(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】複数穴部の相対位置の測定治具および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/14 20060101AFI20231115BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01B5/14
E01D19/04
(21)【出願番号】P 2020057739
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】秦野 均
(72)【発明者】
【氏名】飯田 潔
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1655734(KR,B1)
【文献】実開昭59-074304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
G01B 21/00-21/32
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数穴部の相対位置の測定治具であって、任意の前記穴部に配置される複数の設置体と、前記複数の設置体を任意の離間距離で連結する紐状体と、それぞれの前記設置体に備わる方位角度計と、前記設置体どうしの間での緊張状態の前記紐状体の張設長さを
測定する距離
測定手段とを有し、緊張状態の前記紐状体の延在方向が前記方位角度計による
測定方位角度を示す構成にした複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項2】
前記複数の設置体が前記紐状体に沿って任意の位置にスライドすることで、前記紐状体が前記複数の設置体を任意の離間距離で連結する請求項1に記載の複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項3】
前記紐状体が前記設置体から繰り出され、かつ、前記設置体に巻き取られることで、前記紐状体が前記複数の設置体を任意の離間距離で連結する請求項1に記載の複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項4】
前記距離
測定手段が、前記紐状体の長手方向に間隔をあけて付された多数の目盛りである請求項1~3のいずれかに記載の複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項5】
前記設置体に水準器が備わる請求項1~4のいずれかに記載の複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項6】
前記設置体が下方に突出して前記穴部に挿入される円錐形状部を有し、この円錐形状部の最大外径の大きさが、前記穴部の内径以上に設定されている請求項1~5のいずれかに記載の複数穴部の相対位置の測定治具。
【請求項7】
複数穴部の相対位置の測定方法であって、任意の2つの前記穴部のそれぞれに、方位角度計を備えて紐状体で連結された設置体を配置し、前記設置体どうしの間での緊張状態にした前記紐状体の張設長さを
測定し、かつ、この緊張状態の紐状体の延在方向を前記方位角度計による
測定方位角度として使用し、
測定した前記張設長さと前記
測定方位角度とに基づいて、任意の2つの前記穴部の相対位置を測定する複数穴部の相対位置の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数穴部の相対位置の測定治具および測定方法に関し、さらに詳しくは、複数穴部の相対位置を簡便かつ精度よく把握できる測定治具および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋桁と橋脚との間に支承装置を設置する際には、支承装置を固定するためにアンカーボルトが使用される。橋脚の上面にはアンカーボルトが挿入される穴部(箱抜き部)が形成される(例えば、特許文献1参照)。1つの支承装置に対して、一般的に4個以上の穴部が形成され、これら穴部の位置に応じて支承装置の仕様が調整される。
【0003】
支承装置を設置する施工現場では、それぞれの穴部の位置(相対位置)を把握するために穴部の位置測定が行われている。しかしながら、それら穴部の相対位置を測定する特別な測定器が存在しないため、一般的なメジャーや角度計などが使用されている。このような測定方法では、測定者の熟練度に起因して測定に要する時間や測定精度にバラつきが生じるため、複数穴部の相対位置を簡便かつ精度よく把握するには改善の余地ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数穴部の相対位置を簡便かつ精度よく把握できる測定治具および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の複数穴部の相対位置の測定治具は、複数穴部の相対位置の測定治具であって、任意の前記穴部に配置される複数の設置体と、前記複数の設置体を任意の離間距離で連結する紐状体と、それぞれの前記設置体に備わる方位角度計と、前記設置体どうしの間での緊張状態の前記紐状体の張設長さを測定する距離測定手段とを有し、緊張状態の前記紐状体の延在方向が前記方位角度計による測定方位角度を示す構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