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  • 特許-熱硬化性樹脂組成物及び多層基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及び多層基板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20231115BHJP
   C08L 61/16 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20231115BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20231115BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C08G59/20
C08L61/16
C08L63/00 A
C08L71/12
C08L79/08
H05K1/03 610H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017518181
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2017012593
(87)【国際公開番号】W WO2017170521
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2016063324
(32)【優先日】2016-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 奨
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/183735(WO,A1)
【文献】特開2006-335843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59, C08L, C08K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造、下記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(2)で表される構造、下記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(3)で表される構造、下記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(4)で表される構造、又は、下記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物と、
活性エステル化合物とを含み、
前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物が、前記式(1)で表される構造以外の部位、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(2)で表される構造以外の部位、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(3)で表される構造以外の部位、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(4)で表される構造以外の部位、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位にエポキシ基を有し、
前記活性エステル化合物が、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物である、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
前記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【化2】
前記式(2)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。
【化3】
前記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【化4】
前記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物の合計の含有量が20重量%以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物が、前記式(1)で表される構造、前記式(2)で表される構造、前記式(3)で表される構造、又は前記式(4)で表される構造を有する化合物である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
無機充填材を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、芳香族骨格を有するポリイミド樹脂である、請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エステル化合物が末端以外の部位に、ナフタレン環を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
回路基板と、
前記回路基板上に配置された絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物である、多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、多層基板等において、絶縁層を形成するために用いられる樹脂組成物に関する。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂組成物が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、絶縁層を形成するために、上記樹脂組成物をフィルム化したBステージフィルムが用いられることがある。上記樹脂組成物及び上記Bステージフィルムは、ビルドアップフィルムを含むプリント配線板用の絶縁材料として用いられている。
【0003】
上記樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ化合物と、活性エステル化合物と、充填材とを含む硬化性エポキシ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-143302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の組成物では、活性エステル化合物が用いられているので、硬化物の誘電正接をある程度低くすることができる。しかし、特許文献1に記載の組成物では、硬化物の耐熱性が低くなることがある。
【0006】
また、プリント配線板において絶縁層を形成する際には、Bステージフィルムを、真空ラミネーターやプレスによって内層回路基板等の積層対象部材に積層する。その後、金属配線の形成、絶縁フィルムの硬化、絶縁フィルムに対するビアの形成、ビアのデスミアを行う工程等を経て、プリント配線板が製造される。
【0007】
特許文献1に記載の組成物では、デスミア処理によって、ビア底のスミアを効率的に除去できないことがある。
【0008】
また、上記絶縁層には、伝送損失を低減するために、誘電正接を低くすることが求められる。
【0009】
エポキシ化合物の種類の選択により、耐熱性をある程度高めることができたり、デスミア性をある程度高めることができたりする場合がある。しかし、エポキシ化合物の選択だけでは、高いデスミア性と、硬化物の低い誘電正接と、硬化物の高い耐熱性との全てを満足することが困難である。
【0010】
従来の絶縁層を形成するための組成物では、高いデスミア性と、硬化物の低い誘電正接と、硬化物の高い耐熱性との全てを満足することが困難である。
【0011】
本発明の目的は、デスミア性を高めることができ、硬化物の誘電正接を低くすることができ、硬化物の耐熱性を高くすることができる樹脂組成物を提供することである。また、本発明は、上記樹脂組成物を用いた多層基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、下記式(1)で表される構造、下記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(2)で表される構造、下記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(3)で表される構造、下記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、下記式(4)で表される構造、又は、下記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物と、活性エステル化合物とを含む、樹脂組成物が提供される。
【0013】
【化1】
【0014】
