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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】電磁撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/115 20060101AFI20231115BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B22D11/115 C
B22D11/10 330E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020002141
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109195
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 純
(72)【発明者】
【氏名】梅津 健司
(72)【発明者】
【氏名】植木 勉
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5073531(JP,B2)
【文献】特開2008-173644(JP,A)
【文献】特開平11-156502(JP,A)
【文献】特許第4769067(JP,B2)
【文献】特開2018-103198(JP,A)
【文献】特開2010-214392(JP,A)
【文献】特開2007-105745(JP,A)
【文献】特開2006-110598(JP,A)
【文献】特開2002-028761(JP,A)
【文献】特開昭60-072652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/115
B22D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型の長辺部を介して相互に対向する位置に配置される第1の鉄心および第2の鉄心と、
前記第1の鉄心に対して前記鋳型の鋳造幅方向に巻き回された第1のコイルと、
前記第2の鉄心に対して前記鋳型の鋳造幅方向に巻き回された第2のコイルと、
を有し、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに流れる交流電流に基づく進行磁場を鋳造幅方向に発生させることにより、浸漬ノズルの吐出口から前記鋳型の短辺部側に向けて前記鋳型の中空部に注入された溶融金属を電磁撹拌する電磁撹拌装置であって、
前記第1の鉄心および前記第2の鉄心は、それぞれ、第1の領域と、前記第1の領域と鋳造方向の位置が異なる領域であって、前記第1の領域よりも前記鋳型の長辺部との間隔が短い領域である第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第1の鉄心および前記第2の鉄心の鋳造方向における両端の間の一部を鋳造方向の範囲とする領域であり、
前記第1の領域の鋳造方向の範囲と、前記浸漬ノズルの吐出口から前記鋳型の短辺部側に向かう溶融金属の流れである吐出流が流れる鋳造方向の範囲とが重複する範囲の方が、前記第2の領域の鋳造方向の範囲と、前記吐出流が流れる鋳造方向の範囲とが重複する範囲よりも長く、
前記電磁撹拌の際に、前記第1の領域の鋳造方向の範囲と鋳造方向の範囲が同じ範囲における前記溶融金属の磁束密度を、前記第2の領域の鋳造方向の範囲と鋳造方向の範囲が同じ範囲における前記溶融金属の磁束密度の最大値よりも小さくすることを特徴とする電磁撹拌装置。
【請求項2】
前記第2の領域の鋳造方向の範囲と、前記吐出流が流れる鋳造方向の範囲とは重複しないことを特徴とする請求項1に記載の電磁撹拌装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第1の領域に対向する前記鋳型の面と平行な1つの平面の領域であり、
前記第2の領域は、前記コイルが巻き回されていない領域であり、且つ、鋳造幅方向において間隔を有して配置される複数の領域であり、且つ、前記第2の領域に対向する前記鋳型の面と平行な平面の領域であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁撹拌装置。
【請求項4】
前記浸漬ノズルの吐出口は、鋳造幅方向を基準として第1の側に傾斜しており、
前記第1の側は、前記浸漬ノズルから溶融金属が吐出される方向側であり、
前記第1の領域は、前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における第1の端部よりも前記第1の側の領域を含み、
前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における前記第1の端部は、前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の第2の側の端部であり、
前記第2の側は、前記第1の側の反対側であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項5】
前記第2の領域は、前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における前記第1の端部よりも前記第2の側の領域を含むことを特徴とする請求項4に記載の電磁撹拌装置。
【請求項6】
前記浸漬ノズルの吐出口から斜め下方に溶融金属が吐出され、
前記第1の側は、下側であり、
前記第2の側は、上側であり、
前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における前記第1の端部は、前記浸漬ノズルの吐出口の上側の端部であることを特徴とする請求項4または5に記載の電磁撹拌装置。
【請求項7】
前記第1の領域の上側の端部の鋳造方向における位置は、前記浸漬ノズルの吐出口の上側の端部の鋳造方向における位置から前記浸漬ノズルの下側の端部の鋳造方向の位置までの範囲の何れかの位置であることを特徴とする請求項6に記載の電磁撹拌装置。
【請求項8】
前記第1の鉄心の前記第1の領域の、前記鋳型の長辺部と対向する面の鋳造厚方向の位置は、前記第1のコイルの領域のうち、前記鋳型の長辺部と対向する位置にある領域の鋳造厚方向の両端の範囲内にあり、
前記第2の鉄心の前記第1の領域の、前記鋳型の長辺部と対向する面の鋳造厚方向の位置は、前記第2のコイルの領域のうち、前記鋳型の長辺部と対向する位置にある領域の鋳造厚方向の両端の範囲内にあることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項9】
前記第1の鉄心および前記第2の鉄心は、それぞれ、前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の領域よりも前記鋳型の長辺部との間隔が狭い領域である第3の領域とを有し、
前記第3の領域は、前記第1の領域よりも第1の側に配置され、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも第2の側に配置され、
前記第1の側は、前記浸漬ノズルから溶融金属が吐出される方向側であり、
前記第2の側は、前記第1の側の反対側であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項10】
前記第3の領域は、前記コイルが巻き回されていない領域であり、且つ、鋳造幅方向において間隔を有して配置される複数の領域であり、且つ、前記鋳型の前記第3の領域に対向する面と平行な平面の領域であることを特徴とする請求項9に記載の電磁撹拌装置。
【請求項11】
前記第2の領域と、前記鋳型の長辺部との間隔と、前記第3の領域と、前記鋳型の長辺部との間隔とは同じであることを特徴とする請求項9または10に記載の電磁撹拌装置。
【請求項12】
前記浸漬ノズルの吐出口は、鋳造幅方向を基準として前記第1の側に傾斜していることを特徴とする請求項9~11の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項13】
前記浸漬ノズルの吐出口から斜め下方に溶融金属が吐出され、
前記第1の領域の下端の鋳造方向における位置は、前記浸漬ノズルの吐出口の下端の鋳造方向における位置、または、前記浸漬ノズルの吐出口の下端の鋳造方向における位置よりも下であることを特徴とする請求項9~12の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項14】
前記浸漬ノズルの吐出口から斜め下方に溶融金属が吐出され、
前記第3の領域の下端の鋳造方向における位置と、前記鋳型の長辺部の下端の鋳造方向における位置は同じであることを特徴とする請求項9~13の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
【請求項15】
ZL[mm]を、前記第2の領域の鋳造方向における前記第2の側の端部から、前記第3の領域の鋳造方向における前記第1の側の端部までの鋳造方向の長さとし、
ZD[mm]を、前記鋳型の中空部内の溶融金属の湯面から前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における前記第1の端部までの鋳造方向における長さとし、
ZH[mm]を、前記浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の長さとし、
W[mm]を、前記鋳型の短辺部の内壁面の鋳造幅方向の間隔とし、
D[mm]を、前記浸漬ノズルの吐出口の重心位置における前記浸漬ノズルの外径とし、
θ[°]を、前記浸漬ノズルの吐出角として、
以下の(A)式を満たすことを特徴とする請求項9~14の何れか1項に記載の電磁撹拌装置。
ZL≧ZD+ZH+{(W-D)÷2}×tanθ ・・・(A)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁撹拌装置に関し、特に、鋳片を連続鋳造するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
