IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロ・モーション・インコーポレーテッドの特許一覧

特許7385012流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計
<>
  • 特許-流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計 図1
  • 特許-流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計 図2
  • 特許-流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計 図3
  • 特許-流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計 図4
  • 特許-流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】流れに依存しない自動ゼロ推定を有する磁気流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/60 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01F1/60
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022516024
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020049432
(87)【国際公開番号】W WO2021050383
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】16/570,328
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592225504
【氏名又は名称】マイクロ・モーション・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Micro Motion Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フォス,スコット・アール
(72)【発明者】
【氏名】クライン,アンドリュー・ティー
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8590361(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第2735852(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0071264(US,A1)
【文献】特開2008-224410(JP,A)
【文献】特開2004-28928(JP,A)
【文献】特開平4-104014(JP,A)
【文献】特開昭49-114289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58- 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気流量計であって、
プロセス流体流内に磁場を生成するように構成された少なくとも1つのコイルと、
前記磁場に応答して前記プロセス流体の流れ内の起電力を検出するように構成された一対の電極と、
前記少なくとも1つのコイルに結合され、且つ少なくとも1つのコイルに前記磁場を生成させるように構成されたコイル駆動回路と、
前記1対の電極に動作可能に結合され、且つ前記検出された起電力の表示を提供するように構成された測定回路と、
前記測定回路及び前記コイル駆動回路へ結合されたプロセッサであって、前記コイル駆動回路を複数のコイル駆動周波数の1つで動作させるように構成された前記プロセッサであり、また、プロセス流体が流れている間に且つ前記コイル駆動回路が第1の周波数で動作している間に、複数の測定サンプルを取得するように構成された前記プロセッサであり、前記第1のコイル駆動周波数よりも高い第2のコイル駆動周波数で動作するための自動ゼロの推定値を生成し、且つ前記自動ゼロの推定値を前記第2のコイル駆動周波数で動作中に使用するために保存するように構成されている前記プロセッサと、
を備えている、
上記磁気流量計。
【請求項2】
前記磁気流量計は、パルス式DC磁気流量計である、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項3】
