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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】スロットカバー
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20231115BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20231115BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20231115BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B65D85/86 400
H01L21/68 V
H05K7/14 L
B65D85/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019157610
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035840
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000226507
【氏名又は名称】株式会社ニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】居崎 枝理子
(72)【発明者】
【氏名】柴 良哉
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043774(JP,A)
【文献】特開2012-136295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86-85/90
B65D 85/00-85/48
B65D 67/00-79/02
H01L 21/68
H05K 7/14
B65D 85/575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行な複数の溝が所定ピッチで形成された第1部材と、前記第1部材に接近する方向又は前記第1部材から離隔する方向に移動可能に前記第1部材に対向するように設けられ、平行な複数の溝が前記ピッチで形成された第2部材とを有し、前記第1部材の一つの前記溝と前記第2部材の一つの前記溝に板材の外周部を挿入することにより前記板材を保持可能な板材収納枠に取り付けられるための取付棒であって、複数の孔が前記ピッチで形成される取付棒と、
前記取付棒と分離可能に設けられ、少なくとも一つの前記孔に挿入されることで前記取付棒に係合可能な孔係合部と、前記孔係合部が前記孔に挿入された前記取付棒が前記板材収納枠に取り付けられたとき、前記溝を塞ぐ位置に設けられる溝塞ぎ部と、を有する少なくとも一つのストッパーと、
を備えるスロットカバー。
【請求項2】
平行な複数の溝が所定ピッチで形成された第1部材と、前記第1部材に対向するように設けられ、平行な複数の溝が前記ピッチで形成された第2部材とを有し、前記第1部材の一つの前記溝と前記第2部材の一つの前記溝に板材の外周部を挿入することにより前記板材を保持可能な板材収納枠に取り付けられるための取付棒であって、複数の孔が前記ピッチで形成される取付棒と、
少なくとも一つの前記孔に挿入されることで前記取付棒に係合可能な孔係合部と、前記孔係合部が前記孔に挿入された前記取付棒が前記板材収納枠に取り付けられたとき、前記溝を塞ぐ位置に設けられる溝塞ぎ部と、を有する少なくとも一つのストッパーと、
他の少なくとも一つの前記孔に挿入されることで前記取付棒に係合可能な第2孔係合部と、前記第2孔係合部が前記他の少なくとも一つの孔に挿入された前記取付棒が前記板材収納枠に取り付けられたとき、前記溝を塞ぐ位置に設けられる第2溝塞ぎ部と、前記板材収納枠に係合することによって前記取付棒を前記板材収納枠に取り付ける爪部と、を有する少なくとも一つの第2ストッパーとを備えるスロットカバー。
【請求項3】
平行な複数の溝が所定ピッチで形成された第1部材と、前記第1部材に対向するように設けられ、平行な複数の溝が前記ピッチで形成された第2部材とを有し、前記第1部材の一つの前記溝と前記第2部材の一つの前記溝に板材の外周部を挿入することにより前記板材を保持可能な板材収納枠に取り付けられるための取付棒であって、複数の孔が前記ピッチで形成される取付棒と、
少なくとも一つの前記孔に挿入されることで前記取付棒に係合可能な孔係合部と、前記孔係合部が前記孔に挿入された前記取付棒が前記板材収納枠に取り付けられたとき、前記溝を塞ぐ位置に設けられる溝塞ぎ部と、を有する少なくとも一つのストッパーとを備え、