スラブ等の鋳片を連続鋳造する際には、取鍋からタンディッシュへ供給された溶融金属は、浸漬ノズルにより鋳型の中空部内(鋳型により囲まれる領域)に注入される。
鋳片の品質を向上させるための装置として、電磁ブレーキがある。特許文献1に記載されているように、電磁ブレーキは、鋳型の長辺部を介して相互に対向するように配置された一組の電磁石のコイルに電流を流して直流磁場(静磁場)を鋳型の中空部内の溶融金属に印加することにより、溶融金属の下方に向かう流速を低減させる。
【0003】
このような電磁ブレーキの他に、鋳片の品質を向上させるための装置として、電磁撹拌装置がある。電磁撹拌装置は、鋳型の長辺部を介して相互に対向するように配置された一組の電磁石のコイルに電流を流して交流磁場を鋳型の中空部内の溶融金属に印加することにより、溶融金属に対して水平面において周回するような撹拌力を付与し、溶融金属を電磁撹拌させる。このように、電磁ブレーキと電磁撹拌装置は、何れも溶融金属の流れを制御するものであるが、これらの機能は異なるものである。
【0004】
電磁撹拌装置に関する技術として、特許文献2~5の記載の技術がある。
特許文献2には、浸漬ノズルの吐出口の上端の位置が、電磁撹拌装置の下端の位置よりも低い位置となるように電磁撹拌装置を配置することが記載されている。また、特許文献2には、電磁撹拌装置の下方に、磁気遮蔽板を設けることが記載されている。磁気遮蔽板は、電磁撹拌装置によって発生する磁場による鋳型の中空部内での溶融金属の流れの乱れを抑制するためのものとされている。
【0005】
特許文献3には、電磁撹拌装置の鉄心と鋳型との間隔が、鉄心の鋳造方向の中央部において最も大きくなるようにすることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、電磁撹拌装置の鉄心が、鋳型の長辺部に平行な方向に間隔を有して配置される複数の突極であって、先端面が鋳型の長辺部と間隔を有して対向するように配置される複数の突極を、鋳造方向の上下のそれぞれに有するようにすることが記載されている。また、特許文献4には、鉄心の突極のそれぞれにコイルが巻き回されるようにすることが記載されている。
【0007】
特許文献5には、電磁撹拌装置の鉄心に対し、鋳型の長辺部に平行な方向にコイルが巻き回されるようにすること、コイルが巻き回される領域よりもコイルが巻き回されていない領域の方が鉄心の上端面が高い位置になるようにすること、鉄心のコイルが巻き回されていない領域の鋳型側の下端の領域を切除することが記載されている。鉄心を切除する鋳造方向の長さは、コイルが巻き回される領域における鉄心の上端面と、コイルが巻き回されていない領域における鉄心の上端面との鋳造方向の長さの差とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-224800号公報
【文献】特許第5073531号公報
【文献】特開2008-173644号公報
【文献】特開平11-156502号公報
【文献】特許第4769067号公報
【文献】特許第5353883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2~5に記載の技術では、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の位置と電磁撹拌装置の鋳造方向の位置とが重複する場合の浸漬ノズルと電磁撹拌装置との位置関係を考慮していない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術では、浸漬ノズルから吐出される溶融金属の流れ(吐出流)と、電磁撹拌装置により溶融金属に付与される撹拌力による溶融金属の流れ(撹拌流)との干渉を抑制するために、吐出口の上端の位置を電磁撹拌装置の下端よりも低い位置とすることを前提とする技術である。従って、特許文献2に記載の技術では、吐出口上端より下方において溶融金属の流動を制御することが全くできない。また、鋳型の内部に磁気遮蔽板を配置しなければならない。このため、磁気遮蔽板を配置するためのコストがかかると共に、磁気遮蔽板を配置するための場所を確保しなければならない。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術では、鋳型の中空部内の溶融金属の磁束密度分布を平坦化し、磁束密度の鋳造方向における分布を均一化する。従って、鋳型の中空部内の溶融金属に付与される撹拌力の鋳造方向における分布も均一化される。よって、吐出流と撹拌流との干渉を抑制することが容易ではない。
【0012】
また、特許文献4に記載の技術では、電磁ブレーキ装置の機能と、電磁撹拌装置の機能とを1つの装置で実現するための技術である。従って、鋳型の突極に鋳型の長辺部の面に垂直な方向にコイルを巻き回さなければならない。よって、コイルを配置するスペースが限定される。また、コイルに流れる電流により発生する交流磁場の領域は、鋳造方向の上下の領域に限定される。このため、撹拌流を制御できる範囲が限定される。
【0013】
また、特許文献5に記載の技術では、コイルが巻き回される領域よりも、コイルが巻き回されていない領域の方が、鉄心の上端面が高い位置になるようにする。従って、コイルが巻き回されていない領域における鉄心の上端面の位置を、溶融金属の湯面(メニスカス)の位置に合わせるようにしても、鋳型の内壁面付近において、湯面には内壁面から押し戻そうとする方向の大きな撹拌力が付与される。このため、鋳型の内壁面付近で湯面が盛り上がり、湯面に大きな変動が生じ、凝固表面の乱れや鋳型の中空部内の溶融金属上にほぼ均一に添加されているパウダーが溶融金属に巻き込まれる等、鋳片の安定した品質が確保できなくなる虞がある。尚、パウダーは、溶融金属の保温、溶融金属の酸化の防止、介在物の捕捉、鋳型と溶融金属(或いは凝固シェル)との間の潤滑等の目的で添加されるものである。
【0014】
また、特許文献5に記載の技術では、鉄心を切除する鋳造方向の長さは、コイルが巻き回される領域における鉄心の上端面と、コイルが巻き回されていない領域における鉄心の上端面との鋳造方向の長さの差である。特許文献5では、この差をコイルの厚みと同じ40mmとすることが記載されている。この差を大きくすると、電磁撹拌装置の本来の目的が達成されなくなる。このため、鉄心を切除する鋳造方向の長さを大きくすることができない。よって、吐出流と撹拌流との干渉を抑制することが容易ではない。
【0015】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の位置と電磁撹拌装置の鋳造方向の位置とが重複する場合でも、吐出流と撹拌流との干渉を抑制することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電磁撹拌装置は、鋳型の長辺部を介して相互に対向する位置に配置される第1の鉄心および第2の鉄心と、前記第1の鉄心に対して前記鋳型の鋳造幅方向に巻き回された第1のコイルと、前記第2の鉄心に対して前記鋳型の鋳造幅方向に巻き回された第2のコイルと、を有し、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに流れる交流電流に基づく進行磁場を鋳造幅方向に発生させることにより、浸漬ノズルの吐出口から前記鋳型の短辺部側に向けて前記鋳型の中空部に注入された溶融金属を電磁撹拌する電磁撹拌装置であって、前記第1の鉄心および前記第2の鉄心は、それぞれ、第1の領域と、前記第1の領域と鋳造方向の位置が異なる領域であって、前記第1の領域よりも前記鋳型の長辺部との間隔が短い領域である第2の領域とを有し、前記第1の領域は、前記第1の鉄心および前記第2の鉄心の鋳造方向における両端の間の一部を鋳造方向の範囲とする領域であり、前記第1の領域の鋳造方向の範囲と、前記浸漬ノズルの吐出口から前記鋳型の短辺部側に向かう溶融金属の流れである吐出流が流れる鋳造方向の範囲とが重複する範囲の方が、前記第2の領域の鋳造方向の範囲と、前記吐出流が流れる鋳造方向の範囲とが重複する範囲よりも長く、前記電磁撹拌の際に、前記第1の領域の鋳造方向の範囲と鋳造方向の範囲が同じ範囲における前記溶融金属の磁束密度を、前記第2の領域の鋳造方向の範囲と鋳造方向の範囲が同じ範囲における前記溶融金属の磁束密度の最大値よりも小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の位置と電磁撹拌装置の鋳造方向の位置とが重複する場合でも、吐出流と撹拌流との干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一般的な電磁撹拌装置における溶鋼の流れの一例を説明する図である。
図2A】連続鋳造設備の概略構成の第1の例を示す第1の位置での横断面図である。
図2B】連続鋳造設備の概略構成の第1の例を示す第2の位置での横断面図である。
図3】連続鋳造設備の概略構成の第1の例を示す縦断面図である。
図4】浸漬ノズルの構成の一例を示す図である。
図5】鉄心の構成の第1の例を示す図である。
図6】溶鋼の流れの第1の例を説明する図である。
図7】撹拌力と湯面からの距離との関係の第1の例を示す図である。
図8】連続鋳造設備の概略構成の第2の例を示す縦断面図である。
図9】鉄心の構成の第2の例を示す図である。
図10】溶鋼の流れの第2の例を説明する図である。
図11】撹拌力と湯面からの距離との関係の第2の例を示す図である。
図12】連続鋳造設備の概略構成の第3の例を示す縦断面図である。
図13】撹拌力と湯面からの距離との関係の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(経緯)
まず、本発明の実施形態に至った経緯について説明する。背景技術の欄で説明したように、電磁撹拌装置の鉄心と鋳型との間隔を一定にしないようにする技術はある。しかしながら、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、何れの技術を用いても、吐出流と撹拌流との干渉を十分に抑制することができない。そこで、本発明者らは、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向の位置と電磁撹拌装置の鋳造方向の位置とが重複する場合の浸漬ノズルと電磁撹拌装置との位置関係に着目した。
