(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20231115BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020033031
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507395717
【氏名又は名称】株式会社ソルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 幸房
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024793(JP,A)
【文献】特開2003-099534(JP,A)
【文献】特開2016-105957(JP,A)
【文献】特開2001-350842(JP,A)
【文献】特開2017-086559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する薬剤記録管理方法であり、
容器に表示され、該容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取工程と、
該読取工程で読み取った前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報
を含む所定の情報を表示する表示工程と、
該表示工程で表示された薬剤情報と前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報
とを照合し、照合するとの信号に基づいて前記薬剤の投与履歴の記録を開始する記録工程と、を備え
、
前記表示工程は、前記読取工程で読み取った前記容器の本数である準備本数と投与された前記薬剤の容量を前記容器の本数に換算した請求本数とを対比して表示する工程を有する
薬剤記録管理方法。
【請求項2】
容器に表示され、該容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取部と、
該読取部で読み取った薬剤情報
を含む所定の情報を表示する薬剤情報表示部と、
該薬剤情報表示部で表示された薬剤情報と前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報
とを照合し、照合するとの信号に基づいて前記薬剤の投与履歴を記録する記録部と、を備え
、
前記
薬剤情報表示部には、前記読取部で読み取った前記
容器の本数である準備本数と投与された前記薬剤の容量を前記容器の本数に換算した請求本数とが対比して表示される
薬剤記録管理システム。
【請求項3】
前記薬剤情報表示部はタッチパネルを有しており、
前記信号は、タッチパネルの操作に基づいて出力される
請求項
2に記載の薬剤記録管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システムに関する。詳しくは、投与する薬剤の記録を効率的に行い、薬剤の記録漏れ等の人為的ミスに起因する医療事故を未然に防止することができる薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システムである。
【背景技術】
【0002】
開腹手術、開頭手術、内視鏡手術(ファイバースコープ内視鏡を用いた手術や、腹腔鏡手術)等の各種手術や検査では、一般的に各種の麻酔薬を患者に投与して行われている。患者に対して麻酔薬を投与した場合、所定の麻酔記録紙に麻酔期間内の麻酔記録として、例えば血圧、体温、心拍数、呼吸数等の生体情報とともに、投与した薬品名、投与量、投与時間等の薬剤情報(麻酔情報)が記録される。
【0003】
従来の麻酔記録は、一定時間ごとの生体情報と薬剤情報の履歴を作業者(麻酔科医)の手入力により記録していたため、多忙を極める手術室内においては作業者にとって大きな負担となっていた。このような課題に対して、例えば麻酔記録情報のうち生体情報については生体監視装置からの信号に基づいて自動的に麻酔記録管理システムに取り込み、別途設けたモニタで常時監視することのできる麻酔記録管理システムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
前記特許文献1に係る麻酔記録管理システムによれば、生体情報については麻酔記録管理システムに自動的に取り込むことができる。従って作業者は薬剤情報のみ手入力で記録すればよいため、従来に比べて作業負担を半減することを実現している。
【0005】
しかしながら前記した特許文献1に係る麻酔記録管理システムにおいては、依然として薬剤情報については手入力による記録が必要となり、入力ミスや入力忘れ等を誘発することが懸念される。
