以下、または4mm以下、または3mm以下、または2mm以下、または1mm以下、または0.5mm以下、または0.3mm以下、または0.1mm以下の厚さを有する。
【0170】
例示27は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、表面下部分は、アルミニウム合金物品の外部表面から最大5μmの深さまで延在する。
【0171】
例示28は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、表面下部分は、アルミニウム物品の外部表面から100~200nmの範囲の深さまで延在する。
【0172】
例示29は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、表面改質組成物は、1000ppm以下、または500ppm以下、または300ppm以下、または100ppm以下、または50ppm以下、または25ppm以下、または10ppmの濃度で強酸化剤を含む。
【0173】
例示30は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、処理組成物は、酸性組成物である。
【0174】
例示31は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、処理組成物は、アルカリ性組成物である。
【0175】
例示32は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、表面改質アルミニウム合金物品を仕上げて、仕上げ調質度を有する仕上げられたアルミニウム合金物品を形成することをさらに含む。
【0176】
例示33は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、仕上げ調質度は、F調質度、T4調質度、T6調質度、およびT8x調質度からなる群から選択される。
【0177】
例示34は、アルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、いずれかの先行または後続の例示のいずれか1つに記載の方法によって形成された表面改質アルミニウム合金物品である。
【0178】
例示35は、アルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、いずれかの先行または後続の例示に従って形成された仕上げられたアルミニウム合金物品である。
【0179】
例示36は、アルミニウム合金物品であり、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品から構成される。
【0180】
例示37は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、自動車、トラック、トレーラ、列車、鉄道車両、飛行機、先行のいずれかのための本体パネルもしくは部品、橋、パイプライン、パイプ、管材、ボート、船、貯蔵容器、貯蔵タンク、家具、窓、ドア、手すり、機能的もしくは装飾的な建築物、パイプ手すり、電気構成要素、導管、飲料容器、食品容器、またはホイルである。
【0181】
例示38は、接合された製造物品であって、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品を含み、第1のアルミニウム合金物品と第2の金属または合金物品とが一緒に接合され、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方が、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品である、接合された製造物品。
【0182】
例示39は、いずれかの先行または後続の例示に記載の接合された製造物品であり、第1のアルミニウム合金物品と、第2の金属または合金物品とは、溶接によって一緒に接合される。
【0183】
例示40は、いずれかの先行または後続の例示に記載の接合された製造物品であり、第1のアルミニウム合金物品と、第2の金属または合金物品とは、接着剤組成物によって一緒に接合される。
【0184】
例示41は、いずれかの先行または後続の例示に記載の接合された製造物品であり、接着組成物は、エポキシ樹脂である。
【0185】
図42は、アルミニウム合金物品を接合する方法であり、本方法は、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品を提供することであって、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品のうちの一方または両方が、いずれかの先行または後続の例示によるアルミニウム合金物品である、提供することと、第1のアルミニウム合金物品および第2の金属または合金物品を接合することと、を含む。
【0186】
例示43は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、接合することは、溶接を含む。
【0187】
