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特許7385141精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/22 20060101AFI20231115BHJP
   C07C 41/42 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 41/44 20060101ALI20231115BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C07C41/22
C07C41/42
C07C41/44
C07C43/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021171556
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2022068128
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020176955
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】岡田 倫明
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106748676(CN,A)
【文献】国際公開第2006/123563(WO,A1)
【文献】特表2010-501579(JP,A)
【文献】A.A.ILYIN et al.,The use of tetrafluoroethylene and hexafluoropropylene in the synthesis of partly fluorinated alcohols and dialkyl ethers,Fluorine Notes,2003年,5(30)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/00-41/60
C07C 43/00-43/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法であって、
(A)一般式(1)CHXCFOX(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、
一般式(2)CX=CF(CFOX(式中、nは0又は1を示す。X、X及びXは、前記に同じである。ただし、X又はXがトリフルオロメチル基である場合、nは0であり、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤との反応により、前記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物をハロゲン付加物及び/又は酸化物に変換させて、前記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物とを含む組成物を得る工程;及び
(B)前記工程(A)で得られた組成物から、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物を分離して、精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物を得る工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化剤が、塩素化剤及び/又は臭素化剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記反応は、液相で行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)において、前記工程(A)で得られた組成物を精留塔で精留することにより、前記工程(A)で得られた組成物から、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物を分離する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物が、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物が、CFCF=CFOCH及び/又はCF=CFCFOCHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)及びオゾン層破壊係数(ODP:Ozone Depletion Potential)が小さく、毒性が低いことから、クロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替品として注目されている。
【0003】
非特許文献1には、HFEの一種である1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)が、アルカリ存在下、ヘキサフルオロプロペン(HFP)とメタノールとの反応により得ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Green Chemistry, 2002, 4, 60-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、精製された一般式(1)CHXCFOX(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素エーテル化合物を含む組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法であって、
(A)一般式(1)CHXCFOX(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、
一般式(2)CX=CF(CFOX(式中、nは0又は1を示す。X、X及びXは、前記に同じである。ただし、X又はXがトリフルオロメチル基である場合、nは0であり、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤との反応により、前記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物をハロゲン付加物及び/又は酸化物に変換させて、前記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物とを含む組成物を得る工程;及び
(B)前記工程(A)で得られた組成物から、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物を分離して、精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物を得る工程を含む、製造方法。
項2.
前記ハロゲン化剤が、塩素化剤及び/又は臭素化剤である、項1に記載の製造方法。
項3.
前記工程(A)において、前記反応は、液相で行われる、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記工程(B)において、前記工程(A)で得られた組成物を精留塔で精留することにより、前記工程(A)で得られた組成物から、前記ハロゲン付加物及び/又は酸化物を分離する、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
