(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ボア外病巣レーザ療法のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/22 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
A61B18/22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195973
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2018538594の分割
【原出願日】2017-01-26
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ナタラヤン,シャム
(72)【発明者】
【氏名】プリースター,アラン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ガッリターノ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】マークス,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】グルンドフェスト,ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】ゲーガン,ローリー
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-312950(JP,A)
【文献】米国特許第05242438(US,A)
【文献】特表2011-512965(JP,A)
【文献】特開平06-154239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
A61B 8/14
A61B 18/20 - A61B 18/28
A61N 5/06 - A61N 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い熱センサと、
前記熱センサに隣接して前記熱センサと平行に位置付けられる
光ファイバを含む少なくとも1つの光
センサと、
前記少なくとも1つの光
センサの一端に位置付けられる角度付けられた光方向付け表面と、
前記熱センサ、前記少なくとも1つの光
センサ、及び前記光方向付け表面を入れる、ハウジングと、を含む、
マルチモードセンサプローブ。
【請求項2】
前記熱センサは、蛍光光学熱プローブである、請求項1に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項3】
約1.5mmの外径を有する、請求項1に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項4】
当該マルチモードセンサプローブは、約0℃~120℃の範囲内で熱的に安定する光透過性の材料で構成される、請求項1に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項5】
前記角度付けられた方向付け表面は、プリズムである、請求項1に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項6】
互いに隣接し且つ平行
に位置付けられる光ファイバを含む少なくとも1つの光
センサと、
前記光ファイバに位置付けられる温度感受性要素と、
前記少なくとも1つの光
センサ及び前記温度感受性要素を入れる、ハウジングと、を含む、
マルチモードセンサプローブ。
【請求項7】
前記温度感受性要素は、蛍光体である、請求項
6に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項8】
約1.5mmの外径を有する、請求項
6に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項9】
当該マルチモードセンサプローブは、約0℃~120℃の範囲内で熱的に安定する光透過性の材料で構成される、請求項
6に記載のマルチモードセンサプローブ。
【請求項10】
細長い本体と、
第1のチャネル中心線を有する第1のチャネルと、
補助チャネル中心線を有する少なくとも1つの補助チャネルと、
複数のアタッチメントクリップと、を含
み、
前記少なくとも1つの補助チャネルは、請求項1~9のうちのいずれか1項に記載のマルチモードセンサプローブを受け入れるように構成される、
マルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項11】
ネジ、クランプ、ボルト、及びピンからなる群から選択される、ロック部材を更に含む、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項12】
前記複数のアタッチメントクリップは、前記マルチチャネル針ガイドデバイスを超音波プローブの前記本体に固定する、タブ、フック、又はスロットを含む、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項13】
前記第1のチャネルは、生検針、カテーテル、レーザファイバ、又はトロカールが通過するのに適した大きさとされる、管腔を有する、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの補助チャネルは、熱センサ、光センサ、又はマルチモードセンサが通過するのに適した大きさとされる、管腔を有する、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項15】
前記第1のチャネル中心線及び前記補助チャネル中心線は、1~20mmの間で離間する、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【請求項16】
少なくとも1つの追加的な補助チャネルを更に含む、請求項
10に記載のマルチチャネル針ガイドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この出願は、2016年1月26日に出願された米国仮特許出願第62/287,105号の優先権を主張し、その全文を本明細書中に参照として援用する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(PCa)は、5番目に最も一般的な癌であり、男性においては2番目に最も一般的な癌である(Kamangar F et al., J. Clin. Oncol. 24(2006):2137-2150)。従来、PCaは、根治的全腺療法又は能動監視(AS)によって処置されている(Valerio M et al., Fur. Urol. 66.4(2014):732-751)。根治的前立腺切除術(RP)は死亡率を有意に減少させることが示されている一方で、ASの下にある多くの男性は決して根本的介入を決して必要としないので、適切な行動方針を決定することは挑戦である(Bill-Axelson A et al., N. Engl. J. Med. 370(2014):932-942)。勃起不全、尿失禁及び直腸毒性を含む数多くの副作用と関連付けられるにも拘わらず(Kasivisvanathan V et al., Clin. Oncol. 25,(2013:461-473)、RPは、高リスクのPCaを有する者に依然として適したままである(Heidenreich A et al., Eur. Urol. 59,(2011):61-71)。ASは低リスクのPCaを有する男性に適している(Tosoian JJ et al., J. Clin. Oncol. 29,(2011):2185-2190; Bul M et al., Eur. Urol. 63,(2013):597-603)。しかしながら、潜在的に致命的な状態で暮らす恐れのような理由の故に、90%よりも多くの適格男性がASよりも介入を選択する(Barocas DA et al., J. Urol. 180,(2008):1330-1335)。関連する罹患率に加えて、PCaの過度の治療の現在の傾向は、コストと大きな掛かり合いを有する。最近の報告は、「前立腺癌で決して死ぬことのない低悪性疾病を患う男性の80%を治療することを回避する能力が全国的に年間13億2000万ドルを節約する」ことを確認した(Aizer AA et al., J. Natl. Compr. Canc. Netw. 13,(2015):61-68)。その本質的に低レベルの関連する合併症及び最小侵襲的な性質を考えれば、病巣療法は低リスク及び中リスクの両方についてのPCaに対する低コストの代替を提供することがある。
【0003】
レーザ間質性熱療法(laser interstitial thermal therapy)(LITT)は、PCaの治療のための病巣療法の安全で有効な形態として実証されている(Natarajan S et al., J. Urol. 196,(2015):1-8; Oto A et al., MR Imaging-guided Focal Laser Ablation for Prostate Cancer: Phase 1 Trial. (2013):267)。LITTは、拡散レーザ繊維を標的内に挿入すること及び組織温度を60~95℃まで上昇させることからなる。癌制御を達成し、周囲構造に対する損傷を防止するために、この治療様式は、組織凝固のリアルタイムフィードバックを必要とする。組織炭化は、生理食塩水をレーザ繊維の周りで循環させる能動冷却カテーテルによって低減されるが、ペルチエ冷却器のような他の冷却方法を使用することができる。LITT中の温度を監視する標準的なアプローチは、時間がかかり、労働集約的であり、高価である、磁気共鳴温度測定(MRT)である。LITTの普及に対する重大な障壁は、磁気共鳴温度測定(MRT)及び温度-時間熱線量モデルへの依存である。更に、有効性モニタとして病巣レーザ療法システム(focal laser therapy system)と並行して一般的に使用されるアレニウス損傷計算は、今までのところ、熱誘発組織損傷の真の程度を決定する上で信頼性がないことが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟組織の病巣レーザ治療(focal laser therapy)のための改良されたシステム及び方法の必要が当該技術分野に存在する。本発明はこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本発明は、軟組織における癌限界決定の方法に関する。本方法は、少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得するステップと、少なくとも1つのMRI画像から少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成するステップと、MRI可視病変を取り囲む組織から少なくとも1つの生検コアを取得するステップと、少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節、癌不存在陰性結節、又は未確定癌存在を有する中性結節として分類するステップと、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、癌性組織を含む陽性結節の任意の場所を取り囲んで、最小治療容積(MTV)3Dモデルを生成するステップと、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に拡張して、任意の潜在的癌性組織を覆うステップと、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、任意の陰性結節場所を除外して、最適化された限界3Dモデルを生成するステップとを含む。
【0006】
1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、中性結節の場所を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、全方向に1cmだけ等方(isotropically)に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、医療画像データに基づいて癌を宿していると思われる領域を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。1つの実施形態において、MTV3Dモデルは、以前の生検の集団、以前に治療された患者の集団、又はそれらの両方の統計的な分析に基づいて癌含有領域を取り囲むよう、少なくとも部分的に拡張される。
【0007】
他の態様において、本発明は、レーザと、少なくとも1つの熱センサと、針ガイドと、超音波プローブと、3D走査及び場所追跡アセンブリと、コンピュータプラットフォームとを含む、軟組織の病巣レーザ療法のためのシステムに関する。
【0008】
1つの実施形態において、システムは、少なくとも1つの光センサを更に含む。1つの実施形態において、システムは、少なくとも1つの熱感知要素と、少なくとも1つの光感知要素とを有する、少なくとも1つのマルチモードセンサを更に含む。
【0009】
1つの実施形態において、レーザは、レーザファイバと、冷却剤と、二重管腔カテーテルと、冷却ポンプと、流量センサと、流量コントローラとを含む。1つの実施形態において、レーザファイバは、5~50Wの間の光を放射することができる。1つの実施形態において、冷却剤は、水又は生理食塩水の不活性溶液である。1つの実施形態において、冷却剤は、室温にある。1つの実施形態において、冷却剤は、室温にあるか或いは室温より下にある。
【0010】
他の態様において、本発明は、細長い本体と、第1のチャネル中心線を有する第1のチャネルと、補助チャネル中心線を有する補助チャネルと、複数のアタッチメントクリップ(attachment clips)とを含む、マルチチャネル針ガイドデバイスに関する。
【0011】
1つの実施形態において、マルチチャネル針ガイドデバイスは、ネジ、クランプ、ボルト、及びピンからなる群から選択される、ロック部材(locking member)を更に含む。1つの実施形態において、複数のアタッチメントクリップは、マルチチャネル針ガイドデバイスを超音波プローブの本体に固定する、タブ、フック、又はスロットを含む。
【0012】
1つの実施形態において、第1のチャネルは、生検針、カテーテル、レーザファイバ、又はトロカールが通過するのに適した大きさとされる、管腔を有する。1つの実施形態において、補助チャネルは、熱センサ、光センサ、又はマルチモードセンサが通過するのに適した大きさとされる、管腔を有する。幾つかの実施形態において、第1のチャネル中心線及び補助チャネル中心線は、1~20mmの間で離間する。1つの実施形態において、マルチチャネル針ガイドデバイスは、少なくとも1つの追加的な補助チャネルを更に含む。
【0013】
他の態様において本発明は、軟組織のための病巣レーザ療法の方法に関する。方法は、治療されるべき患者の関心領域のリアルタイム3D超音波モデルを取得するステップと、リアルタイム3D超音波モデルの上に少なくとも1つの癌限界3Dモデルをオーバーレイするステップと、少なくとも1つの予想損傷モデルを生成するステップであって、少なくとも1つの予想損傷モデルは、少なくとも1つの癌限界3Dモデルと少なくとも部分的に重なり合う、ステップと、少なくとも1つの予想損傷モデルに適合するよう、少なくとも1つのアブレーション設定と、患者の関心領域内の少なくとも1つのレーザファイバ場所とを計算する、ステップであって、少なくとも1つのアブレーション設定は、レーザ電力出力、レーザ曝露持続時間、レーザ曝露速度、及び冷却剤流速を含む、ステップと、患者の関心領域内少なくとも1つのセンサ場所を計算するステップと、レーザファイバを少なくとも1つのレーザファイバ場所に挿入し、少なくとも1つのセンサを少なくとも1つのセンサ場所に挿入するステップと、少なくとも1つのアブレーション設定を実行するステップと、組織損傷の程度をモデル化することによって治療経過を監視するステップとを含む。
