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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】シート材の剥離装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20231115BHJP
   E04F 21/20 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E04F21/20 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020023624
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127634
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】511198081
【氏名又は名称】伊藤製作所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝則
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177798(JP,A)
【文献】特開平11-91566(JP,A)
【文献】特開2014-95213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F21/00-21/32
E04G23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基盤に接着されたシート材を巻き上げて剥がす剥離装置であって、
装置本体に、前記シート材と接触するように設けられ、前記シート材との接触部を起点に前記基盤から剥がされた前記シート材が巻き掛けられる巻上ローラーと、
該巻上ローラーを回転駆動することで、前記シート材を前記基盤から剥がすと共に、その引き剥がし反力で前記巻上ローラーを前記基盤に向けて押し付けて前記シート材上で転動させ、前記装置本体を前進させる駆動手段と、
前記巻上ローラーの両脇に配置され、基盤から剥がされた前記シート材を切断するためのカッタと、
前記基盤から剥がされて前記巻上ローラーに巻き掛けられたシート材を、前記巻上ローラーに押し付けるため、前記巻上ローラーの近傍に配置された1又は複数の保持ローラーとを備え、
前記装置本体の進行方向から見たとき、前記保持ローラーの端面が、前記カッタに対して幅方向外側に配置されている、ことを特徴とするシート材の剥離装置。
【請求項2】
前記保持ローラーが複数であり、それら保持ローラーに巻き掛けられた無端ベルトを備え、該無端ベルトと前記巻上ローラーとの間に前記シート材が挟持され、前記シート材が、前記保持ローラーによって前記無端ベルトを介して前記巻上ローラーに押し付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のシート材の剥離装置。
【請求項3】
前記巻上ローラーの両端面を回転自在に支持する一対のフレーム板と、前記保持ローラーの両端面を回転自在に支持する一対のアームとを備え、前記一対のフレーム板の幅方向内側面に、前記一対のアームが夫々収容されるアーム用凹部が形成されており、該アーム用凹部に収容された前記一対のアームの幅方向内側面と前記一対のフレーム板の幅方向内側面とが面一となっている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材の剥離装置。
【請求項4】
前記保持ローラの両端面に、前記保持ローラーの直径よりも大径のフランジが夫々取り付けられている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のシート材の剥離装置。
【請求項5】
前記保持ローラの両端面に、前記保持ローラーの直径よりも大径のフランジが夫々取り付けられ、前記一対のアームの幅方向内側面に前記フランジが収容されるフランジ用凹部が設けられ、該フランジ用凹部に収容された前記フランジの表面と前記アームの幅方向内側面とが面一となっている、ことを特徴とする請求項3に記載のシート材の剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基盤(床等)に接着されたシート材(床材シート等)を剥がすシート材の剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションやオフィスビル等の床に接着された床材シート(絨毯シート、塩ビシート等)を剥がす装置として、本発明者は、先に、図1図4に示すシート材1の剥離装置1Jを開発した(特許文献1、2参照)。図1はシート材の剥離装置1Jの側面図、図2は同装置1Jの正面図、図3は同装置1Jの後面図、図4は同装置1Jの作動状態を示す透視側面図である。
【0003】
図1図4に示すように、このシート材の剥離装置1Jは、基盤(床)2に接着されたシート材3を巻き上げて剥がす剥離装置1Jであって、装置本体4と、装置本体4にシート材3と接触するように設けられシート材3との接触部5を起点に床2から剥がされたシート材3が巻き掛けられる巻上ローラー6と、巻上ローラー6を回転駆動することでシート材3を床2から剥がすと共にその引き剥がし反力で巻上ローラー6を床2に向けて押し付けてシート材3上で転動させ装置本体1を前進させる駆動手段7と、巻上ローラー6の両脇に配置され床2から剥がされたシート材3を切断するためのカッタ8と、床2から剥がされて巻上ローラー6に巻き掛けられたシート材3を巻上ローラー6に押し付けるため巻上ローラー6の近傍に配置された複数の保持ローラー9a、9bと、これら保持ローラー9a、9bに巻き掛けられ巻上ローラー6との間にシート材3を挟持するための無端ベルト10とを備えている。
