(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】低重合収縮性を有する3Dプリント用インク
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20231114BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231114BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20231114BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20231114BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B29C64/112
B29C64/124
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2022201908
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2021529302の分割
【原出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】カリル ムサ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-47567(JP,A)
【文献】特開2018-58978(JP,A)
【文献】国際公開第2017/156132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリントで使用するためのインクであって、インクの総重量に基づき、
20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;
15~40重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;および
0.1~5重量%の光開始剤
を含み、
前記オリゴマー硬化性材料は、500~6,000の重量平均分子量を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含み、
前記シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、式(A1)の構造:
【化1】
(式中、
R
1は、線状または分枝状のC1~C6アルキレン部分、アルキレンカーボネート部分、アルキレンエステル部分、およびアルキレンアミド部分からなる群より選択され;
R
2はHまたはCH
3である)
を有し、
前記インクは、硬化したときに、ASTM D624に準拠して測定した場合に20~200kN/mの引裂強度を示す、インク。
【請求項2】
前記オリゴマー硬化性材料が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で1,000~250,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記オリゴマー硬化性材料が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で1,000~200,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む、請求項2に記載のインク。
【請求項4】
前記オリゴマー硬化性材料が、1つまたは複数の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項5】
前記オリゴマー硬化性材料が、インクの総重量に基づき、25~50重量%の量でインク中に存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
R
1が、線状または分枝状のC1~C4アルキレン部分である、請求項1~5のいずれか一項に記載のインク。
【請求項7】
R
2がHである、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項8】
R
1がCH
2であり、R
2がHである、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク。
【請求項9】
前記シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーが、式(A3)~(A5):
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、xおよびyは、1~10から独立して選択される整数である)
から選択される構造を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインク。
【請求項10】
前記シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーが、インクの総重量に基づき、20~30重量%の量でインク中に存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載のインク。
【請求項11】
前記オリゴマー硬化性材料および前記シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク。
【請求項12】
前記追加の硬化性材料が、追加のモノマー硬化性材料を含む、請求項11に記載のインク。
【請求項13】
前記追加の硬化性材料が、追加のオリゴマー硬化性材料を含む、請求項11に記載のインク。
【請求項14】
少なくとも1つの着色剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のインク。
【請求項15】
少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク。
【請求項16】
少なくとも1つの禁止剤、少なくとも1つの安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のインク。
【請求項17】
硬化したときに、ASTM D256に準拠して測定した場合に、50~200J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を示す、請求項1~16のいずれか一項に記載のインク。
【請求項18】
硬化したときに、ASTM D624に準拠して測定した場合に80~200kN/mの引裂強度を示す、請求項1~17のいずれか一項に記載のインク。
【請求項19】
硬化したときに、少なくとも70%が架橋している、請求項1~18のいずれか一項に記載のインク。
【請求項20】
未硬化インクの動的粘度が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で100cPより大きい、請求項1~19のいずれか一項に記載のインク。
【請求項21】
未硬化インクの動的粘度が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で100cPより大きくかつ5000cP未満である、請求項20に記載のインク。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/773,370号に対する米国特許法第119条(e)による優先権を主張し、その出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、三次元(3D)プリントシステムで使用するためのインクに関する。
【背景技術】
【0003】
サウスカロライナ州ロックヒル所在の3D Systems社製のProJect(商標)3Dプリンタなどのいくつかの市販の3Dプリンタまたは積層造形システムは、造形材料(build material)としても知られているインクを使用し、それらは液体としてプリントヘッドを通して噴射されて、さまざまな3D物体、物品または部品を形成する。他の3Dプリントシステムも、プリントヘッドを通して噴射されるかあるいは基体上に分配されるインクを使用する。一部の例では、インクは周囲温度では固体であり、高い噴射温度で液体に変化する。他の例では、インクは周囲温度で液体である。さらには、ある場合には、基体上へのインクの分配および/または堆積に続いて、インクが硬化され得る。硬化は、レーザまたはその他の電磁放射源を使用して達成することができる。
【0004】
他の3Dプリンタは、流体インクまたは造形材料、あるいは粉末インクまたは造形材料のリザーバ、バットまたは容器から3D物品を形成する。一部の例では、結合剤材料、あるいはレーザまたは他のエネルギー源を使用して、段階的な様式で、インクまたは造形材料の層を選択的に固化または固結(consolidate)させて3D物品を提供する。
【0005】
積層造形で使用される多くのインクは、主成分として(メタ)アクリレートを含む。しかしながら、光硬化中に起こるような光誘起重合を含む、(メタ)アクリレートの重合は、インクの体積重合収縮をもたらす可能性がある。この体積収縮は、さまざまな積層造形システムでの(メタ)アクリレートの使用を制限する可能性がある。この収縮はまた、プリント解像度および/またはプリントされた物品の所望の形状に対する忠実度を低下させる可能性がある(例えば、物品に関連する関連するコンピュータ支援設計(CAD)パラメータを基準にして)。さらに、以前の多くの(メタ)アクリレートベースのインクは、いくつかの用途で必要とされるよりも低いノッチ付き衝撃強度および/または引裂強度を有する。
【0006】
したがって、改善された体積重合収縮特性、改善されたプリント解像度/忠実度、および/または改善された強度(例えば、引裂強度)を有する3Dプリント用の改善された方法およびインクが必要とされている。インクの主要な硬化性成分以外の追加の成分を使用することによって必要に応じて他の特性を変更することを可能としながら、前述の特性の1つまたは複数を提供できるインクも必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、3Dプリンタで使用するためのインクが本明細書に記載されており、そのインクは、一部の実施形態では、従来のインク、特に積層造形で使用するための(メタ)アクリレート含有インクに勝る、1つまたは複数の利点を提供することができる。例えば、本明細書に記載のインクを使用して、低減または改善された体積重合収縮(volumetric polymerization shrinkage)で物品をプリントすることができる。本明細書に記載のインクを使用して、改善された正確さ(accuracy)および/または精度(precision)で物品をプリントすることができる。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクを使用して、ポリ(メタ)アクリレートネットワークを有し、かつ本発明によるものではない他の(メタ)アクリレートインクから形成された他の物品と比較して衝撃強度(impact strength)および/または引裂強度(tear strength)が改善された物品を形成することができる。さらに、本明細書に記載のインクは、いくつかの実施形態において、積層造形プロセスの速度を犠牲にすることなく、1つまたは複数の前述の利点を提供する。さらには、本明細書に記載のインクは、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセッシング(Digital Light Processing)(DLP)、およびマルチジェットプリント(Multi-Jet Printing)(MJP)に基づく3Dプリンタなど、さまざまな異なる3Dプリンタまたは積層造形システムで使用することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の3Dプリントシステムで使用するためのインクは、インクの総重量に基づき、20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;10~50重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;および0.1~5重量%の光開始剤を含む。さらに、一部の例では、インクは、上記のオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料をさらに含む。本明細書に記載のインクは、いくつかの実施形態では、非硬化性である1つまたは複数の追加の成分も含む。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの充填剤(またはフィラー)、少なくとも1つの禁止剤(inhibitor)、少なくとも1つの安定剤、または前述のものの2つ以上の組み合わせをさらに含む。もちろん、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、光開始剤、追加の硬化性材料(存在する場合)、および1つまたは複数の追加の非硬化性成分(存在する場合)の合計量は、(所与のインクに関して)100重量%に等しい。