前記ストッパーは、
前記孔係合部及び前記溝塞ぎ部が接続されるベース部を備え、
前記孔係合部は、
前記ベース部から離隔する方向に延在する基部と、
前記基部に接続し、前記基部との接続部から前記ベース部に接近する方向に延在し、先
端が前記基部から離間する端部と、
を備えるスロットカバー。
【請求項4】
前記孔係合部と前記第2孔係合部は同一形状に形成され、
前記溝塞ぎ部と前記第2溝塞ぎ部は同一形状に形成される、
請求項2記載のスロットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の板材を複数保持することができる板材収納枠(ラック、カセット、マガジン又はキャリアと呼ばれる場合もある。)が知られている。このような板材収納枠は、平行な複数の溝が所定ピッチで形成された側板と、この側板に対向するように設けられ、平行な複数の溝が同じピッチで形成された側板を有する。板材の外周部を一対の溝に挿入することによって、複数の板材を保持する。
【0003】
ここで、部品が搭載されているプリント基板など、板材が高さを有するために隣接する溝に板材を挿入することができない場合や、生産運用上の理由がある場合、側板に形成されている全ての溝を使用せず、一段飛ばしや二段飛ばしで、板材を溝に挿入することがある。このとき、多数ある溝のうち間違った溝に板材を挿入することなく所望の溝に板材を挿入することが要請される。
【0004】
このような要請に応えるために特許文献1には、所定の溝を選択的に塞ぐための部品が示されている。同文献には、所定の溝を塞ぐための挿入防止片62が一定ピッチで設けられた収納位置規制部材60Aが示されている。また、所定の溝に直接差し込むことができる収納位置規制部材60Dも示されている。
【0005】
特許文献2には、意図した溝に確実にプリント基板等を挿入できるように、溝選択用板50を差し込むことができる板材収納枠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-143959号公報
【文献】特開2012-136295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、収納位置規制部材60Dを塞ぎたい溝ごとに挿入する方法は、着脱工数が多くなるため、検査工程等、毎回脱着が必要な工程には適さなかった。また、溝選択用板50や収納位置規制部材60Aを用いる方法は、溝選択用板50又は収納位置規制部材60Aごとに、一通りのパターンでしか溝を塞ぐことができなかった。このため、塞ぎたい溝のパターンが増えるごとに、新規に溝選択用板50や収納位置規制部材60Aを設計する必要があった。更に、これら部材を取り付けるために、板材収納枠側にも加工が必要な場合がある。例えば、リベットを用いる場合、板材収納枠側にリベットを止めるための加工が必要になってしまう。
【0008】
そこで本発明は、様々なパターンの溝を塞ぐことが可能になるとともに、板材収納枠と容易に着脱可能なスロットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面に係るスロットカバー(28)は、板材収納枠(10)に取り付けられる取付棒(30)を備える。ここで、板材収納枠(10)は、平行な複数の溝(20)が所定ピッチ(P)で形成された第1部材(16)と、第1部材(16)に対向するように設けられ、平行な複数の溝(20)がピッチ(P)で形成された第2部材(18)とを有し、第1部材(16)の一つの溝(20)と第2部材(18)の一つの溝(20)に板材の外周部を挿入することにより板材を保持可能である。取付棒(30)には、複数の孔(30D)がピッチ(P)で形成される。また、スロットカバー(28)は、 少なくとも一つの孔(30D)に挿入されることで取付棒(30)に係合可能な孔係合部(50B)と、孔係合部(50B)が孔(30D)に挿入された取付棒(30)が板材収納枠(10)に取り付けられたとき、溝(20)を塞ぐ位置に設けられる溝塞ぎ部(50C)と、を有する 少なくとも一つのストッパー(50)を備える。
【0010】
このようなスロットカバーによれば、溝を塞ぐためのストッパーは、取付棒に係合する。従って、塞ぎたい溝のパターンに従ってストッパーが係合された取付棒を板材収納枠に取り付けるだけで、容易に、板材収納枠の所望の溝を塞ぐことが可能になる。また、異なるパターンのストッパーが係合された取付棒を準備し、板材収納枠に取り付けるだけで、板材収納枠の異なるパターンの溝を塞ぐことが可能になる。ストッパーごと取付棒を板材収納枠から取り外すことが可能になるため、板材収納枠と容易に着脱可能なスロットカバーを提供することが可能になる。
