(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】非剛体画像レジストレーション調整支援装置、非剛体画像レジストレーション調整支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231115BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61B6/03 F
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360D
(21)【出願番号】P 2019209949
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】角谷 倫之
(72)【発明者】
【氏名】根本 光
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥平
(72)【発明者】
【氏名】細谷 祐里
(72)【発明者】
【氏名】神宮 啓一
(72)【発明者】
【氏名】中村 光宏
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0294140(US,A1)
【文献】特開2015-091312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の一部又は全部を模した物理ファントムである第1物理ファントムの撮影結果である第1画像に対する非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)を実行するDIR実行部と、
前記第1物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である第1物理ファントム情報と、前記第1物理ファントムとは一部の形状が異なる物理ファントムである第2物理ファントム上の形状及び大きさを示す情報である第2物理ファントム情報と、前記第1画像が示す像の前記第1物理ファントム上の位置を示す情報である第1ファントム上画像位置情報と、前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像が示す像の前記第2物理ファントム上の位置を示す情報である第2ファントム上画像位置情報と、
前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位を撮影した画像の多角形の形と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位を撮影した画像の多角形の形との関係を示す情報である幾何学情報と、に基づいて、前記DIR実行部によるDIRの実行結果と前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像との一致の度合を示す情報
であるDIR一致度を取得する一致度取得部と、
前記DIR一致度が所定の閾値を超えるのか否かによって合格基準を満たすか否かを判定する繰り返し制御部と、
を備え、
前記DIRの実行によって、前記第1画像内の各位置と、DIRを実行して生成する被変形の前記第1画像内の各位置との対応関係をDIR座標対応関係情報とし、
前記第1画像中の像の各位置と前記第2画像中の像の各位置との間の対応関係を原画像間対応情報とし、
前記原画像間対応情報と前記DIR座標対応関係情報とに基づき、被変形の前記第1画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置と第2画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置との間の対応関係を非同一部位対応関係情報とするとき、
前記DIR一致度は、前記原画像間対応情報が示す変形ベクトルと、前記非同一部位対応関係情報が示す変形ベクトルとの差であり、
前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる前記多角形の頂点の数と、前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる前記多角形の頂点の数とは、同一である、
非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項2】
前記幾何学情報は、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位
にかかる第1像(F1)と
、前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位
にかかる第2像(F2)と
、が
像の各位置における前記変形ベクトルの集合である変形ベクトル場を用いて前記第1像がDIRによって前記第2像の形状に近づくように変形される相似
形の関係にあることを示す、
請求項1に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項3】
前記幾何学情報は、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位
にかかる第1像(F1)と
、前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位
にかかる第2像(F2)と
、が
像の各位置における前記変形ベクトルの集合である変形ベクトル場を用いて前記第1像の高さを拡大又は縮小して前記第2像の形状に近づくように変形される関係にあることを示す、
請求項1に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項4】
前記一致度取得部が取得した前記度合に基づいて、前記DIRを更新するDIR更新部、
をさらに備える請求項1から
3のいずれか一項に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項5】
前記物理ファントムは、抜き差し可能な1又は複数の部位を有する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項6】
前記抜き差し可能な部位の一部又は全部は、DIRへの影響が所定の影響よりも小さい形状、大きさ、数及び位置の立体を有する、
請求項
5に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項7】
前記物理ファントムは、人体の腰を模した物理ファントムである、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項8】
前記第2物理ファントムは、被撮影図形の大きさが所定の大きさよりも小さい立体の部位であるドット体を複数有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置。
【請求項9】
人体の一部又は全部を模した物理ファントムである第1物理ファントムの撮影結果である第1画像に対する非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)を実行するDIR実行ステップと、