【0006】
特に作業者は、麻酔薬を患者に投与してからの一定期間は、麻酔薬の投与による患者の急な容体の変化に対応するため、患者の様子や生体情報の監視を優先し、患者の容体が落ち着いていることを確認してから薬剤情報の記録を行うため、薬剤の実際の投与時間と記録時間との間に誤差が生じてしまい、薬剤の正確な投与時間が麻酔記録管理システムに反映されないという問題がある。
【0007】
さらに、薬剤の投与から一定時間が経過しているため、投与した薬剤や投与量について曖昧な記憶のまま麻酔記録管理システムに登録を行うこともあり、必ずしも正確な薬剤情報が記録されることを保証するものではなかった。そのため、薬剤情報についても手作業によらずに自動的に入力できるシステムの開発が望まれていた。
【0008】
このような課題に対して、例えば特許文献2には、生体情報に加えて薬剤情報についても自動的に記録することが可能な麻酔記録管理システムが開示されている。この特許文献2に係る麻酔記録管理システムによれば、読取装置と薬剤の注入装置が麻酔記録管理システムに接続されており、作業者により薬剤が充填されている容器に表示された医療用ラベルが読み取られると、それに連動して注入装置による麻酔薬の注入が開始される。この時、注入時間と注入量が自動的に麻酔記録管理システムに記憶される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭63-195810号公報
【文献】特開2016-24793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献2に係る麻酔記録管理システムによると、生体情報に加えて薬剤情報としての投与時間についても自動的に取り込まれるため、薬剤情報の記録ミスを未然に防止し、薬剤の正確な投与時間と投与量の記録を可能としている。
【0011】
しかしながら、特許文献2に係る麻酔記録管理システムにおいては、麻酔の注入装置としてシリンジポンプを使用することが前提となっており、例えば注射器を利用して患者に対して麻酔を投与するような場合には、当該システムを利用することができないという問題がある。また、読取装置からの出力信号と麻酔注入装置からの出力信号に基づいて麻酔記録管理システムに自動的に薬剤情報を記録するものとなっており、読取装置で読み取った麻酔薬と麻酔注入装置から注入される麻酔薬が照合するかの確認手段についても何ら開示がされていない。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、投与する薬剤の記録を効率的に行い、薬剤の記録漏れ等の人為的ミスに起因する医療事故を未然に防止することができる薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明に係る薬剤記録管理方法は、容器に表示され、該容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取工程と、該読取工程で読み取った前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報を表示する表示工程と、該表示工程で表示された薬剤情報と前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報を照合し、照合するとの信号に基づいて前記薬剤の投与履歴の記録を開始する記録工程と、前記薬剤の投与履歴の記録の開始後に、投与部位に対して前記薬剤の投与を開始する投与工程とを備える。
【0014】
ここで、容器に表示され、容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取工程を備えることにより、容器に充填される薬剤に関する情報を医療用ラベルから読み取ることができる。
【0015】
また、読取工程で読み取った医療用ラベルに記憶された薬剤情報を表示する表示工程を備えることにより、医療用ラベルに記憶されている情報を、モニタ等を通じて確認することができる。従って、例えば多忙を極める手術室内で使用される場合であっても、作業者はモニタ等を通じて使用する薬剤の種類や容量を視覚的に確認することができるため、薬剤の取り違え等の人為的ミスに起因する医療事故を防止することができる。
【0016】
また、表示工程で表示された薬剤情報と医療用ラベルに記憶された薬剤情報を照合し、照合するとの信号に基づいて薬剤の投与履歴の記録を開始する記録工程を備えることにより、使用予定の薬剤情報を確認したうえで、薬剤の投与履歴の記録を開始することができる。従って、薬剤の取り違え等の人為的ミスに起因する医療ミスを未然に防止することができる。
【0017】