【0011】
なお、「溝を塞ぐ位置」とは、溝内又は溝の端部に設けられる溝の開口など、板材をその溝に挿入することが出来なくなる位置を含む。
【0012】
また、スロットカバー(28)は、他の少なくとも一つの孔(30D)に挿入されることで取付棒(30)に係合可能な第2孔係合部(60B)と、第2孔係合部(60B)が他の少なくとも一つの孔(30D)に挿入された取付棒(30)が板材収納枠(10)に取り付けられたとき、溝(20)を塞ぐ位置に設けられる第2溝塞ぎ部(60C)と、板材収納枠(10)に係合することによって取付棒(30)を板材収納枠(10)に取り付ける爪部(60D)と、を有する少なくとも一つの第2ストッパー(60)を更に備えてもよい。
【0013】
このようなスロットカバーによれば、第2ストッパーの第2孔係合部によって取付棒に係合し、第2溝塞ぎ部によって溝を塞ぎ、かつ、爪部によって板材収納枠に係合することができる。このため、第2ストッパーの爪部を用いて取付棒を板材収納枠に取り付けることが可能になる。また、爪部の係合を解除することによって、取付棒を板材収納枠から取り外すことが可能になる。
【0014】
また、ストッパー(50)は、孔係合部(50B)及び溝塞ぎ部(50C)が接続されるベース部(50A)を備え、孔係合部(50B)は、ベース部(50A)から離隔する方向に延在する基部(50B1)と、基部(50B1)に接続し、基部(50B1)との接続部からベース部(50A)に接近する方向に延在し、先端が基部(50B1)から離間する端部(50B2)と、を備えてもよい。
【0015】
このようなスロットカバーによれば、端部と基部とが離隔する方向に弾性力を発生するように孔係合部を孔に係合させることによって、ストッパーを取付棒に係合させることが可能になる。
【0016】
また、孔係合部(50B)と第2孔係合部(60B)は同一形状に形成され、溝塞ぎ部(50C)と第2溝塞ぎ部(60C)は同一形状に形成されていてもよい。
【0017】
このような構成とすることにより、作業者は、同様の作業でストッパー及び第2ストッパーを取付棒に取り付けることができるので、取り扱いが容易になる。また、ストッパー及び第2ストッパーの設計作業を簡略化させ、ひいては、製造コストを削減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】板材収納枠10の斜視図
図2A】側板18を内壁面に対向する方向から見た左側面図
図2B】側板18の正面図
図3】取付棒30の上端部に第2ストッパー60が係合する様子を示す斜視図
図4A】ストッパー50の平面図
図4B】第2ストッパー60の平面図
図5A】取付棒30が側板18に取り付けられた際のストッパー50を示す断面図
図5B】取付棒30が側板18に取り付けられた際の第2ストッパー60を示す断面図
図6】第2ストッパー60及びストッパー50が係合する取付棒30の斜視図
図7A】取付棒30が側板16に取り付けられた様子を示す斜視図
図7B図7Aの要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。なお、本実施形態において、便宜的に、上方、上端、下方、下端、高低等の方向を示す用語を用いる場合があるが、相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、可変式の板材収納枠10(「ラック」、「カセット」、「マガジン」又は「キャリア」と呼ばれる場合もある。)の斜視図である。板材収納枠10は、例えば、複数のプリント配線基板(「板材」の一例)を収納することができる。板材収納枠10は、上下に配置された天板12及び底板14と、上端を天板12の一縁部に固定すると共に、下端を底板14の一縁部に固定することにより、天板12及び底板14の間に直立状態で固定された側板16(「第1部材」の一例)と、天板12及び底板14との間において、側板16と平行に配置され、側板16に接近する方向又は側板16から離隔する方向に移動可能に構成された可動する側板18(「第2部材」の一例)と、天板12を支持する支柱4を備えている。
【0021】
