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特許7385084エアロゾル生成システム、及びエアロゾル生成システムの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】エアロゾル生成システム、及びエアロゾル生成システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20231114BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20231114BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20231114BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/40
A24F40/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023537648
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034234
(87)【国際公開番号】W WO2023042363
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100198845
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 善喬
(72)【発明者】
【氏名】泉屋 貴文
(72)【発明者】
【氏名】芹田 和俊
(72)【発明者】
【氏名】川崎 玲二朗
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-511175(JP,A)
【文献】国際公開第2021/162224(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/214924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 40/40
A24F 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
筒状形状を有し、エアロゾル源を含有する基材を前記筒状形状の内部空間に収容可能な保持部と、
前記保持部の前記筒状形状の外側面と、前記筐体の内側面との間に平行に設けられた支持部と、
前記支持部の外側面上に設けられ、交流電流を用いて前記内部空間に変動磁場を発生させ、前記変動磁場による誘導加熱によって前記エアロゾル源を加熱する電磁誘導源と、
を備え、
前記保持部は、前記変動磁場による前記誘導加熱によって発熱するサセプタとして機能し、
前記電磁誘導源は、
第1層と、
前記第1層の一面に設けられ、前記変動磁場を発生させる導体層と、
前記第1層の前記一面に前記導体層を覆うように設けられた第2層と、
を含み、
前記第2層の熱伝導率は、前記第1層の熱伝導率よりも高い、エアロゾル生成システム。
【請求項2】
前記第1層は、円筒形状に設けられる、請求項1に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項3】
前記第1層の前記一面は、前記円筒形状の外側の側面である、請求項2に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項4】
前記第2層のヤング率は、前記第1層のヤング率よりも低い、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項5】
前記導体層の上の前記第2層の厚みは、前記第1層の厚みよりも厚い、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項6】
前記第1層は、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone: PEEK)で構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項7】
前記第2層は、無機絶縁性フィラーを含む、請求項1に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項8】
前記電磁誘導源は、前記第2層の外側の面に設けられると共に前記第2層と熱的に接続される熱拡散層をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項9】
前記導体層は、トランスバース型又はソレノイド型のコイルを構成する、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項10】
前記保持部の前記内部空間に収容された前記基材をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
【請求項11】
エアロゾル源を含有する基材を収容可能であり、筒状形状を有する保持部の外側面と、筐体の内側面との間に平行に設けられた支持部の外側面上に第1層を準備することと、
前記筒状形状の内部空間に交流電流によって変動磁場を発生させる導体層を前記第1層の上に形成することと、
前記第1層の上に前記導体層を覆うように第2層を形成することと、
を含み、
前記保持部は、前記変動磁場による誘導加熱によって発熱するサセプタとして機能し、
前記第2層の熱伝導率は、前記第1層の熱伝導率よりも高い、エアロゾル生成システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル生成システム、及びエアロゾル生成システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザに吸引される物質を生成する電子タバコ及びネブライザ等の吸引装置が広く普及している。吸引装置は、エアロゾルを生成するためのエアロゾル源、及び生成されたエアロゾルに香味成分を付与するための香味源を用いることで、香味成分が付与されたエアロゾルを生成することができる。ユーザは、吸引装置にて生成された、香味成分が付与されたエアロゾルを吸引することで、香味を味わうことができる。
【0003】
