(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】尿処理材
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20231115BHJP
A01K 1/01 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A01K1/015 A
A01K1/01 801H
(21)【出願番号】P 2022134786
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2021016867の分割
【原出願日】2021-02-04
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020078435
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593013317
【氏名又は名称】進展工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 弘
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216661(JP,A)
【文献】特開2012-130285(JP,A)
【文献】特開2016-36311(JP,A)
【文献】特開2005-6604(JP,A)
【文献】特開2018-104860(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108619895(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
A01K 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿の通過を許容し該尿中のアンモニアを中和処理するアンモニア中和処理部と、このアンモニア中和処理部の下方に設けられ該アンモニア中和処理部を通過した中和処理済みの尿を吸収する尿吸収部とから成る尿処理材であって、前記アンモニア中和処理部は、尿を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シートと、この尿拡散シートの下方に設けられアンモニアを中和するアンモニア中和部材とで構成され、前記尿拡散シートの下面には通液性を有する袋体が設けられ、この袋体に前記アンモニア中和部材が収納されていることを特徴とする尿処理材。
【請求項2】
請求項1記載の尿処理材において、前記尿吸収部は、尿を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シートと、この尿拡散シートの下方に設けられ吸液により膨張する高分子吸収部材とで構成され、更に、前記尿吸収部は上下に複数設けられていることを特徴とする尿処理材。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の尿処理材において、前記アンモニア中和部材はクエン酸であることを特徴とする尿処理材。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の尿処理材において、前記アンモニア中和処理部及び前記尿吸収部は、通液性を有する外袋体に収納されていることを特徴とする尿処理材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿処理材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、例えば猫や犬などのペット用のトイレで使用する尿処理材として特願2020-67957号に開示される尿処理材(以下、従来例という。)を提案している。
【0003】
この従来例は、通液性を有する袋体に多孔質粒状部材(籾殻炭)を収納した臭い吸着部と、この臭い吸着部の下方に設けられ該臭い吸着部を通過した尿を吸収する尿吸収部とから成り、ペットがした尿は臭い吸着部を浸透通過し、この臭い吸着部を浸透通過した尿は尿吸収部で吸収保持される。
【0004】
本発明者は、実際に従来例でペットの尿を処理した後、その周囲にアンモニア臭がほとんどしないことを確認している。
【0005】
