(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】排水桝
(51)【国際特許分類】
E01D 19/08 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
E01D19/08
(21)【出願番号】P 2019163404
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513302075
【氏名又は名称】株式会社大城
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅基
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162592(JP,A)
【文献】特開2015-090009(JP,A)
【文献】実開昭53-011859(JP,U)
【文献】特開2015-105486(JP,A)
【文献】特開昭53-114230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの橋梁部分に埋設されるものであって、排水が流入する上部開口と、排水パイプに接続される下側開口と、本体部とを備えており、前記本体部の上側は、長方形状の角型部として大きく形成されている一方、下側は前記角型部よりも小さな円筒状の筒状部とされ、この筒状部は、上下方向に渡って、同形状とされており、前記角型部と筒状部の中間部分は、傾斜面を備えて縮径する傾斜部とされており、前記上部開口は
前記下側開口よりも大きく形成されていると共に、
前記下側開口は、前記本体部の下方において前記排水パイプの内径よりも小さな外径を備えた円筒形状の前記筒状部とされており、この筒状部の下方から前記排水パイプが組み付けられたときに、前記筒状部において、前記排水パイプの上端縁よりも上側の位置には、前記筒状部の外周全体に沿って外方に張り出す樋部が設けられている一方、前記筒状部の一部には、前記樋部に連通する流入口が開放されていると共に、前記樋部は、前記筒状部の外径よりも大きな内径を備えた円筒状のパイプを所定の高さに切断して形成された側壁部と、円板の中央に前記筒状部の外縁に嵌め込み可能な取付孔を設けた底部とを備えていることを特徴とする排水桝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水桝、特に道路のアスファルト下面側のコンクリートの橋梁部分に埋設される排水桝に関する。
【背景技術】
【0002】
道路(特に、高速道路)のアスファルト下面側には、コンクリートの橋梁部分に雨水を集めて下方に流す排水桝が埋設されている。排水桝の下方には排水パイプが連結されており、高架の場合には、橋梁の外部に排水パイプが設置されている。FRP製の排水桝を用いた場合には、コンクリートよりも伸縮の度合いが大きいために、夏場及び冬場の温度変化の激しいときに、コンクリートの橋梁部分と排水桝との間に僅かに剥離が発生し、この剥離部分から雨水が漏水(浸入)してしまうという問題があった。
そこで、この問題を解決するための技術開発が行われている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-105486号公報
【文献】特開2019-162592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、FRP製の四角形状の本体部の外周を覆う樋部を形成しなければならず、製造に手間が掛かっていた。また、特許文献2に開示された技術も、本体を構成する部材の点数が多く、大量に製造することが困難であった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリートと排水桝の接合部分に剥離が生じて、水が漏水した場合に、これを再び戻すことが可能な排水桝であって、効率的に製造できるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための発明に係る排水桝は、コンクリートの橋梁部分に埋設されるものであって、排水が流入する上部開口と、排水パイプに接続される下側開口と、本体部とを備えており、前記上部開口は前記下部開口よりも大きく形成されていると共に、前記下部開口は、前記本体部の下方において前記排水パイプよりも小さな径を備えた円筒形状の筒状部とされており、この筒状部の下方から前記排水パイプが組み付けられたときに、前記筒状部において、前記排水パイプの上端縁よりも上側の位置には、筒状部の外周全体に沿って外方に張り出す樋部が設けられている一方、前記筒状部の一部には、前記樋部に連通する流入口が開放されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、コンクリートとの接合部分に剥離が発生して、この剥離部分から水が漏水した場合であっても、排水桝の外壁を伝わった水は、樋部を流れて流入口から排水桝の内部に戻されて、排水パイプから外部に放出される。樋部は、円筒形状の筒状部に設けられているので、上部開口に樋部を設ける場合に比べると、構成が簡易となり、製造特性に優れたものとできる。