【0004】
図4に示すように、このシート材の剥離装置1Jによれば、巻上ローラー6が床2に接着されたシート材3に接触した状態で回転されるため、シート材3を巻上ローラー6で巻き上げて床2から剥がすときの反力(引き剥がし反力)によって、巻上ローラー6がシート材3に押し付けられる。この引き剥がし反力は、シート材3の床2への接着力と相関(比例)するため、接着力が大きいほど巻上ローラー6が強い力でシート材3に押し付けられる。この結果、巻上ローラー6がシート材3の接着力に応じた適切な力でシート材3に押し付けられ、巻上ローラー6のシート材3に対するスリップ(滑り)が抑制される。よって、床2との接着力が強いシート材3であっても確実に剥がすことができ、且つ装置本体4を強い力で確実に前進させることができる。また、巻上ローラー6が床2に接着されたシート材3上に接着力に応じた適切な力で押し付けられた状態で転動するので、床2に傾斜や勾配があっても装置本体4を安定して前進させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-5030号公報
【文献】特許第5395965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床2に接着されたシート材3を剥がして巻上ローラー6の長さ(幅)に切断しつつ巻き上げる様子を図5(a)、図5(b)、図5(c)に示する。図5(a)は図4の部分拡大図、図5(b)は図5(a)のb-b線断面図、図5(c)は床2から剥がされるシート材3を構成する縦糸3aおよび横糸3bの概要を示すシート材3の平面図である。
【0007】
図5(a)、図5(b)に示すように、床2から剥がされたシート材3が巻上ローラー6と無端ベルト10と間に挟持された状態で巻上ローラー6を駆動手段7によって回転させると、床2からシート材3が剥がされ、床2から上方に引き上げられた直後のシート材3が巻上ローラー6の両脇に配置されたカッタ8に押し付けられて巻上ローラー6の長さに切断され、そのシート材3が巻上ローラー6に巻き付けられる。巻上ローラー6に巻き付けられたシート材3は、保持ローラー9a、9bに押される無端ベルト10によって巻上ローラー6に押し付けられ、巻上ローラー6の回転に応じて無端ベルト10が従動周回し、保持ローラー9a、9bが従動回転することで前方に送り出される(図4参照)。
【0008】
ところで、従来のシート材の剥離装置1Jにおいては、図5(b)に示すように、装置本体4の進行方向から見たとき、保持ローラー9a(保持ローラー9bも同様)の端面9xがカッタ8の位置(上方位置)に配置されている。このカッタ8によって切断されるシート材3は、図5(c)に示すように、複数の縦糸3aと複数の横糸3bとが互いに90度交叉するように配設された構造のものが多い。かかるシート材3は、一般に、その縦糸3aがマンションやオフィスビルの廊下等の床の長手方向に沿うようにして、床2に接着されている。よって、廊下等の床2の長手方向に沿ってこの剥離装置1Jによってシート材3を剥離すると、カッタ8で切断されたシート材3の幅方向の端面3xから縦糸3aが解れることがある。
【0009】
カッタ8で切断されたシート材3の端面3xから解れた縦糸3aは、図5(b)に示すように、カッタ8の位置と保持ローラー9aの端面9xとがシート材3の巻き上げ方向に沿って一致しているため、保持ローラー9aの端面9xと保持ローラー9aを回転自在に支持する一対のアーム11aの幅方向内側面11xとの間の軸受部Jに挟まってしまう。一旦、挟まった縦糸3aは、シート材3を床2から剥離して巻き上げるに伴って、切れない限りワッシャ状に巻き太り、保持ローラー9a(9b)の従動回転を妨げる抵抗となる。保持ローラー9bについても同様である。保持ローラー9a、9bの回転抵抗が或る程度以上大きくなると、巻上ローラー6が回転しても無端ベルト10が従動周回しなくなり、床2から剥がしたシート材3を適切に送り出すことができず、シート材3が詰まってしまい、シート材3の剥離施工が困難となる。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、カッタによって切断されたシート材の端面から縦糸が解れた場合であっても、解れた縦糸が保持ローラーの端面の軸受部に絡まることを防止し、保持ローラーの回転抵抗の増大を回避することで、シート材の詰まりを防止するようにしたシート材の剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく創案された本発明に係るシート材の剥離装置は、基盤に接着されたシート材を巻き上げて剥がす剥離装置であって、装置本体に、シート材と接触するように設けられ、シート材との接触部を起点に基盤から剥がされたシート材が巻き掛けられる巻上ローラーと、巻上ローラーを回転駆動することで、シート材を基盤から剥がすと共に、その引き剥がし反力で巻上ローラーを基盤に向けて押し付けてシート材上で転動させ、装置本体を前進させる駆動手段と、巻上ローラーの両脇に配置され、基盤から剥がされたシート材を切断するためのカッタと、基盤から剥がされて巻上ローラーに巻き掛けられたシート材を、巻上ローラーに押し付けるため、巻上ローラーの近傍に配置された1又は複数の保持ローラーとを備え、装置本体の進行方向から見たとき、保持ローラーの端面が、カッタに対して幅方向外側に配置されている、ことを特徴とするシート材の剥離装置が提供される。