【0020】
図1は、一般的な電磁撹拌装置における溶鋼の流れの一例を説明する図である。各図に示すX-Y-Z座標は、各図における向きの関係を示すものである。〇の中に×が付されている記号は、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。〇の中に●が付されている記号は、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示す。尚、以下の説明では、溶融金属が溶鋼である場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図1において、Z軸の正の方向を上方向として紙面を見たときの左側の図(紙面に垂直な方向をX軸としてX-Y-Z座標を表記している図)は、鋳型の短辺部側から見たときの吐出流および撹拌流の流れの一例を概念的に示す図である。図1の左側の図において、矢印線は、時刻tにおける吐出流の流れを示し、〇の中に×が付されている記号と〇の中に●が付されている記号は、時刻tにおける撹拌流を示す。
【0022】
また、図1において、Z軸の正の方向を上方向として紙面を見たときの右側の図(紙面に垂直な方向をY軸としてX-Y-Z座標を表記している図)は、鋳型の長辺部側から見たときの吐出流および撹拌流の一例を概念的に示す図である。図1の右側の図において、実線の矢印線は、時刻tにおける吐出流を示し、白抜きの矢印線は、時刻tにおける撹拌流を示す。矢印線が長いほど、流速が速いことを示す。また、溶鋼M内の〇の中に●が付されている記号と〇の中に×が付されている記号の円の大きさは、溶鋼Mの流速を示す。図1の左側の図では、当該円の大きさは同じであるので、流速が同じであることを示す。尚、図1の右側の図では、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)の半分の領域のみを示す。
【0023】
電磁撹拌装置は、鉄心110、120と、コイル130、140とを有する。
電磁撹拌装置を動作させる際には、例えば、コイル130、140に三相交流電流を流すことにより、鋳造厚方向(Y軸方向)の端部側の領域の溶鋼Mに対して、鋳造幅方向(X軸方向)に沿って相互に逆向きの進行磁場を発生させる。この進行磁場はファラデーの法則およびレンツの法則に従って溶鋼Mに渦電流を発生させる。この渦電流と進行磁場はフレミングの左手の法則に基づいて溶鋼Mに撹拌力を形成する。この撹拌力は水平面において、鋳型の一組の長辺部151、152および一組の短辺部153の内壁面に沿うように周回するような撹拌流(溶鋼Mの流れ)が発生する。尚、図1では図示を省略するが、短辺部153とは別に、鋳型の軸Aを対称軸として短辺部153に対して線対称となるように短辺部153と同じ構成の短辺部が配置される。電磁撹拌装置は、このような撹拌流により、連続鋳造設備で連続鋳造される鋳片の表面に気泡や異物(介在物等)が付着し、鋳片内に残留することを抑制する。即ち、電磁撹拌装置は、鋳片の品質を向上させることを目的とする装置である。
【0024】
図1の左側の図に示すように、一般的な電磁撹拌装置においては、電磁撹拌装置の鉄心110、120の、鋳型の長辺部151、152と間隔を有して対向する面が鋳造方向(Z軸方向)に平行であり、鉄心110、120と、鋳型の長辺部151、152との間隔は一定である。尚、鋳型の長辺部151、152の背面(溶鋼M側に位置する面とは反対側の面)には、鋳型の支持や冷却等のために、バックプレート161、162が配置される。鋳型の短辺部153の背面にも、バックプレート163が配置される。
【0025】
ここでは、鉄心110、120の上端が、溶鋼Mの湯面(メニスカス)に一致するように、浸漬ノズル170の吐出口170aから吐出される溶鋼Mが調整されている場合を例に挙げて示す。また、ここでは、溶鋼Mが斜め下方に吐出されるように、浸漬ノズル170の吐出口170aの吐出角が定められている場合を例に挙げて示す。ここで、吐出流は、上昇流や下降流に転じる前の浸漬ノズル170の吐出口170aから吐出される溶鋼Mの流れを指すものとする。
【0026】
この場合、鋳造方向(Z軸方向)の位置が鉄心110、120の上端の位置から下端の位置までの鋳型の中空部内の領域において、電磁撹拌装置から溶鋼Mに与えられる撹拌力は同程度になる。従って、撹拌流の流速も同程度になる(図1の右側の図の白抜きの矢印線の長さが同じであることを参照)。よって、吐出流が流れる領域において、溶鋼Mの流速は、吐出流に撹拌流が加わり、鋳型の短辺部153に近づくにつれて速くなる。強い撹拌流の場合、このように加速した溶鋼Mが鋳型の短辺部153に衝突すると、当該衝突により発生する上昇流および下降流の流速も速くなる。上昇流の流速が速くなると、溶鋼Mの湯面の変動や、溶鋼MへのパウダーPの巻き込み量が増加する。また、下降流の流速が速くなると、介在物や気泡が下方に深く進入し、浮上することなく凝固して鋳片に残留する量が増加する。以上のように、吐出流に強い撹拌流が加えられると、パウダーP、気泡、および介在物が溶鋼Mに巻き込まれたまま鋳片が連続鋳造され、鋳片内部の品質が劣化する。
さらに、強い撹拌流によって加速した溶鋼Mが図3に示す凝固シェルSに衝突すると、当該衝突により凝固シェルSが再溶解することがある。凝固シェルSが再溶解すると、再溶解部が起点となって凝固シェルSが破け、溶鋼漏れ(ブレークアウト)などの操業トラブルに繋がることがあり、その場合には生産性が著しく阻害される。
【0027】
一般的な電磁撹拌装置では、このような鋳片内部の品質の劣化、または、凝固シェルSの再溶解を抑制するために撹拌流の流速を遅くすると、電磁撹拌装置の本来の目的である鋳片表面の品質の向上を十分に図ることができない。一方で、撹拌流の流速を速くすると、吐出流に撹拌流が加わり、不純物を溶鋼M内に残留させ、鋳片内部の品質の向上を十分に図ることができず、また、凝固シェルSを再溶解させ、生産性に悪影響を与える。このように、一般的な電磁撹拌装置では、鋳片表面の品質の向上と、内部の品質の向上および生産性の向上とには、相反したトレードオフの関係がある。
【0028】
そこで、本発明者らは、吐出流が流れる領域における撹拌流の流速を、それ以外の領域における撹拌流の流速よりも遅くすることにより、吐出流と撹拌流との干渉を低減すればよいことに想到した。このようにすれば、鋳型の短辺部153に近い領域での溶鋼Mの流速を遅くすることができるので、上昇流および下降流の流速、および、凝固シェルSへの衝突流の流速も遅くすることができる。従って、パウダーP、気泡、および介在物の溶鋼Mへの巻き込み量を低減させ、さらに、凝固シェルSの再溶解を抑制することができる。
【0029】
本発明の実施形態は、以上のような経緯に基づいてなされたものである。以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
【0030】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図2Aおよび図2Bは、本実施形態の電磁撹拌装置を配設した連続鋳造設備の概略構成の一例を示す横断面図である。図2Aは、図3のI-I断面図であり、図2Bは、図3のII-II断面図である。図3は、本実施形態の電磁撹拌装置を配設した連続鋳造設備の概略構成の一例を示す縦断面図である。図3は、図2AのI-I断面図である。
図2Aおよび図2Bおよび図3において、本実施の形態の連続鋳造設備は、長辺部211~212および短辺部213~214を有する鋳型と、バックプレート221~224と、浸漬ノズル230と、鉄心241~242およびコイル251~252を有する電磁撹拌装置と、を有する。
【0031】
鋳型は、溶鋼Mを冷却して所定の形状に凝固させ、所定の幅と厚さを有する鋼片を連続鋳造するための型である。図3に示すように、鋳型の下部の領域では、長辺部211~212および短辺部213~214の内壁面側に凝固シェルSが形成される。尚、冷却に伴い凝固シェルSは成長するので、凝固シェルSの厚みは、Z軸の負の方向側であるほど厚くなる。そして、全体が凝固すると鋳片となる。
【0032】
図2Aおよび図2Bに示すように、鋳型の中空部における水平断面の形状は長方形である。図2Aおよび図2Bに示す鋳型の中空部の横(長辺)方向(X軸方向)が鋳造幅方向(鋼片の幅方向)となる。また、図2Aおよび図2Bに示す鋳型の縦(短辺)方向(Y軸方向)が鋳造厚方向(鋼片の厚み方向)となる。また、図2Aおよび図2Bの紙面に垂直な方向(Z軸方向)が鋳造方向(鋳片の長手方向)となる。
【0033】
このような構成の鋳型は、鋳造厚方向(Y軸方向)で間隔を有して相互に対向して配置される長辺部211、212と、鋳造幅方向(X軸方向)で間隔を有して相互に対向して配置される短辺部213、214とを有する。短辺部213、214の鋳造幅方向(X軸方向)の位置を調整することにより、鋳型の中空部の長辺方向(鋳造幅方向)の長さを調節することができる。一方、鋳型の長辺部211、212の位置も調節することができ、長辺部211、212の位置を調節するとともに、短辺部213、214を所望の大きさのものに取り替えることにより、鋳型の中空部の短辺方向(鋼片厚方向)の長さを調節することができる。
【0034】
鋳型の長辺部211、212の背面(溶鋼M側に位置する面とは反対側の面)には、それぞれ、バックプレート221、222が、長辺部211、212を支持するように配置される。鋳型の短辺部213、214の背面には、それぞれ、バックプレート223、224が、短辺部213、214を支持するように配置される。鋳型(長辺部211~212、短辺部213~214)とバックプレート221~224には、冷却水が通る経路が形成されている。当該経路に冷却水を流すことにより、連続鋳造設備を冷却しながら、溶鋼Mを凝固させる。
【0035】
