(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ディスプレイ用接着シート、及びこれを含むディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20231114BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231114BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J11/06
C09J133/00
(21)【出願番号】P 2022098710
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080382
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519204054
【氏名又は名称】イノックス・アドバンスト・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INNOX Advanced Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】171,Asanvalley-ro,Dunpo-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミョン スプ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョン ジョル
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-193278(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170875(WO,A1)
【文献】特開2015-010197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化(post-cure)架橋剤を含む、接着組成物の硬化物である光学用透明接着(OCA)フィルムを含み、
前記後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)を含むことを特徴とする、
ディスプレイ用接着シート。
【請求項2】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、B-ステージ(B-stage)状態であることを特徴とする,
請求項1記載のディスプレイ用接着シート。
【請求項3】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、
紫外線(UV)硬化前の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が10
4Pa~10
5Paであり、
紫外線(UV)硬化後の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が10
5Pa~10
6Paであることを特徴とする,
請求項1記載のディスプレイ用接着シート。
【請求項4】
前記接着組成物は、アクリル系樹脂100重量部に対して、前記UV開始剤は、0.1~5.0重量部、前記後硬化架橋剤は、1.0~5.0重量部を含むことを特徴とする、
請求項1記載のディスプレイ用接着シート。
【請求項5】
前記UV開始剤は、長波長UV開始剤0.01~0.2重量部と、短波長UV開始剤0.2~1.0重量部との混合物であることを特徴とする、
請求項1記載のディスプレイ用接着シート。
【請求項6】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムの両面に配置される第1離型フィルム及び第2離型フィルムをさらに含むことを特徴とする、
請求項1記載のディスプレイ用接着シート。
【請求項7】
アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化架橋剤を混合して、接着組成物を得るステップと、
第1離型フィルム上に、前記接着組成物を塗布した後、その上に第2離型フィルムを配置して、接着シート構造体を形成するステップと、
前記形成された接着シート構造体に青色LEDランプを照射して、仮硬化(pre-hardening)し、前記塗布された接着組成物をB-ステージ(B-stage)状態の光学用透明接着(OCA)フィルムで形成するステップと、を含み、
前記後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニルを含むことを特徴とする、
ディスプレイ用接着シートの製造方法。
【請求項8】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、
紫外線(UV)硬化前の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が10
4Pa~10
5Paであり、
紫外線(UV)硬化後の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が10
5Pa~10
6Paであることを特徴とする、
請求項7記載のディスプレイ用接着シートの製造方法。
【請求項9】
前記接着組成物は、アクリル系樹脂100重量部に対して、前記UV開始剤は、0.1~5.0重量部、前記後硬化架橋剤は、1.0~5.0重量部を含むことを特徴とする、
請求項7記載のディスプレイ用接着シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のうちいずれか一項のディスプレイ用接着シートから、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを抽出するステップと、
一以上のディスプレイ部材上に、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを配置するステップと、
前記光学用透明接着(OCA)フィルムに紫外線(UV)を照射して、後硬化するステップと、を含む、
ディスプレイパネル(panel)の製造方法。
【請求項11】
前記一以上のディスプレイ部材は、段差(step)又は屈曲を有することを特徴とする、
請求項10記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項12】
前記後硬化するステップによって、前記光学用接着フィルムが、前記段差又は屈曲に一致して接着されることを特徴とする、
