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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20231115BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C7/00 322
H01C7/00 324
H01C1/14 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018558927
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2017042993
(87)【国際公開番号】W WO2018123419
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2016252777
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】今橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】篠浦 高徳
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】畑中 博幸
【審判官】篠原 功一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-072152(JP,A)
【文献】特開2016-092127(JP,A)
【文献】特開2007-123832(JP,A)
【文献】特開2004-079811(JP,A)
【文献】特開2008-053255(JP,A)
【文献】特開2011-199188(JP,A)
【文献】特開2011-165752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面と前記裏面との間に位置する側面と、を有する基板と、
前記主面に配置された上面電極と、
前記主面に配置され、かつ前記上面電極に導通する抵抗体と、
前記抵抗体を覆う保護層と、
各々が前記上面電極に導通する保護電極および側面電極と、
前記保護電極および前記側面電極を覆う中間電極と、
前記中間電極を覆う外部電極と、を備え、
前記側面電極は、前記側面に配置される側部と、前記厚さ方向に視て前記主面に重なる頂部と、前記厚さ方向に視て前記裏面に重なる底部と、を有し、
前記保護電極は、前記厚さ方向に視て前記側面に並行する第1端および第2端を有するとともに、前記上面電極および前記保護層の各々の一部を覆っており、
前記第1端は、前記保護層に接しており、
前記第2端は、前記上面電極に接しており、
前記厚さ方向に視て、前記側面と前記第2端との間には、隙間が設けられており、
前記厚さ方向に視て、前記頂部は、前記保護電極に重なっており、
前記厚さ方向に視て前記頂部に重なる前記保護電極の部分の最大厚さは、前記頂部の厚さよりも大きい、チップ抵抗器。
【請求項2】
前記頂部は、前記保護電極と、前記保護電極において前記隙間から露出する前記上面電極の部分と、に接している、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記裏面に配置され、かつ前記側面電極に導通するとともに、導電性粒子が含有された合成樹脂を含む裏面電極をさらに備え、
前記底部は、前記裏面電極に接しており、
前記中間電極は、前記裏面電極を覆っている、請求項1または2に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記裏面電極は、前記厚さ方向に対して直交する方向において前記抵抗体を基準として互いに反対側に位置する第1電極部および第2電極部を含み、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に挟まれた前記裏面の領域は外部に露出しており、
前記第1電極部および前記第2電極部の各々は、電気絶縁体である合成樹脂から構成され、かつ前記裏面に接する第1層と、導電性粒子が含有された合成樹脂から構成され、かつ前記第1層に積層された第2層と、を有し、
前記第1電極部の前記第1層は、前記第2電極部に対向する内側面を有し、
前記中間電極は、前記内側面および前記裏面に接している、請求項3に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記導電性粒子は、形状が薄片状であり、かつ金属から構成される、請求項3または4に記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記金属は、Agである、請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記側面電極は、Ni-Cr合金から構成される、請求項1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記保護電極は、金属粒子が含有された合成樹脂から構成される、請求項1ないし7のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