前記第1物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である第1物理ファントム情報と、前記第1物理ファントムとは一部の形状が異なる物理ファントムである第2物理ファントム上の形状及び大きさを示す情報である第2物理ファントム情報と、前記第1画像が示す像の前記第1物理ファントム上の位置を示す情報である第1ファントム上画像位置情報と、前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像が示す像の前記第2物理ファントム上の位置を示す情報である第2ファントム上画像位置情報と、
前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位を撮影した画像の多角形の形と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位を撮影した画像の多角形の形との関係を示す情報である幾何学情報と、に基づいて、前記DIR実行ステップにおけるDIRの実行結果と前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像との一致の度合を示す情報
であるDIR一致度を取得する一致度取得ステップと、
前記DIR一致度が所定の閾値を超えるのか否かによって合格基準を満たすか否かを判定する繰り返し制御ステップと、
を有し、
前記DIRの実行によって、前記第1画像内の各位置と、DIRを実行して生成する被変形の前記第1画像内の各位置との対応関係をDIR座標対応関係情報とし、
前記第1画像中の像の各位置と前記第2画像中の像の各位置との間の対応関係を原画像間対応情報とし、
前記原画像間対応情報と前記DIR座標対応関係情報とに基づき、被変形の前記第1画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置と第2画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置との間の対応関係を非同一部位対応関係情報とするとき、
前記DIR一致度は、前記原画像間対応情報が示す変形ベクトルと、前記非同一部位対応関係情報が示す変形ベクトルとの差であり、
前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる前記多角形の頂点の数と、前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる前記多角形の頂点の数とは、同一である、
非剛体画像レジストレーション調整支援方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の非剛体画像レジストレーション調整支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非剛体画像レジストレーション調整支援装置、非剛体画像レジストレーション調整支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場では治療計画を建てることに際し、非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)(非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3参照)の技術を利用したソフトウェアが使われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Richard Castillo et al.,“A framework for evaluation of deformable image registration spatial accuracy using large landmark point sets”, Phys. Med. Biol. 54 (2009) 1849-1870
【文献】Martha M. Coselmon et al., “Mutual information based CT registration of the lung at exhale and inhale breathing states using thin-plate splines”, Med. Phys. 31(11), November 2004, 2942-2948
【文献】David Sarrut et al., “Simulation of four-dimensional CT images from deformable registration between inhale and exhale breath-hold CT scans”, Med. Phys. 33(3), March 2006, 605-617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような医療現場で使用されるDIRの技術は、予め患者の臓器の画像を用いてDIRの性能の評価を行い、評価結果に基づいてDIRのパラメータが好適に調整される場合がある。DIRの性能は、DIRによる変形後の画像と撮像によって得られた画像との違いの小ささで評価される。DIRに限らず一般に、2つの画像間の違いを評価するためには、2つの画像間に共通する事柄を見出し、共通の事柄に基づいて、共通ではない事柄がどれくらい違うかを評価する。例えば、剛体レジストレーションでは、変形対象の画像によらず、変形後の画像における撮影対象の輪郭や輪郭の内部の領域の各位置等の撮影対象の各位置の相対的な位置関係は変形前と変わらない。すなわち、剛体レジストレーションでは、変形対象の画像によらず撮影対象の各位置の相対的な位置関係が保存される。そのため、剛体レジストレーションでは、相対的な位置関係に基づいて、変形後の画像と撮影された画像との違いを評価する。
【0005】
しかしながら、DIRによる変形は非剛体な変形であるため、画像に写る像の頂点間の距離や頂点の角度等の画像の各位置の相対的な位置関係が必ずしも保存されない。そのため、DIRでは、DIRの性能を評価するための共通の事柄の候補が変形対象の画像に応じて異なる場合があり、DIRの性能の評価結果は信頼度が低い場合があった。
【0006】
このような問題を解決する手段として、調整者が2つの画像を見比べて目視で見出した画像上の多くの共通の位置を調整者が指定する方法がある。調整者とは、DIRの性能を評価し評価結果に基づいて調整するひとである。しかしながら、このような場合、多くの共通の位置を調整者が判断し指示する必要があるため調整者に対する負担が大きいという問題があった。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)を調整する調整者の労力を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、人体の一部又は全部を模した物理ファントムである第1物理ファントムの撮影結果である第1画像に対する非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)を実行するDIR実行部と、前記第1物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である第1物理ファントム情報と、前記第1物理ファントムとは一部の形状が異なる物理ファントムである第2物理ファントム上の形状及び大きさを示す情報である第2物理ファントム情報と、前記第1画像が示す像の前記第1物理ファントム上の位置を示す情報である第1ファントム上画像位置情報と、前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像が示す像の前記第2物理ファントム上の位置を示す情報である第2ファントム上画像位置情報と、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位との間の座標を用いない幾何学で表される関係を示す情報である幾何学情報と、に基づいて、前記DIR実行部によるDIRの実行結果と前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像との一致の度合を示す情報を取得する一致度取得部と、を備える非剛体画像レジストレーション調整支援装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記幾何学情報は、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位とが相似の関係にあることを示す。
