(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】燃焼停止装置及び液浸冷却システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20231115BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G06F1/20 D
G06F1/20 A
H05K7/20 M
(21)【出願番号】P 2019125419
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 光一
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021766(JP,A)
【文献】米国特許第03680359(US,A)
【文献】特開2018-031590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸槽に貯留された冷媒に浸漬され
、それぞれ基板を備えた複数の電子機器のいずれかにおいて発生した燃焼に伴って生じるガス成分を検出する検出器と、
前記液浸槽内の前記ガス成分を前記検出器へ導入する第1配管と、
前記検出器に導入された前記ガス成分を前記液浸槽内へ戻す第2配管と、
前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する第1閾値よりも高いときに、前記
複数の電子機器への電源供給を遮断するブレーカーと、
前記液浸槽に設けられた蓋と、
前記検出器の検出値に基づいて、前記液浸槽内で前記電子機器に燃焼が発生していると判断されたときに前記蓋が開かないようにする蓋ロック機構と、
を、備えた燃焼停止装置。
【請求項2】
液浸槽に貯留された冷媒に浸漬され、それぞれ基板を備えた複数の電子機器のいずれかにおいて発生した燃焼に伴って生じるガス成分を検出する検出器と、
前記液浸槽内の前記ガス成分を前記検出器へ導入する第1配管と、
前記検出器に導入された前記ガス成分を前記液浸槽内へ戻す第2配管と、
前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する第1閾値よりも高いときに、前記複数の電子機器への電源供給を遮断するブレーカーと、
前記液浸槽の一端縁に設けられ、前記液浸槽内の空気を吸い込む吸込口を有する吸込部と、
前記一端縁と対向する他端縁に配置されると共に、前記一端縁に向かって空気を吹き出する吹出口を備えたダクトと、
前記吸込部と前記ダクトとの間で空気を循環させるファンと、
を、さらに備え、
前記第1配管は、前記ファンによって循環する空気を前記検出器へ導入する、
燃焼停止装置。
【請求項3】
前記液浸槽に設けられた蓋と、
前記蓋の開閉状態を検出する蓋開閉監視センサと、
前記蓋開閉監視センサが、前記蓋が開いた状態であることを検出しているときに前記ファンを作動させるとともに、前記蓋開閉監視センサが、前記蓋が閉じた状態であることを検出しているときに前記ファンを停止させる制御部と、
を、さらに備えた
請求項2に記載の燃焼停止装置。
【請求項4】
前記液浸槽に設けられた蓋をさらに備え、
前記吸込部は前記蓋の内周面に設けられた
請求項2に記載の燃焼停止装置。
【請求項5】
前記吸込部と前記ダクトとを接続する第3配管をさらに備えた
請求項2から4のいずれか一項に記載の燃焼停止装置。
【請求項6】
前記ファンは、前記吸込部内に組み込まれた請求項
2から5のいずれか1項に記載の燃焼停止装置。
【請求項7】
前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する第2閾値よりも高いときに、前記液浸槽内で前記ガス成分が発生していることを知らせる警告発信部をさらに備え、
前記ブレーカーは、前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する前記第2閾値よりも大きい前記第1閾値よりも高いときに、前記電子機器への電源供給を遮断する
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼停止装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載した燃焼停止装置と、
前記複数の電子機器を浸漬させる前記冷媒が貯留される前記液浸槽と、
