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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】包装資材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20231115BHJP
   A23B 7/04 20060101ALI20231115BHJP
   A23B 7/16 20060101ALI20231115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231115BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B65D65/40 D
A23B7/04
A23B7/16
B32B27/00 H
B32B27/32 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020127771
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024922
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592070580
【氏名又は名称】アイム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】越智 正明
(72)【発明者】
【氏名】川本 晃己
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-080597(JP,A)
【文献】特許第6713116(JP,B2)
【文献】特開2015-093404(JP,A)
【文献】国際公開第2019/088199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
A23B 7/04
A23B 7/16
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装の内側から順に、通気性シート層と、鮮度維持層と、低通気性シート層とにて構成され、
前記通気性シート層は、包装される被包装物へ直接対面する層として、一層のみ包装資材に備えられ、
前記鮮度維持層は、環状オリゴ糖を含むものであり、
前記鮮度維持層は、青果物等食品の劣化を抑制することにより青果物等生鮮品の鮮度を維持する鮮度維持材を含み、前記鮮度維持材の組成物として前記環状オリゴ糖即ちシクロデキストリンを含有するものであり、
前記シクロデキストリンは、ゲスト分子を包接した包接体であり、前記シクロデキストリンが、α シクロデキストリン、β シクロデキストリン、γ シクロデキストリン、分岐型β シクロデキストリン、メチル化α シクロデキストリン、メチル化βシクロデキストリン、メチル化γ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルα シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノα シクロデキストリン、モノクロロトリアジノβ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノγ シクロデキストリン、トリアセチルα シクロデキストリン、トリアセチルβ シクロデキストリン、トリアセチルγ シクロデキストリンの少なくとも何れか一種以上であり、
前記シクロデキストリンが、αリポ酸、金属、金属塩、酸化金属、ビグアナイド、カーバニリド、界面活性剤、カルボン酸、アルコール、アンモニウム塩、フェノール誘導体、アミノ酸、ヨウ素系化合物、コエンザイムQ10、クルクミン、カテキン類、ハーブ類、クロロフィル類、DHA、EPA、1-メチルシクロプロペン、塩素、臭素、炭酸ガスエタノール、プロパノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、シュウ酸、クエン酸、酪酸及びイソ吉草酸少なくとも何れか一種を包接する前記包接体であり、
前記通気性シート層は、前記低通気性シート層よりも通気性が高く、前記鮮度維持層よりも融点の低い樹脂層であり、
前記通気性シート層は、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層であり、
前記通気性シート層の酸素透過度は、2000cm3/m2・24h・atm以上であり、
前記低通気性シート層の酸素透過度は、200cm3/m2・24h・atm以下であり、
前記鮮度維持層は、シクロデキストリン水溶液と、1価アルコールと、バインダー樹脂とを含有する塗工液にて、前記通気性シート層の前記被包装物を臨む面と反対側の面へコーティテングされた層であることを特徴とする包装資材。
【請求項2】
前記鮮度維層の前記通気性シート層と反対側の面へ前記低通気性シート層がポリエチレンのラミネート層を介してラミネートされた請求項1記載の包装資材。
【請求項3】
前記鮮度維持層を第1鮮度維持層として、前記第1鮮度維持層とは別に第2鮮度維持層を前記ラミネート層と前記低通気性シート層の間へ備え、
前記第2鮮度維持層は環状オリゴ糖を含むものである請求項2記載の包装資材。
【請求項4】
前記低通気性シート層は、アルミを含むプラスチックフィルムにて構成された請求項1記載の包装資材。
【請求項5】
前記鮮度維持材は、ホストをα-シクロデキストリンとし、ゲストを1-メチルシクロプロペン又はエタノールとする包接体である請求項1記載の包装資材。
【請求項6】
前記鮮度維持材は、ホストをγ-シクロデキストリンとし、ゲストをαリポ酸とする包接体である請求項1記載の包装資材。
