(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】ロール接続部
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20231114BHJP
B21B 27/00 20060101ALI20231114BHJP
B21B 31/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C23C2/00
B21B27/00 C
B21B31/08 A
(21)【出願番号】P 2022529531
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2019060553
(87)【国際公開番号】W WO2021116727
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノンヌ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ブリオー,ポーリーヌ
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-030310(JP,A)
【文献】特開平10-167444(JP,A)
【文献】特表2009-520883(JP,A)
【文献】国際公開第2005/031178(WO,A1)
【文献】特開平07-188885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00 - 2/40
B21B 27/00 - 35/14
F16C 13/00 - 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続溶融めっき装置(1)であって、内部に溶融金属浴(3)と、シンクロール(4)と、少なくとも1本のガイドロール(5)とを備えるタンク(2)を含み、少なくとも1本の前記ガイドロール(5)は軸受(6)により支持され、前記軸受(6)は少なくとも接続部分(7)及びブッシング(8)から構成され、前記接続部分(7)は3つの連続する部分:
-ブッシング(8)と接続する第1の部分(9)と、
-前記ロール5の側面に取り付けられた少なくとも1つの固定手段(11)を具備する第2の部分(10)と、
-湾曲した山形部(13)を有する平行六面体部分を有し、前記ロール(5)内部に挿入される、第3の部分(12)と、
を備え、
前記接続部分(7)は、前記ロール(5)よりも高い熱膨張係数を有する材料からできており、前記熱膨張係数は、前記第3の部分(12)及び前記ロール(5)が溶融金属浴(3)内にある場合に、熱膨張により圧入嵌めされるように選択される、連続溶融めっき装置(1)。
【請求項2】
前記ロール(5)は、炭素繊維又はセラミック繊維で強化された、少なくとも1種類の炭素マトリックス又はセラミックマトリックス製である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロールは、炭素繊維又はセラミック繊維で強化された2種類の異なる炭素マトリックス製である、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記接続部分(7)は金属製である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記固定手段(11)はねじである、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の部分(10)は、少なくとも3つの固定手段(11)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1
~6に説明される装置における取付方法であって、前記溶融金属が温度T
溶融金属であり、前記ロール(5)のうち少なくとも1本は、以下の工程:
-接続部分(7)の前記第3の部分(12)を前記ロール(5)へと挿入する工程、
-前記固定手段(11)を使用して、前記接続部分(6)をロール(5)に固定する工程、
-前記ロール(5)及び前記固定した接続部分(7)を、100℃<T
予熱<T
溶融金属+100℃の温度T
予熱で、8時間~5日間の期間中に予熱する工程、
-前記ロール(5)及び前記固定した接続部分(7)を前記溶融金属(3)内部に配置する工程、
を備える方法。
【請求項8】
保護コーティングは、前記ロール(5)を予熱する前に、かつ、前記接続部分(7)を前記ロール(5)に挿入した後に、前記接続部分(7)及び固定手段(11)に塗布される、請求