請求項11記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至
6のうちいずれか一項のディスプレイ用接着シートを含む、ディスプレイパネル。
【請求項14】
請求項1乃至
6のうちいずれか一項のディスプレイ用接着シートを含む、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用接着シート及びこの製造方法に関する。より具体的には、ディスプレイの段差(step)又は屈曲への接着にも優れる、光学用透明接着(OCA)フィルムを含む接着シート及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイを製造するためのパネル素材を組立てるために使用される部材である接着フィルムには、ディスプレイモジュールが発光する際に、これを透過させ得るように光学用透明接着(OCA)フィルムが使用される。
【0003】
一方、最近、情報通信技術の飛躍的な発展並びに市場の膨脹によって、ディスプレイとして、曲げ性のあるディスプレイが様々な用途と適用可能性により、脚光を浴びている。
【0004】
段差又は屈曲のある部分が存在するディスプレイにおいて、パネル素材を組立てるために使用される部材である接着シートは、ディスプレイの段差又は屈曲にも浮き上がる現象なく、接着に優れるものが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ディスプレイの段差又は屈曲のある部分にも浮き上がる現象なく、接着に優れる、光学用透明接着(OCA)フィルムを含むディスプレイ用接着シートを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明によるディスプレイ用接着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明によるディスプレイ用接着シートを用いてディスプレイパネル(panel)を製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明によるディスプレイ用接着シートを含むディスプレイを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、以上に言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに理解される。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一態様によるディスプレイ用接着シートは、アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化(post-cure)架橋剤を含む、接着組成物の硬化物である光学用透明接着(OCA)フィルムを含み、前記後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)を含むことができる。前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、B-ステージ(B-stage)状態であってもよい。前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、紫外線(UV)硬化前の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が104Pa~105Paであり、紫外線(UV)硬化後の60℃及び1Hzでのモデュラスが105Pa~106Paであってもよい。
【0011】
本発明の一態様によるディスプレイ用接着シートの製造方法は、アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化架橋剤を混合して、接着組成物を得るステップと、第1離型フィルム上に、前記接着組成物を塗布した後、その上に第2離型フィルムを配置して、接着シート構造体を形成するステップと、前記形成された接着シート構造体に青色LEDランプを照射して、仮硬化(pre-hardening)し、前記塗布された接着組成物をB-ステージ(B-stage)状態の光学用透明接着(OCA)フィルムで形成するステップと、を含み、前記後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)を含むことができる。
【0012】
本発明の一態様によるディスプレイパネル(panel)の製造方法は、前記ディスプレイ用接着シートから、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを抽出するステップと、一以上のディスプレイ部材上に、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを配置するステップと、前記光学用透明接着(OCA)フィルムに紫外線(UV)を照射して、後硬化(post-cure)するステップと、を含むことができる。前記一以上のディスプレイ部材は、段差(step)又は屈曲を有してもよく、前記後硬化するステップによって、前記光学用接着フィルムが、前記段差又は屈曲に一致して接着されてもよい。
【0013】
本発明の一態様によるディスプレイは、本発明のディスプレイ用接着シートを含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のディスプレイ用接着シートは、後硬化架橋剤を含むB-ステージ(B-stage)状態の光学用透明接着(OCA)フィルムを含み、前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、紫外線(UV)を照射して、後硬化(after-cure)するステップによって、モデュラス(modulus)が増加するため、ディスプレイの段差又は屈曲のある部分にも浮き上がる現象なく、接着に優れる。
【0015】
本発明の効果は、以上に言及した効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は、下記の記載から当業者にとって明確に理解される。上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための具体的な事項を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の例示的な具現例によるディスプレイ用接着シートの断面図を示した図。
