(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】アニオン交換膜のためのポリマーの架橋
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20231115BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20231115BHJP
B01J 41/14 20060101ALI20231115BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20231115BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20231115BHJP
C08F 8/32 20060101ALI20231115BHJP
C08G 83/00 20060101ALI20231115BHJP
C08J 5/22 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C25B13/08 303
B01J47/12
B01J41/14
B01J41/05
C08F297/04
C08F8/32
C08G83/00
C08J5/22 104
C08J5/22 CER
(21)【出願番号】P 2020559544
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 US2019028925
(87)【国際公開番号】W WO2019209959
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508252206
【氏名又は名称】レンセラー ポリテクニック インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バエ、チュルスン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン、ヨブ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ノ、サンタイク
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531700(JP,A)
【文献】特表2018-502180(JP,A)
【文献】HAO,Jinkai et al,Crosslinked high-performance anion exchange membranes based on poly(styrene-b-(ethylene-co-buthylene)-b-stylene),Journal of Membrane Science,2018年01月24日,551,p.66-75,DOI:10.1016/j.memrsci.2018.01.033
【文献】Jeon, Y. Jong et al.,Ionic Functionalization of Polystylene-b-poly(ethylene-co-butylene)b-polystylene via Friedel-Crafts Bromoalkylation and Its Application for Anion Exchange Membranes,ECS Transactions,2017年,vol.80(8),p.967-970,DOI:10.1149/08008.0967ecst
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリマーネットワークを含むイオン交換膜材料であって、前記架橋ポリマーネットワークが、
第1のポリマー鎖であって、前記第1のポリマー鎖は、
(i)ポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)であって、前記SEBSの少なくとも1つのフェニル基は第1のアルキル基で官能化され、前記第1のアルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されているか、または、
(ii)第1のアルキル基で官能化されている芳香族主鎖ポリマー
である前記第1のポリマー鎖と、
第2のポリマー鎖であって、前記第2のポリマー鎖は、
(iii)ポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)であって、前記SEBSの少なくとも1つのフェニル基は第2のアルキル基で官能化され、前記第2のアルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されているか、または、
(iv)第2のアルキル基で官能化されている芳香族主鎖ポリマー
である前記第2のポリマー鎖と、
(i)の前記第1のアルキル基および(iii)の前記第2のアルキル基に結合したジアミンリンカー、または(ii)の前記第1のアルキル基および(iv)の前記第2のアルキル基に結合したジアミンリンカーと、
を含
み、
前記芳香族主鎖ポリマーは、ビフェニルブロックポリマーである、
イオン交換膜材料。
【請求項2】
前記第1のポリマー鎖の前記芳香族主鎖ポリマーは、さらに-C(CF
3)(R)-(Rは前記第1のアルキル基である)を含み、および/または、前記第2のポリマー鎖の前記芳香族主鎖ポリマーは、さらに-C(CF
3)(R)-(Rは前記第2のアルキル基である)を含む、請求項
1に記載のイオン交換膜材料。
【請求項3】
前記第1のポリマー鎖または前記第2のポリマー鎖の少なくとも1つのフェニル基が非架橋アルキル基で官能化され、前記非架橋アルキル基が第四級アンモニウム基を含む、請求項1
または2に記載のイオン交換膜材料。
【請求項4】
前記架橋ポリマーネットワークにおけるジアミンリンカーの濃度が
5モル%より高いか、
30モル%より高いか、または
50モル%より高い、請求項1から
3のいずれか一項に記載のイオン交換膜材料。
【請求項5】
前記ジアミンリンカーが、N,N,N,N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミンである、請求項1から
4のいずれか一項に記載のイオン交換膜材料。
【請求項6】
前記架橋ポリマーネットワークが、式Iによる構造を含み、
【化1】
(式I)
式中、R1はHまたはCH
3を含み、R2はCH
3を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のイオン交換膜材料。
【請求項7】
