(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】浄水カートリッジ
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20231115BHJP
【FI】
C02F1/28 G
C02F1/28 D
(21)【出願番号】P 2019195345
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真二
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宣博
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042871(JP,A)
【文献】特開2000-015252(JP,A)
【文献】特開昭62-210094(JP,A)
【文献】特開2002-301311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28
B01D15/00-15/42、24/00-43/00
B01J20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、
前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置され
、
前記活性炭フィルターが、空洞部を有し、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、
前記ケーシングの上部及び底部の内部空間側に、前記空洞部の外周を囲むように前記活性炭フィルターの第1面及び第2面に環状に接触し、前記活性炭フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる接触部を有し、
前記活性炭フィルターは、前記接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容されている、浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記ケーシングの形状が、上面視において扁平形状である、請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記活性炭フィルターが
、
前記ケーシングの前記原水入口から流入した前記原水が、前記活性炭フィルターの前記空洞部に流入し、当該活性炭フィルターを径方向外方に通過して前記活性炭フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に前記浄水として流出し、前記浄水出口から外部に排出されるように構成される、請求項1
又は2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記活性炭フィルターが
、
前記ケーシングの前記原水入口から流入した前記原水が、前記活性炭フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流入し、当該活性炭フィルターを径方向内方に通過して前記活性炭フィルターの前記空洞部に前記浄水として流出し、前記浄水出口から外部に排出されるように構成される、請求項1
又は2に記載の浄水カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
ポット型浄水器は、原水を貯留するタンクと、タンクから自重により流入する原水をろ過してクロロホルム等を除去する浄水カートリッジと、ろ過された浄水を貯留するサーバー空間とを備える。ポット型浄水器は飲料用途として使用されることが多く、冷蔵庫で保管する使用者が多い。冷蔵庫ではスペースが限られていることから、ポット型浄水器の形状は、上面視の形状が角丸長方形等、扁平形状とされることが望まれる。そして、ポット型浄水器の形状を扁平形状とするのに伴い、内部に備えられる浄水カートリッジの形状も上面視の形状を扁平形状とすることが知られている。扁平形状とした浄水カートリッジとしては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、扁平形状の浄水カートリッジとして、粒状活性炭を多数充填することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1に開示されているような、粒状活性炭を充填した浄水カートリッジは、クロロホルム除去性能に優れるものの、ろ過流量が0.2L/min程度であり、例えば、サーバー空間の容量が1Lの場合で5分、2Lの場合は10分と、ろ過に時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、クロロホルム除去性能を有しつつ、ろ過流量に優れる新規な浄水カートリッジの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が上記問題を解決すべく鋭意検討したところ、原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置されるものとすることにより、上記問題を解決し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置される、浄水カートリッジ。