【
図2a】本発明の例示的な具現例によるディスプレイ用接着シートをディスプレイのパネル(panel)に適用する流れ図を簡略に示した図。
【
図2b】本発明の例示的な具現例によるディスプレイ用接着シートが適用されたディスプレイのパネルの断面図を簡略に示した図。
【
図3】本発明の比較例1及び実施例1の後硬化前後のモデュラス(60℃及び1Hz)を測定したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明を説明することにおいて、本発明に系る公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0018】
本明細書における構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0019】
本明細書で使われる単数の表現は、文脈上明白に他に意味しない限り、複数の表現を含む。本出願における「構成される」又は「含む」などの用語は、明細書上に記載した様々な構成要素を必ずしも全て含むと解釈してはならず、そのうち一部の構成要素は、含まれなくてもよく、又はさらなる構成要素をさらに含んでいてもよいと解釈すべきである。
【0020】
本発明の一態様によるディスプレイ用接着シートは、アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化(post-cure)架橋剤を含む、接着組成物の硬化物である光学用透明接着(OCA)フィルムを含むことを技術的特徴とする。
【0021】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、B-ステージ(B-stage)、つまり、半硬化状態であるのが好ましい。半硬化状態の光学用透明接着(OCA)フィルムは、前記接着組成物に青色LEDランプを照射して、仮硬化(pre-hardening)させることで形成することができる。これらB-ステージの光学用透明接着(OCA)フィルムは、硬化し切れた状態ではないため、ディスプレイに適用する際、ディスプレイ部材における屈曲した部分又は段差の存在する部分にも浮き上がることなく、適用できるという利点がある。
【0022】
本発明の好ましい後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)を含むことができる。光学用透明接着(OCA)フィルムが、B-ステージ状態であるときは、ケイ皮酸ビニルは、架橋反応が行われないまま、接着組成物に存在する。
【0023】
ところが、前記B-ステージの光学用透明接着(OCA)フィルムをディスプレイパネルに付着した後、紫外線(UV)を照射して硬化させると(後硬化に該当する)、ビニル基(vinyl group)間の環化添加反応(Cyclo Addition Reaction)により架橋化(cross-linking)が行われて、接着特性を発揮することができるようになる。
【0024】
このように、本発明は、光学用透明接着(OCA)フィルムを、仮硬化(一次硬化)された状態でディスプレイパネルに適用するため、ディスプレイ部材のうち、屈曲又は段差のある部分にも浮き上がり現象を最小化するか、除去した状態で密着して接着されてもよく、また、この後、紫外線(UV)硬化(2次硬化)を行うことによって、ディスプレイパネルの部材間の接着に優れるという利点がある。
【0025】
前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、紫外線(UV)硬化前の60℃及び1Hzでのモデュラス(modulus)が104Pa~105Paであってもよく、より好ましくは、104Pa~0.95×105Paであってもよい。紫外線(UV)硬化前のモデュラスが104Pa未満である場合、フィルム打ち抜き時、形状維持が不可能であるか、ムラが発生し得る。
【0026】
また、前記光学用透明接着(OCA)フィルムは、紫外線(UV)硬化後の60℃及び1Hzでのモデュラスが105Pa~106Paであってもよく、より好ましくは、1.5×105Pa~106Paであってもよい。紫外線(UV)硬化後のモデュラスが106Paを超える場合、フィルム硬度(hardness)が増加しすぎて、合着時に浮き上がりが発生して、段差を克服し難しいことがある。
【0027】
以下では、本発明の光学用透明接着(OCA)フィルムを形成するための接着組成物の成分について説明する。
【0028】
<アクリル系樹脂>
本発明の接着組成物のアクリル系樹脂は、光学用透明接着(OCA)フィルムを形成し、紫外線(UV)硬化用樹脂として通常使用され得るものであれば、制限なく使用することができる。
【0029】
本発明の接着組成物のアクリル系樹脂は、好ましくは、アクリル単量体の共重合体であってもよい。
【0030】
前記アクリル単量体は、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレート、アクリルアマイド(AAM)、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、ビニルアクリル酸(AA)、および(メタ)アクリル酸から構成された群より選ばれる1種以上であってもよい。
【0031】
本発明のアクリル系樹脂は、好ましくは、イソボルニルアクリレート(IBOA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン(ACMO)、ラウリルアクリレート(LA)の共重合体であってもよい。
【0032】
<UV開始剤>
本発明のUV開始剤は、アクリル系樹脂に添加される添加剤成分であって、紫外線(UV)が照射されると、重合(polymerization)反応を開始させる物質である。UV開始剤は、通常のUV開始剤として使用されるものであれば、制限なく含んでいてもよく、1種以上のUV開始剤を混合して使用することもできる。
【0033】