前記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0015】
【化2】
【0016】
前記式(2)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。
【0017】
【化3】
【0018】
前記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0019】
【化4】
【0020】
前記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0021】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物が、前記式(1)で表される構造以外の部位、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(2)で表される構造以外の部位、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(3)で表される構造以外の部位、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位、前記式(4)で表される構造以外の部位、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造以外の部位にエポキシ基を有する。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物の合計の含有量が20重量%以下である。
【0023】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記式(1)で表される構造、前記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(2)で表される構造、前記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(3)で表される構造、前記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、前記式(4)で表される構造、又は、前記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物が、前記式(1)で表される構造、前記式(2)で表される構造、前記式(3)で表される構造、又は前記式(4)で表される構造を有する化合物である。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記樹脂組成物は、無機充填材を含む。
【0025】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。
【0026】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記熱可塑性樹脂が、芳香族骨格を有するポリイミド樹脂である。
【0027】
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記活性エステル化合物が末端以外の部位に、ナフタレン環を有する。
【0028】
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板上に配置された絶縁層とを備え、前記絶縁層が、上述した樹脂組成物の硬化物である、多層基板が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る樹脂組成物は、式(1)で表される構造、式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、式(2)で表される構造、式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、式(3)で表される構造、式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造、式(4)で表される構造、又は、式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造を有する化合物と、活性エステル化合物とを含むので、デスミア性を高めることができ、硬化物の誘電正接を低くすることができ、硬化物の耐熱性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る樹脂組成物は、下記式(1)で表される構造、下記式(1)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造(以下、式(1-1)で表される構造と記載することがある)、下記式(2)で表される構造、下記式(2)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造(以下、式(2-1)で表される構造と記載することがある)、下記式(3)で表される構造、下記式(3)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造(以下、式(3-1)で表される構造と記載することがある)、下記式(4)で表される構造、又は、下記式(4)で表される構造におけるベンゼン環に置換基が結合した構造(以下、式(4-1)で表される構造と記載することがある)と、活性エステル化合物とを含む。本発明では、式(1)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(1-1)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(2)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(2-1)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(3)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(3-1)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(4)で表される構造を有する化合物を用いてもよく、式(4-1)で表される構造を有する化合物を用いてもよい。本発明では、式(1)で表される構造を有する化合物と、式(1-1)で表される構造を有する化合物と、式(2)で表される構造を有する化合物と、式(2-1)で表される構造を有する化合物と、式(3)で表される構造を有する化合物と、式(3-1)で表される構造を有する化合物と、式(4)で表される構造を有する化合物と、式(4-1)で表される構造を有する化合物との中から、1種の化合物のみが用いられてもよく、2種以上の化合物が併用されてもよい。式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物は、ある程度の立体障害があることで共通しており、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を有することでも共通している。
【0033】
【化5】
【0034】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。式(1)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
【0035】
【化6】
【0036】
上記式(2)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
【0037】
【化7】
【0038】
上記式(3)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。式(3)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
【0039】
【化8】
【0040】
上記式(4)中、R1及びR2はそれぞれ、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。式(4)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。
【0041】
本発明では、上記の構成が備えられているので、デスミア性を高めることができ、硬化物の誘電正接を低くすることができ、硬化物の耐熱性を高くすることができる。絶縁層の形成時に、ビアを形成し、デスミア処理したときに、スミアを効果的に除去することができる。
【0042】
本発明では、高いデスミア性と、硬化物の低い誘電正接と、硬化物の高い耐熱性との全てを満足することができる。
【0043】
本発明では、高いデスミア性と、硬化物の低い誘電正接と、硬化物の高い耐熱性との全てを満足するために、式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物と、活性エステル化合物とを組み合わせて用いればよいことが見出された。