【0014】
1つの実施形態において、少なくとも1つの癌限界3Dモデルは、MRI可視病変3Dモデル、MTV3Dモデル、最適化された限界3Dモデル、及び生検コア場所を含む。1つの実施形態において、予想損傷モデルは、3つの入れ子式の楕円体を含み、最小の楕円体は、最小の予想損傷(minED)を表し、中間の楕円体は、平均の予想損傷(aveED)を表し、最大の楕円体は、最大の予想損傷(maxED)を表す。1つの実施形態において、予想損傷モデルのminEDは、前記MTV3Dモデルの全体をカプセル化する。
【0015】
1つの実施形態において、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの熱センサ、少なくとも1つの光センサ、少なくとも1つのマルチモードセンサ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。1つの実施形態において、アブレーション設定は、95℃よりも高い温度を生成することから制約される。1つの実施形態において、組織損傷の程度は、治療されている関心領域に隣接する組織の温度を測定することによってモデル化される。1つの実施形態において、組織損傷の程度は、少なくとも1つのアブレーション設定を実行した直後に組織の冷却速度を測定することによってモデル化される。1つの実施形態において、組織損傷の程度は、血管分布変化(vascularity change)、機械特性変化、又は組織温度変化の超音波測定によってモデル化される。1つの実施形態において、組織損傷の程度は、治療されている関心領域内の光散乱の量を測定することによってモデル化される。1つの実施形態において、組織損傷の程度は、組織光学特性の熱誘導変更のレベルを定量化することによってモデル化される。
【0016】
他の態様において、本発明は、細長い中央熱センサと、中央熱センサに隣接し、中央熱センサと平行である、少なくとも2つの光ファイバと、各光ファイバの一端に位置付けられるプリズムと、中央熱センサ、少なくとも2つの光ファイバ、及びプリズムを入れる、ハウジングとを含む、マルチモードセンサプローブに関する。
【0017】
他の態様において、本発明は、各光ファイバが互いに平行であり且つ互いに隣接する、少なくとも1つの光ファイバと、各光ファイバの一端に位置付けられる温度感受性材料と、少なくとも1つの光ファイバ及び温度感受性材料を入れる、ハウジングとを含む、マルチモードセンサプローブに関し、温度感受性材料は、蛍光体(phosphor)である。
【0018】
本発明の実施形態の以下の詳細な記述は、添付の図面と共に読むときによりよく理解されるであろう。しかしながら、本発明は図面に示す実施形態の精密な構成(配置)及び手段に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】軟組織の病巣レーザアブレーションのための癌限界決定の例示的な方法を描写するフローチャートである。
【
図2】軟組織の病巣レーザアブレーションのための例示的なシステムの図面である。
【
図3】例示的なマルチモードセンサプローブ先端の図面である。
【
図4】他の例示的なマルチモードセンサプローブ先端の図面である。
【
図5】2つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドの幾つかの図を描写する図面である。
【
図6】前方視野からの2つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドとマルチチャネル向きの概念的な表示とを描写する図面である。
【
図7】2つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドの第1のチャネル内への生検針の挿入を描写する図面である。
【
図8】2つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドの頂面図及び底面図を描写しており、二重管腔カテーテルが第1のチャネルに挿入され、カテーテルが補助チャネルに挿入されている。
【
図9】2つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドの使用と、前立腺を治療するために3つのチャネルを有する例示的なマルチチャネル針ガイドとを描写しており、それぞれは(複数の)補助チャネル内で少なくとも1つの多数の温度又は他の感知要素を使用する。
【
図10】軟組織の病巣レーザ療法の例示的な方法を描写するフローチャートである。
【
図11】レーザファイバ及び3つの熱プローブの例示的な前立腺内配置を示す図面である。レーザファイバは経直腸式に挿入され、熱プローブは経会陰式に挿入されている。軸方向の差込図に見られるように、熱プローブは、治療ゾーンの限界(プローブ1及び2)並びに直腸壁付近(プローブ3)での独立した温度測定のために使用されている。治療中、前立腺内温度は、(6秒毎に)MR温度測定法によって並びにマルチチャネル記録器(multi-channel reorder)を介して(リアルタイムに)熱プローブによって継続的に監視され且つ記録される。ファイバ及びサーミスタの位置は、各治療中にMR走査によって定期的に再確認される。
【
図12】治療された10人の男性の基線特性を列挙した表である。
【
図13】有害事象共通用語基準(CTCAE)4.03版(version 4.03)によって等級付けされた各患者の有害事象を列挙した表である。全ての患者は1~2時間内に退院させられた。
【
図14】病巣レーザアブレーション(focal laser ablation)(FLA)前後の各患者についてのグリーソンスコア(Gleason score)及び最大癌コア長(maximum cancer core length)を列挙した表である。
【
図15】外来クリニック処置室内のFLAのための例示的な部屋構成を描写している。
【
図16】治療中にレーザファイバ(赤色)及び熱プローブ(白色)を固定し且つ再配置するための安定したプラットフォームを提供する例示的なアルテミス融合デバイス(Artemis fusion device)を描写している。
【
図17】FLA中の前立腺内のレーザファイバ(黄色)と熱プローブ(青色)との間の関係を示す図面を描写している。レーザファイバは経直腸式に挿入され、熱プローブは経直腸式及び経会陰式に挿入されている。腫瘍は、緑色に陰影付けられている。熱プローブは、処置を通じて前立腺内温度の継続的なモニタリングを提供する。前立腺内のレーザファイバの適切な位置付けは、リアルタイム超音波を用いて処置中に検証される。
【
図18A】関心領域の決定を描写している。陽性及び陰性のコアを有する関心領域を示す融合生検の3D前立腺モデル。
【
図18B】関心領域の決定を描写している。FLA治療の治療サイズを推定するために使用される患者特異的な3D前立腺モデル。
【
図19】生検で確認された腫瘍の当初の部位における全ての10人の患者におけるアブレーションゾーンの局所化された低灌流(hypo-perfusion)を示す一連のダイナミックコントラスト強調(DCI)MRIを描写している。
【
図20A】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。治療前、MRIはグレード4のROIを示した。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図20B】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。グレード4のROIは、MRI/US融合生検(
図20B)で、グリーソン3+4=7CaP(
図20C)を明らかにした。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図20C】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。グレード4のROIは、MRI/US融合生検(
図20B)で、グリーソン3+4=7CaP(
図20C)を明らかにした。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図20D】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。FLAの6ヶ月後、ROIはMRI上でもはや見えない。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図20E】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。前立腺のMRI/US融合生検は、癌を明らかにしなかった。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図20F】患者6の撮像及び組織学的所見を描写している。前立腺のMRI/US融合生検は、凝固壊死のみを明らかにした。治療した最後の6人の男性の中で、3人において類似の結果が見出された。
【
図21】生体内レーザ間質熱療法(LITT)中の温度及び百分率の細胞死の変化を描写している。細胞死はアレニウス統合アプローチ(Arrhenius integral approach)を用いて推定される。
【
図22】光学モニタリングシステムを試験する実験構成を描写する図面である。
【
図23】LITT中の温度及び光起電力の変化を描写している。
【
図24】LITT中の幾つかの損傷推定に対して光起電力の変化を比較している。
【
図25】病巣レーザアブレーション(FLA)試験に登録した男性の基線特性(baseline characteristics)を描写する表である。基線で、少なくとも10個の系統的な生検コアを取得してマルチ病巣性(multi-focality)を排除し、MR可視関心領域、即ち、治療されるべき病変から少なくとも2つのコアを取得した。
*TZ,移行ゾーン;PZ,周辺ゾーン。
**UCLA評価システム(Natarajan et al., Urol Oncol, 2011,29(3):334-342)。
【
図26】FLA治療の4時間内及び6ヶ月内のMRI変化を描写した表である。治療直後のマルチパラメトリックMRP(mpMRI)上で見られる非灌流領域によって決定されるような治療容積は、3cc(前立腺容積の7.7%)の中央値であった。
*FLA後6ヶ月のMRI上の前立腺容積は、治療前容積に比較して有意に減少した(p=0.03、Wilcoxon符号付き順位検定)。
【
図27】病巣レーザ療法で治療された全ての8人の男性についての時間に亘る前立腺特異なアンチゲンの量を描写するグラフであり、スクリーニングに先立つ値(~6ヶ月)、FLA治療に先立つ(0ヶ月)、並びに治療後追跡時(1、3、6ヶ月)の値を示している。PSAは、FLAの6ヶ月後に8ng/mLから3.3ng/mLに有意に低下した(p=0.0078)。PSA密度の有意な低下及び自由PSAの増大も観察された。
【
図28】レーザ先端から13mm地点での、病巣療法患者#6の熱プローブ読取値(灰色)に対するMRI温度測定値(MRT)(黒色)を描写したグラフである。MRTによって報告された温度は、大部分は動作アーチファクトの故に、あらゆる場合において信頼できず、ノイズが多い。MRI走査は1500秒で終了したのに対し、熱プローブはデータを報告し続けた。MRI走査パラメータ:(反復時間=24ms;エコー時間=10ms、視野=220×220mm、フリップ角=25度;スライス厚さ=4mm;分解能=0.86×0.86mm)。
【
図29A】FLA中の前立腺内の温度変化を描写している。フィルタリングされた温度測定マップでオーバーレイされた病巣療法患者#8のMRIを描写している。レーザファイバからの熱は閉じ込められる、即ち、レーザ先端の周りの取り囲まれた領域に限定される。
【
図29B】FLA中の前立腺内の温度変化を描写している。熱プローブによって記録された温度変化のチャートを描写している。温度プローブ1(レーザ先端から16.6mm)及びプローブ3(レーザ先端から14.4mm)は僅かな温度変化を示しているのに対し、プローブ2(レーザ先端から8.2mm)はアクティブ化期間(垂直バー)中に相当な加熱を記録している。
【
図30】病巣レーザアブレーションの2時間内の全ての8人の患者におけるダイナミックコントラスト強調MRIの画像を描写している。良く定められた灌流下領域(白色矢印)は、治療が重要構造から離れた標的領域に制約されたことを示している。
【
図31A】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。治療前、MRIは、グレード4関心領域を示した。
【
図31B】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。グレード4関心領域は、標的化生検(
図31B)後に、グリーソン3+4=7前立腺癌を明らかにした(
図31C)。
【
図31C】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。グレード4関心領域は、標的化生検(
図31B)後に、グリーソン3+4=7前立腺癌を明らかにした。
【
図31D】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。FLAの6ヶ月後、当初の翰林領域は、もはや見えない。
【
図31E】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。治療ゾーンからの標的化生検(
図31E)は、癌を示さず、凝固壊死及び古い出血の領域のみを示した(
図31F)。スクリーニング及び追跡統計的生検並びに治療ゾーンの限界(図示せず)からのコアも、前立腺癌について陰性であった。
【
図31F】FLA前後の病巣療法患者#6の前立腺を描写している。治療ゾーンからの標的化生検(
図31E)は、癌を示さず、凝固壊死及び古い出血の領域のみを示した(
図31F)。スクリーニング及び追跡統計的生検並びに治療ゾーンの限界(図示せず)からのコアも、前立腺癌について陰性であった。
【
図32A】FLA治療中の間質プローブ温度を描写したグラフである。非灌流領域から遠いプローブはより低い温度を受け、周囲組織への最小の損傷を保証する。
【
図32B】治療を受けた領域を非灌流として示す治療後ダイナミックコントラスト強調画像である。
【
図33A】前立腺を精密切断するプロセスを描写している。3D印刷された患者特異的な鋳型(
図33A)を使用して、mpMRI(
図33B)をホールマウント組織学(
図33C)に相関させ、3D共同位置合わせ(co-registration)を行い、治療限界の決定のためのデータベースに寄与する。
【
図33B】前立腺を精密切断するプロセスを描写している。3D印刷された患者特異的な鋳型(
図33A)を使用して、mpMRI(
図33B)をホールマウント組織学(
図33C)に相関させ、3D共同位置合わせ(co-registration)を行い、治療限界の決定のためのデータベースに寄与する。
【
図33C】前立腺を精密切断するプロセスを描写している。3D印刷された患者特異的な鋳型(
図33A)を使用して、mpMRI(
図33B)をホールマウント組織学(
図33C)に相関させ、3D共同位置合わせ(co-registration)を行い、治療限界の決定のためのデータベースに寄与する。
【
図33D】前立腺を精密切断するプロセスを描写している。3D印刷された患者特異的な鋳型(
図33A)を使用して、mpMRI(