これは、臭い吸着部(籾殻炭)の匂い吸着効果による。しかも、尿は時間の経過とともにアンモニア臭が強くなるところ、臭い吸着部に落下した尿が該臭い吸着部を直ちに通過して尿受け部の底部(尿吸収部)に溜まり、アンモニア臭が強くなる頃には既に臭い吸着部が所謂蓋となってアンモニア臭の拡散を抑制しているからと考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばペットの肝機能の低下に伴い尿中のアンモニア濃度が通常よりも高くなると、臭い吸着部(籾殻炭)の匂い吸着効果だけでは十分にアンモニア臭の拡散を抑制できない場合がある(臭い吸着部を構成する籾殻炭を増量するにも限界がある。)。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑み開発されたものであり、従来にない作用効果を発揮する実用的な尿処理材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
尿60の通過を許容し該尿60中のアンモニアを中和処理するアンモニア中和処理部1と、このアンモニア中和処理部1の下方に設けられ該アンモニア中和処理部1を通過した中和処理済みの尿60を吸収する尿吸収部2とから成る尿処理材であって、前記アンモニア中和処理部1は、尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられアンモニアを中和するアンモニア中和部材4とで構成され、前記尿拡散シート3の下面には通液性を有する袋体8が設けられ、この袋体8に前記アンモニア中和部材4が収納されていることを特徴とする尿処理材に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の尿処理材において、前記尿吸収部2は、尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられ吸液により膨張する高分子吸収部材5とで構成され、更に、前記尿吸収部2は上下に複数設けられていることを特徴とする尿処理材に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の尿処理材において、前記アンモニア中和部材4はクエン酸であることを特徴とする尿処理材に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の尿処理材において、前記アンモニア中和処理部1及び前記尿吸収部2は、通液性を有する外袋体6に収納されていることを特徴とする尿処理材に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、アンモニア臭により周辺環境が害されることを可及的に抑制できるなど、従来にない作用効果を発揮する実用的な尿処理材となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】実施例1に係る尿拡散シート3の尿拡散性能を確認するための試験結果を示すグラフ及び表である。
【
図7】実施例1を使用するペット用トイレXの説明図である。
【
図8】実施例1を使用するペット用トイレXの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
例えばアンモニア中和処理部1へ落下した尿60は該アンモニア中和処理部1を通過する際に中和され、このアンモニア中和処理部1を通過した中和処理済みの尿60は尿吸収部2へ到達して吸収される。
【0018】
ところで、アンモニア中和処理部1は、尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられアンモニアを中和するアンモニア中和部材4とで構成されており、この構成から、アンモニア中和処理部1を通過する尿60は良好に中和処理される。
【0019】
即ち、商品化した際のコスト面等の問題から実際に使用されるアンモニア中部材4の量は限定されるところ、所定量のアンモニア中和部材4で中和処理できる尿60の量には限界がある為、仮にアンモニア中和処理部1の一箇所に集中して尿60が通過してしまうと、十分に中和処理されないまま尿吸収部2へ到達して吸収してしまう場合があり、アンモニア臭が拡散することになる。
【0020】
この点、本発明は、アンモニア中和処理部1に落下した尿60は尿拡散シート3を介して拡散することで確実にアンモニア中和部材4に触れて中和処理されて通過することになり、よって、アンモニア臭の発生を可及的に防止する(若しくは発生したアンモニア臭を除去する)ことができ、しかも、必要以上の量のアンモニア中和部材4を使用せずに効率良く中和処理することができる。
【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施例1>
本実施例は、トイレ装置Xで使用されるものであり、尿60の通過を許容し該尿60中のアンモニアを中和処理するアンモニア中和処理部1と、このアンモニア中和処理部1の下方に設けられ該アンモニア中和処理部1を通過した中和処理済みの尿60を吸収する尿吸収部2とから成る尿処理材Pである。