このとき、表示工程で表示された薬剤情報と医療用ラベルに記憶された薬剤情報が照合するとの信号は、作業者の操作に基づいて出力されてもよく、またシステム側において機械的に照合のうえ出力されてもよい。
【0018】
また、薬剤の投与履歴の記録の開始後に、投与部位に対して薬剤の投与を開始する投与工程を備えることにより、薬剤の投与履歴の記録開始と薬剤の投与開始の時間差をなくし、薬剤の投与部位への正確な投与時間を記録することができる。
【0019】
即ち、手術室等における従来の一般的な薬剤の投与作業では、作業者は容器に表示された医療用ラベルを読み取った直後に、一連の作業手順として投与部位への薬剤の投与を行い、その後に投与履歴の記録を行っていた。この作業手順においては、作業者は投与作業に気を取られてしまい投与履歴の記録を失念し、投与作業の開始から所定時間経過した後に投与履歴の記録を行うため、実際の投与時間と投与履歴の記録との間に大きな時間差が生じることになっていた。
【0020】
これに対して、本願発明においては、医療用ラベルに記憶された情報を表示工程で表示させ、「照合する」との信号に基づいて自動的に投与履歴の記録が開始され、その後に投与部位への投与が開始されるため、作業者が投与履歴の記録を失念することがない。また、前記した通り、一般的には医療用ラベルの読み取り完了直後に一連の作業として投与部位への薬剤の投与が行われることから、投与履歴の記録開始時間と投与作業の開始時間が略合致するため、正確な投与履歴を記録することが可能となる。
【0021】
また、読取工程は、容器内に充填された薬剤を投与工程で使用する注入器への注入が完了した後に行う場合には、注入器への薬剤の注入、医療用ラベルの読み取り、投与履歴の記録、投与部位への注入という一連の作業手順が確立される。
【0022】
また、表示工程は、読取工程で読み取った容器の本数である準備本数と投与工程で投与された薬剤の容量を容器の本数に換算した請求本数とを対比して表示する工程を有する場合には、読取工程で読み取った薬剤の容量と、投与部位に投与した薬剤の容量を比較することで、投与量を正確に把握することができるため、投与する薬剤の容量の取り違え等の人為的ミスに起因する医療事故を防止することができる。
【0023】
また、信号は、表示工程で表示された薬剤情報を、作業者の目視により確認した結果に基づいて作業者の操作により出力される場合には、作業者は薬剤情報を意識的に確認することになるため、投与する薬剤や投与する薬剤の容量の取り違えといった人為的なミスに起因する医療ミスを未然に防止することができる。
【0024】
なお、作業者による操作とは、例えば表示工程においてタッチパネル式の画面に薬剤情報が表示される場合には、該タッチパネル式の画面に表示される所定の操作ボタンをタップすることをいう。これにより、タッチパネル式の画面へのタップ操作と同時に投与履歴の記録が開始され、続けて投与部位への薬剤の投与が開始されるため、作業者による薬剤情報の確認作業を一連の薬剤投与の作業工程に組み込むことができる。
【0025】
前記の目的を達成するために、本発明に係る薬剤記録管理システムは、容器に表示され、該容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取部と、該読取部で読み取った薬剤情報を表示する薬剤情報表示部と、該薬剤情報表示部で表示された薬剤情報と前記医療用ラベルに記憶された薬剤情報を照合し、照合するとの信号に基づいて前記薬剤の投与履歴を記録する記録部とを備える。
【0026】
ここで、容器に表示され、容器内部に充填される薬剤に関する薬剤情報が記憶された医療用ラベルを読み取る読取部を備えることにより、容器に充填される薬剤に関する情報を医療用ラベルから読み取ることができる。
【0027】
また、読取部で読み取った薬剤情報を表示する薬剤情報表示部を備えることにより、医療用ラベルに記憶される薬剤情報を、薬剤情報表示部を通じて視覚的に確認することがきる。従って、例えば多忙を極める手術室内であっても、作業者はモニタ等を通じて使用する薬剤や容量を視覚的に確認することができるため、投与する薬剤や投与する薬剤の容量の取り違えといった人為的なミスに起因する医療ミスを未然に防止することができる。
【0028】
また、薬剤情報表示部で表示された薬剤情報と医療用ラベルに記憶された薬剤情報を照合し、照合するとの信号に基づいて薬剤の投与履歴を記録する記録部を備えることにより、投与予定の薬剤、及び投与予定の薬剤の容量を確認した後に薬剤の投与履歴の記録を開始することができるため、投与する薬剤や投与する薬剤の容量の取り違えといった人為的なミスに起因する医療ミスを未然に防止することができる。
【0029】