図33B)をホールマウント組織学(
図33C)に相関させ、3D共同位置合わせ(co-registration)を行い、治療限界の決定のためのデータベースに寄与する。
【
図34】MRI疑惑レベル(UCLAグレード3~5)によって階層分類された腫瘍のグリーソンスコアを描写しており、MR疑惑が上昇するときに癌感受性が増大することを実証している。
【
図35】65人の男性における前立腺癌及び臨床的に有意な前立腺癌の決定のための術前mpMRIの精度を描写した表である。患者特異的な鋳型を使用してホールマウントスライド(whole mount slides)をMRIと相関させている。
【
図36C】整合したROIを超える腫瘍の最大の広がりと不規則な輪郭が示されている。腫瘍容積及び最大腫瘍軸の両方の有意なMRI過小評価が明らかである。
【
図37】MRI対ホールマウント組織学断面によって決定されるような整合した腫瘍及び前立腺の空間パラメータを描写した表である(N=71腫瘍、65前立腺)。MRIは腫瘍容積及び最長軸を有意に過小評価した(整合させられたペアのt試験,p<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、病巣レーザ療法(focal laser therapy)中の癌性組織(cancerous tissue)の排除に必要な治療の場所及び幅を示す癌限界(cancer margins)を決定する方法を提供する。本発明は、病巣レーザ療法のためのシステム及びデバイス並びに病巣レーザ療法のためのシステム及びデバイスを使用する方法も提供する。本発明は、MRI温度測定に依存せず、治療の正確さを向上させる一方で、治療時間及びコストも低減する。
【0021】
(定義)
本発明の明確な理解に関連する要素を例示する一方で、明瞭性の目的のために当該技術分野において典型的に見出される多くの他の要素を排除するために、本発明の図及び記述は簡略化されていることが理解されるべきである。当業者は、本発明を実施する上で望ましい及び/又は必要な他の要素及び/又はステップを認識することがある。しかしながら、そのような要素及びステップは当該技術分野においてよく知られており、それらが本発明のより良い理解を促進しないので、そのような要素及びステップの議論は本明細書では提供されない。本明細書中の開示は、当業者に知られているそのような要素及び方法に対する全てのそのような変形及び修正に向けられている。
【0022】
他の場所で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと類似又は均等な任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を記載する。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、以下の用語の各々は、この区画においてそれに関連付けられる意味を有する。
【0024】
本明細書において、単数形の表現(冠詞「a」及び「an」)は、その冠詞の文法的目的の1つ又は1つよりも多く(即ち、少なくとも1つ)に言及するために使用される。一例として、「ある要素(an element)」は、1つの要素又は1つよりも多くの要素を意味する。
【0025】
量、時間的な持続時間、及び同等物のような、測定可能な値に言及する場合、本明細書で使用される「約(about)」は、以下のような変動が適切であるときには、特定の値からの±20%、±10%、±5%、±1%、及び±0.1の変動を包含することが意図される。
【0026】
この開示を通じて、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲形式の記述は、便宜及び簡潔性のために過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されてならないことが理解さるべきである。従って、範囲の記述は、その範囲内の全ての可能な部分範囲並びに個々の数値を具体的に開示したものと考えられるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等のような部分範囲、並びにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6、及びそれらの間の任意の全増分及び部分増分を具体的に開示したものと考えられるべきである。これは範囲の幅と無関係に当て嵌まる。
【0027】
(軟組織の病巣レーザ療法のための癌限界決定の方法)
1つの態様において、本発明は、癌限界決定の方法を提供する。この方法は、放射線データ(radiology data)と病理データ(pathology data)とを組み合わせて、病巣レーザ療法(focal laser therapy)のために癌性組織の場所及び幅を表す3Dモデルを生成する。
【0028】
ここで
図1を参照すると、癌限界決定の例示的な方法100が提示されている。方法100は、ステップ102で開始し、ステップ102では、少なくとも1つのMRI可視病変を有する関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得する。ステップ104では、少なくとも1つのMRI画像から少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成する。ステップ106において、MRI可視病変を取り囲む組織から少なくとも1つの生検コアを取得する。ステップ108において、少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節(cancer-containing positive node)、癌不存在陰性結節(cancer-absent negative node)、又は不確定癌存在(indeterminate cancer presence)を有する中性結節(neutral node)として分類する。ステップ110において、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを少なくとも部分的に拡張させ、癌性組織を含む陽性結節の場所を取り囲んで、最小治療容積(minimum treatment volume)(MTV)3Dモデルを生成する。ステップ112において、MTV3Dモデル限界(model margin)を少なくとも部分的に拡張させる。幾つかの実施形態では、MTV3Dモデル限界を等方的に拡張させる。他の実施形態では、少なくとも1つの中性結節を含むよう、或いは疑わしく見えるMRI又はUS画像から見える任意の領域又は構造を含むよう、MTV3Dモデルを拡張させる。ステップ114において、MTV3Dモデルを少なくとも部分的に収縮させて、陰性結節の場所を排除して、最適化された限界3Dモデル(Optimized Margin 3D model)を生成する。
【0029】
関心領域は、癌性組織を含む軟組織の領域を指す。関心領域の少なくとも1つのMRI画像を取得する方法は、当技術分野で一般的に使用される任意の適切なMRI方法であり得る。幾つかの実施形態において、MRI方法は、マルチパラメトリックMRI(multi-parametric MRI)を含む。少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルを生成する方法は、複数のMRI画像を3次元表現に照合し得る任意の適切なソフトウェアを使用して実行されてよい。3Dモデルは、操作者が、少なくとも1つのMRI可視病変の大きさ、形状、及び場所を空間的に視覚化することを可能にする。3Dモデルは、生検コアが局所組織の代表的なサンプリングを取り込む(キャプチャ)一方で、敏感な解剖学的構造を回避するよう、操作者がMRI可視病変を取り囲む組織からの少なくとも1つの生検コアの取得を計画することも可能にする。
【0030】
少なくとも1つの生検コアを取得する方法は、12~20の間の針ゲージ(needle gauge)を有する生検コア針(biopsy core needles)を使用する超音波(US)誘導方法を含む、当該分野において知られた任意の適切な方法であることができる。典型的な生検コアは、直径及び長さを含み、癌性組織の空間的場所は、起源組織(origin tissue)中の生検コアの源(source)及び生検コアの長さに沿う癌性組織の位置の両方によって決定されてよい。少なくとも1つの生検コアを、癌含有陽性結節、癌不存在陰性結節、又は不確定癌存在を有する中性結節として標識化すること(labelling)は、操作者が、MRI画像中に見ることができない関心領域内の癌の実際の境界を識別することを可能にする。
【0031】
生検コアサンプルは、少なくとも1つのMRI可視病変の3Dモデルの外側の場所にある癌含有組織を明らかにすることがある。3Dモデルは、陽性結節の不存在に対処するよう操作者によって変形させられてよい。例えば、操作者は3Dモデル内に膨らみ(バルジ)(bulges)を導入して陽性結節を包んで(envelope)よく、全ての陽性結節を包む3DモデルはMTV3Dモデルを表す。
【0032】
MTV3Dモデルの拡張は非剛性であり、関心領域内の癌性組織の実際の境界により良く適合するよう操作者によって自由に変形させられることができる。MRIで明瞭に見えない関心領域内の癌性組織を取り込むために、MTV3Dモデルは更に拡張せられてよい。1つの一実施形態において、MTV3Dモデルは、全ての方向に等方的に拡張させられる。拡張の程度は、病変の場所、組織の種類、病変の種類、及び同等のことを含む、多くの要因に依存して異なることがある。例えば、敏感な解剖学的構造に近接近している病変について、3Dモデルの拡張は、敏感な解剖学的構造の方向を除く全ての方向にあってよい。他の例では、高レベルの脈管構造(血管系)を含む病変は、低レベルの脈管構造を有する良性の癌性組織を含む病変よりも大きい量の拡張を保証することがある。幾つかの実施形態において、MTV3Dモデルは、全ての方向に1cmだけ等方的に拡張させられる。
【0033】
幾つかの実施形態において、MTV3Dモデルは、任意の組織領域又は構造が癌を宿す可能性に基づいて拡張される。例えば、3Dモデルは、以前の生検の集団、治療を受けた患者の集団、又はそれらの両方における癌場所の統計的分析に基づいて異方的に拡張させられることがある。
【0034】
MTV3Dモデルは、少なくとも1つの陰性結節と重なり合うことがある。3Dモデルは、陰性結節の存在に対処するよう操作者によって変形されられてよい。例えば、操作者は、3Dモデル内に窪み(dimple)又は凹み(depression)を導入して陰性結節を排除してよく、結果として得られる3Dモデルは、最適化された限界3Dモデルを表す。
【0035】
(軟組織の病巣レーザ療法のためのシステム)
他の態様において、本発明は、軟組織の病巣レーザ療法のためのシステムを提供する。システムは、MRI温度測定の使用を必要としない一方で、温度及び治療経過のリアルタイムモニタリング(実時間監視)を依然として可能にして、軟組織の病巣レーザ療法を管理するのに必要とされる時間及び資源を減少させる。
【0036】
ここで
図2を参照すると、軟組織の病巣レーザ療法のための例示的なシステム200の図が示されている。システム200は、レーザ210と、少なくとも1つの光センサ220と、少なくとも1つの熱センサ230と、針ガイド250(needle guide)と、超音波プローブ260と、3D走査及び場所追跡アセンブリ270と、コンピュータプラットフォーム280とを含む。
【0037】
レーザ210は、レーザファイバ212と、冷却剤213と、二重管腔カテーテル214と、冷却ポンプ215と、流量センサ216と、流量コントローラ218とを含む。レーザファイバ212は、レーザ光を標的に誘導することができ、レーザ光を十分な出力で放射して凝固壊死を引き起こすことができる、任意の適切なレーザファイバであることができる。幾つかの実施形態において、レーザファイバ212は、光の焦点方向のためにその先端に拡散又は反射要素を含む。幾つかの実施形態では、適切なレーザファイバは、5~50Wの間の光を輸送し且つ放射することができる。より高いレーザエネルギ出力が能動冷却(active cooling)によってサポートされ、冷却剤213は、冷却ポンプ215によってレーザファイバに隣接して循環され、流量センサ216及び流量コントローラ218によって制御される。1つの実施形態において、能動冷却は、レーザファイバ212を二重管腔カテーテル214の第1の管腔内に挿入し、二重管腔カテーテル214の第2の管腔を通じて冷却剤213を循環させることによって、達成される。冷却剤213は、生理食塩水又は水の不活性溶液のような、当該技術分野において使用される任意の適切な冷却剤であり得る。1つの実施形態において、冷却剤213は、室温にある。他の実施形態において、冷却剤は、室温より下にある。流量コントローラ218は、冷却剤循環の速度を変調するのに対し、流量センサ216は、冷却剤循環の速度を能動的に追跡し、冷却剤の制限された流れのような問題が生じた場合に操作者に警告する。幾つかの実施形態では、当技術分野において一般的に使用されるレーザをビジュアレーズ(Visualase)レーザアブレーションシステムのようなシステム200に組み込んでよい。
【0038】
少なくとも1つの光センサ220及び少なくとも1つの熱センサ230は、レーザ210の性能及び治療経過のリアルタイムモニタリングのための手段を提供する。少なくとも1つの光センサ2200は、レーザ流束量又はレーザ放射をインビボ(生体内)で測定することができる任意の適切なセンサであることができる。例えば、光ファイバが使用して関心領域からの光をフォトダイオードに給送してよい。同様に、少なくとも1つの熱センサ230は、サーミスタ又は蛍光センサのような、温度をインビボで測定することができる任意の適切なセンサであることができる。幾つかの実施形態において、システム200は、少なくとも1つの光感知要素と少なくとも1つの感熱要素とを単一のデバイスに統合する、少なくとも1つのマルチモードセンサ240を含む。
【0039】
針ガイド250は、器具の挿入方向を案内する少なくとも1つの直線チャネルを含む。例えば、針ガイド250の少なくとも1つのチャネルは、組織の領域内の正確な配置のために、レーザファイバ212、光センサ220、熱センサ230、マルチモードセンサ240、生検針、又はトロカールのような、器具を受け入れることがある。幾つかの実施形態において、針ガイド250は、本明細書の他の場所に記載するように、マルチチャネル針ガイドである。幾つかの実施形態では、針ガイド250を少なくとも部分的に超音波プローブ260に取り付けることができる。針ガイド250を超音波プローブ260に取り付けることは、操作者が両方のデバイスを一度に操作することを可能にする。
【0040】
3D走査及び場所追跡アセンブリ270は、超音波プローブ260から送信される超音波画像を3Dモデルに変換する。3Dモデルは、操作者が治療されている組織の領域並びに組織の領域内に挿入される任意のデバイスの空間的な向きを視覚化することを可能にする。3D走査及び場所追跡アセンブリ270は、超音波プローブ260及び針ガイド250のような、組織の領域内に挿入される任意のデバイスの空間的な向きを制御する手段を更に含む。例示的な3D走査及び場所追跡アセンブリ250は、Artemis MRI/Ultrasound Fusion Device (Eigen, Grass Valley, CA)を含む。
【0041】
本明細書で想定されるように、コンピュータプラットフォーム280は、当業者によって理解されるような、デスクトップ若しくはモバイルデバイス、ラップトップ、デスクトップ、タブレット、スマートフォン又は他のワイヤレスデジタル/携帯電話、テレビ又は他の薄いクライアントデバイスを含む、当業者によって理解されるような任意のコンピューティングデバイスを含んでよい。
【0042】