【0009】
さらに、一般に、本明細書に記載のインクのオリゴマー硬化性材料は、500~6,000の分子量(例えば、重量平均分子量)を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む。さらに、一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で1,000~250,000cPまたは1,000~200,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む。一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、1つまたは複数の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む。さらに、いくつかの好ましい実施形態において、オリゴマー硬化性材料は、インクの総重量に基づき、25~50重量%の量でインク中に存在する。
【0010】
さらに、本明細書に記載のインクのシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、一般に、式(A1)の構造を有する:
【化1】
(式中、R
1は、線状または分枝状のC1~C6アルキレン部分、C1~C4アルキレン部分、アルキレンカーボネート部分、アルキレンエステル部分、およびアルキレンアミド部分からなる群より選択され;R
2はHまたはCH
3である)。本明細書における参照目的のために、「Cn~Cmアルキレン部分」(例えば、「C1~C6アルキレン部分」)は、「n」~「m」個の炭素原子(例えば、1~6個の炭素原子、および6個以下の炭素原子)を有する二価飽和脂肪族ラジカルである。いくつかの好ましい実施形態において、R
1はCH
2であり、R
2はHである。さらに、いくつかの好ましい実施形態において、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、インクの総重量に基づき、10~50重量%、15~50重量%、15~35重量%、または20~30重量%の量でインク中に存在する。
【0011】
上で述べたように、本明細書に記載のインクは、一部の例では、上記のオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料をさらに含む。一部の例では、例えば、追加の硬化性材料は、以下でさらに説明するように、追加のモノマー硬化性材料および/または追加のオリゴマー硬化性材料を含む。
【0012】
さらに、本明細書に記載のインクの光開始剤は、光開始剤が入射硬化放射線にさらされたときに、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、および追加の硬化性材料(存在する場合)の硬化を開始するように動作可能であることを理解されたい。
【0013】
さらに、本明細書に記載のインクは、未硬化状態または硬化状態のいずれかで、積層造形においてインクを使用するための利点を提供する1つまたは複数の構造特性を有することができることを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の未硬化インクの動的粘度(dynamic viscosity)は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で100cPより大きい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の未硬化インクの動的粘度は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で100cPより大きくかつ5000cP未満である。同様に、他の場合において、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、未硬化のときのそのインクと比較して、5%以下の体積重合収縮を示し、体積重合収縮はASTM D792に準拠して測定される。さらに、一部の例では、インクは、硬化したときに、ASTM D256に準拠して測定した場合に50~200J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度、および/またはASTM D624に準拠して測定した場合に20~200kN/mの引裂強度を示す。
【0014】
別の態様では、積層造形によって3D物品を形成する方法が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、そのような方法は、流体状態の本明細書に記載のインクの層を基体上に選択的に堆積させて、三次元物品を形成することを含む。この方法は、インクを光硬化することをさらに含むことができる。さらに、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、インクは、事前に選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータに従って選択的に光硬化される。
【0015】
あるいは、他の実施形態では、積層造形によって3D物品を形成する方法は、本明細書に記載のインクを容器内に流体状態で保持すること、および容器内のインクに選択的にエネルギーを印加してインクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成することを含む。この方法はさらに、第1の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供すること、および容器内のインクに選択的にエネルギーを印加してインクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成することを含み、第1の断面と第2の断面はz方向に互いに結合されている。以下でさらに説明するように、上記のステップが、3D物品を完成させるのに必要な任意の所望の回数繰り返され得る。さらに、いくつかの好ましい実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加することは、インクを光硬化させることを含む。さらに、一部の例では、本明細書に記載のプリント方法は、40~60mm/分、例えば50mm/分のプリント速度を有する。
【0016】
さらに別の態様では、プリントされた3D物品(プリント3D物品)が本明細書に記載されている。このような物品は、本明細書に記載の任意の方法を使用して、本明細書に記載の任意のインクから形成することができる。このようなプリント3D物品は、一部の例では、特に、主にポリ(メタ)アクリレートポリマーネットワークから形成されている場合、いくつかの他の3D物品と比較して優れた正確さおよび/または靭性(例えば、引裂強度)を示す。
【0017】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載の実施形態は、以下の詳細な説明および実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載される要素、装置、および方法は、詳細な説明および実施例に示される特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本開示の原理の単なる例示であることを認識されたい。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および適応が当業者には容易に明らかになるであろう。
【0019】
さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、そこに含まれるあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1.0~10.0」の範囲は、1.0以上の最小値で始まり10.0以下の最大値で終わるあらゆる全ての部分範囲、例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9を含むとみなされる。同様に、「1~10」の範囲は、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わるあらゆる全ての部分範囲、例えば、1~5、または4~10、または3~7、または5~8を含むと見なされる。
【0020】
本明細書に開示されるすべての範囲は、特に明記しない限り、その範囲の終点を含むと見なされるべきである。例えば、「5と10の間」、「5から10」、または「5~10」の範囲は、通常、終点の5と10を含むと見なされる。
【0021】
さらに、「~まで(または最大~)」という語句が量または数量に関連して使用される場合、その量は少なくとも検出可能な量または数量であると理解されるべきである。例えば、指定された量「まで」の量(または「最大」指定された量)で存在する物質は、検出可能な量からその指定された量まで(その指定された量を含む)の量で存在することができる。
【0022】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、一般に、ステレオリソグラフィ、選択的堆積、噴射、溶融堆積モデリング、マルチジェットモデリング、ならびに造形材料またはインクを使用して三次元物体を製造する当技術分野で現在知られているまたは将来的に知られ得る他の積層造形技術によって、三次元物品または物体を作製するためのさまざまな固体自由形状製造技術を記載する。
【0023】
I.3Dプリント用インク
一態様では、3Dプリンタで使用するためのインクが本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインクは、20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;10~50重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;0.1~5重量%の光開始剤;任意選択で、上記のオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料;および任意選択で、非硬化性である1つまたは複数の追加の成分を含む。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの着色剤、少なくとも1つの充填剤、少なくとも1つの禁止剤、少なくとも1つの安定剤、または前述のものの2つ以上の組み合わせをさらに含む。上記の重量パーセントは、インクの総重量に基づく。さらに、当業者に理解されるように、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、光開始剤、追加の硬化性材料(存在する場合)、および1つまたは複数の追加の非硬化性成分(存在する場合)の総量は、所与のインクの100重量%に等しい。さらに、光開始剤は、光開始剤によって吸収されるピーク波長λを有する入射硬化放射線に光開始剤がさらされたときに、オリゴマー硬化性材料および/またはシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーおよび/または追加の硬化性材料の硬化を開始するように動作可能である。すなわち、光開始剤は、オリゴマー硬化性材料および/またはシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーおよび/または追加の硬化性材料の硬化の光開始剤である。
【0024】
特に、本明細書に記載のインクは、一般に、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーを含む。シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、式(A1)の構造を有する:
【化2】
(式中、
R
1は、線状または分枝状のC1~C6アルキレン部分、アルキレンカーボネート部分、アルキレンエステル部分、およびアルキレンアミド部分からなる群より選択され;
R
2はHまたはCH
3である)。
【0025】