【0023】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0024】
アンモニア中和処理部1は、
図1,2に図示したように尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられアンモニアを中和するアンモニア中和部材4とで構成されている。
【0025】
この尿拡散シート3は極めて吸水性の高い紙製である。
【0026】
具体的には、本実施例では、尿拡散シート3としてペーパーインテリジェンス株式会社製のペーパータオルを採用しており、この尿拡散シート3は極めて秀れた液体拡散性能(後述する外袋体6を構成する部材よりも秀れた液体拡散性能)を具備している。
【0027】
従って、
図3に図示したように尿拡散シート3に尿60が落下した際、放射方向に素早く拡散することになる。
【0028】
図4は、本出願人が実際に行った尿拡散シート3の尿拡散性能を確認するための試験結果を示すグラフ及び表であり、一般の新聞紙と比べても滴下した尿が所定の面積まで素早く拡散しており、極めて尿拡散性に優れていることが分かる。
【0029】
また、尿拡散シート3の下方(下面)には、尿60中のアンモニアを中和するアンモニア中和部材4が設けられている。
【0030】
具体的には、
図5に図示したように尿拡散シート3の表面に接着剤(スプレー糊S)を塗布し、このスプレー糊Sを噴射塗布した面が容器に収納された粉状(若しくは粒状)のアンモニア中和部材4が付着するように配して該アンモニア中和部材4(アンモニア中和層)が設けられている。
【0031】
本実施例では、アンモニア中和部材4としては、株式会社センターバレイ製のクエン酸が採用されている。
【0032】
また、本実施例は、アンモニア中和処理部1として構成する場合、
図1,2,3,5に図示したように尿拡散シート3を外袋体6内に上下複数枚(2枚)積層状態に収納し、この各尿拡散シート3の間にアンモニア中和部材4から成る中和層が設けられるように構成されている。
【0033】
具体的には、上の尿拡散シート3は下面にアンモニア中和部材4が設けられ、下の尿拡散シート3は上面にアンモニア中和部材4が設けられた状態となる。
【0034】
本実施例では、尿処理材Pとして構成する場合、外袋体6内に尿吸収部2の上部にアンモニア中和処理部1を設けて構成されている。尚、この尿吸収部2及びアンモニア中和処理部1の数は適宜変更し得るものである。
【0035】
従って、アンモニア中和処理部1を備えることで、アンモニア臭の発生を可及的に防止する(若しくは発生したアンモニア臭を除去する)ことができ、アンモニア臭により周辺環境が害されることを抑制することができる。
【0036】
尿吸収部2は、尿を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられ吸液により膨張する吸収部材5とで構成されている。
【0037】
この尿吸収部2を構成する尿拡散シート3もアンモニア中和処理部1で採用されたものと同一のものが採用されている。
【0038】
また、尿拡散シート3の下方(下面)には、吸液により膨張する吸収部材5が設けられている。
【0039】
具体的には、
図5に図示したように尿拡散シート3の表面に接着剤(スプレー糊S)を塗布し、このスプレー糊Sを噴射塗布した面が容器に収納された粉状(若しくは粒状)の吸収部材5(高分子吸収部材)が付着するように配して該吸収部材5(液体吸収層)が設けられている。
【0040】
本実施例では、高分子吸収部材5としては、三洋化成株式会社製のサンフレッシュST-250(登録商標)・ST900E/アクリル酸モノマー含有の樹脂/アクリル酸塩系(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物の高吸水性樹脂)が採用されている。
【0041】
また、本実施例は、尿吸収部2として構成する場合、
図1,2,3,5に図示したように外袋体6内に尿拡散シート3を上下複数枚(2枚)積層状態に収納し、この各尿拡散シート3の間に吸収部材5から成る吸収層が設けられるように構成されている。
【0042】
具体的には、上の尿拡散シート3は下面に吸収部材5が設けられ、下の尿拡散シート3は上面に吸収部材5が設けられた状態となる。尚、尿拡散シート3の数は2枚に限らず適宜変更し得るものである。
【0043】
また、本実施例では、アンモニア中和処理部1及び尿吸収部2は、通液性を有する外袋体6に収納されている。
【0044】
この外袋体6は、福助工業株式会社製の不織布製平袋(クロスパック(E)30-45)を採用している。