コンピュータプラットフォーム280は、本明細書を通じて記載するように、システム200のコンポーネント(構成要素)にコマンド(命令)を送信して、受信信号を解釈することが十分にできる。特定の実施形態では、システムの部分は、コンピュータ操作されてよく、或いは他の実施形態では、システム全体がコンピュータ操作されてよい。コンピュータプラットフォームは、冷却剤流速、レーザ電力出力、並びに超音波周波数、強度、振幅、周期、波長、及び同等物のような、パラメータを制御するように構成されることができる。コンピュータプラットフォームは、角形成及び部分的ロック(部分的係止)のパラメータを含む3D走査及び場所追跡アセンブリ270でデバイスの作動を制御するように構成されることもできる。コンピュータプラットフォームは、受信信号を記録し、引き続き、受信信号をリアルタイムで解釈するように、構成されることができる。例えば、コンピュータプラットフォームは、受信信号を画像として解釈し、引き続き、画像をデジタルディスプレイに送信するように構成されてよい。コンピュータプラットフォームは、更に、受信信号に基づいて自動計算を実行して、密度、距離、温度、組成、画像化(撮像)、処理された容積(ボリューム)、及び同等物のような、データを出力してよい。コンピュータプラットフォームは、例えば、1つ又はそれよりも多くの静止画及び動画をスクリーン上に投影すること、1つ又はそれよりも多くの聴覚信号を提供すること、1つ又はそれよりも多くのデジタル読出しを提示すること、1つ又はそれよりも多くの光インジケータを提供すること、1つ又はそれよりも多くの(振動のような)触覚応答を提供すること、及び同等のことによる、受信信号及びデータ出力を伝達する手段を更に提供してよい。幾つかの実施形態において、コンピュータプラットフォームは、操作者がリアルタイム通信に応答してデバイスの使用を調整してよいように、受信信号及びデータ出力をリアルタイムで伝達する。例えば、制限された冷却剤の流れを示す流量センサ216からの信号に応答して、コンピュータプラットフォームは、レーザファイバ212の出力を減少させるか、或いは3D走査及び場所追跡アセンブリ270に指示して、患者からレーザファイバ212を引き抜いて怪我を防止してよい。
【0043】
コンピュータプラットフォームは、単一のコンピューティングデバイス上に完全に存在してよく、或いは中央サーバ上に存在して、通信ネットワークを介して任意の数のエンドユーザデバイス上で動作してよい。コンピューティングデバイスは、少なくとも1つのプロセッサと、標準的な入力デバイス及び出力デバイスと、データを格納し且つプログラムを実行するための並びに必要に応じてネットワークを介してデータを送受信するためのコンピューティングデバイス上で典型的に見出される全てのハードウェア及びソフトウェアとを含んでよい。中央サーバが使用されるならば、それは1つのサーバであってよく、より好ましくは、全てがシステムの管理者又は操作者によって全て維持され且つ管理される、ネットワークメインフレームサーバ、ウェブサーバ、メールサーバ及び中央データベースサーバとしての機能を提供する、スケーラブルサーバ(scalable server)の組み合わせであってよい。(複数の)コンピューティングデバイスは、例えば、追加的な記憶装置バックアップのために、直接的に又はネットワークを介して遠隔データベースに接続されてもよく、2つ又はそれよりも多くのコンピューティングデバイス間でのファイル、電子メール、ソフトウェア、及び任意の他のデータフォーマットの通信を可能にするために接続されてもよい。本発明のシステムによって利用されるデータベースの数、種類又は接続性に制限はない。通信ネットワークは、広域ネットワークであることができ、例えば、オープンな広域ネットワーク(例えば、インターネット)、電子ネットワーク、光ネットワーク、無線ネットワーク、物理的に安全なネットワーク又は仮想私設ネットワーク、及びそれらの任意の組合せのような、当業者によって理解される任意の適切なネットワーク化されたシステムであってよい。通信ネットワークは、通信ネットワークがシステムを通じた情報アイテム及び他のデータの送信に適することがあるように、ゲートウェイ、ルータ、ブリッジ、インターネットサービスプロバイダネットワーク、公衆交換電話ネットワーク、プロキシサーバ、ファイアウォール、及び同等物のような、任意の中間ノードを含んでもよい。
【0044】
ソフトウェアは、印刷可能な結果報告書又は任意の通信可能に接続されたコンピューティングデバイスに送信することができる生成される電子メールメッセージ又は添付ファイルのような電子的な結果報告書を生成することのような、標準的な報告機構含んでもよい。同様に、前述のシステムの特定の結果は、アラート電子メール、テキスト又は電話の生成のように、アラート信号を引き起こして(trigger)、操作者に特定の結果を警告することができる。そのような機構のさらなる実施形態は、本明細書の他の場所に記載されているか、或いは当業者によって理解される標準的なシステムであってよい。
【0045】
(マルチモードセンサプローブ)
他の態様において、本発明は、マルチモードセンサプローブを提供する。マルチモードセンサプローブは、本発明の方法の実施中に組織切除の強化されたモニタリングを提供する。
【0046】
ここで
図3を参照すると、例示的なマルチモードセンサ240aが示されている。マルチモードセンサ240aは、1つ又はそれよりも多くのセンサを保持する少なくとも1つの管腔を有する細長いケーシングを含む。例えば、本明細書の他の場所に記載するように、1つの実施形態において、マルチモードセンサ240aは、マルチモードセンサ240aの管腔内に平行に配置された少なくとも1つの熱センサ230と少なくとも1つの光センサ220とを含む。
図3において、マルチモードセンサ240aは、2つの光センサ220を含み、各光センサ220は、光ファイバ222と、
角度付けられた光方向付け表面であるプリズム224とを有する。光ファイバ222は、プリズム224が(レーザ拡散器に面する)0°の放射角及び(レーザ拡散器から見て外方を向く)180°の放射角を有する光を方向付けるよう、互いに対向して配置されている。熱センサ230は、光ファイバ222の間に位置付けられた蛍光光学熱プローブ(fluoroptic thermal probe)を含む。
【0047】
ここで
図4を参照すると、例示的なマルチモードセンサ240bが示されている。マルチモードセンサ240bは、光ファイバ222の端に位置付けられた少なくとも1つの熱センサ226を含む。少なくとも1つの熱センサ226は、それぞれ、温度感受性材料を含み、抵抗材料を含む温度感受性材料は、蛍光体であり、温度は、蛍光体のような物質を近赤外光で調べて(interrogating)、減衰周波数応答を観察することによって、測定される。特定の実施形態において、マルチモードセンサ240bは、レーザファイバ212からのクロストーク(漏話)を低減させるために受信器レクトロニクス(receiver electronics)に組み込まれる980nmの光のためのフィルタを含む。
【0048】
マルチモードセンサは、電磁干渉の影響を受けず、柔軟性が高く、自己発熱に抗する、熱センサを含み、それは高熱中の測定誤差を低減する。典型的な性能は、50℃範囲(35~85℃)に亘って±0.5℃、0~120℃の温度範囲に亘って±2℃のオーダにある。好ましくは、マルチモードセンサは、0~120℃の範囲(例えば、Tefzel)におけるような、典型的にはFLAにおいて直面する温度で又はその付近で熱的に安定する、光透過性の材料で構成される。マルチモードセンサは、非外傷性挿入のために15Gaカテーテルの内側に適合することができる、直径1.5mmより下であることができる。
【0049】
(マルチチャネル針ガイド)
他の態様において、本発明は、新規のマルチチャネル針ガイド(multi-channel needle guide)を提供する。マルチチャネル針ガイドは、レーザファイバ及びセンサのような器具の誘導された挿入のためのプラットフォームを提供する。マルチチャネル針ガイドは、レーザ有効範囲(laser coverage)及び治療経過を計算する目的のための精密な寸法を含む。
【0050】
ここで
図5を参照すると、例示的なマルチチャネル針ガイド300が示されている。マルチチャネル針ガイド300は、第1のチャネル302と、少なくとも1つの補助チャネル304と、複数のアタッチメントクリップ306とを有する、細長い本体を含む。幾つかの実施形態において、マルチチャネル針ガイド300は、ロック部材308(係止部材)を更に含む。
【0051】
第1のチャネル302は、第1のチャネル中心線310を含む。第1のチャネル302は、本発明の範囲内での使用に適した医療器具を受け入れるような大きさにされた管腔を有する。例えば、幾つかの実施形態において、第1のチャネル302は、生検針、カテーテル、レーザファイバ、又はトロカールに適合するような大きさにされた管腔を有する。第1のチャネル302は、任意の適切な長さを有することができる。幾つかの実施形態において、第1のチャネル302は、5~15cmの間の長さのような、典型的な超音波プローブの長さ以下の長さを有する。
【0052】
補助チャネル304は、補助チャネル中心線312を含む。補助チャネル304は、本発明の範囲内での使用に適した医療器具を受け入れるような大きさにされた管腔を有する。例えば、幾つかの実施形態において、補助チャネル304は、光センサ、熱センサ、又はマルチモードセンサに適合するような大きさとされた管腔を有する。補助チャネル304は、任意の適切な長さを有することができる。幾つかの実施形態において、補助チャネル304は、5~15cmの間の長さを有する。幾つかの実施形態において、補助チャネル304は、第1のチャネル302と同じ長さを有するのに対し、他の実施形態において、補助チャネル304は、第1のチャネル302と異なる長さを有する。
【0053】
幾つかの実施形態において、マルチチャネル針ガイド300は、少なくとも1つの追加的なチャネルを更に含む。ここで
図9を参照すると、前立腺の治療に関する一連の処置は、2つのチャネルを有するマルチチャネル針ガイド及び3つのチャネルを有するマルチチャネル針ガイドの使用を例示している。
【0054】
図5に示すように、マルチチャネル針ガイド300は、超音波プローブ260のような任意の適切な超音波プローブに取り付けられてよい。複数のアタッチメントクリップ306が、第1のチャネル302及び補助チャネル304から延びて、マルチチャネル針ガイド300を超音波プローブ260に固定してよい。アタッチメントクリップ306は、タブ、フック、スロット、及び同等物のような、マルチチャネル針ガイド300と超音波プローブ260との間の適合を強化する構成を含んでよい。特定の実施形態において、ロック部材308は、取付けの安全性を高めるために設けられる。ロック部材308は、ネジ、クランプ、ボルト、ピン、及び同等物のような、取付けを固定するために係合することができ且つ取外しのために係合解除することができる、任意の適切なロック機構であることができる。
【0055】
マルチチャネル針ガイド300は、マルチチャネル針ガイド300と共に使用される器具によって検出されるデータの処理を容易にするよう特定の範囲の寸法を含む。ここで
図5を参照すると、特定の寸法は、第1のチャネル302と補助チャネル304との間の距離に関する。横方向距離318は、第1のチャネル中心線310と補助チャネル中心線312との間の水平距離である。幾つかの実施形態において、横方向距離38は、1~20mmの間であることができる。垂直距離320は、第1のチャネル中心線310と補助チャネル中心線312との間の高さの差である。幾つかの実施形態において、垂直距離320は、1~2mmの間であることができる。
【0056】
図5に示すように、他の寸法は、第1のチャネル302と、補助チャネル304と、超音波プローブ260との間の距離に関する。超音波プローブ260の基準点は、トランスデューサ中心線314である。垂直距離322は、第1のチャネル中心線310とトランスデューサ中心線314との間の高さの差である。幾つかの実施形態において、垂直距離322は、10~15mmの間であることができる。垂直距離324は、補助チャネル中心線312とトランスデューサ中心線314との間の高さの差である。幾つかの実施形態において、垂直距離324は、10~14mmの間であることができる。
【0057】
ここで
図6を参照すると、第1のチャネル302と、補助チャネル304と、超音波プローブ260との間の距離を記述する代替的な方法が提供されている。前方の観点から、トランスデューサ中心線314は、円の中心を表し、第1のチャネル中心線310及び補助チャネル中心線312は、円の周に沿って配置され、それぞれ、トランスデューサ中心線314から同じ距離を有する。その場合には、第1のチャネル中心線310と補助チャネル中心線312との間の距離を円弧326として記述することができる。幾つかの実施形態において、円弧326は、1~20mmの間の長さを有することができる。
【0058】
マルチチャネル針ガイド300は、プラスチック、金属、又は複合材料のような、任意の適切な材料を含んでよい。好ましくは、マルチチャネル針ガイド300は、非アレルギ性材料を含む。幾つかの実施形態において、マルチチャネル針ガイド300は、上述の寸法の正確な測定値を列挙する少なくとも1つのラベルを含む。幾つかの実施形態において、正確な測定値は、マルチチャネル針ガイド300上に直接的に印刷される。幾つかの実施形態において、正確な測定値は、バーコード、RFIDチップ、又は情報転送のために走査(スキャン)に敏感に反応する他の媒体に格納される。
【0059】
(軟組織の病巣レーザ療法の方法)
他の態様において、本発明は、本明細書で提供されるシステム及びデバイスを使用する軟組織のボア外(out-of-bore)病巣レーザ療法の方法を提供する。本方法は、MRI体温測定に依存せずに、外来設定で行うことができる点において、従来技術に対する改良である。本方法は、治療経過のリアルタイムモニタリングのために超音波、光センサ、及び温度センサを使用し、治療の時間及びコストを削減する。
【0060】
ここで
図10を参照すると、軟組織の病巣レーザ療法の例示的な方法400が示されている。方法400は、ステップ402で開始し、ステップ402では、治療されるべき患者の関心領域のリアルタイム3D超音波モデルを取り込む。ステップ404では、少なくとも1つの癌限界3Dモデルをリアルタイム3D超音波モデルの上にオーバーレイする。少なくとも1つの癌限界3Dモデルは、本明細書中で以前に記載した癌限界決定の方法から生成される3Dモデル、即ち、MRI可視病変3Dモデル、MTV3Dモデル、最適化された限界3Dモデル、及び生検コア情報を含む。ステップ406では、少なくとも1つの予想損傷モデルを生成し、少なくとも1つの予想損傷モデルを少なくとも1つの癌限界3Dモデルと少なくとも部分的にオーバーラップさせる。ステップ408では、患者の関心領域内の少なくとも1つのファイバ場所を計算し、少なくとも1つの予想損傷モデルに適合する少なくとも1つのアブレーション設定を計算し、少なくとも1つのアブレーション設定は、レーザ電力出力、レーザ曝露持続時間、レーザ曝露速度、及び冷却剤流速を含む。ステップ410では、患者の関心領域内の少なくとも1つのセンサ場所を計算する。ステップ412では、レーザファイバを少なくとも1つのレーザファイバ場所に挿入し、少なくとも1つのセンサを少なくとも1つのセンサ場所に挿入する。ステップ414では、少なくとも1つのアブレーション設定を実行する。ステップ416では、組織損傷の程度をモデル化することによって治療過程(治療進行)をモニタリングする。
【0061】
治療されるべき患者の関心領域のリアルタイム3D超音波モデルは、超音波プローブ260及び3D走査及び場所追跡アセンブリ270に取り付けられた(マルチチャネル針ガイド300のような)針ガイドを使用して取り込まれる。幾つかの実施形態では、超音波プローブ260を回転させて複数の角度で走査して3D超音波モデルを生成する。リアルタイム3D超音波モデルをコンピュータプラットフォーム280に伝送して表示する。