【0012】
本発明に係るシート材の剥離装置においては、保持ローラーが複数であり、それら保持ローラーに巻き掛けられた無端ベルトを備え、無端ベルトと巻上ローラーとの間にシート材が挟持され、シート材が、保持ローラーによって無端ベルトを介して巻上ローラーに押し付けられていてもよい。
【0013】
本発明に係るシート材の剥離装置においては、巻上ローラーの両端面を回転自在に支持する一対のフレーム板と、保持ローラーの両端面を回転自在に支持する一対のアームとを備え、一対のフレーム板の幅方向内側面に、一対のアームが夫々収容されるアーム用凹部が形成されており、アーム用凹部に収容された一対のアームの幅方向内側面と一対のフレーム板の幅方向内側面とが面一となっていてもよい。
【0014】
本発明に係るシート材の剥離装置においては、保持ローラの両端面に、保持ローラーの直径よりも大径のフランジが夫々取り付けられていてもよい。
【0015】
本発明に係るシート材の剥離装置においては、一対のアームの幅方向内側面にフランジが収容されるフランジ用凹部が設けられ、フランジ用凹部に収容されたフランジの表面とアームの幅方向内側面とが面一となっていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るシート材の剥離装置によれば、装置本体の進行方向から見たとき保持ローラーの端面がカッタに対して幅方向外側に配置されているので、カッタによって切断されたシート材の端面から縦糸が解れた場合であっても、解れた縦糸が保持ローラーの端面の軸受部に絡まることを防止できる。この結果、軸受部に絡まった縦糸による保持ローラーの回転抵抗の増大を回避でき、保持ローラーによって巻上ローラーに押し付けられて送り出されるシート材の詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】シート材の剥離装置の側面図である。
図2】同装置の正面図である。
図3】同装置の後面図である。
図4】同装置の作動状態を示す透視側面図である。
図5】従来例に係るシート材の剥離装置を示す説明図であり、図5(a)は図4の部分拡大図、図5(b)は図5(a)のb-b線断面図、図5(c)は床から剥がされるシート材を構成する縦糸および横糸の概要を示すシート材の平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るシート材の剥離装置を示す説明図であり、図6(a)は要部の部分拡大図、図6(b)は図6(a)のb-b線断面図、図6(c)は床から剥がされるシート材を構成する縦糸および横糸の概要を示すシート材の平面図である。
図7】本発明の変形実施形態に係るシート材の剥離装置を示す説明図であり、図7(a)は要部の部分拡大図、図7(b)は図7(a)のb-b線断面図、図7(c)は床から剥がされるシート材を構成する縦糸および横糸の概要を示すシート材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(シート材の剥離装置1)
本発明の一実施形態に係るシート材の剥離装置1の基本的な構成は、図1図4に示す従来のシート材の剥離装置1Jと略同様である。よって、本実施形態に係るシート材の剥離装置1の概要を図1図4を用いて説明する。図1図4に示すように、本実施形態に係るシート材の剥離装置1は、基盤(床2等)に接着されたシート材3(床材シート等)を巻き上げて剥がすものであって、装置本体4と、装置本体4にシート材3と接触するように設けられた巻上ローラー6と、巻上ローラー6を回転駆動する駆動手段7とを備えている。
【0020】
(装置本体4)
図1図3に示すように、装置本体4は、車幅方向(巻上ローラー6の軸方向)に間隔が隔てられた一対のフレーム板12を備えている。左右のフレーム板12の後部には、上下二段に横パイプ13が連結され、横パイプ13の後部には、縦パイプ14が斜め上方に延設されている。左右の縦パイプ14の上部は、ハンドルパイプ15で連結されている。ハンドルパイプ15は、床2からシート材3を剥がす作業を行う際、作業員によって把持される。
【0021】
装置本体4を構成するフレーム板12や各パイプ13、14、15等の材質は、本実施形態では、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属を用いているが、強度的に問題がなければプラスチック等の樹脂を用いて軽量化を図ってもよい。図1図3に示すように、左右の縦パイプ14の間には、巻上ローラー6を回転駆動する駆動手段7を制御するコントロールボックス16が設けられている。
【0022】
(巻上ローラー6)
図1図4に示すように、フレーム板12同士の間には、巻上ローラー6が配設されている。巻上ローラー6は、装置本体4を床2の上にシート材3を剥がすために載置したとき、巻上ローラー6の下端がシート材3と接触するように、フレーム板12の下部に取り付けられている。
【0023】
図4図6(a)に示すように、巻上ローラー6は、シート材3との接触部5を起点に床2から剥がされたシート材3が巻き掛けられる円柱状のローラー本体61と、ローラー本体61の左右の端面の中心から突出して設けられたシャフト62とを有する。ローラー本体61の材質は、本実施形態では、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属を用いているが、強度的に問題がなければプラスチック等の樹脂を用いてもよい。ローラー本体61の表面には、例えばローレット加工等による凹凸部や溝部や複数の棘状部(針状部)を形成し、巻き上げられるシート材3の滑止部としてもよい。また、ローラー本体61に、その表面を覆うようにして、ゴムや樹脂等から成る滑止層を設けてもよい。