項2.前記ケーシングの形状が、上面視において扁平形状である、項1に記載の浄水カートリッジ。
項3.前記活性炭フィルターが、空洞部を有し、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングの上部及び底部の内部空間側に、前記空洞部の外周を囲むように前記活性炭フィルターの第1面及び第2面に環状に接触し、前記活性炭フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる接触部を有し、前記活性炭フィルターは、接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容されている、項1又は2に記載の浄水カートリッジ。
項4.前記活性炭フィルターが、空洞部を有し、前記ケーシングの前記原水入口から流入した前記原水が、前記活性炭フィルターの前記空洞部に流入し、当該活性炭フィルターを径方向外方に通過して前記活性炭フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に前記浄水として流出し、前記浄水出口から外部に排出されるように構成される、項1~3のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
項5.前記活性炭フィルターが、空洞部を有し、前記ケーシングの前記原水入口から流入した前記原水が、前記活性炭フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流入し、当該活性炭フィルターを径方向内方に通過して前記活性炭フィルターの前記空洞部に前記浄水として流出し、前記浄水出口から外部に排出されるように構成される、項1~3のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浄水カートリッジによれば、原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置されることから、クロロホルム除去性能を有しつつ、ろ過流量に優れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】in-outタイプカートリッジの外観斜視図。
【
図7】カートリッジ1が備える活性炭フィルターの外観斜視図。
【
図8】in-outタイプカートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【
図10】out-inタイプカートリッジの底面図。
【
図11】out-inタイプカートリッジの正面図。
【
図12】out-inタイプカートリッジの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(A.第1実施形態)
以下、本発明に係る浄水カートリッジの第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の外観斜視図、
図2は上面図(上面方向視の図)、
図3は底面図、
図4は正面図、
図5は側面図、
図6は
図5におけるA-A断面図、
図7はカートリッジ1が備える活性炭フィルターの外観斜視図である。以下では、説明の便宜のため、
図4の上下方向を「上下」、
図4の左右方向を左右、
図4の紙面方向を「前後」と称し、これを基準におこなう。
【0011】
(1.浄水カートリッジの概要)
カートリッジ1は、主に、原水が自重によりカートリッジ1を通過するポット型(サーバー型)の浄水器に主として用いられる。
図8に浄水器の一例を示す。同図に示すように、この浄水器100は、上部に開口S1を有する筐体101を備える。筐体101は、内側に、上部が開口したタンク102を有する。タンク102は、原水を貯留するための部分であり、上部の開口S2からタンク102に原水を注ぐことができる。タンク102の底部には開口S4が形成されており、カートリッジ1は、パッキン(図示しない)とともに開口S4の周縁部をシールするように取り付けられる。タンク102内の原水は、カートリッジ1内部に流入する。なお、開口S2は、開口S1よりも小さく形成されるため、開口S1は、開口S2と開口S3とに区切られる。
【0012】
原水は、カートリッジ1内部を通過した後、カートリッジ1の下方から浄水として流出し、タンク102の下方のサーバー空間103に貯められる。開口S3は、サーバー空間103から浄水を取り出すための取り出し口として機能する。
【0013】
本実施形態に係るカートリッジ1は、
図1~6に示すように、上面視において扁平形状であり、典型的には、上面視において矩形、オーバル形状、略角丸長方形状、略楕円形状又は略小判型形状等の外観を有する。カートリッジ1は、ケーシング2と、このケーシング2の内部に収容される略円筒状の活性炭フィルター51及び52とを備える。本実施形態のカートリッジ1は、活性炭フィルター51の空洞部61及び活性炭フィルター52の空洞部62に流入した原水が、径方向外方に活性炭フィルター51又は52を通過し、活性炭フィルター51及び52の外周面とケーシング2の側壁部20との間の空間7に流出する、in-outタイプのカートリッジである。
【0014】
活性炭フィルター51及び52は、原水をろ過して浄水とするための部材である。