【0044】
上記式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)及び(4-1)において、ヘテロ原子及びヘテロ原子が結合した基としては、NH基、O基、及びS基等が挙げられる。
【0045】
置換基による立体障害を小さくしたり、合成を容易にしたりする観点からは、式(1-1)、式(2-1)、式(3-1)及び式(4-1)において、ベンゼン環に結合した置換基としては、ハロゲン原子及び炭化水素基が挙げられる。上記置換基は、ハロゲン原子又は炭化水素基であることが好ましい。該置換基におけるハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。該置換基における炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0046】
置換基による立体障害をなくしたり、合成を容易にしたりする観点からは、上記式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物は、上記式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0047】
本発明の効果が効果的に発揮されることから、上記式(1)で表される構造(上記式(1-1)で表される構造における置換基を除く構造部分も含む)は、下記式(1A)、下記式(1B)又は下記式(1C)で表される構造であることが好ましく、下記式(1A)又は下記式(1B)で表される構造であることがより好ましい。
【0048】
【化9】
【0049】
上記式(1A)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0050】
【化10】
【0051】
上記式(1B)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0052】
【化11】
【0053】
上記式(1C)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0054】
本発明の効果が効果的に発揮されることから、上記式(2)で表される構造(上記式(2-1)で表される構造における置換基を除く構造部分も含む)は、下記式(2A)、下記式(2B)又は下記式(2C)で表される構造であることが好ましく、下記式(2A)又は下記式(2B)で表される構造であることがより好ましい。
【0055】
【化12】
【0056】
上記式(2A)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。
【0057】
【化13】
【0058】
上記式(2B)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。
【0059】
【化14】
【0060】
上記式(2C)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表し、ZはCH基又はN基を表す。
【0061】
本発明の効果が効果的に発揮されることから、上記式(3)で表される構造(上記式(3-1)で表される構造における置換基を除く構造部分も含む)は、下記式(3A)、下記式(3B)又は下記式(3C)で表される構造であることが好ましく、下記式(3A)又は下記式(3B)で表される構造であることがより好ましい。
【0062】
【化15】
【0063】
上記式(3A)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0064】
【化16】
【0065】
上記式(3B)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0066】
【化17】
【0067】
上記式(3C)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0068】
本発明の効果が効果的に発揮されることから、上記式(4)で表される構造(上記式(4-1)で表される構造における置換基を除く構造部分も含む)は、下記式(4A)、下記式(4B)又は下記式(4C)で表される構造であることが好ましく、下記式(4A)又は下記式(4B)で表される構造であることがより好ましい。
【0069】
【化18】
【0070】
上記式(4A)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0071】
【化19】
【0072】
上記式(4B)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0073】
【化20】
【0074】
上記式(4C)中、Xは、ヘテロ原子、ヘテロ原子に水素原子が結合した基又はカルボニル基を表す。
【0075】
本発明の効果により一層優れることから、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造を有する化合物は、熱硬化性化合物であることが好ましく、エポキシ化合物であることが好ましい。本発明の効果により一層優れることから、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造を有する化合物が、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造以外の部位に、エポキシ基を有することが好ましく、グリシジル基を有することがより好ましい。すなわち、上記式(1)で表される構造を有する化合物の場合に、上記式(1)で表される構造を有する化合物が、上記式(1)で表される構造以外の部位に、エポキシ基を有することが好ましく、グリシジル基を有することがより好ましい。上記式(1)で表される構造以外の部位は、式(1)中の右端部及び左端部に結合した部位である。式(1)以外の式で表される構造を有する化合物の場合も同様である。
【0076】
本発明の効果により一層優れることから、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造において、Xは、ヘテロ原子であってもよく、ヘテロ原子に水素原子が結合した基であってもよく、カルボニル基であってもよい。
【0077】
本発明の効果により一層優れることから、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造において、Xがヘテロ原子である場合に、Xは酸素原子であることが好ましい。
【0078】
本発明の効果により一層優れることから、上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造以外の部位の基(左端部及び右端部に結合した基)は、グリシジルエーテル基であることが好ましく、下記式(11)で表される基であることが好ましい。上記式(1)、(1-1)、(1A)、(1B)、(1C)、(2)、(2-1)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)、(3-1)、(3A)、(3B)、(3C)、(4)、(4-1)、(4A)、(4B)、(4C)で表される構造を有する化合物は、グリシジルエーテル基を有することが好ましく、下記式(11)で表される基を有することが好ましく、グリシジルエーテル基を複数有することがより好ましく、下記式(11)で表される基を複数有することがより好ましい。
【0079】
【化21】
【0080】
上記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。また、上記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記式(1)、(2)、(3)又は(4)で表される構造を有する化合物の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。上記式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果により一層優れ、耐熱性、誘電特性及びデスミア性がより一層高くなる。
【0081】
上記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%は、上記樹脂組成物が無機充填材を含みかつ溶剤を含まない場合には、上記樹脂組成物中の上記無機充填材を除く成分100重量%を意味し、上記樹脂組成物が無機充填材を含まずかつ溶剤を含む場合には、上記樹脂組成物中の上記溶剤を除く成分100重量%を意味し、上記樹脂組成物が無機充填材と溶剤とを含まない場合には、上記樹脂組成物100重量%を意味する。
【0082】
上記樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。上記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
【0083】