前記複数のコイル周波数は、低周波数及び高周波数を含み、高周波数は低周波数よりも高い周波数であり、且つ、前記プロセッサは、低周波での動作中に複数の低周波サンプル及び複数の高周波サンプルを取得するように構成されている、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項4】
各高周波の正極性電圧のサンプルは、各低周波の正極性電圧のサンプルが得られる前に、測定波形の1部分で得られる、請求項3に記載の磁気流量計。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記磁気流量計の最高のコイル駆動周波数を決定するために、前記各低周波サンプルに対して前記各高周波サンプルのタイミングを変更するように構成されている、請求項4に記載の磁気流量計。
【請求項6】
各高周波の負極性電圧のサンプルは、各低周波の負極性電圧のサンプルの前に前記測定波形の1部分で得られる、請求項4に記載の磁気流量計。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記各低周波の正極性電圧のサンプル、及び、前記各低周波の負極性電圧のサンプルに基づいて、プロセス流体出力を生成するように構成されている、請求項6に記載の磁気流量計。
【請求項8】
前記プロセッサは、複数の測定サイクルにわたる各高周波の正極性電圧のサンプルを組み合わせるように、且つ、複数の測定サイクルの各高周波の負極性電圧のサンプルを組み合わせるように構成されている、請求項6に記載の磁気流量計。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記各高周波の正極性電圧のサンプル、前記各高周波の負極性電圧のサンプル、前記各低周波の正極性電圧のサンプル、及び、前記各低周波の負極性電圧のサンプル、の組み合わせに基づいて、自動ゼロ推定値を生成するように構成されている、請求項8に記載の磁気流量計。
【請求項10】
前記複数の高周波サンプルは、複数の測定サイクルにまたがる期間にわたって、組み合わされる、請求項3に記載の磁気流量計。
【請求項11】
前記プロセッサは、約90秒の期間にわたって、前記各高周波サンプルを平均化するように構成されている、請求項9に記載の磁気流量計。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記複数の測定サンプルに基づいて、プロセス流体出力を生成するように構成されている、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項13】
前記プロセッサは、複数の自動ゼロ推定値を経時的に記憶するように、且つ、前記各自動ゼロ推定値の経時的な変化に基づいて診断表示を提供するように、構成されている、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項14】
前記複数のコイル駆動周波数は、少なくとも3つのコイル駆動周波数を含んでいる、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項15】
磁気流量計を動作させる方法であって、
前記磁気流量計の少なくとも1つのコイルを用いて、流れているプロセス流体中に交流磁場を生成し、前記交流磁場が第1周波数を有しているステップ、
前記交流磁場が前記第1周波数で動作している間に、前記流れているプロセス流体から起電力測定値を取得するステップ、
前記磁気流量計のプロセッサを用いて、前記交流磁場が前記第1の周波数で動作している間で、且つ、前記プロセス流体が流れている間に、得られた前記起電力測定値に基づいて、第2周波数に対する自動ゼロ推定値を計算するステップ、及び、
前記自動ゼロ推定値を前記磁気流量計のメモリに保存するステップ、
を包含している、
上記方法。
【請求項16】
前記起電力測定値に基づいてプロセス流体出力を提供するステップ、を更に包含している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記交流磁場を、前記第1周波数よりも高い前記第2周波数に切り替えるステップ、前記交流磁場が第2周波数で動作している間に、複数の第2周波数の起電力測定値を取得するステップ、並びに、前記各第2周波数の起電力測定値及び前記保存された自動ゼロ推定値に基づいて、プロセス流体出力を提供するステップ、を更に包含している、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1周波数での動作と前記第2周波数での動作との間が、連続的に切り替えられるステップ、を更に包含している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記交流磁場が前記第2