【0010】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記幾何学情報は、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位とが拡大又は縮小の関係にあることを示す。
【0011】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記第1画像には、前記第1物理ファントムの形状及び大きさを示すための座標系である第1物理ファントム座標系の原点の位置を示す像が写っておらず、前記第2画像には、前記第2物理ファントムの形状及び大きさを示すための座標系である第2物理ファントム座標系の原点の位置を示す像が写っていない。
【0012】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記一致度取得部が取得した前記度合に基づいて、前記DIRを更新するDIR更新部、をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記物理ファントムは、抜き差し可能な1又は複数の部位を有する。
【0014】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記抜き差し可能な部位の一部又は全部は、DIRへの影響が所定の影響よりも小さい形状、大きさ、数及び位置の立体を有する。
【0015】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置であって、前記物理ファントムは、人体の腰を模した物理ファントムである。
【0016】
本発明の一態様は、人体の一部又は全部を模した物理ファントムである第1物理ファントムの撮影結果である第1画像に対する非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)を実行するDIR実行ステップと、前記第1物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である第1物理ファントム情報と、前記第1物理ファントムとは一部の形状が異なる物理ファントムである第2物理ファントム上の形状及び大きさを示す情報である第2物理ファントム情報と、前記第1画像が示す像の前記第1物理ファントム上の位置を示す情報である第1ファントム上画像位置情報と、前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像が示す像の前記第2物理ファントム上の位置を示す情報である第2ファントム上画像位置情報と、前記第1物理ファントムの一部であって前記第2物理ファントムと形状が異なる部位と前記第2物理ファントムの一部であって前記第1物理ファントムと形状が異なる部位との間の座標を用いない幾何学で表される関係を示す情報である幾何学情報と、に基づいて、前記DIR実行ステップにおけるDIRの実行結果と前記第2物理ファントムの撮影結果である第2画像との一致の度合を示す情報を取得する一致度取得ステップと、を有する非剛体画像レジストレーション調整支援方法である。
【0017】
本発明の一態様は、上記の非剛体画像レジストレーション調整支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、DIRを調整する調整者の労力を軽減する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のDIR調整支援システム100の機能構成の一例を示す図。
【
図2】実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図。
【
図3】実施形態における原画像間対応情報取得部212が原画像間対応情報を取得する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図4】実施形態における変形ベクトル場を説明する説明図。
【
図5】実施形態における一致度取得部214がDIR一致度を取得する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態のDIR調整支援装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図7】実施形態の物理ファントム3の一例を示す第1の斜視図。
【
図8】
図7に示す実施形態の物理ファントム3の部位P1、部位P2、部位P3及び部位P5が模す骨盤の部位を示す図。
【
図9】実施形態の物理ファントム3の一例を示す第2の斜視図。
【
図10】実施形態の物理ファントム3の断面の一例を示す図。
【
図11】実施形態の物理ファントム3の奥行方向の形状の一例を示す図。
【
図12】非ユークリッド幾何学の公理系を満たす形状であって、ユークリッド幾何学の公理系を満たさない形状の一例を示す図。
【
図13】変形例の拡大又は縮小の関係にある第1ファントム画像に写る像の一例と第2ファントム画像に写る像の一例とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
図1は、実施形態のDIR調整支援システム100の機能構成の一例を示す図である。
<DIR調整支援システム100の概要>
まずDIR調整支援システム100の概要を説明する。
DIR調整支援システム100は、第1の物理ファントム(以下「第1物理ファントム」という。)と、第1物理ファントムとは一部の形状が異なる第2の物理ファントム(以下「第2物理ファントム」という。)とを撮影する。撮影対象の物理ファントムは、人体の一部又は全部を模した物理ファントムである。
【0021】
以下、第1物理ファントムの画像を第1ファントム画像という。以下、第2物理ファントムの画像を第2ファントム画像という。以下、第1物理ファントムと第2物理ファントムとで形状及び大きさが同一の部位を解剖学的一致部位という。
【0022】
DIR調整支援システム100は、第1ファントム画像と第2ファントム画像とを用いて、評価対象であり調整対象の非剛体画像レジストレーションの性能を評価し、さらに、非剛体画像レジストレーションのパラメータを調整する。より具体的には、DIR調整支援システム100は、まず調整対象の非剛体画像レジストレーション(DIR:Deformable Image Registration)の性能を評価する。以下、DIRの性能を評価する処理をDIR評価処理という。
【0023】