を備えた液浸冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼停止装置及び液浸冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器を冷却するために、液浸槽内に貯留した冷媒に電子機器を浸漬させる液浸冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器は、例えばプリント基板に実装されたセラミックコンデンサのショート等(以下、「燃焼」という)を起こす場合がある。このような現象の発生は、できるだけ早く発見し、何らかの対処を施すことが望ましい。電子機器は、温度センサを備えていることがあり、この温度センサの測定値に基づいて、燃焼が発生していると判断することができる。しかしながら、温度センサは、一般的に電子機器の筐体の入口近傍や、CPU(Central Processing Unit)等、主要な発熱部品の近傍に設けられていることが多い。このため、このような温度センサから離れた位置で燃焼が生じている場合には、燃焼の発生に伴う温度上昇を検出することができない可能性がある。特許文献1は、電子機器における燃焼を検出することは想定していない。
【0005】
1つの側面では、本明細書開示の発明は、液浸冷却装置によって冷却される電子機器における燃焼の発生を検出し、停止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、燃焼停止装置は、液浸槽に貯留された冷媒に浸漬された電子機器において発生した燃焼に伴って生じるガス成分を検出する検出器と、前記液浸槽内の前記ガス成分を前記検出器へ導入する第1配管と、前記検出器に導入された前記ガス成分を前記液浸槽内へ戻す第2配管と、前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する第1閾値よりも高いときに、前記電子機器への電源供給を遮断するブレーカーと、を備えている。
【0007】
他の態様では、液浸冷却システムは、電子機器を浸漬させる冷媒が貯留される液浸槽と、前記液浸槽に貯留された前記冷媒に浸漬された電子機器において発生した燃焼に伴って生じるガス成分を検出する検出器と、前記液浸槽内の前記ガス成分を前記検出器へ導入する第1配管と、前記検出器に導入された前記ガス成分を前記液浸槽内へ戻す第2配管と、前記検出器の検出値が予め定めた前記ガス成分の濃度に関する第1閾値よりも高いときに、前記電子機器への電源供給を遮断するブレーカーと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本明細書開示の発明によれば、液浸冷却装置によって冷却される電子機器における燃焼の発生を検出し、停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は第1実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた液浸冷却システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2はICT機器が浸漬された冷媒が貯留された液浸槽に第1実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた様子を示す模式図である。
【
図3】
図3はICT機器の概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の燃焼停止装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は液浸槽内のガス濃度の時間変化と、これに伴う燃焼停止装置の動作を示すグラフの一例である。
【
図6】
図6はICT機器が浸漬された冷媒が貯留された液浸槽に第2実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた様子を示す模式図である。
【
図7】
図7は第2実施形態の燃焼停止装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8はICT機器が浸漬された冷媒が貯留された液浸槽に第3実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた様子を示す模式図である。
【
図9】
図9は第3実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた液浸槽及び蓋を示す斜視図である。
【
図10】
図10は蓋を取り外した状態の液浸槽を示す斜視図である。
【
図11】
図11は吸込部が設けられた蓋の内周面を示す正面図である。
【
図12】
図12は液浸槽の蓋が開いた状態を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13はICT機器が浸漬された冷媒が貯留された液浸槽に第4実施形態の燃焼停止装置が組み込まれた様子を示す模式図である。
【
図14】
図14は第4実施形態の燃焼停止装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は液浸槽内のガス成分の濃度の時間変化と第4実施形態の燃焼停止装置の各部の状態とを示す説明図である。
【
図16】