図7において活性炭フィルター51を例に説明する。活性炭フィルター51は中央に上面視略円形の空洞部61を有し、軸方向の両端に第1面511と第2面513とをそれぞれ有する。活性炭フィルター51は、第1面511及び第2面513に連続し、軸方向に延びる側周部512をさらに有する。活性炭フィルター51は、第1面511が上方に、第2面513が下方に向くような向きでケーシング2に収容される。なお、活性炭フィルター52も51と同様である。また、
図1~6には、活性炭フィルターを2個備える例を示しているが、2個に限定されず、2個以上含むことができる。上限値としては特に制限されないが、例えば、5個以下が挙げられる。
【0015】
<2.ケーシング>
図2及び
図3に示すように、ケーシング2は、上部に原水入口3、底部に浄水出口4を備える。原水は原水入口3を介して、
図6に示す、活性炭フィルター51の空洞部61及び活性炭フィルター52の空洞部62に直接(他の活性炭フィルターを通過せずに)流入する。収容状態において、活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62は、原水入口3の概ね直下に位置し、原水は、原水入口3から活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62に流入する。そして、空洞部61及び62に流入した原水は、径方向外方に活性炭フィルター51又は52を通過し、浄水となって、活性炭フィルター51及び52の外周面とケーシング2の側壁部との間の空間7に流出する。そして、空間7に流出した浄水は、浄水出口4を介して、浄水カートリッジ1から流出する。
図3に示す例では、ケーシング2の底部において、浄水出口4は、底面方向視で活性炭フィルター51及び52の周方向に該活性炭フィルターの外周面より外側となるように間隔を空けて配置される複数の開口により構成されている。
【0016】
図1及び
図4に示すように、ケーシング2は、側壁部20を備え、側壁部20には、カートリッジ1がタンク102の開口S4の周縁部に取り付けられるためのフランジ202が形成される。また、フランジ202の上下方向の中心には、周方向に延びる溝が形成される。溝は、カートリッジ1がタンク102の開口S4の周縁部に取り付けられる際に、カートリッジ1と該開口S4の周縁部との隙間をシールするパッキン203が嵌められるための部分である。側壁部20のフランジ203よりも下の位置には、通気口201が形成される。通気口201は、ケーシング2の内外を連通させる。原水がカートリッジ1内に流入すると、カートリッジ1(ケーシング2)内部の空気が通気口201を介して排出されるため、カートリッジ1を通過する水の動きがよりスムーズになる。通気口201は、カートリッジ1がタンク102の開口S4の周縁部に取り付けられた状態においてサーバー空間103内に位置するように配置される。
【0017】
また、
図6に示すように、ケーシング2には、上部及び底部からケーシング2の内部空間に向かって突出する環状の突部81及び82が形成されてもよい。突部81及び82は、活性炭フィルター51及び52を収容した状態において、活性炭フィルター51及び52の第1面511及び第2面513に接触し、活性炭フィルター51及び52を軸方向に押圧し弾性変形させる接触部となる。また、ケーシング2は、上部及び底部が内部空間側の面において突部81及び82を有さず、平面状であってもよい。この場合、平面状であるケーシング2の上部の内部空間側の面、及び底部の内部空間側の面が接触部となる。このように、浄水カートリッジ1は、活性炭フィルター51及び52が接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング2内部に収容されることから、活性炭フィルターの第1面511及び第2面513と、ケーシングと、の間にパッキン等弾性部材を介さずとも活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62に流入した原水が、第1面511とケーシング2上部との隙間、及び第2面513とケーシング底部との隙間を通過するのを防止することができ、原水が活性炭フィルター51及び52を通過するのを促進することができる。該突部の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。なお、活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62に流入した原水が、第1面511とケーシング2上部との隙間、及び第2面513とケーシング底部との隙間を通過するのを防止する目的で、上記収容状態において活性炭フィルター51及び52を弾性変形させる構成以外の構成として、第1面511とケーシング2上部との隙間、及び第2面513とケーシング底部との隙間にパッキン等弾性部材を備えるものとすることもできる。
【0018】
また、ケーシング2は、内部空間において、活性炭フィルター51及び52の位置決め手段(図示しない)を備えることができる。位置決め手段としては、公知のものであればよく、例えば、活性炭フィルター51及び52の外周に沿って配置されるリブ等が挙げられる。
【0019】