前記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物が、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)である、項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
前記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物が、CFCF=CFOCH及び/又はCF=CFCFOCHである、項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項7.
1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)と、
CFCF=CFOCH及び/又はCF=CFCFOCHと、
を含む組成物。
項8.
CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHの総含有量が、HFE-356mecに対して0.1質量%以下である、請求項7に記載の組成物。
項9.
更に、フッ化水素を含有し、
前記フッ化水素の含有量が、HFE-356mecに対して0.01質量%以下である、項7又は8に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示の製造方法によれば、簡便な方法にて、精製された上記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含む組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、上記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物とハロゲン化剤及び/又は酸化剤との反応を利用することにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0009】
本開示は、かかる知見に基づき、更に研究を重ねた結果完成されたものである。以下、本開示に含まれる実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本明細書において、「純度」とは、ガスクロトマトグラフィー(GC)での定量分析による成分比率(質量%)を意味する。
【0012】
本明細書において、「還流比」とは、還流液と留出液とのモル流量比(還流液/留出液)を意味する。
【0013】
本明細書において記載される圧力は、断りの無い場合は、単位をゲージ圧とするものである。つまり、大気圧=0.0MPaとして表記されている。
【0014】
本明細書において、「A及び/又はB」とは、A及びBのいずれか一方、又は、A及びBの両方を意味する。
【0015】
本明細書において、「炭素数1~6のアルキル基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を意味する。
【0016】
1.精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法
本開示の精製された含フッ素エーテル化合物を含む組成物の製造方法(以下、単に「本開示の製造方法」とも称する。)は、以下の工程(A)及び工程(B)をこの順に備えている。以下、本開示の製造方法について、工程(A)及び(B)の順に説明する。
【0017】
工程(A)
工程(A)は、一般式(1)CHXCFOX(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、一般式(2)CX=CF(CFOX(式中、nは0又は1を示す。X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X又はXがトリフルオロメチル基である場合、nは0であり、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤との反応により、
上記一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物をハロゲン付加物及び/又は酸化物に変換させて、上記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物のハロゲン付加物及び/又は一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の酸化物と、を含む組成物を得る工程である。
【0018】
本開示において、含フッ素エーテル化合物は、一般式(1)CHXCFOX(式中、X、X及びXは上記に同じである。)で表される。具体的には、CFCHFCFOX、CHFCFOX、CHFCFOX、CHCFOX等が例示される(いずれもXは、炭素数1~6のアルキル基を示す)。
【0019】
一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物は、CFCHFCFOCH、CHFCFOCH、CHFCFOCH及びCHCFOCHからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これらのうち、CFCHFCFOCH(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル:HFE-356mec)がより好ましい。
【0020】
本開示において、含フッ素オレフィン化合物は一般式(2)CX=CF(CFOX(式中、X、X、X及びnは上記に同じである。)で表される。具体的には、CFCF=CFOX、CF=CFCFOX、CF=CFOX、CHF=CFOX、CH=CFOX等が例示される(いずれもXは、炭素数1~6のアルキル基を示す)。
【0021】
一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物は、CFCF=CFOCH、CF=CFCFOCH、CF=CFOCH、CHF=CFOCH及びCH=CFOCHからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これらのうち、CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHの少なくとも一方がより好ましい。
【0022】
ハロゲン化剤としては、塩素化剤及び/又は臭素化剤が好ましい。
【0023】
塩素化剤としては、塩素ガス;次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩;塩素を含むハロゲン間化合物等が挙げられる。塩素を含むハロゲン間化合物としては、一フッ化塩素等が挙げられる。これらの塩素化剤の中でも、塩素ガス又は次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。塩素化剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
臭素化剤としては、臭素;臭素酸カリウム等の臭素酸塩;臭素を含むハロゲン間化合物等が挙げられる。臭素を含むハロゲン間化合物としては、一フッ化臭素等が挙げられる。これらの臭素化剤の中でも、臭素が好ましい。臭素化剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
