IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-X線発生装置 図1
  • 特許-X線発生装置 図2
  • 特許-X線発生装置 図3
  • 特許-X線発生装置 図4
  • 特許-X線発生装置 図5
  • 特許-X線発生装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】X線発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H01J35/06 Z
H01J35/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022186239
(22)【出願日】2022-11-22
【審査請求日】2023-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】藪下 綾介
(72)【発明者】
【氏名】小林 晃人
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-120544(JP,A)
【文献】特開2003-115398(JP,A)
【文献】特開2012-049119(JP,A)
【文献】特開平10-073544(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0107905(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00-35/32
H05G 1/00- 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出するカソードを有する電子銃、及び前記電子銃から出射された前記電子ビームが入射するターゲットを含んで構成されるX線管と、
前記X線管の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記カソードの消費電力に基づいて前記カソードの温度を推定し、前記カソードの推定温度が通常動作用の所定範囲内に保持されるように前記カソードへの供給電流を制御する第1動作モードと、
前記第1動作モードを所定時間実施した後、前記所定範囲よりも高い清浄化用の温度で前記カソードを加熱する第2動作モードと、を実行するX線発生装置。
【請求項2】
前記カソードは、単結晶材料からなる電子放出部を備える請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記単結晶材料は、セリウム又はランタンを含む請求項2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記単結晶材料は、セリウムを含み、
前記第1動作モードにおける前記通常動作用の所定範囲は、1720K~1780Kに設定されている請求項2記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1動作モードにおいて、前記カソードへの供給電流の制御を行った場合でも前記カソードの推定温度が前記所定範囲に保持されない場合に、その旨を示す報知信号を生成する請求項1~4のいずれか一項記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記カソードから放出される前記電子ビームの焦点寸法及び/又は焦点形状を計測する電子ビーム計測部を備え、
前記制御部は、前記第2動作モードの実施後に前記電子ビームの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び/又は形状を満たさない場合に、その旨を示す報知信号を生成する請求項1~4のいずれか一項記載のX線発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ビームを放出するカソードを有する電子銃、及び電子銃から出射された電子ビームが入射するターゲットを含んで構成されるX線管を備えたX線発生装置が知られている。例えば特許文献1に記載のX線発生装置では、ターゲットに入射した電子ビームの一部が反射電子としてターゲットから放出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-144653号公報
【文献】特開2012-49122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなX線発生装置の動作時においては、電子ビームの焦点寸法や焦点形状といった電子ビームの特性を所望の範囲に維持するため、カソードの温度を所定範囲内に保持する必要がある。従来のX線発生装置では、所望の出力を得るために動作時のカソードの温度を所定の温度(例えば1800K)以上の温度に保持していたが、高温のためにカソードの寿命が得られにくいという問題があった。
【0005】
このような問題に対し、出力とのバランスを取りつつ、動作時のカソードの温度を所定の温度未満に保持する手法が考えられる。この手法では、動作時のカソードの温度を従来よりも下げることで、カソードの長寿命化が図られる。その一方で、動作時のカソードの温度を下げることで、カソード表面への異物の付着が生じ、電子ビームの放出特性が劣化するという新たな課題が生じ得る。