前記金属粒子は、Ag粒子を含む、請求項に記載のチップ抵抗器。
【請求項10】
前記保護電極は、薄片状の炭素粒子が含有された合成樹脂から構成される、請求項1ないし7のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記上面電極は、Ag粒子を含む、請求項1ないし10のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記抵抗体は、RuO 2 およびAg-Pd合金のいずれかと、ガラスと、を含む、請求項1ないし11のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
前記抵抗体には、前記厚さ方向に貫通するトリミング溝が形成されている、請求項12に記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
前記保護層は、前記抵抗体に接する下部保護層と、前記下部保護層に積層された上部保護層と、を有し、
前記保護電極が前記上部保護層に接している、請求項1ないし13のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項15】
前記下部保護層は、ガラスを含む、請求項14に記載のチップ抵抗器。
【請求項16】
前記上部保護層は、エポキシ樹脂から構成される、請求項14または15に記載のチップ抵抗器。
【請求項17】
前記外部電極は、Snから構成される、請求項1ないし16のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項18】
前記中間電極は、Niから構成される、請求項1ないし17のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ抵抗器関する。
【背景技術】
【0002】
チップ抵抗器の電極の一部を構成する上面電極は、抵抗体に導通し、かつ基板の上面に配置された電極である。上面電極は、Ag粒子を含むことが一般的である。チップ抵抗器が搭載された回路基板の周辺環境において硫化ガス(H2S、SO2など)が存在する場合、当該上面電極に含まれるAg粒子は硫化ガスと化合して黒色の硫化銀(Ag2S)となる。硫化銀は電気絶縁性を有するため、当該上面電極の硫化が進行するとチップ抵抗器の電極が断線するおそれがある。
【0003】
あるチップ抵抗器は、基板(絶縁基板)と、基板に配置された上面電極(上部端子電極)と、上面電極に導通する抵抗体(抵抗素子)と、抵抗体を覆う保護層(保護コーティング)と、上面電極を覆う中間電極(ニッケルめっき層)を備える。チップ抵抗器の長手方向における基板の両側面と保護層の両端部とには、スパッタリング法により金属層が形成されている。中間電極は、上面電極と、上面電極を覆い、かつ金属層が形成された保護層の端部との双方に接して形成されている。このような構成をとることによって、上面電極との境界に位置する保護層の端部が中間電極によって強固に覆われた状態となるため、硫化ガスが保護層の端部に沿って上面電極に侵入することを防ぐことができる。このため、上面電極の耐硫化性の向上を図ることが可能となる。
【0004】
ここで発明者は、あるチップ抵抗器においては、保護層の両端部に形成された金属層が形成条件によっては剥離する場合があることを発見した。保護層の端部に形成された金属層が剥離した場合、当該金属層に接して形成された中間電極も保護層の端部から剥離する。このような状態になると、硫化ガスが保護層の端部に沿って上面電極に侵入しやすくなる。したがって、保護層の両端部に形成された金属層が剥離した場合、上面電極の耐硫化性が低下することが懸念される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は上記事情に鑑み、耐硫化性の向上を図ったチップ抵抗器およびその製造方法を提供することをその課題とする。
【0006】