例示44は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、接合することは、接着組成物との接着接合を含む。
【0188】
例示45は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、接着組成物は、エポキシ樹脂である。
【0189】
例示46は、表面、表面下部分、およびバルク部分を含む、いずれかの先行または後続の例示によるアルミニウム合金物品であり、表面下部分は、酸化銅含有層を含む。
【0190】
例示47は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、酸化銅含有層は、酸化銅(I)(すなわち、Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、過酸化銅(CuO2)、および酸化銅(III)(Cu2O3)のうちの少なくとも1つを含む。
【0191】
例示48は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、酸化銅含有層は、約0.5~約1の銅イオン濃度対元素銅濃度の原子比を含む酸化銅粒子を含む。
【0192】
例示49は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分は、アルミニウム合金物品の表面から約5μmの深さまでの面積を含む。
【0193】
例示50は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、表面下部分は、アルミニウム合金物品の表面から約2μmの深さまでの面積を含む。
【0194】
例示51は、いずれかの先行または後続の例示に従ってアルミニウム合金物品の表面を処理する方法であり、表面下部分およびバルク部分を有するアルミニウム合金物品を提供することであって、表面下部分が、Cuを含む、提供することと、アルミニウム合金物品の表面を、酸化剤を含むエッチング溶液でエッチングすることと、を含む。
【0195】
例示52は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、提供するステップは、少なくとも約0.001重量%のCuを含むアルミニウム合金物品を提供することを含む。
【0196】
例示53は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、提供するステップは、約0.001重量%~約10重量%のCuを含むアルミニウム合金物品を提供することを含む。
【0197】
例示54は、いずれかの先行または後続の例示に記載のいずれかの方法であり、提供するステップは、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含む、アルミニウム合金物品を提供することを含む。
【0198】
例示55は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチングするステップは、表面下部分中に存在するCuの少なくとも一部分を酸化することを含む。
【0199】
例示56は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチングするステップは、表面下部分中に存在するCuの少なくとも30原子%を酸化することを含む。
【0200】
例示57は、いずれかの先行または後続の例示に記載のいずれかの方法であり、酸化剤は、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、過酸化バリウム、塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、過酸化水素、過酸化マグネシウム、臭素酸カリウム、塩素酸カリウム、過酸化カリウム、塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0201】
例示58は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチング溶液は、1種以上の追加の酸をさらに含む。
【0202】
例示59は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、1種以上の追加の酸は、リン酸、硫酸、フッ化水素酸、酢酸、および/または塩酸を含む。
【0203】
例示60は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチング溶液は、硝酸、リン酸、および硫酸を含む。
【0204】
例示61は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、硝酸、リン酸、および硫酸の体積濃度は、約5体積%~約30体積%の硝酸、約0体積%~約75体積%のリン酸、および約7体積%~約25体積%の硫酸を含む。
【0205】
例示62は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチングするステップにおけるエッチング溶液は、約90℃~約110℃の温度に加熱される。
【0206】