【請求項7】
前記鮮度維持材は、ホストをヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンとし、ゲストをヨードプロビニルブチルカルバメートとする包接体である請求項1記載の包装資材。
【請求項8】
前記鮮度維持材は、ホストをメチルβ-シクロデキストリンとし、ゲストをアミノ酸とする包接体である請求項1記載の包装資材。
【請求項9】
前記低通気性シート層の前記鮮度維持層と反対側へ補強シート層を備え、
前記鮮度維持層と前記低通気性シート層との間と、前記低通気性シート層と前記補強シート層の間の夫々にラミネート層が介された、ラミネート加工フィルムであることを特徴とする請求項1記載の包装資材。
【請求項10】
前記鮮度維持材を通気性シートへコーティングすることにより前記通気性シート層と前記鮮度維持層とを形成する第1工程と、
前記鮮度維持層に対し、前記ラミネート層の一つとなるラミネート材を介して低通気性シートをラミネートすることにより前記低通気性シート層を形成する第2工程と、
前記低通気性シート層に対し、前記ラミネート層の他の一つとなるラミネート材を介して補強シートをラミネートすることにより前記補強シート層を形成する第3工程とを備えた請求項記載の包装資材の製造方法。
【請求項11】
前記通気性シート層においてシールされるシール領域とシールされない非シール領域とを備えるものであり、前記シール領域にてシールされた袋状の包装資材であって、
前記鮮度維持層は、少なくとも前記非シール領域の全域へ途切れることなく対面する略均一な厚みの層であり、
少なくとも前記非シール領域の全域において前記通気性シート層は偏りのない略均一な厚みの層である請求項1記載の包装資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装資材及びその製造方法に関し、詳しくは食品等包装資材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境負荷が少なく安全で安価な、新たな構成の包装資材や塗工材等の提供を図るものとして、特許文献1へ示す鮮度維持材の組成物を有する梱包等資材が提案されている。
この特許文献1の発明について簡単に説明すると、一般にアルコールに溶けない樹脂が含まれたものを塗工することはできず、水溶性のCDのバインダーにアルコール(有機溶剤)を採用することを想起するのは困難であるが、特許文献1において、発明者の奇抜な発想によりCDが水溶性であることを無視してバインダーの溶液に1価のアルコールを採用している。
【0003】
即ち、特許文献1の発明については、シクロデキストリン水溶液と、「1価アルコール」と、バインダー樹脂とにてシクロデキストリンを塗工により定着させ、シクロデキストリンによる鮮度維持の効果を最大限生かすことを可能としたものであり、更に上記シクロデキストリン水溶液と、「1価アルコール」と、バインダー樹脂とをバインダー成分として採用することにより、鮮度維持材の塗工を容易にし、円滑なコーティングを可能とした画期的なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6713116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記の通り優れた特許文献1の鮮度維持材の組成物を樹脂フィルム(樹脂シート)へコーティングして食品包装資材とした場合、即ち、特許文献1の鮮度維持材のコーティング層を樹脂フィルムへ形成して当該樹脂フィルムの表面又は裏面全体を上記コーティング層とした場合、特許文献1の鮮度維持材は比較的融点の高いことから、シール強度を確保し難いという危惧があった。
【0006】
例えば図4(C)へ示すように、包装袋として上記樹脂フィルムを利用する場合、被包装物mを挟んで二枚の上記樹脂フィルムの上記コーティング層(鮮度維持層2)同士を対面させ、二枚の上記樹脂フィルムの端部をヒートシールするか、或いは一枚の上記樹脂フィルムをU字状に丸め当該樹脂フィルムの端部を重ねてヒートシールするのが一般的である(図4の各図においてSはシール部分を示し、kは上記包装袋の内部空間即ち被収容物mを収容する収容空間を示す)。
【0007】
しかし、樹脂フィルム自体は加熱により溶解しても上記コーティング層は溶解し難く直接重なり合う当該コーティング層同士をヒートシールするのは難しいものであった。
即ち、食品等の被包装物と接する最内部に鮮度維持材をコーティングする場合に、上記特許文献1の発明に係る鮮度維持材を単に用いるのみでは包装時におけるシール強度が出ないという危惧があった。
【0008】
一方、現状商品である脱酸剤は、食品に同封され機能を出す為、誤飲や、製造工程で挿入工程が必要になるものであり、挿入ミスがあった場合に品質劣化が発生するという問題がある。また、異物混入管理として脱酸剤は金属組成物の為、金属探知機が使えないという問題がある。
このため、上記両問題の無い鮮度維持材を利用して包装する被包装物の鮮度維持を図るのが切望された。
【0009】
そこで、上記鮮度維持材の効能を得つつもシール強度を確保するために更に改良できないか、本発明の発明者は鋭意研究を重ねた。
このような背景の下、本発明の完成にて、上記特許文献1の鮮度維持材の組成物を樹脂フィルム(樹脂シート)へコーティングして食品包装資材として用いるに際し、実用的なシール強度を確保できるものとした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、順に、通気性シート層と、鮮度維持層と、低通気性シート層の、少なくとも3層を備え、前記通気性シート層は、前記低通気性シート層よりも通気性が高く、前記鮮度維持層よりも融点の低い樹脂層である包装資材を提供する。