図2Aおよび図3に示すように、鋳型の中空部には、浸漬ノズル230が配置される。図3では、浸漬ノズル230の先端側の領域のみを示す。浸漬ノズル230の軸と、鋳型の中空部の軸とが一致するように、浸漬ノズル230は配置される。図4は、浸漬ノズル230の構成の一例を示す図である。具体的に図4は、浸漬ノズル230の軸を通り、且つ、鋳造幅方向(X軸方向)に沿って浸漬ノズル230を切った場合の浸漬ノズル230の断面を示す図である。図4でも図3と同様に、浸漬ノズル230の先端側の領域のみを示す。
【0036】
図4に示すように、浸漬ノズル230の先端側の側壁部の領域であって、鋳造幅方向(X軸方向)の両側の領域に、吐出口230a、230bが形成されている。吐出口230a、230bは、浸漬ノズル230の軸を対称軸とした線対称となる関係を有する。ここでは、吐出口230a、230bが、短辺部213、214側に向かって斜め下向きに開口している場合を例に挙げて示す。従って、吐出口230a、230bから鋳型の下方に向けて溶鋼Mが吐出される。ここで、浸漬ノズル230の(吐出口230a、230bにおける)吐出角θは、水平方向と吐出口230a、230bの傾斜角とのなす角度のうち小さい方の角度で表されるものとする。図4に示す例では、吐出口230a、230bは、下方向(Z軸の負の方向)に傾斜している。吐出口230aにおける吐出角θと、吐出口230bにおける吐出角θの絶対値は同じである。
【0037】
尚、浸漬ノズル230は、鋳型の中空部の高さ方向における位置を調節することができるようになっている。更に、吐出口230a、230bが詰まってしまうことを防止するために、アルゴンガス(Arガス)等の不活性ガスを吹き込みながら溶鋼Mを吐出するようにしている。浸漬ノズル230自体は公知の技術で実現することができ、図4に示すものに限定されない。
【0038】
電磁撹拌装置は、浸漬ノズル230から吐出されて鋳型の上部に満たされた溶鋼M(未凝固部分)に対して進行磁場を発生させることにより溶鋼Mに電磁力を作用させて、溶鋼Mに撹拌力Fを付与し、鋳型の長辺部211~212および短辺部213~214の内壁面に沿うように周回するような撹拌流を生じさせ、溶鋼Mを撹拌する装置である。
【0039】
電磁撹拌装置はリニアモータであり、長辺部211、212を介して相互に間隔を有して対向するように配置される鉄心241、242と、鉄心241、242に対して巻き回されたコイル251、252とを有する。
【0040】
本実施形態では、コイル251~252に、三相交流電力が印加される場合を例に挙げて説明する。従って、コイル251~252には、それぞれ、各相の複数のコイルが含まれる。図2Aおよび図2Bにおいて、U、V、W、-U、-V、-Wは、それぞれ、U相、V相、W相、-U相、-V相、-W相の交流電力が供給されるコイルであることを示す。ここで、U相に対して60度位相が進んでいる相は-W相である。同様に、U相に対して120度位相が進んでいる相はV相、180度位相が進んでいる相は-U相、240度位相が進んでいる相はW相、300度位相が進んでいる相は-V相である。尚、撹拌流を発生させるためのコイル251、252の通電方法は、例えば、特許文献6に記載されているように公知であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図5は、鉄心241の構成の一例を示す図である。尚、鉄心241、242は、同じもので実現することができるので、ここでは、鉄心242の図示を省略する。鉄心241、242は、鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。
【0042】
図5において、鉄心241は、櫛歯部241aと継鉄部241bとを有する。
尚、本実施形態では、鉄心241は、鉄心241の高さ方向(Z軸方向)に垂直な断面と同じ形状および大きさを有する軟磁性体板(例えば、方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板)を、高さ方向(Z軸方向)において積層することにより構成される。従って、鉄心241の高さ方向(Z軸方向)の各位置において、櫛歯部241aと継鉄部241bとには境界線はない。
【0043】
櫛歯部241aは、鋳型の長辺部211(およびバックプレート221)と間隔を有して対向するように、鋳造幅方向(X軸方向)に沿って等間隔に配置される複数の直方体部を有する。櫛歯部241aの各直方体部の形状および大きさは同じである。櫛歯部241aの各直方体部の長手方向は、鋳造方向(Z軸方向)と一致する。図2Aおよび図5では、櫛歯部241aが、10個の直方体部を有する場合を例に挙げて示す。ただし、直方体部の数は、10個に限定されず、電磁撹拌装置の極数等に応じて定められる。櫛歯部241aの直方体部の間の領域に、コイル251が配置される(櫛歯部241aの直方体部の鋳型の長辺部211側の平面にはコイル251は配置されない)。このようにコイル251は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)に巻き回される(即ち、コイル251の軸(コイル軸)は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)と平行である)。
【0044】
継鉄部241bの形状は、直方体である。櫛歯部241aの直方体部の上端面(鋳造方向の上流側の端面)と、継鉄部241bの上端面とは面一となっている。継鉄部241bの鋳造方向(Z軸方向)の長さは、櫛歯部241aの各直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さ(高さ)よりも長い。
【0045】
図3に示す例では、櫛歯部241aの直方体部の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置と、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部(鋳造方向の上流側の端部)の位置とは位置Z2で一致する。また、鉄心241、242は、鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。また、鉄心241、242の上端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、位置Z1で一致する。また、鉄心241、242の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、位置Z4で一致する。また、浸漬ノズル230の先端面(鋳造方向の下流側の端面)の鋳造方向(Z軸方向)の位置Z3は、位置Z2よりも下方であり、位置Z4よりも上方である。
【0046】
また、図3に示す例では、鉄心241の櫛歯部241aの継鉄部241b側の端面の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置(=継鉄部241bの、鉄心241の長辺部211側の端面の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置)は、位置Y1に一致する。位置Y1は、コイル251の最内周に位置する輪郭領域のうち、鉄心241の長辺部211側の端面と対向する位置にある輪郭領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置(の最も長辺部211側の位置)である。図3および図5では、鉄心の継鉄部241bの長辺部211側の端面の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置も、位置Y1である場合を例に挙げて示す。
【0047】
尚、鉄心242は、以上の説明において、長辺部211、バックプレート221、鉄心241、コイル251、Y1、Y2をそれぞれ、長辺部212、バックプレート222、鉄心242、コイル252、Y3、Y4に読み替えたものとなる。従って、ここでは、鉄心242の詳細な説明を省略する。
【0048】
図6は、本実施形態の電磁撹拌装置における溶鋼の流れの一例を説明する図である。図6は、図1に対応する図であり、表記の方法は、図1と同じである。尚、図6の左側の図において、溶鋼M内の〇の中に●が付されている記号と〇の中に×が付されている記号の円の大きさが大きいほど、撹拌力Fが大きいことを示す。
【0049】
本実施形態では、コイル251、252が配置されていない領域での鉄心241、242と鋳型の長辺部211、212との間隔が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の方が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも上の領域を含む第2の領域よりも長くなるようにする。本実施形態では、コイル251、252が配置されていない領域での鉄心241、242の、長辺部211、212と対向する面は、前記第1の領域、前記第2の領域のそれぞれにおいて、長辺部211、212の、前記第1の領域、前記第2の領域と対向する面と平行な面である。ここで、前記第1の領域は、1つの平面の領域である。前記第2の領域は、鋳造幅方向(X軸方向)において等間隔の複数の領域である。このようにすることにより、前記第1の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔、および、前記第2の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔をそれぞれ一定にすることができる。従って、第1の領域を構成する電磁鋼板、第2の領域を構成する電磁鋼板を、それぞれ同じもので実現することができ、安定して撹拌力Fを生成することができる。
【0050】
従って、図6に示すように、鉄心241、242の、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも上の領域を含む第2の領域においては、図1に示した撹拌流と同様に、速い流速の撹拌流を発生させることができる。一方、鉄心241、242の、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域においては、図1に示した撹拌流よりも、遅い流速の撹拌流を発生させることができる。よって、鋳型の短辺部213、214側で発生する上昇流および下降流の流速、および、凝固シェルSへの衝突流の流速を抑制しつつ、浸漬ノズル230の上端よりも上の領域においては、高速の撹拌流による溶鋼Mの撹拌を実現することができる。これにより、鋳片表面の品質の向上と内部品質の向上、生産性の向上を同時に実現することができる。