近年、エアロゾル源に熱的に近接するサセプタ等を誘導加熱することで、エアロゾル源からエアロゾルを生成する吸引装置が注目されている。例えば、下記の特許文献1には、印刷によってフィルム上に形成されたコイルを誘導加熱に用いる吸引装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-127433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された吸引装置では、フィルム上に形成されたコイルの信頼性について十分な検討がされていなかった。例えば、誘導加熱による熱膨張又は熱収縮の繰り返しによって、コイルにクラック等が生じる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コイルを含む電磁誘導源の信頼性をより向上させることが可能な、新規かつ改良されたエアロゾル生成システム、及びエアロゾル生成システムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、エアロゾル源を含有する基材を内部空間に収容可能な保持部と、交流電流を用いて前記内部空間に変動磁場を発生させ、前記変動磁場による誘導加熱によって前記エアロゾル源を加熱する電磁誘導源と、を備え、前記電磁誘導源は、第1層と、前記第1層の一面に設けられ、前記変動磁場を発生させる導体層と、前記第1層の前記一面に前記導体層を覆うように設けられた第2層と、を含む、エアロゾル生成システムが提供される。
【0008】
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に設けられてもよい。
【0009】
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に筒状形状に巻き回されてもよい。
【0010】
前記電磁誘導源は、前記第1層を前記保持部に対向させて前記保持部の外周に設けられてもよい。
【0011】
前記第2層のヤング率は、前記第1層のヤング率よりも低くともよい。
【0012】
前記導体層の上の前記第2層の厚みは、前記第1層の厚みよりも厚くてもよい。
【0013】
前記第1層を構成する有機樹脂と、前記第2層を構成する有機樹脂とは、同じであってもよい。
【0014】
前記基材は、前記誘導加熱によって内部から加熱され、前記第1層の熱伝導率は、前記第2層の熱伝導率よりも高くてもよい。
【0015】
前記第1層は、無機絶縁性フィラーを含んでもよい。
【0016】
前記第2層の熱伝導率は、前記第1層の熱伝導率よりも高くてもよい。
【0017】
前記第2層は、無機絶縁性フィラーを含んでもよい。
【0018】
前記電磁誘導源は、前記第2層の外側の面に設けられると共に前記第2層と熱的に接続される熱拡散層をさらに含んでもよい。
【0019】
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に前記第1層を内側として筒状形状に巻き回されており、前記熱拡散層は、前記第1層の端部よりも前記筒状形状の軸方向に延在し、前記熱拡散層の延在領域には、前記熱拡散層を冷却する冷却部が設けられてもよい。
【0020】
前記冷却部は、前記筒状形状の軸方向のうち前記保持部の前記内部空間に通じる開口が設けられた側と反対側に向かって延在する前記延在領域に設けられてもよい。
【0021】
前記冷却部は、前記延在領域の前記第2層と対向する側の面に設けられてもよい。
【0022】
前記冷却部は、ペルチェ素子を含んでもよい。
【0023】
前記電磁誘導源は、前記第2層及び前記熱拡散層の間に設けられると共に磁性体で構成された磁場収束層をさらに含んでもよい。
【0024】
前記導体層は、トランスバース型又はソレノイド型のコイルを構成してもよい。
【0025】
前記保持部の前記内部空間に収容された前記基材をさらに備えてもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、フィルム状の第1層を準備することと、交流電流によって変動磁場を発生させる導体層を前記第1層の上に形成することと、前記第1層の上に前記導体層を覆うように第2層を形成することと、エアロゾル源を含有する基材を内部空間に収容可能な保持部に、前記第1層、前記導体層、及び前記第2層を含む積層体を設けることと、を含む、エアロゾル生成システムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、コイルを含む電磁誘導源の信頼性をより向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る吸引装置の構成例を示す模式図である。
図2】保持部及び電磁誘導源の模式的な断面図である。
図3】電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図4】導体層が構成するコイルの形状の一例を示す模式図である。
図5】電磁誘導源の変形時に生じる応力を示す説明図である。
図6】第1の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図7】第2の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図8】第3の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図9】第4の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図10】第5の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図11】第6の具体例に係る電磁誘導源に含まれる導体層近傍を拡大して示す断面図である。
図12A】電磁誘導源を製造する工程を説明する説明図である。
図12B】電磁誘導源を製造する工程を説明する説明図である。
図12C】電磁誘導源を製造する工程を説明する説明図である。
図12D】電磁誘導源を製造する工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0030】
<1.吸引装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る吸引装置の構成例について説明する。図1は、本実施形態に係る吸引装置100の構成例を示す模式図である。
【0031】