本明細書における参照目的のために、「Cn~Cmアルキレン部分」(例えば、「C1~C6アルキレン部分」)は、「n」~「m」個の炭素原子(例えば、1~6個の炭素原子、および6個以下の炭素原子)を有する二価飽和脂肪族ラジカルであると理解されるべきである。いくつかの好ましい実施形態において、R1は、特に好ましいCH2などの、線状または分枝状のC1~C4アルキレン部分である。いくつかの実施形態において、アルキレンカーボネート部分は、式・(CH2)x-O-C(O)-O-(CH2)y・(式中、xおよびyは、1~10から独立して選択される整数である)の二価ラジカルである。さらに、いくつかの実施形態において、アルキレンエステル部分は、式・(CH2)x-O-C(O)-(CH2)y・(式中、xおよびyは、1~10から独立して選択される整数である)の二価ラジカルである。さらに、いくつかの実施形態において、アルキレンアミド部分は、式・(CH2)x-N-C(O)-(CH2)y・(式中、xおよびyは、1~10から独立して選択される整数である)の二価ラジカルである。
【0026】
さらに、いくつかの好ましい実施形態では、R
2はHである。いくつかの特に好ましい実施形態では、R
1はCH
2であり、R
2はHである。したがって、一部の例では、本明細書に記載のインクのシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは式(A2)の構造を有する:
【化3】
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のインクのシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、(A3)~(A5)から選択される構造を有する:
【化4】
【化5】
【化6】
【0028】
理論に拘束されることを意図するものではないが、式(A2)の構造を有するシクロカーボネート(メタ)アクリレートの反応性は、積層造形中およびプリント物品において好ましい特性を提供すると考えられる。いくつかの実施形態において、シクロカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー鎖間の架橋反応に参加することができる。例えば、シクロカーボネート(メタ)アクリレートは、ビニル部分を介して重合し、水素引き抜きまたは他の電子移動プロセスを介して架橋を受けることができる。
【0029】
シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在することができる。いくつかの実施形態では、例えば、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、インクの総重量に基づき、10~50重量%の量で、あるいは好ましくは、15~35重量%または20~30重量%の量で、インク中に存在する。再度理論に拘束されることを意図するものではないが、このような量のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーの使用は、他の量のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーと比較して、(本明細書に記載されるような)改善された性能を提供すると考えられる。
【0030】
上記のように、本開示によるインクは、従来のインク、特に(メタ)アクリレート含有インクに勝る、様々な利点を提供することができる。例えば、本明細書に記載のインクを使用して、低減または改善された体積重合収縮で物品をプリントすることができる。本明細書に記載のインクを使用して、改善された正確さおよび/または精度で物品をプリントすることもできる。
【0031】
いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、未硬化のときのそのインクと比較して、5%以下の体積重合収縮を示し、体積重合収縮はASTM D792に準拠して測定され、パーセンテージは未硬化インクの値を分母として計算される。一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D792に準拠して体積重合収縮を測定した場合に、未硬化のときのそのインクと比較して3%以下または2%以下の体積重合収縮を示す。一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、未硬化のときのそのインクと比較して、0.5~5%または1~3%の体積重合収縮を示す。
【0032】
さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクを使用して、ポリ(メタ)アクリレートネットワークを有し、本発明によるものではない他の(メタ)アクリレートインクから形成された他の物品と比較して、改善された衝撃強度および/または引裂強度を有する物品を形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D256に準拠して測定した場合に50~200J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度および/またはASTM D624に準拠して測定した場合に20~200kN/mの引裂強度を示す。一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D256に準拠して測定した場合に50~150J/m、50~100J/m、または100~200J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を示す。さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、ASTM D624に準拠して測定した場合に、20~180kN/m、20~150kN/m、20~100kN/m、20~60kN/m、80~200kN/m、80~180kN/m、100~150kN/m、または150~200kN/mの引裂強度を有する。
【0033】
理論に束縛されることを意図するものではないが、上記のような特性は、インクの総重量に基づき、20~60重量%(または、好ましくは25~50重量%)のオリゴマー硬化性材料、10~50重量%(または、好ましくは、15~35重量%)のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、および0.1~7重量%の光開始剤を含むインクを使用することによって得ることができる。以下に説明するように、追加の成分(硬化性または非硬化性)を本明細書に記載のインクに含めることができ、そのような追加の成分は、インクにいくつかの追加の望ましい特性を提供できる。したがって、本明細書に記載されるように、本開示に従い、様々な積層造形用途のための多種多様なインクを提供することができ、それらは本明細書に記載される発明概念および技術的効果によって単一化される。
【0034】
さらに、本明細書に記載のインクは、いくつかの実施形態において、積層造形プロセスの速度を犠牲にすることなく、1つまたは複数の前述の利点を提供する。さらには、本明細書に記載のインクは、SLA、DLP、およびMJPに基づくものなど、さまざまな異なる3Dプリンタまたは積層造形システムで使用することができる。SLAおよび/またはDLPにおいて本明細書に記載のインクを使用できることに特に注目すべきである。本明細書でさらに説明するように、本明細書に記載のインクは、未硬化状態または硬化状態のいずれかで、SLAまたはDLPに基づく積層造形など、積層造形でインクを使用するための利点を提供する1つまたは複数の構造特性を有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の未硬化インクの動的粘度は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で100cPより大きくかつ5000cP未満である。
【0035】
ここで本明細書に記載のインクの他の特定の成分に着目すると、本明細書に記載のインクは、1つまたは複数のオリゴマー硬化性材料、および任意選択で、インクのオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料を含むことができる。そのような追加の硬化性材料は、それ自体がモノマー硬化性材料またはオリゴマー硬化性材料であってよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の硬化性材料は、アクリロイルモルホリン、単官能性アクリレートおよび/または多官能性アクリレートを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマー種を含む。本明細書における参照目的で、硬化性材料は、1つまたは複数の硬化性または重合性部分を含む化学種を含む。本明細書における参照目的で、「重合性部分」は、プリント3D物品または物体を提供するために重合または硬化され得る部分を含む。このような重合または硬化は、本開示の目的と矛盾しない任意の方法で行うことができる。いくつかの実施形態では、例えば、重合または硬化は、重合または架橋反応を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射線で重合性または硬化性材料を照射することを含む。例えば、一部の例では、紫外線(UV)放射を使用できる。したがって、一部の例では、重合性部分は、UV重合性部分などの光重合性または光硬化性部分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の硬化性材料は、約300nm~約400nm、または約320nm~約380nmの範囲の波長で光重合性または光硬化性である。あるいは、他の例では、硬化性材料は電磁スペクトルの可視波長で光重合性である。
【0036】
さらに、一部の例では、重合反応は、エチレン性不飽和点を含む不飽和点間の反応などのフリーラジカル重合反応を含む。他の重合反応も使用できる。当業者に理解されるように、本明細書に記載の硬化性材料を重合または硬化させるために使用される重合反応は、互いに反応して1つまたは複数の共有結合を形成することができる1つまたは複数の官能基または部分を有する複数の「モノマー」または化学種の反応を含むことができる。
【0037】
本明細書に記載の硬化性材料の重合性部分の1つの非限定的な例は、ビニル部分、アリル部分、または(メタ)アクリレート部分などのエチレン性不飽和部分であり、本開示全体にわたり「(メタ)アクリレート」の用語には、アクリレートまたはメタクリレート、あるいはそれらの混合物または組み合わせが含まれる。
【0038】
本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料に含まれる「オリゴマー」種は、それ自体がポリマーまたはオリゴマーであり、比較的高い分子量または比較的高い粘度を有する。これらの種はまた、本明細書に記載の1つまたは複数の不飽和点などを介して、追加の重合を受けることができる。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料中のオリゴマー種の集団は、(例えば、非単一分子量分布を有するウレタンアクリレートの特定の塊、あるいは集団内にエチレングリコール単位の分布および/またはエトキシ単位の分布を有するエトキシル化ポリエチレングリコールの特定の塊によって示され得るような)その集団全体にわたり様々な分子構造および/または式を有することができる。本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料の重量平均分子量は、一般に、約500~6,000の範囲である。さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクのオリゴマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で1,000~250,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む。いくつかの好ましい実施形態では、オリゴマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で1,000~200,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む。理論に束縛されることを意図するものではないが、分子量と粘度のそのような組み合わせは、本明細書に記載のインクの発明の技術的効果の達成に寄与すると考えられる。
【0039】
「オリゴマー」種とは対照的に、本明細書に記載の任意選択的なモノマー硬化性材料に含まれる「モノマー」種は、それ自体はポリマーまたはオリゴマーではなく、比較的低い分子量または比較的低い粘度を有する。モノマー硬化性材料に含まれる「モノマー」種は、(例えば、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレートの特定の塊、または上記の硬化性モノマーの特定の塊によって示され得るような)その集団を通して一貫したまたは明確に規定された分子構造および/または式を有することができる。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のモノマー硬化性材料は、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、25℃で500センチポアズ(cP)以下の粘度、および/または500未満、400未満、または300未満の分子量を有する。
