(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】検査スケジュール作成装置及び検査スケジュール作成用プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/36 20060101AFI20231115BHJP
G06F 11/22 20060101ALI20231115BHJP
G06F 3/06 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G06F11/36 184
G06F11/36 180
G06F11/22 621
G06F3/06 304R
(21)【出願番号】P 2022036599
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 彰
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-129661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/06
G06F 11/07
G06F 11/22-11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の外部記憶装置において過去に発生した多種の不具合事象に関し、各不具合事象の識別情報とその不具合事象が発生した場合の、前記外部記憶装置に与えられた命令に対応して行われた処理を示す処理情報と不具合の検出に用いられた検査パターンとが1セットの不具合情報とされて、記憶された不具合情報データベースと、
検査対象の前記外部記憶装置において行われたソフトウエアの変更内容情報に基づき、前記不具合情報データベースを検索して前記ソフトウエアの変更内容情報に含まれる処理情報と同じ処理情報を有する不具合情報を特定する不具合情報特定手段と、
前記不具合情報特定手段により特定された不具合情報に含まれている検査パターンを選択しこの検査パターンを用いて行う検査のスケジュールを作成する検査スケジュール作成手段と、
を具備することを特徴とする検査スケジュール作成装置。
【請求項2】
1セットの不具合情報には、重要度情報が含まれており、
前記検査スケジュール作成手段は、前記不具合情報特定手段により特定された不具合情報に含まれている重要度情報に基づき、複数の検査パターンの実行順位を制御してスケジュールを作成することを特徴とする請求項1に記載の検査スケジュール作成装置。
【請求項3】
1セットの不具合情報に含まれる重要度情報を、当該不具合事象の不具合重大性指標と、当該不具合事象の発生頻度指標と、当該不具合事象の顧客影響度指標とに基づき算出して、対応する1セットの不具合情報に含ませて不具合情報データベースを作成する不具合情報データベース作成手段を具備することを特徴とする請求項2に記載の検査スケジュール作成装置。
【請求項4】
前記検査スケジュール作成手段は、リード命令とライト命令の少なくとも一方を含む検査パターンを用いてスケジュールを作成する場合には、検査を行う範囲を限定した命令として検査パターンを組み込み、前記スケジュールを作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査スケジュール作成装置。
【請求項5】
前記検査パターンは、多種類の様々な命令を1または複数含んで構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検査スケジュール作成装置。
【請求項6】
検査対象の外部記憶装置において過去に発生した多種の不具合事象に関し、各不具合事象の識別情報とその不具合事象が発生した場合の、前記外部記憶装置に与えられた命令に対応して行われた処理を示す処理情報と不具合の検出に用いられた検査パターンとが1セットの不具合情報とされて、記憶された不具合情報データベースとを備えた検査スケジュール作成装置のコンピュータを、
検査対象の前記外部記憶装置において行われたソフトウエアの変更内容情報に基づき、前記不具合情報データベースを検索して前記ソフトウエアの変更内容情報に含まれる処理情報と同じ処理情報を有する不具合情報を特定する不具合情報特定手段、
前記不具合情報特定手段により特定された不具合情報と1セットに含まれている検査パターンを選択しこの検査パターンを用いて行う検査のスケジュールを作成する検査スケジュール作成手段、
として機能させることを特徴とする検査スケジュール作成用プログラム。
【請求項7】
前記コンピュータを更に、