天板12及び底板14は、例えば、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂等を用いたプラスチック成形によって製造されており、図1に示されるように、平面形状が四角形に形成される。天板12の下面及び底板14の上面には、ガイドレールが、所定の間隔をおいて互いに平行に配設されている。このガイドレールに沿って、側板18を移動させることにより、側板16と側板18の間隔を調整することが可能になる。側板18には、図示しない固定機構が設けられている。側板16及び側板18は、例えば、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂等を用いたプラスチック成形によって製造される。
【0022】
図2Aは、側板18を内壁面に対向する方向から見た左側面図である。図2Bは、側板18の正面図である。
【0023】
これら図面に示されるように、側板18の内壁面には、複数の一定幅かつ一定深さの平行溝20(「ガイドレール」と呼ばれる場合もある。)が一定ピッチPで形成されている。また、各平行溝20の両端部には、それぞれ、向かい合う壁面20Aの間隔が広がるように傾斜し、かつ底面20Bの深さが大きくなる導入部20Cが形成されている。図2Bには、導入部20Cの底面20Bが、側板18の正面を向いた端面18Aに接続している様子が示される。このような構成を備えることにより、作業者は、容易に平行溝20に板材の外周部を挿入することが可能になる。ただし、平行溝20の上記構成は、一例に過ぎない。例えば、平行溝20は、板材を保持できればよいため、部分的に壁面20Aが欠けている部分があってもよい。また、下側の壁面20Aとこれに対向する上側の壁面20Aの形状が異なっていてもよい。平行溝20の底面20Bの深さは一定であっても、部分的に深さが異なる部分があってもよい。また、端部に形成される導入部20Cにおいて、壁面20Aの間隔は一定であってもよいし、底面20Bの深さは一定であってもよい。
【0024】
側板16は、側板18と同一構造を備えるため、説明を割愛する。従って側板16には、側板18と同一の複数の平行溝20が一定ピッチPで形成されている。
【0025】
これら側板16及び側板18の内壁面に形成された各段の平行溝20は、天板12及び底板14に対してそれぞれ同一高さとなるように設けられる。従って、同一の高さに設けられる平行溝20に板材の外周部を挿入することによって、板材収納枠10は、板材を平行に保持することが可能である。なお、本実施形態において、天板12及び底板14の間には、それぞれ5枚の側板16及び側板18が配置される。各側板16及び側板18に10の平行溝20が形成される場合、板材収納枠10は、最大で50枚の板材を挿入することが可能になる。ただし、天板12及び底板14の間には、5枚以外、例えば、各一枚の側板16及び側板18が配置されるように構成してもよい。
【0026】
以上のような構成を備える板材収納枠10に、本実施形態に係るスロットカバー28の取付棒30を取り付けることが可能である。図3は、側板18に取り付けられる取付棒30の上端部と、取付棒30に第2ストッパー60が係合する様子を示す斜視図である。なお、取付棒30は、上下対称に設けられる。このため、取付棒30の下端部の説明を割愛する。
【0027】
同図に示されるように、取付棒30は、端面部30Aと、側面部30Bと、支持部30Cを備える。
【0028】
図1に示されるように、スロットカバー28の取付棒30は、天板12及び底板14の間に直立して側板18に取り付けられる。同様に、同一構成を有する取付棒30は、天板12及び底板14の間に直立して側板16にも取り付けられる。従って、本実施形態において、取付棒30は、側板18(及び側板16)5枚分の長さを有する。すなわち、図3に示される取付棒30の端面部30A及び側面部30Bは、それぞれ側板18(及び側板16)の5枚分の長さを有する板状に形成される。側面部30Bは、端面部30Aと、例えば直角に接続して設けられる。
【0029】
同じく図3に示されるように、端面部30Aと側面部30Bの接続部には、ピッチPで形成された複数の係合孔30Dが形成される。平行溝20の総数に対応して本実施形態においては、合計100個の係合孔30DがピッチPで形成される。係合孔30Dの高さは、隣接する係合孔30Dとの間隔よりも、小さく形成される。各係合孔30Dは、それぞれ、端面部30Aから側面部30Bに亘って形成される。このため、側面部30Bの裏面及び端面部30Aの裏面は、それぞれ、係合孔30Dの内壁面に接続する。ただし、係合孔30Dの形状、大きさ、構成は、適宜変更可能である。
【0030】
取付棒30の上端及び下端には、支持部30Cが設けられる。本実施形態において支持部30Cは、側面部30Bに接続し、端面部30A及び側面部30Bと略直角をなす板状に形成される。
【0031】