酸化剤としては、過酸化水素水;酸素;次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩;臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭素酸塩等が挙げられる。酸化剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
塩素ガス;次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩;亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩;及び塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩は、塩素化剤及び酸化剤として用いることができる。また、臭素;及び臭素酸カリウム等の臭素酸塩は、臭素化剤及び酸化剤として用いることができる。
【0027】
工程(A)において、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤は、塩素ガス、臭素及び次亜塩素酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0028】
工程(A)において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物とハロゲン化剤とが反応する場合、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物にハロゲンが付加される。その結果、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物のハロゲン付加物とを含む組成物が得られる。また、工程(A)において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物と酸化剤とが反応する場合、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物が酸化物に変換される。その結果、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の酸化物とを含む組成物が得られる。更に、工程(A)において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物とハロゲン化剤と酸化剤とが反応する場合、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物のハロゲン付加物と一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の酸化物とを含む組成物が得られる。
【0029】
工程(A)において、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤との反応により、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物をハロゲン付加物及び/又は酸化物に変換させる際に、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物とフッ化水素とを共存させることが好ましい。工程(A)において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物とフッ化水素とを共存させる場合、フッ化水素の量は、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物に対して、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.075質量%以下、より一層好ましくは0.05質量%以下である。工程(A)において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物とフッ化水素とを共存させる場合、フッ化水素の量は、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、より一層好ましくは0.001質量%以上である。
【0030】
ハロゲン付加物とは、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の塩素付加物、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物に含まれる水素が塩素又は臭素で置換された化合物、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の臭素付加物等が挙げられる。酸化物とは、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物が酸化されてカルボン酸に変換された化合物等が挙げられる。
【0031】
工程(A)の反応の前における、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の含有割合は、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物に対して、2質量%以下であることが好ましい。
【0032】
工程(A)における反応は、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤との接触反応であることが好ましい。
【0033】
ハロゲン化剤の供給量は、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、好ましくは2モル以下である。酸化剤の供給量は、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、好ましくは2モル以下である。
【0034】
工程(A)の反応において、発熱を抑制する観点から、窒素ガス等の不活性ガス成分を共存させてもよい。
【0035】
工程(A)における反応は、液相又は気相で行うことができる。液相で行う場合としては、反応器内で、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物とを含む粗液中に、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤を導入して、当該粗液と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤と、を接触させる方法が挙げられる。気相で行う場合としては、反応器内で、ガス化した粗液と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤と、を接触させる方法が挙げられる。一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の回収率を向上させる観点から、工程(A)における反応は、液相で行うことが好ましい。
【0036】
工程(A)における反応を液相で行う場合、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の存在下、光照射を行うことにより、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物と、ハロゲン化剤及び/又は酸化剤と、を接触させることが好ましい。光照射を行うための光源としては、約300nm以上400nm以下の波長を有する紫外線を照射できる光源を用いることが好ましい。具体的には、水銀、アルゴンもしくはキセノンを含むアーク灯、ならびにタングステンおよびハロゲンを含むフィラメントランプ等が挙げられる。ハロゲン化剤及び/又は酸化剤は、光照射下に連続的に供給してもよいが、所定量を一括して反応器に導入した後、光照射を開始してもよい。