【0040】
さらに、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料および/またはモノマー硬化性材料は、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性、またはそれ以上の高官能性硬化性種を含むことができる。本明細書における参照目的で、「単官能性」硬化性種は、1つの硬化性または重合性部分を有する化学種を含む。同様に、「二官能性」硬化性種は、2つの硬化性または重合性部分を有する化学種を含み;「三官能性」硬化性種は、3つの硬化性または重合性部分を有する化学種を含み;「四官能性」硬化性種は、4つの硬化性または重合性部分を有する化学種を含み;「五官能性」硬化性種は、5つの硬化性または重合性部分を有する化学種を含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクの単官能性硬化性材料はモノ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの二官能性硬化性材料はジ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの三官能性硬化性材料はトリ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの四官能性硬化性材料はテトラ(メタ)アクリレートを含み、本明細書に記載のインクの五官能性硬化性材料はペンタ(メタ)アクリレートを含む。その他の単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、および五官能性の硬化性材料も使用できる。
【0041】
さらには、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性、および五官能性の硬化性材料は、一部の例では、比較的低い分子量の種(すなわちモノマー種)、または比較的高い分子量の種(すなわちオリゴマー種)を含むことができる。
【0042】
一般に、本開示の目的と矛盾しない任意のオリゴマー硬化性材料またはオリゴマー硬化性材料の組み合わせを本明細書に記載のインクで使用することができる。一部の例では、例えば、オリゴマー硬化性材料は、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、またはエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。一部の例では、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーおよび/またはアクリレートアミンオリゴマー樹脂(EBECRYL 7100など)を含む。一部の例では、本明細書に記載のオリゴマー硬化性材料は、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、オリゴマー硬化性材料は、単官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む。さらには、一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含み、それらには、ポリエチレングリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、あるいはエトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートが含まれる。オリゴマー材料は、脂環式エポキシも含むことができる。
【0043】
本明細書に記載のいくつかの実施形態において有用な市販のオリゴマー硬化性材料の一部の非限定的な例には以下のものが含まれる:SARTOMER社からSR 611の商品名で市販されているアルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;RAHN USA社から商品名GENOMER 1122で市販されている単官能性ウレタンアクリレート;ALLNEX社から商品名EBECRYL 8402で市販されている脂肪族ウレタンジアクリレート;DYMAX社から商品名BR-952で市販されている多官能性アクリレートオリゴマー;およびDYMAX社から商品名BR-371Sで市販されている脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート。他の市販のオリゴマー硬化性材料も使用できる。
【0044】
一部の例では、本明細書に記載のインクでの使用に適したウレタン(メタ)アクリレートは、典型的には、ヒドロキシル末端ウレタンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させて対応するウレタン(メタ)アクリレートを得ることによって、またはイソシアネート末端プレポリマーをヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレートと反応させてウレタン(メタ)アクリレートを得ることによって、既知の方法で調製することができる。適切なプロセスは、とりわけ、欧州特許出願公開第114982号および同第133908号に開示されている。そのような(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、一部の例では、約500~6,000であってよい。ウレタン(メタ)アクリレートはまた、SARTOMER社からCN980、CN981、CN975およびCN2901の製品名で、あるいはBOMAR Specialties社からBR-741、BR-771F、BR7432GB、およびBR751MBの製品名で市販されている。
【0045】
オリゴマー硬化性材料は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、オリゴマー硬化性材料は、インクの総重量に基づき、合計で20~60重量%、または好ましくは25~50重量%の量でインク中に存在する。
【0046】
さらに、本開示の目的と矛盾しない任意のモノマー硬化性材料またはモノマー硬化性材料の組み合わせを、追加のモノマー硬化性材料成分として使用することができる。一部の例では、本明細書に記載のインクのモノマー硬化性材料は、1つまたは複数の単官能性、二官能性、三官能性、および/または五官能性(メタ)アクリレートなどの、1種または複数種の(メタ)アクリレートを含む。一部の実施形態では、例えば、モノマー硬化性材料は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレート、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、モノマー硬化性材料は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールジアクリレートの内の1つまたは複数を含む。さらには、一部の例では、モノマー硬化性材料は、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含み、そのようなジオールには、1,3-または1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたはビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールSなどが含まれる。本明細書に記載のモノマー硬化性材料はまた、1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、および/またはビス(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレートを含むことができる。さらに、一部の例では、モノマー硬化性材料は、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールF、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、あるいはエトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの、エトキシル化またはプロポキシル化種を含むことができる。一部の例では、モノマー硬化性材料は脂環式エポキシを含む。
【0047】
本明細書に記載の一部の実施形態において有用な市販のモノマー硬化性材料の追加の非限定的な例には以下のものが含まれる:SARTOMER社からSR 506の商品名で市販されているイソボルニルアクリレート(IBOA);SARTOMER社からSR 423Aの商品名で市販されているイソボルニルメタクリレート;SARTOMER社からSR 272の商品名で市販されているトリエチレングリコールジアクリレート;SARTOMER社からSR 205の商品名で市販されているトリエチレングリコールジメタクリレート;SARTOMER社からSR 833Sの商品名で市販されているトリシクロデカンジメタノールジアクリレート;SARTOMER社からSR 368の商品名で市販されているトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;SARTOMER社からSR 339の商品名で市販されている2-フェノキシエチルアクリレート;SARTOMER社からSR 349の商品名で市販されているエトキシル化(3モル)ビスフェノールAジアクリレート;RAHN USA社からGENOMER 1120の商品名で市販されている環式単官能性アクリレート;およびSARTOMER社からSR 399LVの商品名で市販されているジペンタエリトリトールペンタアクリレート。他の市販のモノマー硬化性材料も使用できる。
【0048】
追加のモノマー硬化性材料は、使用される場合、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、追加のモノマー硬化性材料は、インクの総重量に基づき、合計で、最大約40重量%、最大約30重量%、最大約25重量%、または最大約20重量%の量でインク中に存在する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、インクの総重量に基づき、約0~40重量%、10~40重量%、または15~35重量%の追加のモノマー硬化性材料を含む。一部の例では、本明細書に記載のインクは、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー以外の追加のモノマー硬化性材料を含まない。
【0049】
本明細書に記載のインクは、1つまたは複数の光開始剤も含む。本開示の目的と矛盾しない任意の光開始剤を本明細書に記載のインクで使用することができる。一部の例では、例えば、光開始剤は、約250nm~約400nmの間、または約300nm~約385nmの間の光を吸収してフリーラジカルを生成するように動作可能な、α開裂型(単分子分解プロセス)の光開始剤または水素引き抜き型の光増感剤-第三級アミン相乗剤を含む。α開裂型の光開始剤の例は、Irgacure 184(CAS 947-19-3)、Irgacure 369(CAS 119313-12-1)、およびIrgacure 819(CAS 162881-26-7)である。光増感剤-アミンの組み合わせの例は、Darocur BP(CAS 119-61-9)とジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0050】
さらに、一部の例では、光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテルおよびベンゾイルイソプロピルエーテルなど)、ベンゾインフェニルエーテルおよびベンゾインアセテートなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノンおよび1,1-ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンジル;ベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンおよび2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;トリフェニルホスフィン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)などのベンゾイルホスフィンオキシド類;ベンゾフェノンおよび4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;チオキサントン類およびキサントン類;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体または1-フェニル-1,2-プロパンジオン;2-O-ベンゾイルオキシム;1-アミノフェニルケトン類;または、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、および4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトンなどの1-ヒドロキシフェニルケトン類を含む。