また、医療用ラベルに記憶された薬剤情報には容器に充填される薬剤の容量が記憶されており、薬剤情報表示部には、読取部で読み取った薬剤の容量と薬剤の投与履歴に基づいて換算された容量とが対比して表示される場合には、読取部で読み取った薬剤の容量と、投与部位に投与した薬剤の容量を比較することで、投与量を正確に把握することができる。
【0030】
また、薬剤情報表示部はタッチパネルを有しており、信号はタッチパネルの操作に基づいて出力される場合には、作業者はタッチパネルへの操作に続いて投与部位への薬剤の投与を開始するため、投与部位への薬剤の実際の投与時間と、記録部による投与履歴の記録時間との時間差をなくし、正確な投与時間を記録することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システムは、投与する薬剤の記録を効率的に行い、薬剤の記録漏れ等の人為的ミスに起因する医療事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る麻酔記録管理システムのブロック図である。
【
図2】麻酔記録表示部に表示される表示画面の一例である。
【
図3】薬剤記録表示部に表示される表示画面の一例である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る麻酔記録管理方法を示す工程図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る麻酔記録管理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。本発明を適用した実施形態に係る薬剤記録管理システムは、麻酔を要する手術や検査を患者に行う際に、対象患者に投与する薬剤、及び薬剤に関連する情報を収集、記録、さらには保存するシステムである。なお、以下では説明の便宜上、薬剤記録管理システムとして、手術の際に使用する麻酔薬に関する麻酔記録管理システムについて説明するが、実施形態はこれに限定されるものではなく、薬剤の記録を要する記録管理システムの全てにおいて適用できるものとする。
【0034】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る麻酔記録管理システム1Aは、
図1に示す通り、読取部2、生体情報表示部3、麻酔記録表示部4、薬剤情報表示部5、及び管理部6Aから構成されており、それぞれが無線、又は有線により通信可能となっている。
【0035】
読取部2は、バーコードリーダー、撮像装置、或いは近距離無線通信機器からなり、例えばアンプル、バイアル、又はシリンジ等の容器にデータキャリアである一次元バーコード、二次元バーコード(以下、総称して「バーコード」という。)、又はRFID(Radio Frequency IDentification)コード等が印刷された医療用ラベルを読み取り、該読み取った情報を管理部6Aに送信する装置である。
【0036】
読取部2は、例えば撮像装置からなる場合は、撮像した医療用ラベルの画像からコードを抽出するための2値化画像に変換する画像処理により医療用ラベルのコードを抽出し、さらにデコード処理を行うことによって、医療用ラベルの読み取りを行い、例えば同種の医療用ラベルが複数存在しても、一度の撮像により一括してデータの読み取りを行い得るものとなっている。
【0037】
ここで、必ずしも、容器に表示されるバーコード、及びRFIDコードは、容器Aにラベルとして貼り付けられている必要はない。例えば、バーコード、及びRFIDコードが容器に直接印字されていてもよい。
【0038】
また、必ずしも、読取部2は複数の医療用ラベルを一度の撮像により一括して読み取る撮像方式のものである必要はない。例えば、医療用ラベルを一つずつ読み取る方式のものであってもよい。
【0039】
また、必ずしも、一度に読み取る医療用ラベルとして同種のものに限られるものではない。例えば1次元バーコードと2次元バーコードのように、異なる種類の医療用ラベルを一度の撮像により読み取ることができるものであってもよい。
【0040】
生体情報表示部3は、測定した患者の生体情報(血圧、体温、脈拍、心拍、心電図、血中酸素濃度等)をモニタに表示するための装置である。生体情報表示部3には、図示しない血圧値を測定する血圧測定器、脈拍を測定する脈拍測定器、心電を測定する心電測定器、血中酸素濃度を測定する血中酸素測定器等が接続されており、これら各測定器で測定された生体情報が後述する管理部6Aを通じてリアルタイムで生体情報表示部3に表示される。
【0041】
ここで、必ずしも、生体情報表示部3に表示される生体情報は前記したものに限定されるものではない。患者に対して行う手術内容や検査内容に応じて必要となる生体情報を適宜選択して生体情報表示部3に表示することができる。
【0042】