【0037】
工程(A)における反応を液相で行う場合、反応温度は、0℃以上が好ましく、30℃以下が好ましく、20℃未満がより好ましい。また、反応圧力は、0.0MPa以上が好ましく、0.5MPa以下が好ましく、大気圧下がより好ましい。さらに、反応時間は、0.1時間以上が好ましく、24時間以下が好ましい。
【0038】
工程(A)における反応を気相で行う場合、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカアルミナ等が挙げられる。
【0039】
工程(A)における反応を気相で行う場合、反応温度は、70℃以上が好ましく、300℃以下が好ましい。また、反応圧力は、-0.05MPa以上が好ましく、0.50MPa以下が好ましい。さらに、さらに、反応時間は、0.1時間以上が好ましく、24時間以下が好ましい。
【0040】
工程(A)における液相反応で使用する反応器としては、ガラス製容器、ガラスライニング容器、樹脂ライニング容器、SUS製容器等が挙げられる。
工程(A)における気相反応で使用する反応器としては、ガラス製容器、ガラスライニング容器、樹脂ライニング容器、SUS製容器等が挙げられる。
【0041】
工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られた一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物のハロゲン付加物及び/又は一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の酸化物と、を含む組成物から、該一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物のハロゲン付加物及び/又は該一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の酸化物を分離して、精製された一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含む組成物を得る工程である。
【0042】
工程(B)の工程を経て得られる組成物において、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の純度は、通常、95質量%超、好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上、より一層好ましくは99.3質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上である。
【0043】
工程(B)の工程を経て得られる組成物において、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物の純度は、通常、0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より一層好ましくは0.005質量%以下、特に好ましくは0.001質量%以下である。
【0044】
分離操作は、好ましくは蒸留(特に好ましくは精留)が採用される。蒸留(特に精留)は多段の理論段数をもつ蒸留塔(特に精留塔)を用いることができ、連続蒸留、バッチ蒸留のいずれを採用しても良い。蒸留(特に精留)を行う圧力は、-0.05MPa以上が好ましく、0.10MPa以下が好ましい。このような圧力範囲内で蒸留(特に精留)する場合、一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物と、一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物ハロゲン付加物及び/又は一般式(2)で表される含フッ素オレフィン化合物酸化物と、の沸点差を大きくすることができる(例えば、沸点差を10℃以上つけることができる)ため、分離操作及び分離精度が向上する。
【0045】
蒸留(特に精留)で使用する蒸留塔(特に精留塔)の理論段数は、好ましくは2段以上であり、好ましくは30段以下である。蒸留(特に精留)で使用する蒸留塔(特に精留塔)の還流比は、好ましくは2以上であり、好ましくは50以下である。蒸留塔(特に精留塔)は、ガラス、ステンレス(SUS)、ハステロイ(HASTALLOY)、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)等の腐食作用に抵抗性がある材料によって形成されていることが好ましく、SUSによって形成されていることがより好ましい。蒸留塔(特に精留塔)に使用する充填剤としては、ラシヒリング、マクマホンパッキン等が挙げられる。
【0046】
上記の工程(A)及び(B)を含む本開示の製造方法によれば、精製された一般式(1)CHXCFOX(式中、X及びXは、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Xは、炭素数1~6のアルキル基を示す。ただし、X及びXの双方がトリフルオロメチル基となることはない。)で表される含フッ素エーテル化合物を含む組成物を得ることができる。
【0047】
2.組成物
本開示の組成物は、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を必須成分として含み、更に、CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHの少なくとも一方を含む。本開示において、HFE-356mecと、CFCF=CFOCH及び/又はCF=CFCFOCHとを含む組成物は、洗浄剤として使用することができる。
【0048】
本開示の組成物は、HFE-356mec、CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHを含むことが好ましい。この場合、組成物の安定性、組成物に接触させる材料の安定性等の点から、CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHの総含有量は、HFE-356mecに対して、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より一層好ましくは0.01質量%以下である。また、組成物の安定性、HFE-356mec製造時のコスト削減等の点から、CFCF=CFOCH及びCF=CFCFOCHの総含有量は、HFE-356mecに対して、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.00005質量%以上、より一層好ましくは0.0001質量%以上である。
【0049】
本開示の組成物は、フッ化水素を含んでいてもよい。本開示の組成物がフッ化水素を含有する場合、フッ化水素の含有量は、HFE-356mecに対して、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である。
【0050】
本開示の組成物は、微量の水を含んでもよい。本開示の組成物における含水割合は、HFE-356mec並びにCFCF=CFOCH及び/又はCF=CFCFOCHの合計量に対して、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下である。本開示の組成物が微量の水分を含むことにより、含フッ素オレフィン化合物の分解が抑制されるため、組成物の安定性が向上する。