以下、本発明に係る樹脂組成物に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂組成物の用途等を説明する。
【0084】
[熱硬化性化合物]
上記樹脂組成物は、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物として、従来公知の熱硬化性化合物が使用可能である。上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。該エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。硬化物の誘電特性及び硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点からは、上記エポキシ化合物は、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物であることが好ましい。デスミア性、硬化物の誘電特性及び硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点からは、上記エポキシ化合物は、アミノフェノール型エポキシ化合物であることが好ましい。
【0087】
上記樹脂組成物は、式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物とは異なる熱硬化性化合物を含んでいてもよい。
【0088】
上記式(1)、(1-1)、(2)、(2-1)、(3)、(3-1)、(4)又は(4-1)で表される構造を有する化合物が、熱硬化性化合物であることが好ましく、エポキシ化合物であることがより好ましい。
【0089】
保存安定性により一層優れた樹脂組成物を得る観点からは、上記熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは10000未満、より好ましくは5000未満である。上記分子量は、上記熱硬化性化合物が重合体ではない場合、及び上記熱硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記熱硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0090】
樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と硬化剤との合計の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記熱硬化性化合物と硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られる。
【0091】
[硬化剤]
硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が存在する。
【0092】
本発明では、上記硬化剤として、活性エステル化合物が用いられる。活性エステル化合物と、活性エステル化合物以外の硬化剤とを併用してもよい。
【0093】
活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(21)で表される化合物が挙げられる。
【0094】
【化22】
【0095】
上記式(21)中、X1及びX2はそれぞれ、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、ハロゲン原子及び炭化水素基が挙げられる。上記置換基は、ハロゲン原子又は炭化水素基であることが好ましい。該置換基におけるハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましい。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0096】
X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせ、並びに、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。硬化物の誘電特性及び硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点から、上記活性エステル化合物は末端以外の部位に、ナフタレン環を有することが好ましい。硬化物の誘電特性及び硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点から、上記活性エステル化合物は主鎖に、ナフタレン環を有することが好ましい。末端以外の部位又は主鎖にナフタレン環を有する活性エステル化合物は、末端にもナフタレン環を有していてもよい。硬化物の誘電特性及び硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点から、上記活性エステル化合物が有する好ましい基の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせ、及び、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせがより好ましい。
【0097】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」及び「EXB-9416-70BK」等が挙げられる。
【0098】
上記熱硬化性化合物が良好に硬化するように、上記硬化剤の含有量は適宜選択される。上記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化剤の全体の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記活性エステル化合物の含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。上記活性エステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、誘電正接が効果的に低くなる。
【0099】
[熱可塑性樹脂]
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂又はポリイミド樹脂であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であってもよく、ポリイミド樹脂であってもよい。フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージフィルムが濡れ拡がり難くなる。ポリイミド樹脂の使用により、誘電正接を更に一層効果的に低くすることができる。上記樹脂組成物に含まれているフェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂が使用可能である。上記フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
熱可塑性樹脂と他の成分(例えば熱硬化性化合物)との相溶性をより一層高め、硬化物と金属層との密着性をより一層向上させる観点からは、上記熱可塑性樹脂は、芳香族骨格を有することが好ましく、ポリイミド樹脂であることが好ましく、芳香族骨格を有するポリイミド樹脂であることがより好ましい。
【0102】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格等の骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0103】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954-BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0104】
上記ポリイミド樹脂としては、例えばビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、又はナフタレン骨格有するポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0105】
上記ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば、ソマール社製の「HR001」、「HR002」、「HR003」、並びに新日本理化社製の「SN-20」、T&K TOKA社製の「PI-1」、「PI-2」等が挙げられる。
【0106】
保存安定性により一層優れた樹脂組成物を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0107】
上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0108】