【0051】
図7は、撹拌力Fx(FのX軸方向成分)と湯面からの距離との関係の一例を示す図である。図7に示す結果は、実際の鋳型の中空部内の溶鋼Mに発生する電磁力を、数値シミュレーションを行って得たものである。何れの数値シミュレーションにおいても、溶鋼Mの成分を含む操業条件は同じものとした。
【0052】
撹拌力Fxは、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)の中央の位置における鋳型の長辺部から10mmだけ内側の位置において溶鋼Mに作用する撹拌力である。湯面からの距離は、湯面を起点として、鋳造方向の下流側に向かう方向の距離である。尚、図7に示す位置Z1、Z2、Z4は、図3に示した位置Z1、Z2、Z4に対応する。
図7においてグラフ701は、本実施形態の電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。グラフ702は、図1を参照しながら説明した一般的な電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。
【0053】
一般的な電磁撹拌装置では、継鉄部の鋳造方向(Z軸方向)の長さと、櫛歯部の各直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さとが同じになり、継鉄部の上端面・下端面が、櫛歯部の各直方体部の上端面・下端面と一致するようにしたものである。櫛歯部の各直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さ以外については、本実施形態の電磁撹拌装置と一般的な電磁撹拌装置とは同じものである。
【0054】
図7のグラフ702に示すように、一般的な電磁撹拌装置を用いると、位置Z2~Z4の第1の領域において、撹拌力Fxの最大値は位置Z2よりも上の領域を含む第2の領域における撹拌力Fxの最大値よりも大きくなり、下方に行くほど小さくなるが大きくは低下しない。これに対し、本実施形態の電磁撹拌装置を用いると、位置Z2~Z4の第1の領域においては、位置Z2よりも上の領域を含む第2の領域における撹拌力Fxの最大値よりも、撹拌力Fxを低減させることができ、溶鋼Mに付与される撹拌力Fxを大きく低下させることができることが分かる。尚、撹拌力Fxは、磁束密度の2乗に比例するので、以上の説明において、撹拌力Fxを磁束密度に置き換えることができる。
【0055】
<変形例>
本実施形態では、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域(継鉄部241bの、鉄心241の長辺部211側の端面)の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が位置Y1、Y3である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置は、コイル251、252の領域のうち、鋳型の長辺部211、212と対向する位置にある領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の両端の範囲内にあるのが好ましい。より具体的には、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置は、位置Y1~Y2、Y3~Y4の範囲内とするのが好ましい。尚、図3に示すように、位置Y2、Y4は、コイル251、252の最外周に位置する輪郭領域のうち、鉄心241、242の長辺部211、212と対向する位置にある輪郭領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置である。
【0056】
このようにするのが好ましい理由は、以下の通りである。浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域における鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が、位置Y2、Y4よりも鋳型の長辺部211、212側に位置すると、撹拌流の流速の低減効果が小さくなる。一方、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域における鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が、位置Y1、Y3よりも、鋳型の長辺部211、212が配置されている側とは反対側に位置すると、コイル251、252に流れる電流によって、鉄心241、242に生成される磁束密度が小さくなる。
尚、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が、位置Y1~Y2、Y3~Y4の範囲内の位置Y1、Y3以外の位置である場合、櫛歯部は、第2の領域だけでなく、第1の領域にも形成される。第1の領域に形成される櫛歯部と第2の領域に形成される櫛歯部は、鋳造方向(Z軸方向)において連続している。また、第1の領域に形成される櫛歯部の鋳造厚方向(Y軸方向)の長さは、第2の領域に形成される櫛歯部の鋳造厚方向(Y軸方向)の長さよりも短い(即ち、鋳造幅方向(X軸方向)から見た場合の櫛歯部の形状(Y-Z断面の形状)は、概略、文字Γの形状になる)。
ただし、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置は、位置Y1~Y2、Y3~Y4の範囲内に限定されず、コイル251、252が配置されていない領域での鉄心241、242と鋳型の長辺部211、212との間隔が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の方が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも上の領域を含む第2の領域よりも長くなるようにしていればよい。
【0057】
また、本実施形態では、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の上端(櫛歯部241aの直方体部の下端面)の鋳造方向(Z軸方向)の位置が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部(鋳造方向の上流側の端部)の位置と、位置Z2で一致する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の上端の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、位置Z2(浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部の鋳造方向(Z軸方向)の位置)から位置Z3(浸漬ノズル230の先端面(鋳造方向の下流側の端面)の鋳造方向(Z軸方向)の位置)までの範囲のいずれかの位置とすることができる。浸漬ノズル230から吐出される吐出流の吐出方向が、斜め下方であるので、このような範囲内であれば、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の上端の鋳造方向(Z軸方向)の位置が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部の鋳造方向(Z軸方向)の位置よりも下の位置にあっても、吐出流と撹拌流とが干渉する領域を小さくすることができるため、鋳型の短辺部213、214側で発生する上昇流および下降流の流速、および、凝固シェルSへの衝突流の流速を低減する効果を発現することができる。
また、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の上端の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部(鋳造方向の上流側の端部)よりも上の位置であっても、吐出流と撹拌流とが干渉する領域を小さくすることができるため、鋳型の短辺部213、214側で発生する上昇流および下降流の流速、および、凝固シェルSへの衝突流の流速を低減する効果を発現することができるので、このようにしてもよい。
ただし、本実施形態のように浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域の上端の鋳造方向(Z軸方向)の位置が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部の位置と一致するようにすれば、吐出流と撹拌流とが干渉することをより確実に抑制することができると共に、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上方のより広い領域に撹拌流を発生させることができるのでより好ましい。
【0058】
また、本実施形態では、櫛歯部241aの直方体部の先端面(鋳型の長辺部211と対向する面)の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が位置Y2よりも鋳型の長辺部211側である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、櫛歯部241aの直方体部の先端面の鋳造厚方向(Y軸方向)の位置が位置Y2と同じであってもよい。このことは、鉄心242についても同じである。