【0045】
本実施例では、
図5に図示したように所定大きさの袋を用意し、この袋を熱融着(ヒートシールH)により複数に区分けして複数の外袋体6を設けた構成であり、各外袋体6内にアンモニア中和処理部1及び尿吸収部2を収納している。
【0046】
また、本実施例では、外袋体6は前述した吸収部材5が吸液による膨張する量を考慮して必要な容量となるように設定されている。吸収部材5は膨張することが出来なくなるとそれ以上は液体を吸収しなくなるからである。
【0047】
また、本実施例は、アンモニア中和処理部1及び尿吸収部2は不通水性を有するシート体7の上部に設けられて扁平形状体に構成されている。
【0048】
このシート体7は、適宜な合成樹脂製の部材(ポリプロピレン)を方形シート状に加工した不通水性(遮水性)を有するものである。
【0049】
尚、シート体7は、不通水性を有するものであればポリプロピレンに限らず、ポリエチレン、ポリエステルなどでも良く、合成樹脂以外の材質の物でも良い。
【0050】
また、本実施例は、後述するトイレ装置X(トイレ本体部20に引き出し部24が出し入れ自在に設けられたトイレ)に適用するようにそのサイズ(縦横の外形寸法及び厚さ寸法)が設定されている。
【0051】
また、本実施例は、このシート体7にアンモニア中和処理部1及び尿吸収部2が収納された外袋体6の周縁部を熱融着(ヒートシール)して一体化させている。
【0052】
従って、シート体7によりトイレ装置Xやその周辺が汚れることが防止され、しかも、使用後の処理が衛生的に行えることになる。
【0053】
図6は、外袋体6内にしてアンモニア中和処理部1の上部に臭い吸着部10を設けた場合(別構成例)である。
【0054】
この臭い吸着部10は、尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられ臭いを吸着する多孔質粒状部材11とで構成されている。
【0055】
この臭い吸着部10を構成する尿拡散シート3もアンモニア中和処理部1及び尿吸収部2で採用されたものと同一のものが採用されている。
【0056】
また、尿拡散シート3の下方(下面)には、臭いを吸着する多孔質粒状部材11が設けられている。
【0057】
具体的には、尿拡散シート3の表面に接着剤(スプレー糊S)を塗布し、このスプレー糊Sを噴射塗布した面が容器に収納された粉状(若しくは粒状)の多孔質粒状部材11が付着するように配して該多孔質粒状部材11(臭い吸着層)が設けられている。
【0058】
本実施例では、多孔質粒状部材11は籾殻炭であり、この籾殻炭は、本出願人が特開2011-67809で提案する撥水性籾殻炭(籾殻炭のグラファイト含有量を、籾殻炭1g当たり0.5g以上とし、含水率20%以下としたもの)が採用されている。
【0059】
具体的には、含水率10%以下で、カーボングラファイトが0.5g以上含有した撥水性の高い籾殻炭が採用されている。
【0060】
従って、臭い吸着部10に尿60が落下した際、この臭い吸着部10を構成する尿拡散シート3で尿が拡散した後、籾殻炭が撥水性であるから尿60が素早く通過し、そして、多孔質であるから後に上昇するアンモニア臭を確実に吸着することになる。
【0061】
尚、多孔質粒状部材11は籾殻炭に限らず、ソバ殻炭やヤシ殻炭など、本実施例の特性を発揮する水に浮く撥水性の高い多孔質粒状部材11であれば適宜採用するものである。
【0062】
本実施例では、トイレ装置Xとして例えば猫などのペットCが排泄するためのペット用トイレを採用している。
【0063】
具体的には、ペットCが排泄する際に該ペットCが位置する排泄部21がトイレ本体部20の上部に設けられたものであり、排泄部21の底は多数の通液孔21a’が設けられた通液底部21aとして構成され、この通液底部21aにはペットCの砂材23が敷設され、排泄部21の下方位置には、通液孔21a’を通過して落下する尿60を受ける尿受け部としての引き出し部24が設けられている。
【0064】
トイレ本体部20は、
図7,8に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成した所定高さを有する直方体形状の中空箱状体である。尚、トイレ本体部20は木製でも金属製(ステンレス)でも良い。
【0065】
排泄部21は、
図7,9に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成した容体であり、トイレ本体部20の上部開口部に着脱自在に設けられており、底部には多数の通液孔21a’が設けられた通液底部21aが設けられている。
【0066】