前記UV開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Irgacure 907)、2-メチル1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(Irgacure 184C)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Darocur 1173)、イルガキュア184Cとベンゾフェノン(benzophenone)との混合開始剤(Irgacure 500)、イルガキュア184Cとイルガキュア1173との混合開始剤(Irgacure 1000)、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン(Irgacure 2959)、ベンゾイルぎ酸メチル(Darocur MBF)、α,α-ジメトキシ-アルファ-フェニルアセトフェノン(Irgacure 651)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルフォリノ)フェニル]-1-ブタノン(Irgacure 369)、イルガキュア369とイルガキュア651との混合開始剤(Irgacure 1300)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイン)-ホスフィンオキシド(Darocur TPO)、ダロキュアTPOとダロキュア1173との混合開始剤(Darocur 4265)、ホスフィンオキシド(phosphine oxide)フェニルビス(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)(Irgacure 819)、イルガキュア819とダロキュア1173との混合開始剤(Irgacure 2005)、イルガキュア819とダロキュア1173との混合開始剤(Irgacure 2010)、イルガキュア819とダロキュア1173との混合開始剤(Irgacure 2020)、ビス(エタ5-2,4,-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタニウム(Irgacure 784)、およびベンゾフェノンが含有された混合開始剤(HSP188)から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明のUV開始剤は、アクリル系樹脂100重量部を基準に、0.1~5.0重量部で含むのが好ましく、0.1~2.0重量部で含むのがより好ましい。UV開始剤が0.1重量部未満である場合、アクリル系樹脂の硬化反応が十分行われず、5.0重量部を超える場合、接着フィルムの硬化密度が低下して、接着特性が十分発現しない問題が発生し得る。
【0035】
本発明のUV開始剤としては、長波長UV開始剤0.01~0.2重量部と、短波長UV開始剤0.2~1.0重量部との混合物を使用するのがより好ましい。前記長波長UV開始剤としては、ダロキュアTPO(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenylphosphine oxide)、ダロキュアTPO-L(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenyl phosphinate)イルガキュア819(bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphine oxide)などを例に挙げられるし、短波長UV開始剤としては、イルガキュア184(1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)、ダロキュア1173(2-hydroxy-2-methyl-1-phenyl-1-propanone)、イルガキュア127(2-hydroxy-1-{4-[4-(2-hydroxy-2-methyl-propionyl)-benzyl]-phenyl}-2-methylpropan-1-one)を例に挙げられるものの、これに限定されない。
【0036】
長波長UV開始剤を0.01重量部未満で使用する場合、未硬化の発生によるフィルムムラが発生し得、0.2重量部を超えて使用する場合、過硬化により、半硬化状態(B-Stage)の光学用透明接着(OCA)フィルムを製造しにくいこともある。一方、短波長UV開始剤を0.2重量部未満で使用する場合、後硬化時、未反応モノマーの完全硬化が不可能であり得、1.0重量部を超えて使用する場合、過硬化により、硬化後の収縮率が増加し得る。
【0037】
<後硬化架橋剤>
本発明の後硬化架橋剤は、LEDランプの照射による一次硬化(仮硬化)では、環化添加反応が行われず、紫外線(UV)照射による二次硬化(後硬化)により、環化添加反応が行われて、架橋化(cross-linking)が起こり得る特性を備えるのが好適である。
【0038】
上記特性を有する後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)であるのが好ましい。ケイ皮酸ビニル(vinyl cinnamate)は、紫外線(UV)照射によって、ビニル基(vinyl group)間の環化添加反応が行われ得るため、後硬化架橋剤として好適である。
【0039】
本発明の後硬化架橋剤は、アクリル系樹脂100重量部を基準に、1.0~5.0重量部で含むのが好ましく、2.0~5.0重量部で含むのがより好ましい。
【0040】
後硬化架橋剤が1.0重量部未満である場合、環化添加反応が十分行われないし、5.0重量部を超える場合、架橋反応が発生しすぎて、硬化後の収縮率が大きくなり、収縮によるパネルが反る現象が発生し得る。
【0041】
本発明の光学用透明接着(OCA)フィルムを形成するための接着組成物は、アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化架橋剤のほか、必要に応じて、本発明の効果を発現し得る範囲内における他の添加剤を少量さらに含むことができる。前記添加剤は、例えば、接着促進剤、粘着付与剤、可塑剤、流動補助剤、湿潤補助剤、レオロジー改質剤、および酸化防止剤などから選ぶことができる。
【0042】
本発明の一態様によれば、
図1に示されたように、本発明の一態様によるディスプレイ用接着シート100は、光学用透明接着(OCA)フィルム10と、この両面に配置される第1離型フィルム21と、第2離型フィルム22と、を含むことができる。前記離型フィルムは、基材の一面が離型処理されたものであってもよい。
【0043】
前記基材は、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate;PET)基材を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。前記離型処理は、当業界における通常に離型処理に使用できる物質であれば、制限なく使用することができ、例えば、シリコンで離型処理することが好ましい。
【0044】