図1に示すように、吸引装置100は、例えば、電源部111と、センサ部112と、通知部113と、記憶部114と、通信部115と、制御部116と、サセプタ161と、電磁誘導源162と、保持部140とを備える。
【0032】
本実施形態に係る吸引装置100は、保持部140にスティック型基材150を保持した状態で、エアロゾル源を含むスティック型基材150を誘導加熱(Induction Heating:IH)する。これにより、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源が霧化されることで、スティック型基材150からエアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルは、ユーザに吸引される。
【0033】
なお、吸引装置100とスティック型基材150とは、協働してユーザにより吸引されるエアロゾルを生成する。そのため、吸引装置100とスティック型基材150との組み合わせは、エアロゾル生成システムとして捉えられてもよい。
【0034】
電源部111は、電力を蓄積すると共に、吸引装置100の各構成要素に電力を供給する。電源部111は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充放電可能な二次電池により構成されてもよい。電源部111は、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等により外部電源に接続されることで充電されてもよい。また、電源部111は、ワイヤレス電力伝送技術を用いて、直接接続されない送電デバイスにより充電されてもよい。さらに、電源部111は、吸引装置100から着脱可能に設けられてもよく、新しい電源部111と交換可能に設けられてもよい。
【0035】
センサ部112は、吸引装置100に関する各種情報を検出すると共に、検出した情報を制御部116に出力する。一例として、センサ部112は、コンデンサマイクロホン等の圧力センサ、流量センサ、又は温度センサにより構成されてもよい。このような場合、センサ部112は、ユーザによる吸引に伴う数値を検出した場合に、ユーザによる吸引が行われたことを示す情報を制御部116に出力することができる。他の一例として、センサ部112は、ユーザからの情報の入力を受け付けるボタン又はスイッチ等の入力装置により構成されてもよく、例えば、エアロゾルの生成開始/停止を指示するボタンを含んで構成されてもよい。このような場合、センサ部112は、ユーザにより入力された情報を制御部116に出力することができる。他の一例として、センサ部112は、サセプタ161の温度を検出する温度センサにより構成されてもよい。温度センサは、例えば、電磁誘導源162の電気抵抗値に基づいてサセプタ161の温度を検出してもよい。このような場合、センサ部112は、サセプタ161の温度に基づいて、保持部140により保持されたスティック型基材150の温度を検出することができる。
【0036】
通知部113は、情報をユーザに通知する。一例として、通知部113は、LED(Light Emitting Diode)などの発光装置により構成されてもよい。これによれば、通知部113は、電源部111の状態が要充電である場合、電源部111が充電中である場合、又は吸引装置100に異常が発生した場合等に、それぞれ異なる発光パターンで発光することができる。ここでの発光パターンとは、色、及び点灯/消灯のタイミング等を含む概念である。通知部113は、発光装置と共に、又は代えて、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等により構成されてもよい。他にも、通知部113は、ユーザによる吸引が可能になったことを示す情報を通知してもよい。ユーザによる吸引が可能になったことを示す情報は、例えば、電磁誘導により発熱したスティック型基材150の温度が所定の温度に達した場合にユーザに通知される。
【0037】
記憶部114は、吸引装置100の動作のための各種情報を記憶する。記憶部114は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体により構成される。記憶部114に記憶される情報の一例は、制御部116による各種構成要素の制御内容等の吸引装置100のOS(Operating System)に関する情報である。記憶部114に記憶される情報の他の一例は、吸引回数、吸引時刻、又は吸引時間累計等のユーザによる吸引に関する情報である。
【0038】
通信部115は、吸引装置100と他の装置との間で情報を送受信するための通信インタフェースである。通信部115は、有線又は無線の任意の通信規格に準拠した通信を行うことができる。このような通信規格としては、例えば、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等が採用され得る。一例として、通信部115は、ユーザによる吸引に関する情報をスマートフォンに表示させるために、ユーザによる吸引に関する情報をスマートフォンに送信してもよい。他の一例として、通信部115は、記憶部114に記憶されているOSの情報を更新するために、サーバから新たなOSの情報を受信してもよい。
【0039】
制御部116は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って吸引装置100内の動作全般を制御する。制御部116は、例えばCPU(Central Processing Unit)、又はマイクロプロセッサ等の電子回路によって実現されてもよい。また、制御部116は、使用するプログラム及び演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、及び適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を含んで構成されてもよい。
【0040】
具体的には、制御部116は、吸引装置100の動作に関する各種処理の実行を制御してもよい。例えば、制御部116は、電源部111から他の各構成要素への給電、電源部111の充電、センサ部112による情報の検出、通知部113による情報の通知、記憶部114による情報の記憶又は読み出し、及び通信部115による情報の送受信などの処理の実行を制御してもよい。また、制御部116は、吸引装置100により実行される、各構成要素への情報の入力、及び各構成要素から出力された情報に基づく処理等の実行を制御することも可能である。