【0051】
光開始剤はまた、HeCdレーザ放射線源で使用するのに動作可能な光開始剤も含むことができ、そのような光開始剤には、アセトフェノン、2,2-ジアルコキシベンゾフェノン、および1-ヒドロキシフェニルケトン(例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン)など)が含まれる。さらに、一部の例では、光開始剤は、Arレーザ放射線源で使用するのに動作可能な光開始剤を含み、そのような光開始剤には、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類が含まれる。一部の実施形態では、適切な光開始剤は、α-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタールまたは2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、あるいはそれらの混合物を含む。
【0052】
本明細書に記載のインクに含めることができる別のクラスの光開始剤は、化学線を吸収して重合開始のためのフリーラジカルを生成することができるイオン性染料-対イオン化合物を含む。いくつかのイオン性染料-対イオン化合物およびその動作モードが、欧州特許出願公開第0223587号、ならびに米国特許第4,751,102号、同第4,772,530号、および同第4,772,541号に開示されている。本明細書に記載の光開始剤は、トリフェニルスルホニウム光開始剤などのカチオン性光開始剤であってもよい。
【0053】
光開始剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で、本明細書に記載のインク中に存在することができる。いくつかの実施形態において、光開始剤は、インクの総重量に基づき、最大約5重量%、最大約4重量%、または最大約3重量%の量でインク中に存在する。一部の例では、光開始剤は、約0.1~5重量%、0.1~4重量%、0.1~3.5重量%、0.1~2重量%、0.5~5重量%、0.5~4重量%、0.5~3.5重量%、1~5重量%、1~4重量%、1~3.5重量%、2~5重量%、または2~4重量%の量で存在する。
【0054】
直前の段落に記載されている量(重量%)は、非オリゴマーおよび非ポリマーである光開始剤を指すことをさらに理解されたい。すなわち、上記の量は、例えば、400未満の分子量を有し得る、「モノマー」または「分子」光開始剤を指す。ただし、本明細書に記載のインクおよび方法において、オリゴマーまたはポリマー光開始剤を使用できることも理解されたい。しかし、そのような場合(オリゴマーまたはポリマー光開始剤が使用される場合)、上記の量(重量%)は、オリゴマーまたはポリマー光開始剤のオリゴマーまたはポリマー部分の重量を考慮しないで計算される。言い換えれば、(本開示の目的のために)インク中に存在するオリゴマーまたはポリマー光開始剤の全体量(重量%)を決定するには、計算(特に、計算機)は、光開始剤の光活性部分の分子量のみに基づくべきであり、オリゴマーまたはポリマー光開始剤の残りの部分または繰り返し単位の分子量に基づくべきではない。
【0055】
本明細書に記載のインクの可能な追加成分に着目すると、本明細書に記載のインクは、1つまたは複数の光増感剤をさらに含むことができる。一般に、そのような増感剤をインクに加えて、存在し得る1つまたは複数の光開始剤の有効性を高めことができる。一部の例では、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(ITX)または2-クロロチオキサントン(CTX)を含む。
【0056】
増感剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在することができる。一部の実施形態では、増感剤は、インクの総重量に基づき、約0.1重量%~約2重量%、または約0.5重量%~約1重量%の範囲の量で存在する。ただし、他の場合には、本明細書に記載のインクは、上記のような増感剤を含まない。
【0057】
本明細書に記載のインクの別の可能な成分に着目すると、本明細書に記載のインクは、少なくとも1つの着色剤も含むことができる。本明細書に記載のインクのそのような着色剤は、粒状顔料などの粒状着色剤、または分子染料などの分子着色剤であり得る。本開示の目的と矛盾しない任意のそのような粒状または分子着色剤を使用することができる。一部の例では、例えば、インクの着色剤は、TiO2および/またはZnOなどの無機顔料を含む。一部の実施形態では、インクの着色剤は、RGB、sRGB、CMY、CMYK、L*a*b*、またはPantone(登録商標)カラー化スキームにおいて使用するための着色剤を含む。さらには、一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約5μm未満、または約1μm未満の平均粒径を有する。一部の例では、本明細書に記載の粒状着色剤は、約500nm未満の平均粒径、例えば、約400nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、または約150nm未満の平均粒径を有する。一部の例では、粒状着色剤は、約50~5000nm、約50~1000nm、または約50~500nmの平均粒径を有する。
【0058】
着色剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で本明細書に記載のインク中に存在することができる。一部の例では、着色剤は、インクの総重量に基づき、最大約2重量%の量、あるいは、約0.005~2重量%、0.01~2重量%、0.01~1.5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、0.1~0.5重量%、または0.5~1.5重量%の量でインク中に存在する。
【0059】
さらに、本明細書に記載のインクは、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の重合禁止剤および/または安定剤をさらに含む。重合禁止剤をインクに添加して、組成物に付加的な熱安定性をもたらすことができる。本開示の目的と矛盾しない任意の重合禁止剤を使用することができる。さらには、重合禁止剤は、重合の速度を遅延または低下させることができ、および/または重合禁止剤が消費されるまでのある期間または「誘導時間」の間、重合が生じるのを防ぐことができる。さらに、一部の例では、本明細書に記載の重合禁止剤は、「付加型」の禁止剤である。本明細書に記載の禁止剤はまた、「連鎖移動型」の禁止剤であってもよい。一部の例では、適切な重合禁止剤はメトキシヒドロキノン(MEHQ)を含む。
【0060】
安定剤は、一部の実施形態では、1つまたは複数の酸化防止剤を含む。安定剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の酸化防止剤を含むことができる。一部の例では、適切な酸化防止剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む、さまざまなアリール化合物が含まれ、それらは本明細書に記載のいくつかの実施形態において重合禁止剤としても使用できる。より一般的には、単一の種が安定剤と重合禁止剤の両方として機能する場合がある。一部の例では、複数の禁止剤および/または安定剤を使用することも可能であり、異なる禁止剤および/または安定剤が、異なる効果をもたらすおよび/または相乗的に作用する。
【0061】
重合禁止剤および/または安定剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量でインク中に存在することができる。一部の実施形態では、重合禁止剤は、約0.01重量%~約2重量%、または約0.05重量%~約1重量%の範囲の量で存在する。同様に、一部の例では、安定剤は、インクの総重量に基づき、約0.1重量%~約5重量%、約0.5重量%~約4重量%、または約1重量%~約3重量%の量でインク中に存在する。
【0062】
一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、粘度調整剤をさらに含むことができる。粘度調整剤の非限定的な例には、飽和脂肪酸または飽和脂肪酸の組み合わせ、あるいは植物油などの油が含まれる。本明細書に記載のインクは、最大5重量%、最大3重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、または最大0.1重量%の本発明の目的と矛盾しない粘度調整剤を含むことができる。
【0063】
本明細書に記載のインクは、他のいわゆる充填剤(またはフィラー)を含んでもよい。そのような充填剤は、積層造形中にポリマーネットワークを形成するために使用される重合において充填剤が反応体として化学的に関与しないように、一般に、非硬化性である。このような充填剤は、インクに1つまたは複数の望ましい特性(色、機械的強度、または導電率など)を付与するために使用することもできる。充填剤の非限定的な例には、上記の可能な追加成分のいくつか(着色剤など)、ならびにセラミック、金属、または他の粒子などの無機充填剤および/または離散ポリマー粒子などの有機充填剤が含まれる。
【0064】
本明細書に記載のインクはまた、様々な望ましい特性を示すことができる。インクの望ましい特性のいくつかはすでに上述されている(例えば、低い体積収縮)。インクは、他の望ましい特性も示すことができる。例えば、本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しない任意の凝固点(freezing point)、融点、および/または他の相転移温度を有することができる。一部の例では、インクは、相変化インクで使用するために設計された3Dプリントシステムを含めて、いくつかの3Dプリントシステムで使用される温度と整合する凝固点または融点を有する。一部の実施形態では、インクの凝固点は約40℃よりも高い。ある場合には、例えば、インクの凝固点は、約45℃~約55℃または約50℃~約80℃の範囲の温度を中心とする凝固点を有する。一部の例では、インクは、約40℃未満または約30℃未満の凝固点を有する。
【0065】
さらに、本明細書に記載の一部の実施形態では、インクは、シャープな凝固点または他の相転移を示す。ある場合には、インクは、約1℃~約10℃、約1℃~約8℃、または約1℃~約5℃の範囲など、狭い温度範囲で凝固する。一部の実施形態では、シャープな凝固点を有するインクは、X±2.5℃の温度範囲で凝固し、ここで、Xは凝固点の中心となる温度(例えば、X=65℃)である。
【0066】
さらに、本明細書に記載のインクは、一部の例では、3Dプリントシステムにおいて直面する噴射温度で流体である。さらには、ある実施形態では、インクは、三次元的プリント物品または物体の製造中に表面に堆積されるとすぐに固化する。あるいは、他の例では、インクは、表面への堆積時に実質的に流体のままである。インクの固化は、一部の実施形態では、インクまたはインク成分の相変化によって生じる。相変化は、液体から固体への相変化または液体から半固体への相変化を含むことができる。さらに、一部の例では、インクの固化は、低粘度状態から高粘度状態への粘度の増加など、インクの粘度の増加を含む。インクの固化は、インクの硬化により起きることもある。
【0067】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、未硬化のときに、MJPまたはSLAシステムなどの1つまたは複数の3Dプリントシステムの要件およびパラメータに整合する粘度プロファイルを有する。例えば、一部の例では、本明細書に記載のインクは、30℃で、1600センチポアズ(cP)以下、1200cP以下、または800cP以下の動的粘度を有する。好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、(例えば、ブルックフィールドモデルDV-II+粘度計を使用して)ASTM規格D2983に準拠して測定した場合に、30℃で500cP以下の動的粘度を有する。一部の例では、本明細書に記載のインクは、未硬化のとき、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、30℃で、約200~1600cP、約200~1200cP、約200~800cP、約200~500cP、または約200~400cPの動的粘度を示す。他の好ましい実施形態では、本明細書に記載のインクは、未硬化のとき、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、50℃で500cPより大きくかつ2500cP未満の動的粘度を有する。