【0006】
この新たな課題に対し、例えば特許文献2に記載のX線管は、カソードを1000℃以上に加熱するヒータを有し、当該ヒータによってフラッシング処理を施すことで、カソード表面の清浄化を行っている。この特許文献2のX線管では、清浄化処理を必要に応じて適宜実施している。しかしながら、特許文献2からは実際のカソードの温度が分からないため、所望の清浄化処理が確実に行われているかの確認は困難である。また、特許文献2からは通常動作時のカソード温度も分からないため、カソードの動作状況も把握できず、清浄化処理を適切なタイミングで行うことも困難であった。
【0007】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、カソード表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係るX線発生装置の要旨は、以下の[1]~[6]のとおりである。
【0009】
[1]電子ビームを放出するカソードを有する電子銃、及び前記電子銃から出射された前記電子ビームが入射するターゲットを含んで構成されるX線管と、前記X線管の駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記カソードの消費電力に基づいて前記カソードの温度を推定し、前記カソードの推定温度が通常動作用の所定範囲内に保持されるように前記カソードへの供給電流を制御する第1動作モードと、前記第1動作モードを所定時間実施した後、前記所定範囲よりも高い清浄化用の温度で前記カソードを加熱する第2動作モードと、を実行するX線発生装置。
【0010】
このX線発生装置では、第1動作モードにおいて、カソードの消費電力に基づいてカソードの温度を推定し、カソードの推定温度が通常動作用の所定範囲内に保持されるようにカソードへの供給電流を制御する。これにより、通常動作時のカソードの温度を適切に維持できるため、電子ビームの放出特性(例えば焦点寸法や寸法形状)を所望の範囲に安定的に維持できる。また、このX線発生装置では、第1動作モードの実施の際にカソードの表面に異物が付着することを考慮し、カソード表面を清浄化するための第2動作モードを実施する。第2動作モードでは、第1動作モードの所定範囲よりも高い清浄化用の温度でカソードを加熱し、カソード表面から異物を除去することで、電子ビームの放出特性を良好に保つことができる。このX線発生装置では、カソードを適切な温度で維持する第1動作モードを実施することで、カソードの所定の動作状況(適切な動作状態を維持しつつ動作時間に基づく状態変化を推定し得る状況)を所定時間実施した後に第2動作モードを実施する。これにより、カソード表面の清浄化を適切なタイミング(カソード表面への異物の付着が進行してきたタイミング)で実施できると共に、第2動作モードを温度制御しながら実施できるため、カソード表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できる。
【0011】
[2]カソードは、単結晶材料からなる電子放出部を備える[1]記載のX線発生装置。この場合、所望の電子放出特性を備えたカソードが得られる。
【0012】
[3]単結晶材料は、セリウム又はランタンを含む[2]記載のX線発生装置。この場合、所望の電子放出特性を備えたカソードが容易に得られる。
【0013】
[4]前記単結晶材料は、セリウムを含み、前記第1動作モードにおける前記通常動作用の所定範囲は、1720K~1780Kに設定されている[2]又は[3]記載のX線発生装置。この場合、通常動作時のカソードの温度を従来よりも下げることで、電子ビームの焦点寸法を維持しつつ、カソードの長寿命化が図られる。通常動作時のカソードの温度を下げることで、カソード表面への異物の付着が生じ易くなるが、上述の処理により、カソード表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できる。
【0014】
[5]前記制御部は、前記第1動作モードにおいて、前記カソードへの供給電流の制御を行った場合でも前記カソードの推定温度が前記所定範囲に保持されない場合に、その旨を示す報知信号を生成する[1]~[4]のいずれか記載のX線発生装置。このような構成によれば、第1動作モード実施中において、カソードへの供給電流の制御ではカソードの推定温度が所定範囲に保持されない場合に、カソードの異常を迅速に外部に報知することができる。
【0015】
[6]前記カソードから放出される前記電子ビームの焦点寸法及び/又は焦点形状を計測する電子ビーム計測部を備え、前記制御部は、前記第2動作モードの実施後に前記電子ビームの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び/又は形状を満たさない場合に、その旨を示す報知信号を生成する[1]~[5]のいずれか記載のX線発生装置。このような構成によれば、第2動作モード実施後においても電子ビームの放出特性が改善されない場合に、カソードの異常を迅速に外部に報知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、カソード表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係るX線発生装置の構成を示す概略的な断面図である。