【0041】
保持部140は、内部空間141を有し、内部空間141にスティック型基材150の一部を収容することでスティック型基材150を保持する。保持部140は、内部空間141を外部に連通する開口142を有し、開口142から内部空間141に挿入されたスティック型基材150を保持する。例えば、保持部140は、開口142及び底部143を底面とし、柱状の内部空間141を画定する筒状形状で構成されてもよい。保持部140は、筒状体の高さ方向の少なくとも一部において、内径がスティック型基材150の外径よりも小さく構成されることで、内部空間141に挿入されたスティック型基材150を外周から圧迫して保持することができる。
【0042】
また、保持部140は、スティック型基材150を通る空気の流路を画定する機能も有する。該流路内への空気の入口である空気流入孔は、例えば底部143に配置される。一方、該流路からの空気の出口である空気流出孔は、開口142である。
【0043】
スティック型基材150は、スティック型の部材である。スティック型基材150は、基材部151、及び吸口部152を含む。
【0044】
基材部151は、エアロゾル源を含む。エアロゾル源は、加熱されることで霧化され、エアロゾルを生成する。エアロゾル源は、例えば、たばこ由来の加工物であってもよく、刻みたばこ又はたばこ原料を粒状、シート状、又は粉末状に成形した加工物などであってもよい。また、エアロゾル源は、たばこ以外の植物(例えばミント及びハーブ等)から生成された非たばこ由来の成分を含んでもよい。一例として、エアロゾル源は、香料成分を含んでいてもよい。吸引装置100が医療用吸入器である場合、エアロゾル源は、患者が吸入するための薬剤を含んでもよい。エアロゾル源は、固体に限られるものではなく、例えば、グリセリン及びプロピレングリコール等の多価アルコール、並びに水等の液体であってもよい。基材部151の少なくとも一部は、スティック型基材150が保持部140に保持された状態において、保持部140の内部空間141に収容される。
【0045】
吸口部152は、吸引の際にユーザに咥えられる部材である。吸口部152の少なくとも一部は、スティック型基材150が保持部140に保持された状態において、開口142から突出する。開口142から突出した吸口部152をユーザが咥えて吸引することで、図示しない空気流入孔から保持部140の内部に空気が流入する。流入した空気は、保持部140の内部空間141(すなわち、基材部151)を通過して、基材部151から発生するエアロゾルと共に、ユーザの口内に到達する。
【0046】
また、スティック型基材150は、サセプタ161を含む。サセプタ161は、電磁誘導により発熱することができる。サセプタ161は、導電性材料により構成されてもよい。一例として、サセプタ161は、金属片であってもよい。
【0047】
具体的には、サセプタ161は、エアロゾル源に熱的に近接して配置されてもよい。サセプタ161がエアロゾル源に熱的に近接しているとは、サセプタ161にて発生した熱がエアロゾル源に伝達され得る位置にサセプタ161が配置されていることを指す。例えば、サセプタ161は、エアロゾル源にて周囲を囲まれるように、エアロゾル源と共に基材部151に含まれてもよい。このような構成によれば、サセプタ161は、発生した熱にて効率よくエアロゾル源を加熱することが可能である。
【0048】
なお、サセプタ161は、スティック型基材150の外部から接触不可能に設けられてもよい。例えば、サセプタ161は、スティック型基材150の外周付近には配置されず、スティック型基材150の中心部分のみに配置されてもよい。
【0049】
電磁誘導源162は、電磁誘導によりサセプタ161を発熱させる。電磁誘導源162は、電源部111から交流電流が供給されることで、保持部140の内部空間141と重畳する位置に変動磁場を発生させることができる。電磁誘導源162は、保持部140にスティック型基材150が収容された状態で変動磁場を発生させることで、サセプタ161に渦電流を発生させ、サセプタ161にてジュール熱を発生させることができる。サセプタ161にて発生したジュール熱は、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源を加熱することでエアロゾルを生成することができる。電磁誘導源162の具体的な構成については、後述する。
【0050】
例えば、所定のユーザ入力が行われたことがセンサ部112により検出された場合、吸引装置100は、電磁誘導源162に給電し、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源を誘導加熱することで、エアロゾルを生成してもよい。エアロゾル源の温度が所定の温度に達した場合、吸引装置100は、ユーザによる吸引を許可する。その後、所定のユーザ入力が行われたことがセンサ部112により検出された場合、吸引装置100は、電磁誘導源162への給電を停止してもよい。
【0051】
また、他の例として、ユーザによる吸引が行われたことがセンサ部112により検出されている期間において、吸引装置100は、電磁誘導源162への給電を行い、エアロゾルを生成してもよい。
【0052】
図1では、サセプタ161がスティック型基材150の基材部151に含まれる例を示したが、吸引装置100はかかる例に限定されない。例えば、保持部140がサセプタ161の機能を奏してもよい。このような場合、吸引装置100は、電磁誘導源162が発生させた磁場によって保持部140に渦電流を発生させることで、保持部140にジュール熱を発生させる。これにより、吸引装置100は、保持部140で発生したジュール熱によって基材部151に含まれるエアロゾル源を加熱及び霧化することができるためスティック型基材150からエアロゾルを発生させることができる。
【0053】
<2.電磁誘導源の構成>
(2.1.基本構成)
次に、図2図5を参照して、吸引装置100が備える電磁誘導源162について説明する。図2は、保持部140及び電磁誘導源162の模式的な断面図である。図3は、電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図4は、導体層623が構成するコイルの形状の一例を示す模式図である。図5は、電磁誘導源162の変形時に生じる応力を示す説明図である。
【0054】