取付棒30は、例えば、ステンレス鋼等の金属から形成されている。例えば、板金から係合孔30Dを打ち抜いた後、板金加工又はプレス加工により、係合孔30Dが形成されている部分を折り曲げて端面部30Aと側面部30Bを設けてもよい。
【0032】
図4A及び図4Bは、ストッパー50及び第2ストッパー60の平面図である。図5A及び図5Bは、取付棒30が側板18に取り付けられた際の、ストッパー50及び第2ストッパー60を示す断面図である。なお、便宜的に、板材収納枠10の正面を向いた方向(図4A図4B図5A及び図5Bにおける紙面下方向)を正面方向と呼び、180度反対方向(同図における紙面上方向)を背面方向と呼び、正面方向及び背面方向と直角で、側板16から側板18に向かう方向(同図における紙面右方向)を外側方向と呼び、180度反対の方向(同図における紙面左方向)を内側方向と呼ぶ場合がある。
【0033】
ストッパー50は、ベース部50Aと、孔係合部50Bと、溝塞ぎ部50Cを備える。ストッパー50のベース部50A、孔係合部50B、溝塞ぎ部50Cは、例えば、樹脂成形によって、一体的に形成することが可能である。
【0034】
ベース部50Aは、端部50A3から内側方向に延在する板状の部材である。また、端部50A3には、切欠き50A31が設けられている。切欠き50A31を設けることにより、図5Aに示されるように、ストッパー50が取付棒30に係合されたとき、端部50A3は、側面部30Bの内側方向を向いた裏面に当接し、かつ、側面部30Bの正面方向を向いた面(係合孔30Dの内壁面)に近接又は当接する。
【0035】
また、ベース部50Aは、端部50A3において、背面方向に延在する当接部50A4を有する。
【0036】
このような構成の結果、取付棒30が板材収納枠10に取り付けられたとき、ベース部50Aは取付棒30と側板18で挟まれた状態となり、ベース部50Aの表面50A1は端面部30Aの背面側を向いた面に当接し、端部50A3は側面部30Bの正面方向を向いた面及び内側方向を向いた面に当接又は近接し、裏面50A2は側板18の正面方向を向いた端面18Aに当接し、当接部50A4は側板18の外側方向を向いた面に当接する。
【0037】
孔係合部50Bは、ベース部50Aの端部50A3に接続し、ベース部50Aから離隔する方向(正面方向)に延在する板状の基部50B1と、基部50B1に接続し、基部50B1との接続部を屈曲させて、反対方向であるベース部50Aに近接する方向(背面方向)に延在する板状の端部50B2を備えている。図4Aに示されるように、端部50B2の先端は、基部50B1と離間している。従って、端部50B2の先端が基部50B1に接近するように変形すると、端部50B2先端に基部50B1から離隔する方向に作用する弾性力が発生する。
【0038】
また、端部50B2には、切欠き50B21が設けられている。切欠き50B21を設けることにより、図5Aに示されるように、ストッパー50が取付棒30に係合されたとき、端部50B2は、端面部30Aの外側方向を向いた面(係合孔30Dの内壁面)に当接し、かつ、端面部30Aの正面方向を向いた面に当接又は近接する。このとき、図4Aに示される係合前の状態における端部50B2の先端と基部50B1との距離よりも、係合状態における端部50B2の先端と基部50B1との距離の方が小さくなるように、ストッパー50、係合孔30Dの形状等は設計されている。従って、孔係合部50Bの端部50B2は、取付棒30の端面部30Aを基部50B1から離隔する内側方向に押圧する。また、上述のとおりベース部50Aの端部50A3は、側面部30Bを外側方向に押圧する。従って、ストッパー50を取付棒30に係合させることが可能になる。所望の弾性力を有するように、ストッパー50の材質、端部50B2の先端と基部50B1との距離及び形状、係合孔30Dの大きさ等を適宜設計することが可能である。
【0039】
更に、切欠き50A31及び切欠き50A21を設け、端部50A3乃至端部50B2が、側面部30B乃至端面部30Aの正面方向を向いた面に近接又は当接するようにしたから、ストッパー50が背面方向に移動することを抑制することが可能になる。更に、ベース部50Aの表面50A1は端面部30Aの背面方向を向いた面に当接するから、ストッパー50が正面方向に移動することを抑制することが可能になる。従って、ストッパー50を取付棒30に取り外れにくい形態で係合させることが可能になる。
【0040】