図2図1に示したX線発生装置の排気部の構成を示すブロック図である。
図3図1に示したX線発生装置のX線照射に関するチャート図である。
図4】第1動作モード及び第2動作モードに関する制御部の構成を示すブロック図である。
図5】各動作モードにおける制御部のフローチャートである。
図6】カソードの温度推定に用いる参照データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係るX線発生装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係るX線発生装置の構成を示す概略的な断面図である。図1に示すように、X線発生装置1は、電子銃3と、回転陽極ユニットUと、磁気レンズ4と、排気部5と、電子銃3を収容する筐体6と、回転陽極ユニットUを収容する筐体7と、を含むX線管2を備えている。また、X線発生装置1は、X線管2の動作を制御する制御部51(図4参照)を備えている。X線管2を画成する筐体6と筐体7とは、一体に構成されていてもよく、別体に構成されていてもよい。別体である場合、筐体6と筐体7とは、互いに取り外し可能であってもよく、取り外すことができない態様で一体的に結合されていてもよい。
【0020】
電子銃3は、電子ビームEBを放出する部分である。電子銃3は、電子ビームEBを放出するカソードCを有している。カソードCは、例えば円形平面カソードである。カソードCの電子放出部Caは、例えばセリウムやランタンを含む単結晶材料(CeBやLaB)からなる。本実施形態では、単結晶材料としてCeBが用いられている。カソードCの電子放出面は、カソードCの平面視において円形状をなしている。カソードCは、電源装置56(図4参照)からの供給電流により、断面形状が円形状の電子ビームEBを放出する。
【0021】
回転陽極ユニットUは、ターゲット11と、回転支持体12と、駆動部13とを有している。ターゲット11の構成材料としては、例えば、タングステン、銀、ロジウム、モリブデン、及びそれらの合金等の重金属が挙げられる。回転支持体12は、回転軸A回りに回転可能に構成されている。本実施形態では、回転軸Aは、ターゲット11への電子ビームの入射方向と一致している。回転軸Aは、ターゲット11への電子ビームの入射方向に対して傾斜していてもよい。
【0022】
回転支持体12の構成材料としては、例えば銅、銅合金等の金属が挙げられる。回転支持体12は、回転軸Aを中心軸とする扁平な円錐台状の台座12aを有している。ターゲット11は、台座12aの周縁部に沿って配置されている。駆動部13は、回転支持体12を回転軸A周りに回転駆動させる部分である。駆動部13は、例えばモータ等の駆動源を有している。
【0023】
台座12aに配置されたターゲット11は、回転支持体12の回転に伴って回転しながら電子ビームEBを受け、X線XRを発生させる。本実施形態では、ターゲット11は、反射型のターゲットとなっており、ターゲット11への電子ビームの入射方向に交差(直交)する方向にX線XRを発生させる。ターゲット11で発生したX線XRは、筐体6の側壁部分に形成された出射窓14から筐体6の外部に出射される。出射窓14は、窓部材15によって気密に塞がれている。窓部材15の構成材料としては、例えばベリリウム、アルミニウム、カーボンなどの軽元素が挙げられる。
【0024】
磁気レンズ4は、カソードCからターゲット11に向かう電子ビームEBを制御する部分である。本実施形態では、磁気レンズ4は、偏向コイル21と、集束レンズ22と、四重極レンズ23とによって構成されている。偏向コイル21、集束レンズ22、四重極レンズ23は、いずれも筐体24内に収容されている。筐体24内には、電子ビームEBが通過する通過路24aが形成されている。偏向コイル21、集束レンズ22、四重極レンズ23は、筐体24内において、通過路24aを囲むように、カソードCからターゲット11に向かってこの順に配置されている。
【0025】
偏向コイル21は、カソードCにおける電子ビームEBの出射軸と、集束レンズ及び四重極レンズ23の中心軸との間の角度ずれを補正する。集束レンズ22は、例えばコイル、ポールピース、ヨーク等を含んで構成されている。集束レンズ22は、電子ビームEBを軸回り回転させながら電子ビームEBを集束させる。集束レンズ22の配置領域を通過する電子ビームEBは、例えば螺旋を描くように回転しながら集束する。四重極レンズ23は、例えばヨーク、コイルを含んで構成されている。四重極レンズ23は、電子ビームEBの断面形状を円形状から楕円形状に変化させる。
【0026】