図2及び図3に示すように、電磁誘導源162は、開口142及び底部143を底面とすると共に柱状の内部空間141を画定する保持部140の側面に沿って設けられる。また、電磁誘導源162は、保持部140の側面側から第1層621、導体層623、及び第2層622の積層構造にて設けられる。
【0055】
ただし、電磁誘導源162は、サセプタ161を誘導加熱することができれば、保持部140の側面に沿って設けられていなくてもよい。例えば、エアロゾル源に熱的に近接するサセプタ161は、保持部140の内部空間141内に位置して設けられることもあり得るし、保持部140の内部空間141を画定するように設けられることもあり得る。そのため、一例として、電磁誘導源162は、吸引装置100のハウジング(筐体)の内側面上、かつ保持部140の内部空間141を誘導加熱可能な位置に設けられてもよい。他の例として、電磁誘導源162は、保持部140の外側面と、吸引装置100のハウジング(筐体)の内側面との間に設けられた図示しない支持部に設けられてもよい。支持部は、例えば、保持部140の外側面と、吸引装置100のハウジングの内側面と平行に設けられ、電磁誘導源162は、支持部の内側面上又は外側面上に設けられてもよい。
【0056】
第1層621は、電気絶縁性及び可撓性を有する有機樹脂にてフィルム状に構成され、保持部140の側面に沿って筒状形状に巻き回される。第1層621は、例えば、ポリイミド(polyimide:PI)又はポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone:PEEK)などのスーパーエンジニアリングプラスチックで構成されてもよい。第1層621は、交流電流が供給されることで発熱する導体層623と接するため、有機樹脂の中でも耐熱性が高いスーパーエンジニアリングプラスチックで構成される。
【0057】
導体層623は、導電性材料で構成され、第1層621の外側の面に設けられる。具体的には、導体層623は、交流電流が供給される配線層であり、コイルとして機能するように第1層621の外側の面に配線される。例えば、導体層623は、図3に示すように保持部140の側面に矩形の渦巻き形状に配線されることで、トランスバース型コイルを構成してもよい。また、導体層623は、保持部140の側面に立体的に巻き付くらせん形状に配線されることで、ソレノイド型コイルを構成してもよい。導体層623は、銀、銅、金、又はアルミニウムなどの金属材料で構成されてもよい。例えば、導体層623は、フィルム状基材に任意のパターンの配線を形成することが容易な銀ナノ粒子インクで形成されてもよい。
【0058】
第2層622は、電気絶縁性及び可撓性を有する有機樹脂にて構成され、第1層621の外側の面に導体層623を覆うように設けられる。第2層622は、例えば、ポリイミド(polyimide:PI)又はポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone:PEEK)などのスーパーエンジニアリングプラスチックで構成されてもよい。第2層622は、交流電流が供給されることで発熱する導体層623と接するため、有機樹脂の中でも耐熱性が高いスーパーエンジニアリングプラスチックで構成される。
【0059】
第1層621及び第2層622は、同じ有機樹脂で構成されてもよく、異なる有機樹脂で構成されてもよい。ただし、第1層621及び第2層622は、同質又は同一の有機樹脂で構成される場合、層同士の密着性をより高めることができる。第1層621及び第2層622が同質又は同一の有機樹脂で構成される場合、第1層621及び第2層622の特性は、例えば、第1層621及び第2層622の各々に混合される添加剤又はフィラーなどによって制御することが可能である。
【0060】
なお、第1層621及び第2層622が同質又は同一の有機樹脂で構成される場合、第1層621及び第2層622が界面で混ざり合い、第1層621と第2層622との界面が明瞭ではないことがあり得る。このような場合でも、電磁誘導源162は、それぞれの層の特性の相違などから第1層621及び第2層622から構成されることを理解することができる。
【0061】
上記構成を備える電磁誘導源162は、可撓性を有する第1層621及び第2層622で導体層623を挟み込むように構成される。これによれば、第1層621及び第2層622は、交流電流が供給された際の発熱による導体層623の体積変動を抑制することができるため、導体層623にクラック等が発生することを抑制することができる。
【0062】
また、図5に示すように、電磁誘導源162が保持部140の側面に沿って巻き回される場合、巻き回される内側(すなわち、第1層621側)には圧縮応力が発生し、巻き回される外側(すなわち、第2層622側)には引張応力が発生する。導体層623では、巻き回される内側が第1層621で覆われると共に、巻き回される外側が第2層622で覆われる。これによれば、電磁誘導源162は、導体層623の圧縮応力及び引張応力による変形を抑制することができるため、導体層623の第1層621からの剥離、又は導体層623の破断等を抑制することができる。
【0063】
特に、近年、吸引装置100のさらなる小型化のため、保持部140の内部空間の直径がより小さくなっている。そのため、より小さい直径(例えば、7mm直径)の保持部140の側面に巻き付けられる電磁誘導源162では、巻き回しの曲率半径が小さくなるため、発生する圧縮応力及び引張応力がより大きくなる。上記の電磁誘導源162は、圧縮応力及び引張応力による導体層623の変形を抑制することができるため、小型化された吸引装置100に対して好適に用いることができる。
【0064】
上記では、電磁誘導源162は、第1面621を保持部140の側面と対向させて、保持部140の側面に沿って筒状形状に巻き回される構成について説明した。しかしながら、本発明に係る技術は、上記例示に限定されない。例えば、電磁誘導源162は、矩形のシート形状にて設けられ、保持部140の側面の一部領域に接着剤等を介して貼り付けられてもよい。また、矩形のシート形状で設けられる場合、電磁誘導源162は、吸引装置100のハウジング(筐体)の内側面に貼り付けられてもよく、保持部140と吸引装置100との間に設けられた支持部の内側面又は外側面に貼り付けられてもよい。
【0065】
(2.2.詳細構成)