DIR調整支援システム100は、次に、評価結果が所定の基準(以下「合格基準」という。)を満たさない場合、調整対象のDIRのパラメータを更新する。以下、調整対象のDIRのパラメータを更新する処理をDIR更新処理という。DIRのパラメータは、例えば、DIRする範囲や、DIRのグリッドサイズや、スムージング係数である。
【0024】
DIR調整支援システム100は、DIR評価処理とDIR更新処理とを合格基準が満たされるまで繰り返すことで、調整対象のDIRの性能を向上させる。以下、DIR評価処理とDIR更新処理とを合格基準が満たされるまで繰り返す処理を、DIR調整処理という。
ここまででDIR調整支援システム100の概要の説明を終了する。
【0025】
<DIR調整支援システム100の詳細>
DIR調整支援システム100は、第1ファントム画像及び第2ファントム画像を取得する撮像部1と、第1ファントム画像及び第2ファントム画像に基づいてDIRの性能を向上させるDIR調整支援装置2とを備える。
【0026】
撮像部1は、レーザー光源11及び撮像装置12を備える。
レーザー光源11は、レーザーを出射する。
図1において、レーザーはレーザーLである。レーザー光源11が出射するレーザーは、物理ファントム3上の一か所に照射される。
図1においては、例えば、物理ファントム3上の位置Sに照射される。
図1の物理ファントム3は、第1物理ファントム又は第2物理ファントムである。
【0027】
撮像装置12は、撮影範囲内に位置する物体の像を撮影する。撮像装置12は、撮影範囲内に位置する物体の像を撮影可能であればどのようなものであってもよい。撮像装置12は、例えば、CT(Computed Tomography)であってもよいし、MRI(Magnetic Resonance Imaging)によって画像を生成する装置であってもよい。撮影範囲内に位置する物体は、具体的には、第1物理ファントム及び第2物理ファントムである。
【0028】
ここで、第1物理ファントムと第2物理ファントムが設置される位置の詳細を説明する。DIR調整支援システム100において、第1物理ファントムは、撮影範囲内の位置であり第1物理ファントム上の予め定められた所定の位置にレーザーが照射されるという条件を満たす位置(以下「第1設置位置」という。)に設置される。以下、レーザーが照射される第1物理ファントム上の所定の位置を第1照射位置という。
【0029】
DIR調整支援システム100において、第2物理ファントムは、撮影範囲内の位置であって第2物理ファントム上の予め定められた所定の位置にレーザーが照射される位置(以下「第2設置位置」という。)に設置される。以下、レーザーが照射される第2物理ファントム上の所定の位置を第2照射位置という。
【0030】
第1照射位置は、第1物理ファントム座標系の原点の位置である。第1物理ファントム座標系は、DIR調整支援システム100が非剛体画像レジストレーションの性能を評価する際に用いる座標系であり、原点と第1物理ファントム上の各位置との位置関係を示すための座標系である。そのため、第1物理ファントム座標系は、第1物理ファントムの形状及び大きさを示すために用いられる座標系である。第2照射位置は、第2物理ファントム座標系の原点の位置である。第2物理ファントム座標系は、DIR調整支援システム100が非剛体画像レジストレーションの性能を評価する際に用いる座標系であり、原点と第2物理ファントム上の各位置との位置関係を示すための座標系である。そのため、第2物理ファントム座標系は、第2物理ファントムの形状及び大きさを示すために用いられる座標系である。
【0031】
第1照射位置は、第1物理ファントムの解剖学的一致部位である。第2照射位置は、第2物理ファントム座標系の原点である。第2照射位置は、第2物理ファントムの解剖学的一致部位である。第1照射位置と第1物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係と、第2照射位置と第2物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係とは同一である。第1照射位置及び第2照射位置は、撮影範囲外に位置する。
ここまでで第1物理ファントムと第2物理ファントムが設置される位置の詳細の説明を終了する。
【0032】
撮像装置12は第1設置位置に設置された第1物理ファントムを撮影することで、第1ファントム画像を生成する。撮像装置12は、第2設置位置に設置された第2物理ファントムを撮影することで第2ファントム画像を生成する。
【0033】
撮像装置12が生成した第1ファントム画像の画像データ(以下「第1ファントム画像データ」という。)は、DIR調整支援装置2に送信される。撮像装置12が生成した第2ファントム画像の画像データ(以下「第2ファントム画像データ」という。)は、DIR調整支援装置2に送信される。
【0034】
DIR調整支援装置2は、取得した第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データに基づき、評価対象であり調整対象の非剛体画像レジストレーションの性能を評価する。また、DIR調整支援装置2は、取得した第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データに基づき、非剛体画像レジストレーションのパラメータを調整する。
【0035】
DIR調整支援装置2は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。DIR調整支援装置2は、プログラムの実行によって制御部21、通信部22、記憶部23、入力部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0036】
なお、DIR調整支援装置2の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0037】
制御部21は、自装置(DIR調整支援装置2)が備える各機能部の動作を制御する。また、制御部21は、DIR調整処理を実行する。
【0038】
通信部22は、自装置を撮像部1に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部22は、無線又は有線を介して、撮像部1と通信する。通信部22は、例えば、撮像部1との通信によって撮像装置12が生成した第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データを受信する。
【0039】
記憶部23は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部23は、例えば、調整対象のDIRのプログラムを記憶する。記憶部23は、例えば、DIRによる変換後の画像の画像データを記憶する。記憶部23は、例えば、受信した第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データを記憶する。
【0040】
記憶部23は、予め第1物理ファントム情報を記憶する。第1物理ファントム情報は、第1物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である。第1物理ファントム情報は、具体的には、第1物理ファントム座標系によって表される情報である。第1物理ファントム情報は、例えば、第1物理ファントムの各位置の第1物理ファントム座標系における座標値である。
【0041】