の複数穴部の相対位置の測定方法は、複数穴部の相対位置の測定方法であって、任意の2つの前記穴部のそれぞれに、方位角度計を備えて紐状体で連結された設置体を配置し、前記設置体どうしの間での緊張状態にした前記紐状体の張設長さを測定し、かつ、この緊張状態の紐状体の延在方向を前記方位角度計による測定方位角度として使用し、測定した前記張設長さと前記測定方位角度とに基づいて、任意の2つの前記穴部の相対位置を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、任意の前記穴部に配置される複数の設置体が、紐状体によって任意の離間距離で連結されているので、穴部に配置された前記設置体どうしの間での緊張状態の前記紐状体の張設長さがそれぞれの前記設置体が設置された穴部どうしの離間距離になる。また、それぞれの前記設置体に方位角度計が備わっていて、緊張状態の前記紐状体の延在方向が前記方位角度計による測定方位角度を示すので、この測定方位角度が、それぞれの前記設置体が配置された一方の穴部に対する他方の穴部が存在する方向になる。したがって、前記張設長さと前記測定方位角度とに基づいて、簡便かつ精度よく、一方の穴部と他方の穴部との相対位置を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の測定治具を平面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の設置体を正面視で例示する説明図である。
【
図4】
図1の測定治具によって複数穴部の相対位置を測定している状態を平面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4の設置体を平面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の設置体を縦断面視で例示する説明図である。
【
図7】穴部の位置測定結果を示すプロット図である。
【
図8】設置体の変形例を正面視で例示する説明図である。
【
図9】測定治具の別の実施形態を、設置体の一部を切り欠いて正面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数穴部の相対位置の測定治具および測定方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図3に例示する本発明の複数穴部の相対位置の測定治具1は、複数の設置体2と、これら設置体2を任意の離間距離で連結する紐状体4と、それぞれの設置体2に備わる方位角度計3と、設置体2どうしの間での緊張状態の紐状体4の張設長さを
測定する距離
測定手段5とを有している。この実施形態では測定治具1はさらに、設置体2に水準器6が備わっている。水準器6は公知の種々のものを用いることができ、この実施形態では液体中に気泡6aを有する水準器6が使用されている。
【0012】
それぞれの設置体2は、後述する相対位置を把握する対象の任意の穴部8に配置される。この実施形態の測定治具1は、2個の設置体2を有しているが、設置体2の数は複数であればよく、3個、4個などにすることもできる。そして、それぞれの設置体2が紐状体4によって直列的に連結される。
【0013】
設置体2は、穴部8に挿入される下方に突出する円錐形状部2Aを有している。円錐形状部2Aは下方になる程、細径になっている。円錐形状部2Aの最大外径の大きさは、配置される穴部8の最小内径以上に設定されていて、より好ましくは、穴部8の最小内径よりも大きく設定される。円錐形状部2Aは単純な円錐形にすることもできるが、この実施形態では、円錐形の尖った先端部が省略されていて壁面2sで形成されている。
【0014】
円錐形状部2Aの上端に円盤状部分が連接されている。この円盤状部分の上面の中央部には円柱状の突出部2Bが設けられている。この突出部2Bの上面に水準器6が設置されている。図に示すように、水準器6はその平面視の中心位置を示す十字の指標を有していて、この指標に気泡6aを位置合わせすることで、設置体2を水平に配置することができる。
【0015】
突出部2Bは、設置体2の平面視中心を中心にして回転可能になっていて、紐状体4はこの平面視中心を通過して突出部2Bを挿通している。また、突出部2Bには、挿通する紐状体4を任意の位置で固定するストッパが備わっている。このストッパを解除状態にすることで、設置体2は紐状体4の長手方向に沿ってスライドし、ストッパによって紐状体4を突出部2Bに固定すると、紐状体4の長手方向に沿った設置体2のスライドが不能になる。設置体2が紐状体4に沿って任意の位置にスライドするので、紐状体4は複数の設置体2を任意の離間距離で連結することになる。紐状体4は容易に弾性変形しないことが好ましく、例えば、樹脂線材や金属線材などが使用される。
【0016】
図3に例示するように、この実施形態では紐状体4の長手方向に間隔をあけて多数の目盛り5aが付されている。即ち、メジャーと同様の目盛り5aが紐状体4に付されている。この多数の目盛り5cは距離
測定手段5として機能する。
【0017】
方位角度計3は設置体2の上面に配置されている。公知の様々な方位角度計3を用いることができる。例えば、設置体2の平面視中心を中心にして360°の角度が細分化されて表示されている角度方位計3が使用される。
【0018】
次に、