また本発明では、前記鮮度維持層は、環状オリゴ糖を含む包装資材を提供できた。
更に本発明では、前記鮮度維持層の環状オリゴ糖に抗酸化機能材をゲスト分子として包接させた、包装資材を提供できた。
また更に本発明では、前記通気性シート層の酸素透過度は、2000cm3/m2・24h・atm以上である包装資材を提供できた。
更にまた前記通気性シート層は、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とする層である包装資材を提供できた。
また本発明では、前記低通気性シート層の酸素透過度は、200cm3/m2・24h・atm以下である包装資材を提供できた。
更に本発明では、前記低通気性シート層は、アルミを含むプラスチックフィルムにて構成された包装資材を提供できた。
また更に本発明では、前記鮮度維持層は、青果物等食品の劣化を抑制することにより青果物等生鮮品の鮮度を維持する鮮度維持材を含み、前記鮮度維持材の組成物として前記環状オリゴ糖即ちシクロデキストリンを含有するものであり、前記シクロデキストリンは、ゲスト分子を包接していないホスト若しくはゲスト分子を包接した包接体であり、前記シクロデキストリンが、α シクロデキストリン、β シクロデキストリン、γ シクロデキストリン、分岐型β シクロデキストリン、メチル化α シクロデキストリン、メチル化βシクロデキストリン、メチル化γ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルα シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノα シクロデキストリン、モノクロロトリアジノβ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノγ シクロデキストリン、トリアセチルα シクロデキストリン、トリアセチルβ シクロデキストリン、トリアセチルγ シクロデキストリンの少なくとも何れか一種以上である包装資材を提供できた。
上記包装資材は、食品等包装資材として食品包装資材を含むものであり、上記青果物等食品には、青物その他の生鮮品を含むことはもとより、調理品、菓子やパン等の加工品も含む。例えば野菜や果物、芋、茸、海藻、肉、魚に代表される生鮮食料品の他、総菜などの調理品、ハム、蒲鉾、菓子やパン、調味料などの加工品も含む。上記青果物等食品には、時間の経過により鮮度が低下する食品であって、上記鮮度維持層によって鮮度低下を抑制できるものであればよいのである。
また、上記包装資材には、被包装物として食品の他、臭気を発する、汚物や廃棄物を入れる袋を含む。例えば上記包装資材にはゴミを入れるゴミ袋を含む。汚物や廃棄物を被包装物とする場合、上記鮮度維持(鮮度を維持する)というのは腐乱抑制や脱臭と考えればよい。この他、上記包装資材の被包装物には、薬剤を含む。例えば上記被包装物にはビニールハウスなどの防カビ剤や鳥等の被害回避の忌避剤を含む。また上記包装資材は、建材を包む建材の包材であってもよい。上記包装資材を建材の包材とする場合、上記鮮度維持というのはカビの繁殖を抑える、即ち防カビ作用と考えればよい。更に上記包装資材は、被包装物を金属製の部材や部品、素材とするものも含む。上記包装材で金属を包装する場合、上記鮮度維持というのは酸化防止と考えればよい。
更に本発明では、前記シクロデキストリンが、αリポ酸、金属、金属塩、酸化金属、ビグアナイド、カーバニリド、界面活性剤、カルボン酸、アルコール、アンモニウム塩、フェノール誘導体、アミノ酸、ヨウ素系化合物、コエンザイムQ10、クルクミン、カテキン類、ハーブ類、クロロフィル類、DHA、EPA、1-メチルシクロプロペン、塩素、臭素、炭酸ガスエタノール、プロパノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、シュウ酸、クエン酸、酪酸及びイソ吉草酸少なくとも何れか一種を包接する前記包接体である包装資材を提供できた。
更にまた本発明は、前記低通気性シート層の前記鮮度維持層と反対側へ補強シート層を備え、前記鮮度維持層と前記低通気性シート層との間と、前記低通気性シート層と前記補強シート層の間の夫々にラミネート層が介された、ラミネート加工フィルムである包装資材を提供できた。
また本発明は、前記鮮度維持層を第1鮮度維持層とし、前記第1鮮度維持層と前記低通気性シート層との間の前記ラミネート層を第1ラミネート層とし、前記低通気性シート層と前記補強シート層の間の前記ラミネート層を第2ラミネート層として、前記第1鮮度維持層とは別に、前記第1ラミネート層と前記低通気性シート層との間へ、環状オリゴ糖を含む第2鮮度維持層を備えた包装資材を提供できた。
更に本発明は、前記鮮度維持材を通気性シートへコーティングすることにより前記通気性シート層と前記鮮度維持層とを形成する第1工程と、前記鮮度維持層に対し、前記ラミネート層の一つとなるラミネート材を介して低通気性シートをラミネートすることにより前記低通気性シート層を形成する第2工程と、前記低通気性シート層に対し、前記ラミネート層の他の一つとなるラミネート材を介して補強シートをラミネートすることにより前記補強シート層を形成する第3工程とを備えた包装資材の製造方法を提供できた。
また更に本発明は、前記通気性シート層においてシールされるシール領域とシールされない非シール領域とを備えるものであり、前記シール領域にてシールされた袋状の包装資材であって、前記鮮度維持層は、少なくとも前記非シール領域の全域へ途切れることなく対面する略均一な厚みの層であり、少なくとも前記非シール領域の全域において前記通気性シート層は偏りのない均一な通気性を備える包装資材提供できた。
