(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20231115BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231115BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/28 102
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019146402
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 泰宏
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-212389(JP,A)
【文献】特開2011-161682(JP,A)
【文献】特開平11-342575(JP,A)
【文献】特開2001-158069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系フィルムであって、
該ポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されており、
前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミド
及び芳香族ポリアミドを含有し、
前記ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有し、
芳香族ポリアミドを含有し、
前記熱可塑性樹脂層(C)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有し、
該ポリアミド系フィルムの全体厚みに対して、
前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%の厚みを有し、
前記ポリアミド層(B)の2層合計と前記熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、41%~59%厚みを有し、
前記熱可塑性樹脂層(C)は、2%~16%の厚みを有する、
ポリアミド系フィルム。
【請求項2】
前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを80重量%以上含有し、芳香族ポリアミドを20重量%以下含有する、
請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
ポリアミド系フィルムであって、
該ポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されており、
前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを含有し、
前記ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有し、
前記熱可塑性樹脂層(C)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有
し、
該ポリアミド系フィルムの全体厚みに対して、
前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%の厚みを有し、
前記ポリアミド層(B)の2層合計と前記熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、41%~59%厚みを有し、
前記熱可塑性樹脂層(C)は、2%~16%の厚みを有する、
ポリアミド系フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる熱可塑性エラストマーである、請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上である、請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン樹脂を含むフィルムは、ガスバリア性、強靭性等を有するフィルムとして各方面で多用されており、特に、商品の包装に広く利用されている。このフィルムは、市場に流通する食品等の包装フィルムとして好ましく用いられる。しかし、その搬送、運搬等においてピンホールが生じる場合があり、内容物の保護の観点から、様々な改良が進められている。
【0003】
本出願人は、ポリアミドを86重量%~98重量%、及び耐屈曲剤を2重量%~14重量%含有するポリアミド層を少なくとも有するポリアミド系フィルムを開発している(特許文献1)。このポリアミド系多層フィルムは、屈曲に耐えるソフト性と、繰り返し接触による磨耗に耐える硬さとを備えた、優れた耐ピンホール性を有している。このポリアミド系フィルムは、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れ、優れた耐突刺し性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
常温環境下で輸送される食品包装用袋に比べ、低温環境下、特に冷凍状態で輸送される食品用包装袋等では、冷凍環境下によりフィルムの耐衝撃性が低下すると共に、内容物が凝固する為、強い衝撃が加わると、破れや破袋の発生が高くなる傾向にある。発生した破れや破袋により、内容物が袋の外へ出てしまう等のトラブルが発生していた。
【0006】
本発明は、低温の状態、特に冷凍状態で輸送される食品の包装用として、衝撃に耐えること(耐衝撃性)に優れたポリアミド系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。
【0008】
本発明者は、特定のポリアミド系フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、下記のポリアミド系フィルムを提供する。
【0010】
項1.
ポリアミド系フィルムであって、
該ポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されており、
前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを含有し、
前記ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有し、
該ポリアミド系フィルムの全体厚みに対して、
前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%の厚みを有し、
前記ポリアミド層(B)の2層合計と前記熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、41%~59%厚みを有し、
前記熱可塑性樹脂層(C)は、2%~16%の厚みを有する、
ポリアミド系フィルム。
【0011】
項2.
前記熱可塑性樹脂層(C)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又はポリメタキシリレンアジパミドを含有する、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
【0012】
項3.
前記熱可塑性樹脂層(C)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有する、前記項1に記載のポリアミド系フィルム。
【0013】
項4.
前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる熱可塑性エラストマーである、前記項1~3のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。
【0014】
項5.
衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上である、前記項1~4のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリアミド系フィルムは、低温の状態、特に冷凍状態で輸送される食品の包装用として、耐衝撃性に優れたポリアミド系フィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
[1]ポリアミド系フィルム
包装する食品が常温時に液体である冷凍食品の場合、その重量が大きい場合もあり、包装袋は衝撃に耐えること(耐衝撃性)が必要とされる。
【0018】
冷凍技術の向上により、様々な食品を冷凍することができるようになり、食品の長距離移動が可能となっている。
【0019】
本発明のポリアミド系フィルムは、以下の態様を含む。
【0020】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されている。
【0021】
前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを含有する。
【0022】
前記ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有する。
【0023】
本発明のポリアミド系フィルムは、全体の厚みに対して、前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%の厚みを有する。
【0024】
本発明のポリアミド系フィルムは、全体の厚みに対して、前記ポリアミド層(B)の2層合計と熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、41%~59%の厚みを有する。
【0025】
本発明のポリアミド系フィルムは、全体の厚みに対して、前記熱可塑性樹脂層(C)は、2%~16%の厚みを有する。
【0026】
本発明のポリアミド系フィルムは、前記熱可塑性樹脂層(C)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、又はポリメタキシリレンアジパミドを含有する、ことが好ましい。
【0027】
本発明のポリアミド系フィルムは、前記熱可塑性樹脂層(C)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有する、ことが好ましい。
【0028】
本発明のポリアミド系フィルムは、前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる熱可塑性エラストマーである、ことが好ましい。
【0029】
本発明のポリアミド系フィルムは、衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上である、ことが好ましい。
【0030】
本発明のポリアミド系フィルムは、食品包装用フィルム、特に冷凍充填商品、及び冷凍流通商品向けの包装に用いる場合に、冷凍環境下での耐衝撃性に優れるフィルムである。本発明のポリアミド系フィルムは、食品を包装し、食品の搬送、運搬等において、冷凍環境下においても、優れた強靭性を示し、破れや破袋が発生し難い(優れた耐衝撃性)フィルムである。
【0031】
本発明のポリアミド系フィルムは、食品を冷凍状態で長距離移動する際に、有用である。
【0032】
本発明において、「冷凍」とは、食品や原材料等を、通常は-5℃以下、好ましくは-15℃以下、更に好ましくは-25℃以下に冷却して凍結、貯蔵することをいう。
【0033】
(1)ポリアミド層(A)
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されている。
【0034】
ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを含有する。
【0035】
ポリアミド系フィルムの全体の厚みに対して、ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%の厚みを有する。
【0036】
ポリアミド
ポリアミド層(A)は、ポリアミドとして、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等を含む。ポリアミドとして、冷凍環境下の耐衝撃性がより優れる点で、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0037】
脂肪族ポリアミド
ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドとして、脂肪族ナイロン及びその共重合体を好ましく用いることができる。
【0038】
脂肪族ポリアミドとして、具体的には、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)等を好ましく用いることができる。
【0039】
脂肪族ポリアミドとして、具体的には、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)等を好ましく用いることができる。
【0040】
これら脂肪族ポリアミドは、1種の使用であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0041】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6の共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン-6、ナイロン-6/6,6であり、特に好ましくはナイロン-6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6とナイロン-6/6,6との組み合わせであることが好ましい。
【0042】
前記組み合わせは、例えばナイロン-6:ナイロン-6/6,6の重量比が50:50~95:5程度であることが好ましい。
【0043】
ポリアミドの相対粘度
本発明のポリアミド系フィルムでは、使用する脂肪族ポリアミドは、JIS K6920-2:2009に準拠した測定方法により、96%H2SO4を溶媒とし、試料濃度1.0重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.0~5.5であることが好ましい。前記相対粘度は、より好ましくは3.2~4.2である。
【0044】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミドとして、前記相対粘度のポリアミドを用いることにより、耐衝撃性をより向上することができる。
【0045】
本発明のポリアミド系フィルムでは、2種以上のポリアミドを混合して用いる場合、前記ポリアミドの相対粘度は、混合される夫々のポリアミドの相対粘度を測定し、加重平均して得られた値を混合されたポリアミドの相対粘度とする。
【0046】
本発明のポリアミド系フィルムは、各層で用いる脂肪族ポリアミドの相対粘度は同じであっても良く、異なっていても良い。
【0047】
本発明のポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド以外のポリアミドを含有してもよい。
【0048】
芳香族ポリアミド
ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドに加えて、芳香族ポリアミドを含有しても良い。
【0049】