前記架橋ポリマーネットワークが、式IIによる構造を含み、
【化2】
(式II)
式中、Rはアルキル基を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のイオン交換膜材料。
【請求項8】
イオン交換膜を製造する方法であって、
芳香族ポリマーを1または複数のハロゲン化アルキル基で官能化する段階であって、前記1または複数のハロゲン化アルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されているか、または、前記1または複数のハロゲン化アルキル基は芳香族主鎖ポリマーに結合している、段階と、
前記官能化された芳香族ポリマーをジアミンと混合して、1または複数のハロゲン化物基を第四級アンモニウム基で置換する段階と、
前記ジアミンを介して、前記官能化された芳香族ポリマーを別の
前記官能化された
前記芳香族ポリマーで架橋して、架橋ポリマーを生成する段階と、
を含
み、
前記芳香族ポリマーは、ポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)であり、
前記芳香族主鎖ポリマーは、ビフェニルブロックポリマーである、
方法。
【請求項9】
前記架橋ポリマーにトリアルキルアミンを付加して、未反応のハロゲン化アルキル基を第四級アンモニウム基に変換することをさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋ポリマーにおけるジアミンリンカーの濃度が
5モル%、または
50モル%より高い、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ジアミンが2つの第三級アミン基を含む、請求項
8から1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジアミンが、N,N,N,N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミンである、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン交換膜が式Iによる構造を含み、
【化3】
(式I)
式中、R1はHまたはCH
3を含み、R2はCH
3を含む、請求項
8から1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン交換膜が式IIによる構造を含み、
【化4】
(式II)
式中、Rはアルキル基を含む、請求項
8から1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
イオン交換膜を製造する方法であって、
芳香族ポリマーを1または複数のハロゲン化アルキル基、および、任意に1または複数のビニル基で官能化する段階と、
前記1または複数のハロゲン化アルキル基、または任意に1または複数のビニル基において前記官能化された芳香族ポリマーを別の
前記官能化された
前記芳香族ポリマーで架橋して、リンカーを介して架橋ポリマーを生成する段階と、
前記架橋ポリマーをトリアルキルアミンで処理して、非架橋ハロゲン化アルキル基をアンモニウム基に変換する段階と、
を含
み、
前記芳香族ポリマーは、ビフェニルブロックポリマーである、
方法。
【請求項16】
前記架橋ポリマーにおける前記リンカーの濃度が
5モル%、または
50モル%より高い、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
前記リンカーが、ジアミンリンカー、ポリオール、ポリ芳香族化合物、アルケン二量体、ジチオール、またはこれらの組み合わせである、請求項1
5または16に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋はさらに酸触媒またはUV照射を含む、請求項1
5から
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記官能化された芳香族ポリマーは、前記1または複数のハロゲン化アルキル基、および前記1または複数のビニル基を含み、
前記別の官能化された芳香族ポリマーは、前記1または複数のハロゲン化アルキル基、および前記1または複数のビニル基を含む、請求項1
5から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋は、前記官能化された芳香族ポリマーと、前記1または複数のビニル基において前記別の官能化された芳香族ポリマーと架橋して、前記リンカーを介して前記架橋ポリマーを生成する
ことを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
イオン交換膜を製造する方法であって、
芳香族ポリマーを1または複数のハロゲン化アルキル基で官能化する段階と、
前記官能化された芳香族ポリマーを、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの混合物で処理して前記1または複数のハロゲン化アルキル基を第四級アンモニウム基および第三級アミン基の混合物に変換する段階と、
前記官能化された芳香族ポリマーと、前記第三級アミン基において別の
前記官能化された
前記芳香族ポリマーと架橋して、リンカーを介して架橋ポリマーを生成する段階と、
を含
み、
前記芳香族ポリマーは、ビフェニルブロックポリマーである、
方法。
【請求項22】
前記リンカーは
ジアミン、またはジハロアルカンリンカーである、請求項2
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年4月24日出願の米国仮特許出願第62/661,705号の利益を主張し、これは本明細書に開示されているかのようにその全体が参照により組み込まれている。
連邦支援研究または開発に関する記述
【0002】
本発明は、エネルギー省によって助成された補助金第DE-AR0000769号の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
アニオン交換膜とも呼ばれるアルカリ性交換膜(AEM)は、電気化学的反応におけるカソードからアノードへのアニオン、例えばOH、Cf、Brなどの輸送を可能にする。AEMは、電気および水の副生成物を生成するのに水素および酸素が使用される、AEM燃料電池の構成要素である。AEMはまた、電気の助けにより水が水素および酸素に分解される、水の電気分解に使用され、これは、最もきれいで最も所望される水素生成プロセスである。AEM燃料電池および水の電気分解において、水分子の助けにより水酸化物イオン(OH-)は膜を通して輸送される。AEMの用途の他の領域としては、電池、センサ、およびアクチュエータ(イオンのマイグレーションの結果としてプラスチック膜が可逆的に揺動する)が挙げられる。