更に本発明は、包装の内側から順に、鮮度維持層と、通気性シート層と、低通気性シート層の、少なくとも3層を備え、前記鮮度維持層は、環状オリゴ糖を含み、前記通気性シート層は、シールされるシール領域と、シールされない非シール領域とを備え、前記非シール領域は前記鮮度維持層に対面する領域であり、前記非シール領域は前記鮮度維持層に対面しない領域であり、前記通気性シート層は、前記低通気性シート層よりも通気性が高く、前記鮮度維持層よりも融点の低い樹脂層である包装資材を提供できた。
更にまた本発明は、前記シール領域にてシールされた袋状の包装資材であって、包装される被包装物を収容する前記袋の内側面全体を前記非シール領域として、前記鮮度維持層は、前記被包装物に対し前記非シール領域全体を覆う略均一な厚みの層である包装資材を提供できた。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、シクロデキストリン水溶液と1価アルコールとバインダー樹脂とにてシクロデキストリンを塗工により定着させ、シクロデキストリンによる鮮度維持の効果を最大限生かすことを可能とする鮮度維持層を備えた包装資材において、シール強度を向上させた。
即ち、本発明は、特許文献1に示された技術について上記構成を持つ包装資材を包装材にすることで実用的なシール性を持たせることを可能とした。
言い換えると、シール性を損なわず食品の長期保存を可能にするため、通気性シート層の内側(被包装物側)に鮮度保持層を設けると共に鮮度維持層の外側(被包装物と反対側)に酸素透過性の低い低呈通気性シート層を配することで、酸素バリア性を向上できたものである。
特に本発明(請求項13,15)において、鮮度を維持する機能を発揮する部位を連続した途切れの無い略均一な厚みの鮮度維持層として形成することにより、包装内において被包装物がどのような位置にあっても(変位しても)必ず鮮度維持の機能を発揮する部位に(通気性シート層を通じて或いは直接)臨ませることになり、確実に被包装物の鮮度維持を図ることができる。例えば包装内で被包装物が偏った位置にあっても通気性シート層を通し被包装物に対面する面のほぼ全面を鮮度維持の効果を発揮する面とできる。
また本発明(請求項14,15)においては、シール性能を確保しつつ、通気性シート層を介さずに直接被包装物へ鮮度維持層を臨ませることで鮮度維持の効果を最大限発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る包装資材の分解斜視図、(B)は本発明の他の実施の形態に係る包装資材の分解斜視図、(C)は本発明の更に他の実施の形態に係る包装資材の分解斜視図、(D)は本発明のまた更に他の実施の形態に係る包装資材の分解斜視図。
図2】(A)~(D)は、図1(A)の包装資材の製造工程を示す略断面図。
図3】本発明の実施例及び比較例を示す説明図。
図4】(A)は本発明に係る包装資材の一実施の形態の要部断面を示す説明図、(B)は本発明の他の実施の形態の要部断面を示す説明図、(C)は比較例の要部断面を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(概要)
本発明に係る包装資材は、包装の内側即ち包装資材に包装される食品等の被包装物m側から順に、通気性シート層1と、鮮度維持層2と、低通気性シート層4の、少なくとも3層を備える(図1(A)、図2(D)及び図4(A))。
ここでは本発明に係る包装資材について、食品を包装する食品包装資材とする例を示す。
鮮度維持層2は、青果物等生鮮品の劣化を抑制することにより青果物等生鮮品の鮮度を維持する鮮度維持材を含み、鮮度維持材2の組成物として環状オリゴ糖即ちシクロデキストリンを含有する。
通気性シート層1は、被包装物m側を臨む鮮度維持層2を覆う層であり、低通気性シート4よりも通気性が高く、鮮度維持層2よりも融点の低い樹脂層である。
【0014】
この例では、低通気性シート層4の鮮度維持層2と反対側へ補強シート層5を備える。更に鮮度維持層2と低通気性シート層4との間と、低通気性シート層4と補強シート層5の間のそれ夫々にラミネート層3が介されている。即ち、この包装資材は、ラミネート加工フィルムである。以下必要に応じて鮮度維持層2と低通気性シート層4との間のラミネート層3を第1ラミネート層3aと呼び、低通気性シート層4と補強シート層5の間のラミネート層3を第2ラミネート層3bと呼ぶ。
【0015】
(鮮度維持層2)
鮮度維持層2の上記シクロデキストリンは、ゲスト分子を包接していないホスト若しくはゲスト分子を包接した包接体とすることができる。また上記シクロデキストリンが、α シクロデキストリン、β シクロデキストリン、γ シクロデキストリン、分岐型β シクロデキストリン、メチル化α シクロデキストリン、メチル化βシクロデキストリン、メチル化γ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルα シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノα シクロデキストリン、モノクロロトリアジノβ シクロデキストリン、モノクロロトリアジノγ シクロデキストリン、トリアセチルα シクロデキストリン、トリアセチルβ シクロデキストリン、トリアセチルγ シクロデキストリンの少なくとも何れか一種以上とすることができる。
更に上記鮮度維持材は塗工液であり、樹脂又は紙材への当該塗工液として、シクロデキストリンを水に溶解してなるシクロデキストリン水溶液と、1価アルコールと、バインダー樹脂とを含有する。
【0016】