周波数で動作している間に、且つ、前記プロセス流体が流れている間に、得られた前記各起電力測定値に基づき、前記磁気流量計のプロセッサを用いて、第3周波数に対する第2の自動ゼロ推定値を計算するステップ、及び、前記第2の自動ゼロ推定値を保存するステップ、を更に包含している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1周波数は、前記第2周波数の半分である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記交流磁場を、前記第2周波数よりも高い前記第3周波数に切り替えるステップ、前記交流磁場が前記第3周波数で動作している間に、複数の第3周波数の起電力測定値を取得するステップ、並びに、前記各第3周波数の起電力測定値及び前記保存された第2の自動ゼロ推定に基づいて、プロセス流体出力を提供するステップ、を更に包含している、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁気流量計(即ちマグメータ)は、電磁効果であるファラデーの法則を適用することによって流量を測定する。磁気流量計は、磁場巻線に励磁電流を流すことにより1又は複数のコイルにエネルギーを与え、電気的に絶縁された導電性のプロセス流体の流れを横切る磁場を生成する。起電力(EMF)は、流れるプロセス流体が磁場を通過することによって生成される。流体全体及び残りのプロセス流体に関するこの誘導電圧(電位)は、流れるプロセス流体に接触する1又は複数の導電性電極によって容易に測定されることができる。体積流量は、流速と流管の断面積に比例する。流速は電極電位(EV)に正比例し、誘導磁場強度(B)に正比例する。誘導磁場強度は、印加磁場(H)に比例すると仮定され、これは励磁電流の大きさに直接関連している。このようにして、直接的な相関関係が、測定された電極電位と指定された体積流量との間に与えられる。
【0002】
磁気流量計は、様々な導電性及び半導電性の流体の流量測定環境で有用である。特に、水性流体、イオン性溶液、及びその他の導電性流体の流れはすべて、磁気流量計を用いて測定できる。従って、磁気流量計は、水処理施設、飲料及び衛生食品の製造、化学処理、高純度の医薬品製造、及び危険で強制的な処理施設において用いられうる。しかし、一部の環境では信号ノイズの影響を受けやすい。信号ノイズに対する応答の優れた電磁流量計を提供することは、そのようなノイズの多い環境で用いる場合に、流量出力の精度を向上させる。
【発明の概要】
【0003】
磁気流量計は、プロセス流体流内に磁場を生成するように構成された少なくとも1のコイルを含む。一対の電極は、上記磁場に応答して上記プロセス流体流内の起電力を検出するように構成されている。コイル駆動回路は、上記少なくとも1のコイルに結合され、少なくとも1のコイルに上記磁場を発生させるように構成されている。測定回路は、上記一対の電極に動作可能に結合され、上記検出された起電力の表示を提供するように構成されている。プロセッサは、上記測定回路及び上記コイル駆動回路に結合されている。上記プロセッサは、上記コイル駆動回路を複数のコイル駆動周波数のうちの1つで動作させるように構成されている。上記プロセッサはまた、プロセス流体が流れている間、且つ上記コイル駆動回路が第1周波数で動作している間に、複数の測定サンプルを取得するように構成されている。上記プロセッサは、上記第1コイル駆動周波数よりも高い第2コイル駆動周波数での動作の自動ゼロ推定値を生成するように、且つ上記第2コイル駆動周波数での動作中に用いるために上記自動ゼロ推定値を保存するように、構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本発明の各実施形態による磁気流量計がそこで有用である環境の概略図である。
図2】本発明の1実施形態による磁気流量計のブロック図である。
図3】磁気流量計のコイルを駆動している間に、通常いつ測定が行われるかを示す信号チャートである。
図4】本発明の1実施形態に従って、低周波の測定及び高周波の測定がいつ行われるかを示す信号チャートである。
図5】本発明の1実施形態による磁気流量計を動作させる方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1は、磁気流量計102に対する典型的な環境100を示す。磁気流量計102は、図式的に線分104で示されたプロセス配管に結合され、上記配管はまた制御弁112に結合している。磁気流量計102は、プロセス内の配管104を通過するプロセス流体の流れに対して流量出力を提供するように構成される。このような流体の例には、化学、パルプ、製薬、及びその他の流体処理プラントのスラリーや液体が含まれる。