【0004】
過去数年間で、いくつかの研究グループが新たなAEM材料を開発している。しかしながら、これらの材料は不都合に、高アルカリ性の下で容易に劣化する傾向がある。現在、ほとんどのアニオンAEMは、側鎖に沿って第四級アンモニウム基を含有するポリマーから調製されている。残念ながらこれらのイオン性側基は水と強く相互作用し、これは可塑剤として作用して水和反応に際してポリマーの軟化および膨張を引き起こす。
【発明の概要】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態は、架橋ポリマーネットワークで構成されたイオン交換膜材料を対象とし、架橋ポリマーネットワークは、第1のポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)であって、第1のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は第1のアルキル基で官能化され、第1のアルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されている、第1のSEBSと、第2のポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)であって、第2のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は第2のアルキル基で官能化され、第2のアルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されている、第2のSEBSと、第1のアルキル基および第2のアルキル基に結合したジアミンリンカーとを含む。いくつかの実施形態では、第1のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は非架橋アルキル基で官能化され、非架橋アルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和され、非架橋アルキル基は第四級アンモニウム基を含む。いくつかの実施形態では、第2のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は非架橋アルキル基で官能化され、非架橋アルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和され、非架橋アルキル基は第四級アンモニウム基を含む。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるジアミンリンカーの濃度は約5モル%より高い。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるジアミンリンカーの濃度は約30モル%より高い。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるジアミンリンカーの濃度は約50モル%である。いくつかの実施形態では、ジアミンリンカーは、N,N,N,N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミンである。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、イオン交換膜を製造する方法を対象とし、本方法は、芳香族ブロックコポリマーを1または複数のハロゲン化アルキル基で官能化する段階であって、1または複数のハロゲン化アルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されている、段階と、官能化された芳香族ブロックコポリマーをジアミンと混合して、1または複数のハロゲン化物基を第四級アンモニウム基で置換する段階と、ジアミンを介して、官能化された芳香族ブロックコポリマーを別の官能化された芳香族ブロックコポリマーで架橋して、架橋ポリマーを生成する段階とを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジアミンリンカー、ポリオール、ポリ芳香族化合物、アルケン二量体、ジチオール、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ジアミンは2つの第三級アミン基を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、架橋ポリマーにトリアルキルアミンを付加して、未反応のハロゲン化アルキル基を第四級アンモニウム基に変換することをさらに含む。いくつかの実施形態では、芳香族ブロックコポリマーはビフェニルポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面は、本発明を例示する目的で、開示される主題の実施形態を示す。しかしながら、本出願は、以下の図面に示される正確な構成および手段に限定されないことを理解されたい。
【0008】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜の製造における使用のためのイオン交換材料の概略図である。
【0009】
【
図2】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0010】
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換材料における架橋剤の増加と共に吸水が減少することを示す表である。
【0011】
【
図4】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0012】
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0013】
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0014】
【
図7】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0015】
【
図8】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【0016】
【