鮮度保持層2については、この例では鮮度保持層2の上記シクロデキストリンに抗酸化機能材をゲスト分子として包接させたものを用いる。
例えば上記抗酸化機能剤として、αリポ酸、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB12、カテキン類、ポリフェノール類、セレンの無機化合物、亜鉛の無機化合物、鉄の無機化合物、銅の無機化合物、セレンの有機化合物、亜鉛の有機化合物、鉄の有機化合物、銅の有機化合物、セレンのキレート化合物、亜鉛のキレート化合物、鉄のキレート化合物、銅のキレート化合物の少なくとも何れか1種を含有する組成物を採用することができる。
望ましくは、鮮度維持層2の成分として、上記のシクロデキストリンが、αリポ酸、金属、金属塩、酸化金属、ビグアナイド、カーバニリド、界面活性剤、カルボン酸、アルコール、アンモニウム塩、フェノール誘導体、アミノ酸、ヨウ素系化合物、コエンザイムQ10、クルクミン、カテキン類、ハーブ類、クロロフィル類、DHA、EPA、1-メチルシクロプロペン、塩素、臭素、炭酸ガスエタノール、プロパノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、シュウ酸、クエン酸、酪酸及びイソ吉草酸少なくとも何れか一種を包接する包接体を挙げることができる。
特に、鮮度保持層2には、抗酸化機能フィルムとして出願人アイム株式会社の鮮度保持フィルム「I-SCH(アイッシュ)」(商品名)を採用することができる。
【0017】
(通気性シート層1)
通気性シート層1は、鮮度維持層2と食品等の被包装物mとの間の通気を確保すると共に、この包装資材を包装袋として形成する上でこの包装資材の内面同士がシールし易いように上記の通り通気性シート層1は鮮度維持層2よりも融点の低い樹脂にて構成しておくのである。
通気性シート層1は、酸素透過度を2000cm3/m2・24h・atm以上とするのが望ましい。
【0018】
α-シクロデキストリンの融点は278℃であるので鮮度保持層2をα-シクロデキストリンにて構成する場合、通気性シート層1は278℃より融点の低い樹脂にて形成する。
β-シクロデキストリンの融点は260℃であるので鮮度保持層2をβ-シクロデキストリンにて構成する場合、通気性シート層1は260℃より融点の低い樹脂にて形成する。
γ-シクロデキストリンの融点は300℃であるので鮮度保持層2をγ-シクロデキストリンにて構成する場合、通気性シート層1は300℃より融点の低い樹脂にて形成する。
化学修飾型シクロデキストリンについて例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβ-シクロデキストリン)の融点は267℃なので、鮮度保持層2をヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンにて構成する場合、通気性シート層1は267℃より融点の低い樹脂にて形成する。また例えば、メチル-β-シクロデキストリンの融点は180~182℃なので、鮮度維持層2をメチル-β-シクロデキストリンで構成する場合、通気性シート層1は180℃より融点の低い樹脂にて形成する。
尚、シール部分の樹脂の融点が鮮度維持層即ち上記の各種シクロデキストリンの融点より低いことが重要であり、ゲスト分子の融点はシールに直接影響するものではないが、シクロデキストリンに包接されるゲストに関し、αリポ酸の融点は60~62℃、IPBC(3‐ヨード‐2‐ プロ. ピニルブチルカルバメート)の融点は64~68℃、ヨウ素の融点は113.6℃、1-MCPの融点は75~76℃、エタノールの融点は-114.5℃である。
【0019】
特に上記通気性シート層1には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主成分とするのが望ましい。即ち通気性シート層1はLLDPEフィルムで構成するのが適する。
LLDPEは、包装におけるシール性付与するものであり、一方I-SCHは、LLDPEの通気性を利用しシール性を失わないよう維持し、自身が持つ高い鮮度保持パフォーマンスを実現する。
市販されている一般的なLLDPEフィルムを通気性シート層1に採用する場合厚さ30μm以下のものが適する。但し上記機能を確保できるのであれば厚さについては上記範囲外のものであってもよい。
尚、LLDPEフィルムと同等の酸素透過度とシール強度が得られるものであれば、LLDPEフィルム以外の樹脂フィルムを採用してもよい。
【0020】
(低通気性シート層4)
低通気性シート層4は、酸素透過度を200cm3/m2・24h・atm以下とするのが望ましい。
低通気性シート層4は、アルミを含むプラスチックフィルムにて構成することができる。特に低通気性シート層4は、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)にて構成するのが望ましい。
VM-PETは、本発明の包装資材が被包装物mと共に店頭に並べられた際も、日中の紫外線による鮮度低下を抑制し、また包装の気密性の維持を図れるものである。
但し、VM-PETと同等の酸素透過度をそなえるものであれば、VM-PET以外の樹脂フィルムを採用してもよい。市販されている一般的なVM-PETを低通気性シート層4に採用する場合厚さ12μm以上のものが適する。但し低通気性の機能を確保できるのであれば厚さについては上記範囲外のものであってもよい。
【0021】
(補強シート層5)
補強シート層5には、ナイロンフィルムを採用するのが適する。ナイロンは、袋(包装資材)の強度を維持することができるからである。
但し、この包装資材を補強できるものであれば、ナイロンフィルム以外の樹脂フィルムを採用してもよい。