1セットの不具合情報に含まれる重要度情報を、当該不具合事象の不具合重大性指標と、当該不具合事象の発生頻度指標と、当該不具合事象の顧客影響度指標とに基づき算出して、対応する1セットの不具合情報に含ませて不具合情報データベースを作成する不具合情報データベース作成手段として機能させることを特徴とする請求項6に記載の検査スケジュール作成用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部記憶装置に対する、検査スケジュール作成装置及び検査スケジュール作成用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外部記憶装置においては、製品の大容量化や高機能化が進むことにより、外部記憶装置の検査には長時間を要し、その度合いも増している。外部記憶装置の不具合が発見された場合は、原因究明や修正効果確認のために更に検査時間が増加することになる。
【0003】
検査は多数の検査パターンを組み合わせて実行しており、検査時間を短縮したい場合は不具合を検出しやすい検査パターンを選択して重点的に実行する方法が用いられている。このとき選択には、主に検査者や開発者の経験と勘が用いられており、属人性や選定に時間と手間がかかることが問題となっている。過去の不具合対応記録を参照して決定する場合もあるが、手動でデータベースを探して情報を集めており、やはり時間と手間がかかり選定結果もばらつく問題がある。
【0004】
特許文献1には、パーソナルコンピュータなどの特殊な機器を用いずにソフトウエアの不具合の原因を特定することを可能にするハードディスク装置が開示されている。
この装置では、ソフトウエアの流れを確認する場合、各周辺デバイスとのデータ通信がなされたときのデータ通信履歴情報が、キーの押下が検出されたときの当該キーのキー種別情報が、ログ領域にそれぞれ書き込まれる。この後、キーの押下による処理が実行されると、実行された処理の内容がログ領域に書き込まれる。それらのログ情報はログ領域に時系列で書き込まれる。不具合が発生した場合、ログ情報表示要求が有れば、ログ情報がディスプレイ装置に表示される。操作上で異常な処理の流れになっていれば、ソフトウエアの不具合の原因を早期に発見することができることになる。
【0005】
特許文献2には、検査設備コンピュータ装置が自動でエラー発生頻度の高い検査項目を被検査コンピュータの生産機種類、生産時期、検査ラインごとでリアルタイムに強化して、不良品選別の能力向上を期すコンピュータ装置検査方法が開示されている。
この方法は、被検査コンピュータ装置2,3,…の検査時に発生したエラー検査項目や被検査コンピュータ装置2,3の種類、生産時期、検査ラインごとの様々な付加価値情報を被検査コンピュータ装置2,3……から検査設備コンピュータ装置1に送信する。すると、検査設備コンピュータ装置1は、これらの付加価値情報を記憶装置に順次蓄積し、解析し、発生頻度の高い検査項目を自動強化し、より効果的な検査フローを自動作成して被検査コンピュータ装置2,3,…に送信する。これにより、被検査コンピュータ装置2,3,…がエラー検査項目に対してより効果的な検査フローを適用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-204491号公報
【文献】特開2000-222240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような外部記憶装置に対する検査スケジュール作成装置及び検査スケジュール作成用プログラムの現状に鑑みてなされたもので、その目的は時間と手間をかけずに優先度の高い不具合検査することができ、限られた時間で製品の品質を効率よく高めることが可能となる検査スケジュール作成装置及び検査スケジュール作成用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成装置は、検査対象の外部記憶装置において過去に発生した多種の不具合事象に関し、各不具合事象の識別情報とその不具合事象が発生した場合の、前記外部記憶装置に与えられた命令に対応して行われた処理を示す処理情報と不具合の検出に用いられた検査パターンとが1セットの不具合情報とされて、記憶された不具合情報データベースと、検査対象の前記外部記憶装置において行われたソフトウエアの変更内容情報に基づき、前記不具合情報データベースを検索して前記ソフトウエアの変更内容情報に含まれる処理情報と同じ処理情報を有する不具合情報を特定する不具合情報特定手段と、前記不具合情報特定手段により特定された不具合情報に含まれている検査パターンを選択しこの検査パターンを用いて行う検査のスケジュールを作成する検査スケジュール作成手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成用プログラムは、検査対象の外部記憶装置において過去に発生した多種の不具合事象に関し、各不具合事象の識別情報とその不具合事象が発生した場合の、前記外部記憶装置に与えられた命令に対応して行われた処理を示す処理情報と不具合の検出に用いられた検査パターンとが1セットの不具合情報とされて、記憶された不具合情報データベースとを備えた検査スケジュール作成装置のコンピュータを、検査対象の前記外部記憶装置において行われたソフトウエアの変更内容情報に基づき、前記不具合情報データベースを検索して前記ソフトウエアの変更内容情報に含まれる処理情報と同じ処理情報を有する不具合情報を特定する不具合情報特定手段、前記不具合情報特定手段により特定された不具合情報と1セットに含まれている検査パターンを選択しこの検査パターンを用いて行う検査のスケジュールを作成する検査スケジュール作成手段、として機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成装置を実現するコンピュータ(検査スケジュール作成装置)の構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成装置の外部記憶装置に記憶されているプログラムとデータを示す図。