記憶部23は、予め第2物理ファントム情報を記憶する。第2物理ファントム情報は、第2物理ファントムの形状及び大きさを示す情報である。第2物理ファントム情報は、具体的には、第2物理ファントム座標系によって表される情報である。第2物理ファントム情報は、例えば、第2物理ファントムの各位置の第2物理ファントム座標系における座標値である。
【0042】
記憶部23は、第1ファントム画像が示す像の第1物理ファントム上の位置を示す情報(以下「第1ファントム上画像位置情報」という。)を記憶する。第1ファントム画像が示す像の第1物理ファントム上の位置を示す情報は、例えば、第1設置位置と、レーザー光源11の位置と、撮像装置12の位置と、撮像装置12の画角を示す情報と、レーザー光源11によるレーザーの出射方向を示す情報とを含む情報によって示される。
【0043】
記憶部23は、第2ファントム画像が示す像の第2物理ファントム上の位置を示す情報(以下「第2ファントム上画像位置情報」という。)を記憶する。第2ファントム画像が示す像の第2物理ファントム上の位置を示す情報は、例えば、第2設置位置と、レーザー光源11の位置と、撮像装置12の位置と、撮像装置12の画角を示す情報と、レーザー光源11によるレーザーの出射方向を示す情報とを含む情報によって示される。
【0044】
記憶部23は、第1照射位置と第1物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係と、第2照射位置と第2物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係とは同一であることを示す情報(以下「照射位置対応関係情報」という。)を記憶する。
【0045】
記憶部23は、第1ファントムにおける非同一部位の形状と第2ファントムにおける非同一部位の形状との間の座標を用いない幾何学で表される関係を示す情報(以下「幾何学情報」という。)を記憶する。非同一部位は、第1物理ファントムと第2物理ファントムとで異なる部位である。幾何学情報は、例えば、第1ファントムにおける非同一部位の形状と第2ファントムにおける非同一部位の形状とは相似の関係にある、という情報である。以下、説明の簡単のため、幾何学情報が、第1ファントムにおける非同一部位の形状と第2ファントムにおける非同一部位の形状とは相似の関係にある、という情報である場合を例にDIR調整支援装置2を説明する。
【0046】
入力部24は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部24は、これらの入力装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部24は、例えば、調整対象のDIRのプログラムの入力を受け付ける。入力部24は、入力された調整対象のDIRのプログラム(以下「対象DIRプログラム」という。)を記憶部23に出力する。入力部24は、例えば、対象DIRプログラムの調整の開始の指示を受け付ける。
【0047】
出力部25は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、制御部21から出力される情報を表示する。なお、出力部25は、必ずしも表示装置を含んで構成される必要はなく、情報を出力可能であればどのような装置を含んで構成されてもよい。例えば、出力部25は、出力すべき情報を示す音を出力するスピーカー等の音の出力装置であってもよい。
【0048】
図2は、実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図である。より具体的には、
図2は、制御部21が実行する、DIR調整処理に係る機能構成の一例を示す。
制御部21は、ファントム画像取得部211、原画像間対応情報取得部212、DIR実行部213、一致度取得部214、繰り返し制御部215及びDIR出力制御部216を備える。
【0049】
ファントム画像取得部211は、通信部22を介して第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データを取得する。
【0050】
原画像間対応情報取得部212は、第1ファントム画像中の像の各位置と第2ファントム画像中の像の各位置との間の対応関係を示す情報(以下「原画像間対応情報」という。)を取得する。
【0051】
図3は、実施形態における原画像間対応情報取得部212が原画像間対応情報を取得する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
原画像間対応情報取得部212は、第1物理ファントム情報及び第1ファントム上画像位置情報に基づき、第1画像位置情報を取得する(ステップS101)。第1画像位置情報は、第1ファントム画像中の像の各位置と第1物理ファントム座標系の原点との位置関係を示す情報である。ステップS101の次に、原画像間対応情報取得部212は、第2物理ファントム情報及び第2ファントム上画像位置情報に基づき、第2画像位置情報を取得する(ステップS102)。第2画像位置情報は、第2ファントム画像中の像の各位置と第2物理ファントム座標系の原点との位置関係を示す情報である。ステップS102の次に、原画像間対応情報取得部212は、幾何学情報、照射位置対応関係情報、第1画像位置情報及び第2画像位置情報に基づいて、原画像間対応情報を取得する(ステップS103)。
【0052】
図3に示す処理によって原画像間対応情報取得部212が原画像間対応情報を取得可能なのは、照射位置対応関係情報があるからである。照射位置対応関係情報が無い場合、第1画像位置情報が示す第1画像内の像の各位置と第2画像位置情報が示す第2画像内の像の各位置との位置関係は不明確になってしまう。また、幾何学情報が無い場合、非同一部位については、第1ファントム画像中に写る非同一部位の画像の各位置が第2ファントム画像中に写る非同一部位の画像のどの位置に対応するか、が不明確である。幾何学情報があるからこそ、原画像間対応情報取得部212は、第1ファントム画像中に写る非同一部位の画像の各位置が第2ファントム画像中に写る非同一部位の画像のどの位置に対応するかを示す精度の高い情報を取得することができる。
【0053】
DIR実行部213は、第1ファントム画像に対して対象DIRプログラムによるDIRを実行することで、被変形第1ファントム画像を生成する。被変形第1ファントム画像は、対象DIRプログラムのDIRによって変形した第1ファントム画像である。すなわち、被変形第1ファントム画像は、第1ファントム画像に対する調整対象のDIRの実行結果である。
【0054】
また、DIR実行部213は、DIRの実行によって、第1画像内の各位置と被変形第1ファントム画像内の各位置との対応関係(以下「DIR座標対応関係」という。)を示す情報(以下「DIR座標対応関係情報」という。)を取得する。DIRの実行は第1画像中の各位置を被変形第1ファントム画像中の各位置に移動させる処理であるため、DIR実行部213は、DIR座標対応関係情報を取得することができる。DIR座標対応関係情報は、例えば、変形ベクトル場の情報である。
【0055】
図4は、実施形態における変形ベクトル場を説明する説明図である。
図4において像F1は第1ファントム画像に写る像の一例である。
図4において像F2は第2ファントム画像に写る像の一例である。
図4は、像F1と像F2とが相似形であり、像F1は、DIRによって像F2の形状に近づくように変形されることを示す。
図4は、像F1がDIRによって変形される場合の変形ベクトル場を示す。変形ベクトル場は像の各位置における変形ベクトルの集合である。
【0056】