項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールを最適に操作し、かつ支持することを可能にする方法及び装置に関する。前記ロールは溶融金属中に浸漬される。
【背景技術】
【0002】
コーティングするために、基材は所望のコーティングの浴に通されることができる。例えば、溶融金属の浴を通る鋼ストリップが挙げられる。ほとんどの場合、
図1に表されるように、シンクロール及び2本のガイドロールは、コーティング浴中に浸漬されて基材を案内する。シンクロールは、前記浴中でストリップの向きを変え、通過させることを可能とするために浴の底面に定置されるが、2本のガイドロールは、このストリップを鉛直方向に位置させ、その振動を低減し、ストリップの湾曲を修正するために浴の出口で使用される。これらのロール全ては浴中に浸漬され、それにより浴の性質及びその温度といった条件に起因する化学的侵食、腐食、及び摩耗を受ける。その結果、従来の金属製ロールに取って代わる、腐食及び摩耗に対する耐久性を増強させた新規ロールが開発されてきた。これらの新規の化学作用を起こさないロールは、概してセラミック、炭素又は炭素複合材から製造される。
【0003】
ただし、そうした化学作用を起こさないロールの使用時には、それらの機械的特性に起因して新たな課題が発生する。その結果、ロールの両側面に突出部を備える、セラミック、炭素又は炭素複合材から全体が製造されているロールは、実験的試験中に確認されてきたように、使用時におけるロールとシャフト間での力の集中に起因してロールの破損を引き起こす。これは主に、ストリップによるロールに対する圧力に起因するものである。その結果、ロールのそれぞれの側面が中空であり、そこにシャフトが挿入されるようなロールが使用される。こうした使用により、特にこうしたロールを支持かつ輸送する方法において、新たな課題が生じる。
【0004】
その結果、ロールを操作かつ支持し、これに損傷を与えることなく回転することを可能にするために、セラミック又は炭素製の化学作用を起こさないロールをブッシングに接続する方法を開発する必要が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の課題を解決することを可能にする最新技術に関する文書は、未だ見出されていない。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は請求項1に記載の装置を提供することにより達成される。この装置はまた、請求項2~6のいずれかの特徴を備えてもよい。本発明によれば、この目的はまた請求項7~8に記載の方法を提供することにより達成される。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0009】
本発明を明確にするため、特に以下の図面を参照し、非限定的な例の種々の実施形態及び試行を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】シンクロール及び2本のガイドロールを備えたコーティング浴の一実施形態の概略図である。
【
図2】ブッシング、スリーブ、シャフト及びテーブルを示している、ロールの一実施形態の概略図である。
【
図3】ロール接続部分の一実施形態の分解図及びこれがロール内にいかに挿入されることができるかを示す。
【
図5】ロール及びロール接続部分を挿入可能にする、その2つの側穴の一実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は連続溶融めっき装置1に関し、内部に溶融金属の浴3と、シンクロール4と、少なくとも1本のガイドロール5とを備えるタンク2を含み、少なくとも1本の前記ガイドロール5が軸受6により支持され、前記軸受6が少なくとも接続部分7及びブッシング8から構成され、前記接続部分7は3つの連続する部分:
-ブッシング8と接続する第1の部分9と、
-前記ロール5の側面に取り付けられた少なくとも1つの固定手段11を含む第2の部分10と、
-湾曲した山形部13を有する平行六面体部分を有し、前記ロール5内部に挿入される、第3の部分12と、
を備え、
前記接続部分7は前記ロール5よりも高い熱膨張係数を有する材料から製造され、前記熱膨張係数は、前記第3の部分12及び前記ロール5が溶融金属浴3内にある場合に、熱膨張により圧入嵌めされるように選択される。
【0012】
以下の説明は、少なくとも1本のガイドロール5と、少なくとも1つの接続部分7との使用を説明する。ただしこの接続部分の使用は少なくとも1本のガイドロールに限定されないが、この接続部分はまた、シンクロール4内部で使用又は内部に挿入されることができる。