X線発生装置1は、図1に示すように、チラーユニット31と、温度センサ32とを備えている。チラーユニット31と温度センサ32とは、互いに情報通信可能に接続されている。チラーユニット31と温度センサ32とは、互いにCPUユニット等の制御部に接続されていてもよい。回転陽極ユニットUを備えるX線発生装置1では、例えば0.1℃の温度変化で電子ビームEBの焦点位置が1μm程度変化する。このため、X線XRの安定性の向上に際しては、X線管2の温度管理が重要な要素となっている。X線発生装置1では、温度センサ32で検出したX線管2の温度に基づいてチラーユニット31をフィードバック制御することでX線管2の温度変化を抑制し、X線XRの安定性の向上を図っている。チラーユニット31のフィードバック制御方式は、比例制御及び積分制御のいずれであってもよい。
【0027】
チラーユニット31は、所定の温度に調整された冷媒をX線管2に向けて供給する部分である。冷媒としては、例えば水、不凍液などの液体冷媒を用いることができる。チラーユニット31は、X線管2内の熱源(例えば電子銃、ターゲットなど)の近傍の周囲に形成された流路に冷媒を流通させることで、X線管2の温度を所定範囲内に維持する。
【0028】
チラーユニット31は、X線発生装置1を組み込む装置構成、或いはX線遮蔽用の鉛箱などの配置の関係で、例えばX線管2から相当の距離(例えば20m程度)をもって離間して配置される場合がある。このため、チラーユニット31に内蔵される温度センサを用いた温度制御では、温度センサとX線管2との距離が離れすぎていることに起因し、X線管2の温度制御の精度が担保できないことが問題となり得る。このため、X線発生装置1では、図1に示すように、チラーユニット31とは別体の温度センサ32がX線管2の近傍に配置されている。
【0029】
温度センサ32は、X線管2で発生するX線XRによる劣化を回避するため、X線管2の近傍であって且つX線XRの影響を受けない位置に配置されている。本実施形態では、温度センサ32は、筐体6において、カソードCからの電子ビームEBの放出方向と反対側となる端部6aに接触或いは近接して配置されている。さらに、温度センサ32は、筐体6において、X線XRの出射方向と反対側に配置されていてもよい。温度センサ32は、チラーユニット31とX線管2との間に配置される冷媒用の配管上に配置してもよく、ターゲット11で発生したX線XRの照射を受けないようにX線管2の直下に配置してもよい。
【0030】
図2は、図1に示したX線発生装置の排気部の構成を示すブロック図である。図2に示すように、排気部5は、真空ポンプ41A,41Bと、バッファタンク42と、バックポンプ43とを含んで構成されている。真空ポンプ41A,41Bとバッファタンク42とは、金属製のベローズホース等によって互いに接続されている。バッファタンク42とバックポンプ43とは、フォアラインバルブ44を介し、金属製のベローズホース等によって互いに接続されている。
【0031】
真空ポンプ41Aは、排気流路E1(図1参照)を介して筐体6の内部空間S1を真空排気するポンプである。真空ポンプ41Bは、排気流路E2(図1参照)を介して筐体7の内部空間S2を真空排気するポンプである。真空ポンプ41A,41Bにより、電子銃3及びターゲット11で発生するガスが除去され、内部空間S1,S2が真空状態又は部分真空状態に維持される。内部空間S1は、例えば10-4Pa以下、好ましくは10-5Pa以下の真空状態又は部分真空状態に維持される。内部空間S2は、例えば10-6Pa~10-3Paの間の真空状態又は部分真空状態に維持される。
【0032】
バッファタンク42は、真空ポンプ41A,41Bとバックポンプ43との間に配置される大容量の真空チャンバである。バッファタンク42の配置により、バックポンプ43が停止した状態であっても真空ポンプ41A,41Bの排圧を確保することが可能となる。また、バックポンプ43の動作時の振動がX線管2に直接的に伝わることが防止され、X線管2において、外部振動による電子ビームEBの焦点位置の変動を抑制できる。
【0033】
バッファタンク42には、真空計45が設けられている。真空計45は、バッファタンク42の内圧を検出する部分である。真空計45でバッファタンク42の内圧をモニタリングすることで、バックポンプ43の性能低下を検出できる。また、真空計45の設置及びフォアラインバルブ44によるバッファタンク42とバックポンプ43との接続により、バックポンプ43の間欠運転が可能となる。したがって、排気部5を低振動かつ低消費電力で動作させることができる。
【0034】
真空ポンプ41Aには、ベント圧センサ46が接続されている。ベント圧センサ46は、ベント時の内部空間S1,S2の内圧を検出する部分である。ベント圧センサ46でベント時の内部空間S1,S2の内圧をモニタリングすることで、内部空間S1,S2の内圧が異常値まで上昇していないか否かを判断できる。
【0035】
上記排気部5では、初期真空排気において所定の真空度以下となるようにX線管2の内部空間S1,S2を排気した後、フォアラインバルブ44が閉じ、バックポンプ43が停止する。その後、真空ポンプ41A,41Bの消費電力をモニタリングしつつ、内部空間S1,S2の排気が継続される。真空ポンプ41A,41Bの消費電力が規定値を超えた場合、フォアラインバルブ44が開き、バックポンプ43が起動する。真空ポンプ41A,41Bの消費電力が規定値以下に戻った後、フォアラインバルブ44が閉じ、バックポンプ43が停止する。初期真空排気を除いたバックポンプ43の動作時間は、例えば100時間中0.5時間未満程度でよい。