上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは4重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂組成物又はBステージフィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂、上記フェノキシ樹脂及び上記ポリイミド樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物のフィルム化がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0109】
[無機充填材]
上記樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。また、硬化物の誘電正接がより一層小さくなる。
【0110】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0111】
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
【0112】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理等により形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0113】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0114】
上記無機充填材はそれぞれ、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に絶縁層と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材がそれぞれ球状である場合には、上記無機充填材それぞれのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0115】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0116】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0117】
樹脂組成物中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上であり、好ましくは99重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成されると同時に、この無機充填材量であれば、硬化物の熱による寸法変化を小さくことも可能である。
【0118】
[硬化促進剤]
上記樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0120】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0121】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0122】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0123】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0124】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂組成物中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上であり、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂組成物が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂組成物の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
【0125】
[溶剤]
上記樹脂組成物は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂組成物の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0126】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0127】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物における溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性等を考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0128】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂組成物には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
【0129】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0130】
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0131】
(樹脂フィルム(Bステージフィルム)及び積層フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージフィルム)が得られる。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0132】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚みは好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0133】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0134】
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50~150℃で1~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0135】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にあるフィルム状樹脂組成物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0136】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。上記樹脂組成物は、金属箔又は基材と、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。上記積層フィルムにおける上記樹脂フィルムが、上記樹脂組成物により形成される。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0137】
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0138】
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂組成物又は上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0139】
(プリント配線板)
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0140】
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂フィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
【0141】
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記樹脂フィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを金属箔に積層可能である。
【0142】
(銅張り積層板及び多層基板)
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板の樹脂フィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
【0143】
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1~50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂フィルムを硬化させた絶縁層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0144】