ケーシング2の材料としては、プラスチックが挙げられる。当該プラスチックとしては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)樹脂がある。より具体的には、PP(ポリプロピレン)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなる群から選択される。ケーシング2の硬度は、95~100であり、後述する活性炭フィルター51及び52の硬度よりも高いものとすることができる。なお、ABS樹脂の硬度は95、PPの硬度は100、PETの硬度は97である。なお、本明細書中の硬度の測定は、測定機器はTECLOCK製硬度計GS701Gにて、JIS S 6050「プラスチック字消し」にて規定されている方法にて実施し、N=5での平均値を硬度とする。
【0020】
また、ケーシング2は、
図1~6に示すように、上面視において扁平形状であり、典型的には、上面視において矩形、オーバル形状、略角丸長方形状、略楕円形状又は略小判型形状等の外観を有するものとすることが好ましい。上面視において、長軸と短軸との比(長軸/短軸)としては、特に制限されないが、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましい。当該比の上限値としては特に制限されないが、例えば、5以下が挙げられ、3以下が好ましく挙げられる。
【0021】
<3.活性炭フィルター>
上述したように、活性炭フィルター51及び52は、空洞部61及び62に流入した原水を、側周部を径方向外方に通過させることによってろ過し、浄水とするための部材である。活性炭フィルター51及び52は、軸方向の両端に第1面511と第2面513とをそれぞれ有する。活性炭フィルター51及び52は、弾性を有する材料から形成されることが好ましい。これにより、活性炭フィルター51及び52は、ケーシング2のような、より硬度の高い物体と密着することができる。
【0022】
また、本発明の浄水カートリッジ1においては、複数の筒状の活性炭フィルター51及び52それぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置される。本発明者等の検討によれば、浄水カートリッジの形状を上面視の形状が扁平形状となるようにする場合、従来はカートリッジの内部空間を効率的に利用すべく粒状活性炭を充填することがおこなわれており、上記本願発明の構成とすることは、全くおこなわれていなかった。特に、円筒状の活性炭フィルターを備えるカートリッジとしては、円筒状の活性炭フィルターを一つ備え、ケーシング形状も活性炭フィルターの形状に合わせて上面視で円形としたものが専ら知られていた。このような状況下、本発明者等は、鋭意検討した結果、浄水カートリッジの形状を上面視の形状が扁平形状となるようにする場合において、一見、カートリッジ内部空間を効率的に利用しないとも考えられる、上記本願発明の構成(複数の筒状の活性炭フィルター51及び52それぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置されるという構成)とあえてすることで、クロロホルム除去性能を有しつつ、ろ過流量に優れることができることを見出したのである。
【0023】
また、活性炭フィルター51及び52をケーシングに収容する前の状態(すなわち、活性炭フィルター51及び52を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の第1面511と第2面513との距離L1は、ケーシングの内部空間における上部接触部と底部接触部との間の距離L3よりも長くなるようにすることができる。例えば、前述した突部81及び82を設ける場合は、上部突部と底部突部との距離がL3となる。収容状態の活性炭フィルター51及び52の第1面511及び513においては、突部81及び82が活性炭フィルター51及び52に食い込んで係合し、活性炭フィルター51及び52を軸方向に圧縮する力が活性炭フィルター51及び52に加わり、第1面511とケーシング2との間及び第2面513とケーシングとの間を遮断する。これらによって、活性炭フィルター51及び52の両端の面を介して水が通過することが抑制され、空洞部61及び62の原水と、空間7の浄水とが分離される。
【0024】
すなわち、本発明の浄水カートリッジ1は、接触部である突部81及び82が、空洞部61及び62の外周を囲むように環状に活性炭フィルター51及び52の第1面511及び513に接触し、活性炭フィルター51及び52を軸方向に押圧し弾性変形させたものとすることができる。これにより、活性炭フィルターの第1面511及び第2面513と、ケーシングと、の間にパッキン等弾性部材を介さずとも活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62に流入した原水が、第1面511とケーシング2上部との隙間、及び第2面513とケーシング底部との隙間を通過するのを防止することができ、原水が活性炭フィルター51及び52を通過するのを促進することができる。
【0025】
活性炭フィルター51及び52の長さL1の、収容状態における接触部間距離L3の圧縮率(L3/L1×100(%))は、98%以下であることが好ましく、96~98%がより好ましく、97~98%がより好ましく挙げられる。
【0026】