【0036】
制御部51(図4参照)は、X線管2の動作を制御する部分である。制御部51は、物理的には、RAM、ROMなどのメモリ、CPUなどのプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスクなどの格納部、ディスプレイなどの表示部を備えて構成されたコンピュータシステムである。コンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。制御部51は、PLC(programmable logic controller)によって構成されていてもよく、FPGA(Field-programmable gate array)等の集積回路によって構成されていてもよい。
【0037】
図3は、図1に示したX線発生装置のX線照射に関するチャート図である。図3のチャートは、後述の第1動作モードのチャートである。図3に示すように、X線発生装置1でX線XRの出力を行う際には、排気部5、回転支持体12の駆動部13(モータ)、磁気レンズ4、フィラメント通電(カソードCの加熱)、電源装置56(図4参照)を以下のタイミングで駆動させる。まず、時刻t0において、真空ポンプ41A,41Bが駆動し、X線管2の真空度が上昇する。また、チラーユニット31が駆動し、X線管2の温度制御が開始される。次に、駆動部13が駆動し、モータの回転数が0rpmから12000rpm程度まで上昇する。また、集束レンズ22及び四重極レンズ23への電流供給が開始される。
【0038】
X線管2の真空度が規定値に到達した後、フィラメントへの電流供給が開始され、カソードCが昇温する。本実施形態では、昇温時のカソードCの温度範囲は、1720K~1780Kに設定されている(詳細は後述する)。図3の例では、フィラメントへの供給電流の増加は、二段階で行われる。一段階目のフィラメントへの供給電流の増加は、カソードC及び電子銃3の熱膨張の安定化のために行われる。時刻t1においてX線XRの照射を開始する旨の指示信号が制御部51に入力されると、フィラメントへの供給電流の二段階目の増加が開始すると共に管電圧が増加し、フィラメントへの電流の増加および管電圧の上昇が停止した時刻t2において管電流が増加する。一例として、管電圧は120kVであり、管電流は10mAである。
【0039】
管電流の増加に伴い、時刻t2においてX線XRの出射が開始される。X線XRの出射後、集束レンズ22及び四重極レンズ23への供給電流が更に一段階増加し、電子ビームEBの焦点位置及び焦点形状が所望の位置及び寸法となるように調整される。集束レンズ22及び四重極レンズ23への電流が更に一段階増加した後、時刻t3においてX線XRの照射を停止する旨の指示信号が制御部51に入力され、集束レンズ22への供給電流の低下が開始されるまでの期間中(図3の期間T)は、所望の径でX線XRの出力が得られる期間となる。
【0040】
時刻t3においてX線XRの照射を停止する旨の指示信号が制御部51に入力されると、集束レンズ22への供給電流が一段階減少し、その後に管電流及び管電圧が減少する。管電流及び管電圧の減少後、フィラメントへの供給電流が減少し、カソードCが降温する。図3の例では、フィラメントへの供給電流の減少は、増加の際と同様に二段階で行われる。カソードCへの供給電流が停止する時刻t4から真空ポンプ41A,41Bの駆動が停止する時刻t5までの期間は、カソードCの冷却期間となる。
【0041】
カソードCの冷却期間において、集束レンズ22及び四重極レンズ23への供給電流が停止され、駆動部13も停止される。駆動部13の停止後、チラーユニット31が停止され、X線管2の温度制御が終了する。カソードCの冷却期間が終了した後、真空ポンプ41A,41Bが停止される。これにより、X線管2の真空度が減少し、処理が終了する。
【0042】
一般に、X線発生装置の動作時においては、電子ビームの焦点寸法を所望の範囲に維持するため、カソードの温度を所定範囲内に保持する必要がある。従来のX線発生装置では、例えば動作時のカソードの温度を1800K以上の温度に保持していたが、高温のためにカソードの寿命が得られにくいという問題があった。これに対し、X線発生装置1では、上述したように、単結晶材料であるCeBからなるカソードCの温度範囲が動作時において1720K~1780Kに設定されている。X線発生装置1では、カソードCの温度範囲を従来よりも下げることで、電子ビームEBの焦点寸法を維持しつつカソードCの長寿命化が図られる。上記温度範囲によれば、電子ビームEBの焦点寸法をおよそ半年間にわたって一定に維持することが可能となる。
【0043】
一方、動作時のカソードCの温度を下げる場合、カソードCの表面への異物の付着が生じ易くなることが考えられる。カソードCの表面への異物の付着が進行すると、電子ビームEBの放出特性が劣化し、X線管2から出射されるX線XRの出力特性が十分に得られなくなるおそれがある。そこで、X線発生装置1では、カソードCの表面の清浄化を適切なタイミングで実施すべく、制御部51が、図3に示したX線XRの出力(通常動作)に関する第1動作モードと、カソードCの表面の清浄化に関する第2動作モードとを実行する。