図16は液浸槽内のガス成分の濃度の時間変化と第4実施形態の燃焼停止装置の各部の状態とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。また、図面によっては、説明の都合上、実際には存在する構成要素が省略されていたり、寸法が実際よりも誇張されて描かれていたりする場合がある。
【0011】
(第1実施形態)
まず、
図1から
図5を参照して第1実施形態について説明する。
図1を参照すると、液浸冷却システム100は、液浸冷却装置1、冷媒冷却装置50及び燃焼停止装置11を備えている。
【0012】
図1や
図2を参照すると、液浸冷却装置1は、液浸槽2を備える。液浸槽2の内部には、冷媒3が貯留されている。冷媒3には、複数のICT(Information and Communication Technology)機器41~48が浸漬されている。ICT機器41~48は、それぞれ電子機器の一例である。
【0013】
液浸槽2は、液浸槽本体5と液浸槽本体5の上縁にヒンジ7を介して開閉可能に取り付けられた蓋6を有する。液浸槽2には、燃焼停止装置11が接続されている。燃焼停止装置11は、ICT機器41~48のいずれかにおいて生じた燃焼に伴ってガス成分が発生したときに、ICT機器41~48への電源の供給を遮断し、燃焼を停止する。燃焼停止装置11については、後に詳説する。
【0014】
本実施形態におけるICT機器41~48は、同一物であるため、以下の説明では、代表してICT機器41について説明する。
図3には、ICT機器41を示している。
図3を参照すると、ICT機器41は、筐体4a内に、プリント基板4bを備えている。プリント基板4bには、CPU(Central Processing Unit)4cや、セラミックコンデンサ4d等、種々の電子部品が実装されている。ICT機器41は、発熱部品であるCPU4cの近傍に第1温度センサ4e1を備えると共に、筐体4aに設けられた開口部近傍に第2温度センサ4e2を備えている。ICT機器41は、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2による測定値が、所定の値を上回ったときに、ICT機器41への通電が遮断される。ICT機器42~48についても、それぞれが備える第1温度センサ4e1及び第2温度センサ4e2による測定値に基づいて通電が遮断されるようになっている。
【0015】
ICT機器41では、例えば、セラミックコンデンサ4dにクラックが入る等の損傷が生じることがある。燃焼は、このような損傷に起因して、その周囲の温度が上昇することで生じる。しかしながら、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2の設置位置が、燃焼の発生位置から遠いと、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2の測定値に基づく燃焼発生判定が困難となる。このため、燃焼が発生していても、ICT機器41の通電が遮断されない場合がある。なお、燃焼が生じると、プリント基板4bからガス成分が発生することがある。
【0016】
各ICT機器41~48には、それぞれ電源ケーブル8が接続されている。各電源ケーブル8は、電源分配器9から延びている。電源分配器9は、電源へ繋がれているが、電源分配器9と電源との間には、ブレーカー10が設けられている。ブレーカー10は、信号受信部10aを備えている。信号受信部10aは、配線12aを介して検出器12と接続されており、検出器12が備える発信部121から発信される信号に基づいてトリップする。ブレーカー10や検出器12は、後に説明する燃焼停止装置11に含まれるため、燃焼停止装置11について説明する際に、さらに詳細に説明する。
【0017】
本実施形態において、冷媒3は、フッ素系絶縁性冷媒を採用しているが、他の冷媒を採用してもよい。冷媒3は、電気絶縁性及び熱伝導性を有し、かつ、常温で蒸発し易い液体(液状冷媒)である。なお、常温とは、例えば、液浸冷却装置1が設置される地域の年間の平均気温を意味する。このような冷媒3としては、例えば、3M社製のフロリナート(3M社の商標)や、同じく3M社製のノベック(3M社の商標)がある。冷媒3の液面3aは、ICT機器41~48の全体が冷媒3に浸漬されるように、ICT機器41~48の上側に位置している。液浸槽本体5において液面3aより上側は、空気層5aとなっている。
【0018】
冷媒3に浸漬されたICT機器41~48のいずれかにおいて燃焼が生じると、その影響によって、冷媒3からガス成分が発生することがある。
【0019】
液浸槽2には、冷媒冷却装置50が接続されている。冷媒冷却装置50は、熱交換器53と冷水設備55を備えている。液浸槽2は、第1循環路51を介して熱交換器53と接続されている。第1循環路51には、ポンプ52が配設されており、ポンプ52が作動することで、冷媒3が液浸槽2と熱交換器53との間で循環する。熱交換器53と冷水設備55とは第2循環路54で接続されている。第2循環路54には、冷水設備55で冷却された水が循環している。冷水設備55で冷却された水は、熱交換器53で冷媒3と熱交換することで、冷媒3を冷却する。