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、多層基板を得るために好適に用いられる。上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、多層プリント配線板において絶縁層を形成するために用いられることが好ましい。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂組成物をフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いて上記樹脂フィルムにより形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0145】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0146】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0147】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0148】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0149】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂組成物をフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0150】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に示す断面図である。
【0151】
図1に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0152】
多層基板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂組成物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層基板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0153】
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂組成物は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
【0154】
上記樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0155】
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコール等を主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液等により、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤等として、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30~85℃で1~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
【0156】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤等としてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0157】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0158】
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30~90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30~90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30~85℃及び1~30分間の条件で、硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。上記粗化処理の回数は1回又は2回であることが好ましい。
【0159】
硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは100nm未満である。この場合には、硬化物と金属層又は配線との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。
【0160】
(デスミア処理)
上記樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板等では、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
【0161】
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
【0162】
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0163】
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30~90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30~90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30~85℃及び1~30分間の条件で、1回又は2回、硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50~85℃の範囲内であることが好ましい。
【0164】
上記樹脂組成物の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
【0165】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0166】
以下の成分を用いた。
【0167】
(合成例1)化合物(51)の合成
フェノール(フェノール性化合物)37.6g/0.4mol及びアントラキノン(芳香族カルボニル化合物)20.8g/0.1molを混合し、約60℃に加熱して溶解した後、硫酸0.1ml、3-メルカプトプロピオン酸0.8ml、及びトルエン10mlを加え、撹拌しながら反応させた。アントラキノン転化を確認した後、トルエン100mlを加え、冷却し析出した固体を減圧ろ過した。その後、60℃の温水で撹拌洗浄し、再結晶を行い、中間体化合物を得た。次に、中間体化合物0.5g、エピクロロヒドリン1.8g(92.5mmol)、及び2-プロパノール0.73gを容器中に入れ、40℃に昇温して均一に溶解させた後、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液0.32gを90分かけて滴下した。滴下中に徐々に昇温し、滴下終了後には容器内が65℃になるようにし、30分撹拌した。次いで、その生成物から過剰のエピクロロヒドリンと2-プロパノールを減圧下で留去し、生成物をメチルイソブチルケトン2gに溶解させ、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液0.02gを加え、65℃で1時間撹拌した。その後、反応液に第一リン酸ナトリウム水溶液を加えて、過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次に、完全にメチルイソブチルケトンを除去し、最後に減圧乾燥を行い、下記式(51)で表される構造を有する化合物(化合物(51))を得た。
【0168】
【化23】
【0169】
上記式(51)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0170】
(合成例2~9)化合物(52)~(59)の合成
下記式(52)~(59)で表される構造を有する化合物(化合物(52)~(59))に関しては、下記表1に記載の原料を用いて合成例1と同様に反応させ、目的の生成物を得た。
【0171】
【表1】
【0172】
【化24】
【0173】
上記式(52)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0174】
【化25】
【0175】
上記式(53)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0176】
【化26】
【0177】
上記式(54)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0178】
【化27】
【0179】
上記式(55)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0180】
【化28】
【0181】
上記式(56)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0182】
【化29】
【0183】