続いて、図6図11を参照して、電磁誘導源162のより詳細な構成について説明する。電磁誘導源162は、以下の第1~第6の具体例で説明する構成を採ることで、より好適な効果を得ることが可能である。
【0066】
(2.2.1.第1の具体例)
図6は、第1の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図6に示すように、第2層622の導体層623上を覆う膜厚t2は、第1層621の膜厚t1よりも厚くともよい。
【0067】
電磁誘導源162を保持部140の側面に巻き付けた際に生じる圧縮応力及び引張応力では、引張応力の方が圧縮応力よりも大きくなる。そのため、導体層623では、引張応力による導体層623の破断の方が圧縮応力による導体層623の剥離よりも発生する可能性が高い。したがって、第1の具体例では、第2層622の導体層623上を覆う膜厚t2を第1層621の膜厚t1よりも厚くすることで、導体層623の外側(すなわち、第2層622側)に生じる引張応力に起因する変形をより強く抑制することができる。よって、第1の具体例によれば、電磁誘導源162は、電磁誘導源162を保持部140の側面に巻き付けた際に生じる導体層623の損傷をより抑制することが可能である。
【0068】
(2.2.2.第2の具体例)
図7は、第2の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図7に示すように、第1層621と第2層622とは互いに異なる特性を有する層として設けられてもよい。例えば、第2層622のヤング率は、第1層621のヤング率よりも低くともよい。
【0069】
導体層623は、第1層621よりもヤング率が低く柔軟な第2層622で覆われることにより、熱膨張又は熱収縮による残留応力が内部に生じることを抑制することができる。したがって、第2の具体例によれば、電磁誘導源162は、導体層623の熱膨張又は熱収縮に起因する残留応力によって、導体層623に破断又はクラック等が発生することを抑制することができる。
【0070】
第1層621及び第2層622のヤング率は、例えば、第1層621及び第2層622を構成する有機樹脂の種類若しくは重合度、又は混合する添加剤の種類若しくは量によって制御することが可能である。例えば、第1層621及び第2層622は、同質又は同一の有機樹脂で構成され、有機樹脂の重合度、又は混合する添加剤の種類若しくは量を変更されることでヤング率を制御されてもよい。このような場合、第1層621及び第2層622は、層同士の密着性を高めつつ、導体層623に残留応力が生じることを抑制することができる。
【0071】
(2.2.3.第3の具体例)
図8は、第3の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図8に示すように、第1層621と第2層622とは互いに異なる特性を有する層として設けられてもよい。例えば、第1層621の熱伝導率は、第2層622の熱伝導率よりも高くともよい。
【0072】
第1層621の熱伝導率が第2層622の熱伝導率より高い場合、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱は、第2層622側ではなく第1層621側に主として拡散する。そのため、第1層621は、導体層623から第1層621側に拡散した熱によって、保持部140の内部空間141の表面温度を上昇させることができる。これによれば、スティック型基材150を内部から誘導加熱する中心加熱型の吸引装置100では、保持部140の内部空間141の表面温度と、内部空間141に収容されるスティック型基材150の温度とがより近くなる。したがって、第3の具体例によれば、中心加熱型の吸引装置100は、内部空間141の表面での結露の発生を抑制することができる。
【0073】
第1層621及び第2層622の熱伝導率は、例えば、第1層621及び第2層622に熱伝導性フィラーを混合するか否か、又は混合する熱伝導性フィラーの種類若しくは量によって制御することが可能である。例えば、第3の具体例では、第2層622に熱伝導性フィラーが混合されず、第1層621に熱伝導性フィラーが混合されていてもよい。熱伝導性フィラーとしては、アルミナ(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、シリカ(SiO)、又は窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁性フィラー(例えば、セラミックス)を使用することができる。
【0074】
(2.2.4.第4の具体例)
図9は、第4の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図9に示すように、第1層621と第2層622とは互いに異なる特性を有する層として設けられてもよい。例えば、第2層622の熱伝導率は、第1層621の熱伝導率より高くともよい。
【0075】
第2層622の熱伝導率が第1層621の熱伝導率より高い場合、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱は、第1層621側ではなく第2層622側に主として拡散する。そのため、第2層622は、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱を第2層622から電磁誘導源162の外部に放出することができる。したがって、第4の具体例によれば、電磁誘導源162は、熱によって導体層623が損傷したり、導体層623の抵抗値が上昇したりすることを抑制することができる。
【0076】
第1層621及び第2層622の熱伝導率は、例えば、第1層621及び第2層622に熱伝導性フィラーを混合するか否か、又は混合する熱伝導性フィラーの種類若しくは量によって制御することが可能である。例えば、第4の具体例では、第1層621に熱伝導性フィラーが混合されず、第2層622に熱伝導性フィラーが混合されていてもよい。熱伝導性フィラーとしては、アルミナ(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、シリカ(SiO)、又は窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁性フィラー(例えば、セラミックス)を使用することができる。
【0077】
(2.2.5.第5の具体例)