また、櫛歯部241aの直方体部の下に、それぞれ、非磁性且つ非伝導性の第2の直方体部を配置してもよい。第2の直方体部の鋳造幅方向(X軸方向)および鋳造厚方向(Y軸方向)の長さは、櫛歯部241aの直方体部の長さと同じである。第2の直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さは、櫛歯部241aの直方体部の下端から継鉄部241bの下端までの鋳造方向(Z軸方向)の長さである。櫛歯部241aの直方体部の下端面と第2の直方体部の上端面とが合い、第2の直方体部の下端面と継鉄部241bの下端面とが面一となるように第2の直方体部を配置する。このようにすることにより、図1に示した一般的な電磁撹拌装置の鉄心110、120と同じ外形にすることができる。
また、櫛歯部241aはなくてもよい。この場合、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも上の領域を含む第2の領域の鋳型の長辺部211、212と対向する面は1つの平面になり、当該平面が櫛歯部241aの直方体部の先端面に対応する。
【0059】
また、本実施形態では、浸漬ノズル230から吐出される吐出流の吐出方向が、斜め下方である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、浸漬ノズルから吐出される吐出流の吐出方向は斜め下方に限定されない。例えば、浸漬ノズルから吐出される吐出流の吐出方向は斜め上方向でも水平方向でもよい。
【0060】
浸漬ノズルから吐出される吐出流の吐出方向が斜め上方向である場合と斜め下方向である場合と水平方向である場合とを考慮すると、コイルが配置されていない領域での鉄心と鋳型の長辺部との間隔が、第1の領域よりも第2の領域の方が短くなる(=第1の領域の方が第2の領域よりも長くなる)ように、鉄心の第1の領域と第2の領域とを形成するに際し、第1の領域の鋳造方向(Z軸方向)の範囲と、吐出流が流れる鋳造方向(Z軸方向)の範囲とが重複する範囲の方が、第2の領域の鋳造方向(Z軸方向)の範囲と、吐出流が流れる鋳造方向(Z軸方向)の範囲とが重複する範囲よりも長くなるようにすればよい。
本実施形態のように、櫛歯部241aの直方体部の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部の位置と一致するようにすれば、第2の領域の鋳造方向(Z軸方向)の範囲と、吐出流が流れる鋳造方向(Z軸方向)の範囲とは重複しなくなる(図6を参照)。このようにすれば、吐出流と撹拌流とが干渉する領域をなくすことができるため、鋳型の短辺部213、214側で発生する上昇流および下降流の流速、および、凝固シェルSへの衝突流の流速をより低減することができる。
【0061】
また、浸漬ノズルから吐出される吐出流の吐出方向が斜め上方向である場合と斜め下方向である場合とを考慮すると、例えば、第1の領域を以下のように定めてもよい。即ち、第1の領域は、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における第1の端部よりも第1の側の領域を含む。浸漬ノズルの吐出口の第1の端部は、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向(Z軸方向)の第2の側の端部である。第1の側は、鋳造方向の両側(上側および下側)のうち浸漬ノズルから溶鋼(吐出流)が吐出される方向側(=浸漬ノズルの吐出口に向けて浸漬ノズルの厚み部分(図4のハッチングされている部分)が傾斜する方向側)である。第2の側は、鋳造方向の両側(上側および下側)のうち浸漬ノズルから溶鋼(吐出流)が吐出される方向側とは反対側(第1の側の反対側)である。尚、浸漬ノズルの吐出口の端部は、浸漬ノズルの外壁面の位置における端部(即ち、浸漬ノズルを外側から見たときに見える開口部の輪郭(縁))であるものとする。
また、例えば、第2の領域は、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における第1の端部よりも第2の側の領域を含むようにすることができる。
本実施形態では、浸漬ノズルの吐出口の鋳造方向における第1の端部は、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上側(Z軸の正の方向側)の端部である。また、第1の側は、下側(Z軸の負の方向側)であり、第2の側は、上側(Z軸の正の方向)である。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、鉄心241~242の上側(浸漬ノズルから溶鋼(吐出流)が吐出される方向とは反対側の第2の側)にのみ櫛歯部241aを設ける場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、鉄心241~242の上側に加え下側にも櫛歯部を設ける場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態は、鉄心の構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図2A図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0063】
図8は本実施形態の電磁撹拌装置を配設した連続鋳造設備の概略構成の一例を示す縦断面図である。尚、図8のI-I断面図は図2Aにおいて、符号241、242、251、252を、それぞれ841、842、851、852としたものと同じものであるので、その図示を省略する。また、図8のII-II断面図は図2Bにおいて、符号241、242、251、252を、それぞれ841、842、851、852としたものと同じものであるので、その図示を省略する。また、図8のIII-III断面図は図2Aにおいて、符号241、242、251、252を、それぞれ841、842、851、852とし、浸漬ノズル230をなくしたものと同じものであるので、その図示を省略する。
【0064】
図9は鉄心841の構成の一例を示す図である。尚、鉄心841、842は同じもので実現することができるので、ここでは、鉄心842の図示を省略する。鉄心841、842は鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。
図9において、鉄心841は、第1の櫛歯部841aと、継鉄部841bと、第2の櫛歯部841cと、を有する。
尚、本実施形態では、鉄心841は、鉄心841の高さ方向(Z軸方向)に垂直な断面と同じ形状および大きさを有する軟磁性体板(例えば、方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板)を、高さ方向(Z軸方向)において積層することにより構成される。従って、鉄心841の高さ方向(Z軸方向)の各位置において、第1の櫛歯部841aと継鉄部841b、および第2の櫛歯部841cと継鉄部841bには境界線はない。
【0065】
第1の櫛歯部841aは、鋳型の長辺部211(およびバックプレート221)と間隔を有して対向するように、鋳造幅方向(X軸方向)に沿って等間隔に配置される複数の直方体部を有する。第1の櫛歯部841aの各直方体部の形状および大きさは同じである。第1の櫛歯部841aの各直方体部の長手方向は鋳造方向(Z軸方向)と一致する。
【0066】
第2の櫛歯部841cは、第1の櫛歯部841aと鋳造方向(Z軸方向)に間隔を有した状態で鋳型の長辺部211(およびバックプレート221)と間隔を有して対向するように、鋳造幅方向(X軸方向)に沿って等間隔に配置される複数の直方体部を有する。第2の櫛歯部841cの各直方体部の形状および大きさは同じである。第2の櫛歯部841cの各直方体部の長手方向は鋳造方向(Z軸方向)と一致する。
【0067】
第1の櫛歯部841aの直方体部の数と第2の櫛歯部841cの直方体部の数は同じである。図8では、第1の櫛歯部841aおよび第2の櫛歯部841cが、それぞれ10個の直方体部を有する場合を例に挙げて示す。第1の櫛歯部841aの各直方体部と第2の櫛歯部841cの各直方体部とは、鋳造方向(Z軸方向)の長さは異なるが、鋳造幅方向(X軸方向)および鋳造厚方向(Y軸方向)の長さは同じである。また、第1の櫛歯部841aの各直方体部の鋳造幅方向(X軸方向)の位置と、第2の櫛歯部841cの各直方体部の鋳造幅方向(X軸方向)の位置は同じである。従って、第1の櫛歯部841aの各直方体部の鋳造幅方向(X軸方向)の間隔と、第2の櫛歯部841cの各直方体部の鋳造幅方向(X軸方向)の間隔は同じである。また、第1の櫛歯部841aの各直方体部と鋳型の長辺部211との間隔と、第2の櫛歯部841cの各直方体部鋳型の長辺部211との間隔は同じである。尚、直方体部の数が10個に限定されないことは第1の実施形態で説明した通りである。
【0068】
以上のような第1の櫛歯部841aの直方体部の間の領域と、第2の櫛歯部841cの直方体部の間の領域に、コイル851が配置される(第1の櫛歯部841aの直方体部の鋳型の長辺部211側の平面および第2の櫛歯部841cの直方体部の鋳型の長辺部211側の平面にはコイル851は配置されない)。コイル851は、第1の櫛歯部841aの直方体部の間の領域と、第2の櫛歯部841cの直方体部の間の領域のうち、鋳造幅方向(X軸方向)の位置が同じ領域を周回するように配置される。尚、鉄心241のコイル251を配置する領域と、鉄心841のコイル851を配置する領域とが同じ大きさである場合には、コイル851は、コイル251と同じもので実現することができる。このようにコイル251は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)周りに巻き回される(即ち、コイル851の軸(コイル軸)は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)と平行である)。
【0069】
継鉄部841bの形状は、直方体である。第1の櫛歯部841aの直方体部の上端面(鋳造方向の上流側の端面)と、継鉄部841bの上端面とは面一となっている。第2の櫛歯部841cの直方体部の下端面(鋳造方向の下流側の端面)と、継鉄部841bの下端面とは面一となっている。継鉄部841bの鋳造方向(Z軸方向)の長さは、第1の櫛歯部841aの各直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さと第2の櫛歯部841cの各直方体部の鋳造方向(Z軸方向)の長さとの和よりも長い。