尚、排泄部21を構成する容体は金属製でも良い。
【0067】
また、通液底部21aには通液孔形成領域が設けられ、この通液孔形成領域の周辺領域には該通液孔形成領域へ向けて傾斜する傾斜部21bが設けられている。
【0068】
また、本実施例では、後述する引き出し部24の上部開口部24aは、この通液底部21aの通液孔形成領域より広い開口面積に設定されている。
【0069】
また、トイレ本体部20の周面部には横長方形状の開口部20aが設けられており、この開口部20aは、引き出し部24を出し入れ自在に設ける部位である。
【0070】
引き出し部24は、
図7,8に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成した平面視方形状の上部開口部24aを有するトレー形状体である。尚、引き出し部24は金属製(ステンレス)でも木製でも良い。
【0071】
また、引き出し部24は、開口部20aからトイレ本体部20内にして排泄部21の下方位置に配され、通液底部21aを通過して落下する尿60を後述するように尿処理材Pで受けることになる。
【0072】
符号24bは取手部である。
【0073】
また、本実施例では、トイレ装置Xの引き出し部24の所定位置に配設した尿吸収機能を有する扁平形状の尿処理材Pを当該位置に固定するための固定具15を設けている。
【0074】
具体的には、この固定具15は、
図8,9に図示したように適宜な金属製(ステンレス製)の丸棒部材を屈曲形成し、端部同士を溶接して構成された平面視方形状の枠状体であり、所定の重量(約1kg)を有し、引き出し部24に配設された尿処理材Pの周端部に添設状態で載置される4つの棒状重り部15’を有する構成である。尚、固定具15は、前述した形状に限らず、棒状重り部15’をコ字形状,L字形状若しくはH字形状に配した構成でも良いなど、尿処理材Pの周端部に添設状態で載置して固定することができ、しかも、前述したトイレ装置Xの排泄部21から落下してくる尿60を尿処理材Pで受けるに邪魔とならない形状であれば良い。
【0075】
また、本実施例では、
図8に図示したように固定具15の前後対向位置に配される棒状重り部15’同士間に棒状部材16が架設されており、この棒状部材16は、棒状重り部15’を尿処理材Pの周端部に添設状態で載置した際、該尿処理材Pの上面に載置されるように構成されている。
【0076】
この棒状部材16は、適宜な金属製(ステンレス製)の丸棒部材で構成されており、固定具15の前後対向位置に配される棒状重り部15’夫々に端部を溶接することで架設されている。
【0077】
この棒状部材16の両端部16’は、所定位置から下方へ傾斜するよう屈曲形成されており、この棒状部材16の端部上面16a’は外方へ向けて下り傾斜する傾斜面となる。
【0078】
この構成から、棒状部材16の上面16aは棒状重り部15’の上面15aよりも上方に位置するように設けられると共に、棒状部材16の下面16bは棒状重り部15’の下面15bよりも上方に位置するように設けられており、固定具15を適宜な平坦部に載置した際、棒状重り部15’は平坦部に接地し、棒状部材16は平坦部から所定高さ位置に配されることになる。
【0079】
従って、固定具15により尿処理材Pを固定する際、棒状重り部15’は尿処理材Pの周端部に添設状態で載置され、棒状部材16は尿処理材Pに触れる程度(棒状重り部15’が尿処理材Pに触れるよりも弱い力で触れる程度)に載置される。
【0080】
また、棒状部材16は、例えば尿処理材Pが膨張するなどして該尿処理材Pの上面がトイレ本体部20の開口部20a(上縁)よりも高い位置に達した場合、引き出し部24を引き出した際に棒状部材16の端部上面16a’及び上面16aが開口部20aの縁20a’(開口上縁)に当接することで、固定具24が下方へ誘導されて尿処理材Pを押さえ付ける状態となり、尿処理材Pが開口部20aに引っ掛かることなく引き出し部24を引き出せることになる。
【0081】
以上の構成から成る尿処理材P及びトイレ装置Xを用いた尿処理方法について説明する。
【0082】
ペットCが排泄部21上に乗り、砂材23に糞と尿60をすると、糞は砂材23に載置され、一方、尿60は砂材23及び通液底部21aを通過して、引き出し部24に配された尿処理材Pのアンモニア中和処理部1に落下する。
【0083】
このアンモニア中和処理部1へ落下した尿60は該アンモニア中和処理部1を通過する際に中和される。
【0084】
具体的には、アンモニア中和処理部1を尿60が通過する際、尿60は尿拡散シート3で吸収して毛細管現象により拡散され、この尿拡散シート3で拡散させた尿60はアンモニア中和部材4で中和処理される。
【0085】