【0020】
ここで、再び
図2を参照すると、液浸槽2には、燃焼停止装置11が接続されている。燃焼停止装置11には、検出器12、第1配管13、第2配管14及び警告発信部15が含まれる。また、電源分配器9と電源との間に設けられたブレーカー10も燃焼停止装置11に含まれる。燃焼停止装置11は、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2の測定値に基づく燃焼発生判定が困難である場合であっても、適切に燃焼の発生を捕捉し、燃焼を停止するために、ICT機器41~48への通電を一斉に遮断する。なお、ICT機器41~48への通電を一斉に遮断するのは、いずれのICT機器において燃焼が発生しているかを特定することは困難であるからである。
【0021】
検出器12は、ICT機器41~48において生じた燃焼に起因して、プリント基板4bや冷媒3から発生したガス成分を検出するセンサである。検出器12は、ガス成分の濃度を検出することができればよく、従来公知のものを用いることができる。検出器12は、測定値を発信する発信部121を備える。
【0022】
第1配管13は、液浸槽2に接続されている。より具体的に、第1配管13は、液浸槽本体5の空気層5aとなる位置に接続されている。第1配管13は、液浸槽2内のガス成分を検出器12へ導入する。第2配管14も第1配管13と同様に液浸槽2に接続されている。より具体的に、第2配管14は、液浸槽本体5の空気層5aとなる位置に接続されている。第2配管14は、検出器12に導入されたガス成分を液浸槽2内へ戻す。第1配管13及び第2配管14は、蓋6に接続してもよい。
【0023】
このように、第1配管13及び第2配管14によって、空気層5aと検出器12とが接続されていることにより、空気層5aと検出器12との間でガス成分を含んだ空気が循環する。すなわち、検出器12に導入されたガス成分も外部に放出されることなく空気層5aと連通する空間に留まる。このため、空気層5a内のガス成分の濃度が徐々に高まる。このような検出器12、第1配管13及び第2配管14を燃焼検出装置として既存の液浸槽に取り付けることで、液浸槽内で起きた燃焼を検出することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、空気層5aと検出器12間で空気を積極的に循環させるファンのようなものは備えていない。空気層5aと検出器12とは、第1配管13及び第2配管14で接続されており、連続した空間が形成されている。このため、蓋6が閉まっており、燃焼が継続していると、この空間内のガス成分の濃度が上昇する。検出器12は、この濃度を検出する。
【0025】
本実施形態では、ガス成分の濃度に関し、第2閾値と、この第2閾値よりも大きい第1閾値が設定されている。ガス成分の濃度が第2閾値よりも高くなった場合には、警告発信部15によって警告が発信される。そして、ガス成分の濃度が第1閾値よりも高くなった場合には、ブレーカー10がトリップし、ICT機器41~48への電源の供給が遮断される。このとき、アラームが鳴るようにしてもよい。このように閾値を設けているのは、できるだけICT機器41~48の稼働を継続したいとの要望があるためである。すなわち、検出器12がガス成分を検出したら即座に電源の供給を遮断することもできるが、閾値を設けることで、燃焼が継続しており、ガス成分の濃度が高くなった場合にのみ電源の供給を遮断するようにすることができる。また、第1閾値よりも低い第2閾値を設け、ブレーカー10をトリップさせる前に警告発信部15が警告を発信することで、電源の供給が遮断される前に、ICT機器41~48が取り扱うデータのバックアップや退避が可能となる。すなわち、ICT機器41~48が取り扱うデータのバックアップや退避を行うための作業時間を確保することができるようになる。
【0026】
また、第1閾値や第2閾値を設定することで、検出器12による誤検出を回避することができる。一般的に検出器12は、今回検出の対象としているガス成分以外の種々のガス等に反応することが想定される。このため、燃焼に起因しないガスを検出して警告の発信やブレーカー10のトリップが実行されないように、第1閾値や第2閾値を超えた場合に、所定の動作を行うようにしている。
【0027】
なお、本実施形態では、空気中のガス成分の濃度を検出しているため、第1配管13及び第2配管14は空気層5aの位置に接続されているが、第1配管13及び第2配管14は、冷媒3が貯留されている位置に接続するようにしてもよい。この場合、検出器12は、冷媒3中のガス成分の濃度を検出する。
【0028】
つぎに、このような燃焼停止装置11の動作につき、
図4に示すフローチャート及び
図5に示すグラフを参照しつつ説明する。
【0029】