芳香族ポリアミドとして、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。芳香族ポリアミドとしては、好ましくは、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD-ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。芳香族ポリアミドの具体例としては、例えば、S-6007、S-6011(いずれも三菱ガス化学株式会社製)が例示される。
【0050】
芳香族ポリアミドとして、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる、非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。芳香族ポリアミドとして、好ましくはヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。上記芳香族ポリアミドの具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)が例示される。
【0051】
ポリアミドの組み合わせ
脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの好ましい組み合わせは、例えばナイロン-6とMXD-ナイロンとの組み合わせ、ナイロン-6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)との組み合わせ等が挙げられる。
【0052】
ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとを混合する場合、ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量は、ポリアミドの量を100重量%として、80重量%~100重量%が好ましく、90重量%~100重量%がより好ましい。
【0053】
ポリアミドとして、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとを含有する場合、ポリアミド中の芳香族ポリアミドの含有量は、ポリアミドの量を100重量%として、0重量%~20重量%が好ましく、0重量%~10重量%がより好ましい。
【0054】
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミドとして、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する場合、より優れた延伸製膜性を示すことができる。
【0055】
(2)ポリアミド層(B)
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されている。
【0056】
ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有し、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有する。
【0057】
本発明のポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミドを主たる構成成分とする層を有する。本発明において「主たる構成成分」とは、当該の層を構成する樹脂成分の全重量を100重量%として、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含まれている成分のことをいう。
【0058】
本発明のポリアミド系フィルムの全体の厚みに対して、ポリアミド層(B)の2層合計と熱可塑性樹脂層(C)で、合わせて、41%~59%の厚みを有する。
【0059】
ポリアミド層(B)が含む熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる、ことが好ましい。
【0060】
ポリアミド
ポリアミド層(B)は、ポリアミドとして、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等を含む。ポリアミドとして、冷凍環境下の耐衝撃性により優れる点で、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0061】
ポリアミド層(B)が使用するポリアミドは、前記ポリアミド層(A)で使用するポリアミドを好ましく使うことができる。
【0062】
ポリアミド層(B)は、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含有する。
【0063】
熱可塑性エラストマー
ポリアミド層(B)は、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含有する。
【0064】
ポリアミド層(B)は、熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0065】
熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性材料である。
【0066】
熱可塑性エラストマーは、ポリアミド系フィルムに冷凍環境下での柔軟性を付与する。
例えば、前記熱可塑性エラストマーの変性体であってもよい。熱可塑性エラストマーにおける改質としては、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質等が挙げられる。極性基の付与は、グラフト変性により行われてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基等が挙げられる。極性基は1種類で又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えば熱可塑性エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体等が含まれる。
【0067】
熱可塑性エラストマーは、1種の使用であっても、2種以上の併用であっても良い。
【0068】
ポリエステル系エラストマー
熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系エラストマーを好ましく用いることができる。
【0069】
ポリエステル系エラストマーとしては、変性ポリエステル系エラストマーが挙げられる。前記変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたものである。
【0070】
ポリエステル系エラストマーとして、具体的には、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58重量%~73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーである。不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト反応及び末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0071】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中の58重量%~73重量%程度である。
【0072】
ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、400~6,000程度が好ましい。
【0073】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩等が挙げられる。
【0074】