市販されている一般的なナイロンフィルムを補強シート層5に採用する場合厚さ15μm以上のものが適する。但し補強機能を確保できるのであれば厚さについては上記範囲外のものであってもよい。
【0022】
(ラミネート層3)
第1ラミネート層3aと第2ラミネート層3bの形成には、何れもポリエチレン(PE)フィルムを採用することができる。但し上記各層間において適切なラミネート加工が行えるものであれば、PE以外の樹脂フィルムを採用してもよい。また、各ラミネート層3a,3bは、樹脂フィルム以外に、接着剤の塗工により形成するものとしてもよい。
【0023】
(製造方法の例)
図2を参照して、上記図1(A)の包装資材の製造方法の例について説明する。
図2(A)へ示す通気性シート1(積層前の通気性シート層1)へ上記鮮度維持材をコーティングすることにより、図2(B)へ示す鮮度保持機能付き高通気性シートL1を形成する(第1工程)。
【0024】
市販されている公知のラミネート機(図示しない。)にて、上記シートL1へ第1ラミネート層3aを介し低通気性シート4(積層前の低通気性シート層4)をラミネートして、図(C)へ示す1枚のシートL2とする(第2工程)。
更に上記ラミネート機にて、上記シートL2へ第2ラミネート層3bを介し補強シート(積層前の補強シート層)をラミネートして図(D)へ示す包装シートL(包装フィルム)即ち本発明の包装資材を形成する(第3工程)。
【0025】
(シール強度)
図3へシール強度の試験結果を示す。
サンプルs1は、図1(C)の例から補強シート層5を除いた実施例である。サンプルs2は通気性シート層1を鮮度維持層2に対しサンプルs1と反対に形成しガラス封止層6を設けた比較例である。サンプルs3は、図1(A)及び図3の例から補強シート5を除いた実施例である。サンプルs4はサンプルs3のガラス封止層6に代えて更に通気性シート層1を設けた比較例である。サンプルs5は図1(B)の例から補強シート5を除いた実施例である。サンプルs6は、サンプルs4のラミネート層3(接着層)と鮮度維持層2の配置を逆にした比較例である。サンプルs7は鮮度維持層2と補強シート層5のみで構成された比較例である。サンプルs8は単体の補強シート5(比較例)である。サンプルs9は単体の通気性シート1(比較例)である。
【0026】
シール強度の試験データ(条件)については次の通りである。
通気性シート1には、東洋紡株式会社(大阪府大阪市北区堂島浜二丁目2番8号)の厚さ30μmのLLDPE♯30 L4102(商品名)を採用した。低通気性シート4には尾池工業株式会社(京都市下京区仏光寺通西洞院西入ル木賊山町181番地)の厚さ12μmのVMPET♯12テトライト(商品名)PCを採用した。鮮度維持層2についてはアイム株式会社(愛媛県四国中央市土居町津根2304番地)のI-SCH(商品名)を採用しI-SCH処理層とした。補強シート5には東洋紡株式会社の厚さ15μmのOPP♯25 P5573(商品名)を採用した。ガラス封止層6には、厚さ0.25mmのガラス板を用いた。
測定装置の詳細については次の通りである。
【0027】
図3のサンプルのラミネート機器として富士インパルス株式会社(大阪府豊中市庄内栄町4-23-18)の型式 P-200 BUを用い、メモリを10段階の6で使用した。
図3の引張圧縮試験機には、機器メーカー 株式会社エー・アンド・ディ(東京都豊島区東池袋3丁目23番14号)の型式 RTE-1210を用いた。
図3の試験方法は、日本工業規格(JIS)Z 0238 : 1998「ヒートシール軟包装袋及び 半剛性容器の試験方法Testing methods for heat sealed flexible packages 」に基づく。
サンプルs1~s7については、図4へ示すシール部分Sを形成するものとし、上記シール部分Sについて上記試験を行った。
【0028】
図3へ示す試験結果を見ると、本発明の一実施例であるサンプルs1、s3及びs5においてシール強度は何れも30N/15mm以上であり、実用的なシール強度を確保していることが確認できる。比較例としたサンプルs2及びs7では、シール強度は3N/15mmを超えるものではなく、上記実施例のシール強度との差は明白である。
尚サンプルs4及びs6はシール強度に問題はないものの目的とする密閉性の効果は得られないので比較例とした。
また、素材LLDPEのみであると(サンプルs4,s6)、包装内(内側)から包装外(外側)への酸素の微量漏れが有った。LLDPE内面コート(サンプルs2,s4)のについては(LLDPE内面コートなしの通気性を100%として)通気性80%確保が確認できた。VM-PETとのラミネートはほぼ外漏れ(包装の内側から外側への酸素の漏れ)がなかった(サンプルs1,s3,s5)。包装の最も内側即ち被包装物と対面する面への鮮度維持材(鮮度維持層2)のコート(サンプルs2,s7)については、予想通り鮮度維持の性能は高いものであったが、シール性能は低い。ラミネート層を挟んで鮮度維持材の両面コートを行えば、最も大きな効果が得られた(サンプルs1)。
図3のO2消費量というのは、活性酸素(ROS)を包装へ封入した際、当該活性酸素が不活性酸素へ転換する転換量を指す。当該転換量が大きいほど、鮮度維持の効果が高いと言える。図3へ示す通り、鮮度維持層2にI-SCHを用いるサンプルs1~s7では何れもO2消費量が0.6を超えていることが確認でき、I-SCHにより有効な鮮度維持を期待できる。
【0029】