DIR座標対応関係は、例えば、第1座標系から被変形第1座標系への写像を表す表現行列又はその逆行列である。
【0057】
一致度取得部214は、原画像間対応情報及びDIR座標対応関係情報に基づき、DIR一致度を取得する。DIR一致度は、被変形第1ファントム画像と第2ファントム画像との一致の度合である。
【0058】
図5は、実施形態における一致度取得部214がDIR一致度を取得する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
一致度取得部214は、原画像間対応情報とDIR座標対応関係情報とに基づき、被変形第1ファントム画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置と第2ファントム画像に写る非同一部位の輪郭上の各点の位置との間の対応関係を示す情報(以下「非同一部位対応関係情報」という。)を取得する(ステップS201)。非同一部位対応関係情報は、例えば、被変形第1ファントム画像に写る非同一部位の輪郭の点と、その点に対応する第2ファントム画像に写る非同一部位の輪郭上の点とを結ぶ変形ベクトルの集合である。
【0059】
次に、一致度取得部214は、取得した非同一部位対応関係情報に基づき、DIR一致度を取得する(ステップS202)。例えば、非同一部位対応関係情報が変形ベクトルの集合である場合、DIR一致度は、原画像間対応情報が示す変形ベクトルと非同一部位対応関係情報が示す変形ベクトルとの差である。DIR一致度は、例えば、ターゲットレジストレーションエラーであってもよい。
【0060】
DIRの性能は、DIR一致度の高さが高いほどいい性能である。そのため、原画像間対応情報取得部212が原画像対応情報を取得し、DIR実行部213がDIRを実行し、DIRの実行結果に基づいて一致度取得部214がDIR一致度を取得する処理が、DIR評価処理である。
【0061】
繰り返し制御部215は、一致度取得部214が取得したDIR一致度が合格基準を満たすか否かを判定する。合格基準は、例えば、DIR一致度が所定の閾値を超えることである。合格基準が満たされない場合、繰り返し制御部215は、DIRのパラメータを所定の更新の規則(以下「更新規則」という。)にしたがって更新する。更新規則は、例えば、DIRのグリッドのサイズを小さくする処理である。繰り返し制御部215が、DIRのパラメータを更新規則にしたがって更新する処理は、DIR更新処理である。
【0062】
繰り返し制御部215は、DIR更新処理の実行後、DIR実行部213にパラメータの更新後のDIRに対するDIRを実行させ、次に、一致度取得部214にパラメータの更新後のDIRの性能を評価させる。このようにして、合格基準が満たされるまで、DIR実行部213、一致度取得部214及び繰り返し制御部215によって、DIR性能評価処理とDIR更新処理とが繰り返される処理が、DIR調整処理である。
【0063】
繰り返し制御部215は、DIR一致度が合格基準を満たす場合、DIR調整処理を終了する。
【0064】
DIR出力制御部216は、出力部25の動作を制御する。DIR出力制御部216は、出力部25の動作を制御して、合格基準を満たすDIRのプログラムを出力部25に出力させる。また、DIR出力制御部216は、出力部25の動作を制御して、一致度取得部214が取得したDIR一致度を出力部25に出力させる。
【0065】
図6は、実施形態のDIR調整支援装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ファントム画像取得部211が、撮像部1によって生成された第1ファントム画像データ及び第2ファントム画像データを取得する(ステップS301)。次に、原画像間対応情報取得部212が、原画像間対応情報を取得する(ステップS302)。次に、DIR実行部213が、第1ファントム画像に対してDIRを実行し、被変形第1ファントム画像を生成する(ステップS303)。ステップS303の処理では、例えば、ステップS101~ステップS103の処理が実行される。ステップS303次に、一致度取得部214が、原画像間対応情報とDIR座標対応関係情報とに基づき、DIR一致度を取得する(ステップS304)。ステップS304の処理では、例えば、ステップS201~ステップS202の処理が実行される。
【0066】
ステップS304の処理の次に、繰り返し制御部215が、直前の処理で取得されたDIR一致度が合格基準を満たすか否かを判定する(ステップS305)。合格基準が満たされない場合(ステップS305:NO)、繰り返し制御部215は更新規則にしたがってDIRのパラメータを更新する(ステップS306)。ステップS306の次に、ステップS303の処理が実行される。
【0067】
一方、合格基準が満たされる場合(ステップS305:YES)、DIR調整処理が終了し、DIR出力制御部216が出力部25に、DIR調整処理によって調整済みのDIRを出力させる(ステップS307)。DIR調整処理によって調整済みのDIRとは、ステップS305によって合格基準を満たすと判定されたDIRである。なお、DIR出力制御部216は、ステップS307においてDIR一致度の履歴を出力部25に出力させてもよい。
【0068】
なお、
図6に示すフローチャートにおいてDIR評価処理は、ステップS301からステップS304までの処理である。DIR出力制御部216は、ステップS304の処理が実行されるたびに、DIR一致度を出力部25に出力させてもよい。
【0069】
このように構成された実施形態のDIR調整支援システム100は、第1物理ファントムと、第1物理ファントムとは一部の形状が異なる第2物理ファントムとを用いて、評価対象であり調整対象であるDIRの性能を評価する。このため、DIR調整支援システム100を用いるユーザーである調整者は、DIRの性能を評価するために使用される2枚の画像間に共通する位置を調整者が判断し指示する労力が軽減される。そのため、DIR調整支援システム100は、DIRを調整する調整者の労力を軽減することができる。
【0070】
また、このように構成された実施形態のDIR調整支援システム100は、評価対象であり調整対象であるDIRの性能の評価結果に基づいてDIRのパラメータを更新する。そのため、DIR調整支援システム100は、DIRを調整する調整者の労力を軽減することができる。
【0071】
<第1照射位置及び第2照射位置が撮影範囲外に位置することの効果について>
もし第1照射位置及び第2照射位置が撮影範囲内に位置する場合、第1ファントム画像には第1ファントム座標系の原点(以下「第1原点」という。)の位置を示す像が写っている。そのため、第1ファントム画像に対してDIRが実行された場合、第1ファントム画像に対しては第1原点の位置を示す像に依存した変形が行われる。しかしながら、第1原点の位置を示す像は人体の組織を模した像ではない。そのため、第1ファントム画像に第1原点がある方法で評価されたDIRの性能は、第1原点が写らない画像を用いて患部を調べる実際の医療現場で使用される際のDIRの性能と略同一ではない性能になってしまう。
【0072】
一方、実施形態のDIR調整支援システム100では、第1ファントム画像に第1原点の位置を示す像が写っていない。そのため、実施形態のDIR調整支援システム100において評価されたDIRの性能は、実際の医療現場で使用される際のDIRの性能に略同一の性能である。
【0073】
<物理ファントムについて>
物理ファントム3の詳細を説明する。
図7は、実施形態の物理ファントム3の一例を示す第1の斜視図である。