【0070】
第1の櫛歯部841a、継鉄部841bは、それぞれ第1の実施形態の櫛歯部241a、継鉄部241bに対応するものである。従って、第1の櫛歯部841aの直方体部の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置と、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部(鋳造方向の上流側の端部)の位置とは位置Z2で一致する。また、鉄心841、842は、鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。鉄心841、842の上端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、位置Z1で一致する。また、鉄心841、842の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置は、位置Z4で一致する。
【0071】
また、第2の櫛歯部841cの直方体部の上端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置Z5は、浸漬ノズル230の先端面(鋳造方向の下流側の端面)の鋳造方向(Z軸方向)の位置Z3よりも下方であり、位置Z4よりも上方である。
位置Z1から位置Z5までの鋳造方向(Z軸方向)の長さZL[mm]は以下の(1)式を満たすのが好ましい。
ZL≧ZD+ZH+{(W-D)÷2}×tanθ ・・・(1)
ここで、ZD[mm]は湯面(メニスカス)から浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部までの鋳造方向(Z軸方向)における長さである(図8を参照)。ZH[mm]は浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの鋳造方向(Z軸方向)の長さである(図8を参照)。W[mm]は鋳型の短辺部213、214の内壁面の鋳造幅方向(X軸方向)の間隔である(図2Bを参照)。D[mm]は浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの重心位置における外径である(図8を参照)。θ[°]は浸漬ノズル230の(吐出口230a、230bにおける)吐出角θである。
【0072】
浸漬ノズル230および鋳型((1)式の右辺の変数ZD、ZH、W、D、θ)は変更され得る。従って、連続鋳造設備において想定される浸漬ノズル230および鋳型の組み合わせのうち、何れの組み合わせにおいても、(1)式を満たすようにするのがより好ましい。即ち、位置Z1から位置Z5までの鋳造方向(Z軸方向)の長さZLは、(1)式の右辺の値としてとり得る値の最大値以上になるようにするのがより好ましい。このようにすれば、浸漬ノズル230から吐出される吐出流が直線的に移動すると仮定した場合に、吐出流が鋳型の短辺部213、214に衝突する位置および当該位置よりも下方の位置に、第2の櫛歯部841cの直方体部の上端面を位置させることができる。従って、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bから吐出される吐出流が流れる領域に形成される撹拌流をより一層抑制することができる。
【0073】
尚、鉄心842は、以上の説明において、長辺部211、バックプレート221、鉄心841、コイル851をそれぞれ、長辺部212、バックプレート222、鉄心842、コイル852に読み替えたものとなる。従って、ここでは、鉄心842の詳細な説明を省略する。
【0074】
図10は、本実施形態の電磁撹拌装置における溶鋼の流れの一例を説明する図である。図10は、図1および図6に対応する図であり、表記の方法は図1および図6と同じである。
【0075】
本実施形態では、コイル851、852が配置されていない領域での鉄心841、842と鋳型の長辺部211、212との間隔が、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端より上の領域を含む第2の領域よりも、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端より下の領域を含む第1の領域の方が長くなるようにする。また、コイル851、852が配置されていない領域での鉄心841、842と鋳型の長辺部211、212との間隔が、第1の領域の下方にある第3の領域よりも第1の領域の方が長くなるようにする。本実施形態では、コイル851、852が配置されていない領域での鉄心841、842の、長辺部211、212と対向する面は、前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域のそれぞれにおいて、長辺部211、212の前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域と対向する面と平行な面である。ここで、前記第2の領域および前記第3の領域は鋳造幅方向(X軸方向)において等間隔の複数の領域である。前記第1の領域は1つの平面の領域である。また、前記第2の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔と前記第3の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔は同じである。このようにすることにより、前記第1の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔および前記第2の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔、前記第3の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔をそれぞれ一定にすることができる。前記第1の領域を構成する電磁鋼板、前記第2の領域を構成する電磁鋼板、前記第3の領域を構成する電磁鋼板をそれぞれ同じもので実現することができる。また、前記第1の領域を構成する電磁鋼板と前記第3の領域を構成する電磁鋼板も同じもので実現することができる。また、安定した撹拌流を発生させることができる。
【0076】
従って、図10に示すように、鉄心841、842の、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも上の領域を含む第2の領域においては、図1に示した撹拌流と同様に、速い流速の撹拌流を発生させることができる。一方、鉄心241、242の、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端よりも下の領域を含む第1の領域においては、図1に示した撹拌流よりも、遅い流速の撹拌流を発生させることができる。よって、上昇流および下降流の流速および凝固シェルSへの衝突流の流速を抑制することができる。更に、第1の領域よりも下の第3の領域においては、第2の領域と同様に、速い流速の撹拌流を発生させることができる。よって、下降流の流速をより低減することができることに加え、第3の領域における速い流速の撹拌流により、下降流にのった気泡や介在物が下方に進入することを抑制し、浮上を促進させるようにすることができる。よって、鋳片の表面の品質と内部の品質および生産性をより向上させることができる。
また、鉄心841、842の第2の領域の鋳造幅方向(X軸方向)の長さと、鉄心841、842の第3の領域の鋳造幅方向(X軸方向)の長さとを同じにする。これにより、鉄心841、842の第2の領域を構成する電磁鋼板と、鉄心841、842の第3の領域を構成する電磁鋼板とを共通化することができる。
【0077】
図11は撹拌力Fx(FのX軸方向成分)と湯面からの距離との関係の一例を示す図である。図11に示す結果は実際の鋳型の中空部内の溶鋼Mに発生する電磁力を数値シミュレーションを行って得たものである。何れの数値シミュレーションにおいても、溶鋼Mの成分を含む操業条件は同じものとした。
撹拌力Fxは図7を参照しながら説明したものと同じである。図11に示す位置Z1、Z2、Z4、Z5は、図8に示した位置Z1、Z2、Z4、Z5に対応する。
【0078】
図11においてグラフ1101は、本実施形態の電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。グラフ1102は、図1を参照しながら説明した一般的な電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。尚、図7に示すグラフ702も、図1を参照しながら説明した一般的な電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示すが、グラフ701、702とグラフ1101、1102を得たときの操業条件が異なるため、グラフ702、1102は一致しない。ただし、前述したように、グラフ1101、1102を得たときの操業条件は同じである。
【0079】
図11のグラフ1102に示すように、一般的な電磁撹拌装置を用いると、吐出流が発生する位置Z2~Z5の第1の領域において、溶鋼Mに付与される撹拌力Fxは大きくなる。これに対し、本実施形態の電磁撹拌装置を用いると、位置Z2~Z5の第1の領域においては、位置Z2よりも上の領域を含む第2の領域における撹拌力Fxの最大値および位置Z5よりも下方の第3の領域における撹拌力Fxの最大値よりも撹拌力Fxを低減させることができ、溶鋼Mに付与される撹拌力Fxを大きく低下させることができることが分かる。尚、撹拌力Fxは磁束密度の2乗に比例するので、以上の説明において、撹拌力Fxを磁束密度に置き換えることができる。
【0080】
<変形例>