【0024】
図6(b)に示すように、巻上ローラー6のシャフト62は、左右のフレーム板12に貫通形成された孔に貫通されて軸受17を介して回転自在に支持されており、シャフト62の先端には、従動スプロケット18が取り付けられている。従動スプロケット18には、無端チェーン19が巻き掛けられている。従動スプロケット18及び無端チェーン19は、駆動手段7の一部を成すものであり、フレーム板12の外側面に取り付けられたカバー20によって覆われている。カバー20によって、無端チェーン19や従動スプロケット18に異物が巻き込まれることが防止される。
【0025】
(駆動手段7)
巻上ローラー6は図1及び図2に示す駆動手段7によって回転駆動される。駆動手段7は、巻上ローラー6を回転駆動することで、図4及び図6(a)に示すように巻上ローラー6に巻き掛けられたシート材3を巻き上げて床2から剥がすと共に、その引き剥がし反力で巻上ローラー6を床2に向けて押し付けてシート材3上で転動させ、装置本体4を前進させるものである。
【0026】
図1図2に示すように、駆動手段7は、左右のフレーム12板の間の上方に配置されたモーター21と、モーター21の回転を減速するギヤ機構が収容されたギヤボックス22と、ギヤボックス22の出力軸として左右から水平に突き出されフレーム板12に貫通形成された孔に貫通された水平シャフト23と、水平シャフト23に取り付けられた駆動スプロケット24と、巻上ローラー6のシャフト62に取り付けられた従動スプロケット18と、駆動スプロケット24と従動スプロケット18とに巻き掛けられた無端チェーン19とを備えている。
【0027】
駆動スプロケット24、従動スプロケット18及び無端チェーン19は、フレーム板12の外側面に取り付けられたカバー20によって覆われている。また、水平シャフト23は、カバーパイプ25によって覆われている。カバーパイプ25は、ギヤボックス22とフレーム板12とを繋いで設けられ、ギヤボックス22をフレーム板12に支持する機能も発揮する。ギヤボックス22の上部には駆動用のモーター21が取り付けられている。なお、駆動スプロケット24、従動スプロケット18及び無端チェーン19を用いることなく、ギヤトレインによって巻上ローラー6をモーター21で回転駆動してもよい。
【0028】
(カッタ8)
図2図4に示すように、左右のフレーム板12には、巻上ローラー6の両脇に位置して、床2から剥がされたシート材3を、巻上ローラー6の長さに合わせて切断するカッタ8が取り付けられている。図6(b)に示すように、カッタ8は、巻上ローラー6のローラー本体61の端面から僅かに(例えば0.5mm程度)離れて配設されており、その下端に形成された刃部8aが巻上ローラー6によって巻き上げられたシート材3を突き抜けるように、フレーム板12にスペーサー26を介して六角穴付きボルトによって取り付けられている。
【0029】
図6(a)に示すように、カッタ8は、巻上ローラー6に巻き掛けられて床2から巻き上げられるシート材3を、床2から上方に引き剥がされた直後に切断するように、なるべく床2に近い位置に取り付けられている。但し、カッタ8の下端(刃部8a)は、巻上ローラー6の下端よりも上方(1mm程度上方)に位置している。これにより、装置本体4を床2(シート材3)に載置した際、巻上ローラー6が床2に接してもカッタ8は床2から上方に離間することになり、床2によるカッタ8の刃部8aの損傷及びカッタ8による床2の損傷を回避できる。
【0030】
(保持ローラー9a、9b)
図4図6(a)に示すように、巻上ローラー6の近傍には、床2から剥がされて巻上ローラー6に巻き掛けられたシート材3を、巻上ローラー3に押し付けて滑りを抑えて保持するため、保持ローラー9a、9bが配置されている。保持ローラー9a、9bは、床2から剥がされて巻き上げられたシート材3の上流側となる巻上ローラー6の回転中心の後方に配置された第1保持ローラー9aと、下流側となる前方に配置された第2保持ローラー9bとからなる。第1保持ローラー9aは、その両端面を挟むように配置された一対の第1アーム11aに回転自在に支持されており、第2保持ローラー9bは、その両端面を挟むように配置された一対の第2アーム11bに回転自在に支持されている。
【0031】
図4図6(a)に示すように、第1アーム11aは、略クランク状に形成されており、その屈曲部がピン27によって装置本体4のフレーム板12に回動自在に取り付けられている。第1アーム11aの端部にはピン28が設けられており、ピン28には第1引張バネ29の一端が係止されている。第1引張バネ29の他端は、フレーム板12に取り付けられたピン30に係止されている。この構成によれば、第1引張バネ29の引張力によってクランク状の第1アーム11aがピン27を中心に時計回りに回動され、第1保持ローラー9aが巻上ローラー6に向けて付勢される。なお、図4図6(a)において、ハッチングの入ったシャフトは装置本体4に固定されており、白抜きのシャフトは装置本体4からフローティング状態となっている。
【0032】