【0062】
コンピュータプラットフォーム280は、リアルタイム3D超音波モデルを少なくとも1つの癌限界3Dモデル(MRI可視病変3Dモデル、MTV3Dモデル、最適化された限界3Dモデル、及び生検コア情報)と組み合わせる。コンピュータプラットフォーム280は、弾性位置合わせ(elastic registration)を含むマルチモード画像融合(multi-modal image fusion)を使用して、患者のリアルタイム3D超音波モデルの上に癌限界3Dモデルをオーバーレイし、レーザファイバ位置決め、センサ位置決め、レーザ電力出力、及びレーザアクティブ化時間を含む、治療計画を作成する。
【0063】
1つの実施形態において、コンピュータプラットフォーム280は、アブレーション設定から外れた治療計画に基づいてよく、その場合、高い冷却剤流速で3分に亘って13.75Wを放射するレーザファイバは、楕円体の形状を有し且つ約4ccの容積を有する周囲組織に凝固壊死を引き起こす。周囲組織における脈管構造及び熱伝導率の変動は、3つのネスト化楕円体を含む予想損傷をもたらし、その場合、レーザファイバが楕円体の中心にある状態の、所与のセットのアブレーション設定で、最小の楕円体は、最小の予想損傷(minED)を表し、中程度の楕円体は、平均的な予想損傷(aveED)を表し、最大の楕円体は、最大の予想損傷(maxED)を表す。
【0064】
コンピュータプラットフォーム280は、操作者がMRI可視病変3Dモデル、MTV3Dモデル、最適化された限界3Dモデルの上に予想損傷モデルをオーバーレイすることを可能にする。操作者は、予想損傷モデルが前述の3Dモデルによって表示されるような癌が宿る組織をカプセル化するよう、例えば、空間的な場所、向き、及びスケールを変更することによって、予想損傷モデルを自由に操作してよい。幾つかの実施形態において、操作者は、複数の予想損傷モデルをオーバーレイして、全ての癌を宿す組織をより良く取り込んでよい。例えば、癌組織の形状が長方形であるか、或いは1つよりも多くの場所に存在するならば、操作者は、1つよりも多くの予想損傷モデルをオーバーレイしてよい。少なくとも、予想損傷モデルのminEDは、MTV3Dモデルの容積を完全にカプセル化しなければならず、さもなければ、癌性組織を未治療のままにする可能性がある。
【0065】
幾つかの実施形態において、コンピュータプラットフォーム280は、敏感な解剖学的構成との予期される損傷モデルの重なり合いを検出する監視及び警告システムを含む。例えば、操作者が直腸壁のような敏感な構造への許容し得ない損傷を引き起こす予想損傷モデルを配置したことをコンピュータプラットフォーム280が検出するならば、警報が鳴ってよい。幾つかの実施形態において、コンピュータプラットフォーム280は、解剖学的構成を説明する治療計画を自動的に修正する変形アルゴリズムを含む。
【0066】
コンピュータプラットフォーム280は、予想される損傷モデル容積を最適化された限界3Dモデルと比較することによって、並びに近接近する敏感な解剖学的構造を損傷する可能性を報告することによって、操作者によって配置される予想損傷モデルを使用して全ての癌を破壊する可能性を評価する。コンピュータプラットフォーム280によって提供される評価に基づいて、操作者は、許容し得る治療計画に達するまで、予想損傷モデル配置を補正してよい。
【0067】
治療計画を許容し得ることの確認後、コンピュータプラットフォーム280は、理想的なレーザファイバの位置及び温度、予想損傷モデルに適合する光学的又はマルチモードセンサ位置、並びに敏感な解剖学的構造への損傷を最小に抑える適切な挿入角を計算する。幾つかの実施形態において、操作者は、マルチ針チャネルガイドの寸法をコンピュータプラットフォーム280にアップロードして計算を容易にする。操作者は、任意的に、温度モニタリングが追加的な場所で望まれるときに有利でる追加的なセンサを含むよう、コンピュータプラットフォーム280に指示してよい。
【0068】
コンピュータプラットフォーム280は、予想損傷モデルに適合する理想的なアブレーション設定(レーザ電力出力、レーザ曝露持続時間、レーザ曝露速度、及び冷却剤流量)も計算する。操作者は、アブレーション設定に従って、予想される温度の範囲を提供される。操作者は、予想される温度を承認することができ、或いはアブレーション設定を拒否して手動で調整することができる。最大許容温度は、加熱の中心で組織蒸発のリスクに曝される前に、プローブ場所での温度の上限を示す。好ましくは、最高温度は、95℃未満である。最低温度は、予想損傷モデルに適合するのに必要な凝固壊死のレベルを達するために必要とされるプローブ場所での最低温度である。操作者が追加的な熱センサを含めたならば、最大温度は追加的な熱センサごとに最高温度を設定されてよい。最大温度に到達後、コンピュータプラットフォーム280は、更なる損傷を防止するためにレーザ出力を低減又は遮断してよい。
【0069】
コンピュータプラットフォーム280は、レーザファイバ及びセンサの適切な挿入角度及び計算された位置を3D走査及び場所追跡アセンブリ270に伝送する。3D走査及び場所追跡アセンブリ270を使用して、マルチチャネル針ガイド300及び超音波プローブ260を所定の位置に移動させる。幾つかの実施形態では、エコー源性トロカールがマルチチャネル針ガイド300の第1のチャネル302を通じて患者に挿入され、二重管腔カテーテルがエコー源性トロカールを通じて患者に挿入され、次に、レーザファイバが二重管腔カテーテルの管腔を通じて挿入される。光センサ220、熱センサ230、又はマルチモードセンサ240が、マルチチャネル針ガイド300の補助チャネル304を通じて患者に挿入される。リアルタイム3D超音波モデルがレーザファイバ及びセンサの位置を追跡して正しい配置を確認する。
【0070】
コンピュータプラットフォーム280は計算したアブレーション設定をレーザ210に伝送し、操作者は病巣レーザ療法を開始してよい。コンピュータプラットフォーム280によって計算されるアブレーション設定が推奨されるが、操作者はアブレーション設定を自由に修正することができる。幾つかの実施形態において、操作者は全治療線量(full treatment dose)を適用する前に試験燃焼(test burn)を開始してよく、レーザファイバを低出力でアクティブ化して治療計画パラメータを調べる(interrogate)。
【0071】
光センサ、熱センサ、又はマルチモードセンサによって提供される測定値に基づいて凝固壊死の程度をモデル化することによって、治療経過を監視する。幾つかの実施形態では、熱損傷モデルを使用して治療経過を監視することができる。予想損傷容積付近に配置される少なくとも1つの熱センサは、温度をリアルタイムで記録し、コンピュータプラットフォーム280は、温度及び位置情報を使用して予想損傷容積を通じて温度を補外し(extrapolate)、凝固壊死の程度を推定する。
【0072】
幾つかの実施形態では、温度特性の治療誘発変化(treatment induced alteration)を使用して治療経過を監視することができる。温度特性の治療誘発変化の背後にある理論は、癌性組織を破壊することが、その脈管構造網(vascular network)も破壊するはずであるということである。従って、温度特性の治療誘発変化は、凝固壊死をモデル化する手段として組織灌流の変化を調査する。脈管構造網が治療によって成功裡に破壊されるならば、組織冷却速度は有意に低下することが予想される。灌流の変化は、低出力で試験燃焼を行い、少なくとも1つの熱センサを使用して組織冷却速度を測定し、次に、全治療燃焼(full treatment burn)を行い、完全治療燃焼直後の組織冷却速度を測定することによって、観察されてよい。
【0073】
幾つかの実施形態では、超音波画像の変化を測定することによって治療経過を監視することができる。様々な超音波撮像技法を使用して、組織損傷を推定してよく、それは組織温度、機械的特性、及び血管分布(vascularity)の変化を測定することを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、微小泡(microbubbles)のような造影剤を使用して灌流速度の変化を検出し、レーザ適用中又は適用後の画像領域における凝固壊死のレベルを推定することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、組織の光学特性における熱誘発変化を定量化することによって治療経過を監視することができる。光学特性の熱誘発変化の背景にある理論は、組織特性における熱誘発変化が組織の光学特性と上手く相関することである。光学モニタリングシステムは、リアルタイム容積測定情報を提供することもできる。組織内の光の伝搬は、吸収係数(μa)及び減少した散乱係数(μS’)によって支配される。これらのいずれかの増加は、光の減衰の増加を引き起こす。研究は熱誘発組織損傷が総減衰の最大3倍の増加を引き起こし得ることを示した(Jaywant S et al., Laser-Tissue Interaction 1882,(1993):218-229; Nau WH et al., Lasers Surg. Med. 24,(1993):38-47)。従って、間質性レーザファイバから離れて配置される光学プローブによって測定される放射輝度は、組織凝固に応じて減少する(Whelan WM et al., Int. J. Thermophys. 26,(2005):233-241)。一般的に使用される熱モニタリングシステムとは対照的に、光学的アプローチは、凝固を推定するために線量モデルに依存しない。組織光学特性の変化は、少なくとも1つの光センサを使用して観察されることがある。
【0075】
幾つかの実施形態では、上述のモデルのうちの1つ又はそれよりも多くを使用して治療経過を監視することができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの光感知要素と少なくとも1つの熱感知要素とを含むマルチモードセンサを使用して、上述のモデルのうちの1つ又はそれよりも多くを使用して治療経過を監視してよい。
【0076】
レーザファイバ場所での治療後、コンピュータプラットフォーム280は、蓄積されたレーザエネルギ、時間、場所、及び治療計画に基づいて、治療の成功の確率を提供する。組織の熱変化が最初の予想損傷モデルを変更するならば、コンピュータプラットフォーム280は、治療計画を動的に更新して新しい予想損傷モデルに適合させてよい。操作者は、予想される損傷量の全範囲が完了するまで、レーザファイバ及びセンサを位置付け且つ挿入し、治療を管理し、且つ予想損傷モデルを更新する関連ステップを繰り返してよい。
【0077】
(実験例)
以下の実験例を参照して本発明を更に詳細に記載する。これらの実施例は、例示の目的のために提供されているに過ぎず、特段の断りのない限り、限定的であることを意図されていない。よって、本発明は、以下の例に限定されるものと決して解釈されてならず、むしろ本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0078】
更なる記述がなくても、当業者は、先行する記述及び以下の例示的な例を使用して本発明を利用し、請求項に記載する方法を実施することがあると考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘しており、本開示の残余を如何様にも限定するものと解釈されてならない。
【0079】
(例1:前立腺癌の病巣レーザアブレーション:ガイダンスのためのMR/US融合の実現可能性)
病巣レーザアブレーション(FLA)又はレーザ間質性熱療法(LITT)は、手術又は電離放射線を用いずに前立腺癌を治療する方法である(Bomers JGR et al., World Journal of Urology (2016):1-9)。FLAの目的は、隙間に配置された(interstitially placed)拡散レーザファイバの使用によって癌性前立腺組織の凝固壊死を誘発することである(Lee T et al., Reviews in urology 16.2(2014); Stafford RJ et al., The Journal of urology 184.4(2010):1514-1520)。FLAは、1993年に前立腺治療について最初に記載されており(Johnson DE et al., Lasers in surgery and medicine 14.4(1994):299-305)、数多くの最近の研究の対象である(Oto A et al., Radiology 267.3(2013):932-940; Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75)。
【0080】
Lepor H et al., European urology 68.6(2015):924-926; Eggener SE et al., The Journal of urology 196.6(2016):1670-1675; Lindner U et al., Journal of Endourology 24.5(2010):791-797。処置は安全で実現可能であると思われ、コア技術はFDA承認されているので、それは商業的に提供されている(Lepor H et al., European urology 68.6(2015):924-926)。
【0081】
現在実施されているように、FLAは、MRIスキャナ(ボア内(in-bore))のガントリ内で達成され、操作者は放射線科医である(Oto A et al., Radiology 267.3(2013):932-940; Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75; Lepor H et al., European urology 68.6(2015):924-926)。ボア内FLAは、MRIガイダンスによる癌性領域の直接的な標的化を可能にし、MR温度測定を介した前立腺の温度変化のモニタリングも可能にする(Nour SG, Seminars in interventional radiology. Vol. 33. No. 03. Thieme Medical Publishers, 2016)。予備的な研究において、これらの構成は確認されたが、処置は長ったらしく、高価であり、資源集約的であることが判明した(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75)。
【0082】
以下の研究では、MRIスキャナ内の代わりに臨床設定(ボア外)で処置を行うことによって、FLAを簡素化することの安全性及び実現可能性を評価した。生検標的化のためのMRI/US融合での広範な社内経験(Sonn GA et al., The Journal of urology 189.1(2013):86-92)が、標的化治療のために類似のアプローチを使用するための刺激(impetus)をもたらした。ボア内FLA中の前立腺内温度(intra-prostatic temperature)モニタリングのための熱プローブの以前の使用は、ボア外(out-of-bore)FLAのモニタリングが可能であることを示した(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(20169:68-75)。従って、FLAは、MRI/US融合及び間質性熱プローブモニタリングを使用して泌尿器科クリニックで行われた。簡潔性の目的と調和を保って、局所麻酔及び最小限の鎮静作用のみを用いた。
【0083】