上記発明において、前記筒状部は上下方向に沿って略同形の円形状とされている一方、前記樋部は、前記筒状部の外径よりも大きな内径を備えた円筒状のパイプを所定の高さに切断して形成された側壁部と、円板の中央に前記筒状部の外縁に嵌め込み可能な取付孔を設けた底部とを備えていることが好ましい。
上記構成によれば、側壁部と底部を筒状部の下端側から通した後に、これらを固定することで、樋部が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンクリートとの接合部分に剥離が発生して、この剥離部分から水が漏水した場合に、その水を再び排水桝に戻す構造を備えたものを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】グレーチングの平面図(A)及び正面図(B)である。
【
図5】排水桝と排水パイプを組み付けたときの側断面図である。
【
図6】排水桝と排水パイプを組み付けたときの正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
図1~
図3には、排水パイプPに固定する前の排水桝1の構造を示した。この排水桝1は、図示しない道路(例えば、高速道路、橋梁に設けられる道路、一般の国道・県道など)において、コンクリートの橋梁部分に埋設されるものである。より詳細には、(角形部4Aの上端位置までコンクリートによって埋設されるのではなく)
図1に示す仮想線X-Xがコンクリートの上端部分に一致するように埋設された後、その上部には、アスファルトの透水性部材が載置される。このため、角形部4Aの外周に樋部を張り出したとしても、コンクリートと排水桝1の外周を流れる水を流入用空間9に導入することができないようになっている。なお、仮想線X-Xは、排水桝1が埋設される場所に応じて、角形部4Aの中間からアンカーボルト孔14の位置の間で変化するが、仮想線X-Xが、この間で変化したとしても、排水桝1は所定の効果を奏することができる。
【0010】
排水桝1には、樹脂製(例えば、FRP製)の本体部4と、本体部4の上側に取り付けられるグレーチング12が設けられている。排水桝1の上方には、排水が流入する上部開口2と、円筒状の排水パイプPの内側に連結される下側開口3が設けられている。本体部4の上側は、ほぼ長方形状の角型部4Aとして大きく形成されている一方、下側は角形部4Aよりも小さな円筒状の筒状部4Cとされている。筒状部4Cは、上下方向に渡って、ほぼ同形状とされている。こうして、上部開口2は略長方形状に大きく開放しており、下側開口3は、それよりも小さく、かつ排水パイプPの内径よりも小さな外径を備えた円形状に開放している。角形部4Aと筒状部4Cの中間部分は、
図1の右側に傾斜面を備えて角型部4Aから筒状部4Cに縮径する傾斜部4Bとされている。こうして、排水桝1の内側には、上部開口2から下側開口3に連通し、雨水を流入する流入用空間9が設けられている。
【0011】
傾斜部4Bには、前後一対(合計4個)のアンカーボルト孔14が設けられている。ここには、図示しないアンカーボルトが組み付けられ、アンカーボルトが左右に突設した状態でコンクリート内に埋設されることで、排水桝1の安定性が向上する。
また、角形部4Aの下面において、左右側縁付近には、4個のボルト固定用ナット16が設けられている。ボルト固定用ナット16の上方には、角筒部4Aを貫通する装着孔が設けられている。
図4には、グレーチング12の構造を示した。グレーチング12の四隅には、ボルト孔12Aが設けられている。ボルト孔12Aとボルト固定用ナット16の位置を整合させた状態でボルト(図示せず)を挿通し、回し付けることで、ボルトがボルト固定用ナット16に固定されると共に、グレーチング12が排水桝1に組み付けられる。
【0012】
筒状部4Cの下端縁近くには、周方向に沿って均等な位置に四個の組付孔15が設けられている。一方、排水パイプPには、組付孔15に整合する位置に取付孔P1が設けられている。筒状部4Cを排水パイプPに組み付け、両孔P1,15が整合した位置で、図示しないボルトによって、両部材4C,Pを位置決め固定する。
樋部6は、筒状部4Cの外周全体に沿って、外方に張り出すように設けられている。より詳細には、樋部6は、筒状部4Cの外径よりも大きな内径を備えた円筒状のパイプを所定の高さ(長さ)に切断して形成された側壁部6Aと、円板の中央に筒状部4Cの外縁に嵌め込み可能な中央孔を設けた底部6Bとを備えている。底部6Bの中央孔の孔縁は、筒状部4Cの外壁5に対して水密状となるように接着剤で固定されている。
【0013】