例示63は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法であり、エッチングするステップは、約2秒~約2分の滞留時間にわたって実施される。
【0207】
例示64は、いずれかの先行または後続の例示に記載の方法に従って調製された、アルミニウム合金物品である。
【0208】
例示65は、いずれかの先行または後続の例示に記載のアルミニウム合金物品であり、アルミニウム合金物品は、自動車両の車体部品を含む。
【0209】
以下の実施例は、同時にそれらのいかなる限定も構成することなく、本開示のある特定の実施形態をさらに例示する役割を果たす。反対に、本明細書の説明を読んだ後に、本開示の趣旨から逸脱することなく、それら自体を当業者に示唆することができる、様々な実施形態、修正形態、および同等物に及ぼすことができることが明確に理解されるべきである。
【実施例
【0210】
実施例1-合金組成
アルミニウム合金を調製した。その元素組成を以下の表3に記述する。元素組成は重量百分率で提供する。
【表3】
【0211】
実施例2-アルミニウム合金シートの製造および処理
合金A1(表3)を、本明細書に記載される方法に従って直接チル鋳造、均質化、および熱間圧延した。次いで、圧延シートを冷却し、コイル状にし、バッチアニール処理に供した(375℃~425℃に加熱し、少なくとも1時間均熱化した)。アニール処理したロールを冷却し、冷間圧延を使用してシートをさらに圧延して、1.5mmの仕上げゲージに到達させた。合金A1から6つの異なるサンプルを調製した。サンプルは、(a)熱間圧延の方法、ならびに(b)冷間圧延後に塗布された表面処理の組み合わせおよび順序(アルカリ性洗浄、酸エッチング、および前処理の塗布のうち)によって区別する。
【0212】
使用時には、アルカリ性洗浄は、上記で詳細に説明した好適な方法で実行し、その後、水で強力に洗浄した。使用時には、酸エッチングは、上記で詳細に説明した好適な方法によって実行した。使用時には、前処理は、上記で詳細に説明した好適な方法で実行した。
【0213】
これらの異なる方法で処理したサンプルを、B1~B6として識別し、以下の表4に示す。
【表4】
【0214】
実施例3-接合耐久性試験
実施例2からの6つのサンプル(サンプルB1~B6)の各々を接合耐久性(BD)試験に供した。BD試験では、6つの重ね継手(接合)のセットをボルトで順番に接続し、90%±5%の相対湿度(RH)の湿度キャビネット内に垂直に位置決めした。温度は50°C±2°Cで維持した。2.4kNの力荷重を接合順に塗布した。BD試験は、最大45回のサイクルで行われる周期的な曝露試験である。各サイクルは24時間続く。各サイクルにおいて、接合を22時間、湿度キャビネット内に曝露し、次いで、5%のNaCl中に15分間、浸漬させて、最後に105分間、空気乾燥した。3つの継手が破損した際は、継手の特定のセットの試験を中止して、最初の失敗として指摘する。セル内の数字「45」は、継手が故障することなく、45回のサイクルにわたってそのままであったことを指摘している。表5は、6つの継手の故障までのBDサイクルの平均数、6つの継手間の標準偏差、および最も早い故障のサイクル数を報告している。「45」の値は、試験中のいかなる時点でもサンプルが失敗しなかったことを指摘している。
【表5】
【0215】
実施例4-CuおよびMgの原子濃度
XPSを使用して、実施例2の6つのサンプル(サンプルB1~B6)の各々について、CuおよびMgの原子濃度を測定した。CuおよびMgの原子濃度は、表面から125nmの深さまでの異なる深さで測定した。図1は、XPSで記録したときの、B1、B2、およびB3の最大125nmの深さでの試験サンプル中のMgの原子濃度を示している。図2は、XPSで記録したときの、B4、B5、およびB6の最大125nmの深さでの試験サンプル中のMgの原子濃度を示している。図3は、XPSで記録したときの、B1、B2、およびB3の最大125nmの深さでの試験サンプル中のCuの原子濃度を示している。図3はまた、実施例2に記述される表面改質処理のいずれも受けなかった比較可能な物品(C1)との比較も示している。図4は、XPSで記録したときの、B4、B5、およびB6の最大125nmの深さでの試験サンプル中のCuの原子濃度を示している。図4はまた、実施例2に記述される表面改質処理のいずれも受けなかった比較可能な物品(C2)との比較も示している。
【0216】
表6は、実施例2の6つのサンプル(サンプルB1~B6)の各々について、材料の最も外側125nm内のCu対Mgの原子濃度比(表6では「Cu/Mg」と称される)を示している。図5は、各サンプルのCu対Mgの原子濃度比の関数として、各サンプルの平均BDサイクル数のプロットを示している。表5および6、ならびに図5のデータから、Cu対Mgの原子濃度比が表面下部分中で約0.2以上である場合、優れた接合耐久性が完遂されていることに留意されたい。
【表6】
【0217】
実施例5-酸化Cuによる接合耐久性
AA7xxxシリーズのアルミニウム合金を、直接チル鋳造によって調製し、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、空気焼入れ、時効、および様々なエッチング液を含有するエッチング溶液を使用したエッチングによって加工した。合金はT6調質度であった。エッチングパラメータを以下の表7に提示する。