【0044】
図4は、第1動作モード及び第2動作モードに関する制御部の構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御部51は、第1動作モード及び第2動作モードに関する構成要素として、電源制御部52と、消費電力検出部53と、計時部54と、報知部55とを備えている。電源制御部52は、カソードCに電流を供給する電源装置56を制御する部分である。
【0045】
電源制御部52は、電源装置56と相互に通信可能に接続されている。消費電力検出部53は、電源装置56におけるカソードCの消費電力を検出する部分である。消費電力検出部53は、電源装置56と相互に通信可能に接続されている。計時部54は、時間を計測するカウンタである。報知部55は、例えばモニタ、スピーカなどによって構成されている。
【0046】
本実施形態では、制御部51は、第1動作モード及び第2動作モードに加え、第2動作モード実行後に確認モードを実行する。確認モードに関する構成要素として、X線発生装置1は、X線焦点計測部57を有している。X線焦点計測部57は、本開示における電子ビーム計測部に相当する構成である。X線焦点計測部57は、例えばカソードCから放出される電子ビームEBによって発生するX線XRの焦点の状態に基づいて、電子ビームEBの状態を間接的に計測する。具体的には、X線焦点計測部57は、X線XRの軸に対して配置されたピンホールと、X線XRの焦点像を撮像するカメラとによって構成されている。X線焦点計測部57は、制御部51と情報通信可能に接続されている。
【0047】
図5は、各動作モードにおける制御部のフローチャートである。図5に示すように、第1動作モードでは、まず、カソードCへの電流の供給により電子ビームEBの放出がなされる(ステップS01)。電子ビームEBの放出の後、制御部51は、カソードCの消費電力に基づいてカソードCの温度を推定し、カソードCの推定温度が通常動作用の所定範囲に保持されるようにカソードCへの供給電流を制御する。具体的には、第1動作モードでは、消費電力検出部53が電源装置56からカソードCに供給されるカソード電流及びカソード電圧をモニタリングし、カソードCの消費電力を検出する(ステップS02)。消費電力検出部53は、カソードCの消費電力の検出結果を示す結果情報を電源制御部52に出力する。
【0048】
電源制御部52は、消費電力検出部53から受け取った結果情報に基づいてカソードCの温度を推定する(ステップS03)。電源制御部52は、カソードCの温度の推定にあたって、例えば図6に示すような参照データDを保有している。この参照データDは、カソードCの温度と消費電力との間に相関が存在するとの知見に基づくデータである。参照データDは、カソードCの消費電力を変化させた場合のカソードCの温度の変化を実測することで予め作成され、電源制御部52に記憶されている。
【0049】
図6の例では、カソードCの推定温度と消費電力とは比例関係を有している。すなわち、カソードCの消費電力が小さいほどカソードCの推定温度は低くなり、カソードCの消費電力が大きいほどカソードCの推定温度は高くなる。電源制御部52は、カソードCの消費電力に基づいて参照データDを参照することによってカソードCの温度を推定し、推定温度が通常動作用の所定範囲内(ここでは、1720K~1780K)から低下しているか否かを判断する(ステップS04)。推定温度が所定範囲内に保持されている場合、電源制御部52は、現在の消費電力を維持し、第1動作モードの開始から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS05)。所定時間が経過していない場合、ステップS02に戻り、以降の処理を再び実行する。
【0050】
推定温度が所定範囲から低下している場合、電源制御部52は、カソードCへの供給電流が増加するように電源装置56を制御する(ステップS06)。この制御の後、電源制御部52は、消費電力検出部53からの結果情報を引き続き受け取り、カソードCの推定温度が所定範囲に復帰したか否かを判断する(ステップS07)。カソードCの推定温度が所定範囲に復帰したと判断した場合、ステップS02に戻り、以降の処理を再び実行する。カソードCの推定温度が所定範囲に復帰しなかったと判断された場合、電源制御部52は、その旨を示す報知信号を生成し、報知部55に出力する。報知部55は、報知信号に基づき、アラーム音や警告の表示等によってカソードCの異常を外部に報知する(ステップS08)。この報知の後は、処理を終了する。
【0051】
第2動作モードは、第1動作モードを所定時間実施した後に実施される。すなわち、上述したステップS05において、第1動作モードの開始から所定時間が経過したと判断された場合に、第2動作モードが実施される。計時部54は、制御部51が第1動作モードで動作した時間を計測し、計測時間が所定時間に到達したタイミングで、第1動作モードが所定時間実施されたこと示す計時情報を電源制御部52に出力する。所定時間は、例えば24時間~72時間程度に設定される。