上記式(57)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0184】
【化30】
【0185】
上記式(58)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0186】
【化31】
【0187】
上記式(59)で表される構造以外の部位の基(両側に結合した基)は、上記式(11)で表される基である。
【0188】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850-S」)
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000H」)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD-1000」)
p-アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」)
【0189】
ナフタレン骨格型活性エステル化合物(DIC社製「EXB-9416-70BK」、固形分70重量%のメチルイソブチルケトン溶液、末端以外の部位にナフタレン環を有する)
ジシクロペンタジエン骨格型活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、固形分65重量%のトルエン溶液、末端以外の部位にナフタレン環を有さない)
アミノトリアジンノボラック骨格型フェノール化合物(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%のメチルエチルケトン溶液)
シアネートエステル化合物(ロンザジャパン社製「BA-3000S」、固形分75重量%のメチルエチルケトン溶液)
【0190】
イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)
【0191】
フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954-BH30」、固形分30重量%、シクロヘキサノン35%、メチルエチルケトン35%溶液)
ポリイミド樹脂(新日本理化社製「SN-20」、固形分20重量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液)
ポリイミド含有液1(固形分20重量%)(下記の合成例1で合成)
【0192】
(合成例1)
フラスコ中に、環状脂肪族ジアミンとしてイソホロンジアミン0.05モル(8.51g)及びビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン0.05モル(11.91g)を入れ、NMP(N-メチルピロリドン)90gを加えた。
【0193】
次に、フラスコをドライアイスとエタノールとの混合バスに漬けて-78℃に冷却した。その後、弱酸として酢酸0.2モルを滴下ロートで、発熱を抑えながらゆっくり滴下し、環状脂肪族ジアミンと弱酸とを混合した。その後、23℃まで昇温し、窒素フロー下で攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物として4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物0.1モル(52.05g)と、NMP30gとを加え、23℃で一晩攪拌した。
【0194】
次に、トルエン40gを加えて昇温し、熱イミド化を進行させるため190℃で水を抜きながら2時間リフラックスを行った。その後、室温まで冷却してからNMP200gを加えて反応溶液を希釈し、水とアルコールの混合液(水:アルコール=9:1(重量比))に滴下して、ポリマーを生成させた。生成したポリマーを濾過、水洗、真空乾燥して、ポリマーを得た。IRにより1700cm-1及び1780cm-1に、イミド環のC=O伸縮に基づくピークを確認した。このポリマー10gにメチルシクロヘキサン20gと、シクロヘキサノン20gとを加え、ポリイミド含有液1(固形分20重量%)を得た。得られたポリイミドの分子量(重量平均分子量)は24000であった。
【0195】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製の高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD-10A」を用い、カラムはShodex製「KF-804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
【0196】
ポリイミド含有液2(固形分20重量%)(下記の合成例2で合成)
【0197】
(合成例2)
フラスコ中に、環状脂肪族ジアミンとしてイソホロンジアミン0.05モル(8.51g)及びビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン0.05モル(11.91g)を入れ、NMP(N-メチルピロリドン)90gを加えた。
【0198】
次に、フラスコをドライアイスとエタノールとの混合バスに漬けて-78℃に冷却した。その後、弱酸として酢酸0.2モルを滴下ロートで、発熱を抑えながらゆっくり滴下し、環状脂肪族ジアミンと弱酸とを混合した。その後、23℃まで昇温し、窒素フロー下で攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物としてビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物0.1モル(24.82g)と、NMP30gとを加え、23℃で一晩攪拌した。
【0199】
次に、トルエン40gを加えて昇温し、熱イミド化を進行させるため190℃で水を抜きながら2時間リフラックスを行った。その後、室温まで冷却してからNMP200gを加えて反応溶液を希釈し、水とアルコールの混合液(水:アルコール=9:1(重量比))に滴下して、ポリマーを生成させた。生成したポリマーを濾過、水洗、真空乾燥して、ポリマーを得た。IRにより1700cm-1及び1780cm-1に、イミド環のC=O伸縮に基づくピークを確認した。このポリマー10gにメチルシクロヘキサン20gと、シクロヘキサノン20gとを加え、ポリイミド含有液2(固形分20重量%)を得た。得られたポリイミドの分子量(重量平均分子量)は21000であった。
【0200】
球状シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理、アドマテックス社製「SO-C2」)
シクロヘキサノン
【0201】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850-S」)を0.5重量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000H」)を6.5重量部と、p-アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」)を0.7重量部と、式(51)で表される構造を有する化合物を2.9重量部と、ナフタレン骨格型活性エステル化合物(DIC社製「EXB-9416-70BK」、固形分70重量%のメチルイソブチルケトン溶液)を15.5重量部と、アミノトリアジンノボラック骨格型フェノール化合物(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%のメチルエチルケトン溶液)を1.8重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.3重量部と、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954-BH30」、固形分30重量%、シクロヘキサノン35重量%、メチルエチルケトン35重量%溶液)1.5重量部と、球状シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO-C2」、アドマテックス社製)49.3重量部と、シクロヘキサノン21.0重量部とを混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂組成物ワニスを得た。
【0202】
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(リンテック社製「38X」、厚み38μm)の離型処理面上に得られた樹脂組成物ワニスを塗工した後、100℃のギアオーブン内で3分間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmであり、溶剤の残量が1.0重量%以上、4.0重量%以下である樹脂フィルムを得た。
【0203】