図7に示す物理ファントム3は、直方体に略同一の形状である。
図7に示す物理ファントム3は、第1物理ファントムの一例である。
図7の部位P1、部位P2、部位P3、部位P4、部位P5及び部位P6は、奥行き方向(
図7のY軸方向)に長さを有する直方体である。部位P1、部位P2、部位P3、部位P4、部位P5及び部位P6は、抜き差し可能である。部位P1、部位P2、部位P3、部位P4、部位P5及び部位P6は、人体の一部を模した立体である。
【0074】
図7の物理ファントム3は、人体の部位を模した物理ファントムとしてDIRの性能の評価に用いられる。
図7の物理ファントム3は、例えば、人体の腰を模した物理ファントムとしてDIRの性能評価に用いられる。
図7の物理ファントム3が人体の腰を模す場合、
図7においてY軸(奥行方向)に平行な方向が足から頭に向かう方向であって、XZ面が腰の断面に平行な面である。
【0075】
図8は、
図7に示す実施形態の物理ファントム3の部位P1、部位P2、部位P3及び部位P5が模す骨盤の部位を示す図である。
図8に示すように、部位P1は、骨盤の右大腿骨頭を表す。部位P2は、骨盤の前立腺を表す。部位P3は、骨盤の左大腿骨頭を表す。部位P5は、骨盤の直腸を表す。部位P4及び部位P6は、
図8において軟部組織の位置である。
【0076】
図7の説明に戻る。
図7の物理ファントム3は、腰以外の部位を模した物理ファントムとしてDIRの性能評価に用いられてもよい。例えば、物理ファントム3は頭頚部を模した物理ファントムとしてDIRの性能評価に用いられてもよい。このような場合、部位P1は、下顎骨表す。このような場合、部位P2は、腫瘍(舌)を表す。このような場合、部位P3は、下顎骨を表す。このような場合、部位P5は、脊髄を表す。このような場合、部位P4及びP6は、耳下腺を表す。
【0077】
例えば、物理ファントム3は腹部を模した物理ファントムとしてDIRの性能評価に用いられてもよい。このような場合、部位P1は、肝臓を表す。このような場合、部位P2は、腫瘍(膵臓)を表す。このような場合、部位P3は、胃を表す。このような場合、部位P5は、脊髄を表す。このような場合、部位P4及びP6は、腎臓を表す。
このように部位4及び部位6は、物理ファントム3が模す人体の構造のなかで、耳下腺や腎臓等の左右1対になっている臓器を模す部位である。
【0078】
図9は、実施形態の物理ファントム3の一例を示す第2の斜視図である。より具体的には、
図9は、
図7の物理ファントム3の一部が抜き取られた物理ファントムである。
図9において、抜き取られた一部は、
図7の部位P1、部位P2、部位P3、部位P4、部位P5及び部位P6である。
【0079】
ユーザーは、抜き取った後の空間に、抜き取った部位とは一部が異なる部位を挿入可能である。例えば、ユーザーは、部位P1が抜き取られた後の空間には、部位P1と一部が異なる立体を挿入可能である。部位P1の代わりに挿入される立体は、部位P1が表す人体の一部が呼吸等の動作や病気等の要因によって変形した後の形状を表す立体である。このような、第1物理ファントムから抜き差し可能な部位の全て又は一部を抜き取った後の空間に、抜き取った部位とは一部が異なる部位が挿入された物理ファントム3は、第2物理ファントムの一例である。
【0080】
図10は、実施形態の物理ファントム3の断面の一例を示す図である。より具体的には、
図10は、
図7に示す物理ファントム3の断面A-A´の図である。物理ファントム3の部位P1及び部位P3にはXZ面の形状が手裏剣状の立体が埋め込まれている。XZ面(すなわち断面)の形状が手裏剣状の立体は、例えば、人体の骨を模した立体である。物理ファントム3の部位P2のXZ面の中央部にはXZ面の形状が三角形状の立体T1が埋め込まれている。XZ面の形状が三角形状の立体T1は、例えば、人体の前立腺を模した立体である。立体T1の材質は、例えば、アクリルである。
【0081】
物理ファントム3の部位P2は、三角形状の立体T1の周囲に、複数のドット体を有する。ドット体は、XZ面における大きさが所定の大きさよりも小さい立体である。以下、ドット体の断面(すなわちXZ面)の輪郭を表す図形をドットという。例えば、
図10では、三角形状の立体T1の左右それぞれに、4つのドット体が長方形の頂点の位置に配置されている。合計8つのドット体は、
図10において、ドット体D1、ドット体D2、ドット体D3、ドット体D4、ドット体D5、ドット体D6、ドット体D7及びドット体D8である。三角形状の立体T1の左右とは、三角形状の立体T1のXZ面における重心の位置を中心にして、X軸方向の正方向の位置と負方向の位置とを意味する。ドットの形状、大きさ、数及び位置は、DIRによる変換に与える影響が所定の影響よりも小さい形状、大きさ、数及び位置である。ドットは、大きさ、数及び位置が、DIRによる変換に与える影響が所定の影響よりも小さい大きさ、数及び位置であれば、どのような形状であってもよい。例えば、ドットの形状は、円であってもよいし、楕円であってもよいし、星形であってもよい。
【0082】
<ドット体が奏する効果について>
DIRの変換前後で三角形状の立体T1だけを所定の精度以上の精度で合わせようとするDIRでは、立体T1の周囲が他の部位に比べて大きく変形してしまうことが知られている。
図10に示す物理ファントム3は立体T1の周囲にドット体D1~D8を有するため、
図10に示す物理ファントム3を用いてDIRの性能を評価する場合に、ドット体D1~D8のDIRによる変形の変形量にも基づいてDIRの性能が評価される。そのため、立体T1の周囲に断面がドットである立体を複数備える物理ファントム3を用いたDIRの性能評価の結果は、立体T1だけを用いたDIR性能評価の結果よりも信頼性が高い結果である。
【0083】
図10は、部位P5がXZ面の形状が台形である空間V1を有することを示す。
図10において空間V1は中が真空又は空気である。空間V1内部には、例えば、線量計が設置されてもよい。このような場合、ユーザーは、物理ファントム3によって評価対象のDIRによる線量分布の変化も知ることができる。
【0084】
部位P2が挿入されている位置に、ユーザーは、三角形状の立体T1の形状又は大きさが
図10の形状又は大きさと異なる他の立体を挿入可能である。そのため、このような他の立体が挿入された物理ファントム3は、
図10の物理ファントム3とは三角形状の立体T1の部位だけが異なる物理ファントムである。このような場合、
図10に示す立体T1は変化部位の一例であり、
図10に示す物理ファントム3の各部位のうち立体T1以外の部位は被変化部位の一例である。
【0085】
図11は、実施形態の物理ファントム3の奥行方向の形状の一例を示す図である。より具体的には、
図11は、
図7に示す物理ファントム3の断面B-B´の図である。
図11は、抜き差し可能な部位に埋め込まれた立体の形状は、必ずしも奥行方向に均一でなくてもよいことを示す。例えば、
図11は、部位P5は直方体の形状であり、部位P5が有する空間V1は、Y軸方向(すなわち奥行方向)に均一な形状ではない。抜き差し可能な部位に埋め込まれた立体の形状は奥行方向に均一な形状であってもよい。
【0086】
なお、
図7の物理ファントム3が備える抜き差し可能な部位は、必ずしも複数でなくてもよく、1つであってもよい。
【0087】
(変形例)