【
図3】本実施形態の検査スケジュール作成装置が作成した検査スケジュールを用いて検査装置が検査対象の外部記憶装置に対する検査を行う検査システムの構成図。
【
図4】本実施形態の検査スケジュール作成装置における不具合情報データベース作成手段が不具合情報データベースを作成するときに用いる重要度情報の生成用の重みづけ指標テーブルの内容の一例を示す図。
【
図5】本実施形態の検査スケジュール作成装置に対して検査装置から与えられる1ケース分の不具合情報の一例を示す図。
【
図6】本実施形態の検査スケジュール作成装置の不具合情報データベース作成手段によって行われる動作のフローチャート。
【
図7】本実施形態の検査スケジュール作成装置の不具合情報データベースにおける1ケース分の不具合情報の一例を示す図。
【
図8】本実施形態に係る検査スケジュール作成装置が実行する検査スケジュール作成のフローチャート。
【
図9】
図8のフローチャートにより行われる処理を概念的に示した図。
【
図10】本発明の実施形態において用いられる検査パターンの名称を示す図。
【
図11】通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「応答不能」として検出された例に対し、本発明の実施形態によりスケジュール作成し、検査を行ったときの説明図。
【
図12】通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「データ破損」として検出された例に対し、本発明の実施形態によりスケジュール作成し、検査を行ったときの説明図。
【
図13】通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「応答不能」として検出された外部記憶装置が起動しなくなったなどの不具合検出の例に対し、本発明の実施形態によりスケジュール作成し、検査を行ったときの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成装置及び検査スケジュール作成用プログラムを説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1に、本発明の実施形態に係る検査スケジュール作成装置を実現するコンピュータ(検査スケジュール作成装置)100の構成図を示す。このコンピュータ100は、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータなどとすることができる。
【0012】
コンピュータ100は、CPU10が主メモリ11内のプログラムやデータを用いて各部を制御して検査スケジュール作成装置として機能する。CPU10にはバス12を介して外部記憶インタフェース13、入力インタフェース14、表示インタフェース15、通信インタフェース16が接続されている。
【0013】
外部記憶インタフェース13には、外部記憶装置23が接続され、入力インタフェース14には、キーボードやタッチパネルなどの入力装置24とマウスなどのポインティングデバイス22が接続されている。また、表示インタフェース15には、LCDなどの表示装置25が接続されており、画像を表示することが可能である。通信インタフェース16は通信ネットワークへ繋がる回線26が接続されており、他のコンピュータ等と通信することが可能である。
【0014】
図2は、外部記憶装置23に記憶されているプログラムとデータを示す図である。本実施形態では、外部記憶装置23には、
図2に示す不具合情報データベース30が記憶されている。不具合情報データベース30は、検査対象の外部記憶装置において過去に発生した多種の不具合事象に関し、各不具合事象の識別情報とその不具合事象が発生した場合の、与えられた命令に対応して行われた処理を示す処理情報と不具合の検出に用いられた検査パターンとが1セットの不具合情報とされて、記憶されている。また、外部記憶装置23には、
図2に示す不具合情報特定手段31のプログラム、検査スケジュール作成手段33のプログラム、不具合情報データベース作成手段35のプログラムが記憶されている。これらのプログラムは主メモリ11に読み出され、CPU10が実行することにより各手段が実現される。
【0015】