溝塞ぎ部50Cは、平行溝20を塞ぐ部分である。本実施形態に係る溝塞ぎ部50Cは、ベース部50Aの内側方向端部に接続し、内側方向及び背面方向に進行する斜方に延在する侵入部50C1と、平行溝20内の導入部20Cが設けられる領域において平行溝20の底面20Bに向かって延在し、底面20Bに当接するストッパー部50C2を備える。ただし溝塞ぎ部50Cは、平行溝20を塞げばよいため、様々な形状に変更することが可能である。例えば、侵入部50C1のみであっても、作業者が平行溝に板材を挿入することを抑制する効果を有する。また、ベース部50Aを内側方向に真っ直ぐ延長させて板状の溝塞ぎ部を形成し、単に、平行溝20の端部の開口を塞ぐように構成しても、作業者が平行溝に板材を挿入することを抑制する効果を有する。
【0041】
図4Bに示されるように、第2ストッパー60は、ベース部60Aと、孔係合部60Bと、溝塞ぎ部60Cを備える。これらベース部60A、孔係合部60B、溝塞ぎ部60C及びこれらに関連する構成要素については、それぞれ、ベース部50A、孔係合部50B、溝塞ぎ部50C及びこれらに関連する構成要素と同一構成を備えているため、符号を50から60に変更し、詳細な説明を省略する。従って第2ストッパー60は、ストッパー50と同様に、孔係合部60Bを利用して取付棒30の係合孔30Dに係合させることが可能である。また、取付棒30が板材収納枠10に取り付けられたとき、溝塞ぎ部60Cを利用して平行溝20を塞ぐことが可能である。
【0042】
第2ストッパー60は、更に、側板18と係合するクリップ部60D(「爪部」の一例)を備える。クリップ部60Dを側板18と係合させることにより、第2ストッパー60が係合する取付棒30を板材収納枠10に取り付けることが可能となる。
【0043】
クリップ部60Dは、当接部60A4から背面方向に延在する板状の基部60D1と、基部60D1に接続し、内側方向及び正面方向に進行する斜め方向に延在する板状のクリップ60D2とを備える。基部60D1は、ベース部60Aから離隔する方向に延在し、クリップ60D2は、基部60D1から屈曲してベース部60Aに近接する方向に延在する。同図に示されるとおりクリップ60D2の先端は、ベース部60Aと離間している。
【0044】
図5Bに示されるように側板18に係合されている状態におけるクリップ60D2先端とベース部60Aとの距離は、側板18に係合する前の状態におけるクリップ60D2先端とベース部60Aとの距離よりも大きくなるように、クリップ部60Dは設けられている。このため、側板18に係合されている状態においてクリップ60D2の先端は、正面方向に向かう弾性力を側板18に作用させることができる。一方でベース部60Aの裏面60A2は、側板18の端面18Aに当接して背面方向に押圧する。従って、クリップ部60Dを用いて側板18を把持することができる。なお、所望の弾性力を有するように、第2ストッパー60の材質、クリップ部60Dの先端とベース部60Aとの距離及び形状等を適宜設計することが可能である。例えば、係合前の状態において、クリップ60D2の先端とベース部60Aとの離間距離を小さくなるようにクリップ部60Dを設けることにより大きな弾性力を得ることが可能になる。なお、図3に示されるように、孔係合部60Bの高さ(取付棒30の延伸方向の高さ)は、ベース部60A及びクリップ部60Dの高さより小さく形成されている。また、正面方向に側板18を押圧できるように、クリップ60D2の先端は、円柱状(図5Bの断面図において円形)に形成されている。
【0045】
なお、ストッパー50のベース部50A、孔係合部50B、溝塞ぎ部50Cと、第2ストッパー60のベース部60A、孔係合部60B、溝塞ぎ部60Cの形状を同一の構成とすることにより、作業者が同様の作業でストッパー50及び第2ストッパー60を取付棒30に取り付けることができるので、取り扱いが容易になる。また、ストッパー50及び第2ストッパー60の設計作業を簡略化させることが可能になる。なお、ストッパー50の色と第2ストッパー60の色を異ならせることによって、作業者は、両者を容易に判別することが可能になる。
【0046】
なお、取付棒30を板材収納枠10に取り付けるための手段として、様々な方法を適用することが可能である。例えば、クリップ部60Dと併用して、又は、クリップ部60Dに替えて、支持部30Cを用いて板材収納枠10に取り付けるようにしてもよい。例えば、取付棒30及び板材収納枠10の取付棒30の取付位置に貫通孔を形成し、二つの貫通孔を貫通する棒材や、ボルトによって、取付棒30を板材収納枠10に取り付けてもよい。また、取付棒30を磁性材から形成し、板材収納枠10の取付部(例えば、支持部30Cが取り付けられる位置)に磁石を設けて、取り付けるようにしてもよい。
【0047】
以下、本実施形態に係るスロットカバー28の使用方法について説明する。
【0048】