CCL基板(日立化成工業社製「E679FG」)の両面を銅表面粗化剤(メック社製「メックエッチボンド CZ-8100」)に浸漬して、銅表面を粗化処理した。得られたPETフィルムと樹脂フィルムとの積層体を、樹脂フィルム側から上記CCL基板の両面にセットして、ダイアフラム式真空ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、上記CCL基板の両面にラミネートし、未硬化積層サンプルAを得た。ラミネートは、20秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後20秒間を100℃、圧力0.8MPaでプレスすることにより行った。
【0204】
未硬化積層サンプルAにおいて、樹脂フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃及び30分の硬化条件で樹脂フィルムを硬化させ、半硬化積層サンプルを得た。
【0205】
ビア(貫通孔)形成:
得られた半硬化積層サンプルに、COレーザー(日立ビアメカニクス社製)を用いて、上端での直径が60μm、下端(底部)での直径が40μmであるビア(貫通孔)を形成した。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されており、かつ樹脂フィルムの半硬化物にビア(貫通孔)が形成されている積層体Bを得た。
【0206】
80℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」と和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」とから調製された水溶液)に、上記積層体Bを入れて、膨潤温度80℃で10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0207】
80℃の過マンガン酸ナトリウム粗化水溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)に、膨潤処理された上記積層サンプルを入れて、粗化温度80℃で30分間揺動させた。その後、40℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により10分間洗浄した後、純水でさらに洗浄し、ビア底の残渣の除去性の評価用サンプル(1)を得た。
【0208】
(実施例2~14、及び比較例1~4)
実施例2~14、及び比較例1~4に関しては、式(51)で表される構造を有する化合物の代わりに、式(52)~(59)で表される構造を有する化合物のいずれかを用い、また各成分の種類及び配合量を下記の表2~4に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ワニス、及び評価用サンプル(1)を得た。実施例2~6及び比較例1~3に関しては、式(51)で表される構造を有する化合物の代わりに、式(52)~(59)で表される構造を有する化合物のいずれかを用いる変更をしたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物ワニス、及び評価用サンプル(1)を得た。
【0209】
(評価)
(1)ビア底の残渣の除去性(デスミア性)
評価用サンプル(1)のビアの底部を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビア底の壁面からのスミアの最大長さを測定した。ビア底の残渣の除去性を下記の基準で判定した。
【0210】
[ビア底の残渣の除去性の判定基準]
○:スミアの最大長さが3μm未満
×:スミアの最大長さが3μm以上
【0211】
(2)耐熱性
得られた樹脂フィルムをPETフィルム上で、180℃で30分間硬化させ、更に190℃で120分硬化させ、硬化体を得た。得られた硬化体を5mm×3mmの平面形状に裁断した。粘弾性スペクトロレオメーター(レオメトリック・サイエンティフィックエフ・イー社製「RSA-II」)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で、30℃から250℃まで裁断された硬化体の損失率tanδを測定し、損失率tanδが最大値になる温度(ガラス転移温度Tg)を求めた。
【0212】
(3)誘電正接
得られた樹脂フィルムをPETフィルム上で、180℃で30分間硬化させ、更に190℃で120分硬化させ、硬化体を得た。得られた上記硬化体を幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせて、厚み400μmの積層体とし、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びアジレントテクノロジー社製「ネットワークアナライザーE8362B」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)で測定周波数5.8GHzにて誘電正接を測定した。
【0213】
(4)ピール強度(90°ピール強度):
上記未硬化積層サンプルAにおいて、樹脂フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃及び30分の硬化条件で樹脂フィルムを硬化させ、半硬化積層サンプルを得た。
【0214】
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」と和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」とから調製された水溶液)に、上記硬化積層サンプルを入れて、膨潤温度60℃で10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0215】
80℃の過マンガン酸ナトリウム粗化水溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)に、膨潤処理された上記硬化積層サンプルを入れて、粗化温度80℃で20分間揺動させた。その後、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により2分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。このようにして、エッチングにより内層回路を形成したCCL基板上に、粗化処理された硬化物を形成した。
【0216】
上記粗化処理された硬化物の表面を、60℃のアルカリクリーナ(アトテックジャパン社製「クリーナーセキュリガント902」)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、上記硬化物を25℃のプリディップ液(アトテックジャパン社製「プリディップネオガントB」)で2分間処理した。その後、上記硬化物を40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン社製「アクチベーターネオガント834」)で5分間処理し、パラジウム触媒を付けた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン社製「リデューサーネオガントWA」)により、硬化物を5分間処理した。
【0217】
次に、上記硬化物を化学銅液(全てアトテックジャパン社製「ベーシックプリントガントMSK-DK」、「カッパープリントガントMSK」、「スタビライザープリントガントMSK」、「リデューサーCu」)に入れ、無電解めっきをめっき厚さが0.5μm程度になるまで実施した。無電解めっき後に、残留している水素ガスを除去するため、120℃の温度で30分間アニールをかけた。無電解めっきの工程までのすべての工程は、ビーカースケールで処理液を2Lとし、硬化物を揺動させながら実施した。
【0218】
次に、無電解めっき処理された硬化物に、電解めっきをめっき厚さが25μmとなるまで実施した。電解銅めっきとして硫酸銅溶液(和光純薬工業社製「硫酸銅五水和物」、和光純薬工業社製「硫酸」、アトテックジャパン社製「ベーシックレベラーカパラシド HL」、アトテックジャパン社製「補正剤カパラシド GS」)を用いて、0.6A/cmの電流を流しめっき厚さが25μm程度となるまで電解めっきを実施した。銅めっき処理後、硬化物を190℃で90分間加熱し、硬化物を更に硬化させた。このようにして、銅めっき層が上面に積層された硬化物を得た。
【0219】
得られた銅めっき層が積層された硬化物において、銅めっき層の表面に、10mm幅に切り欠きを入れた。その後、引張試験機(島津製作所社製「AG-5000B」)を用いて、クロスヘッド速度5mm/分の条件で、硬化物(絶縁層)と金属層(銅めっき層)の接着強度(90°ピール強度)を測定した。ピール強度を下記の基準で判定した。
【0220】
[ピール強度の判定基準]
○:ピール強度が0.5kgf/cm以上
△:ピール強度が0.4kgf/cm以上、0.5kgf/cm未満
×:ピール強度が0.4kgf/cm未満
【0221】
詳細及び結果を下記の表2~4に示す。
【0222】
【表2】
【0223】
【表3】
【0224】
【表4】
【符号の説明】
【0225】
11…多層基板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層
図1