【0006】
磁気流量計102は、流管108に接続された電子機器ハウジング120を含む。磁気流量計102の出力は、プロセス通信接続部106を介して制御器又は指示器までの比較的長距離にわたる送信のために構成されている。通常の処理プラントにおいて、通信接続部106は、デジタル通信プロトコル又はアナログ通信信号のいずれかでありうる。同じ又は追加のプロセス情報は、無線通信、パルス幅又は周波数出力、又は離散的な入力/出力(DI/DO)を介して利用可能にされることができる。システム制御器110は、人間のオペレータに対して流れ情報を表示できるのみならず、制御弁(例えば弁112)を用いてプロセスを制御するために、プロセス通信接続部106を介して制御信号を提供することができる。
【0007】
図2は、本発明の各実施形態を特に適用されることができる磁気流量計のブロック図である。磁気流量計102は、流管アセンブリ108を通る導電性プロセス流体の流れを測定する。コイル122は、コイル駆動回路130から印加された励磁電流に応答して、外部磁場を流体流に印加するように構成されている。起電力センサー(電極)124は、電気的に流体の流れと結合し、且つ印加された磁場、流体の速度、及びノイズのために流体流内で生成された起電力に関連する起電力信号出力134を増幅器132に提供する。アナログ-デジタル変換器142は、デジタル化された起電力信号210を流量計電子機器143のマイクロプロセッサシステム148へ提供する。マイクロプロセッサ148は、流体速度に関連する出力152を提供するために、ハードウエア、ソフトウエア、又はそれらの組み合わせによって、起電力出力134に関するデジタル信号処理機能を提供するように構成されることができる。マイクロプロセッサ148は、コイル駆動回路130への制御出力131を生成し、複数の異なる動作周波数のうちの1つで動作させる。1実施形態において、複数の異なる動作周波数は、低周波及び高周波を含み、高周波は低周波よりも高い。メモリ150は、マイクロプロセッサ148の動作を制御するためのプログラミング命令を含む。さらに、以下でより詳細に説明されるように、信号処理は、改善されたノイズ除去を提供することができる。
【0008】
マイクロプロセッサ148は、ファラデーの法則の適用に記載されているように、起電力出力134と流速との間の関係(式1)に従って、流管108を通る流体の流速を計算する。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、Eは起電力出力134に関連する信号出力152、Vは流体の速度、Dは流管108の直径、Bはプロセス流体に誘導された磁場の強さ、そしてkは比例定数である。デジタル-アナログ変換器158は、流量計電子機器143のマイクロプロセッサ148に結合され、いくつかの実施形態においては、通信バス106へ結合するためのアナログ送信出力160を生成することができる。デジタル通信回路162は、デジタル送信出力164を生成することができる。アナログ出力160及び/又はデジタル出力164は、必要に応じて、プロセス制御器又はモニタへ結合されることができる。
【0011】
多くの磁気流量計のアプリケーションでは、かなりのレベルの1/f又はピンクノイズ(pink noise)を有する。このような場合の信号対雑音比を改善する1つの方法は、コイル駆動周波数を上げることである。通常、コイル駆動周波数を2倍にすると、信号対雑音比が2倍になる。しかし、コイル駆動周波数が高いと、磁場と電極回路を変化させることに起因する流れ内のオフセットに問題が生じる可能性もある。通常、自動ゼロトリムは、オフセットを修正するトリムを実行するために、流路がゼロフロー(流れ停止)状態にある間に実行される。1つの困難は、ゼロフロー状態で自動ゼロ動作を実行するために、多くの操作がプロセス流体の流れを簡単には停止できないことである。
【0012】
以下に説明する各実施形態によれば、流管内におけるゼロフロー状態を必要とせずに、推定された自動ゼロ機能を実行することができる磁気流量計が提供される。これは、オペレータがプロセスを停止してゼロフローで自動ゼロのトリム動作を実行することが難しい場合が多いので、役に立つ。自動ゼロのトリムを実行する目的は、磁場と電極測定回路との間の寄生相互作用によって生成された高コイル周波数のオフセットを除去することである。多くの場合、オペレータは、そのような自動ゼロのトリム動作を実行するために、予定された停止を数か月待つことを余儀なくされる。このようにして、オペレータは、ノイズの多いフローで実行を継続するか又は高周波でのコイル動作に切り替えるかの難しい選択を強いられることがよくあり、その結果、非常に重大である可能性のあるオフセットエラーを発生させることがある。