まず、作業者は、取付棒30の塞ぎたい平行溝20に対応する係合孔30Dにストッパー50及び第2ストッパー60を係合させる。第2ストッパー60は、例えば、最上部に形成された係合孔30Dと、最下部に形成された係合孔30Dの2つの係合孔30Dにそれぞれ係合させることができる。あるいは、中心に形成された単一の係合孔30Dのみに第2ストッパー60を係合させ、残りの所定の係合孔30Dには、ストッパー50を係合させてもよい。図3に示されるように、孔係合部60Bが係合孔30Dに挿入されるように第2ストッパー60を取付棒30に対して相対的に正面方向に移動させることにより、係合孔30Dに第2ストッパー60を係合させることができる。孔係合部60Bを係合孔30Dに侵入されるとき、孔係合部60Bの端部60B2と基部60B1との間隔は、係合孔30Dの間隔に合わせて次第に小さくなる。その後、切欠き60B21が係合孔30Dを通過する際、わずかに切欠き60B21が基部60D1から離隔する方向に移動して、切欠き60B21と端面部30Aが当接する音がするため、作業者は、係合が完了したことを認識することができる。このとき、端部60A3の切欠き60A31は、側面部30Bに当接する。作業者は、第2ストッパー60を動かそうとしても取付棒30に対して動かないことを確認することによって、第2ストッパー60が取付棒30にしっかりと係合していることを把握することができる。
【0049】
同様に、作業者は、取付棒30の塞ぎたい平行溝20に対応する係合孔30Dにストッパー50を係合させる。
【0050】
図6は、二段飛ばし、すなわち、3つの平行溝20ごとに一枚の板材を等間隔に挿入させるため、隣接する2つの平行溝20に対応する隣接する二つの係合孔30Dにストッパー50又は第2ストッパー60を係合させ、一つの係合孔30Dを挟んで同様に二つの係合孔30Dにストッパー50又は第2ストッパー60を係合させた様子を示している。最上部及び最下部の係合孔30Dには、第2ストッパー60が係合され、その他の係合孔30Dには、ストッパー50が係合されている。
【0051】
次いで、第2ストッパー60のクリップ部60Dを用いて、取付棒30を板材収納枠10の側板16に取り付ける。ここで図5Bに示されるとおり、クリップ部60Dと溝塞ぎ部60Cの間隔は、側板18の端面18Aの幅より小さい。このため、取付棒30を背面方向に移動させても、第2ストッパー60と側板16を取り付けることが困難である。そこで作業者は、取付棒30の端面部30Aを側板18と平行にした状態で取付棒30を側板18に近付けて、クリップ部60Dと溝塞ぎ部60Cの間隙に、側板18の内側方向(側板18から側板16に向かう方向)を向いた面を挿入させる。このとき、取付棒30の上端に設けられる支持部30Cは、5枚の側板18のうち、最上部に配置される側板18の上方を向いた側面に対向し、取付棒30の下端に設けられる支持部30Cは、最下部に配置される側板18の下方を向いた側面に対向する。このように支持部30Cを用いることによって、ストッパー50及び第2ストッパー60と、平行溝20の高さ方向の位置決めを容易に行うことが可能になる。
【0052】
その後、端面部30Aが正面に来るように取付棒30を回転させる。この回転動作によって、二つの第2ストッパー60の各クリップ60D2の先端は、側板16の背面方向を向いた面に当接し、クリップ部60Dとベース部60Aとの間で側板16を把持することが可能になる。従って、第2ストッパー60が係合される取付棒30を板材収納枠10に取り付けることができる。同時に、第2ストッパー60の溝塞ぎ部60C及びストッパー50の溝塞ぎ部50Cは、対応する平行溝20の導入部20Cに侵入するため、対応する平行溝20を塞ぐことが可能になる。同様に、作業者は、ストッパー50及び第2ストッパー60が係合している取付棒30を側板18に取り付けて、側板18に形成された所定の平行溝20を塞ぐ。
【0053】
図7Aは、取付棒30が板材収納枠10の側板16に取り付けられた様子を示す斜視図である。図7Bは、図7Aにおける枠Aを拡大した要部拡大図である。なお、同図に示されるように、溝塞ぎ部50C乃至溝塞ぎ部60Cが平行溝20の導入部20Cを塞いでいるため、作業者は、塞がれた平行溝20に板材を挿入することができず、開放されている平行溝20のみに板材を挿入することが可能になる。なお、支持部30Cが側板16の上方に設けられているため、誤って第2ストッパー60が外れても、取付棒30の落下を抑制することが可能になる。補助的に支持部30Cなど他の部分を用いて取付棒30を板材収納枠10に取り付け可能な構成を採用してもよい。
【0054】