まず、ステップS1では、温度異常検出がされたか否かが判断される。ステップS1における温度異常検出は、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2の測定値に基づいて行われる。ステップS1で肯定判定(YES)となる場合は、ステップS2へ進む。一方、ステップS1で否定判定(NO)となる場合は、ステップS3へ進む。ステップS2では、ICT機器41~48のうち、温度異常を検出した第1温度センサ4e1又は第2温度センサ4e2が設けられたICT機器のみの電源が遮断される。温度異常検出がされた場合は、いずれのICT機器において燃焼が生じているのかが特定できる状態であるので、燃焼が生じているICT機器のみを停止させ、他のICT機器の運転は継続する。なお、燃焼が生じているICT機器への電源の供給を遮断することで燃焼は停止し、周辺の他のICT機器への延焼を回避することができる。
【0030】
ステップS3では、検出器12によるガス成分の濃度検出を行う。なお、説明の都合上、
図4に示すフローチャートでは、ステップS1において否定判定した後のステップS3で濃度検出を行っているが、検出器12による濃度検出自体は、液浸冷却装置1が稼働している間は、常時行われている。検出器12によって取得された検出値は、発信部121を通じてブレーカー10の信号受信部10aへ送られる。
【0031】
ステップS3に引き続いて行われるステップS4では、ブレーカー10が信号受信部10aによって受信した検出値が予め定められた第2閾値よりも大きいか否かを判定する。第2閾値は適宜設定することができるが、本実施形態においては、5ppmに設定されている。なお、ICT機器41~48に燃焼が生じておらず、正常に稼働している場合には、
図5に示す異常発生時よりも前の状態のように、ガス成分の濃度は0ppmである。
【0032】
ステップS4で否定判定(NO)とされた場合は、ステップS3からの処理を繰り返し行う。ICT機器41~48のうち、いずれかで燃焼が起こっている場合には、
図5に示すように、異常発生、すなわち、燃焼が発生した後、ガス成分の濃度は、徐々に高くなる。そして、第2閾値に到達する。この結果、ステップS4で肯定判定(YES)されるようになる。ステップS4で肯定判定された場合には、ステップS5へ進む。
【0033】
ステップS5では、警告発信部15によって警告が発せられる。警告の種類は、どのようなものであってもよい。例えば、ディスプレイにガス成分の濃度が上昇していることを知らせる表示をしてもよいし、ブザー等の警告音を発するようにしてもよい。また、警告灯を点灯させてもよい。本実施形態では、警告灯を点灯させる。警告が発せられたとき、保守管理者は、ICT機器41~48が扱うデータのバックアップ等の作業を進めることができる。
【0034】
ステップS5に引き続いて行われるステップS6では、ブレーカー10が信号受信部10aによって受信した検出値が予め定められた第1閾値よりも大きいか否かを判定する。なお、第1閾値は適宜設定することができるが、本実施形態においては、12ppmに設定されている。
【0035】
ステップS6で否定判定(NO)とされた場合は、ステップS3からの処理を繰り返し行う。ICT機器41~48のうち、いずれかで燃焼が起こっている場合には、
図5に示すように、ガス成分の濃度は、さらに高くなる。この結果、ステップS6で肯定判定(YES)されるようになる。ステップS6で肯定判定された場合には、ステップS7へ進む。
【0036】
ステップS7では、ブレーカー10がトリップし、ICT機器41~48に対し、一括して電源の供給を遮断する。これは、燃焼が発生しているICT機器を特定することができないため、すべてのICT機器41~48に対する電源の供給を遮断するものである。これにより、いずれかのICT機器で発生している燃焼が停止する。この結果、ガス成分の発生が停止し、また、燃焼が発生していないICT機器への延焼を回避することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、ブレーカー10において閾値との比較を行うようにしているが、検出器12において、第1閾値であるとの情報と共に発信部121から信号を発信するようにしてもよい。この場合、ブレーカー10は信号受信部10aで第1閾値であるとの情報を受信することでトリップさせる。
【0038】
なお、電源が遮断されるのは、ICT機器41~48であり、検出器12やポンプ52等の周辺機器の電源の供給は継続している。
【0039】
このように、本実施形態の燃焼停止装置11によれば、液浸冷却装置1によって冷却されるICT機器41~48のいずれかにおける燃焼の発生を検出し、その停止をすることができる。燃焼停止装置11は、ガス成分の検出に基づいて燃焼を停止するので、第1温度センサ4e1や第2温度センサ4e2によって燃焼の発生を検出することができない場合であっても、燃焼の発生の検出及び燃焼の停止をすることができる。燃焼を停止することで、ガス成分の発生を少量に留めることができる。また、発生したガス成分は少量となることから、これを除去するための格別の措置は要しない。