ラジカル発生剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0075】
前記各成分の配合割合は、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01重量部~30重量部であり、ラジカル発生剤が0.001重量部~3重量部であることが好ましい。
【0076】
変性ポリエステル系エラストマーの調製方法は特に限定されないが、例えば、特開2002-155135号公報等に記載されている方法により調製することができる。得られる変性ポリエステル系エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、40g/10分~300g/10分であることが好ましい。
【0077】
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠した測定方法により、230℃、2.16kgの条件により測定される値である。
【0078】
前記変性ポリエステル系エラストマーの市販品としては、具体的には、テファブロック
(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0079】
ポリアミド層(B)は、前記ポリエステル系エラストマーに代えて、或は、加えて、他の熱可塑性エラストマーを含有しても良い。
【0080】
熱可塑性エラストマーとして、例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等を用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーは、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、ポリアミド系エラストマーがより好ましい。
【0081】
ポリアミド系エラストマー
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントからなるポリアミド系ブロック共重合体が挙げられる。
【0082】
ポリアミド系ブロック共重合体のハードセグメントを構成するポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω-アミノ脂肪族カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される。具体的には、ε-カプロラクタム等のラクタム、アミノヘプタン酸等の脂肪族ジアミン、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を例示することができる。
【0083】
ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコール成分は、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ-1,2-プロピレングリコール等が挙げられる。
【0084】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点は、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決定されるが、通常は、120℃から180℃の範囲のものが使用される。
【0085】
ポリオレフィン系エラストマー
ポリオレフィン系エラストマーとしては、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト変性或は共重合変性することによって得られる樹脂が挙げられる。
【0086】
ポリオレフィン系エラストマーのベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの単独重合体、これら2種以上のランダム共重合体、これら2種以上のブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エチルとの共重合体等のエチレン・極性モノマー共重合体等から選ばれる重合体が挙げられる。
【0087】
前記ベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂として、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体)、ポリプロピレン(単独重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体など)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらは如何なる触媒系で製造されたものであっても良く、例えば上記直鎖低密度ポリエチレンにおいては、メタロセン系触媒或はマルチサイト触媒で製造されたものが使用できる。
【0088】
前記ポリオレフィン系エラストマーは、上記ベースポリマーであるポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸をグラフトすることにより得ることができ、また、オレフィンと少量の不飽和カルボン酸を共重合変性することによって得ることができる。グラフト或は共重合変性に使用される不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等を挙げることができるが、特に酸無水物が好ましく、取り分け無水マレイン酸が好ましい。
【0089】
ポリオレフィン系エラストマーは、無水マレイン酸変性エチレン共重合体であることが好ましい。無水マレイン酸変性エチレン共重合体としては、無水マレイン酸グラフト変性エチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を無水マレイン酸変性したものを好適に用いることができる。
【0090】
ポリアミド層(B)の組成
ポリアミド層(B)の脂肪族ポリアミド及び熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリアミド層(B)層全体の重量を100重量%として、脂肪族ポリアミドを80重量%~99.5重量%含み、熱可塑性エラストマーを20重量%~0.5重量%含む。ポリアミド層(B)中の脂肪族ポリアミドの含有量は、ポリアミド層(B)層全体の重量を100重量%として、88重量%~98重量%がより好ましく、90重量%~97重量%が更に好ましい。ポリアミド層(B)中の熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリアミド層(B)層全体の重量を100重量%として、12重量%~2重量%がより好ましく、10重量%~3重量%が更に好ましい。
【0091】
本発明のポリアミド系フィルムは、冷凍環境下の耐衝撃性が優れている。ポリアミド層(B)層中の熱可塑性エラストマーの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの冷凍環境下の耐衝撃性を向上させることができる。
【0092】
(3)熱可塑性樹脂層(C)
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されている。
【0093】
熱可塑性樹脂層(C)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体又はポリメタキシリレンアジパミドを含有する、ことが好ましい。
【0094】
ポリアミド系フィルムの全体の厚みに対して、熱可塑性樹脂層(C)は、2%~16%の厚みを有する、ことが好ましい。
【0095】