図10は、第5の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図10に示すように、第5の具体例に係る電磁誘導源162は、第4の具体例に係る電磁誘導源162の構成に加えて、第2層622の外側の面に設けられた熱拡散層625をさらに備える。
【0078】
熱拡散層625は、第2層622と熱的に接続されており、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱を第2層622からさらに外側に拡散させることができる。具体的には、第2層622の熱伝導率は、第1層621の熱伝導率よりも高いため、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱は、第1層621側ではなく第2層622側に主として拡散する。第2層622に拡散した熱は、第2層622の外側の面に設けられた熱拡散層625にさらに拡散することで、電磁誘導源162の外部に放出される。これによれば、電磁誘導源162は、熱によって導体層623が損傷したり、導体層623の抵抗値が上昇したりすることをさらに抑制することができる。
【0079】
熱拡散層625は、例えば、熱伝導性が高い銅又はアルミニウムなどの金属材料でシート状に構成されてもよい。熱拡散層625が金属材料で構成される場合、熱拡散層625は、導体層623で構成されるコイルが発生させる変動磁場を遮蔽する磁気シールドとして機能することも可能である。これによれば、電磁誘導源162は、導体層623が構成するコイルで発生した磁場が制御部116等の吸引装置100の他の構成に影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0080】
ただし、導体層623が構成するコイルで発生する変動磁場をより効率的に遮蔽するためには、熱拡散層625と、第2層622との間には、磁場収束層がさらに設けられてもよい。磁場収束層は、例えば、軟鉄、ケイ素鋼、又はソフトフェライトなどの比透磁率が高い軟磁性材料で構成される。磁場収束層は、導体層623が構成するコイルで発生する磁束を吸収することで、導体層623で発生した磁場が電磁誘導源162の外側に漏れないように遮蔽することができる。これによれば、電磁誘導源162は、導体層623で発生した磁場が制御部116等の吸引装置100の他の構成に影響を及ぼす可能性をさらに低減することができる。
【0081】
(2.2.6.第6の具体例)
図11は、第6の具体例に係る電磁誘導源162に含まれる導体層623近傍を拡大して示す断面図である。図11に示すように、第6の具体例に係る電磁誘導源162は、第5の具体例に係る電磁誘導源162の構成に加えて、熱拡散層625を冷却する冷却部626をさらに備える。
【0082】
冷却部626は、熱拡散層625に熱的に接続して設けられ、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱を電磁誘導源162から能動的に除去する。冷却部626は、例えば、ペルチェ素子を含んで構成されてもよい。具体的には、第2層622の熱伝導率は、第1層621の熱伝導率よりも高いため、交流電流の供給によって導体層623で発生した熱は、第1層621側ではなく第2層622側に主として拡散する。第2層622に拡散した熱は、第2層622の外側の面に設けられた熱拡散層625にさらに拡散した後、冷却部626にて冷却される。これによれば、電磁誘導源162は、熱拡散層625に拡散した熱が意図せず他の構成を加熱してしまうことを抑制することができる。また、電磁誘導源162は、導体層623で発生した熱をより効率的に除去することができる。
【0083】
冷却部626は、例えば、熱拡散層625の延在領域625Eに設けられてもよい。延在領域625Eは、例えば、第1層621の筒状形状の軸方向に延在する熱拡散層625のうち、保持部140の内部空間141に通じる開口142が設けられた側と反対側に第1層621の端部よりも延在された領域である。また、冷却部626は、例えば、熱拡散層625の内側の面(すなわち、第2層622が設けられる面)に設けられてもよい。このような位置に設けられる場合、冷却部626は、吸引装置100を大型化せずに設けられることが可能である。
【0084】
ただし、冷却部626は、熱拡散層625と熱的に接続する任意の位置に設けられてもよいことは言うまでもない。
【0085】
(2.3.製造方法)
さらに、図12A図12Dを参照して、電磁誘導源162の製造方法について説明する。図12A図12Dは、電磁誘導源162を製造する工程を説明する説明図である。
【0086】
まず、図12Aに示すように、ポリイミド(PI)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で構成されたフィルム状の第1層621が準備される。
【0087】
次に、図12Bに示すように、第1層621の上に銀、銅、金、又はアルミニウムなどの金属材料で構成された導体層623が形成される。導体層623は、例えば、矩形の渦巻き形状にパターニングされることで、トランスバース型コイルを構成してもよい。
【0088】
導体層623は、印刷によって塗布及びパターニングされることで形成されてもよく、蒸着によって成膜された後、フォトリソグラフィ及びエッチングによってパターニングされることで形成されてもよい。例えば、導体層623は、インクジェット印刷によって、第1層621上に導電性インク(例えば、銀ナノ粒子インク)をパターニングしながら塗布した後、塗布された導電性インクを加熱又は紫外線にて硬化させることで形成されてもよい。
【0089】
続いて、図12Cに示すように、第1層621及び導体層623の上に第2層622が形成される。第2層622は、例えば、ポリイミド(PI)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの有機樹脂の溶融物を第1層621の上に導体層623を覆うように塗布した後、該溶融物を硬化させることで形成されてもよい。
【0090】
その後、図12Dに示すように、第1層621、導体層623、及び第2層622の積層体を巻き回して筒状形状とすることで電磁誘導源162が形成される。具体的には、第1層621、導体層623、及び第2層622の積層体を、第1層621が保持部140に対向するように保持部140の側面に沿って巻き回すことで電磁誘導源162が形成される。このとき、保持部140及び第1層621は、保持部140と第1層621との間に耐熱性の接着層を介在させることで接着されてもよく、第1層621の内側の面に接着剤を塗布することで接着されてもよい。