図9】本開示のいくつかの実施形態に係るイオン交換膜を製造するための方法のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、開示される主題のいくつかの態様は、イオン交換材料100を含む。いくつかの実施形態では、イオン交換材料は、例えば、燃料電池、水の加水分解システム、電気化学的水素コンプレッサ、電池、センサ、アクチュエータなどにおける使用のためのイオン交換膜として好適である。いくつかの実施形態では、イオン交換膜はアニオン交換膜である。
【0018】
いくつかの実施形態では、イオン交換材料100は、架橋ポリマーネットワーク102を含む。いくつかの実施形態では、架橋ネットワーク102は、1または複数のポリマー鎖104と、1または複数のポリマー鎖104を結合する1または複数のリンカー106とを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー鎖104は、ポリ芳香族ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ポリマー鎖104は、1または複数の官能基で官能化されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリマー鎖104のうちの1または複数は、ポリ(スチレン-b-エチレン-r-ブチレン-b-スチレン)トリブロックコポリマー(SEBS)である。いくつかの実施形態では、ポリマー鎖104、例えばSEBSの少なくとも1つのフェニル基は、少なくとも1つのアルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加炭素、アルキル基などで飽和されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアルキル基は、以下により詳細に論じられるように、1または複数のリンカー106を介して別のポリマー鎖104と架橋する前はハロゲン化アルキル基である。いくつかの実施形態では、リンカー106は、ポリマー鎖上のアルキル官能基の間の結合を介してポリマー鎖104を架橋する。いくつかの実施形態では、リンカー106はジアミンである。いくつかの実施形態では、ジアミンは、少なくとも2つの第三級アミン基と、それらの間に配置されたアルキル基とを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、N,N,N,N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミンである。いくつかの実施形態では、架橋ネットワーク102の少なくとも1つのフェニル基は非架橋アルキル基で官能化され、非架橋アルキル基のベンジル位にある炭素は少なくとも2つの付加アルキル基で飽和され、非架橋アルキル基は第四級アンモニウム基を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約5モル%より高い。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約30モル%より高い。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約50モル%である。いくつかの実施形態では、架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約50モル%より高い。
【0021】
例として、依然として
図1を参照すると、架橋ポリマーネットワーク102は第1のSEBS鎖104を含み、第1のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は第1のアルキル基で官能化され、第1のアルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されている。第1のSEBS鎖104は第2のSEBS鎖104'で架橋され、第2のSEBSの少なくとも1つのフェニル基は第2のアルキル基で官能化され、第2のアルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加アルキル基で飽和されている。ジアミンリンカー106は第1のアルキル基および第2のアルキル基に結合されて式Iによる構造をもたらし、
【化1】
(式I)
式中、R1はHまたはCH
3を含み、R2はCH
3を含む。
【0022】
次に
図2を参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、イオン交換膜を製造するための方法、例えば、反応経路を対象とする。202で、芳香族ブロックコポリマー、例えば、SEBSは、1または複数のハロゲン化アルキル基で官能化される。いくつかの実施形態では、1または複数のハロゲン化アルキル基のベンジル位にある炭素は、少なくとも2つの付加アルキル基で飽和される。204で、官能化された芳香族ブロックコポリマーはリンカーと混合されて、1または複数のハロゲン化物基が第四級アンモニウム基で置換され、官能化された芳香族ブロックコポリマーはリンカーを介して別の官能化された芳香族ブロックコポリマーで架橋されて、架橋ポリマーネットワークが生成される。206で、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して第四級アンモニウム基に変換される。
図3を参照すると、リンカーの濃度(モル%)が高いほど、ネットワーク、およびしたがって膜の吸水が低くなる。
【0023】
再び
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のポリマー鎖104はビフェニルブロックポリマーである。いくつかの実施形態では、ビフェニルブロックポリマーは、1または複数のアルキル基で官能化される。いくつかの実施形態では、リンカー106は、鎖上のアルキル官能基の間の結合を介してビフェニルブロックポリマーを架橋する。いくつかの実施形態では、リンカーは、以下により詳細に論じられるように、ジアミンリンカー、ポリオール、ポリ芳香族化合物、アルケン二量体、ジチオール、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、架橋ビフェニルブロックポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約5モル%より高い。いくつかの実施形態では、架橋ビフェニルブロックポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約30モル%より高い。いくつかの実施形態では、ビフェニルブロック架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約50モル%である。いくつかの実施形態では、ビフェニルブロック架橋ポリマーネットワークにおけるリンカーの濃度は、アルキル官能基の約50モル%より高い。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアルキル官能基は非架橋であり、第四級アンモニウム基を含む。