水の通過をさらに確実に阻止する観点からは、活性炭フィルター51及び52の第1面511、及び第2面513のうち少なくとも一方には、シール剤が塗布されていることが好ましい。また、活性炭フィルター51及び52の第1面511、及び第2面513の双方にシール剤が塗布されていることがより好ましい。本実施形態では、第1面511及び第2面513にシール剤として、ホットメルト接着剤が塗布される。ホットメルト接着剤の主成分としては、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、オレフィン、ゴム等が挙げられる。シール剤の塗布厚さとしては、10μm~1000μm、塗布量としては、1~100(mg/cm2)とすることが挙げられる。なお、シール剤は、活性炭フィルター51及び52をケーシング2に収容する前に、予め塗布し、固化させたものとすることができる。
【0027】
活性炭フィルター51及び52としては、円筒形状である活性炭成型体が挙げられる。活性炭成型体に含まれる活性炭としては、粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭が挙げられる。ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより大きくし、かつ、軸方向に押圧し弾性変形させやすくする観点から、繊維状活性炭を含むものとすることが好ましい。
【0028】
活性炭成型体に含まれる活性炭としては、ポット型浄水器に適用した場合の流量をより大きくすべく活性炭成型体の肉厚を可能な限り薄いものとした場合にも、トリハロメタン等の揮発性有機化合物の除去性能を担保しやすくする観点から、メソ細孔率が5~60%が好ましく、10~60%がより好ましく、20~60%がさらに好ましい。また、同様の観点から、当該活性炭の比表面積としては、1000~1800m2/gが好ましく、1000~1600m2/gがより好ましい。
【0029】
本発明の活性炭フィルターにおいて、活性炭成型体は、活性炭以外の他の成分を含むことができる。上記他の成分として、熱融着性短繊維が挙げられる。活性炭成型体にも熱融着性短繊維を含有させることにより、タンク102及びサーバー空間103への活性炭の脱落を防ぎ易くなる。当該熱融着性短繊維に含まれる熱融着性成分としては、融点が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。また、活性炭成型体に含み得る熱融着性短繊維として、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、活性炭フィルターの強度、とりわけ活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の活性炭フィルターの強度、をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維とすることが好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維とする場合、芯成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。上記合成樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる不織布に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分と、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分とを同種のものとすることが好ましい。ここで、同種とは、例えば、一方がポリエスエル系であれば他方もポリエスエル系であることを示す。
【0030】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、パルプが挙げられる。パルプは、活性炭成型体において、機械的強度をより向上させるのに寄与する。パルプとしては、濾水度が1~300、好ましくは10~200が挙げられる。パルプの繊維長としては、0.1~3mmが挙げられる。パルプの具体例としては、アクリル系パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アラミド系パルプ、木質パルプ、麻パルプ等が挙げられる。
【0031】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、イオン交換繊維が挙げられる。イオン交換繊維としては、弱酸型が好ましく、末端官能基がCa若しくはNaで置換されたポリアクリレート系イオン交換繊維が挙げられる。
【0032】
活性炭成型体における、活性炭の質量の割合としては、30~97質量%程度が挙げられ、50~95質量%程度が好ましく、70~95質量%がより好ましい。
【0033】
活性炭成型体の形態としては、円筒形状であれば特に制限されないが、例えば、湿式成型された活性炭成型体、又は活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体が挙げられる。
【0034】