図4図6(a)に示すように、第2アーム11bは、L字状に形成されており、その屈曲部がピン27によって装置本体4のフレーム板12に回動自在に取り付けられている。第2アーム11bの端部にはピン31が設けられており、ピン31には第2引張バネ32の一端が係止されている。第2引張バネ32の他端は、フレーム板12に取り付けられたピン33に係止されている。この構成によれば、第2引張バネ32の引張力によってL字状の第2アーム11bがピン27を中心に反時計回りに回動され、第2保持ローラー9bが巻上ローラー6に向けて付勢される。
【0033】
(ストッパ機構34、35)
図4に示すように、フレーム板12には、第1保持ローラー9aを巻上ローラー6に対して離間した位置に保持するため、第1ストッパ機構34が設けられている。第1ストッパ機構34は、フレーム板12に回転自在に取り付けられた偏芯カム34aと、偏芯カム34aに固定された第1操作レバー34bとを備える。偏芯カムは34a、円板と円板の中心から偏芯して設けられた支持軸とを有し、支持軸がフレーム板12に回動自在に支持されている。
【0034】
第1操作レバー34bを図4に実線で示すように下方回動位置とすると、偏芯カム34aが第1アーム11aから離間するため、第1引張バネ29の引張力による第1アーム11aのピン27を中心とした時計回りの回動が許容され、第1保持ローラー9aが巻上ローラー6に押し付けられる方向に移動付勢される(クランプ状態)。第1操作レバー34bを支持軸を中心として上方へ回動させ、図4に仮想線で示す上方回動位置とすると、偏芯カム34aが第1アーム11aに接した状態となり、第1アーム11aの時計回りの回動が規制されるため、第1保持ローラー9aが巻上ローラー6から離間した位置に保持される(クランプ解除状態)。
【0035】
また、図4に示すように、フレーム板12には、第2保持ローラー9bを巻上ローラー6に対して離間した位置に保持するため、第2ストッパ機構35が設けられている。第2ストッパ機構35は、フレーム板12に回転自在に取り付けられた偏芯カム35aと、偏芯カム35aに固定された第2操作レバー35bとを備える。偏芯カム35aは、円板と円板の中心から偏芯して設けられた支持軸とを有し、支持軸がフレーム板12に回動自在に支持されている。
【0036】
第2操作レバー35bを図4に実線で示すように上方回動位置とすると、偏芯カム35aが第2アーム11bから離間するため、第2引張バネ32の引張力による第2アーム11bのピン27を中心とした反時計回りの回動が許容され、第2保持ローラー9bが巻上ローラー6に押し付けられる方向に移動付勢される(クランプ状態)。第2操作レバー35bを支持軸を中心として下方へ回動させ、図4に仮想線で示す下方回動位置とすると、偏芯カム35aが第2アーム11bに接した状態となり、第2アーム11bの反時計回りの回動が規制されるため、第2保持ローラー9bが巻上ローラー6から離間した位置に保持される(クランプ解除状態)。
【0037】
(無端ベルト10)
図4図6(a)に示すように、第1保持ローラー9aと第2保持ローラー9bとには、それらを繋ぐようにして無端ベルト10が巻き掛けられている。無端ベルト10の材質にはゴム、樹脂、布等やそれらを組み合わせたものが用いられる。図6(b)に示すように、無端ベルト10は、第1保持ローラー9a(第2保持ローラー9b)のローラー本体91a(91b)の長さ(幅)に合わせた幅を有し、巻上ローラー6のローラー本体61との間に床材シート3を挟み込む。図6(a)に示すように、無端ベルト10の内方には、テンションローラー36が配置されている。テンションローラー36は、図示しないバネによって無端ベルト10の外方(上方)に向けて引っ張られており、無端ベルト10の弛みを防止する。
【0038】
図6(a)、図6(b)に示すように、無端ベルト10は、第1及び第2保持ローラー9a、9bによって巻上ローラー6に向けて押し付けられ、駆動手段7によって回転駆動される巻上ローラー6の回転に応じて従動して周回する。すなわち、第1及び第2保持ローラー9a、9bが従動回転し、無端ベルト10が従動周回する。この際、一対の第1アーム11aの内面、一対の第2アーム11bの内面は、従動周回する無端ベルト10の両端に接し、従動周回する無端ベルト10が幅方向にズレることを抑えるガイドとなる。なお、無端ベルト10の内周面に周方向に沿って凹凸部を形成すると共に、第1保持ローラー9a、第2保持ローラー9b及びテンションローラー36の外周面に周方向に沿って凸凹部を形成し、凹凸部と凸凹部とを係合させることで無端ベルト10が幅方向にズレることを抑えてもよい。
【0039】
(スクレープ板37)
図1図4に示すように、このシート材3の剥離装置1には、床2から剥がされたシート材3と床2との間の剥離部に差し込まれるスクレープ板37が備えられている。スクレープ板37は、巻上ローラー6のローラー本体61の長さと同等の幅を有し、バネ鋼等のしなる材質(可撓性材質)から成り、装置本体4を床2の上に載置したとき、先端が床2に押し付けられるように、装置本体4に取り付けられている。図4に示すように、スクレープ板37は、左右のフレーム板12の間に配置された保持部材38に取り付けられており、保持部材38が、図1に示すフレーム板12に形成された調整用窓部39に、移動可能かつ移動後の位置が固定可能に取り付けられている。
【0040】
図4に示すように、スクレープ板37は、角度調節機構40によって床2に対する角度が調節できるようになっている。角度調節機構40は、スクレープ板37を支持する保持部材38の後部にボルト等で取り付けられた第1リンク40aと、第1リンク40aにピンで連結された第2リンク40bと、第2リンク40bにピンで連結された第3リンク40cとを備えている。第3リンク40cの端部は、左右の縦パイプ14同士を連結する連結板41に取り付けられたブラケットに、ピンで支持されている。