不具合情報特定手段31は、検査対象の前記外部記憶装置において行われたソフトウエアの変更内容情報に基づき、前記不具合情報データベース30を検索して前記ソフトウエアの変更内容情報に含まれる処理情報と同じ処理情報を有する不具合情報を特定するものである。検査スケジュール作成手段33は、上記不具合情報特定手段31により特定された不具合情報に含まれている検査パターンを選択しこの検査パターンを用いて行う検査のスケジュール(プログラム)を作成するものである。不具合情報データベース作成手段35は、1セットの不具合情報に含まれる重要度情報を、当該不具合事象の不具合重大性指標と、当該不具合事象の発生頻度指標と、当該不具合事象の顧客影響度指標とに基づき算出して、対応する1セットの不具合情報に含ませて不具合情報データベース30を作成するものである。
【0016】
図3は、本実施形態の検査スケジュール作成装置100が作成した検査スケジュールを用いて検査装置60が検査対象の外部記憶装置80に対する検査を行う検査システムの構成図である。検査装置60は、検査スケジュール作成装置100と同じく、コンピュータにより構成することができる。検査装置60は、検査スケジュール作成装置100が作成した検査スケジュールを用いて検査対象の外部記憶装置80に命令を送出し、この命令に従って外部記憶装置80が動作して応答を返すときの応答が適正であるかにより不具合の検査を行うものである。検査スケジュール作成装置100から検査装置60に対しては検査スケジュールが与えられ、検査装置60から検査スケジュール作成装置100に対しては不具合情報が与えられる。検査装置60と検査スケジュール作成装置100とは1つのコンピュータで構成することも可能である。
【0017】
図4は、不具合情報データベース作成手段35が不具合情報データベース30を作成するときに用いる重要度情報の生成用の重みづけ指標テーブルの内容の一例を示すものである。重みづけ指標テーブルは、検査スケジュール作成装置100が備えている。
図5は、検査装置60から検査スケジュール作成装置100に対して与えられる1ケース分の不具合情報の一例である。不具合情報には、不具合発生年月日、不具合領域、不具合処理、使用検査パターン、不具合事象、重みづけ指標用情報などが含まれる。上記の不具合領域は、1つの処理によって対象となる外部記憶装置80の領域であって、LBA(Logical Block Address)によって規定される領域とすることができる。不具合処理の「処理」とは外部記憶装置80が行う動作であり、1または複数の命令に対して行う動作である。使用検査パターンは、当該不具合発生時に使用した検査パターンである。不具合事象は、外部記憶装置80において生じた不具合の内容であって、
図4に示した如く、データ破損、応答不能、応答遅延、セキュリティホール、ログ不整合などがある。重みづけ指標用情報は、
図4の重みづけ指標の内、顧客影響度などのように高低のいずれかを選択する際の参照情報であり、「顧客影響度は高」等の情報とすることができる。なお、
図4の重みづけ指標は図に示されているものに限定されない。
【0018】
図6は、以上説明した不具合情報が与えられるときに、不具合情報データベース作成手段35によって行われる動作のフローチャートである。このフローチャートに基づき、不具合情報データベース作成手段35の動作を説明する。検査装置60から検査スケジュール作成装置100に対して1ケース分の不具合情報が与えられるのを待っている(S11)。
【0019】
1ケース分の不具合情報が到来すると、第N(正の整数)番目の不具合ケースとして1つのファイルを作成し、不具合情報データベース30に登録する(S12)。このとき、重みづけ指標用情報が送られてきているので、
図4の重みづけ指標を用いて重量度を追加して不具合情報を作成する。基本的には、重みづけ指標を加えて作成する。
図7は、1ケース分の不具合情報の一例である。この
図7に示されている1ケース分の不具合情報には、第1番目の不具合ケースを示す「不具合1」という不具合事象を含むタイトル、次の行に不具合箇所として、モジュールAが記載されている。「モジュールA」は、外部記憶装置80の動作プログラムが複数のモジュールから構成されており、その中の「A」というモジュールにおいて不具合が発生したことを示す。次の行には、「処理X」が記載されている。「処理」は既に説明した通り、外部記憶装置80が行う動作であり、1または複数の命令に対して行う動作であり、上記のモジュールにより1または複数含まれているものである。この例では、モジュールAの「処理X」において不具合となったことが示されている。なお、同じ不具合事象が発生した場合には、当該不具合事象の発生頻度指標を高い値として当該1ケース分の不具合情報の重要度に反映させる。既に不具合情報データベース30に登録してある同じ不具合事象の不具合情報の重要度も同じ値に更新する。
【0020】