【表7】
【0218】
表7に示す条件に従ってエッチングされたアルミニウム合金物品に対して接合耐久性試験を実施した。調製したサンプルを一緒に接合して、応力耐久性試験に供した。応力耐久性試験では、6つの重ね継手/接合のセットをボルトで順番に接続し、90%の相対湿度(RH)の湿度キャビネット内に垂直に位置決めした。温度は50°Cで維持した。2.4kNの力荷重を接合順に塗布した。応力耐久性試験は、最大45回のサイクルで行われる周期的な曝露試験である。各サイクルは24時間続いた。各サイクルにおいて、接合を22時間、湿度キャビネット内に曝露し、次いで、5%の水性塩化ナトリウム(NaCl)中に15分間、浸漬させて、最後に105分間、空気乾燥した。3つの継手が破損した際は、継手の特定のセットの試験を中止して、最初の失敗として指摘した。この実験では、45回のサイクルの完了は、継手のセットが接合耐久性試験に合格したことを指摘している。試験結果を以下の表8に示す。表8では、継手の各々を1~6で番号付け、継手1は頂部継手であり、継手6は、垂直に向けられたときの底部継手である。「45」以外のセル内の数字は、破損前の成功したサイクルの数を指摘している。セル内の数字「45」は、継手が故障することなく、45回のサイクルにわたってそのままであったことを指摘している。結果を以下の表8にまとめる。
【表8】
【0219】
エッチング基準1、6、および9の手順に従ってエッチングされた合金は、酸化性物質を含有しない市販のエッチング液を使用して比較サンプルとして実施した。表8から明らかなように、エッチング基準1、6、および9の手順に従ってエッチングされた合金は、不十分な接合耐久性を示した。さらに、エッチング基準4および5の手順に従ってエッチングされた合金は、2段階の手順で、酸化性物質を含まない市販のエッチング液を使用して比較サンプルとして実施した。表8から明らかなように、エッチング基準4および5の手順に従ってエッチングされた合金は、不十分な接合耐久性を示した。エッチング基準2および3の手順に従ってエッチングされた合金は、酸化性物質を含まないエッチング液を使用して比較サンプルとして実施した。表8から明らかなように、エッチング基準2および3の手順に従ってエッチングされた合金は、不十分な接合耐久性を示した。エッチング基準7および8の手順に従ってエッチングされた合金は、酸化性物質(例えば、硝酸(HNO))を含有する例示的なエッチング液を使用して、本明細書に記載される方法に従って実施した。表8から明らかなように、エッチング基準7の手順(すなわち、酸化性物質を含み、適切な温度で適切な時間)に従ってエッチングされたで合金は、優れた接合耐久性を示した。しかしながら、酸化性物質を使用して、但し、5秒の滞留時間にわたって(すなわち、エッチング基準8の手順に従って)エッチングされた合金は、所望の接合耐久性結果はもたらさなかった。
【0220】
実施例6-表面特性
アルミニウム合金シートの表面をX線光電子分光法(XPS)によって分析した。銅金属および酸化銅の量を分析した。測定は、エッチングおよび前処理した状態、かつ10秒間のスパッタリング後の表面で行った。図6Aは、合金の表面に存在する酸化銅含有量のデータを示している。図6Bは、合金の表面の酸化種(例えば、酸化銅)を除去するための10秒のスパッタリング手順の後、合金の表面に存在する酸化銅含有量のデータを示している。図6Aおよび6Bでは、エッチング液が酸化性物質を含有しなかった比較エッチング手順(表8のエッチング基準2を参照)でエッチングされた合金は、いかなる酸化銅も示さなかった(図6Aおよび6BのプロットV2を参照)が、ca.933eVの強力なピークで指摘される銅金属の存在を示した。酸化性物質を含有するエッチング液(例えば、HNO、表8のエッチング基準7を参照)でエッチングされた合金は、ca.934、935、および937eVのピークで指摘される、エッチングされた条件で合金の表面に存在する酸化銅を示した(図6AのプロットV7を参照)。さらに、V7プロットのサンプルをスパッタリングすると、合金の表面における酸化銅の除去を示した。これは、酸化性物質によるエッチングの結果として酸化銅が表面に存在したこと、ならびに酸化銅が表面下中に存在せず、単にエッチング手順によって曝露されたことを指摘している。アルミニウム合金の表面での銅の制御された酸化は、接合および継ぎ合わせの用途にとって望ましい場合がある。さらに、アルミニウム合金の表面で観察された種の酸化は、アルミニウム合金が優れた接合耐久性を有し得ることを指摘している。
【0221】
上記に引用されたすべての特許、特許出願、刊行物、および要約は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を達成するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することのない、これらの多くの改変およびその適合は、当業者には容易に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6B】