【0013】
本明細書で提供される実施形態は、一般に、流れがまだ流路を通って移動している間、低いコイル周波数で動作している間に高周波での自動ゼロのオフセットの推定値を提供する。低いコイル周波数で動作している間に、磁気流量計は、高周波の測定位置での電極信号も測定する。これにより次に、高周波での自動ゼロのオフセットを解消するための十分な情報が提供される。これは、上記オフセットをメモリに保存し、且つ磁気流量計が、精度を維持しつつ且つ正確な自動ゼロのトリムのパラメータのためにフロー停止を必要とせずに、より高いコイル駆動周波数に切り替えることを可能にする指令されたトリムルーチンでありうる。より高いコイル駆動周波数に切り替えると、ノイズ性能が顕著に向上する場合がある。
【0014】
パルス式直流(DC)磁気流量計は、一般に、方形波の磁場を生成するようにコイルを駆動することによって流量を測定する。電極電圧波形の高さは、一般的に流速に比例する。いくつかの磁気流量計(例えば、ミネソタ州エデンプレーリーのEmerson Automation Solutions社から入手可能な、商品名8707Hi-Signalで販売されているもの)は、低周波数と高周波数の両方のコイル駆動機能を提供する。例示的な低周波数及び高周波数は、それぞれ5Hz及び37.5Hzでありうる。しかし、11Hz、18.75Hz、55Hz、及び75Hzを含む周波数の領域を使用されることができる。通常、電極電圧の高さを測定するために、波形の20%が平均化される。
【0015】
図3は、信号チャートであって、磁気流量計のコイルを駆動している間のいつの時点に測定が通常行われるかを示している。低周波の測定位置(即ち、信号中のミリ秒単位の時間を示す)は、参照番号300で図式的に示されている。参照されるように、位置300は、一般に、信号が比較的定常状態に実質的に落ち着いた後に生じる。これは、低周波の測定のために使用される波形の1部分である。また参照されるように、低周波の測定ウィンドウは、一般に、正極性の電圧状態(LF_pos)の間に生じる低周波の正極性の電圧ウィンドウと、負極性の電圧状態(LF_neg)の間に生じる低周波の負極性の電圧ウィンドウを有する。
【0016】
本明細書で説明される実施形態は、一般に、低周波での動作中に高周波でのオフセットの推定値を生成するために、低周波での動作のオフセットと高周波での動作との間の関係を利用する。低いコイル駆動周波数のオプション(式2)と高いコイル駆動周波数のオプション(式3)の両方のフロー方程式を以下に示す。
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
センサーは、LFZeroOffsetが基本的にゼロフィート/秒になるように設計及び校正されている。さらに、LFgainとHFgainは、製造中に構成された又は取得されたセンサーの校正番号から知ることができる。従って、高周波のゼロのオフセットは、次の式で表わされるように解消することができる。
【0020】
【数4】
【0021】
通常の、高周波の自動ゼロの動作は、ゼロフロー状態を提供するためにユーザーがプロセスを停止する必要がある。しかし、高周波のゼロのオフセットはそのような流量の影響を受けないので、電極信号のノイズを処理するために、長期間(個々の測定サイクルと比較して)にわたって高度にフィルタリング及び測定することができる。1例において、高周波サンプルが測定され、約90秒の期間にわたって平均化される。次に、高周波のゼロ値がメモリ150に記憶され、ユーザーは、ゼロフロー状態を生成することなく、正確な高周波動作へ容易に変更することができる。さらに、高周波の自動ゼロの動作は、磁気流量計が低周波で動作し且つプロセス流体の流量測定を提供している間に発動させることができる。
【0022】
図4は、参照符号300、302で図式的にラベル付けされた低周波及び高周波の測定の位置を示す。図示されたように、高周波の測定は、低周波の測定に対して、各測定サイクルにおける全測定期間(正極性電圧及び負極性電圧の期間)の約4分の1だけ先行する。このようにして、高周波の測定位置302は、信号が実質的に安定化する前に出現する。複数の高周波の測定位置は固定されているが、1実施形態において、それらはまた遷移状態の方へ戻されることができる。そうすることで、自動ゼロ値を制限することにより、センサーがどのくらい速く動けるか(即ち、最高のコイル駆動周波数)を決定するのに役立ちうる。いくつかのセンサーでは、これにより、校正された高周波数の2倍の速度での動作が可能になり、ノイズ除去がさらに改善される可能性がある。
【0023】