本発明のポリアミド系フィルムは、熱可塑性樹脂層(C)を有するので、優れたガスバリア性を発揮することができる。本発明のポリアミド系フィルムは、通常のバリア性を必要とする場合、ポリアミド層(B)の樹脂を用いることができる。
【0096】
エチレン-ビニルアルコール共重合体
熱可塑性樹脂層(C)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を好ましく用いることができる。
【0097】
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、好適に用いることができるものとして、エチレン含量は、好ましくは55モル%程度以下であり、より好ましくは20モル%~50モル%程度、更に好ましくは25モル%~44モル%程度である。
【0098】
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、好適に用いることができるものとして、酢酸ビニル成分のケン化度は、好ましくは90モル%程度以上であり、より好ましくは95モル%程度以上である。
【0099】
エチレン-ビニルアルコール共重合体には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更に少量のプロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物);不飽和スルホン酸又はその塩等のコモノマーを含んでも良い。
【0100】
エチレン-ビニルアルコール共重合体のメルトインデックス(MI)は、0.5g/10分~50g/10分(210℃、2,160g荷重)が好ましく、1g/10分~35g/10分(210℃、2,160g荷重)がより好ましい。
【0101】
エチレン-ビニルアルコール共重合体は、MIが0.5g/10分以上の粘度であることで、良好に溶融押出しすることができる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、MIが50g/10分以下であることで、製膜性が良好である。
【0102】
エチレン-ビニルアルコール共重合体の市販品として、例えば、DC3203FB、DT2904RB(三菱ケミカル(株)製)等を好ましく用いることができる。
【0103】
ポリメタキシリレンアジパミド
熱可塑性樹脂層(C)は、ポリメタキシリレンアジパミドを好ましく用いることができる。
【0104】
ポリメタキシリレンアジパミド(MXD-ナイロン)等の芳香族ナイロンである。芳香族ポリアミドは、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドである。芳香族ナイロンとしては、S-6007、S-6011(三菱ガス化学(株)製)等を好ましく用いることができる。
【0105】
その他の成分
熱可塑性樹脂層(C)には、必要に応じて、変性エチレン酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸共重合体アイオノマー等の他の成分を含有していても良い。熱可塑性樹脂層(C)に他の成分を含有する場合、それら他の成分の含有量は、通常、エチレン-ビニルアルコール共重合体又はポリメタキシリレンアジパミド100重量部に対して、通常15重量部程度以下であり、好ましくは1.0重量部~7.5重量部程度であることが好ましい。
【0106】
(4)その他の成分
各層は、必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、滑剤、核剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0107】
(5)層構成
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順に積層されている。
【0108】
各層の厚みの割合
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド系フィルムの全体の厚みに対して、前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、41%~59%程度の厚みを有し、前記ポリアミド層(B)の2層合計と熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、41%~59%程度の厚みを有する。
【0109】
前記ポリアミド層(A)は、2層合計で、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、43%~57%程度の厚みを有することが好ましく、45%~55%程度の厚みを有することがより好ましく、46%程度の厚みを有することが更に好ましい。
【0110】
前記ポリアミド層(B)の2層合計と前記熱可塑性樹脂層(C)とで、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、合わせて、43%~57%程度の厚みを有することが好ましく、45%~55%程度の厚みを有することがより好ましく、54%程度の厚みを有することが更に好ましい。
【0111】
前記熱可塑性樹脂層(C)は、ポリアミド系フィルムの全体の厚みに対して、2%~16%程度の厚みを有し、4%~14%程度の厚みを有することが好ましく、6%~12%程度の厚みを有することがより好ましく、10%程度の厚みを有することが更に好ましい。
【0112】
本発明のポリアミド系フィルムは、各層の厚みを上記範囲とすることで、冷凍環境下において、フィルムの耐衝撃性が低下しない。本発明のポリアミド系フィルムは、各層の厚みを上記範囲とすることで、製品の内容物が(冷凍)凝固して、製品を輸送する時に、フィルムに強い衝撃が加わっても、破袋を起こさない。本発明のポリアミド系フィルムは、各層の厚みを上記範囲とすることで、冷凍条件下において、優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0113】
各層の厚み
本発明のポリアミド系フィルムの総厚みは、10μm~50μm程度が好ましく、12μm~30μm程度がより好ましく、13μm~25μm程度が更に好ましく、15μm程度が特に好ましい。
【0114】
本発明のポリアミド系フィルムでは、ポリアミド層(A)は、2層合計で、厚みは、6.15μm~8.85μm程度が好ましく、6.45μm~8.55μm程度がより好ましく、6.75μm~8.25μm程度が更に好ましく、6.8μm~7μm程度が特に好ましい。
【0115】
本発明のポリアミド系フィルムでは、ポリアミド層(B)の2層合計と熱可塑性樹脂層(C)とで、合わせて、厚みは、6.15μm~8.85μm程度が好ましく、6.45μm~8.55μm程度がより好ましく、6.75μm~8.25μm程度が更に好ましく、8.0μm~8.2μm程度が特に好ましい。
【0116】
本発明のポリアミド系フィルムでは、熱可塑性樹脂層(C)は、厚みは、0.3μm~2.4μm程度が好ましく、0.6μm~2.1μm程度がより好ましく、0.9μm~1.8μm程度が更に好ましく、1.4μm~1.6μm程度が特に好ましい。
【0117】
本発明のポリアミド系フィルムは、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装用として、冷凍環境下の耐衝撃性を示すことができる。本発明のポリアミド系フィルムは、延伸性に優れておりフィルムの延伸破断はほとんど生じない。本発明のポリアミド系フィルムは、食品の包装、取り分け、水分を含む食品の包装等に好適であり、それら食品の低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適に用いることができる。