【0068】
本明細書に記載のインクはまた、硬化状態において、上記に記載されるものに加えて、さまざまな望ましい特性を示すことができる。本明細書で使用される「硬化」状態のインクは、少なくとも部分的に硬化した、すなわち少なくとも部分的に重合および/または架橋した硬化性材料または重合性成分を含むインクを含む。例えば、一部の例では、硬化インクは、少なくとも約70%が重合または架橋しているか、または少なくとも約80%が重合または架橋している。一部の実施形態では、硬化インクは、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも99%が重合または架橋している。一部の例では、硬化インクは、約80%~約99%が重合または架橋している。
【0069】
一部の例では、例えば、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、上記のような耐衝撃性(ノッチ付き)を有する。さらに、一部の例では、本明細書に記載のインクは、硬化したときに、本開示に記載の複数の特性を示すことができる。
【0070】
本明細書に記載のインクは、本開示の目的と矛盾しない任意の方法で製造することができる。一部の実施形態では、例えば、本明細書に記載のインクの調製方法は、インクの成分を混合し、その混合物を溶融し、溶融した混合物をろ過するステップを含む。混合物の溶融は、一部の例では、約75℃の温度または約75℃~約85℃の範囲の温度で行われる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、インクのすべての成分を反応容器に入れ、得られた混合物を攪拌しながら約75℃~約85℃の範囲の温度に加熱することによって製造される。加熱および撹拌は、混合物が実質的に均質化された溶融状態に達するまで続けられる。一般に、溶融混合物を流体状態にある間にろ過して、噴射または吐出あるいは他のプリントプロセスと干渉する可能性のある大きな望ましくない粒子を除去することができる。その後、ろ過した混合物を周囲温度まで冷却し、3Dプリントシステムで使用する準備ができるまで保管することができる。
【0071】
II.3D成形品を形成する方法
別の態様では、積層造形によって3D物品または物体を形成または「プリント」する方法が本明細書に記載されている。本明細書に記載の3D物品または物体を形成する方法は、(MJPまたはSLAプリント方法におけるように)本明細書に記載のインクの複数の層から層ごとに3D物品を形成することを含むことができる。例えば、一部の例では、3D物品をプリントするMJP方法は、3Dプリントシステムのビルドパッドなどの基体上に、流体状態で本明細書に記載のインクの層を選択的に堆積することを含む。この方法は、インクをさらに硬化(例えば、光硬化)することをさらに含むことができる。さらに、硬化は、インクの1つまたは複数の成分の1つまたは複数の重合性部分または官能基を重合させることを含むことができる。一部の例では、堆積されたインクの層は、インクの別の層または隣接する層の堆積の前に硬化される。さらに、堆積されたインクの1つまたは複数の層の硬化は、いくつかの実施形態において、1つまたは複数の層を、上述したように、紫外(UV)線、可視光線、または赤外線などの電磁放射線に曝すことによって行われる。さらに、いくつかの実施形態では、そのような方法は、硬化の前または後に、インクの層の少なくとも1つを支持材料で支持することをさらに含む。以下でさらに説明するように、本開示の目的と矛盾しない任意の支持材料を使用することができる。
【0072】
あるいは、3D物品をプリントする方法は、インクを容器内に流体状態で保持すること;容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成すること;第1の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供すること;容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成すること;を含み、第1の断面と第2の断面はz方向に互いに結合されている。さらに、そのようないくつかの実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加することは、インクを光硬化させることを含む。さらに、このような方法は、比較的大きな3D物品の形成であっても、比較的高いプリント速度で実行することができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載のプリント方法は、20~60mm/時間(例えば50mm/時間など)のプリント速度を有する。
【0073】
さらに、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のインクの1つまたは複数の層は、約10μm~約100μm、約10μm~約80μm、約10μm~約50μm、約20μm~約100μm、約20μm~約80μm、または約20μm~約40μmの厚さを有する。他の厚さも可能である。
【0074】
積層造形によって3D物品を形成する方法は、層ごとの方法以外の方法で物体を形成することも含むことができる。
【0075】
さらに、セクションIで前述した任意のインクを、本明細書に記載の方法で使用することができる。例えば、一部の例では、本明細書に記載の方法は、20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;10~50重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;0.1~5重量%の光開始剤;任意選択で、最大40重量%の、上記のオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料;および任意選択で、最大10重量%の1つまたは複数の追加の非硬化性成分を含み、ここで重量%はインクの総重量に基づいており、前述のすべての成分を合わせた合計量は100重量%である。
【0076】
「材料堆積」法(MJPなど)または「バット重合」法(SLAなど)を含む、さまざまな方法に関する詳細を以下に記載する。
【0077】
A.材料堆積法
材料堆積法では、本明細書に記載のインクの1つまたは複数の層が基体上に選択的に堆積され、硬化される。インクの硬化は、インクの1つの層、各層、いくつかの層、またはすべての層の選択的堆積の後に生じ得る。
【0078】
一部の例では、本明細書に記載のインクは、3Dプリントシステムのビルドパッドなどの基体上に、流体状態で選択的に堆積される。選択的堆積は、例えば、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクを堆積させることを含んでいてよい。例えば、一部の実施形態では、プリントすべき所望の3D物品に対応するCADファイルの図面が作製され、十分な数の水平スライスにスライスされる。次に、所望の3D物品をプリントするためにCADファイルの図面の水平スライスにしたがって、インクが層ごとに選択的に堆積される。水平スライスの「十分な」数は、例えば正確かつ精密にそれを製造するために、所望の3D物品をうまくプリントするのに必要な数である。
【0079】
さらに、一部の実施形態では、事前に選択された量の本明細書に記載のインクが、適切な温度に加熱され、適切なインクジェットプリンタの1つまたは複数のプリントヘッドを通して噴射されて、プリントチャンバ内のプリントパッド上に層を形成する。一部の例では、事前に選択されたCADパラメータにしたがってインクの各層が堆積される。インクを堆積させるのに適したプリントヘッドは、一部の実施形態では、圧電プリントヘッドである。本明細書に記載のインクおよび支持材料の堆積に適したさらなるプリントヘッドは、さまざまなインクジェットプリント装置製造メーカーから市販されている。例えば、一部の例では、ゼロックス(Xerox)、ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)、またはリコー(Ricoh)のプリントヘッドを使用することができる。
【0080】
さらに、一部の実施形態では、本明細書に記載のインクは、堆積時に実質的に流体のままである。あるいは、他の例では、インクは、堆積してすぐに相変化を示す、および/または、堆積してすぐに固化する。さらには、一部の例では、インクの噴射された液滴が受容面と接触すると固化するようにプリント環境の温度を制御することができる。他の実施形態では、噴射されたインクの液滴は、受容面と接触しても固化せず、実質的に流体状態のままである。さらに、一部の例では、各層が堆積された後、堆積された材料は、次の層の堆積前に、平坦化され、さらに電磁放射線(例えば、UV線、可視光線または赤外線)で硬化される。任意選択で、平坦化および硬化の前に、いくつかの層を堆積させてもよく、あるいは複数の層を堆積および硬化させた後に、1つまたは複数の層を堆積させ、その後硬化せずに平坦化してもよい。平坦化は、分配された材料を平らにして過剰な材料を除去し、プリンタの支持プラットフォーム上に均一に滑らかな露出した面または平坦な上向きの面を作り出すことによって、材料の硬化前に1つまたは複数の層の厚さを補正する。一部の実施形態では、平坦化は、ローラなどのワイパ装置を用いて達成され、それらは1つまたは複数のプリント方向では逆回転するが、1つまたは複数の他のプリント方向では逆回転しないものであってもよい。一部の例において、ワイパ装置は、ローラと、ローラから過剰の材料を除去するワイパとを備える。さらに、一部の例では、ワイパ装置は加熱される。硬化前の噴射された本明細書に記載のインクの粘稠度は、一部の実施形態では、望ましくは、その形状を保持するのに十分でありかつ平坦化装置から過剰な粘性抵抗を受けない粘稠度であることに留意されたい。
【0081】
さらには、支持材料は、使用される場合、インクについて上述したものと合致する様式で堆積され得る。支持材料は、例えば、支持材料がインクの1つまたは複数の層に隣接または連続するように、事前に選択されたCADパラメータにしたがって堆積され得る。支持材料の噴射された液滴は、一部の実施形態では、受容面と接触すると固化または凝固する。一部の例では、堆積された支持材料も平坦化、硬化、または平坦化および硬化を受ける。本開示の目的と矛盾しない任意の支持材料を使用できる。
【0082】
インクおよび支持材料の積層堆積は、3D物品が形成されるまで繰り返され得る。一部の実施形態では、3D物品をプリントする方法は、インクから支持材料を除去することをさらに含む。
【0083】
インクの硬化は、インクの1つの層、インクの各層、インクのいくつかの層、または所望の3D物品をプリントするのに必要なすべてのインクの層の選択的堆積の後に生じ得る。一部の実施形態では、インクの1つの層、インクの各層、インクのいくつかの層、または所望の3D物品をプリントするのに必要なすべてのインクの層の選択的堆積の後に、堆積されたインクの部分的硬化が行われる。本明細書における参照目的のために、「部分的に硬化した」インクは、さらなる硬化を受けることができるものである。例えば、部分的に硬化したインクは、最大約30%が重合または架橋している、あるいは最大約50%が重合または架橋している。一部の実施形態では、部分的に硬化したインクは、最大約60%、最大約70%、最大約80%、最大約90%、または最大約95%が重合または架橋している。
【0084】
堆積されたインクの部分的硬化は、電磁放射線源でインクを照射する、またはインクを光硬化する(上記の硬化放射線での光硬化を含む)ことを含むことができる。例えば、UV線、可視光線または赤外線を放射する電磁放射線源など、本開示の目的と矛盾しない任意の電磁放射線源を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、電磁放射線源は、例えばキセノン(Xe)アークランプなど、約300nm~約900nmの波長の光を放射するものであってよい。
【0085】