麻酔記録表示部4は、例えば手術中の患者の容体、生体情報表示部3から送信される警報の有無、投与した麻酔の血中濃度の予測値、投与した薬剤名等を時系列でグラフ表示する装置である。
図2は、麻酔記録表示部4に表示される画面の一例である。
【0043】
グラフの上から順に、A欄は患者の血圧や心拍数などの生体情報表示部3から自動的に取り込んだデータが時系列に沿ってプロットされる。B欄は同じく生体情報表示部3からの警報データを受信した場合に、警報内容に応じて色分けしてプロット表示される。C欄は投与する薬剤の血中濃度予測が時系列に沿ってグラフ表示される。D欄は使用した薬剤が表示される。この麻酔記録表示部4に表示される内容が、管理部6Aの麻酔記録部63に麻酔記録として記録される。
【0044】
ここで、必ずしも、麻酔記録表示部4は前記した情報のみが表示される必要はない。例えば、輸液の有無や輸液量、患者に関する情報として患者の氏名、年齢、手術室内への入退室時間等、麻酔記録に関する必要なあらゆる情報を記録、表示させることができる。
【0045】
薬剤情報表示部5は、読取部2で読み取った薬剤に関する情報がモニタを通じて表示される。
図3は薬剤情報表示部5で表示される画面の一例である。薬剤情報表示部5はタッチパネル式であり、例えば、読取部2で読み取った薬剤の薬品名が「薬品名」欄に表示され、読み取った薬剤の容器の本数が「準備本数」欄に表示される。即ち、作業者が1本の容器を読取部2で読み取ることにより、「準備本数」欄の数字が「1」ずつカウントアップされる。
【0046】
作業者は読取部2で読み取った薬品と、薬剤情報表示部5の「薬品名」欄に表示された薬品名が照合するとの判断のもと、表示される薬品名をタッチ操作すると、そのタッチ操作された時間が「調整時間」欄に表示される。この「調整時間」は、後述する管理部6Aにおいて患者への薬剤の投与の開始時間として登録される。
【0047】
ここで、必ずしも、薬剤情報表示部5のモニタはタッチパネル式である必要はない。例えば、モニタ上に表示されるポインタをマウス等で操作して、「薬品名」欄にポインタを合わせてマウスによるクリック操作により行われるようにしてもよい。
【0048】
薬剤情報表示部5の「請求本数」欄は、実際に患者に対して投与した薬剤の容量を、容器の本数に換算した数字が表示される。そして、薬剤情報表示5には、この「準備本数」と「請求本数」が対比して表示される。
【0049】
ここで、必ずしも、薬剤情報表示部5には、「準備本数」と「請求本数」を対比して表示する必要はない。「準備本数」、又は「請求本数」の何れか一方のみを表示するようにしてもよい。但し、「準備本数」と「請求本数」を対比して表示する構成とすることにより、作業者は、読取部2で読み取った容器の本数と、実際に患者に投与した薬剤の容量を視覚的に把握することができるため、薬剤の投与量を間違えることに起因する医療ミスを防止することができる。
【0050】
なお、前記した生体情報表示部3、麻酔記録表示部4、薬剤情報表示部5はそれぞれ別体に設ける必要はない。例えば、生体情報表示部3と麻酔記録表示部4を一つ画面上に分割表示したり、或いは生体情報表示部3、麻酔記録表示部4、薬剤情報表示部5の全てを一つの画面上に分割表示するようにしてもよい。
【0051】
管理部6Aは、生体情報取得部61、薬剤情報取得部62、麻酔記録部63、薬剤登録部64から構成されている。生体情報取得部61は、生体情報を測定するための各測定器から送信される生体情報を受信して、生体情報表示部3、及び麻酔記録表示部4に送信する。また、薬剤情報取得部62は、読取部2で読み取った医療用ラベルに記憶されている薬剤情報を受信して、薬剤情報表示部5に送信する。
【0052】
麻酔記録部63は、生体情報取得部61で受信した生体情報を時系列的に記録するとともに、薬剤情報表示部5からの操作信号に基づいて薬剤の投与開始時間である「調整時間」や、投与量である「請求本数」等の情報が記録される。これら麻酔記録部63に記録された各データは、生体情報表示部3、及び薬剤情報表示部5で表示される。
【0053】
薬剤登録部64は、手術や検査に際して使用が予定される薬剤の薬品名が予め登録されている記憶装置である。医療用ラベルが読取部2で読み取られると、医療用ラベルに記憶されている薬品名と薬剤登録部64に記憶されている薬品名が照合され、照合する場合にはその薬品名が薬剤情報表示部5に表示される。一方、医療用ラベルに記憶されている薬品名と薬剤登録部64に記憶されている薬品名が照合しない場合には、薬剤情報表示部5には何も表示されない。
【0054】
ここで、必ずしも、薬剤登録部64は有している必要はない。例えば、読取部2で読み取った情報は常に薬剤情報表示部5で表示するようにしてもよい。但し、薬剤登録部64を有することにより、読取部2で読み取った薬剤が使用予定でない薬剤であることが視覚的に確認することができるため、投与する薬剤の容量の取り違え等の人為的ミスに起因する医療事故を防止することができる。