本開示の第1の側面によると、チップ抵抗器が提供される。前記チップ抵抗器は、基板と、上面電極と、抵抗体と、保護層と、保護電極と、側面電極と、中間電極と、外部電極と、を備える。前記基板は、厚さ方向おいて互いに離間した主面および裏面と、前記主面と前記裏面との間に位置する側面と、を有する。前記上面電極は、前記主面に配置されている。前記抵抗体は、前記主面に配置され、かつ前記上面電極に導通する。前記保護層は、前記抵抗体を覆う。前記保護電極は、前記上面電極に導通する。前記側面電極は、側部、頂部および底部を有し、かつ前記上面電極に導通する。前記側面電極は、前記側部が前記側面に配置され、平面視において前記頂部および前記底部が前記主面および前記裏面にそれぞれ重なる。前記中間電極は、前記保護電極および前記側面電極を覆う。前記外部電極は、前記中間電極を覆う。前記保護電極が前記上面電極および前記保護層の双方に接し、かつ前記上面電極および前記保護層の各々の一部を覆っている。
【0007】
本開示の第2の側面によると、チップ抵抗器の製造方法が提供される。前記チップ抵抗器の製造方法は、厚さ方向において互いに離間した主面および裏面を有するシート状の基材において、前記主面に接し、かつ互いに離間した2つの領域を含む上面電極を形成することと、抵抗体を形成することであって、前記抵抗体は、前記上面電極に接する第1および第2端を有することと、前記抵抗体を覆う保護層を形成することと、前記上面電極および前記保護層の双方に接する保護電極を形成することと、前記基材を複数の帯状体に分割することであって、前記複数の帯状体は各々、前記主面と前記裏面との間に位置する側面を有することと、前記複数の帯状体いずれか1つの前記側面に接する側面電極であって、平面視において前記主面および前記裏面に重なる部分をそれぞれ有する側面電極を形成することと、前記保護電極および前記側面電極を覆う中間電極を形成することと、前記中間電極を覆う外部電極を形成することと、を備える。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の平面図(中間電極および中間電極を透過)である。
図2図1に示すチップ抵抗器の底面図である。
図3図1に示すチップ抵抗器の平面図(側面電極、中間電極および外部電極を透過)である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6図1に示すチップ抵抗器の裏面電極の部分拡大断面図である。
図7図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図8図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図9図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図10図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図11図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図12図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図13図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する平面図である。
図14図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する斜視図である。
図15図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する断面図である。
図17図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する斜視図である。
図18図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する断面図である。
図19図1に示すチップ抵抗器の製造方法を説明する断面図である。
図20】本開示の第2実施形態にかかるチップ抵抗器の断面図である。
図21図20の部分拡大図である。
図22】本開示の第3実施形態にかかるチップ抵抗器の平面図(中間電極および中間電極を透過)である。
図23図22に示すチップ抵抗器の平面図(側面電極、中間電極および外部電極を透過)である。
図24図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。
図25図24の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1図6に基づき、本開示の第1実施形態にかかるチップ抵抗器A10について説明する。チップ抵抗器A10は、基板1、抵抗体2、電極3および保護層4を備える。
【0012】
図1は、チップ抵抗器A10の平面図である。図2は、チップ抵抗器A10の底面図である。図1および図2は、理解の便宜上、後述する電極3の中間電極35および外部電極36を透過している。図3は、図1に対しさらに後述する電極3の側面電極34を透過した平面図である。図4は、図1のIV―IV線に沿う断面図である。図5は、図4の部分拡大図である。図6は、チップ抵抗器A10の後述する電極3の裏面電極32の部分拡大断面図である。