次の行には、検出として「Test3」が記載されている。「Test」は検査パターンと称されるものであり、不具合の検出に用いられる多種類の様々な命令を1または複数含んで構成されるものである。ここでは、この不具合の検出に「Test3」という検査パターンが用いられたことを示す。更に、次の行には、重要度として「1」が設定されている。この重要度は、不具合情報データベース作成手段35が
図4の重みづけ指標を用いて作成し、不具合情報データベース30に設定したものである。
【0021】
周知の通り、FW(ファームウエア)開発においては継続的に機能向上や不具合修正が行われ、それによりソフトウエアの変更が実行される。本実施形態に係る検査スケジュール作成装置100は、直近に行われたソフトウエア変更により発生する可能性のある不具合を検出する可能性の高い検査パターンを優先度付きで求める。ソフトウエア変更内容と発生不具合には関連があり、上記のようにして作成した過去の対応記録である不具合情報データベース30から検査パターンとソフトウエア変更内容の対応を探し、検査スケジュール作成を行う。
【0022】
図8は、本実施形態に係る検査スケジュール作成装置100が実行する検査スケジュール作成のフローチャートである。このフローチャートに基づき、不具合情報特定手段31と検査スケジュール作成手段33の動作を説明する。検査スケジュール作成装置100の検査スケジュール作成動作が開始されると、ソフトウエアの変更内容情報を、例えば開発中の外部記憶装置80のFWから取得する(S21)。
【0023】
図9は、このフローチャートにより行われる処理を概念的に示した図である。
図9において、変更内容情報200は、モジュールA、モジュールB、モジュールC、モジュールDにより構成され、モジュールAの処理Yが変更され、モジュールBでは処理の変更はなく、モジュールCの処理Wが変更され、モジュールDの処理Zが変更されている。
【0024】
検査スケジュール作成装置100は、変更内容情報200から変更された処理情報を得て、同じ処理情報を含んでいる不具合情報(ファイル)を不具合情報データベース30内で特定する(S22)。
図9においては処理Y、処理W、処理Zが変更されており、不具合情報データベース30内では、不具合2、不具合3、不具合6が特定される。ステップS22に続き、特定された不具合情報に含まれている検査パターンを選択する(S23)。
【0025】
ステップS23の処理により、不具合2の検査パターンTest2、不具合3の検査パターンTest5、不具合6の検査パターンTest2が選択される。ステップS23に続き、特定した不具合情報中の重要度情報に基づき検査パターンの優先度である実行順序を制御して検査スケジュール(プログラム)を作成する(S24)。
図3の検査装置60は、この検査スケジュールを用いて外部記憶装置80の検査を行う。このように、検査装置60は、検査スケジュール作成手段33により作成された検査のスケジュール(プログラム)に基づき検査対象の外部記憶装置の検査を行う検査実行手段を備えている。
【0026】
本実施形態では、不具合2の検査パターンTest2が含まれる不具合情報には重要度5が設定され、不具合3の検査パターンTest5が含まれる不具合情報には重要度2が設定され、不具合6の検査パターンTest2が含まれる不具合情報には重要度3が設定されている。そのため、検査パターンTest2の優先度が最も高く、次に検査パターンTest5の優先度が次のランクと続く
図9の検査スケジュール(プログラム)300が作成される。本実施形態の場合、検査パターンTest2は不具合2と不具合6に含まれているため、優先度計算にはこれらが合算されて用いられ、検査パターンTest2の優先度を高めるように働くものである。
【0027】
図10は、本発明の実施形態において用いられる検査パターンの名称を示す図である。以上の実施形態では、検査パターンをTest1、Test2、・・・、TestNなど、概念的な名称例によって示したが、実際には
図10に示す「シーケンシャルWrite/Read」、「シーケンシャルWrite to Read」、・・・、「リバースシーケンシャルWrite/Read」の19種の検査パターンを作り、不具合情報データベース30に設定して、検査スケジュール作成を行う。
【0028】
次に、実際の開発現場で行われたある処理(その1~3)の変更のときに、通常検査で不具合検出した場合に対し、本実施形態で作成されたスケジュールを用いて不具合検出した場合の比較したものを
図11~
図13に示す。本実施形態では、検査スケジュール作成手段33は、リード命令とライト命令の少なくとも一方を含む上記
図10の如き検査パターンを用いてスケジュールを作成する場合には、検査を行う範囲を限定した命令として検査パターンを組み込み、スケジュールを作成する。