【0040】
(第2実施形態)
つぎに、
図6及び
図7を参照して、第2実施形態について説明する。
図6を参照すると、第2実施形態は、第1実施形態の燃焼停止装置11に替えて、燃焼停止装置61を備えている。燃焼停止装置61は、燃焼停止装置11の構成に加えて、蓋ロック機構22と制御部としての制御ユニット23とを、さらに備えている。その他の構成は、第1実施形態と異なるところがないので、共通する構成要素については、図面中、同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】
蓋ロック機構22は、電動式であり、制御ユニット23と配線22aを介して電気的に接続されている。蓋ロック機構22は、オン状態とされると、蓋6が開かない状態となる。制御ユニット23は、配線12aを介して検出器12と電気的に接続されると共に、配線23aを介してブレーカー10と電気的に接続されている。
【0042】
制御ユニット23は、検出器12の発信部121から受信した検出値の情報に基づいてブレーカー10をトリップさせる。なお、ブレーカー10は、第1実施形態と同一であり、ブレーカー10自体でトリップすることができるため、制御ユニット23を介することなく、検出器12と直接接続するようにしてもよい。
【0043】
制御ユニット23は、検出器12の発信部121から受信した検出値の情報に基づいて、蓋ロック機構22のオン状態とオフ状態との切り替えを行う。具体的に、検出器12が僅かでもガス成分を検出していた場合、制御ユニット23は、蓋ロック機構22をオン状態とし、蓋6が開かないようにする。
【0044】
液浸槽2内で燃焼が起こり、ガス成分が生じている場合に、蓋6が開いた状態であると、ガス成分が大気に放出される。ガス成分が大気に放出されると、液浸槽2内のガス成分の濃度が上昇しないことから、ブレーカー10がトリップしないまま電源の供給が維持される。この結果、燃焼が停止せず、延焼を生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、検出器12がガス成分を検出したときには、燃焼が起きている可能性があるとして、蓋6が開かないようにする。そして、所定の濃度に達したときには、ブレーカー10をトリップさせる。
【0045】
つぎに、第2実施形態の燃焼停止装置61の動作の一例について
図7に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0046】
まず、ステップS11では、蓋6を閉めておくが、蓋ロック機構22はオフ、すなわち、蓋6のロックを解除した状態としておく。ステップS12では、温度異常検出がされたか否かが判断される。なお、ステップS12とステップS12において肯定判定となった場合に行われるステップS13は、
図4に示した第1実施形態におけるステップS1及びステップS2と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0047】
ステップS12で否定判定となった場合に行われるステップS14では、検出器12によるガス成分の濃度検出を行う。そして、ステップS14に引き続いて行われるステップS15では、制御ユニット23によって検出値が0ppmよりも大きいか否かが判断される。ステップS15で肯定判定となった場合には、ステップS16へ進む。一方、ステップS15で否定判定となった場合には、ステップS14からの処理を繰り返す。
【0048】
ステップS16では、制御ユニット23によって蓋ロック機構22をオン状態とする信号が出される。これにより、蓋6がロックされ、開かないようにされる。これにより、蓋6が不用意に開かれることが回避される。この結果、液浸槽2内のガス成分の大気開放が回避され、液浸槽2内のガス成分の濃度が上昇する。
【0049】
ステップS16に引き続いて行われるステップS17からステップS20は、
図4に示した第1実施形態におけるステップS4からステップS7と概ね共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態によれば、蓋6が閉じられている状態で燃焼が起きたときに、蓋ロック機構22によって蓋6が開かないようにされるため、蓋6が開かれることによるガス成分の大気開放が回避される。これにより、液浸槽2内のガス成分の濃度が上昇し、その濃度が第1閾値に到達することで、ブレーカー10が トリップする。この結果、燃焼が停止する。
【0051】
(第3実施形態)
つぎに、
図8から
図12を参照して第3実施形態について説明する。
図8を参照すると、第3実施形態は、第1実施形態の燃焼停止装置11に替えて、燃焼停止装置62を備えている。燃焼停止装置61は、燃焼停止装置11の構成に加えて、吹出口31aを備えたダクト31と、ファンユニット32と、ダクト31とファンユニット32との間で空気を循環させるファン32bを備えている。ファンユニット32は、内部が空洞となっている吸込部32aを備え、ファン32bは、この吸込部32a内に内蔵されている。その他の構成は、第1実施形態と異なるところがないので、共通する構成要素については、図面中、同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0052】