図5は、本発明の1実施形態による磁気流量計を動作させる方法の流れ図である。方法450は、ブロック402で始まり、そこではマイクロプロセッサ148又は他の適切な回路が、コイル駆動回路を低周波の値に設定する。1実施形態では、この値は5Hzである。次に、ブロック404で、起電力波形の低周波位置で検出されたものからサンプルが取得される(図4に示されている)。低周波位置は、1実施形態において、波形の約20%を含み、且つ波形が実質的に安定している場所で発生する。複数のサンプルは、参照符号406に示されるように起電力を複数回サンプリングすることによって、参照符号408に示されるように複数のサンプルを抽出するために波形全体をデジタル化し且つそれを分析することによって、又は参照符号410に示されているように別の適切な技術を介して取得されることができる。
【0024】
ブロック412で、複数の高周波サンプルが、低周波数での動作中に且つプロセス流体の流れが生じている間に取得される。ブロック412で得られたサンプルは、平滑化された値又は平均を得るために、好ましくは他の測定サイクルからの高周波サンプルと組み合わされる。1例において、高周波サンプルは、参照符号414に示されているように、定義された時間間隔にわたって平均化される。1つの適切な時間間隔は90秒である。ブロック418が完了すると、平均又はHF_posと組み合わされた値は、平均又はHF_negと組み合わされた値ともに提供される。しかし、様々な高周波サンプルと組み合わせるための別の間隔及び/又は別の技術が、参照符号416で示されるように用いられうる。
【0025】
ブロック418で、組み合わされたHF_pos及びHF_negの値は、高周波サンプルと高周波及び低周波での動作の両方の既知の利得値とが組み合わされて、高周波でのゼロのオフセットの推定値を生成する。この推定値は、上記の式に従って、又は様々な計算及び/又は手法を用いて生成されることができる。ブロック420で、高周波での自動ゼロの推定値は、後続の高周波での動作に対して使用されるメモリ(例えば、メモリ150)に記憶される。
【0026】
自動ゼロの推定が終了したとき、又は実行中に、マイクロプロセッサは、参照符号422に示されるように、低コイル周波数でプロセス流量出力を提供するために、低周波数サンプルを評価し続けうる。追加的又は代替的に、高周波での推定動作が完了すると、磁気流量計は、高周波での動作に移行し、且つ参照符号424に示されるように、メモリに格納された格納高周波での自動ゼロの推定値を用いうる。
【0027】
図5に関して記載された実施形態は2つの周波数(低/高)を有するが、各実施形態は3以上の周波数で実施できることが明確に意図されている。さらに、高周波での動作に対する自動ゼロの推定値を取得するために低周波での動作を用いる代わりに、各実施形態では、低周波での動作の自動ゼロの推定値を取得するために、超低周波数(例えば、上記低周波数の半分)を用いることもできる。さらに、そのような各実施形態は、高周波での動作での自動ゼロの推定値を取得するために、依然として低周波での動作を用いることができる。
【0028】
本明細書に記載の実施形態は、上記の特定の方程式に限定されず、低周波でのコイル動作を用いて高周波でのコイルのオフセットを推定することができる値を提供又は取得する何等かの適切な技術又はアルゴリズムを用いることができる。さらに、いくつかの特定の動作コイル周波数が開示されているが、当業者は、本明細書に記載の各実施形態が任意の適切なコイル駆動周波数で実施されることができることを理解するであろう。
【0029】
理解できるように、プロセス流体の流れを停止する必要なしに自動ゼロの推定値を生成する能力によって、自動ゼロの動作は頻繁に実行されることができる。さらに、自動ゼロの推定値は、自動ゼロの値に大きな変化があったことを検出するために、保存され分析されることができる。このことは、導電率、配線の大きな変化、又はセンサーが別の送信機に移動された場合に生じる可能性がある。このような場合に、磁気流量計は、自動ゼロを実行すべきこと、又は他の適切な是正措置を取るべきことをユーザーに警告することができるであろう。
【0030】
本発明は好ましい各実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、変更が形態及び細部に加えられうることを認識するであろう。例えば、上記の各実施形態は、一般に、磁気流量計が高周波での動作に切り替わるときに使用するための自動ゼロの推定値を取得して保存するが、各実施形態では、高周波での自動ゼロ値を計算及び更新するために、低い及び高いコイル駆動周波数の間で連続的に切り替える磁気流量計を提供するように用いられうることが明確に意図されている。これは、自動ゼロの推定の動作を実行するためにいかなるユーザーの操作も必要とせずに、基本的に高周波での性能を与える。
図1
図2
図3
図4
図5