具体的に、湿式成型された不織布の具体例として、活性炭を含むスラリーを調製し、該スラリーを、多数の吸引用小孔を有する成型用の型枠に流し込み、吸引用小孔を通じて吸引しながらろ過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥する方法(湿式成型法又はスラリー吸引法)により製造される活性炭成型体が挙げられる(以下、「スラリー吸引成型体」と略することがある。)。この場合、得られる活性炭成型体としては、例えば、活性炭が、前述したパルプと絡み合うことにより形状保持されるものが挙げられる。
【0035】
また、活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体において、乾式不織布としては、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布、及び当該不織布にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。また、湿式不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。
【0036】
活性炭成型体の質量(g)と体積(=(1/2)×π×{(外径)2-(内径)2}×高さ)から算出される密度としては、0.10~0.55(g/cm3)が挙げられ、0.15~0.5(g/cm3)が好ましく挙げられる。
【0037】
活性炭フィルターの、円筒形状における高さ(長さ)としては、10~250mmが挙げられ、20~150mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における外径としては、20~100mmが挙げられ、30~65mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における内径としては、5~90mmが挙げられ、10~55mmが好ましく挙げられる。
【0038】
(B.第2実施形態)
以下、本発明に係る浄水カートリッジのout-inタイプ(以下、第2実施形態と記載することがある。)について図面を参照しつつ説明する。
図9は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の上面図(上面方向視の図)、
図10は底面図、
図11は正面図、
図12は側面図、
図13は
図12におけるB-B断面図である。以下では、説明の便宜のため、
図11の上下方向を「上下」、
図11の左右方向を「左右」または「水平」、
図11の紙面方向を「前後」と称し、これを基準に説明を行う。
【0039】
第2実施形態に係る浄水カートリッジが第1実施形態と相違するのは、ケーシング2の構成である。より具体的には、本実施形態のカートリッジ1は、ケーシング2の側壁部と、活性炭フィルター51及び52の外周面との隙間7に流入した原水が、径方向外側から内側に向かって活性炭フィルター51及び52を通過し、活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62から浄水として流出する、out-inタイプのカートリッジである。以下では、同一構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0040】
<2.ケーシング>
図9~13に示すように、原水は原水入口3を介して、ケーシング2の側壁部と、活性炭フィルター51及び52の外周面との隙間7に直接(他の活性炭フィルターを通過せずに)流入する。ケーシング2の上面付近周縁部には、原水がカートリッジ1内に流入するための原水入口3が周方向に間隔を空けて複数形成され、全体として複数の原水入口3が環状に配置される。そして、隙間7に流入した原水は、径方向内方に活性炭フィルター51又は52を通過し、浄水となって、活性炭フィルター51の空洞部61及び活性炭フィルター52の空洞部62に流出する。そして、空洞部61及び62に流出した浄水は、浄水出口4を介して、浄水カートリッジ1から流出する。
図10に示す例では、収容状態において、活性炭フィルター51及び52の空洞部61及び62は、浄水出口4の概ね直上に位置し、浄水は、空洞部61及び62から浄水出口4を通過し流出する。また、
図9に示すように、ケーシング2の上部には、通気口201が形成される。通気口201は、ケーシング2の内外を連通させる。原水がカートリッジ1内に流入すると、カートリッジ1(ケーシング2)内部の空気が通気口201を介して排出されるため、カートリッジ1を通過する水の動きがよりスムーズになる。また、
図9等に示すように、本実施形態の浄水カートリッジ1は、ケーシング上部に上側に向かって伸びる板状のつかみ部204を備えることができる。これにより、浄水器への浄水カートリッジ1の取り外し作業をより容易におこなうことができる。
【0041】
(C.浄水カートリッジの性能)
本発明の浄水カートリッジ1は、原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置されることから、クロロホルム除去性能を有しつつ、ろ過流量に優れることができる。本発明の浄水カートリッジ1が備える好ましいクロロホルム除去性能としては、BS EN 17093:2018に準じ測定されるクロロホルム除去性能が100L以上が挙げられ、100~300Lが好ましく挙げられる。上記クロロホルム除去性能の測定方法は、具体的には、イオン交換水を水温22±3℃、pH=7.0±0.5、硬度150+30