液浸槽2は、液浸槽本体5の上縁部の一端縁2aに、ヒンジ7を介して開閉可能に装着された蓋6を有している。第1実施形態では、蓋6が開いた状態のときに燃焼が発生していると、燃焼によって発生したガス成分が大気放出される。この結果、燃焼が起きているにもかかわらず、ブレーカー10がトリップせず、ICT機器41~48への電源の供給が遮断されないことが想定される。そこで、本実施形態では、蓋6が開いた状態においても、ガス成分を捕捉し、その濃度が閾値を超えるとブレーカー10がトリップするようにしている。
【0053】
図9を参照すると、ダクト31は、蓋6が取り付けられている液浸槽本体5の上縁部の一端縁2aに対向する他端縁2bに配置されている。ダクト31には、一端縁2a側に向かって空気を吹き出する吹出口31aを備えている。
【0054】
作図の都合上、
図8では、ファンユニット32は、蓋6と離れた位置に描かれているが、本実施形態のファンユニット32は、
図9に示すように、蓋6の内壁面に設けられている。ファンユニット32の一部である吸込部32aは、蓋6の内周面に設けられ、
図11に示すように、開いた蓋6が概ね立った状態となるときに、下方に向いて開口する吸込口32a1を備えている。吸込部32a内には、ファン32bが内蔵されている。ファン32bが作動すると、吸込口32a1から空気が吸い込まれる。ファン32bは、蓋6が開いた状態とされるときに作動する。ファン32bは、蓋6が開いたときに自動的に作動するようにしてもよいが、本実施形態では、保守員が蓋6を開く際に手動でファン32bの電源を入れ、ファン32bを作動させるようにしている。
【0055】
ダクト31とファンユニット32とは、配管33によって接続されている。ファンユニット32においてファン32bが作動すると、
図9に示す矢示35aのように空気が流れ、矢示35bのように配管33を通じてダクト31へ空気が流れ込む。そして、空気は、
図9に示す矢示35cのようにダクト31の全域に広がり、
図9や
図10に示す矢示35dのように吹出口31aから空気が吹き出す。
図12を参照すると、吹出口31aから吹き出した空気は、矢示35dのように吸込部32aが設けられている一端縁2a側に向かって流れる。このような空気の流れは、恰も液浸槽本体5の開口部を覆うエアカーテンのような機能を発揮する。このため、液浸槽2内で発生したガス成分は、矢示35dのような空気の流れに捕捉されて、その流れに乗る。矢示35dのような空気の流れは、矢示35eのように吸込口32a1を通じて吸込部32aへ吸い込まれる。このようにファン32bが作動することで、空気の循環経路が形成される。そして、その流れにガス成分が徐々に取り込まれることで、循環する空気中のガス成分の濃度が上昇する。
【0056】
本実施形態においても第1配管13と第2配管14が設けられている。第1配管13は、ファン32bによって循環する空気を検出器12へ導入するように設けられている。具体的に、本実施形態では、吸込部32aと検出器12とが第1配管13によって接続されている。なお、本実施形態では、第2配管14は第1配管13と共に被覆管によって纏められて吸込部32aと検出器12との間に設けられているが、第2配管14は、空気が循環する経路上に接続されていなくてもよい。例えば、第2配管14は、液浸槽本体5の矢示35dで示す空気の流れよりも下側の位置に接続されていてもよい。ガス成分を含んだ空気が液浸槽本体5内に戻されれば、再び、空気の流れに合流することができ、循環する空気におけるガス成分の濃度を高めることができるからである。
【0057】
図9や
図10を参照すると、検出器12が2台設けられているが、これは、一方の検出器12に不具合が発生した場合であってもガス成分の検出を継続することができるようにするための措置である。
【0058】
本実施形態によれば、蓋6を開けた状態のときに燃焼が生じていても、発生したガス成分が大気放出されることがなく、検出器12に流れ込むガス成分の濃度が徐々に高くなる。この結果、ガス成分の濃度が第1閾値に到達するとブレーカー10がトリップし、ICT機器41~48への電源の供給が遮断され、燃焼が停止する。
【0059】
なお、吸込部32aの設置位置は、蓋6の内周面に限定されるものではない。例えば、液浸槽本体5の上縁部近傍に設けるようにしてもよい。要は、吸込部32aは、液浸槽本体5内のガス成分が大気放出されないように捕捉することができる位置に設けられていればよい。また、ファン32bの設置位置も吸込部32a内に限定されるものではなく、空気が循環する経路上に設けられていればよい。
【0060】
(第4実施形態)
つぎに、
図13から
図16を参照して第4実施形態について説明する。