所定の平行溝20に板材を挿入した後、作業者は、取付棒30を取り外すことができる。作業者は、取り付ける際の逆の動作、すなわち、取付棒30の端面部30Aと側板18が平行となるように、取付棒30を逆回転させる。この逆回転動作により、第2ストッパー60のクリップ部60Dと側板16との係合が外れ、取付棒30を板材収納枠10から取り外すことが可能になる。ストッパー50は、取付棒30と係合しているため、板材収納枠10から取り外されても、取付棒30に係合している。このため、この取付棒30を異なる板材収納枠10に取り付けることも可能である。
【0055】
作業者は、側板18に取り付けられている取付棒30を取り外した後、異なる取付棒30に板材が収納されている平行溝20に対応する係合孔30Dを含む係合孔30Dにストッパー50乃至第2ストッパー60を係合させる。そして、板材が収納されている板材収納枠10にその取付棒30を取り付けてもよい。板材が収納されている平行溝20を塞ぐようにストッパー50乃至第2ストッパー60が係合されている取付棒30を取り付けることによって、板材収納枠10を搬送する際、板材が平行溝20から外れ板材収納枠10から落下することを抑制することが可能になる。また、開放されている平行溝20に他の種類の板材を挿入することも可能になる。
【0056】
その後作業者は、板材収納枠10を所定の場所に搬送し、取付棒30を取り外す。そして、板材の一例であるプリント配線基板を取り出して、所定の検査装置等を用いて検査する。検査された板材は、異なる板材収納枠10に挿入してもよい。ここで、例えば、赤色に着色されたストッパー50と、緑色に着色されたストッパー50が所定パターンで係合されている異なる取付棒30を予め板材収納枠10に取り付けておき、良品の板材は、緑色に着色された2つのストッパー50の間の平行溝20に挿入し、不良品の板材収納枠10は、赤色に着色された2つのストッパー50の間の平行溝20に挿入するように運用ルールを取り決めてもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るスロットカバー28によれば、様々なパターンの平行溝20を塞ぐことが可能になる。また、板材収納枠10と容易に着脱することが可能になる。
【0058】
なお、スロットカバー28は、プリント配線基板、液晶基板、半導体ウエハ等の板材を複数保持することが可能な板材収納枠10に適用することが可能である。
【0059】
また、本実施形態において、基部50B1は、板状のベース部50Aと略垂直をなす方向に延在しているが、これに限られるものではなく、例えば、板状のベース部50Aに対して鋭角をなす方向に延在するように基部50B1を設けてもよい。
【0060】
また、本実施形態において、端部50B2は、基部50B1から屈曲されるようにUターンしているが、これに限られるものではない。例えば、孔係合部50Bを屈曲構造にせず、先細のテーパ形状を有する突出構造としてもよい。このような突出構造の根元部分を係合孔30Dより大きく形成することにより、係合孔30Dに挿入した際に弾性変形して係合孔30Dと係合する孔係合部を設けることが可能になる。
【0061】
また、溝塞ぎ部50Cは、平行溝20と当接しないように形成してもよいし、一部が平行溝20と当接してもよい。溝塞ぎ部50Cは、平行溝20と当接しないように溝塞ぎ部50Cを小さく形成する場合、取付棒30を板材収納枠10から取り外す際に、溝塞ぎ部50Cが平行溝20と干渉する可能性が低いので、誤ってストッパー50が取付棒30から外れることを抑制することができる。
【0062】
本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。例えば、ストッパー50又は第2ストッパー60は、2つ以上の係合孔30Dに挿入されることで取付棒30に係合されるように構成してもよい。その他、当業者の通常の創作能力の範囲内で、実施形態における一部の構成要素を他の構成要素に置換したり、取り除いたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
P ピッチ
4 支柱
10 板材収納枠
12 天板
14 底板
16 側板
18 側板
20 平行溝
28 スロットカバー
30 取付棒
30A 端面部
30B 側面部
30C 支持部
30D 係合孔
50 ストッパー
50A ベース部
50B 孔係合部
50C 溝塞ぎ部
60 第2ストッパー
60A ベース部
60B 孔係合部
60C 溝塞ぎ部
60D 収納位置規制部材
60D クリップ部
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B