【0052】
第2動作モードでは、まず、電子ビームEBの放出が停止される(ステップS09)。次に、第1動作モードで用いる所定範囲よりも高い清浄化用の温度でカソードCを加熱する。具体的には、第2動作モードでは、電源制御部52は、計時部54から計時情報を受け取ると、カソードCの推定温度が第1動作モードで用いる所定範囲よりも高くなるように電源装置56を制御する(ステップS10)。第2動作モードで用いる清浄化用の温度は、例えば第1動作モードで用いる通常動作用の所定範囲よりも100K程度高い温度に設定される。本実施形態では、清浄化用の温度は、1820K~1880Kの範囲に設定されている。清浄化用の温度でのカソードCの加熱時間は、例えば1分間以上に設定されている。
【0053】
固体表面に吸着するガス分子の平均滞在時間τは、下記式(1)によって表される。式(1)中、τ0は定数、Eは吸着エネルギー、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。式(1)から、例えば水分子の吸着を想定してEを1.0eVとすると、1720Kから100K昇温した場合に、τの逆数で表される脱離速度は約1.5倍となる。このことから、第2モードで用いる清浄化用の温度は、第1動作モードで用いる通常動作用の所定範囲よりも100K程度高い温度に設定される。
τ=τ0×exp(E/kT)…(1)
【0054】
一方、実験により、1820Kにおけるカソード蒸発速度は、1720Kにおけるカソード蒸発速度の2倍~5倍程度となることが導かれる。したがって、第1動作モードで用いる通常動作用の温度を第2モードで用いる清浄化用の温度よりも100K低くすることで、カソード寿命を2倍~5倍に向上することができる。
【0055】
確認モードは、第2動作モードに後続して実施される。確認モードは、例えば第1動作モードと並行して実施される。確認モードでは、まず、X線焦点計測部57によってX線XRの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測が行われ、X線XRの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測結果に基づいて、カソードCから放出される電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測が行われる(ステップS11)。X線焦点計測部57は、計測結果を示す結果情報を電源制御部52に出力する。電源制御部52は、X線焦点計測部57からの結果情報に基づき、電子ビームEBの焦点寸法及び焦点形状が所望の寸法及び形状を満たすか否かを判断する(ステップS12)。電子ビームEBの焦点寸法及び焦点形状が所望の寸法及び形状を満たすと判断した場合、カソードCの表面の清浄化が正常に終了したと見做し、処理を終了する(若しくは第1動作モードの実施を継続する)。
【0056】
電源制御部52は、電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び/又は形状を満たさないと判断した場合、電子ビームEBの調整を指示する指示信号を生成する。制御部51は、生成された指示信号に基づき、電子ビームEBの焦点寸法及び又は焦点形状の調整を実施する(ステップS13)。電子ビームEBの調整は、例えば磁気レンズ4などへの供給電流の制御などによって実施される。
【0057】
次に、電子ビームEBの調整回数が所定数を超えたか否かが判断される(ステップS14)。電子ビームEBの調整回数が所定数を超えていないと判断された場合、ステップS11に戻り、以降の処理を再び実行する。電子ビームEBの調整回数が所定数を超えたと判断された場合、カソードCの表面に異常があると見做し、その旨を示す報知信号を生成し、報知部55に出力する。報知部55は、報知信号に基づき、アラーム音や警告の表示等によってカソードCの異常を外部に報知する(ステップS15)。
【0058】
以上説明したように、X線発生装置1では、第1動作モードにおいて、カソードCの消費電力に基づいてカソードCの温度を推定し、カソードCの推定温度が通常動作用の所定範囲内に保持されるようにカソードCへの供給電流を制御する。これにより、通常動作時のカソードCの温度を適切に維持できるため、電子ビームEBの放出特性(例えば焦点寸法や寸法形状)を所望の範囲に安定的に維持できる。
【0059】
また、X線発生装置1では、第1動作モードの実施の際にカソードCの表面に異物が付着することを考慮し、カソードCの表面を清浄化するための第2動作モードを実施する。第2動作モードでは、第1動作モードの所定範囲よりも高い清浄化用の温度でカソードCを加熱し、カソードCの表面から異物を除去することで、電子ビームEBの放出特性を良好に保つことができる。X線発生装置1では、カソードCを適切な温度で維持する第1動作モードを実施することで、カソードCの所定の動作状況(適切な動作状態を維持しつつ動作時間に基づく状態変化を推定し得る状況)を所定時間実施した後に第2動作モードを実施する。これにより、カソードCの表面の清浄化を適切なタイミング(カソードCの表面への異物の付着が進行してきたタイミング)で実施できると共に、第2動作モードを温度制御しながら実施できるため、カソードCの表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できる。