【0055】
次に、第1の実施形態に係る麻酔記録管理システム1Aを用いた薬剤記録管理方法について説明する。
【0056】
<STEP1:注入工程>
まず作業者は、患者に対して薬剤を投与するにあたり、容器に充填された薬剤を注射器やシリンジポンプ等の注入器に注入する。
【0057】
<STEP2:読取工程>
注入器への薬剤の注入作業が完了すると、作業者は、続けて空になった容器に表示された医療用ラベルを読取部2で読み取る。このとき、医療用ラベルに記憶されている薬剤情報が管理部6Aに送信され、薬剤情報表示部5にその内容が表示される。このとき、前記した通り、薬剤登録部64で登録された薬品に該当する場合にのみ薬剤情報表示部5に表示するようにしてもよい。
【0058】
ここで、必ずしも、STEP1の注入工程の後にSTEP2の読取工程を実施する必要はなく、読取工程の後に注入工程を実施してもよい。
【0059】
<STEP3:表示工程>
STEP2の読取工程で読み取った医療用ラベルに記憶された薬剤情報が、
図3に示すように薬剤情報表示部5に表示される。このとき、薬品名とともに、「準備本数」が「1
と表示される。なお、「準備本数」は読取工程で読み取った容器の本数であり、例えば容器を2本読み取った場合には、「準備本数」は「2」と表示される。
【0060】
ここで、必ずしも、薬剤情報表示部5に表示される「準備本数」は、読取部2で読み取った容器の本数である必要はない。例えば、読取部2で読み取った容器の本数から容量に換算したうえで、容量を表示するようにしてもよい。
【0061】
<STEP4:記録工程>
作業者は、薬剤情報表示部5に表示された薬品名と、読取部2で読み取った薬剤が照合することを確認したら、薬剤情報表示部5に表示された薬品名をタップする。薬剤情報表示部5から入力された信号は、管理部6Aの麻酔記録部63に送信され、作業者がタップした時間が麻酔記録における投与時間として記録される。
【0062】
<STEP5:投与工程>
STEP4に続いて、作業者は薬剤が注入された注射器を操作することにより、患者に対する薬剤の投与を開始する。
【0063】
ここで、必ずしも、投与工程は作業者による注入器の操作に基づいて行われる必要はない。例えば、注入器がシリンジポンプであれば、STEP4における薬剤情報表示部5からの信号を受けて、シリンジポンプが自動的に操作されて、患者に対する薬剤の投与が開始されるようにしてもよい。
【0064】
[第2の実施形態]
次に
図5を用いて、第2の実施形態の麻酔記録管理システム1Bについて説明する。なお説明の便宜上、第1の実施形態と重複する構成については同一の符号を付すとともに、重複する構成、及び機能の説明は省略する。
【0065】
第2の実施形態においては、第1の実施形態に対して、管理部6Bの構成が異なる。具体的には、第2の実施形態の管理部6Bには、第1の実施形態の管理部6Aに対して判定部65が追加されている。
【0066】
判定部65は、読取部2で読み取った医療用ラベルに記憶されている薬品名と、薬剤情報表示部5の「薬品名」欄に表示された薬品名を照合する機能を有している。判定部65での判定の結果、読取部2で読み取った医療用ラベルに記憶されている薬品名と、薬剤情報表示部5の「薬品名」欄に表示された薬品名が合致すると判定された場合には、その判定時間が記録される。
【0067】
即ち、第1の実施形態においては、読取部2で読み取った医療用ラベルに記憶されている薬品名と薬剤情報表示部5に表示された薬品名が合致するか否かの判定は作業者の判断に基づいて行われていた。一方、第2の実施形態においては、係る判断を判定部65が担うことで、作業者の負担を軽減することができる。
【0068】
なお、前記した薬剤登録部64に判定部65の機能を持たせるようにしてもよい。即ち、読取部2で読み取った医療用ラベルに記憶されている薬品名と、薬剤登録部64に登録されている薬品名が合致する場合には、薬品情報表示部5に薬剤情報を表示するとともに、麻酔記録部63に信号が出力され、該信号を受信した時間を薬剤の投与開始時間として記録させることもできる。
【0069】
以上、本発明に係る薬剤記録管理方法、及び薬剤記録管理システムは、投与する薬剤の記録を効率的に行い、薬剤の記録漏れ等の人為的ミスに起因する医療事故を未然に防止することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B 麻酔記録管理システム
2 読取部
3 生体情報表示部
4 麻酔記録表示部
5 薬剤情報表示部
6A、6B 管理部
61 生体情報取得部
62 薬剤情報取得部
63 麻酔記録部
64 薬剤登録部
65 判定部