次に、材料及び方法を記載する。
【0084】
(患者)
中程度のリスクの前立腺癌を有する男性が本研究の対象であった。各々の場合において、癌はMRI/US生検によってMRIで見える関心領域(ROI)内にのみ存在することを確認した。従前にMRI及び生検処置を記載した(Sonn GA et al., The Journal of urology 189.1(2013):86-92)。包含及び除外基準を
図12に示す。主要な終点(endpoint)は、6ヶ月のフォローアップ期間中に如何なる治療関連グレード3以上の有害事象(CTCAE,v4.03)が存在しなかったことである。診査の終点は、尿及び性機能の低下、PSAの低下、及び組織構造(histology)又はMR撮像の変化の欠如であった。融合生検にのために利用されるものと類似する部屋設定を使用してFLAを行った(
図15)。患者の特性を
図13に示す。
【0085】
(処置計画)
各患者はこの研究に登録するに先立ちアルテミス(Artemis)デバイスを介した標的化生検を受けた。それは各ROI及び生検コアの場所を3Dで保存することを可能にする。各患者の撮像及び生検情報を使用して各治療を計画した。この初期段階の研究では、治療限界を意図的に保守的に維持した。
【0086】
(処置プロトコル)
全ての男性に口腔キノロン及びセフトリアキソン又はエルタペネムの注射を用いた洗浄浣腸及び抗生物質予防法を与えた。処置の直前に、全ての患者はケトロラク(30mg)及びミダゾラム(4mg)(最小限の鎮静作用)の単回静脈内投与を受けた。ブピバカインとリドカインの50~50%混合物を使用して、経直腸式US及び前立腺周囲神経遮断のために、患者を左側臥位置に配置した。前立腺周囲麻酔後、熱プローブの会陰挿入のために、患者を切石術位置に変えた。皮膚内リドカイン(1%)を使用して、2~3のMR適合性蛍光学熱プローブ(STB, LumaSense, Santa Clara, California)をリアルタイム超音波ガイダンスを使用して前立腺内に会陰式に配置した。他の場所(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75)に記載したように、前立腺内温度モニタリングのために、少なくとも1つのプローブを直腸壁付近の後部前立腺内に前進させた。バイタルサインを継続的に監視し、各レーザアクティブ化前、中及び後に疼痛スコア(Hawker GA et al., Arthritis care & research 63.S11(2011):S240-S252)を数値的に評価した。
【0087】
熱プローブの配置後、超音波プローブの再挿入及び
図16に示すアルテミス融合デバイス(Eigen, Grass Valley, California, USA)の固定追跡アームへのプローブの取付けのために、患者を側臥位置に戻した。計画前レーザファイバ位置及び手術前MRIをデバイスに装填し、リアルタイム超音波と融合させた。
【0088】
レーザファイバの挿入のために、レーザファイバ用のチャネルと熱プローブ用の平行チャネルとを含む針ガイドを製造した。この針ガイドは、治療有効性のための直接的な前立腺内温度モニタリングのために、レーザファイバと平行な温度プローブの配置を可能にした。各プローブの温度、超音波情報、及び冷却ポンプの流量を使用して、処置を監視した。
図17は、FLA中の前立腺内のレーザファイバ及びプローブの空間的関係の例を表示している。
【0089】
15W980nmレーザ(Biotex)及び手術用注入ポンプ(K-pump, KMI)を含む、既存のMRI誘導FLAシステム(Visualase, Medtronic)のコンポーネントを、この新しい処置のために適合させた。リアルタイム超音波を使用して生検針先端をROIに誘導した。針を二重管腔カテーテルと交換した。二重管腔カテーテルは、レーザーファイバ(Uro-kit 600, Medtronic)を含み、能動冷却のために生理食塩水を循環させる。アルテミス融合デバイスの固定アームは、処置中にレーザファイバを固定ための、並びに必要なときにレーザファイバを再配置するための、安定的なプラットフォームを提供した。
【0090】
各治療において1~3分間の13.75Wの数回のレーザアクティブ化を使用した。先験的計画とリアルタイム超音波画像との間の差、即ち、誤った位置合わせが観察されたならば、前立腺を再スキャンし、セグメンテーション及び位置合わせ手順を繰り返した。熱プローブは、処置を通じて前立腺内温度の継続的なモニタリングを提供した。直腸壁温度が42℃を超えるならば、レーザ適用を手動で停止した。
【0091】
各処置の終了前に、3つの基準マーカを前立腺に移植して、追跡撮像(follow-up imaging)のための基準を提供した。1時間の観察期間後、患者は反復mpMRIを受けた。ダイナミックコントラスト強調(DCE)MRIを使用して、切除ゾーンの非灌流を確認した。全ての患者は、FLA後の1~2時間内にキノロン抗生物質及び経口非麻薬性鎮痛薬を受けて退院した。
【0092】
(追跡評価)
追跡調査を1週間、1ヶ月、3ヶ月及び6ヶ月で行った。各訪問は、詳細な履歴及び身体検査、有害事象のスクリーニング、薬剤調和、PSA、及び健康関連の生活の質(quality of life)(例えば、IPSS,IIEF)質問表を含んだ。3TmpMRIを6ヶ月で実施し、UCLAで開発されたPI-RADSスコアリング及び基準を用いて解釈した(11,13)。6ヶ月生検で、MRI/US融合(アルテミス)を使用して、元の腫瘍部位、切除ゾーン(ablation zone)、切除ゾーンの限界、任意の新しいROI、及び同側前立腺を通じた6つのテンプレート部位(template sites)をサンプリングした。各前立腺の治療側から12個の生検コア(範囲9~16)の平均を得た。
【0093】
次に結果を記載する。
【0094】
11人の男性を登録し、10人においてFLAを成功裡に行った。各患者の要約が
図13に与えられている。1人の患者において、初期レーザアクティブ化の前にFLAを中止した。この個体では、大きなTURP欠損と小さな前立腺(15cc)との組み合わせが、前立腺内でのファイバの安全な固着を妨げ、治療を試みなかった。治療された10人の患者のうち、平均処置時間は(71~105に及ぶ)95分であった。最初の数人の患者の後に、レーザファイバのUS位置測定(localization)を向上させるために、エコー源性誘導針を含むよう処置を修正した。各処置中に平均144秒に亘って13.75Wの出力で5回の中央値でレーザファイバをアクティブ化させた。ROIの完全な治療を確実にするために、レーザファイバを各患者について平均して2回再配置した。
【0095】
(有害な事象)
6ヵ月の期間中に32個のグレード1及び6個のグレード2の有害な事象を記録した。1人の患者は、試験登録前に計画されていた既存の腰部狭窄の選択的外科的矯正のためのFLA後、2ヶ月間入院した。血尿は、治療後の最も有害な事象であり、全ての患者において介入せずに解決した。全ての患者は、治療及び追跡MRI後に、外来臨床処置室から退院した。治療に関連した重篤な有害な事象(>グレード3,CTCAE)に直面しなかった。
【0096】
(FLAの臨床効果)
FLA後の1週間、1ヶ月、3ヶ月、及び6ヶ月で、HRQOL質問票を実行した。基線(ベースライン)での中央値IPSSは7であり、5.5まで減少した。基線での中央値IIEF-5スコアは14であり、19まで増加した。変化は有意でなかった。基線での中央値PSAは、基線で7.35ng/mlであり、6ヶ月で2.55ng/mlまで減少した(Wilcoxon符号付き順位検定、p=0.28)。
【0097】
(温度データ)
全ての患者において蛍光光学熱プローブからのデータを成功裡に記録した。経直腸モニタに加えて、平均2つの経会陰プローブを前立腺に挿入した。レーザファイバの先端付近で記録した最大温度は68℃であった。直腸モニタが42℃に近づくならば、レーザアクティブ化は停止し、ファイバは前立腺内に再配置される。全ての場合において、直腸に最も近い熱プローブは42℃未満の温度を記録した。
【0098】
(MRI変化)
処置の直後に、MRIは、各患者において、治療領域、即ち、アブレーションゾーンの密閉された局所化された低灌流(confined, localized hypo-perfusion)を明らかにした(
図19)。MRIによって決定されるようなアブレーションゾーンの容積の中央値は4.8ccであった。T2又は拡散重み付け撮像における主要な治療関連変化は見られなかった。前立腺容積の中央値は、治療前~治療後6ヶ月で有意に変化しなかった(33対32cc,p=0.44,Wilcoxon符号付き順位検定)。
【0099】
(6ヶ月生検結果)
追跡生検の結果は、FLAの操作者経験及びエコー源性針の追加に関連した。最初の4人の患者において、生検は、治療ゾーン及び限界の両方に臨床的に有意な疾病が継続的に存在することを明らかにした。次の6人の患者において、生検は、3人(治療ゾーン内に1人、限界内に2人)における微小焦点グリーソン3+3疾病(micro-focal Gleason 3+3 disease)と、他の3人の男性における癌の完全な不存在とを明らかにした(
図14)。治療ゾーンからの生検材料は、しばしば、熱効果と一致する間質性線維症、巨細胞反応、ヘモジデリン含有マクロファージ、及び慢性炎症を伴う、良性の前立腺及び間質を明らかにした。
図20A~
図20Fは、1人の患者におけるそのような所見を描写している。
【0100】
病巣療法は、他の様式で頻繁に見られる治療関連の有害な事象を伴わずに局所化された癌制御を約束する、全器官CaP治療に対する新興の代替物である。前立腺MRIにおける改良は、病巣療法がCaP治療におけるより実行可能な選択肢になることを可能にした(Cepek J et al., Medical physics 41.1(2014))。最近の証拠は、病巣療法がCaP治療に対する安全なアプローチであることを示唆している(Oto A et al., Radiology 267.3(2013):932-940; Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016):68-75; Lepor H et al., European urology 68.6(2015):924-926)。最近の系統的レビューでは、Valerio et. Alが、病巣療法後の好ましい率の自制(95~100%)及び勃起機能(54~100%)を報告した(Valerio M et al., European urology 66.4(2014):732-751)。しかしながら、癌制御及びHRQOL結果に関する長期の臨床データの不足がある。FDA、米国泌尿器学会、及び泌尿器腫瘍学会が主催する最近のワークショップは、「現在利用可能な技術は、合理的な精度で前立腺の選択的な切除を行うことができるが、PGAに適した患者の選択について基準は依然として議論の余地がある」と述べている(Jarow JP et al., Urology 88(2016):8-13)。
【0101】
本研究では、ボア外FLAが外来クリニックにおける中リスクCaPの治療について技術的に実現可能であり且つ安全であることが見出されている。本研究は、FLAが泌尿器科クリニックの診療室内で直接的なMRI誘導なしに行われた点で、他の研究と異なる。MRI/US融合を用いて誘導及び標的化を達成し、熱プローブを使用して温度モニタリングを達成した。Lindner et. al.は、低リスクCaPを患う患者においてMRI/US融合誘導を使用してFLAを以前に行った(Lindner U et al., The Journal of urology 182.4(2009):1371-1377)。しかしながら、Lindner処置は、会陰式に行われ、全身麻酔を必要とした(Lindner U et al., The Journal of urology 182.4(2009):1371-1377))。現在の研究では、全ての患者を局所麻酔下で最小限の鎮静のみで治療し、治療後1~2時間で退院させた。グレード3以上の有害な事象は観察されなかった。尿及び性機能はそのまま残った。
【0102】
フェーズ2試験において、シカゴ大学のEggener et alは、ボア内FLAが励みになる腫瘍学的結果をもたらすことを発見した(Eggener SE et al., The Journal of urology 196.6(2016):1670-1675)。その研究では、治療後3カ月のアブレーションゾーンの標的化生検が1/27の男性のみに持続性の癌を明らかにした(Eggener SE et al., The Journal of urology 196.6(2016):1670-1675)。12ヵ月で、系統的生検が10人の男性(37%)において癌を明らかにした。シカゴ大学の結果は現在の結果よりも優れているように見えるが、研究は比較可能でない。本研究では、ほぼ前例のないボア外アプローチの故に、安全性及び実現可能性が主要な関心の結果であった。腫瘍学的結果に関して、シカゴ大学の試験では殆どが低リスクであるのに対し、本試験の腫瘍は中リスクであった。また、生検は、早期の労力におけるよりも、本試験ではより広範囲であった。上記の相違にも拘わらず、アブレーション容積は両研究で類似であり、我々の独自のボア内結果と比較可能である(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016)68-75)。重要なことには、報告された安全性の結果は、いずれのアプローチにおいても重大な有害事象を伴わずに、ボア内対ボア外で同じである。よって、局所麻酔下の泌尿器科クリニックにおける病巣レーザアブレーション(ボア外)の実施は、実現可能であり且つ安全であるように思われる。その上、ボア外処置は、比較的安価で迅速で効率的であることを約束する。
【0103】
本研究では、被験者は、温度モニタリングのためにMR温度測定及び蛍光光学熱プローブの両方を使用した従前の試験後にモデル化された中リスクCaPを患う男性であった(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016)68-75)。処置の安全性を示す熱プローブデータは、治療モニタリングのために熱プローブのみを使用することについての正当性であった。直接的な比較では、FLA中の前立腺内温度の決定のために、熱プローブ記録をMRI温度測定と比較した(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016)68-75)。この研究の結果は、安全性、HRQOL、及び撮像に対する治療関連変化を含む、従前の研究と類似した。しかしながら、平均処置時間は、以前のボア内試験と比較して292分から95分に減少した(Natarajan S et al., The Journal of urology 196.1(2016)68-75)。
【0104】
(例2:組織損傷の光学ベース推定)
放射輝度センサは、組織光学特性における凝固誘発変化に対する感受性が流束量センサよりも高いことを示している(Chin LCL et al., Optics Letters 29,(2004):959-961)。さらに、Chin et al.は、凝固ゾーンが発達するにつれて、(光源に面する)0度の放射輝度が信号において着実に減少することを実証した。対照的に、凝固境界がプローブをひとたび通過すると、(光源から見て外方を向く)180度での放射輝度が信号において増加する。熱誘起凝固は、散乱の増加を引き起こし、凝固フロントがプローブをひとたび通過すると、放射輝度センサに向かって散乱させられる後方散乱光子の増加をもたらす(Chin LCL et al., Optics Letters 29,(2004):959-961)。以下の研究では、熱センサと反対方向に面する2つの放射輝度センサとからなる統合マルチモードセンサが開発されている。そのようなプローブは、ファイバ先端の周りのチャー発達(char development)及び凝固境界の両方を検出することができる。最適なアブレーションゾーンを達成するために、レイジングパラメータを変調させてよい。この技法を使用して、高強度集束超音波及び高周波を含む任意のアブレーションモダリティを監視することができる。それはLETTに特に適している。何故ならば、その進行を監視するために、レーザ誘導凝固を使用することもできるからである。レーザーがひとたび非アクティブ化されると、凝固を監視する能力は失われるが、データは、急速冷却の故に、この段階では最小の損傷しか生じないことを示している(