【0041】
図4に示す第1~第3リンク40a、40b、40cを夫々ピン回りに適宜回動させ、ネジを用いた第1固定機構42によって第2リンク40bの姿勢を固定し、同様の第2固定機構43によって第3リンク40cの姿勢を固定することで、スクレープ板37の床2に対する角度を変更して固定できると共に、スクレープ板37の先端の床2に対する位置(前後、上下の位置)を変更して固定できる。スクレープ板37の幅方向両端部を上方に直角に折り曲げ、上方に折り曲げた部分をカッタ8としてもよい。なお、図4において、ハッチングの入ったシャフトは装置本体4に固定されており、白抜きのシャフトは装置本体4からフローティング状態となっている。
【0042】
(保持ローラー9a、9bの端面とカッタ8との位置関係)
ところで、図6(a)のb-b線断面図である図6(b)に示すように、装置本体4の進行方向から見たとき、第1保持ローラー9aの長さ(幅)は、巻上ローラー6の長さ(幅)よりも長く、第1保持ローラー9aの端面9xは、巻上ローラー6の両脇に配置されたカッタ8に対して、幅方向外側に配置されている。同様に、図6(a)に示す第2保持ローラー9bの長さも、巻上ローラー6の長さよりも長く、第2保持ローラー9bの端面は、巻上ローラー6の両脇に配置されたカッタ8に対して、幅方向外側に配置されている。これにより、カッタ8で切断されたシート材3の幅方向の端面3xの位置は、図5(b)に示す従来例のように第1及び第2保持ローラー9a、9bの端面9xではなく、図6(b)に示すように第1及び第2保持ローラー9a、9bの端面9xから幅方向内方にズレた位置となる。
【0043】
この点を詳述すると、図6(b)に示すように、第1保持ローラー9aは、巻上ローラー6のローラー本体61よりも長い円柱状のローラー本体91aと、ローラー本体91aの左右の端面の中心から突出して設けられたシャフト92aとを有し、シャフト92aが第1アーム11aに軸受44を介して回転自在に支持されている。同様に、第2保持ローラー9bも、巻上ローラー6のローラー本体61よりも長い円柱状のローラー本体91bと、ローラー本体91bの左右の端面の中心から突出して設けられたシャフト92bとを有し、シャフト92bが第2アーム11bに軸受を介して回転自在に支持されている。第1及び第2保持ローラー9a、9bの各ローラー本体91a、92bの端面9xは、装置本体4を進行方向から見たとき、巻上ローラー6のローラー本体61の両脇に配置されたカッタ8に対して、幅方向外側に配置されている。これにより、カッタ8で切断されたシート材3の幅方向の端面3xの位置は、第1及び第2保持ローラー9a、9bのローラー本体91a、91bの端面9xから幅方向内方にズレた位置となる。
【0044】
(アーム用凹部45)
図6(b)に示すように、巻上ローラー6を挟むように配置され巻上ローラー6の両端面を回転自在に支持する一対のフレーム板12の幅方向内側面には、第1保持ローラー9aの両端面を回転自在に支持する第1アーム11aが収容されるアーム用凹部45が形成されている。このアーム用凹部45は、第1保持ローラー9aが巻上ローラー6に押し付けられる方向に移動されるクランプ状態と巻上ローラー6から離間した位置に保持されるクランプ解除状態とに切り換えられる際、第1アーム11aがピン27を中心として切り換えに必要な範囲で回動可能となるように、フレーム板12の幅方向内側面に形成されている。アーム用凹部45に収容された第1アーム11aの幅方向内側面11xは、フレーム板12の幅方向内側面12x(アーム用凹部45が形成されてない部分の内側面12x)と面一となっている。面一となっている一対の第1アーム11aの幅方向内側面11xと一対のフレーム板12の幅方向内側面12xとは、従動周回する無端ベルト10の両端に接し、従動周回する無端ベルト10が幅方向にズレることを抑えるガイドとなる。
【0045】
同様に、図6(a)に示す第2保持ローラー9bの両端面を回転自在に支持する第2アーム11bは、フレーム板12の幅方向内側面12xに形成されたアーム用凹部(図示省略)に収容されている。このアーム用凹部は、第2保持ローラー9bが巻上ローラー6に押し付けられる方向に移動されるクランプ状態と巻上ローラー6から離間した位置に保持されるクランプ解除状態とに切り換えられる際、第2アーム11bがピン27を中心として切り換えに必要な範囲で回動可能となるように、フレーム板12の幅方向内側面12xに形成されている。アーム用凹部に収容された第2アーム11bの幅方向内側面(図示省略)は、フレーム板12の幅方向内側面12xと面一となっている。面一となっている一対の第2アーム11bの幅方向内側面と一対のフレーム板12の幅方向内側面12xとは、従動周回する無端ベルト10の両端10xに接し、従動周回する無端ベルト10が幅方向にズレることを抑えるガイドとなる。
【0046】
(シート材3の床2からの剥離)
このシート材3の剥離装置1によれば、次のようにして、床2からシート材3を剥離できる。
【0047】
まず、図4に示す第1ストッパ機構34の第1操作レバー34bを仮想線で示す上方回動位置とすると共に、第2ストッパ機構35の第2操作レバー35bを仮想線で示す下方回動位置とし、第1保持ローラー9aおよび第2保持ローラー9bに巻き掛けられた無端ベルト10が、巻上ローラー6から離間したクランプ解除状態としておく。床2に接着されているシート材3(床材シート)の端部を既存の手法(スクレーパーを用いた手作業等)により所定距離だけ剥離する。所定距離とは、シート材3の床2との剥離部から巻上ローラー6の周方向に沿って第1保持ローラー9aに至るまでの長さ(十数センチ程度)以上の距離である。剥離したシート材3の端部を第1保持ローラ7aの部分の無端ベルト10と巻上ローラー6との間に差し入れ、巻上ローラー6を駆動手段7によって回転させる。