【0091】
以上の工程により製造された電磁誘導源162は、発熱による導体層623のクラック発生を抑制すると共に、筒状形状に巻き回された際の導体層623の破断又は剥離を抑制することができる。したがって、電磁誘導源162は、吸引装置100の信頼性を向上させることができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
ただし、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記の電磁誘導源162は、導体層623を電熱線として機能させることで、フィルムヒータとして用いることも可能である。このような場合、吸引装置100は、誘導加熱ではなく抵抗加熱によってスティック型基材150を加熱することができる。したがって、本発明は、誘導加熱型の吸引装置だけでなく、抵抗加熱型の吸引装置に対しても適用することが可能であり、フィルムヒータの信頼性を向上させることで吸引装置の信頼性を向上させることができる。
【0094】
なお、以下のような構成も本発明の技術的範囲に属する。
(1)
エアロゾル源を含有する基材を内部空間に収容可能な保持部と、
交流電流を用いて前記内部空間に変動磁場を発生させ、前記変動磁場による誘導加熱によって前記エアロゾル源を加熱する電磁誘導源と、
を備え、
前記電磁誘導源は、
第1層と、
前記第1層の一面に設けられ、前記変動磁場を発生させる導体層と、
前記第1層の前記一面に前記導体層を覆うように設けられた第2層と、
を含む、エアロゾル生成システム。
(2)
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に設けられる、上記(1)に記載のエアロゾル生成システム。
(3)
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に筒状形状に巻き回される、上記(2)に記載のエアロゾル生成システム。
(4)
前記電磁誘導源は、前記第1層を前記保持部に対向させて前記保持部の外周に設けられる、上記(2)又は(3)に記載のエアロゾル生成システム。
(5)
前記第2層のヤング率は、前記第1層のヤング率よりも低い、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(6)
前記導体層の上の前記第2層の厚みは、前記第1層の厚みよりも厚い、上記(1)~(5)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(7)
前記第1層を構成する有機樹脂と、前記第2層を構成する有機樹脂とは、同じである、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(8)
前記基材は、前記誘導加熱によって内部から加熱され、
前記第1層の熱伝導率は、前記第2層の熱伝導率よりも高い、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(9)
前記第1層は、無機絶縁性フィラーを含む、上記(8)に記載のエアロゾル生成システム。
(10)
前記第2層の熱伝導率は、前記第1層の熱伝導率よりも高い、上記(1)~(7)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(11)
前記第2層は、無機絶縁性フィラーを含む、上記(10)に記載のエアロゾル生成システム。
(12)
前記電磁誘導源は、前記第2層の外側の面に設けられると共に前記第2層と熱的に接続される熱拡散層をさらに含む、上記(10)又は(11)に記載のエアロゾル生成システム。
(13)
前記電磁誘導源は、前記保持部の外周に前記第1層を内側として筒状形状に巻き回されており、
前記熱拡散層は、前記第1層の端部よりも前記筒状形状の軸方向に延在し、
前記熱拡散層の延在領域には、前記熱拡散層を冷却する冷却部が設けられる、上記(12)に記載のエアロゾル生成システム。
(14)
前記冷却部は、前記筒状形状の軸方向のうち前記保持部の前記内部空間に通じる開口が設けられた側と反対側に向かって延在する前記延在領域に設けられる、上記(13)に記載のエアロゾル生成システム。
(15)
前記冷却部は、前記延在領域の前記第2層と対向する側の面に設けられる、上記(13)又は(14)に記載のエアロゾル生成システム。
(16)
前記冷却部は、ペルチェ素子を含む、上記(13)~(15)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(17)
前記電磁誘導源は、前記第2層及び前記熱拡散層の間に設けられると共に磁性体で構成された磁場収束層をさらに含む、上記(12)~(16)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(18)
前記導体層は、トランスバース型又はソレノイド型のコイルを構成する、上記(1)~(17)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(19)
前記保持部の前記内部空間に収容された前記基材をさらに備える、上記(1)~(18)のいずれか一項に記載のエアロゾル生成システム。
(20)
フィルム状の第1層を準備することと、
交流電流によって変動磁場を発生させる導体層を前記第1層の上に形成することと、
前記第1層の上に前記導体層を覆うように第2層を形成することと、
エアロゾル源を含有する基材を内部空間に収容可能な保持部に、前記第1層、前記導体層、及び前記第2層を含む積層体を設けることと、
を含む、エアロゾル生成システムの製造方法。
【符号の説明】
【0095】
100 吸引装置
111 電源部
112 センサ部
113 通知部
114 記憶部
115 通信部
116 制御部
140 保持部
141 内部空間
142 開口
143 底部
150 スティック型基材
151 基材部
152 吸口部
161 サセプタ
162 電磁誘導源
621 第1層
622 第2層
623 導体層
625 熱拡散層
625E 延在領域
626 冷却部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D