【0013】
請求項1に記載の装置に関して、ロールは支持され、第3の部分の湾曲された縁部により顕著に劣化されることなく回転可能である。更には、固定手段により、室温でのロールの安全な操作、及び使用前のロールの正確な設置が可能になる。室温では、シャフトと炭素ベースのコアとの間に間隙が存在する。これは言い換えれば、室温では圧入嵌めされていないということである。
【0014】
図1で明示されるように、連続溶融めっき装置1はタンク2を備え、タンク2は、内部を溶融金属3で充填され、シンクロール4、少なくとも1本のガイドロール5及び前記溶融金属を通るストリップSを具備する。
【0015】
図2で明示されるように、ロール5のうち少なくとも1本、すなわちシンクロール及び/又は少なくとも1本のガイドロールは、接続部分7及びブッシング8から構成された軸受6により支持される。更には、スリーブ16は接続部分7とブッシング8との間に使用されることができる。
【0016】
図3及び
図4(a及びb)で明示されるように、接続部分7は、
-第1の接続部分9、
-ロール側面5Sに固定されている少なくとも1つの固定手段11を備える第2の部分10、
-ロールにより取り囲まれ、湾曲された縁部13を有する平行六面体である第3の部分12、
を備える。
【0017】
シャフト7は3つの連続する部分から作製されているが、前記シャフト7を形成するためには単一のブロック(bloc)が機械加工されることが好ましい。これは、この部分の機械的特性を増強させる。
【0018】
第1の部分9の役割は、スリーブ16又はブッシング8内へと挿入されることである。スリーブが使用される場合、これは第1の部分に嵌合し、かつ少なくとも部分的にこれを覆い、その結果として摩耗を低減させるべきものとなる。使用中、第1の部分又はスリーブとブッシングとの間の小さな隙間又は遊びは概して約5mmであるが、これはロールの回転を可能にするために必要とされる。
【0019】
第2の部分10は、固定手段11を使用してロール側面5Sに第2の部分10を固定するのに十分な幅がある。
【0020】
第3の部分12の役割は、主に、接続部分7にロール5を接続することであり、更に、接続部分7にロールの回転を伝達することである。ロール5及び接続部分7が浴中に浸漬される場合、400℃~700℃で一般に構成される温度では、接続部分7はロール5を圧入嵌めする。圧入嵌めは、ロール5と接続部分7との間の熱膨張係数の差により生じ、前記接続部分の方がロールよりも熱膨張係数が大きい。3つのパラメータ(破損リスク、ロールコア及び第3の部分の機械的特性、並びにトルク伝達)は、目標とする圧入嵌め値に大いに影響する。一方、圧入嵌めが強すぎる場合には、第3の部分及び/又はロールコアは破損又は損傷の恐れがあり、これは避けられるべきである。一方、圧入嵌めが弱すぎる場合には、ロールのトルクは接続部分に効率良く伝達されない。
【0021】
接続部分及び炭素コアに使用される材料、ひいてはそれらの熱膨張係数に応じて圧入嵌めは変化するものの、これは一般には-0.10mm~-0.25mmの間に含まれる。
【0022】
第3の部分12は平行六面体である。これは、摩耗又は破砕が生じる場合、トルクは依然として明らかに伝達されるが、第3の部分が円筒形である場合には、圧入嵌めは十分ではなく、それによりトルク伝達の損失が引き起こされる可能性があることが理由である。言い換えれば、摩耗又は破砕は、円筒形又は円形の第3の部分よりも、平行六面体の第3の部分においてはトルク伝達にほとんど影響しないということである。加えて、平行六面体縁部13は鋭角でも直角でもないことが重要である。これは、鋭角及び直角の場合に破損が更に頻繁に起きることが理由である。
【0023】
スリーブ50は、圧入嵌めが十分ではない場合にこれを調整するために使用されることができる。スリーブ50により、異なる側穴サイズを有するロールにおいて接続部分を使用することが可能となり、接続部分の可撓性及び使いやすさを増加させる。第3の部分12はスリーブ50内に嵌合しなければならず、かつスリーブ50はロール5内に嵌合しなければならない。こうしたスリーブは固定手段11の使用を妨げるものであってはならない。
【0024】
図5で明示されるように、ロールは両側においてその回転軸17の周りが中空であるシリンダであり、これは中空部分であるこれらの穴18への接続部分7の取り付けを可能にする。
【0025】