さらに、一部の実施形態では、部分的硬化が行われた後に後硬化が行われる。例えば、一部の例では、後硬化は、所望の3D物品を形成するのに必要なすべてのインクの層を選択的に堆積させた後、すべてのインクの層を部分的に硬化させた後、あるいは前記のステップの両方が実施された後に行われる。さらには、一部の実施形態では、後硬化は光硬化を含む。本開示の目的と矛盾しない任意の電磁放射線源を、本明細書に記載の後硬化ステップに使用することができる。例えば、一部の実施形態では、その電磁放射線源は、部分的硬化に使用される電磁放射線源よりも高いエネルギー、低いエネルギー、またはそれと同じエネルギーを有する光源であってよい。後硬化に用いられる電磁放射線源が部分的硬化に使用されるものよりも高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を有する一部の例では、キセノン(Xe)アークランプが部分的硬化に使用され、水銀(Hg)ランプが後硬化に使用され得る。
【0086】
さらに、後硬化後、一部の例では、インクの堆積層は、少なくとも約80%が重合または架橋している、あるいは少なくとも約85%が重合または架橋している。一部の実施形態では、インクの堆積層は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%が重合または架橋している。一部の例では、インクの堆積層は、約80~100%、約80~99%、約80~95%、約85~100%、約85~99%、約85~95%、約90~100%、または約90~99%が重合または架橋している。
【0087】
B.バット重合法
SLA法などのバット重合法を用いて、本明細書に記載のインクから3D物品を形成することも可能である。したがって、一部の例では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、本明細書に記載のインクを容器内に流体状態で保持すること、および容器内のインクにエネルギー(特に、例えば硬化放射線)を選択的に印加して、インクの流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより3D物品の断面を画成する固化層を形成することを含む。さらに、本明細書に記載の方法は、インクの固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に未固化インクの新しいまたは第2の流体層を提供し、次いで容器内のインクに再度エネルギー(特に、例えば硬化放射線)を選択的に印加して、インクの新しいまたは第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、3D物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成することをさらに含むことができる。さらに、インクを固化するためにエネルギーを印加することによって、3D物品の第1の断面と第2の断面は、z方向(または、上記の上昇または下降方向に対応するビルド方向)に互いに結合または接着され得る。さらには、一部の例では、電磁放射線は、300~900nmの平均波長を有し、他の実施形態では、電磁放射線は、300nm未満の平均波長を有する。一部の例では、硬化放射線はコンピュータ制御されたレーザ光線によって提供される。さらに、一部の例では、インクの固化層を上昇または下降させることは、流体インクの容器内に配置された昇降プラットフォームを使用して行われる。本明細書に記載の方法はまた、昇降プラットフォームを上昇または下降させることによって提供される流体インクの新しい層を平坦化することも含んでいてよい。このような平坦化は、一部の例では、ワイパまたはローラによって行うことができる。
【0088】
さらに、3D物品を提供するために、前述のプロセスが所望の回数だけ繰り返され得ることをさらに理解されたい。例えば、一部の例では、このプロセスが「n」回繰り返され、ここで、nは、最大約100,000、最大約50,000、最大約10,000、最大約5000、最大約1000、または最大約500であってよい。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、容器内のインクにエネルギー(例えば、硬化放射線)を選択的に印加して、インクのn番目の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより3D物品のn番目の断面を画成するn番目の固化層を形成するステップ、インクのn番目の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+1)番目の層を提供するステップ、容器内のインクの(n+1)番目の層にエネルギーを選択的に印加して、インクの(n+1)番目の層の少なくとも一部を固化させて、3D物品の(n+1)番目の断面を画成する(n+1)番目の固化層を形成するステップ、インクの(n+1)番目の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面に、未固化インクの(n+2)番目の層を提供するステップ、および3D物品を形成するために前述のステップを繰返し続けることを含んでいてよい。さらに、インクの層にエネルギー(例えば、硬化放射線)を選択的に印加するステップなど、本明細書に記載の方法の1つまたは複数のステップを、コンピュータ可読フォーマットの3D物品の画像にしたがって行うことができることを理解されたい。ステレオリソグラフィを使用する3Dプリントの一般的な方法は、特に、米国特許第5,904,889号および同第6,558,606号にさらに記載されている。
【0089】
上記のプリントプロセスを実行することにより、本明細書に記載のインクから、高い特徴解像度を有するプリント3D物品を提供することができる。本明細書での参照目的のために、物品の「特徴解像度(feature resolution)」とは、物品の最小の制御可能な物理的特徴サイズであり得る。物品の特徴解像度は、マイクロメートル(μm)などの距離の単位、または1インチ当たりのドット数(dpi)で記載することができる。当業者に理解されるように、より高い特徴解像度は、より高いdpi値に該当し、またμmでのより短い距離に該当する。一部の例では、本明細書に記載のインクを堆積または固化させることによって形成される物品は、高温での解像度を含めて、約500μm以下、約200μm以下、約100μm以下、または約50μm以下の特徴解像度を有することができる。一部の実施形態では、物品は、約50μmと約500μmの間、約50μmと約200μmの間、約50μmと約100μmの間、または約100μmと約200μmの間の特徴解像度を有する。それに対応して、一部の例では、本明細書に記載の物品は、少なくとも約100dpi、少なくとも約200dpi、少なくとも約250dpi、少なくとも約400dpi、または少なくとも約500dpiの特徴解像度を有する。一部の例では、物品の特徴解像度は、約100dpiと約600dpiの間、約100dpiと約250dpiの間、または約200dpiと約600dpiの間である。
【0090】
上記のようなバット重合法において、上記のセクションIIAで説明したように、インクは部分的に硬化され得る。例えば、一部の実施形態では、容器内のインクにエネルギーを選択的に印加してインクの流体層の少なくとも一部を固化させることは、インクの流体層の少なくとも一部を部分的に硬化させることを含んでいてもよい。他の実施形態では、インクの流体層の少なくとも一部の部分的硬化は、インクの第1の層が提供および固化された後、インクの第2の層が提供または固化される前または後、あるいはインクの1つ、いくつか、またはすべてのその後の層が提供または固化される前または後に、起こり得る。
【0091】
さらに、本明細書に記載のバット重合法の一部の実施形態では、部分的硬化の後、あるいは所望の3D物品が形成された後に、上記のセクションIIAで説明したような後硬化が行われてもよい。所望の3D物品は、例えば、CADファイルの設計に対応する物品であり得る。
【0092】
III.プリント3D物品
別の態様では、プリントされた3D物品(プリント3D物品)が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、プリント3D物品は、本明細書に記載のインクから形成される。上記のセクションIに記載のいずれのインクを使用してもよい。例えば、一部の例では、インクは、20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;10~40重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;0.1~5重量%の光開始剤;任意選択で、最大40重量%の、上記のオリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料;および任意選択で、最大10重量%の1つまたは複数の追加の非硬化性成分を含み、重量パーセントはインクの総重量に基づいており、前述のすべての成分を合わせた合計量は100重量%である。さらに、一部の例では、本明細書に記載のプリント3D物品は、主にポリ(メタ)アクリレートポリマーネットワークから形成されている。
【0093】
3Dプリント用のインクのいくつかの実施形態は、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0094】
実施例1
インクの調製方法
本明細書に記載のいくつかの実施形態によるインクを以下のように調製した。具体的には、様々なインクを調製するために、以下の表I~IVの成分を反応容器内で混合して、表に規定される特定のインクを形成した。表I~IVにおける様々な成分の量は、インクの総重量に基づき、特定されたインクの各成分の重量%を意味する。各インクについて、適切な混合物を攪拌しながら約75~85℃の温度に加熱した。混合物が実質的に均質な溶融状態に達するまで、加熱および攪拌を続けた。その後、溶融混合物を濾過した。次に、濾過した混合物を周囲温度まで冷却した。いくつかの測定された特性の値も以下の表に提供する。測定値の単位は次のとおりである。体積重合収縮について:%。ノッチ付きアイゾット衝撃強度について:J/m。引裂強度について:kN/m。表1~IVにおいて、ダッシュ(--)は、成分が存在しないか、または値がここに報告されていないことを示す。ただし、明確にするために、インク1~14のすべてが、本明細書で広範に説明されている「本発明による」ものである。さらに、インク1~14は、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0095】
実施例2
オリゴマー硬化性材料および追加の硬化性材料の量の変化
表1のインク1~3を実施例1の手順に従って調製した。オリゴマー硬化性材料の量は、40~50重量%で変化したが、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーおよび光開始剤の量は一定のままであった。インクの残余は、主に、オリゴマー硬化性材料およびシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる追加の硬化性材料から形成された。追加の硬化性材料の量は、27~37重量%で変化した。インク1~3のそれぞれにおけるオリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、および脂肪族ウレタントリアクリレートのほぼ等量の混合物であった。インク1~3のそれぞれにおけるシクロカーボネート(メタ)アクリレートは、式(A2)の構造を有するモノマーであった。インク1~3の追加の硬化性材料は、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、トリメチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、およびトリメチルシクロヘキシルアクリレートの組み合わせであった。光開始剤はIrgacure 819であった。
【表1】
【0096】
実施例3
オリゴマー硬化性材料種の変化
表IIのインク4~6を実施例1の手順に従って調製した。インク4~6では、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、光開始剤、および追加の硬化性材料の量は実質的に一定のままであった。さらに、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーおよび光開始剤の化学的同一性(chemical identity)は同じままであった。モノマー硬化性材料のタイプもインク4~6で同じままであった。具体的には、シクロカーボネート(メタ)アクリレートは、式(A2)の構造を有するモノマーであった。光開始剤はIrgacure 819であった。追加の硬化性材料は、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、トリメチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、およびトリメチルシクロヘキシルアクリレートのうちの2つ以上の組み合わせであった。
【0097】