図21)。
【0105】
研究は、
図22に示す構成を使用してウシ筋肉において研究を行った。カテーテルを介して光学プローブを組織に挿入する光学モニタリングシステムを開発した。それは意図される標的の周辺に戦略的に配置される。フォトダイオードを使用して間質光強度(interstitial light intensity)を光起電力に変換した。この光起電力は流束量又は放射輝度に比例する。
図22の構成において、プローブは8mmの径方向距離で示されており、レーザ拡散器よりもさらに前進させられている。この構成が選択されたのは、生体外実験作業及び臨床試験データの両方が、レーザ拡散器が順方向に光を放出する傾向を有することを示したからである。カテーテルを使用して、蛍光光学温度プローブ(Lumasense, Santa Clarita, CA)を正反対に配置して比較を行った。LITTを200sに亘って13.75Wで実施した。
【0106】
温度と正規化された光起電力を
図23に示す。レーザアクティブ化から数秒内に、温度は上昇し始めるが、正規化された光起電力は低下する。正規化された光起電力が低下するのは、組織が凝固して、散乱係数の減少の増大、よって、全減衰の増大を引き起こすからである。興味深いことに、約60秒後、正規化された光起電力は低下するのを停止する。これは凝固境界がセンサに近づいていることを示しているように思われる。これらの事象は熱センサによって検出されず、それは温度の着実な上昇を示し続けている。
【0107】
図24は、以前に概説したのと同じパラメータを使用する損傷推定を追加している。再び、正規化された光起電力は処置を通じて低下し、組織凝固の発生を示しているのに対し、損傷推定値はいずれも100秒まで有意な凝固を示していない。これは、熱システムとは異なり、光学モニタリングシステムが容積を通じて起こる光熱事象(opt-thermal events)の瞬間的な表現を提供することを明確に実証している。更に、正規化された光起電力の勾配を使用してレーザ出力を変調することができる。例えば、急な勾配は、所望の容積が切除される前にチャー(char)が発生することを示すことがある。このデータを使用してレーザ出力を減少させことができ、よって、組織が炭化する(char)前に伝導を介してより大きな熱伝達を可能にする。このようにして、アブレーションゾーンの大きさを最大にすることができる。チャーもレーザファイバに損傷を引き起こす。組織がひとたび炭化させられると、治療を続けるためにファイバは再配置される必要がある。再び、光学モニタリングシステムはこの情報を提供することができるが、純粋に熱的システムはこの情報を提供することができない。
【0108】
(例3:前立腺ファントムを使用した検証)
凝固境界の伝播をリアルタイムに観察するために、前立腺組織の980nmでの光学特性及び熱特性を模倣するファントム(phantom)を開発する。ファントムは、人間の前立腺について以前に見出された比熱容量(3.779J/(g*K))及び熱伝導特性(0.56W/mK)を含む(Giering K et al., Thermochim. Acta 251,(1995):199-205; Van den Berg CaT et al., Phys. Med. Biol. 51,(2006):809-825)。ファントムの2分の1は、Iizuka et al(Iizuka MN et al., Lasers Surg. Med. 25,(1999):159-169)によって概説される動的光学特性を保有する。以前に得た吸収係数及び減少した散乱係数(μ’s=8.1cm-1、μa=0.66cm-1)が使用される(Bu-Lin Z et al., Int. J. Hyperthermia 24,(2008):568-576)。これはLITT中に光散乱特性が生体内で観察されるように変化することを保証する。ファントムの残余の半分は、光透過性アクリルアミドからなる。Zhang et al(Bu-Lin Z et al., Int. J. Hyperthermia 24,(2008):568-576)によって実証されるように、高速カメラをこの側に配置して、凝固ゾーン発達を記録する。彼らの研究において、凝固領域はアブレーションアプリケータ(ablation applicator)の周りの白色ゾーンとして明確に境界付けられた。更なるアプローチは、LITT中に温度プロファイルを検査する有用な方法として実証されている熱変色インク(thermochromic ink)を追加することである(Mikhail AS et al., Med. Phys. 4304(2016); Negussie AH et al., Int. J. Hyperthermia 6736(2016):1-5)。レーザ拡散器及びマルチモードセンサをファントムの2つの半体の間のインターフェース(界面)に配置する。マルチモードセンサ内の熱プローブ及び光ファイバをフォトダイオード及び温度モニタリングシステムにそれぞれ接続する。このアプローチは、凝固の半径と放射輝度との相関を可能にして、増加した後方散乱の故に凝固フロントがセンサを通過するときに180度での放射輝度が増加することを実証する(Chin LCL et al., Optics Letters 29,(2004):959-961)。
【0109】
(例4:前立腺癌の病巣レーザアブレーション)
前立腺癌(CaP)及び標的化生検の局所化のためのマルチパラメトリックMRI(mpMRI)の出現は、病巣療法研究のための科学的基礎を提供している(Ahmed HU et al., The Journal of Urology, 2011,185(4):1246-1255; van den Bos W et al., Eur Radiol, 2015, 1-9; Lepor H et al., European Urology, 2015, Epub ahead of print; Oto A et al., Radiology, 2013,267(3):932-940)。理論的には、病巣療法は、治療に関連した病的状態(morbidity)が殆どない癌制御の可能性を提供するが(Ahmed HU et al., The Lancet Oncology, 2012, 13(6):622-632)、これまでにほんの僅かの臨床試験しか実施されていない。Ahmed et al.は、42人の男性におけるMRI特定病変を治療するために高強度集束超音波(HIFU)を使用した(Ahmed HU et al., The Lancet Oncology, 2012, 13(6):622-632)。Oto及び同僚は、8人の男性におけるMRI特定病変を治療するために病巣レーザアブレーション(FLA)を使用した(Oto A et al., Radiology, 2013,267(3):932-940)。Van den Bos et alは、MRI及び造影強化超音波の両方を用いて視覚化された病変を局所的に治療するために不可逆的電気穿孔法(IRE)の使用を最近報告した(van den Bos W et al., Eur Radiol, 2015, 1-9)。
【0110】
病巣レーザアブレーション(FLA)又はレーザ間質性熱療法は、ファイバ結合赤外レーザを介した前立腺の局所的な加熱に依存する(Lindner U et al., The Journal of Urology, 2009,182(4):1371-1377)。HIFUとは異なり、FLAは、空洞形成(cavitation)、炭化(carbonization)、又は蒸発(vaporization)を回避しながら、組織を除去する凝固壊死に依存する(McNichols RJ et al., International Journal of Hyperthermia, 2004,20(1):45-56)。HIFU又はIREとは異なり、FLAは、全身麻酔を伴わない治療の機会を提供する。
【0111】
以下の研究の目的は、安全性及び実行可能性のデータを収集し、FLAを簡素化する可能性を探ることであった。このフェーズ1試験の第1の終点は、如何なるグレード3の有害事象(CTCAE,v4.03)も存在しないことであった。探索的終点は、基線と比較した性機能及び泌尿器機能の変化並びに放射線学的及び組織学的な変化であった。今まで、FLAは、治療中の前立腺内温度モニタリングのためのMR温度測定(MRT)の潜在的な有用性及び直接的な画像誘導の故に、専ら(ボア内)MRI管内でのみ行われてきた(Oto A et al., Radiology, 2013,267(3):932-940)。以下の研究では、FLAの前に、MR適合性熱プローブを患者の前立腺内の様々な場所に配置した。研究設計は、FLA中のMRT及び直接的な熱記録の同時比較を可能にした(Oto A et al., Radiology, 2013,267(3):932-940)。
【0112】
次に材料及び方法を記載する。
【0113】
(患者)
この試験における患者は、臨床ステージが≦T2b CaPであり、グリーソンスコア(GS)≦3+4=7である、58~72歳の男性8人であった。8人全員を、標的化サンプリング及び系統的サンプリングの療法を含む、MR/US融合生検によって診断し(Sonn GA et al., The Journal of Urology, 2013,189(1):86-92)、それは単一のRM可視病変内にCaPを示し、前立腺内でGS>6を示さなかった。これらの男性は、他の場所に記載したコホート(同齢集団)で融合生検を受けた患者から入院基準毎に選択された(Sonn GA et al., The Journal of Urology, 2013,189(1):86-92)。PI-RADS及び社内で考案した5点評価システムの両方を使用して、全身用コイルを使用した3T MRIを取得し且つ解釈した(Sonn GA et al., The Journal of Urology, 2013,189(1):86-92)。診断の6ヶ月内にFLAを実施した。患者特性を
図25に示す。
【0114】
(処置計画)
FLAを使用して、生検で確認した癌を伴う関心領域(ROI)MR増強指標(MR-enhancing index regions of interest)を標的化した。MRIの3Dセグメント化によってROI特性を決定した。前立腺内の各患者のROI幾何学的形状及び場所に従ってMATLAB及びC++を使用して開発したカスタムソフトウェアを使用して、ファイバ場所及び所望の限界を事前に計画した。MRI組織病理学的相関を用いた以前の研究は、MRIが真実な腫瘍容積を1.5cmまで系統的に過小評価することを示している(Priester A et al., Int Symp Focal Therapy Imag 2014, Pasadena, CA, Aug 21-23, PP-24)。以前の生検情報、即ち、陽性コア及び陰性コアの3D場所を使用することによって、この限界を更に精緻化した。かなり大きなボア内経験の間に得られた予備データに基づいて、12~15Wでの3分のレーザアクティブ化がレーザ先端の周りに径方向に約1cm延在する凝固壊死のゾーンを創り出すと推定した。
【0115】
(治療プロトコル)
患者をMRI管内に配置する前に、全ての被験者は、洗浄食塩水浣腸及び抗生物質、即ち、FLAの前日に開始する5日間の経口シプロフロキサシン及びFLA時の筋肉内セフトリアキソンを受けた。経直腸超音波誘導の下で1%リドカイン及び0.5%ブピバカインの前立腺周辺ブロックを投与した。必要に応じて精神的なベルセド(versed)及びフェンタニル(意識的な鎮静)の静脈内投与によって局所麻酔を補完した。FLAに先立ち、超音波誘導下で経会陰式に配置された小線源療法アプリケータ(Flexi-needle, Best Medical, Springfield, VA)を通じて、2~3個のMR適合性蛍光光学温度プローブ(STB, LumaSense, Santa Clara, CA)を前立腺内に前進させた。MRTとは無関係に、前立腺内熱変化の評価のために温度プローブを配置した。各患者について、直腸壁付近の後部前立腺内に少なくとも1つのプローブを挿入した。
【0116】
次に、患者をMRスイートに輸送し、ガントリ内の腹臥位置に配置した。経腹部コイル(Avant, Siemens)を用いた1.5Tスキャナを使用した。経直腸前立腺針ガイド(DynaTRIM, InvivoCorp., Gainsville, FL)を使用して、レーザファイバを前立腺内に配置した。全ての処置について、15W,980nmレーザ、冷却ポンプ、及びMR温度測定分析ワークステーションからなる、ビジュアレーゼシステム(Visualase system)を使用した。システムは、ファイバを能動的に冷却するために生理食塩水を循環させる二重管腔カテーテル内に600μmのレーザファイバを組み込む。レーザエネルギの適用に先立ち、T2重み付けMRIを用いてレーザ位置の確認を行った。
【0117】
治療中、前立腺内温度を継続的に監視し、熱プローブによって6秒毎にリアルタイムにMRIによって記録した。治療中の前立腺内のレーザファイバ及びプローブの空間的関係の典型的な例を
図11に示す。MRI走査によってファイバ及びプローブの位置を定期的に再確認した。
【0118】
各レーザ治療に先立ち、6~8Wの試験線量を使用して、MRTの下でレーザファイバを局所化させた。執刀医はMRTフィードバックに従ってレーザ出力及び冷却流量を手動で調節した。再治療に先立って挿入ライン内でファイバを前進又は後退させることによって、完全な病変治療のために必要に応じてファイバ挿入毎に複数のレーザ適用を実施した。
【0119】
レーザソフトウェアとMRTを使用して、レーザ先端及び直腸壁の温度を監視して、温度が90℃及び42℃をそれぞれ超えないことを保証した。温度が監視閾値を超える場合、レーザ適用は自動的に停止させた。ビジュアレーゼソフトウェア(Visualase software)は、MRT画像の処理及び治療経過の表示を提供する(McNichols RJ et al., International Journal of Hyperthermia, 2004,20(1):45-56; Lee T et al., Reviews in Urology, 2014,16(2):55)。
【0120】
(追跡評価)
治療の直後に、mpMRIを取得して評価した。ダイナミックコントラスト強調MRIを使用して治療ゾーンを確認し、それを計画治療ゾーン及びMRTマップと比較した。患者を回復室内で監視し、排便後、全ての人は数時間内に退院した。排出薬物は、キノロン抗生物質及び経口非麻薬性鎮痛薬を含んだ。
【0121】
FLAの1週間、1ヶ月、3ヶ月、及び6ヶ月後のクリニック訪問で、デジタル直腸検査(DRE)、尿検査、排便後残留容積、国際前立腺症状スコア(IPSS)、男性の性的健康目録(SHIM)、前立腺特異抗原(PSA)を得た。治療の6ヵ月後に治療前と同様にMR/US融合を使用して、mpMRIを繰り返し、前立腺の標的化生検を行った(Artemis, Eigen, Grass Valley, CA)。処置側の系統的コアに加えて、治療した領域及び限界の標的化生検コアをサンプリングした。基線及び6ヶ月追跡で3T MRIを行い、UCLAによって開発されたスコアリング基準に加えてPI-RADSv2スコアリング(Barentsz JO et al., Eur Radiol, 2012,22:746)を用いて解釈した(Sonn GA et al., The Journal of Urology, 2013,189(1):86-92; Natarajan S et al., Urologic Oncology: Seminars and Original Investigations,2011,29(3):334)。