表1~表5へ鮮度維持に関する試験結果を示す。各表のフィルム構成は、図3のサンプル構成へ示すサンプルs1、s3~s9と同様である。即ち、当該試験において、通気性シート層1には東洋紡株式会社の上記厚さ30μmのLLDPE♯30 L4102を、鮮度維持層2には出願人アイム株式会社の上記I-SCHを、低通気性シート層4には尾池工業株式会社の上記厚さ12μmのVMPET♯12テトライトを、補強シート層5には東洋紡株式会社の上記厚さ15μmのOPP♯25 P5573を、ガラス封止層6には厚さ0.25mmのガラス板を採用した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1のサンプルs1、s3~s9の各データは、被包装物(対象物)をバナナとし包装後6日経過後の変色(黒色化)の状況を目視により観察した結果を示す。◎は黒色化が全く見られなかったこと、○は黒色化が殆ど見られなかったこと、△は一部に黒色化が見られたこと、×はほぼ全体に黒色化が見られたことを示す。
表1のサンプルs1、s3~s7の夫々の鮮度維持層は、ホストをα-シクロデキストリンとし、ゲストを1-メチルシクロプロペンとする包接体である。
表1へ示す通り、サンプルs1,s7の構成ではバナナの黒色化は全く見られず、サンプルs3,s4の構成では黒色化が殆ど見られず、サンプルs5,s6の構成では部分的に黒色化が見られたが問題のない範囲であり、サンプルs8,s9の構成では全体に黒色化が見られた。
【0032】
【表2】
【0033】
表2のサンプルs1、s3~s9の各データは、被包装物(対象物)を牛肉とし包装後3日経過後の変色・匂いの状況を目視による観察と嗅覚により調べた結果を示す。◎は変色・異臭が全く無かったこと、○は変色・異臭が殆ど無かったこと、△は一部に変色・若干の異臭の発生が有ったこと、×はほぼ全体に変色・異臭の発生が有ったことを示す。
表2のサンプルs1、s3~s7の夫々の鮮度維持層は、ホストをγ-シクロデキストリンとし、ゲストをαリポ酸とする包接体である。
表2へ示す通り、サンプルs1,s7の構成では牛肉の変色及び異臭の発生は全く無く、サンプルs3,s4の構成では変色及び異臭の発生が殆ど無く、サンプルs5の構成では部分的な変色・若干の異臭の発生が認められたが問題ない範囲であり、サンプルs9の構成では全体的な変色と異臭の発生が認められた。
【0034】
【表3】
【0035】
表3のサンプルs1、s3~s9の各データは、被包装物(対象物)をイチゴとし包装後6日経過後のカビの発生・変色の状況を目視により観察した結果を示す。◎はカビ・変色が全く見られなかったこと、○はカビ・変色が殆ど見られなかったこと、△は一部にカビ・変色が見られたこと、×はほぼ全体にカビ・変色が見られたことを示す。
表3のサンプルs1、s3~s7の夫々の鮮度維持層は、ホストをヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンとし、ゲストをヨードプロビニルブチルカルバメートとする包接体である。
表3へ示す通り、サンプルs1,s7の構成ではイチコのカビ・変色の発生は全く見られず、サンプルs3,s4,s6の構成ではカビ・変色の発生は殆ど見られず、サンプルs5の構成では部分的なカビの発生と変色が認められたが問題ない範囲であり、サンプルs8の構成では全体的なカビの発生と変色が認められた。
【0036】
【表4】
【0037】
表4のサンプルs1、s3~s9の各データは、被包装物(対象物)をパンとし包装後10日経過後のカビの発生・硬さの状況を目視と手で触ることで調べた結果を示す。◎はカビの発生とバンの硬化が全く無かったこと、○はカビの発生とパンの硬化が殆ど無かったこと、△は一部にカビの発生とパンの硬化が有ったこと、×はほぼ全体にカビの発生とパンの硬化が有ったことを示す。
表4のサンプルs1、s3~s7の夫々の鮮度維持層は、α-シクロデキストリンとし、ゲストをエタノールとする包接体である。
表4へ示す通り、サンプルs1の構成ではカビの発生とパンの硬化は全く無く、サンプルs3,s4,s6の構成ではカビの発生とパンの硬化は殆ど無く、サンプルs5の構成では部分的なカビの発生とパンの硬化が認められたが問題ない範囲であり、サンプルs8,s9の構成では全体的なカビの発生とパンの硬化が認められた。
【0038】
【表5】
【0039】
表5のサンプルs1、s3~s9の各データは、被包装物(対象物)を魚とし包装後2日経過後の変色・匂いの状況を目視による観察と嗅覚により調べた結果を示す。◎は変色・異臭が全く無かったこと、○は変色・異臭が殆ど無かったこと、△は一部に変色・若干の異臭の発生が有ったこと、×はほぼ全体に変色・異臭の発生が有ったことを示す。
表5のサンプルs1、s3~s7の夫々の鮮度維持層は、ホストをメチルβ-シクロデキストリンとし、ゲストをアミノ酸とする包接体である。
表5へ示す通り、サンプルs1,s7の構成では魚の変色及び異臭の発生は全く無く、サンプルs3,s4の構成では変色及び異臭の発生が殆ど無く、サンプルs5,s6の構成では部分的な変色・若干の異臭の発生が認められたが問題ない範囲であり、サンプルs8,s9の構成では全体的な変色と異臭の発生が認められた。
【0040】
表1~表5へ示す結果から、本発明の実施例であるサンプルs1,s3,s5の構成はシール強度と共に実用的な範囲で鮮度維持の能力を確保していることが確認できる。特に本発明の実施例であるサンプルs1,s3はシール強度と共に良好な鮮度維持の能力を発揮することが確認でき、その中でもサンプルs1は鮮度維持材及び対象物の何れにおいても、極めて良好なシール挟持と共に鮮度維持の能力を発揮することが確認できる。
上記表1~表5におけるサンプルs1の結果から図1(B)の構成が鮮度維持とシール強度の確保に極めて優れ、表1~表5におけるサンプルs3及びs5の結果から鮮度維持とシール強度の確保について図1(A)の構成がサンプルs1に次いで優れたものであることが把握できる。
【0041】
(小括)