-15mg/L(CaCO3換算)、アルカリ度100+20
-10mg/L(CaCO3換算)となるように調整した上で、クロロホルム濃度が100+20
-10μg/Lとなるように調整した試験水をカートリッジに自重ろ過にて通水し、浄水フィルター通過前後でクロロホルムの濃度をヘッドスペース-ガスクロマトグラフ法にて定量測定し、流入水に対する流出水のクロロホルムの水中濃度が初期10%以上になる点を破過点とし、該破過点までの総ろ過水量(L)を求める。
【0042】
また、本発明の浄水カートリッジ1が備える好ましいろ過流量としては、JIS S 3201:2017 6.1 C)1)に準じ測定されるろ過流量が0.5L/minが挙げられ、0.5~2.0L/minが好ましく挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0044】
<実施例1>
実施例1として、上記第2実施形態と同様の浄水カートリッジ(
図9~13に示すものと同様の浄水カートリッジ)を用意した。実施例1に係る活性炭フィルターは、繊維状活性炭(比表面積980m
2/g)と熱融着性繊維からなる乾式不織布が捲回された状態で円筒状に成型された活性炭成型体(内径25.3mm、外径38.0mm、高さ43.5mm、密度0.24g/cm
3、質量6.6g、フィルター体積27.5cm
3、繊維状活性炭の質量割合:78質量%)を、2個準備し、
図13に示すような配置とした。また、浄水カートリッジは、ケーシング形状として、上面視の長径が99mm、短径が56mmの、オーバル形状(
図9に示すような形状)とした。なお、L1は43.5mm、L3(上部突部と底部突部との距離)は42.5mmであり、L3/L1×100(%)は98%であった。また、ケーシング2の硬度は95、活性炭フィルターの硬度は86であった。
【0045】
<比較例1>
比較例1として、実施例1のケーシングを用い、当該ケーシング内部に、活性炭成型体に代えて、粒状活性炭(比表面積950m2/g、粒度60/150メッシュ)を27.5g充填し、比較例1の浄水カートリッジとした。すなわち、粒状活性炭が底部から上部に向かって堆積した状態で含まれており、原水入口3から流入した原水は、堆積した粒状活性炭の層を上から下に向かって上下方向に流れ、浄水出口4から流出する構成である。なお、比較例1の浄水カートリッジにおける粒状活性炭の充填密度は0.5g/cm3であった。すなわち、粒状活性炭の占める体積は55cm3であった。
【0046】
<浄水カートリッジの評価>
1.ろ過流量
実施例1及び比較例1の浄水カートリッジを同一のポット型浄水器(
図8に示すポット型浄水器)に取り付け、JIS S 3201:2017 6.1 C)1)に準じ、容量1.0Lの水をタンク102に注入し、それぞれ所要時間(min)を測定し、ろ過流量(L/min)を算出した。結果、実施例1のフィルター体積と比較例1の粒状活性炭の占める体積が同等であったところ、実施例1のろ過流量は1.0L/min、比較例1のろ過流量は0.2L/minであった。このことから、本発明の浄水カートリッジは、原水入口と浄水出口とを備えるケーシングの内部に、筒状の活性炭フィルターを複数備える浄水カートリッジであって、前記複数の活性炭フィルターそれぞれが、前記原水入口から流入した原水を前記浄水カートリッジの径方向に通過させるように配置されることにより、ろ過流量に優れることが明らかとなった。
【0047】
2.クロロホルム除去性能
実施例1の浄水カートリッジについて、BS EN 17093:2018に準じ、クロロホルム除去性能を測定した。具体的には、イオン交換水を水温22±3℃、pH=7.0±0.5、硬度150+30
-15mg/L(CaCO3換算)、アルカリ度100+20
-10mg/L(CaCO3換算)となるように調整した上で、クロロホルム濃度が100+20
-10μg/Lとなるように調整した試験水をカートリッジに自重ろ過にて通水し、浄水フィルター通過前後でクロロホルムの濃度をヘッドスペース-ガスクロマトグラフ法にて定量測定し、流入水に対する流出水のクロロホルムの水中濃度が初期10%以上になる点を破過点とし、該破過点までの総ろ過水量(L)を求めた。
結果、クロロホルム除去性能は137Lであり、ポット型浄水器として、実用上問題ない性能であることが確認された。
【0048】
また、実施例1の浄水カートリッジは、接触部である突部81及び82が、空洞部61及び62の外周を囲むように環状に活性炭フィルター51及び52の第1面511及び513に接触し、活性炭フィルター51及び52を軸方向に押圧し弾性変形させたものであったことから、活性炭フィルターの第1面511及び第2面513と、ケーシングと、の間にパッキン等弾性部材を介さずとも、ケーシング2の側壁部と、活性炭フィルター51及び52の外周面との隙間7に流入した原水が、第1面511とケーシング2上部との隙間、及び第2面513とケーシング底部との隙間を通過するのを防止することができ、原水が活性炭フィルター51及び52を通過するのを促進することができるものであった。
【符号の説明】
【0049】
1 浄水カートリッジ
2 ケーシング
3 原水入口
4 浄水出口
51、52 活性炭フィルター
61、62 空洞部
7 活性炭フィルター51及び52の外周面とケーシング2の側壁部との間の空間
81及び82 突部