好ましくは、前記ロールは、炭素繊維又はセラミック繊維で強化された、少なくとも1種類の炭素マトリックス又はセラミックマトリックスから製造されている。ロールは浴の状態に対して不活性であることから、こうしたロールにより、腐食に対する耐久性を増加させることが可能となる。
【0026】
好ましくは、前記ロールは、炭素繊維又はセラミック繊維で強化された2種類の異なる炭素マトリックスから製造されている。明らかに、炭素繊維で強化された炭素マトリックス(CFC)のみで製造されたロールは、少なくともセラミックマトリックスを具備するロールよりも、熱衝撃に対して明らかに良好な耐久性を有する。
図6で明示されるように、ロールコアは、炭素ベース材料19及び前記炭素ベース材料周りのCFC20の層から製造されることができる。
【0027】
好ましくは、前記ロールはセラミックから製造されている。ロールは浴の状態に対して不活性であることから、セラミックにより腐食に対して非常に良好な耐久性を有することが可能となる。
【0028】
好ましくは、前記接続部分7は金属製である。より好ましくは、前記接続部分7は鋼製である。金属製のこうした接続部分は機械的耐久性を増強させる。更には、溶接が可能になることから、金属製とすることにより、スリーブ16への接続部分7の固定が容易になる。
【0029】
好ましくは、前記固定手段11はねじである。こうした固定手段は取り外し可能であるという利点を有し、そのため装置の再利用性を増強させる。前記ねじは、好ましくは、螺旋形のインサートにねじ込まれる。好ましくは、ワッシャなどの部品は、固定手段の穴を通って液体が浸透するのを防ぐために使用される。一方、固定手段により、ロール軸線に対してシャフトの軸線を中心に合わせることが可能となり、これによって操作中、しっかりと中心に合わせた状態を維持する。一方、固定手段によって、シャフト(すなわち第2の部分10)は、使用時にロール側面5Sと接触した状態を維持し、第3の部分を溶融金属から防水処理することが可能となる。ロールと接続部分との間の熱膨張係数が異なることに起因して、接続部分はロールから押し退けられる傾向があるため、固定手段の使用は不可欠である。
【0030】
好ましくは、
図7A、
図7B、
図7C、
図7Dで明示されるように、前記第2の部分10は、少なくとも3つの固定手段11を挿入するための穴21を備える。少なくとも3つの固定手段を有することにより、ロールの良好な操作、及びシャフトの良好な中心合わせを確実にすることが可能になる。これはまた、1つ又は2つの固定手段が存在する場合と比較すると、各固定部への応力を低下させる。好ましくは、固定手段11の重心はロール回転軸線17である。明らかに、こうした配置により応力を均等に分割させ、固定手段の寿命を増加させることが可能となる。
【0031】
本発明はまた、請求項1~9で説明される装置における取付方法に関し、前記溶融金属は温度T溶融金属であり、前記ロール5のうち少なくとも1本は、以下の工程:
-接続部分7の前記第3の部分12を前記ロール5へと挿入する工程、
-前記固定手段11を使用し、前記接続部分7をロール5に固定する工程、
-前記ロール5及び前記固定した接続部分7を、100℃<T予熱<T溶融金属+100℃の温度T予熱で、8時間~5日間の期間中に予熱する工程、
-前記ロール5及び前記固定した接続部分7を前記溶融金属3内部に設置する工程、
を備える。
【0032】
こうした工程により、ロールを最適に取り付けることが可能となる。前記ロールを100℃より高い温度で予熱することにより、圧入嵌めを引き起こすか、又は少なくとも、ロール及びロールに固定された接続部分を移動可能にする隙間を安全に低減させる。また、予熱することで残存する湿度を除去する。予熱温度を選択する場合、予熱中に前記ロールを損傷しないよう、酸化に対するロール耐久性が考慮されなければならない。更には、予熱温度を選択する場合、前記溶融金属内部にロールを設置する間、前記ロールを損傷しないよう、熱チョック(thermal chock)に対するロール耐久性もまた考慮されなければならない。
【0033】
予熱期間は、ロール全体で均一の温度を有するのに十分長くなくてはならない。前記期間は、ロールのサイズやロールの熱特性といった種々の要因に応じて変動する。
【0034】
好ましくは、前記シール15は炭素フェルトである。好ましくは、ワッシャは可能な場合には固定手段と共に使用される。
【0035】
好ましくは、保護コーティングは、前記ロールを予熱する前に、及び前記接続部分を前記ロール5に挿入した後に、接続部分7及び固定手段11に塗布される。前記コーティングは接続部分を保護し、その寿命を延ばすことが明らかである。前記保護コーティングは窒化ホウ素から作製されることができる。