前述の通り、シクロデキストリン(CD)を使った鮮度保持層同士は、CDの融点が高いことで、シール強度が著しく低下する(図4(C))。そこで、本発明は、通気性(酸素透過度)のあるフィルムをシール面にして(図4(A)(B))、シール面で無い面(後述の非シール領域)にCD(鮮度保持層)を塗工することで、素材のシール強度を維持するというメカニズムを創出したものである。
【0042】
即ち本発明は、食品等の被包装物mを包装する包装資材であって、少なくとも、前記被包装物を包装する包装主材と、前記包装主材の前記被包装物を臨む面に設けられた鮮度維持層2と、鮮度維持層2の被包装物mを臨む面に設けられた通気性を有する通気性層(通気性シート層1)とを備え、上記包装主材は、1つ又は複数の低通気性層(低通気性シート層4)にて構成され、当該低通気性層又は前記包装主材を構成する他の層は第1の樹脂にて形成されたものであり、前記通気性層は、前記低通気性層よりも通気性が高いものであり、鮮度維持層2は、環状オリゴ糖(CD)を有するものであり、上記通気性層は、第2の樹脂にて形成され、前記第2の樹脂は、鮮度維持層2同士を熱融着した場合に比べて前記第2の樹脂同士の熱融着を強固なものとすることが可能な樹脂である包装資材を提供する。
【0043】
(変更例)
本発明において、上記包装資材について、前述のように包装袋などの被包装物mを包むもののみならず、包まずに被包装物mを上に乗せるものや、間に挟むもの、下に敷くだけのシートとしてもよい。
包装袋として本発明に係る包装資材を加工する場合、製袋機にてシールしたい部分の樹脂を熱で溶かして接着するヒートシール(ヒートシール方式)を利用することができる。
上記ヒートシール(ヒートシール方式)を利用する場合、周知の熱プレスシール方式とサイドシール(溶断シール)方式の何れを利用するものであってもよい。
サイドシール(溶断シール)方式の製袋機を利用する場合、フィルムが溶けてしまうことを利用し瞬間的にシールしたい部分を溶かして接着する。三方シールやスタンドパック、チャック袋などはラミネートフィルムを使用するものであり、袋の内側のフィルム層に、外側よりも溶融(溶かして接着する)温度が低い樹脂を使用することで、強い接着が可能である。
【0044】
図1(A)の例では、鮮度維持層2と低通気性シート層4との間を第1ラミネート層3aとしたが、図1(B)へ示す通り、通気性シート層1と鮮度維持層2との間を第1ラミネート層3aとしてもよい。
また図1(C)へ示す通り、上記鮮度維持層2を第1鮮度維持層2aとし、第1鮮度維持層2aとは別に、上記第1ラミネート層3aと上記低通気性シート層4との間へ環状オリゴ糖を含む第2鮮度維持層2bを備えるものとしても実施できる。
この場合、低通気性シート層4は特にVM-PETフィルムとするのが好ましい。
図1(C)の第2鮮度維持層2b及び第1鮮度維持層2aは、何れも図1(A)の鮮度維持層2と同様シクロブキストリンを含む上述の何れかの組成物を主成分とする。
【0045】
また、図1(D)へ示す通り、包装の最も内側に位置する上記の通気性シート層1を第1通気性シート層1aとして、図1(C)において上記低通気性シート層4としたVM-PETフィルムに代えてVM-PETフィルムの位置に当該第2通気性シート層1bとしてLLDPEフィルムを排するものとしても実施できる。図1(D)の場合、補強シート層5であるナイロンフィルムが低通気性シート層4を兼ねる。
尚、図1(C)及び図1(D)へ示す例において、上記鮮度維持層2は第1鮮度維持層2aであり、上記包装資材は、第1鮮度維持層2aと、第1鮮度維持層2aとは別の第2鮮度維持層2bの、2つの鮮度維持層を備えるものとしたが、上記鮮度維持層2は、第1鮮度維持層2aと第1ラミネート層3aと第2鮮度維持層2bとにて構成された1つの層と考えてもよい。
図1(B)~(D)の例について特に言及しない事項については図1(A)に示す実施の形態と同様である。
【0046】
また上述してきた実施の形態以外に、図4(B)へ示すように包装資材は、包装の内側から順に、上記鮮度維持層2と、上記通気性シート層1と、上記低通気性シート層4の、少なくとも3層を備えるものとすることができる。通気性シート層1は、鮮度維持層2に覆われた(鮮度維持層2に対面する)非シール領域(シール部分S以外の内側領域)と、鮮度維持層2に覆われていない(鮮度維持層2に対面しない)シール領域(シール部分Sとなる領域)とを備える。上述してきた実施の形態と同様、通気性シート層1は、低通気性シート層4よりも通気性が高く、鮮度維持層2よりも融点の低い樹脂層とすることができる。このように形成しても、本願の課題である鮮度維持層2と被包装物との間の通気性の確保とシール強度の向上の両立を図ることができる。
【0047】
特に図4(B)へ示す例では、鮮度維持層2について通気性シート層1を介することなく直接食品(被包装物m)に触れる位置に配置されるので、鮮度維持の効率が極めて良い。また、通気性シート層1は鮮度維持層2の内側に配されて食品に対し鮮度維持層2を覆うものではないが、上記のシール性を阻害しない。
本発明に係る包装資材は、食品を包装する食品包装資材に限定するものではない。本発明に係る包装資材は、食品の他、薬剤や金属を収容するものであってもよく、臭気を発する汚物や廃棄物を収容するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 通気性シート層
2 鮮度維持層
2a 第1鮮度維持層
2b 第2鮮度維持層
3a ラミネート層(第1ラミネート層)
3b ラミネート層(第2ラミネート層)
4 低通気性シート層
5 補強シート層
L 梱包シート(包装資材)
L1(高通気性)シート
L2 シート
図1
図2
図3
図4