【実施例
【0051】
以下に実施例を示し、本開示の実施形態をより具体的に説明する。但し、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「室温」とは、20~25℃を意味する。
【0052】
(実施例1-1:塩素ガスを用いた液相での接触反応)
1Lのガラス製容器に、純度94.4質量%のHFE-356mec、純度1.38質量%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.28質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.035質量%のフッ化水素を含む粗体を300g仕込んだ。次いで、該ガラス製容器を0℃に冷却しながら、塩素ガスを20ml/分で30分間供給し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、塩素ガスとの接触反応を、液相で、0.0MPaの圧力で行った。その後、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を25g加えて30分間撹拌し、ヨウ化カリウムデンプン紙で塩素ガスが消失したことを確認してから有機相を分液した。分取した有機相を水洗し、HFE-356mec(純度95.5質量%)を含む組成物を246g得た(HFE-356mecの純度95.5質量%、HFE-356mecの回収率82%)。
【0053】
(実施例1-2:精留塔における精留)
500mLのガラス製容器に、SUS製の充填剤を用いたガラス製の精留塔(理論段数5段)、コンデンサー(コンデンサー内の冷却水の温度:0℃~5℃)、及び分留器を備えた装置を用意し、実施例1-1で得られたHFE-356mecを含む組成物(246g)のうち220gを当該装置に加えて、全還流状態を1時間維持した。その後、還流比50から分留を開始し、177gの留分を回収した時点で精留を完了した。得られた留分をGCで分析しところ、HFE-356mecの純度が99.9質量%(回収率80%)であり、上記含フッ素オレフィン化合物の純度が0.002質量%であることを確認した。また、フッ化水素の純度は0.0002質量%であった。なお、得られた留分のGC分析では、含フッ素オレフィン化合物の塩素付加物及び含フッ素オレフィン化合物の酸化物の存在が確認できなかった。
【0054】
(実施例1-3:塩素ガスを用いた液相での接触反応)
1LのSUS製容器に、純度93.0質量%のHFE-356mec、純度1.84質量%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.74質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.035質量%のフッ化水素を含有する粗体を300g仕込んだ。次いで、室温条件下、塩素ガスを173ml/分で10分間供給し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、塩素ガスとの接触反応を、液相で、0.3MPaの圧力で行った。その後、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を25g加えて30分間撹拌し、ヨウ化カリウムデンプン紙で塩素ガスが消失したことを確認してから有機相を分取した。分取した有機相を水洗し、HFE-356mecを含む組成物を285g得た(HFE-356mecの純度94.5質量%、HFE-356mecの回収率96.5%)。
【0055】
(実施例1-4:塩素ガスを用いた気相での接触反応)
1LのSUS製容器に、純度93.0質量%のHFE-356mec、純度1.84質量%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.74質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.035質量%のフッ化水素を含有する粗体を300g仕込んだ。反応器を70℃に昇温し、塩素ガスを173ml/分で10分間供給し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、塩素ガスとの接触反応を、気相で、0.4MPaの圧力で行った。その後、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を25g加えて30分間撹拌し、ヨウ化カリウムデンプン紙で塩素ガスが消失したことを確認してから有機相を分取した。分取した有機相を水洗し、HFE-356mecを含む組成物を282g得た(HFE-356mecの純度94.2質量%、HFE-356mecの回収率95.2%)。
【0056】
(実施例1-5:精留塔における精留)
500mLのガラス製容器に、SUS製の充填剤を用いたガラス製の精留塔(理論段数5段)、コンデンサー(コンデンサー内の冷却水の温度:0℃~5℃)、及び分留器を備えた装置を用意し、実施例1-3で得られたHFE-356mecを含む組成物(261g)のうち220gを当該装置に加えて、全還流状態を1時間維持した。その後、還流比50から分留を開始し、99gの留分を回収した時点で精留を完了した。得られた留分をGCで分析したところ、HFE-356mecの純度が99.9質量%(回収率45%)であり、上記含フッ素オレフィン化合物の純度が0.003質量%であることを確認した。また、フッ化水素の純度は0.0002質量%であった。なお、得られた留分のGC分析では、含フッ素オレフィン化合物の塩素付加物及び含フッ素オレフィン化合物の酸化物の存在が確認できなかった。
【0057】
(実施例2-1:次亜塩素酸ナトリウムを用いた液相での接触反応)
1Lのガラス製容器に、純度94.4質量%のHFE-356mec、純度1.37質量%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.27質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.035質量%のフッ化水素を含有する粗体220gと、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液66gとを仕込んだ。次いで、54℃で還流下1.5時間撹拌し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、次亜塩素酸ナトリウムとの接触反応を、液相で、0.0MPaの圧力で行った。攪拌してから1.5時間後も、GCで含フッ素オレフィン化合物の残存(純度0.474質量%)を確認された。次いで、1時間ごとに12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を追加で33gずつ、計3回追加(合計99g追加)したが、GCにて含フッ素オレフィン化合物の残存(純度0.07質量%)を確認されたため、室温に戻してから16時間撹拌した。その後、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を15.5g加えて30分間撹拌し、ヨウ化カリウムデンプン紙で次亜塩素酸ナトリウムが消失したことを確認してから有機相を分取した。分取した有機相を水洗し、HFE-356mecを含む組成物を186g得た(HFE-356mecの純度95.7質量%、HFE-356mecの回収率85%)。