【0013】
これらの図に示すチップ抵抗器A10は、様々な電子機器の回路基板に表面実装される形式のものである。チップ抵抗器A10は、いわゆる厚膜(メタルグレーズ皮膜)チップ抵抗器である。図1に示すように、チップ抵抗器A10の基板1の厚さ方向Z視(以下「平面視」という。)の形状は矩形状である。ここで、説明の便宜上、基板1の厚さ方向Zに直交するチップ抵抗器A10の長辺方向を第1方向Xと呼ぶ。また、基板1の厚さ方向Zおよび第1方向Xの双方に直交するチップ抵抗器A10の短辺方向を第2方向Yと呼ぶ。
【0014】
基板1は、図1図4に示すように、抵抗体2を搭載し、かつチップ抵抗器A10を回路基板に実装するための部材である。基板1の平面視の形状は矩形状である。また、基板1は電気絶縁体である。本実施形態にかかる基板1は、アルミナ(Al23)から構成される。チップ抵抗器A10の使用時に抵抗体2から発生した熱を外部に放熱しやすくするため、基板1は熱伝導率が高い材料から構成されることが望ましい。基板1は、主面11、裏面12および側面13を有する。
【0015】
図1図4に示すように、主面11および裏面12は、基板1の厚さ方向Zにおいて互いに離間した面である。主面11は、図4に示す基板1の上面であり、かつ抵抗体2を搭載する面である。裏面12は、図4に示す基板1の下面であり、チップ抵抗器A10を回路基板に実装したとき、当該回路基板に対向する面である。
【0016】
図1図4に示すように、側面13は、主面11と裏面12との間に位置する面である。本実施形態にかかる側面13は、第1方向Xにおいて互いに離間した一対の面である。側面13を覆うように電極3が配置されている。
【0017】
抵抗体2は、図1図3および図4に示すように、基板1の主面11に配置され、かつ後述する電極3の上面電極31に導通する素子である。抵抗体2は、電流を制限する、または電流を検出するなどの機能を果たす。本実施形態にかかる抵抗体2の平面視の形状は、第1方向Xに延出する帯状である。なお、抵抗体2の形状は、たとえばサーペンタイン状など、チップ抵抗器A10において設定される抵抗値に対応していずれの形状とすることができる。本実施形態にかかる抵抗体2は、RuO2またはAg-Pd合金とガラスとを含む。
【0018】
図1図3および図4に示すように、抵抗体2には、基板1の厚さ方向Zに貫通するトリミング溝21が形成されている。本実施形態にかかるトリミング溝21は、第1方向Xに並行する抵抗体2の端部が開口し、かつ平面視の形状がL字状となるように形成されている。
【0019】
電極3は、図1図5に示すように、抵抗体2と導通し、かつチップ抵抗器A10を回路基板に実装するための導電部材である。本実施形態にかかる電極3は、第1方向Xにおいて互いに離間し、かつ抵抗体2を挟んだ両側に配置された一対の部材から構成される。本実施形態にかかる電極3は、上面電極31、裏面電極32、保護電極33、側面電極34、中間電極35および外部電極36を含む。
【0020】
図1および図3図5に示すように、上面電極31は、基板1の主面11に接して配置された電極3の一部である。上面電極31は、第1方向Xにおいて互いに離間した一対の部材から構成される。上面電極31の一部が抵抗体2に接しているため、上面電極31は抵抗体2に導通している。上面電極31の平面視の形状は矩形状である。本実施形態にかかる上面電極31は、Agおよびガラスを含む。
【0021】
図2図4および図5に示すように、裏面電極32は、基板1の裏面12に接して配置され、かつ側面電極34に導通する電極3の一部である。裏面電極32は、上面電極31と同じく第1方向Xにおいて互いに離間した一対の部材から構成される。裏面電極32は、導電性粒子320が含有された合成樹脂を含む。本実施形態にかかる裏面電極32は、導電性粒子320が含有された合成樹脂から構成される。当該合成樹脂は、たとえば可とう性エポキシ樹脂である。図6に示すように、本実施形態にかかる導電性粒子320は、形状が薄片状であり、かつ金属から構成される。当該金属はAgである。導電性粒子320の厚さ方向に直交する方向の寸法は、長辺方向で5~15μm、短辺方向で2~5μmである。
【0022】