【0024】
次に
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーはハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、リンカー、例えばジアミンで混合、例えば鋳造されて、実質的に同時の第四級化および架橋反応を受けて、他のビフェニルブロックポリマーに架橋する。いくつかの実施形態では、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して第四級アンモニウム基に変換される。
【0025】
図5を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーはハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、トリアルキルアミンとジアルキルとの混合物がビフェニルブロックポリマーに付加されて、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲンが第四級アンモニウムと第三級アミン基との混合物に変換される。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、リンカー、例えばジアミンで混合、例えば鋳造されて、第三級アミン基において実質的に同時の第四級化および架橋反応を受ける。
【0026】
次に
図6を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーはハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、ジオールまたはトリオールなどのポリオールで混合、例えば鋳造されて、エーテル化反応を受け、他のビフェニルブロックポリマーと架橋する。いくつかの実施形態では、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して、第四級アンモニウム基に変換される。
【0027】
次に
図7を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、ハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは塩基と反応して、少なくともいくつかのハロゲンがビニル基に変換される。いくつかの実施形態では、ビニル基は、芳香族環が架橋ポリマーネットワークにおけるポリマー間のリンカーとして機能するように、ポリ芳香族化合物を用いた酸触媒フリーデル・クラフツアルキル化を介して架橋反応を受ける。いくつかの実施形態では、ポリ芳香族化合物は、ビフェニル化合物、ジフェニルエーテル化合物、トリプチセン化合物、フルオレンもしくはフルオレン誘導体化合物など、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して第四級アンモニウム基に変換される。
【0028】
次に
図8を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、ハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは塩基と反応して、少なくともいくつかのハロゲンがビニル基に変換される。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは次いでUV照射され、それにより、架橋ポリマーネットワークにおけるポリマー間のリンカーとして機能するシクロブタン環としてのビニル基間の二量化が引き起こされる。いくつかの実施形態では、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して第四級アンモニウム基に変換される。
【0029】
次に
図9を参照すると、いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは、ハロゲン化アルキル基で官能化されている。いくつかの実施形態では、1または複数のビフェニルブロックポリマーは塩基と反応して、少なくともいくつかのハロゲンがビニル基に変換される。いくつかの実施形態では、ビニル基は、UV照射およびジチオールの付加を介した架橋反応を受ける。得られるチオール-エン反応により、架橋ポリマーネットワークにおけるポリマーが架橋され、ここで、ジチオールはリンカーとして機能する。いくつかの実施形態では、ジチオールはアルキルジチオール、例えば、SH-(CH
2)
n)-SHである。いくつかの実施形態では、未反応のハロゲン化アルキル基は、トリアルキルアミンの付加を介して、第四級アンモニウム基に変換される。
【0030】
本開示の方法は、ハロゲン化アルキル基で官能化された任意のスチレンコポリマーからイオン交換膜およびイオノマー結合剤を調製する汎用的な手法として有利である。反応条件は簡単であり、第四級化および架橋が実質的に同時に生じるため、反応自体は比較的少ない数の段階で実行され得る。さらに、単に、本明細書に記載される反応における架橋剤の濃度を高めることにより吸水が低減した膜が生成され、水和条件下における向上した安定性およびより高い耐久性の期待をもたらした。有利なことに、吸水の低減に付随したイオン交換容量の変化はわずかであった。本開示の実施形態と矛盾しない架橋ポリマーネットワークは、例えば、電池、アニオン交換膜燃料電池、アニオン交換膜電気分解、燃料電池および電気分解のためのイオノマー、他の電気化学的エネルギー変換デバイスのための膜およびイオノマー、水精製、ガス分離(特に、石炭火力発電所からのCO2)などの用途のために有用である。
【0031】
開示される主題は、その実施形態に関して説明および例示されているものの、当業者は、開示される実施形態の特徴は、本発明の範囲内の追加の実施形態を生み出すために組み合わされ、再構成されるなどすることができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらにおいて、かつそれらに対して他の様々な変更、省略、および追加を施すことができることを理解されたい。