【0118】
[2]ポリアミド系フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系フィルムを製造する方法は、特に限定されず、好ましく、従来公知の積層体を形成する製造方法を採用することができる。
【0119】
本発明のポリアミド系フィルムの各層の樹脂組成物を、例えば、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しして、フラット状の多層のポリアミド系フィルムを調製する製造方法を、好ましく採用することができる。
【0120】
得られたポリアミド系フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。延伸倍率は、例えば、縦延伸(MD)2.5~4.5倍、横延伸(TD)2.5~5.0倍である。
【0121】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50℃~80℃のロール延伸機により2.5~4.5倍に縦延伸し、80℃~140℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5~5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより180℃~220℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0122】
本発明のポリアミド系フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良く、得られたポリアミド系フィルムは、必要に応じて、その両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0123】
包装袋の製造方法
本発明のポリアミド系フィルムを用いて袋状に加工し、包装袋を製造する。
【0124】
包装袋は、本発明のポリアミド系フィルムの片面にシーラントフィルムを積層したラミネートフィルムを用いて、自動充てん包装機等により成形し得ることができる。ポリアミド系フィルムを袋状に加工し、食品を自動包装する装置としては、特に限定されないが、横型ピロータイプ包装機、縦型ピロータイプ包装機、三方シール包装機、四方シール包装機、スティック包装機等を挙げることができる。
【0125】
[3]ポリアミド系フィルムの物性
耐衝撃性(衝撃強度)
本発明のポリアミド系フィルムの耐衝撃性は、衝撃強度である。
【0126】
本発明のポリアミド系フィルムは、衝撃強度は、インパクトテスターを用いて評価する。測定方法の例として、インパクトテスターを用いて測定する。例えば、装置として、(株)東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを用いて、JIS-P8134を参考に、測定する。試験サンプルをサイズ:10cm×10cmに調製し、試験サンプルを-25℃環境下で12時間放置後、測定する。
【0127】
先ず、台の上に、試験サンプル(フィルム)を固定する。次に、フィルムインパクトテスターのアームを固定しているフックを取り外すことで、軸を中心に扇形のアームが回転し、アームの先端に取り付けられた衝撃ヘッドがフィルムを突き破る。
【0128】
衝撃強度は、衝撃ヘッドがフィルムを突き破る時に必要なエネルギーを衝撃強度として数値化する。衝撃強度は、5回測定を行い、平均値を求める。
【0129】
衝撃強度を、-25℃で測定を行う際には、温度と湿度を一定に保つことができる恒温恒湿槽に装置を設置する。
【0130】
本発明のポリアミド系フィルムは、衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上であることが好ましい。
【0131】
本発明のポリアミド系フィルムは、特に、衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上であることで、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装用として優れている。
【実施例】
【0132】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
【0133】
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0134】
(1)ポリアミド系フィルムの原料
PA6(1)~(3):脂肪族ポリアミド、ナイロン6(NY6)
PA6(1):相対粘度4.08、融点220℃
PA6(2):相対粘度3.37、融点220℃
PA6(3): 融点220℃
MXDNY:MXD-ナイロン、融点243℃
熱可塑性エラストマー:ポリエステル系熱可塑性エラストマー、融点145℃
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体
【0135】
(2)ポリアミド系フィルムの製造
前記原料を用い、表に示した配合により、各ポリアミド層を形成する為の樹脂組成物を調製した。
【0136】
各ポリアミド層を構成する樹脂組成物を、250℃の押出機に供給し、ポリアミド層(A)/ポリアミド層(B)/熱可塑性樹脂層(C)/ポリアミド層(B)/ポリアミド層(A)の順序になるように、250℃のTダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しして、フラット状の5層のポリアミド系フィルムを得た。
【0137】
このフィルムを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、更に同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して、厚さ15μmの5層のポリアミド系フィルムを得た。
【0138】
前記調製したポリアミド系フィルムを用いて、以下の評価を行った。
【0139】
(3)ポリアミド系フィルムの評価
耐衝撃性(衝撃強度)の測定方法
ポリアミド系フィルムの耐衝撃性は、衝撃強度である。ポリアミド系フィルムは、衝撃強度は、インパクトテスターを用いて評価した。測定方法として、インパクトテスターを用いて測定した。装置として、(株)東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターを用いて、JIS-P8134を参考に、測定した。試験サンプルをサイズ:10cm×10cmに調製し、試験サンプルを-25℃環境下で12時間放置後、測定した。
【0140】
先ず、台の上に、試験サンプル(フィルム)を固定した。次に、フィルムインパクトテスターのアームを固定しているフックを取り外すことで、軸を中心に扇形のアームが回転し、アームの先端に取り付けられた衝撃ヘッドがフィルムを突き破る。-25℃で測定を行う際には、温度と湿度を一定に保つことができる恒温恒湿槽に装置を設置した。
【0141】
衝撃強度は、衝撃ヘッドがフィルムを突き破る時に必要なエネルギーを衝撃強度として数値化した。衝撃強度は、5回測定を行い、平均値を求めた。
【0142】
ポリアミド系フィルムは、衝撃強度は、-25℃の条件下、0.5J以上であると良好である。
【0143】
耐衝撃性(衝撃強度)の測定結果
【0144】
【0145】
本発明のポリアミド系フィルムを用いると、冷凍環境化において、フィルムの耐衝撃性が低下しない。本発明のポリアミド系フィルムを用いると、製品の内容物が(冷凍)凝固して、製品を輸送する時に、フィルムに強い衝撃が加わっても、破袋を起こさない。本発明のポリアミド系フィルムは、冷凍環境下において、優れた耐衝撃性を発揮できる。