本発明の他の一態様によれば、上述した本発明のディスプレイ用接着シートの製造方法を提供する。前記ディスプレイ用接着シートの製造方法は、アクリル系樹脂、UV開始剤、および後硬化架橋剤を混合して、接着組成物を得るステップと、第1離型フィルム上に、前記接着組成物を塗布した後、その上に第2離型フィルムを配置して、接着シート構造体を形成するステップと、前記形成された接着シート構造体に青色LEDランプを照射して、仮硬化(pre-hardening)し、前記塗布された接着組成物をB-ステージ(B-stage)状態の光学用透明接着(OCA)フィルムで形成するステップと、を含み、前記後硬化架橋剤は、ケイ皮酸ビニルを含む。
【0045】
本発明のさらに他の一態様によれば、上述した本発明のディスプレイ用接着シートを使用して、ディスプレイパネル(panel)を製造する方法を提供する。前記ディスプレイパネル(panel)の製造方法は、上述した本発明のディスプレイ用接着シートから、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを抽出するステップと、一以上のディスプレイ部材上に、前記光学用透明接着(OCA)フィルムを配置するステップと、前記光学用透明接着(OCA)フィルムに紫外線(UV)を照射して、後硬化するステップと、を含むことができる。前記一以上のディスプレイ部材は、段差(step)又は屈曲を有し得、前記後硬化するステップによって、前記光学用接着フィルムが、前記段差又は屈曲に一致して接着されてもよい。
【0046】
本発明のさらに他の一態様によれば、上述した本発明のディスプレイ用接着シートを含むディスプレイを提供することができる。本発明のディスプレイは、ディスプレイの部材に存在する段差又は屈曲にも一致して接着され得る、本発明の光学用透明接着(OCA)フィルムによって接着されたため、接着信頼性に優れる。
【0047】
以下では、本発明の好ましい実施例によって、本発明の構成及び作用をさらに詳説することとする。ただ、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈されてはならない。
【0048】
ここに記載されていない内容は、この技術分野における通常の当業者であれば、技術的に十分類推することができるため、その説明を省略することとする。
【0049】
<実施例1>
(1)アクリル系主剤樹脂の製造
イソボルニルアクリレート(IBOA)35重量部、 2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)45重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート20重量部、アクリロイルモルフォリン(ACMO)5重量部、およびラウリルアクリレート(LA)5重量部を混合した後、共重合して、アクリル系樹脂を得た。
【0050】
(2)接着組成物の製造
前記アクリル系樹脂100重量部に対して、UV開始剤であるダロキュアTPO0.09重量部とダロキュア11730.6重量部との混合UV開始剤0.69重量部、後硬化架橋剤であるケイ皮酸ビニル5重量部の材料を混合して、接着組成物を製造した。
【0051】
(3)第1離型フィルム及び第2離型フィルムの製造
2つのPET基材を準備して、各PET基材の下部面にシリコン離型剤を薄膜塗布し、シリコン離型処理された第1離型フィルム(重剥離(heavy-release)離型フィルム)及び第2離型フィルム(軽剥離(light-release)離型フィルム)を準備した。
【0052】
(4)接着シートの製造
前記第1離型フィルム上に、前記(2)で製造した接着組成物を塗布して、厚さ200μmの光学用透明接着(OCA)フィルムを形成した。その後、前記光学用透明接着(OCA)フィルム上に、前記第2離型フィルムが相接するように配置して、接着シート構造体を形成した。前記接着シート構造体上に青色LEDランプ(波長:365nm)を照射して、仮硬化(一次硬化)を行った。
【0053】
<比較例1>
上記実施例1と同様の方法により接着シートを製造するものの、ステップ(2)における後硬化架橋剤を添加していない接着組成物を使用した点でのみ相違する。
【0054】
<実験例:モデュラス(modulus)の測定>
上記実施例1及び比較例1の接着シートに対して、モデュラスを測定するために、光学用透明接着(OCA)フィルムのみを抽出して、サンプル化しており、その方法は、次のとおりである。
【0055】
サンプル化方法
上記実施例1及び比較例1それぞれから両面の離型フィルムを除去し、接着層を抽出して、200μmの光学用透明接着(OCA)フィルムをサンプル化し、この過程を3回繰り返して、200μmの光学用透明接着(OCA)フィルムを3つ積層し、総厚さ600μmの光学用透明接着(OCA)フィルムサンプルを準備した。
【0056】
モデュラスの測定方法
上記実施例1及び比較例1それぞれの光学用透明接着(OCA)フィルムのサンプルに対して、測定装備であるレオメーター(Rheometer,TA instrument,ARES G2)を用いて、軸方向力(Axial force)2N、開始温度(Start Temp.)-55℃、終決温度(End Temp.)250℃、昇温速度10℃/min、ストレイン(strain)1%、および頻度(Frequency)1Hzの条件で、温度によるモデュラス(storage modulus)を測定しており、これを紫外線(UV)照射の前後それぞれに対して測定した。
【0057】
前記測定によって、フローティングされる資料(
図3)から測定された60℃でのモデュラス値を下記の表1に示した。
【0058】
【0059】
上記表1から分かるように、後硬化架橋剤であるケイ皮酸ビニルを含む、接着組成物で製造した光学用透明接着(OCA)フィルムである実施例1は、そうでない比較例1に比べて、UV照射後、モデュラスの増加幅が上昇し、屈曲又は段差のあるディスプレイ部材に浮き上がることなく、密着して接着力を発現できる特性を有することが分かる。
【0060】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書に開示の実施例と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者によって様々な変形が行われることは自明である。さらに、本発明の実施例を前述しつつ、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0061】
10 接着シート
21 第1離型フィルム
22 第2離型フィルム