こうして樋部6は、外壁5から所定の大きさだけ外方に張り出し、上方に向かって開放した状態で筒状部4Cに固定されている。このとき、底部6Bについては、径方向外側から内側(筒状部4C)に向かって下方に向かう傾斜面を設けることにより、外壁5を伝ってきた水を良好に筒状部4Cの内側に流し込める。樋部6の内側において、筒状部4Cの外周には、円周に沿って均等な4カ所の位置に樋部6から筒状部4Cの内側の流入用空間9に連通する流入口7が開放している。流入口7の下端位置は、底部6Bの上端面位置またはそれよりも下方に位置させることで、水を更に良好に筒状部4Cの内側に流し込めるようにできる。
【0014】
また、樋部6において、上方に開放する空間には、筒状の空間確保材10が設けられている。この空間確保材10は、例えば、樹脂によって製造された耐熱性高分子樹脂導水管(クラドレンP-V(クラレプラスチック株式会社製))から構成されており、樋部6の内側空間よりも僅かに小さな断面形状を備えている。空間確保材10の長さは、外壁5の全周長さとほぼ同等とされており、ちょうど樋部6全周に沿って挿入される。空間確保材10は、コンクリートが流入口7の前面を閉止することを規制すると共に、排水桝1の外壁5を伝わった水が樋部6を通過して流入口7に導かれるための流路を確保するために使用される。
こうして、樋部6の上方から外壁5を伝って流れてきた水は、樋部6の内側に入り、流入口7から流入用空間9に流れ込むようになっている。
【0015】
筒状部4Cの下方から排水パイプPが組み付けられたときに、筒状部4Cにおいて、排水パイプPの上端縁P2よりも上側の位置には、排水パイプPよりも下方に樋部6が固定されるようになっている。より詳細には、
図5及び
図6に示すように、樋部6の底部6Bと、上端縁P2との間には所定の間隔Lが設けられるようになっており、両部材4C,Pがボルトで固定されたときも、樋部6と排水パイプPの当接が回避される。なお、本実施形態では、図示の都合上、間隔Lは相当な長さとなっているが、両部材4C,Pの当接を回避し、固定作業の際に適当な作業空間を確保できれば、更に短くすることができる。
【0016】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用及び効果について説明する。
排水桝1がコンクリートの橋梁に埋設されると、コンクリートの上端位置は、角形部4Aの中間からアンカーボルト孔14の間(仮想線X-X)に位置し、その上面には透水性部材が載置される。相当の年月が経過後に、外壁5とコンクリートとの接合部分に剥離が発生して、この剥離部分に生じた溝から水が漏水することがある。そのような場合には、排水桝1の外壁5を伝わった水は、樋部6で受けられて流入口7から排水桝1の内部に戻されて排水パイプPから外部に放出される。このため、排水パイプPの外面を水が流れるという事態が回避される。
このとき、樋部6は円筒状の筒状部4Cに設けられている。筒状部4Cは、上下方向に渡って略同形状とされているので、樋部6を形成する場合に、大きな四角形状の角形部4Aに設けるよりも簡易に製造できる。また、角筒部4Aよりも筒状部4Cは小さいので、樋部6を形成する素材が少なくて済む。また、樋部6の内周溝の周径は、角筒部4Aの周径よりも小さいので、空間確保材10も少なくて済む。
【0017】
次に、上記構成の排水桝1をコンクリートの橋梁部分に埋設する際の工事方法について説明する。
排水桝1をコンクリートによって埋設する前に、樋部6の溝内に空間確保材10を設置しておく。この状態で、排水桝1の周囲にコンクリートを流し込んで固める。この工事方法によれば、排水桝1がコンクリートの橋梁部分に埋設された後にも樋部6の内側と流入口7に所定の空間が確保されるので、排水溝1の外壁5を伝わった水が樋部6と流入口7を通過して、排水桝1の内部に流れ込むことができる。
なお、上記実施形態においては、空間確保材10を樋部6の全周に配置した状態で、排水桝1をコンクリートによって埋設したが、本発明によれば、空間確保材は、流入口7の前面にのみ配置して、コンクリートが流入口7の前面を閉止することを規制すれば済む。このようにすれば、空間確保材の使用量が少なくて済むと共に、空間確保材の設置作業が容易となる。
【0018】
なお、上記実施形態においては、排水パイプPに取付孔P1を、排水桝1に組付孔15を設け、ボルトで固定する構造としたが、本発明によれば、排水パイプ及び/または排水桝にはボルトを固定するための孔を設ける必要はなく、筒状部を排水パイプに挿入したままとすることもできる。この場合には、排水パイプの上端付近の位置を固定し、この上方から筒状を挿入する構造とすることができる。また、この場合には、樋部の下方に排水パイプの上端縁が位置することになるが、排水パイプの上端縁よりも上側の位置に樋部があれば、排水パイプの上端縁が樋部の底部下面側に当接しても良い。
このように本実施形態によれば、コンクリートとの接合部分に剥離が発生して、この剥離部分から水が漏水したとしても、その水を再び排水桝1の内部に戻し、排水パイプPに戻すことが可能となった。
【符号の説明】
【0019】
1…排水桝、2…上部開口、3…下側開口、4…本体部、5…外壁、6…樋部、7…流入口、9…流水用空間、10…空間確保材