図4に示すように、橋脚7の上面に形成された4つの穴部8(8a~8d)の平面視の相対位置を測定する場合を例にして、この測定治具1を用いた測定方法の手順を説明する。図中のX方向、Y方向は互いに直交する基準方向を示している。
【0019】
橋脚7の上面には支承装置を設置するために4つの穴部8(8a~8d)が形成されている。穴部8のうち、任意の2つの穴部8a、8bにそれぞれ設置体2を配置する。
図5、
図6に例示するように、それぞれの設置体2は円錐形状部2Aが穴部8a、8bに埋入され、上端部は穴部8a、8bから上方に突出した状態で配置される。それぞれの設置体2の平面視中心が穴部8a、8bの平面視中心になるようにして、水準器6を見ながら設置体2が水平になるように配置する。また、設置体2どうしの間で紐状体4を緊張状態にする。
【0020】
図5に例示するように、この測定治具1では、緊張状態の紐状体4の延在方向が方位角度計3による
測定方位角度A1を示す構成になっている。即ち、それぞれの設置体2の平面視中心を通過して緊張状態になっている紐状体4が、方位角度計3に記載された角度位置を指示する。穴部8aに配置した設置体2の方位角度計3の基準方向X(例えば真北向き)を設定しておけば、その基準方向Xに対して、紐状体4がなす角度A1が判明する。この
測定方位角度A1は、一方の穴部8aに対して他方の穴部8bが存在している方向になる。
【0021】
また、設置体2どうしの間での緊張状態の紐状体4の張設長さL1を、距離測定手段5によって測定する。即ち、紐状体4に付されている目盛り5aによって、張設長さLL1を測定する。この測定した張設長さL1と測定方位角度A1とに基づいて、任意の2つの穴部8a、8bの相対位置が把握される。
【0022】
次いで、穴部8aに配置されている設置体2を別の穴部8cに移動させて配置する。そして、穴部8b、8cに配置された設置体2を用いて、上述した同じ手順で穴部8bに対して穴部8cが存在している方向(測定方位角度A2)を測定し、設置体2どうしの間での緊張状態の紐状体4の張設長さL2を測定する。この測定した張設長さL2と測定方位角度A2とに基づいて、任意の2つの穴部8b、8cの相対位置が把握される。穴部8c、8dについても同様の手順で、測定した張設長さL3と測定方位角度A3とに基づいて、両者の相対位置が把握される。
【0023】
その結果、
図7に例示するように、穴部8aと穴部8b、穴部8bと穴部8c、穴部8cと穴部8d、それぞれの相対位置が判明する。したがって、残りの穴部8dと穴部aとの相対位置は測定しなくても、これらの測定結果に基づいて、穴部8dに対して穴部8aが存在している方向(
測定方位角度A4)は判明し、穴部8dと穴部8aの離間距離(張設長さL4)も判明する。確認のため、測定治具1を用いて、
測定方位角度A4、張設長さL4を測定してもよい。このようにして、それぞれの穴部8a~8dの相対位置を簡便かつ精度よく測定することができる。尚、
図5、
図7では、
測定方位角度Aを誇張して大きく記載している。
【0024】
この実施形態では、2個の設置体2を備えた測定治具1を使用しているので、設置体2を順次、別の穴部8に移動させて4つの穴部8の相対位置を測定している。例えば、4個の設置体2を備えた測定治具1を使用すると、設置体2をそれぞれいずれか1つの穴部8に配置すればよく、設置体2を移動させる必要はなくなる。
【0025】
設置体2は、穴部8に安定して配置できれば形状は限定されないが、この実施形態にように、円錐形状部2Aを有していると、大きさの異なる様々な内径の穴部8に設置体2を安定的に配置することができる。また、穴部8の平面中心部に設置体2の平面中心部を一致させ易くなる。特に、この実施形態では、水準器6を有しているので、水準器6を利用して設置体2を穴部8に水平に配置すると、穴部8の平面中心に設置体2の平面中心を一致させ易くなる。
【0026】
円錐形状部2Aはこの実施形態で例示した形態に限らず、その他の様々な形態にすることもできる。
図8に例示する円錐形状部2Aは、斜めの表面が単純な壁面2sではなく、下方になるほど互いが近接するように傾斜する3本の線状体2pで形成されている。このように3本以上の線状体2pを用いて円錐形状部2Aを形成することもできる。
【0027】
図9に例示する測定治具1の別の実施形態は、紐状体4の巻取りおよび繰り出しをする巻取りドラム5bが設置体2に内設されている。巻取りドラム5bから繰り出された紐状体4は、長さカウントローラ5cに掛け回されて、設置体2の平面視中心を通過して隣接する設置体2にまで延在している。このようにして紐状体4が設置体2から繰り出され、かつ、設置体4に巻き取られることで、紐状体4が複数の設置体2を任意の離間距離で連結する構成にすることもできる。
【0028】
長さカウントローラ5cはその回転数に基づいて紐状体4の繰り出し長さを測定する。したがって、この巻取りドラム5bと長さカウントローラ5cを、設置体2どうしの間での緊張状態の紐状体4の張設長さLを測定する距離測定手段5として機能させることができる。尚、隣接して連結される設置体2は、このような巻取りドラム5b、長さカウントローラ5cを備えていても備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 測定治具
2 設置体
2A 円錐形状部
2s 壁面
2p 線状体
2B 突出部
3 方位角度計
4 紐状体
5 距離測定手段
5a 目盛り
5b 巻取りドラム
5c 長さカウンターローラ
6 水準器
6a 気泡
7 橋脚
8(8a、8b、8c、8d) 穴部