【0122】
次に結果を記載する。
【0123】
各処置中、11~14Wの出力で患者当たり平均7回の適用を含む平均3回レーザファイバを再導入した。目標は、MRTフィードバック安全機構が許す限り各適用を行うことであった。平均処置時間は、患者の準備、熱プローブの挿入、レーザ治療、及び治療後撮像を含めて、292分であった。MRIスキャナ内の実際の時間は平均223分(169~267分の範囲)であった。
【0124】
中央値の前立腺容積は、6ヶ月後に35.5ccから32.5cc(MRI)に減少した(p=0.03、Wilcoxon符号付き順位検定、
図26)。基線での中央値のPSAは、7.45nm/mlであり、1ヶ月後に3.3ng/mlに有意に低下し、6ヶ月間持続した変化であった(p<0.01、Wilcoxon符号付き順位検定)。8人の男性のうちの5人において、6ヶ月でPSAはスクリーニング時の値の半分未満に減少した。自由PSAのパーセントは、7.5%から14%に有意に増加した(p=0.047、Wilcoxon符号付き順位検定)。中央値のPSA密度は、0.22から0.08ng/mLに低下した(p=0.055、Wilcoxon符号付き順位検定)。8人全員のPSA結果を
図27に示す。
【0125】
(有害事象)
9ヶ月の期間に亘って23個のグレード1及び7個のグレード2の有害事象(CTCAE,v4.03)を記録し、それらの全ては自発的に解決した。最も一般的な症状は、血尿(12)、血精液症(4)、及び血便(1)であった。全てのグレード2事象は、8日の評価内に解決した。全ての患者は6時間内に退院し、治療後に鎮痛のための麻薬性鎮痛を必要とした者はいなかった。
【0126】
(健康に関連する生活の質の測定値)
スクリーニング時に、並びに1週間、1カ月、3カ月及び6カ月の時点に、全ての8人の男性に対してIPSS及びSHIMを収集した。中央値のIPSSは、スクリーニング時に4であり、6ヶ月で3.5に減少した。中央値のSHIMは、スクリーニング時に19.5であり、6ヶ月で20に増加した。健康に関連する生活の質のメトリック(health-related quality of life metric)のいずれにも統計的に有意な変化は6ヶ月後に観察されなかった(それぞれp=0.37,p=0.78)。尿失禁、勃起障害、又は射精の変化は、いずれの患者によっても報告されなかった。
【0127】
(温度データ)
全ての患者についてデータを成功裡に収集したが、これらのデータは患者の動きに非常に敏感であった(
図28)。8人の患者のうちの6人について蛍光光学熱プローブからのデータを記録し、最初の2つは技術的に不満足であった。これらの6人の患者では、治療ゾーンの外側の全ての前立腺内場所において平均温度は40℃より下であった(
図29A、
図29B)。
【0128】
(MRI変化)
各患者について、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)を診断前、介入直前、及びFLA直後に取得し、再び6ヶ月時に取得した。組織容積及び潅流の変化が注目され、
図26に要約されている。T2又はDWIに一貫した変化はなかった。DCEのみを使用して治療直後の効果を決定した(Oto A et al., Radiology, 2013,267(3):932-940)。各患者において、限定的な灌流の領域は、重要な構造から離れて、治療領域内にあり、3ccの中央値容積を有した(
図30)。処置中の腫脹及び治療後の有意な収縮(p=0.03、Wilcoxon符号付き順位検定)を含む、腺の形態学的変化は、治療領域の局所化を混乱させた。一般的に、FLA直後のDCEが示すような治療ゾーンは、6ヶ月時にはもはや明らかでなかった。
【0129】
(組織学的変化)
FLAの6ヶ月後にMR/US融合(Filson CP et al., CA: A Cancer Journal for Clinicians, 2015, 65:265)を使用して追跡標的化生検を行った。生検は、治療領域/元の癌の病巣、治療ゾーンの周りの限界、及び治療された側の系統的な生検を標的とした。各患者から平均15個のコア(範囲:13~17)を取得した。生検は、如何なる安全性の懸念の証拠も示さなかった(即ち、感染性、外傷性、又は新生物性の有害な変化は見られなかった)。最も一般的な治療関連の所見は、線維症の病巣領域であり、ヘモジデリンを含むマクロファージの存在がしばしば点在し、古い出血の再吸収を示す(
図31)。
【0130】
8人の男性のうちの5人では、治療された領域に癌は見出されなかった。患者3、7及び8では、治療された領域にCaPが見出された(7.5mm GS 3+4,2.5mm GS 3+4,1mm GS 6、全ての長さは、最大癌コア長をミリメートルで示されている)。治療ゾーンに隣接するが治療ゾーンの外側にある組織では、6人の患者が持続性腫瘍を有した(1.4mm GS 4+4、5.5mm GS 3+4、7.5mm GS 3+4、2.5mm GS 6、0.5mm GS 6、8mm GS 6)。11人の患者は、治療ゾーンから離れた系統的生検で腫瘍を有することが見出された(3mm GS 3+4)。患者6の生検ではCaPは見出されなかった。
【0131】
過去数十年間に亘って加速する最小侵襲治療に向かう傾向は、前立腺癌(CaP)ケアに実質的な影響を有する可能性が高い。国立癌研究所の推定によれば、病巣療法は、近い将来、全てのCaP治療の最大25%を包含することがある(Mariotto AB et al., Journal of the National Cancer Institute, 2011, 103:699)。病巣療法は、まだ定義されていないCaP集団のサブセットについて、低下した治療に関連する病的状態を伴う癌制御の希望をもたらす。しかしながら、新しい介入の安全性及び有効性に関するデータは希薄であり、画像誘導治療を利用する臨床試験は殆どない(Klotz L et al., Nature Reviews Clinical Oncology, 2014, 11(6):324-334)。
【0132】
本研究では、前立腺の病巣レーザアブレーション(FLA)の可能性を幾つかの方法で前進させた。第1に、初期の研究を確認すると、重篤な有害事象又は泌尿器機能又は性機能の変化を伴わない、中リスクのCaPを患う男性において、前立腺のFLAは安全であることが示された(Oto A et al., Radiology, 2013, 267(3):932-940; Lindner U et al., The Journal of Urology, 2009, 182(4):1371-1377; Lindner U et al., Journal of Endourology, 2010, 24(5):791-797; Lindner U et al., The Journal of Urology, 2013, 4(189):e227-e228)。経直腸的アプローチは実現可能であることが判明した。第2に、二次安全モニタの追加は、ほぼ14Wでの3分間のアクティブ化の間でさえも、レーザ温度が意図される治療ゾーンに十分に限定されることを確認する。第3に、この研究中の広範な生検追跡結果は、以前に考えられていたよりも大きな限界が効果的な病巣療法に必要である場合があることを示す。LeNobin et al.は、完全な腫瘍切除のために、MRI標的の周りの1センチメートルの限界が必要とされる場合があることを示唆している(LeNobin J et al., The Journal of Urology, 2015, 194:364)。
【0133】
本研究で治療された癌は、低リスクでなく、中リスクであった(NCCN)。Otoの研究では、治療された癌は、8人の患者のうちの7人においてグリーソン3+3=6の小さなスポットであった(Oto A et al., Radiology, 2013, 267(3):932-940)。本研究では、8人のうちの7人が3+4=7のグリーソンスコアを有し、4mmを超える中央値の最大コア長を有した。よって、ここでの患者の選択は、中リスクの男性を治療するための現在のコンセンサスの推奨と一致している(Donaldson IA et al., European Urology, 2015, 67(4):771-777)。追跡の6ヶ月時に、8人の患者のうちの5人における元の癌保有病巣の包括的な生検後に癌は検出できず、中リスクの個体における効果的なFLAの可能性を示唆している。
【0134】
これらの初期的な研究から、FLAの病気を治す成功率を決定することは困難である。本ボア内研究は、FLAを用いた予備的な経験であり、安全性が第1の関心事であり、レーザ配置を保守的にさせる。以前に利用されたよりも大きい限界又は以前に利用されたよりも積極的な治療パラメータは、中リスク集団における全てのCaPを排除するのに有効である場合がある。
【0135】
(例5:オフィスベースの病巣レーザアブレーション)
病巣レーザアブレーション(FLA)は、リアルタイムMRI誘導の下で前立腺癌(CaP)を安全に治療するために使用されてきたが、面倒で、時間がかかり、資源集約的であり、放射線処置としてアプローチされる。以下の研究は、広範な標的化生検経験を用いて、MRI/超音波(MRI/US)融合誘導の下で泌尿器科クリニックにおいてFLAを行うための基礎を提供した。
【0136】
単一のMR可視病変において生検で確認された中リスク(グリーソン3+4)CaPを有する4人の男性患者が研究に参加した。980nm、15W水冷レーザ(Visualase)を使用して、RI/US融合誘導(Artemis)の下で、経直腸式にFLAを行った。前立腺周辺ブロックに静脈内ミダゾラムを補充した。カスタムソフトウェアを創り、4つの間質性熱プローブを使用して、治療温度をリアルタイムに監視した。少なくとも1つのプローブを直腸壁に隣接して配置して安全性を評価し、1つのプローブをレーザファイバと平行に配置してレーザ先端での温度を監視した。ダイナミックコントラスト強調(DCE)を含むマルチパラメトリックMRIを治療後に行った。
【0137】
インシデント又は重大の有害事象のない4人の患者においてFLAを成功裡に行った。各患者において、3分の2~3回のレーザ適用をそれぞれ用いた。最初の超音波スキャンからプローブ除去までの総処置時間は、平均93分(範囲、91~100分)であり、患者は、治療の4時間内に退院した。治療後のDCE MRI(
図32B)で見られるアブレーション容積は、平均3.8cc(範囲、2.5~4.7cc)であった。レーザ先端に隣接する熱プローブは、いずれの場合においても60℃を超える温度を記録した。直腸壁温度は、いずれの患者においても42℃を超えなかった。
【0138】
MRI/US融合誘導下の泌尿器科クリニック設定におけるFLAは、実現可能であり、4人の男性において安全に行われた。熱プローブ記録は確実で便利であることが分かり、MRI温度測定をFLAと置換する能力を実証した。前立腺癌の病巣療法が泌尿器科的処置のままである可能性を実証した。
【0139】
(例6:前立腺癌におけるMRI-全器官関係を定める3D印刷された患者特異的な前立腺モデル)
根治的前立腺切除術を受けた65人の男性(中央値61歳、44~79歳の範囲)の前立腺を、患者特異的な3D印刷モデルを使用して精密に切断した。これらのモデルを術前mpMRI輪郭(
図33A)から生成し、各スライスはMR画像平面に対応した(
図33B)。腫瘍をホールマウントスライド(whole mount slides)上に描写し(
図33C)、デジタル的に再構成し(
図33D)、MATLABソフトウェアを使用して対応するMRI病変(UCLAグレード3~5)と一致させた。全ての患者は以前に治療を受けておらず、平均前立腺容積は40cc(範囲19~110cc)であった。
【0140】
91のMRI病変及び126の実際の腫瘍を65人の男性において空間的に相関させた。予測精度を腫瘍毎に
図35に要約した。臨床的に有意な前立腺癌(csCaP)、即ち、あらゆるグリーソン合計(GS)≧7又はあらゆるGS6≧0.5ccが患者の88%において見出された。患者の30%において、少なくとも1つのcsCaP腫瘍はMRIで検出されず、これらの腫瘍の平均容積は1.9cc(範囲0.5~6.9cc)であった。全てのcsCaPの検出のために、MRI感受性(MRI sensitivity)は76%であり、特に64%であった。更に、csCaPについてのMRI感受性及び特異性(specificity)は、mpMRI疑惑スコア(suspicion score)と共に増加した(
図34)。
【0141】
患者特異的な3D印刷モールドは、正確なMR組織学相関及びmpMRIの予測有用性の厳密な評価を可能にする。腫瘍の大部分はMRI上で検出され、殆どの検出されなかった腫瘍は小さい容積及び/又はグリーソン3+3であった。しかしながら、患者の30%において、少なくとも1つの臨床的に有意な腫瘍領域がmpMRIで見逃された。
【0142】
(例7:MRI-病理学相関を通じて病巣療法限界を通知すること)
マルチパラメトリックMRI(mpMRI)は、前立腺癌(CaP)を撮像し、標的化された介入を誘導する、ロバストな方法である。以下の研究は、MRI可視関心領域(ROI)と既知のCaPの領域との間の空間的関係を調査し、効果的な病巣療法に必要な治療限界を特徴付ける。
【0143】
根治的前立腺切除に先立ち、65人の男性がmpMRIを受け、それらのうちから、放射線科医は、前立腺嚢(prostate capsule)及びCaPの疑いがある部位の輪郭を描いた。次に、患者のMRIからカスタム鋳型(custom mold)を3D印刷し、外科標本(surgical specimen)の精密な切出し(sectioning)のために使用した。この鋳型は、描いたスライド(
図36A)と術前mpMRI(
図36B)との正確な整合を容易にした。病理学上発見された全ての腫瘍は3Dにおいてデジタル式に再構築され、対応するMRI標的(n=71)と整合した。カスタムソフトウェアを使用して全ての表面の幾何学的構成及び各MRI標的と一致した腫瘍との間の最大距離を決定した。
【0144】
ROI及び腫瘍の空間的構成を
図37に要約する。前立腺嚢の平均容積及び最長軸は、MRI測定と密接に対応したが、CaPの平均容積は、ROI予測よりも2.7倍だけ大きかった。MRI上の平均最長軸が16.8mmであることが見出されたのに対し、病理学上の最長軸は27.5mmであった。腫瘍の非対称性の故に、CaPは、少なくとも1つの軸に沿ってROIを超えて平均15mmだけ延びた(
図36C)。遡及的に、これらの腫瘍拡張の少数のみがMRI上で特定可能であった。
【0145】
MRIは、CaP容積を2.7倍だけ過小評価した(MRIで0.9ccであるのに対し病理学で2.4cc)。MRI標的化のみを使用すると、効果的な病巣療法は、ROIの周りに実質的な限界を含む必要がある(中央値15mm)。実際には、腫瘍の非対称性を特徴付けるために、追跡された生検情報又はより良い撮像を使用して、この限界を減少させることができる。
【0146】
本明細書で引用したありとあらゆる特許、特許出願、及び公報の開示の全体を本明細書中に参照として援用する。特定の実施形態を参照してこの発明を開示したが、この発明の他の実施形態及び変形が本発明の真正な精神及び範囲から逸脱せずに当業者によって考案される場合があることが明らかである。添付の請求項は、全てのそのような実施形態及び均等な変形を含むように解釈されることが意図されている。