図1および図3図5に示すように、保護電極33は、上面電極31に導通する電極3の一部である。保護電極33は、各々の上面電極31に対して配置されている。保護電極33は、上面電極31および後述する保護層4の上部保護層42の双方に接し、かつそれぞれの一部を覆っている。保護電極33は、平面視において基板1の側面13に並行する第1端331および第2端332を有する。第1端331が上部保護層42(保護層4)に接し、第2端332が上面電極31に接している。また、図3および図5に示すように、本実施形態においては、平面視において側面13と第2端332との間に隙間dが形成されている。このため、図3に示すように、側面電極34、中間電極35および外部電極36を透視した場合、隙間dから上面電極31が露出した構成となっている。本実施形態にかかる保護電極33は、金属粒子が含有された合成樹脂から構成される。当該金属粒子は、Ag粒子である。また、当該合成樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。保護電極33は、当該金属粒子に替えて、薄片状の炭素粒子とすることができる。当該炭素粒子の厚さ方向に直交する方向の寸法は、長辺方向で5~15μm、短辺方向で2~5μmである。
【0023】
図1図4および図5に示すように、側面電極34は、側部341、頂部342および底部343を有し、かつ上面電極31および裏面電極32の双方に導通する電極3の一部である。側部341は、基板1の側面13に接して配置された部分である。頂部342は、平面視において基板1の主面11に重なる部分である。本実施形態にかかる頂部342は、上面電極31および保護電極33に接している。頂部342において、隙間dに対応する部分が上面電極31に接し、残りの部分が保護電極33に接している。底部343は、平面視において基板1の裏面12に重なる部分である。本実施形態にかかる底部343は、裏面電極32に接している。このため、上面電極31および裏面電極32は、側面電極34を介して相互に導通している。本実施形態にかかる側面電極34は、Ni―Cr合金から構成される。なお、保護電極33を構成する材料は、導電性を有し、かつ硫化し難い特性を有する金属であれば、いずれでもよい。
【0024】
図4および図5に示すように、中間電極35は、裏面電極32、保護電極33および側面電極34を覆う電極3の一部である。中間電極35は、裏面電極32および保護電極33のそれぞれ一部ずつと、側面電極34とに接している。本実施形態にかかる中間電極35は、Niから構成される。
【0025】
図4および図5に示すように、外部電極36は、中間電極35を覆う電極3の一部である。本実施形態にかかる外部電極36は、Snから構成される。チップ抵抗器A10を回路基板に実装する場合において、リフローにより外部電極36が溶融し、回路基板に配置されたクリームはんだと一体化する。
【0026】
保護層4は、図1図3および図4に示すように、抵抗体2を覆う部材である。本実施形態にかかる保護層4は、下部保護層41および上部保護層42を有する。
【0027】
図1図3および図4に示すように、下部保護層41は、抵抗体2に接する部分である。下部保護層41には、抵抗体2に形成されているトリミング溝21と同一形状の溝が基板1の厚さ方向Zに貫通して形成されている。また、第1方向Xにおける下部保護層41の両端から抵抗体2の一部がはみ出した構成となっている。本実施形態にかかる下部保護層41は、ガラスを含む。
【0028】
図1図3および図4に示すように、上部保護層42は、下部保護層41に積層された部分である。上部保護層42は、下部保護層41とともに抵抗体2を覆い、かつ基板1の主面11および上面電極31のそれぞれ一部ずつに接している。また、図5に示す上方から保護電極33の一部が上部保護層42に接している。本実施形態にかかる上部保護層42は、エポキシ樹脂から構成される。
【0029】
次に、図7図19に基づき、チップ抵抗器A10の製造方法の一例について説明する。
【0030】
図7図13は、チップ抵抗器A10の製造工程を説明する平面図である。図14および図17は、チップ抵抗器A10の製造工程を説明する斜視図である。図15は、図14のXV-XV線に沿う断面図である。図16図18および図19は、チップ抵抗器A10の製造工程を説明する断面図である。図16図18および図19の断面位置は、図15の断面位置と同一である。なお、図7図19において示される後述する基材81の厚さ方向Z、第1方向Xおよび第2方向Yは、図1図5において示される基板1の厚さ方向Z、第1方向Xおよび第2方向Yに対応している。
【0031】
最初に、図7に示すように、厚さ方向Zにおいて互いに離間した主面811および裏面812を有するシート状の基材81において、主面811に接し、かつ互いに離間した一対の領域から構成される上面電極831を形成する。上面電極831がチップ抵抗器A10の上面電極31に対応する。本実施形態にかかる基材81は、アルミナから構成されている。図7に示すように、基材81には、第2方向Yに延出する複数の一次溝813と、第1方向Xに延出する複数の二次溝814とが、いずれも主面811から窪むように、かつ碁盤目状に形成されている。一次溝813と二次溝814によって形成される区画が、チップ抵抗器A10の基板1に対応する領域である。このため、基材81は基板1の集合体である。上面電極831は、主面811に接し、かつ一次溝813を跨ぐように形成する。上面電極831は、印刷を用いた手法により形成される。本実施形態にかかる上面電極831は、Ag粒子にガラスフリットを含有させたペーストをシルクスクリーン用いて主面811に印刷し、印刷した当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0032】