しかしながら、オリゴマー硬化性材料のタイプまたは種類は、インク4~6のそれぞれで異なっていた。特に、オリゴマー硬化性材料は以下の通りであった。インク4:Tgが-60℃でかつ50℃での動的粘度が200,000cPの脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートと、Tgが79℃でかつ50℃での動的粘度が150,000cPのポリエステルウレタンアクリレートと、Tgが32℃でかつ50℃での動的粘度が約24,000cPの脂肪族ウレタンジアクリレートとの、15:15:20(重量による)の混合物。インク5:Tgが-60℃でかつ50℃での動的粘度が200,000cPの脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートと、Tgが75℃でかつ60℃での動的粘度が約6,800cPのポリエーテルウレタンメタクリレートとの、15:35(重量による)の混合物。インク6:Tgが75℃でかつ60℃での動的粘度が約6,800cPのポリエーテルウレタンメタクリレートのみ。
【表2】
【0098】
実施例4
追加の硬化性材料種の変化
表IIIのインク7~9を実施例1の手順に従って調製した。インク7~9では、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、光開始剤、および追加の硬化性材料の量は実質的に一定のままであった。さらに、オリゴマー硬化性材料、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー、および光開始剤の化学的同一性は同じままであった。具体的には、オリゴマー硬化性材料は、Tgが-60℃でかつ50℃での動的粘度が200,000cPの脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートと、Tgが79℃でかつ50℃での動的粘度が150,000cPのポリエステルウレタンアクリレートとの、15:15(重量による)の混合物であった。シクロカーボネート(メタ)アクリレートは、式(A2)の構造を有するモノマーであった。光開始剤はIgacure 819であった。
【0099】
ただし、追加の硬化性材料のタイプまたは種類は、インク7~9のそれぞれで異なっていた。特に、追加の硬化性材料は以下の通りであった。インク7:2-フェノキシエチルアクリレートと、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレートとの、5:27(重量による)の混合物。インク8:イソボルニルアクリレートと、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレートとの、5:27(重量による)の混合物。インク9:2-フェノキシエチルアクリレートと、イソボルニルアクリレートと、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレートとの、5:5:22(重量による)の混合物。
【表3】
【0100】
実施例5
シクロカーボネート(メタ)アクリエートモノマーの量の変化
インク10~14を実施例1の手順に従って調製した。表IVにおいて、シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーの量は15~35重量%で変化したが、このモノマーの化学的同一性は同じままであった(式(A2)の構造に対応)。さらに、オリゴマー硬化性材料、追加の硬化性材料、および光開始剤の量は、本明細書に記載の範囲内のままであった。
【0101】
インク10におけるオリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、および脂肪族ウレタントリアクリレートの混合物であった。インク11では、オリゴマー硬化性材料は、脂肪族ウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、およびポリエステルウレタンアクリレートの混合物であった。インク12では、オリゴマー硬化性材料は、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、および脂肪族ウレタントリアクリレートのほぼ等量の混合物であった。インク13および14のオリゴマー硬化性材料は、ポリエステルウレタンアクリレートであった。
【0102】
インク10~14における追加の硬化性材料は、2-フェオキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、トリメチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、およびトリメチルシクロヘキシルアクリレートの組み合わせであった。光開始剤はIrgacure 819であった。
【表4】
【0103】
上記のデータによって示されるように、本明細書に記載されおよび特許請求されるインクは、インク1~14の正確な実施形態のみに限定されないことを理解されたい。そうではなく、本開示の教示に基づいて、当業者は他の特定のインクを処方することができる。
【0104】
いくつかの追加の非限定的な実施形態を以下に提供する。
【0105】
実施形態1.三次元プリントシステムで使用するためのインクであって、インクの総重量に基づき、
20~60重量%のオリゴマー硬化性材料;
15~50重量%のシクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマー;および
0.1~5重量%の光開始剤
を含み、
オリゴマー硬化性材料は、500~6,000の分子量を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含み、
シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーは、式(A1)の構造:
【化7】
(式中、
R
1は、線状または分枝状のC1~C6アルキレン部分、アルキレンカーボネート部分、アルキレンエステル部分、およびアルキレンアミド部分からなる群より選択され;
R
2はHまたはCH
3である)
を有する、インク。
【0106】
実施形態2.オリゴマー硬化性材料が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で125,000~250,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む、実施形態1のインク。
【0107】
実施形態3.オリゴマー硬化性材料が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に50℃で150,000~200,000cPの動的粘度を有する1つまたは複数のエチレン性不飽和種を含む、実施形態2のインク。
【0108】
実施形態4.オリゴマー硬化性材料が、1つまたは複数の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートを含む、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0109】
実施形態5.オリゴマー硬化性材料が、インクの総重量に基づき、25~50重量%の量でインク中に存在する、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0110】
実施形態6.R1が、線状または分枝状のC1~C4アルキレン部分である、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0111】
実施形態7.R2がHである、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0112】
実施形態8.R1がCH2であり、R2がHである、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0113】
実施形態9.シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーが、インクの総重量に基づき、20~30重量%の量でインク中に存在する、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0114】
実施形態10.前記オリゴマー硬化性材料および前記シクロカーボネート(メタ)アクリレートモノマーとは異なる1つまたは複数の追加の硬化性材料をさらに含む、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0115】
実施形態11.追加の硬化性材料が追加のモノマー硬化性材料を含む、実施形態10のインク。
【0116】
実施形態12.追加の硬化性材料が追加のオリゴマー硬化性材料を含む、実施形態10のインク。
【0117】
実施形態13.少なくとも1つの着色剤をさらに含む、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0118】
実施形態14.少なくとも1つの充填剤をさらに含む、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0119】
実施形態15.少なくとも1つの禁止剤、少なくとも1つの安定剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0120】
実施形態16.未硬化インクの動的粘度が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、50℃で100cPより大きい、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0121】
実施形態17.未硬化インクの動的粘度が、ASTM D2983に準拠して測定した場合に、50℃で100cPより大きくかつ5000cP未満である、実施形態16のインク。
【0122】
実施形態18.硬化したときに、未硬化のときのインクと比較して5%以下の体積重合収縮を示し、体積重合収縮はASTM D792に準拠して測定される、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0123】
実施形態19.硬化したときに、ASTM D256に準拠して測定した場合に50~200J/mのノッチ付きアイゾット衝撃強度を示す、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0124】
実施形態20.硬化したときに、ASTM D624に準拠して測定した場合に20~200kN/mの引裂強度を示す、上記の実施形態のいずれかのインク。
【0125】
実施形態21.三次元物品をプリントする方法であって、
流体状態のインクの層を基体上に選択的に堆積させて、三次元物品を形成することを含み、インクは、実施形態1~20のいずれかのインクを含む、方法。
【0126】
実施形態22.インクを光硬化させることをさらに含む、実施形態21の方法。
【0127】
実施形態23.三次元物品をプリントする方法であって、
インクを容器内に流体状態で保持するステップ;
容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第1の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第1の断面を画成する第1の固化層を形成するステップ;
第1の固化層を上昇または下降させて、容器内の流体インクの表面にインクの第2の流体層を提供するステップ;および
容器内のインクにエネルギーを選択的に印加して、インクの第2の流体層の少なくとも一部を固化させ、それにより、物品の第2の断面を画成する第2の固化層を形成するステップであって、第1の断面と第2の断面はz方向に互いに結合されている、ステップ
を含み、
インクは、実施形態1~20のいずれかのインクを含む、方法。
【0128】
実施形態24.容器内のインクにエネルギーを選択的に印加することが、インクを光硬化させることを含む、実施形態23の方法。
【0129】
実施形態25.プリント方法が、20~60または45~55mm/時間のプリント速度を有する、実施形態23の方法。
【0130】
実施形態26.実施形態1~20のいずれかのインクから形成されたプリント三次元物品。
【0131】
ここで参照されるすべての特許文書は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明の様々な目的を達成するために、本発明の様々な実施形態を説明してきた。これらの実施形態は、本発明の原理を単に説明するものであることを認識すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には数多くの変更および適応が容易に明らかになるであろう。