なお、第1ファントム上画像位置情報及び第2ファントム上画像位置情報は、予め記憶部23に記憶されている必要は無い。第1ファントム上画像位置情報及び第2ファントム上画像位置情報は、例えば、ユーザーが入力部24を介して入力してもよい。ユーザーは、例えば、第1ファントム画像を見て、目視で第1ファントム画像が示す像の第1物理ファントム上の位置を判断し、判断結果をDIR調整支援装置2に入力してもよい。ユーザーは、例えば、第2ファントム画像を見て、目視で第2ファントム画像が示す像の第2物理ファントム上の位置を判断し、判断結果をDIR調整支援装置2に入力してもよい。
【0088】
このようなユーザーが目視で第1ファントム画像が示す像の第1物理ファントム上の位置と第1ファントム画像が示す像の第1物理ファントム上の位置とを判断する場合には、必ずしもレーザー光源11は必要ない。そして、このような場合、照射位置対応関係情報は必ずしも、第1照射位置と第1物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係と、第2照射位置と第2物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係とが同一であることを示す情報でなくてもよい。
【0089】
上述したように第1照射位置は、第1物理ファントム座標系の原点の位置である。そのためレーザー光源11を備えない場合、第1物理ファントム座標系の原点に対応する物理ファントム上の位置は、例えば、入力部24を介してDIR調整支援装置2にユーザーが指示してもよい。以下、第1物理ファントム座標系の原点に対応する物理ファントム上の位置を示す情報を、第1原点位置情報という。また、そのためレーザー光源11を備えない場合、第1物理ファントム座標系の原点に対応する物理ファントム上の位置は、例えば、入力部24を介してDIR調整支援装置2にユーザーが指示してもよい。以下、第2物理ファントム座標系の原点に対応する物理ファントム上の位置を示す情報を、第2原点位置情報という。
【0090】
この場合、照射位置対応関係情報は、第1原点位置情報が示す位置と第1物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係と、第2原点位置情報が示す位置と第2物理ファントムの他の解剖学的一致部位との位置関係とが同一であることを示す情報を記憶する。
【0091】
なお、DIR調整支援システム100は、必ずしも、繰り返し制御部215を備える必要は無く、繰り返し制御部215を備えなくてもよい。このような場合、DIR調整支援システム100は、評価対象のDIRの性能の評価を行うものの、評価結果に基づいてDIRのパラメータを調整することは行わない。すなわち、このようなDIR調整支援システム100は、DIR評価処理は実行するもののDIR更新処理は実行しない。
【0092】
このようなDIR更新処理を行わないDIR調整支援システム100は、パラメータの調整まで行う場合ほどに調整者の労力の軽減を行うことはできない。しかしながら、このようなDIR更新処理を行わないDIR調整支援システム100であっても、非第1物理ファントムと、第1物理ファントムとは一部の形状が異なる第2物理ファントムとを用いて、評価対象であり調整対象であるDIRの性能を評価する。そのため、DIR調整支援システム100を用いるユーザーである調整者は、DIRの性能を評価するために使用される2枚の画像間に共通する位置を調整者が判断し指示する労力が軽減される。このように、DIR更新処理を行わないDIR調整支援システム100であっても、DIRを調整する調整者の労力を軽減することができる。
【0093】
なお、DIR調整支援システム100がDIR一致度を取得する際に用いる第1物理ファントム像の輪郭と第2ファントム画像に写る第2物理ファントム像の輪郭とは、必ずしも、
図4に示すような相似の形状である必要は無い。すなわち、幾何学情報は、必ずしも、第1ファントムにおける非同一部位の形状と第2ファントムにおける非同一部位の形状とが相似の関係にある、という情報である必要はない。第1物理ファントム像は、第1ファントム画像に写る第1物理ファントムである。第2物理ファントム像は、第2ファントム画像に写る第2物理ファントムである。例えば、第1物理ファントム像の形状は、ユークリッド幾何学の公理系を満たす形状であり、第2物理ファントム像の形状は、非ユークリッド幾何学の公理系を満たす形状であって、ユークリッド幾何学の公理系を満たさない形状であってもよい。例えば、DIR一致度を取得する際に用いられる第1物理ファントム像が
図4に示す三角形であって、DIR一致度を取得する際に用いられる第2物理ファントム像の輪郭が以下に示す形状F3であってもよい。このような場合、幾何学情報は、例えば、三角形と形状F3との間の幾何学的な関係を示す情報であってもよい。
【0094】
図12は、非ユークリッド幾何学の公理系を満たす形状であって、ユークリッド幾何学の公理系を満たさない形状の一例を示す図である。
図12の形状F3は、非ユークリッド幾何学の公理系を満たす形状であって、ユークリッド幾何学の公理系を満たさない。形状F3は頂点C1、頂点C2及び頂点C3を有し、頂点C1における角度θ1と、頂点C2における角度θ2と頂点C3における角度θ3との和が180°を超える。
【0095】
なお、幾何学情報は、例えば、第1ファントムにおける非同一部位の形状と第2ファントムにおける非同一部位の形状とが拡大又は縮小の関係にある、という情報であってもよい。
【0096】
図13は、変形例の拡大又は縮小の関係にある第1ファントム画像に写る像の一例と第2ファントム画像に写る像の一例とを示す図である。
図13における像F1は第1ファントム画像に写る像である。
図13において像F1は三角形である。
図13において像F2は第2ファントム画像に写る像である。
図13において像F2は三角形である。
図13において、像F1と像F2とは、拡大又は縮小の関係にある。より具体的には、
図13において像F1の三角形の高さを縮小した図が像F2の三角形である。
【0097】
なお、第2物理ファントムは第1物理ファントムの抜き差し可能な立体が他の立体に変更されたものである必要はなく、全てが第1物理ファントムと異なる物質によって形成されたものであってもよい。
【0098】
なお、DIR一致度は、DIRの実行結果と第2画像との一致の度合を示す情報の一例である。第1ファントム画像は第1画像の一例である。第2ファントム画像は第2画像の一例である。DIR調整支援装置2は、非剛体画像レジストレーション調整支援装置の一例である。繰り返し制御部215は、DIR更新部の一例である。第1ファントム画像と第2ファントム画像とは、撮影結果の一例である。
【0099】
DIR調整支援装置2は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、DIR調整支援装置2が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。例えば、繰り返し制御部215は制御部21が備える他の機能部とは異なる情報処理装置に実装されてもよい。
【0100】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100…DIR調整支援システム、 1…撮像部、 11…レーザー光源、 12…撮像装置、 2…DIR調整支援装置、 21…制御部、 22…通信部、 23…記憶部、 24…入力部、 25…出力部、 211…ファントム画像取得部、 212…原画像間対応情報取得部、 213…DIR実行部、 214…一致度取得部、 215…繰り返し制御部、 216…DIR出力制御部、 3…物理ファントム