【0048】
図4に示すように、差し入れられたシート材3は、巻上ローラー6の回転に伴って、無端ベルト10と巻上ローラー6との間を通って前方(図4の左方)に送られる。シート材3が第2保持ローラー9bを通過したなら、巻上ローラー6の回転を一旦停止し、第1操作レバー34bを実線で示す下方回動位置とし、第2操作レバー35bを実線で示す上方回動位置とし、第1保持ローラー9aおよび第2保持ローラー9bに巻き掛けられた無端ベルト10が、巻上ローラー6に押し付けられるクランプ状態とする。これにより、巻上ローラー6に巻き掛けられたシート材3は、無端ベルト10によって巻上ローラー6との間に挟持(クランプ)される。
【0049】
その後、巻上ローラー6を駆動手段7で回転することで、図4及び図6(a)に示すように、シート材3が巻上ローラー6によって巻き上げられて床2から剥がされ、その引き剥がし反力によって巻上ローラー6が床2から剥がされる前のシート材3に押し付けられてそのシート材3の上を転動し、装置本体4が前進する。床2から引き剥がされたシート材3は、巻上ローラー6の両脇に配設されたカッタ8によって巻上ローラー6の幅(長さ)に合わせて切断され、巻上ローラー6に巻き上げられる。
【0050】
巻上ローラー6が床2に接着されたシート材3に接触した状態で回転されるため、シート材3を床2から剥がすときの反力(引き剥がし反力)によって、巻上ローラー6がシート材3に押し付けられる。この引き剥がし反力は、シート材3の床2への接着力と相関(正の相関、比例)するため、接着力が大きいほど巻上ローラー6が強い力でシート材3に押し付けられる。
【0051】
この結果、巻上ローラー6がシート材3の接着力に応じた適切な力でシート材3に押し付けられることになり、巻上ローラー6のシート材3に対するスリップ(滑り)が抑制される。よって、床2との接着力が強いシート材3であっても確実に剥がすことができ、且つ装置本体4を強い力で確実に前進させることができる。また、作業員が力を加えなくても、装置本体4が前進し、シート材3が剥離されるため、作業負担が小さい。また、巻上ローラー6が床2に接着されたシート材3の上に接着力に応じた適切な力で押し付けられた状態で転動するので、床2に装置本体4の車幅方向の傾斜や前後方向の勾配や凹凸等があっても、装置本体4を安定して前進させることができる。
【0052】
(作用・効果)
図6(a)、図6(b)、図6(c)に示すように、本実施形態にシート材3の剥離装置1によれば、装置本体4の進行方向から見たとき第1保持ローラー9aの端面9xがカッタ8に対してシート材3の巻き上げ方向に沿って幅方向外側に配置されているので、カッタ8によって切断されたシート材3の端面3xから縦糸3aが解れた場合であっても、解れた縦糸3aが第1保持ローラー9aの端面9xの軸受部Jに絡まることを防止できる。第2保持ローラー9bについても同様である。この結果、軸受部Jに絡まった縦糸3aによる第1及び第2保持ローラー9a、9bの回転抵抗の増大を回避でき、第1及び第2保持ローラー9a、9bによって巻上ローラー6に押し付けられて送り出されるシート材3の詰まりを防止できる。
【0053】
これに対し、図5(b)に示すように、従来のシート材3の剥離装置1Jにおいては、カッタ8と保持ローラー9aの端面9xとがシート材3の巻き上げ方向に沿って一致しているため、カッタ8で切断されたシート材3の端面3xから解れた縦糸3aが、第1保持ローラー9aの端面9xと第1アーム11aの内側面との間の軸受部Jに挟まってしまう。一旦、挟まった縦糸3aは、シート材3を床2から剥離して巻き上げるに伴って、切れない限りワッシャ状に巻き太り、第1保持ローラー9aの従動回転を妨げる抵抗となる。第2保持ローラー9bについても同様である。第1及び第2保持ローラー9a、9bの回転抵抗が或る程度以上大きくなると、巻上ローラー6が回転しても無端ベルト3が従動周回しなくなり、床2から剥がしたシート材3を適切に送り出すことができず、シート材3が詰まってしまい、シート材3の剥離施工が困難となる。
【0054】
他方、図6(b)に示す本実施形態にシート材3の剥離装置1によれば、装置本体4の進行方向から見て、第1及び第2保持ローラー9a、9bの端面9xがカッタ8に対して幅方向外側に配置されているので、カッタ8によって切断されたシート材3の端面3xから縦糸3aが解れた場合であっても、解れた縦糸3aが第1及び第2保持ローラー9a、9bの端面の軸受部Jに絡まることを防止でき、第1及び第2保持ローラー9a、9bの回転抵抗の増大を防止できる。すなわち、カッタ8によって切断されたシート材3の端面3xから解れた縦糸3aが第1及び第2保持ローラー9a、9bの端面9xの軸受部Jに絡んで回転抵抗が増大することはなく、床2から剥がしたシート材3を巻上ローラー6と無端ベルト10との間に挟んで適切に送り出すことができ、シート材3の詰まりを防止できる。この結果、シート材3の剥離施工が困難となる事態を回避止でき、作業効率が向上する。
【0055】