本実施形態では、位置Z1から位置Z5までの鋳造方向(Z軸方向)の長さZLが(1)式を満たす場合を例に挙げて説明した。このようにすれば、吐出流が発生する多くの領域を第1の領域とすることができるので好ましい。しかしながら、吐出流の方向や吐出流と撹拌流との干渉の抑制効果の程度に応じて第1の領域を定めることができる。例えば、浸漬ノズル230の下端の鋳造方向(Z軸方向)の位置を位置Z5としてもよい。また、(1)式を満たす範囲で、浸漬ノズル230の下端の鋳造方向(Z軸方向)の位置よりも下方の位置を位置Z5としてもよい。また、(1)式の右辺を[ZD+ZH+{(W-D)÷2}×tanθ]÷2に変更してもよい。また、浸漬ノズルの吐出口から水平方向に溶鋼Mを吐出させる場合には、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの下端の鋳造方向(Z軸方向)の位置を位置Z5としてもよい。この場合、例えば、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端(一方の端部)の鋳造方向(Z軸方向)の位置を位置Z2とし、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの下端(他方の端部)の鋳造方向(Z軸方向)の位置を位置Z5としてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、鉄心841、842の第1の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔と、鉄心841、842の第3の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔とが同じである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。鋳型の上部に比べ下部においてはパウダーPが少ない(或いはパウダーPはない)。このため、溶鋼Mに与える撹拌力を増大させてもパウダーPが溶鋼M巻き込まれる可能性は鋳型の上部に比べ低い。従って、例えば、鉄心の第3の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔を、鉄心の第1の領域と鋳型の長辺部211、212との間隔よりも短くしてもよい。また、下部に位置するほど鉄心と鋳型の長辺部211、212との間隔が短くなるようにしてもよい。このようにすれば、撹拌力Fを上げることで溶鋼Mの中の気泡や介在物がより下方に進入することを抑制することができる。
また、本実施形態においても第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0082】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。第2の実施形態では、鉄心841、842の下端面が、鋳型の長辺部211、212よりも上に位置する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、鉄心841、842の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置と、鋳型の長辺部211、212の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置とを同じにする場合について説明する。このように本実施形態と第2の実施形態は、鉄心の構成(具体的には第3の領域の鋳造方向(Z軸方向)の長さ)が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図2A図11に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0083】
図12は、本実施形態の電磁撹拌装置を配設した連続鋳造設備の概略構成の一例を示す縦断面図である。尚、図12のI-I断面図は、図2Aにおいて符号241、242、251、252をそれぞれ1241、1242、1251、1252としたものと同じものであるのでその図示を省略する。また、図12のII-II断面図は、図2Bにおいて符号241、242、251、252をそれぞれ1241、1242、1251、1252としたものと同じものであるのでその図示を省略する。また、図12のIII-III断面図は、図2Aにおいて符号241、242、251、252をそれぞれ1241、1242、1251、1252とし、浸漬ノズル230をなくしたものと同じものであるので、その図示を省略する。
【0084】
鉄心1241、1242は、図9に示した鉄心841に対し、継鉄部841bおよび第2の櫛歯部841cの鋳造方向(Z軸方向)の長さを鉄心1241、1242の鋳造方向(Z軸方向)の長さが、鋳型の長辺部211、212の鋳造方向(Z軸方向)の長さと同じになるように延ばしたものになる。鉄心1241、1242の第2の櫛歯部の直方体部の下端面と継鉄部の下端面とは面一となっている。鉄心1241、1242は、鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。このような鉄心1241、1242の変更により、第2の実施形態の鉄心841、842に比べ、コイルが周回する経路が長くなる。この経路に合わせてコイル1251、1252が配置される。このようにコイル1251、1252は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)の周りに巻き回される(即ち、コイル1251、1252の軸(コイル軸)は、鋳型の鋳造幅方向(X軸方向)と平行である)。
【0085】
鉄心1241、1242の第1の櫛歯部は第2の実施形態の第1の櫛歯部841aと同じもので実現することができる。従って、鉄心1241、1242の第1の櫛歯部の直方体部の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置と、浸漬ノズル230の吐出口230a、230bの上端部(鋳造方向の上流側の端部)の位置とは位置Z2で一致する。また、鉄心1241、1242は鋳型の軸を対称軸とする線対称となる関係を有する。鉄心1241、1242の上端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置は位置Z1で一致する。浸漬ノズル230の先端の鋳造方向(Z軸方向)の位置Z3は位置Z2よりも下方であり、位置Z5よりも上方である。
【0086】
また、鉄心1241、1242の第2の櫛歯部の直方体部の上端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置Z5は、第2の実施形態と同じようにして定めることができる。尚、第2の実施形態で説明した変形例のようにして位置Z5を定めることもできる。
鉄心1241、1242(第2の櫛歯部)の下端面の鋳造方向(Z軸方向)の位置と鋳型の長辺部211、212の鋳造方向(Z軸方向)の位置は位置Z4で一致する。
【0087】
本実施形態では、鋳型の下部において、コイル1251、1252が配置されていない領域での鉄心1241、1242と鋳型の長辺部211、212との間隔が短くなる第3の領域の鋳造方向(Z軸方向)の長さを第2の実施形態に比べて大きくすることができる。従って、下降流の流速をより一層低減することができ、下降流にのった気泡や介在物が下方に進入することをより抑制し、浮上をより促進させるようにすることができる。よって、鋳片の表面の品質と内部の品質および生産性をより一層向上させることができる。
【0088】
図13は撹拌力Fx(FのX軸方向成分)と湯面からの距離との関係の一例を示す図である。図13に示す結果は、実際の鋳型の中空部内の溶鋼Mに発生する電磁力を数値シミュレーションを行って得たものである。何れの数値シミュレーションにおいても溶鋼Mの成分を含む操業条件は同じものとした。
撹拌力Fxは図7を参照しながら説明したものと同じである。図13に示す位置Z1、Z2、Z4、Z5は図12に示した位置Z1、Z2、Z4、Z5に対応する。
【0089】
図13においてグラフ1301は本実施形態の電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。グラフ1302は図1を参照しながら説明した一般的な電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示す。尚、図13に示すグラフ1302も図1を参照しながら説明した一般的な電磁撹拌装置を用いた場合の撹拌力Fxを示すが、グラフ701、702とグラフ1301、1302を得たときの操業条件が異なるため、グラフ702、1302は一致しない。ただし、前述したように、グラフ1301、1302を得たときの操業条件は同じである。
【0090】
図13のグラフ1302に示すように、一般的な電磁撹拌装置を用いると、吐出流が発生する位置Z2~Z5の第1の領域において、溶鋼Mに付与される撹拌力Fxは大きくなる。これに対し、本実施形態の電磁撹拌装置を用いると、位置Z2~Z5の第1の領域においては、位置Z2よりも上の第2の領域における撹拌力Fxの最大値および位置Z5よりも下方の第3の領域における撹拌力Fxの最大値よりも撹拌力Fxを低減させることができ、溶鋼Mに付与される撹拌力Fxを大きく低下させることができることが分かる。位置Z5よりも下方の第3の領域における撹拌力Fxが気泡や介在物の浮上を促進に寄与する。尚、撹拌力Fxは、磁束密度の2乗に比例するので、以上の説明において、撹拌力Fxを磁束密度に置き換えることができる。
本実施形態においても第1の実施形態および第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0091】
尚、以上説明した本発明の実施形態は何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想またはその主要な特徴から逸脱することなく様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
211~212:長辺部、213~214:短辺部、221~224:バックプレート、230:浸漬ノズル、241~242,841~842,1241~1242:鉄心、251~252,851~852,1251~1252:コイル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13