図13を参照すると、第4実施形態は、第1実施形態の燃焼停止装置11に替えて、燃焼停止装置63を備えている。燃焼停止装置63は、燃焼停止装置11の構成に加えて、蓋開閉監視センサ21、蓋ロック機構22及び制御ユニット23を備えている。これらのうち、蓋ロック機構22及び制御ユニット23は、第2実施形態が備えている構成要素である。燃焼停止装置63は、さらに、吹出口31aを備えたダクト31と、ファンユニット32と、ダクト31とファンユニット32との間で空気を循環させるファン32bを備えている。これらは、第3実施形態が備えている構成要素である。これらの構成要素のうち、蓋開閉監視センサ21以外は、第2実施形態や第3実施形態と共通し、また、これらの以外の構成は、第1実施形態と異なるところがない。このため、共通する構成要素については、図面中、同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0061】
蓋開閉監視センサ21は蓋6が開いた状態であるのか閉じた状態であるのかを検出する。蓋開閉監視センサ21は、配線21aを介して制御ユニット23と電気的に接続されている。
【0062】
つぎに、このような燃焼停止装置63の動作につき、
図14に示すフローチャート、
図15及び
図16を参照しつつ説明する。
図15は蓋6が閉まった状態であるときの液浸槽2内のガス成分の濃度の時間変化と燃焼停止装置63の各部の状態とを示す説明図である。
図16は蓋6が開いた状態であるときの液浸槽2内のガス成分の濃度の時間変化と燃焼停止装置63の各部の状態とを示す説明図である。
【0063】
まず、ステップS21及びステップS22では、蓋6を閉め、ファン32bを停止した状態としておく。すなわち、
図15に示すように蓋開閉監視センサ21は閉判定を示し、ファン32bは停止、蓋ロック機構22はオフの状態となっている。この状態が動作開始の初期状態である。
【0064】
ステップS22に引き続いて行われるステップS23では、蓋開閉監視センサ21の検出結果に基づいて制御ユニット23によって蓋6が開いた状態であるか否かが判断される。初期状態において蓋6は閉めた状態としているので、保守員によって蓋6が開かれていない場合には、ステップS23で否定判定がされる。一方、保守員により蓋6が開かれている場合には、ステップS23で肯定判定がされる。
【0065】
ステップS23で否定判定された場合は、ステップS24へ進む。ステップS24からステップS32の工程は、
図7に示した第2実施形態におけるステップS12からステップS20と共通するため、その詳細な説明は省略する。なお、蓋6が閉じられており、蓋開閉監視センサ21がその状態を検出しているときは、ファン32bは停止されている。蓋6が閉じられているときは、液浸槽2内のガス成分が大気放出されることがないため、ファンユニット32やダクト31を用いた空気の循環を行う必要がない。そこで、蓋6が閉じられている場合には、ファン32bは停止状態とされる。これにより、消費電力の削減が図られる。
【0066】
また、蓋6が閉じた状態でガス成分の発生が検出された場合には、蓋ロック機構22が作動し、蓋6が開かないようにされる。
【0067】
一方、ステップS23で肯定判定がされた場合は、ステップS33へ進む。ステップS33へ進む場合は、蓋6が開いており、蓋開閉監視センサ21がその状態を検出する。そして、制御ユニット23によってファン32bの作動信号が発信される。そして、ファン32bが回転状態とされることにより、第3実施形態で説明したように、蓋6が開いた状態でガス成分の捕捉が行われるようになる。ステップS33でファン32bが回転し始めた後は、ステップS34へ進む。ステップS34からステップS39の工程及びステップS39で肯定判定された場合のステップS32は、
図4に示した第1実施形態におけるステップS1からステップS7と共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0068】
以上、説明したように本実施形態の燃焼停止装置63によれば、蓋6が閉じた状態で燃焼が行っている場合に、蓋6が開かれることが回避され、ガス成分の大気放出が回避され、検出器12による検出ができるようになる。また、蓋6が開いた状態となるときも、ファンユニット32が作動することで、検出器12によるガス成分の検出が可能となる。
【0069】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 液浸冷却装置 2 液浸槽
3 冷媒 4a 筐体
4b プリント基板 4c CPU
4d セラミックコンデンサ 5 液浸槽本体
6 蓋 10 ブレーカー
11、61、62、63 燃焼停止装置
12 検出器 13 第1配管
14 第2配管 21 蓋開閉監視センサ
22 蓋ロック機構 23 制御ユニット
31 ダクト 32 ファンユニット
32a 吸込部 32a1 吸込口
32b ファン 41~48 ICT機器