次いで、図8に示すように、基材81の裏面812に接し、かつ互いに離間した一対の領域から構成される裏面電極832を形成する。裏面電極832がチップ抵抗器A10の裏面電極32に対応する。図8に示すように、基材81には、複数の一次溝813および二次溝814が、いずれも裏面812から窪むように、かつ主面811において形成された複数の一次溝813および二次溝814の位置に対応して形成されている。裏面電極832は、裏面812に接し、かつ一次溝813を跨ぐように形成する。裏面電極832は、印刷を用いた手法により形成される。本実施形態にかかる裏面電極832は、薄片状のAg粒子を含有し、かつ可とう性エポキシ樹脂を主剤としたペーストをシルクスクリーン用いて裏面812に印刷し、印刷した当該ペーストを硬化させることにより形成される。裏面電極832は、先に主面811において形成した上面電極831の位置に対応して形成される。
【0033】
次いで、図9に示すように、第1方向Xにおける両端が一対の領域から構成される上面電極831に接する抵抗体82を形成する。抵抗体82がチップ抵抗器A10の抵抗体2に対応する。抵抗体82は、印刷を用いた手法により形成される。本実施形態にかかる抵抗体82は、RuO2またはAg-Pd合金などの金属粒子にガラスフリットを含有させたペーストをシルクスクリーン用いて主面811に印刷し、印刷した当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0034】
次いで、図10に示すように、抵抗体82に接する保護膜841を形成する。保護膜841がチップ抵抗器A10の下部保護層41に対応する。本実施形態にかかる保護膜841は、ガラスペーストをシルクスクリーン用いて抵抗体82に印刷し、印刷した当該ペーストを焼成することにより形成される。
【0035】
次いで、図11に示すように、基材81の厚さ方向Zに貫通するトリミング溝821を抵抗体82に形成する。トリミング溝821がチップ抵抗器A10のトリミング溝21に対応する。トリミング溝821は、レーザトリミング装置により形成される。トリミング溝821は、次の手順により形成される。最初に、トリミング溝821の形成対象となる抵抗体82の第1方向Xにおける両端に、抵抗値測定用のプローブを接触させる。次いで、当該プローブを接触させた状態の下、第1方向Xに並行する抵抗体82の一方の端部から他方の端部に向かって、第2方向Yに沿ってトリミング溝821を形成する。次いで、抵抗体82の抵抗値が所定の値(チップ抵抗器A10の抵抗値)に近い値まで上昇した後、そのまま向きを90°転換して第1方向Xに沿ってトリミング溝821を形成する。抵抗体82の抵抗値が所定の値になったとき、トリミング溝821の形成を終了する。当該工程によって、平面視の形状がL字状のトリミング溝821が抵抗体82に形成される。このとき、保護膜841においても、基材81の厚さ方向Zに貫通し、かつトリミング溝821と同一形状の溝が形成される。
【0036】
次いで、図12に示すように、抵抗体82を覆う保護層842を形成する。保護層842がチップ抵抗器A10の上部保護層42に対応する。本実施形態にかかる保護層842は、エポキシ樹脂を主剤としたペーストをシルクスクリーン用いて抵抗体82および保護膜841を完全に覆うように印刷し、印刷した当該ペーストを硬化させることにより形成される。また、本実施形態にかかる保護層842は、第2方向Yに延出し、かつ基材81の二次溝814を跨ぐ複数の帯状に形成される。このとき、第1方向Xにおける保護層842の両端から一対の上面電極831の一部がはみ出した状態となる。なお、保護層842は、図10に示す保護膜841と同様に、抵抗体82ごとに各々が分離された状態となるように形成してもよい。
【0037】
次いで、図13に示すように、上面電極831および保護層842の双方に接する保護電極833を形成する。保護電極833がチップ抵抗器A10の保護電極33に対応する。保護電極833は、印刷を用いた手法により形成される。本実施形態にかかる保護電極833は、Ag粒子を含有し、かつエポキシ樹脂を主剤としたペーストをシルクスクリーン用いて上面電極831を覆う保護膜841の端部を覆うように印刷し、印刷した当該ペーストを硬化させることにより形成される。また、本実施形態にかかる保護電極833は、第2方向Yに延出する複数の帯状に形成される。このとき、二つの保護電極833により挟まれた領域のうち、上面電極831の一部が露出する領域においては、上面電極831とともに一次溝813の一部が露出する。なお、保護電極833の材料となるペーストにおいては、Ag粒子に替えて薄片状の炭素粒子とすることができる。