図11は、処理(その1)の変更のときに、通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「応答不能」として検出された例に対し、本実施形態の不具合情報特定手段31と検査スケジュール作成手段33によりスケジュール作成し、検査を行ったときの外部記憶装置のディスク上の実行範囲(LBAMINとLBAMAXの間)を示す図である。この場合には、選択した検査パターンは「最重要」な1つとし、検査を行う範囲を通常検査で不具合検出した範囲(
図11のアクセス範囲)とした。この範囲は、
図5の不具合情報データベース30についての説明において、不具合領域としたものであり、取得可能である。
【0029】
上記例では、「ショートレンジランダムRead」という検査パターンによるスケジュールとなる。「ショートレンジランダムRead」は、任意の狭い範囲をランダムなパラメータで任意の時間連続リードする検査パターンである。このスケジュールを用いた場合、通常検査では5時間を要したのに対し5分で不具合事象が「応答不能」という不具合検出ができた。通常の検査では、この不具合検出に向かない検査パターンを含めていくつかのものが順次に投入されて不具合検出されるため、このような結果になったと思料される。
【0030】
図12は、処理(その2)の変更のときに、通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「データ破損」として検出された例に対し、本実施形態の不具合情報特定手段31と検査スケジュール作成手段33によりスケジュール作成し、検査を行ったときの外部記憶装置のディスク上の実行範囲を示す図である。この場合には、選択した検査パターンは「最重要」な1つとし、検査を行う範囲を通常検査で不具合検出した範囲(
図12のアクセス範囲)とした。この範囲は、
図5の不具合情報データベース30についての説明において、不具合領域としたものであり、取得可能である。
【0031】
上記例では、「ショートレンジランダムWrite/Read」という検査パターンによるスケジュールとなる。「ショートレンジランダムWrite/Read」は、ステップ1で、任意の狭い範囲をランダムなパラメータで任意の時間連続ライト/リードし、次のステップ2でアクセスした範囲のデータが正しく書かれているか読み出して検査する検査パターンである。このスケジュールを用いた場合、通常検査では18時間を要したのに対し3時間で不具合事象が「データ破損」という不具合検出ができた。通常の検査では、この不具合検出に向かない検査パターンを含めていくつかのものが順次に投入されて不具合検出されるため、このような結果になったと思料される。
【0032】
図13は、処理(その3)の変更のときに、通常検査で不具合検出した場合に不具合事象が「応答不能」として検出された例に対し、本実施形態の不具合情報特定手段31と検査スケジュール作成手段33によりスケジュール作成し、検査を行ったときの外部記憶装置のディスク上の実行範囲を示す図である。この場合には、選択した検査パターンは「最重要」な1つとし、検査を行う範囲を通常検査で不具合検出した範囲(
図13のアクセス範囲)とした。この範囲は、
図5の不具合情報データベース30についての説明において、不具合領域として説明したものであり、検査パターンスケジュール作成時に取得可能である。
【0033】
上記例では、「マルチスレッドWrite/Read」という検査パターンによるスケジュールとなる。「マルチスレッドWrite/Read」は、ステップ1でランダムな数のスレッド(命令主体)でそれぞれシーケンシャルライト/リードし、ステップ2において電源をオフ/オンする検査パターンで、外部記憶装置80が起動しなくなったなどの不具合検出に用いるものである。このスケジュールを用いた場合、通常検査では15時間を要したのに対し3.75時間で不具合事象が「応答不能」という不具合検出ができた。通常の検査では、この不具合検出に向かない検査パターンを含めていくつかのものが順次に投入されて不具合検出されるため、このような結果になったと思料される。
【0034】
本実施形態によれば、検査者や開発者の経験と勘に頼ることなく、属人性や選定に時間と手間がかかる問題を解消できる。また、過去の不具合対応記録を参照して決定する場合、つまり、手動でデータベースを探して情報を集める場合の、時間と手間がかかり選定結果もばらつく問題についても解消できるものである。
【0035】
本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・CPU、11・・・主メモリ、12・・・バス、13・・・外部記憶インタフェース、14・・・入力インタフェース、15・・・表示インタフェース、16・・・通信インタフェース、22・・・ポインティングデバイス、23・・・外部記憶装置、24・・・入力装置、25・・・表示装置、26・・・回線、30・・・不具合情報データベース、31・・・不具合情報特定手段、35・・・不具合情報データベース作成手段、33・・・検査スケジュール作成手段、60・・・検査装置、80・・・外部記憶装置、100・・・コンピュータ(検査スケジュール作成装置)、200・・・変更内容情報