また、図6(b)示すように、無端ベルト10の幅が一対の第1アーム11aの幅方向内側面11x同士の間隔に合わせた幅であり、一対のフレーム板12の幅方向内側面12xとフレーム板12のアーム用凹部45に収容された一対の第1アーム11aの幅方向内側面11xとが面一となっている。これにより、従動周回する無端ベルト10の両端10xが、面一となっている一対の第1アーム11aの幅方向内側面11xと一対のフレーム板12の幅方向内側面12x(第1アーム11aを挟んだ紙面表裏側におけるフレーム板12の幅方向内側面12x)に接し、従動周回する無端ベルト10が幅方向にズレることが押えられる。すなわち、第1アーム11aの幅方向内側面11xおよびフレーム板12の幅方向内側面12xが、従動周回する無端ベルト10のガイドとなる。同様に、第2アーム11bの幅方向内側面11xおよびフレーム板12の幅方向内側面12xが、従動周回する無端ベルト10のガイドとなる。
【0056】
(変形実施形態)
本発明の変形実施形態を図7(a)、図7(b)、図7(c)に示す。この変形実施形態に係るシート材3の剥離装置1aは、上述した前実施形態に係るシート材3の剥離装置1と基本的な構成は同様であるので、同一の部品については同一の符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
【0057】
図7(b)に示すように、この変形実施形態に係るシート材3の剥離装置1aにおいては、第1保持ローラ7aの両端面に、第1保持ローラー9aのローラー本体91aの直径よりも大径のフランジ46が夫々取り付けられ、一対の第1アーム11aの幅方向内側面11xにフランジ46が収容されるフランジ用凹部47が設けられ、フランジ用凹部47に収容されたフランジ46の表面46xと第1アーム11aの幅方向内側面11xとが面一となっている。
【0058】
また、図示はしないが、第2保持ローラー9bについても同様の構成となっている。すなわち、第2保持ローラ9bの両端面に、第2保持ローラー9bのローラー本体91bの直径よりも大径のフランジが夫々取り付けられ、一対の第2アーム11bの幅方向内側面にフランジが収容されるフランジ用凹部が設けられ、フランジ用凹部に収容されたフランジの表面と第2アーム11bの幅方向内側面とが面一となっている。
【0059】
この変形実施形態によれば、図7(b)に示すように、第1保持ローラー9a(第2保持ローラー9bも同様)の両端面にフランジ46が取り付けられているので、カッタ8によって切断されたシート材3の端面3xから縦糸3aが解れ、解れた縦糸3aが第1保持ローラー9aおよび第2保持ローラー9bに巻き掛けられた無端ベルト10に巻き付いた場合、無端ベルト10上の縦糸3aが第1保持ローラー9aおよび第2保持ローラー9bの端面の軸受部Jに移動することをフランジ46によって防止できる。よって、第1保持ローラー9aおよび第2保持ローラー9bの回転抵抗増大を確実に防止でき、シート材3の詰まりを回避できる。
【0060】
また、図7(b)に示すように、一対の第1アーム11a(第2アーム11bも同様)の幅方向内側面に、第1保持ローラー9a(第2保持ローラー9b)のフランジ46が収容されるフランジ用凹部47が設けられ、フランジ用凹部47に収容された各フランジ46の表面46xと第1アーム11a(第2アーム11b)の幅方向内側面11xとが面一となっている。この構成によれば、第1保持ローラー9a(第2保持ローラー9b)のフランジ46の表面46xと、第1アーム11a(第2アーム11b)の幅方向内側面11xと、フレーム板12の幅方向内側面12xとが面一となり、これらが従動周回する無端ベルト10の両端10xに接し、従動周回する無端ベルト10が幅方向にズレることを抑えるガイドとなる。
【0061】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。例えば、図6(a)、図7(a)に示す第1保持ローラー9aと第2保持ローラー9bの直径は異なっていてもよく、保持ローラー9a、9bの数は2個に限られず1個でも3個以上でもよく、無端ベルト10を省略してもよい。また、図6に示す実施形態の保持ローラー(第1保持ローラー9a、第2保持ローラー9b)の両端面に、図7に示すフランジ46を設けてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、基盤である床2からシート材3としての床材シートを剥がすものを説明したが、基盤が階段の踏み板であり踏み板に接着されたシート材を剥がす剥離装置や、基盤が階段の蹴込み板であり蹴込み板に接着されたシート材を剥がす剥離装置や、基盤が壁であり壁に接着されたシート材を剥がす剥離装置や、基盤が天井であり天井に接着されたシート材を剥がす剥離装置にも、本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、基盤(床等)に接着されたシート材(床材シート等)を低騒音で埃が生じないように剥がすシート材の剥離装置及び剥離方法に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 シート材の剥離装置
2 基盤(床)
3 シート材(床材シート)
4 装置本体
5 接触部
6 巻上ローラー
7 駆動手段
8 カッタ
9a 第1保持ローラー
9b 第2保持ローラー
9x 保持ローラーの端面
10 無端ベルト
11x 幅方向端面
11a 第1アーム
11b 第2アーム
11x 幅方向内側面
12 フレーム板
12x 幅方向内側面
45 アーム用凹部
46 フランジ
46x フランジの表面
47 フランジ用凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7