【0058】
(実施例2-2:次亜塩素酸ナトリウムを用いた液相での接触反応)
1Lのガラス製容器に、純度94.4質量%のHFE-356mec、純度1.37質量%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.27質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.035質量%のフッ化水素を含有する粗体220gと、12質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液66gとを仕込んだ。次いで、室温で22時間撹拌し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、次亜塩素酸ナトリウムとの接触反応を、液相で、0.0MPaの圧力で行った。その後、10質量%亜硫酸ナトリウム水溶液を15.5g加えて30分間撹拌し、ヨウ化カリウムデンプン紙で次亜塩素酸ナトリウムが消失したことを確認してから有機相を分取した。分取した有機相を水洗し、HFE-356mecを含む組成物を183g得た(HFE-356mecの収率:83%)。
【0059】
(実施例2-3:精留塔における精留)
500mLのガラス製容器に、SUS製の充填剤を用いた精留塔(理論段数5段)、コンデンサー(コンデンサー内の冷却水の温度:0℃~5℃)、及び分留器を備えた装置を用意し、実施例2-2で得たHFE-356mecを含む組成物(183g)のうち90gを加えて全還流状態を1時間維持した。その後、還流比50から分留を開始し、71gの留分を回収した時点で精留を完了した。得られた留分をGCで分析したところ、HFE-356mecの純度が99.9質量%(回収率79%)であり、上記含フッ素オレフィン化合物の純度が0.003質量%であることを確認した。また、フッ化水素の純度は0.0002質量%であった。なお、得られた留分のGC分析では、含フッ素オレフィン化合物の塩素付加物及び含フッ素オレフィン化合物の酸化物の存在が確認できなかった。
【0060】
(実施例2-4:精留塔における精留)
500mLのガラス製容器に、SUS製の充填剤を用いた精留塔(理論段数2段)、コンデンサー(コンデンサー内の冷却水の温度:0℃~5℃)、及び分留器を備えた装置を用意し、実施例2-2で得たHFE-356mecを含む組成物(183g)のうち90gを加えて全還流状態を1時間維持した。その後、還流比50から分留を開始し、69gの留分を回収した時点で精留を完了した。得られた留分をGCで分析し、HFE-356mecの純度が99.8質量%(回収率76%)であり、上記含フッ素オレフィン化合物の純度が0.003質量%であることを確認した。また、フッ化水素の純度は0.0002質量%であった。なお、得られた留分のGC分析では、含フッ素オレフィン化合物の塩素付加物及び含フッ素オレフィン化合物の酸化物の存在が確認できなかった。
【0061】
(実施例3-1:臭素を用いた液相での接触反応)
5Lの反応器に、純度93質量%のHFE-356mec及び純度1.38%の含フッ素オレフィン化合物(純度1.28質量%のCFCF=CFOCH及び純度0.10質量%のCF=CFCFOCH)及び純度0.025質量%のフッ化水素を含有する粗体を2918g仕込んだ。次いで、反応器を氷浴につけて内温5℃以下になるまで冷却し、133gの臭素を反応器に滴下した。滴下終了後、反応器内を室温に戻して、室温で10時間攪拌し、粗体中の含フッ素オレフィン化合物と、臭素との接触反応を、液相で、行った。次いで、5Lポリバケツに得られた反応液を移し替え、500gの氷水及び50gの重曹を加えて攪拌し、pH試験紙で塩基性であること確認した後、チオ硫酸ナトリウム(40g)を入れた。その後、ヨウ化カリウムデンプン紙を用いて余剰の臭素が除去されていることを確認した。次に、反応液を分液ロートに移し下層を取り出したところ、生成物は無色透明の液体であった。ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)により生成物の質量分析を行い、NMRスペクトルによる構造解析を行った。質量分析及び構造解析の結果から、HFE-356mecの純度は96.1質量%であり、HFE-356mecの回収率は96%(得量2793g)であることが確認できた。
【0062】
(実施例3-2:精留塔における精留)
実施例3-1で得られた生成物を、予めマントルヒーターと内温計とを装着させた3Lの丸底フラスコに移送して、丸底フラスコの上部に、コンデンサーと分留器とを備えたガラス製のオルダーショウ型精留塔(理論段数20段)を装着した。マントルヒーターを100℃に設定し、全還流状態を1時間維持した。その後、還流比50から分留を開始し、2725gの留分を回収した時点で精製を終了した。得られた留分をGC/MSにより質量分析を行い、NMRスペクトルによる構造解析を行った。質量分析及び構造解析の結果から、HFE-356mecの回収率は実施例3-1から計算すると93%であり、HFE-356mecの純度は99.95質量%であった。また、含フッ素オレフィン化合物の純度は0.003質量%であった。なお、得られた留分のGC分析では、含フッ素オレフィン化合物の臭素付加物及び含フッ素オレフィン化合物の酸化物の存在が確認できなかった。
【0063】
(実施例4)
ジムロート冷却器を備えたガラス製フラスコに、HFE-356mec、CFCF=CFOCH及びフッ化水素を含む溶剤(CFCF=CFOCHの含有量はHFE-356mecに対して0.004質量%であり、フッ化水素の含有量はHFE-356mecに対して0.0002質量%)を入れた。更に、当該フラスコに、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムの各試験片を入れ、大気圧下、空気中で53℃に加熱し還流させて、上記溶剤及び各試験片の安定性を観察した。72時間後、上記溶剤に酸は発生しておらず、試験片はいずれも腐食などの変化は見られなかった。
【0064】
(実施例5)
CFCF=CFOCHの含有量をHFE-356mecに対して0.004質量%とし、水を溶剤に対して0.3質量%添加した以外は、実施例4と同一条件下で観察を行った。72時間後、溶剤に酸は発生しておらず、試験片はいずれも腐食などの変化は見られなかった。
【0065】
(実施例6)
CFCF=CFOCHの含有量をHFE-356mecに対して0.009質量%、フッ化水素の含有量をHFE-356mecに対して0.0004質量%とし、水を溶剤に対して0.03質量%添加した以外は、実施例4と同一条件下で観察を行った。72時間後、溶剤に酸は発生しておらず、試験片はいずれも腐食などの変化は見られなかった。
【0066】
(比較例1)
ジムロート冷却器を備えたガラス製フラスコに、HFE-356mec、CFCF=CFOCH、CFCF=CFOCH及びフッ化水素を含む溶剤(CFCF=CFOCHの含有量はHFE-356mecに対して1.38質量%、CFCF=CFOCHの含有量はHFE-356mecに対して0.8質量%、フッ化水素の含有量はHFE-356mecに対して0.0004質量%)を入れ、水を当該溶剤に対して0.3質量%添加した。更に、当該フラスコに、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムの各試験片を入れ、大気圧下、空気中で53℃に加熱し還流させて、上記溶剤及び各試験片の安定性を観察した。72時間後、上記溶剤に酸が発生し、いずれの試験片も腐食が見られた。