【0060】
本実施形態では、カソードCは、単結晶材料からなる電子放出部Caを備える。また、単結晶材料は、セリウム又はランタンを含む。これにより、所望の電子放出特性を備えたカソードCが容易に得られる。さらに、本実施形態では、単結晶材料は、セリウムを含むCeBeであり、第1動作モードにおける通常動作用の所定範囲は、1720K~1780Kに設定されている。通常動作時のカソードCの温度を従来よりも下げることで、電子ビームEBの焦点寸法を維持しつつ、カソードCの長寿命化が図られる。動作時のカソードCの温度を下げることで、カソードCの表面への異物の付着が生じ易くなるが、上述の処理により、カソードCの表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できる。
【0061】
本実施形態では、制御部51は、第1動作モードにおいて、カソードCへの供給電流の制御を行った場合でもカソードCの推定温度が所定範囲に保持されない場合に、その旨を示す報知信号を生成する。このような構成によれば、第1動作モード実施中において、カソードCへの供給電流の制御ではカソードCの推定温度が所定範囲に保持されない場合に、カソードCの異常を迅速に外部に報知することができる。
【0062】
本実施形態では、カソードCから放出される電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状を計測するX線焦点計測部57を備え、制御部51は、第2動作モードの実施後に電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び形状を満たさない場合に、その旨を示す報知信号を生成する。このような構成によれば、第2動作モード実施後においても電子ビームEBの放出特性が改善されない場合に、カソードCの異常を迅速に外部に報知することができる。
【0063】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、第2動作モードに後続する確認モードにおいて、X線焦点計測部57の計測結果に基づいて電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び/又は形状を満たすか否かを間接的に判断しているが、電子ビーム計測部が電子ビームEBの焦点寸法及び焦点形状を直接的に計測する態様であってもよい。
【0064】
X線焦点計測部57は、X線XRの焦点寸法及び/又は焦点形状を、報知信号を生成するか否かの判断対象としてもよい。X線XRの焦点寸法及び/又は焦点形状の変動は、電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状の変動に起因するため、X線XRの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測は、電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測と同義である。
【0065】
上記実施形態では、第2動作モードに後続する確認モードにおいて、X線焦点計測部57の計測結果に基づいて電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状が所望の寸法及び/又は形状を満たすか否かを判断しているが、電子ビームEBの焦点寸法及び/又は焦点形状の計測及び判断は、X線発生装置1のユーザが手作業で行う態様であってもよい。電子ビームEBの焦点寸法及び焦点形状の計測は、いずれか一方のみであってもよい。確認モードは必ずしも実施しなくてもよく、第2動作モードの実施後に確認モードの実施を省略して第1動作モードを実施してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…X線発生装置、2…X線管、3…電子銃、11…ターゲット、51…制御部、57…X線焦点計測部(電子ビーム計測部)、C…カソード、Ca…電子放出部、EB…電子ビーム。
【要約】
【課題】カソード表面の清浄化を確実かつ適切なタイミングで実施できるX線発生装置を提供する。
【解決手段】X線発生装置1は、電子ビームEBを放出するカソードCを有する電子銃3、及び電子銃3から出射された電子ビームEBが入射するターゲット11を含んで構成されるX線管2と、X線管2の駆動を制御する制御部51と、を備え、制御部51は、カソードCの消費電力に基づいてカソードCの温度を推定し、カソードCの推定温度が通常動作用の所定範囲内に保持されるようにカソードCへの供給電流を制御する第1動作モードと、第1動作モードを所定時間実施した後、所定範囲よりも高い清浄化用の温度でカソードを加熱する第2動作モードと、を実行する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6