このアンモニア中和処理部1を通過した中和処理済みの尿60は尿吸収部2へ到達して吸収される(
図10参照)。
【0086】
具体的には、この尿吸収部2で尿60を吸収する際、尿60は尿拡散シート3で吸収して毛細管現象により拡散され、この尿拡散シート3で拡散させた尿60を吸収部材5が吸収しながら膨張する。
【0087】
また、本実施例は、尿拡散シート3を介して尿60が拡散されることで、尿拡散シート3の下方に設けられる吸収部材5は均一的に膨張することになる。このことから、一部分が極端に膨張する場合に比し、尿60を迅速且つ良好に吸収保持することができ、引き出し部24の引き出しに支障を来す事も防止される。
【0088】
本実施例は上述のように構成したから、アンモニア臭により周辺環境が害されることを可及的に抑制できることになる。
【0089】
即ち、アンモニア中和処理部1は、尿60を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられアンモニアを中和するアンモニア中和部材4とで構成されており、この構成から、アンモニア中和処理部1を通過する尿60は良好に中和処理され、よって、アンモニア臭の発生を可及的に防止する(若しくは発生したアンモニア臭を除去する)ことができ、しかも、必要以上の量のアンモニア中和部材4を使用せずに効率良く中和処理することができる。
【0090】
また、本実施例は、アンモニア中和部材4はクエン酸であるから、尿60を確実に中和処理することができる。
【0091】
また、本実施例は、アンモニア中和処理部1は尿拡散シート3を上下複数枚備え、この各尿拡散シート3の間にアンモニア中和部材4が設けられているから、この点においても尿60を確実に中和処理することができる。
【0092】
また、本実施例は、尿吸収部2は、尿を吸収して毛細管現象により拡散する尿拡散シート3と、この尿拡散シート3の下方に設けられ吸液により膨張する吸収部材5とで構成されているから、アンモニア中和処理部1で処理された中和処理済みの尿60を良好に吸収することができる。
【0093】
また、本実施例は、吸収部材5は高分子吸収部材であるから、尿60を確実に吸収保持することができる。
【0094】
また、本実施例は、尿吸収部2は尿拡散シート3を上下複数枚備え、この各尿拡散シート3の間に吸収部材5が設けられているから、この点においても尿60を確実に吸収保持することができる。
【0095】
また、本実施例は、尿拡散シート3は紙製であるから、前述した尿60を拡散する作用が確実に発揮される。
【0096】
また、本実施例は、アンモニア中和処理部1及び尿吸収部2は、通液性を有する外袋体6に収納されているから、アンモニア中和処理部1及び尿吸収部2は夫々その機能を確実に発揮することができ、しかも、バラバラにならず取り扱い性が極めて良好となる。
【0097】
また、本実施例は、アンモニア中和処理部1及び尿吸収部2は不通水性を有するシート体7の上部に設けられているから、このシート体7によりトイレ装置Xやその周辺が汚れることが防止され、しかも、使用後の処理が衛生的に行えることになる。
【0098】
<実施例2>
本実施例は、アンモニア中和部材4が通液性を有する袋体8に収納された状態で尿拡散シート3の下方に設けられた場合である。
【0099】
具体的には、アンモニア中和処理部1を構成すべく、例えば尿拡散シート3の下方に約40gのアンモニア中和部材4(クエン酸)を設ける場合、
図14に図示したように通液性を有する2つの袋体8にアンモニア中和部材4をそれぞれ約20g収納し、この袋体8を尿拡散シート3の表面左右位置に付着するように配してアンモニア中和部材4(アンモニア中和層)が設けられている。尚、袋体8は、前述した外袋体6と同様、福助工業株式会社製の不織布製平袋(クロスパック(E)30-45)を採用している。
【0100】
この構成から、例えば必要最低限の量のアンモニア中和部材4を、簡易且つ確実に尿拡散シート3の下方の必要な部位に片寄りすることなく配することができる。
【0101】
また、本実施例では、尿吸収部2の製造に際して、尿拡散シート3の表面に接着剤(スプレー糊S)スプレー糊Sでなく刷毛9で糊S´を塗布し、この糊S´を塗布した面に粉状(若しくは粒状)の吸収部材5(高分子吸収部材)を付着させることで該吸収部材5(液体吸収層)が設けられている(
図14参照)。
【0102】
その余は実施例1と同様である。
【0103】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0104】
1 アンモニア中和処理部
2 尿吸収部
3 尿拡散シート
4 アンモニア中和部材
5 高分子吸収部材
6 外袋体
8 袋体
60 尿