【0038】
次いで、図14に示すように、一次溝813において基材81を切断することによって、基材81を複数の帯状体85に分割する。このとき、帯状体85には、主面811と裏面812との間に位置する側面851が第1方向Xにおける帯状体85の両端に現れる。側面851においては、たとえばイオンビームエッチングにより下地処理を行ってもよい。当該下地処理を行うことによって、側面851が粗面となり後述する側面電極834との密着性が向上する。なお、図15は、帯状体85の側面851を含めた部分の断面を示している。
【0039】
次いで、図16に示すように、帯状体85において、側面851に接し、かつ平面視において主面811および裏面812に重なる部分をそれぞれ有する側面電極834を形成する。側面電極834がチップ抵抗器A10の側面電極34に対応する。側面電極34は、スパッタリング法により形成される。本実施形態にかかる側面電極34は、Ni-Cr合金を成膜することにより形成される。また、本実施形態においては、側面851の向きが揃うように帯状体85を重ねて並べた状態の下で、側面電極834が形成される。このとき、側面851の全面が側面電極834に覆われる。あわせて、帯状体85から露出した主面811および上面電極831と、保護電極833の一部とが平面視において主面811に重なる側面電極834の部分に覆われる。また、帯状体85から露出した裏面812と、裏面電極832の一部とが平面視において裏面812に重なる側面電極834の部分に覆われる。
【0040】
次いで、図17に示すように、二次溝814において基材81を切断することによって、帯状体85を複数の個片86に分割する。
【0041】
次いで、図18に示すように、個片86から露出した裏面電極832、保護電極833および側面電極834を覆う中間電極835を形成する。中間電極835がチップ抵抗器A10の中間電極35に対応する。中間電極835は、電解めっきにより形成される。本実施形態にかかる中間電極835は、電解バレルめっきでNiを析出させることにより形成される。
【0042】
最後に、図19に示すように、中間電極835を覆う外部電極836を形成する。外部電極836がチップ抵抗器A10の外部電極36に対応する。外部電極836は、中間電極835と同じく電解めっきにより形成される。本実施形態にかかる外部電極836は、電解バレルめっきでSnを析出させることにより形成される。このときの個片86がチップ抵抗器A10となる。以上の工程を経ることによって、チップ抵抗器A10が製造される。
【0043】
チップ抵抗器A10は、基板1の主面11に配置され、かつ抵抗体2に導通する上面電極31と、抵抗体2を覆う保護層4(上部保護層42)と、上面電極31に導通する保護電極33を備える。あわせて、チップ抵抗器A10は、上面電極31に導通し、かつ平面視において基板1の主面11に重なる頂部342を有する側面電極34と、保護電極33および側面電極34を覆う中間電極35を備える。この場合において、保護電極33は、上面電極31および保護層4の双方に接している。このような構成をとることによって、側面電極34の頂部342は、保護層4に完全に接しない構成となるか、万一、保護層4に接した場合であっても、その接触面積を小さく抑えることができる。また、保護層4に接した頂部342が剥離した場合であっても、平面視において保護層4との境界に位置する保護電極33の端部(第1端331)で剥離が停止するため、保護電極33により上面電極31への硫化ガスの侵入が防止される。さらに、保護電極33は中間電極35に覆われるため、保護電極33および中間電極35によって構成される二重遮へい構造により上面電極31への硫化ガスの侵入を防ぐことができる。したがって、チップ抵抗器A10によれば、耐硫化性の向上を図ることが可能となる。
【0044】
ここで、チップ抵抗器A10の製造方法によれば、側面電極834は、スパッタリング法により形成される。側面電極834を形成する前に、保護電極833が形成されることから、側面電極834を形成したとき、保護電極833により金属粒子の飛散が制御される。このため、側面電極834は、保護層842に完全に接しない構成となるか、万一、保護層842に接した場合であっても、その接触面積を小さく抑えることができる。したがって、チップ抵抗器A10において、先述した側面電極34の頂部342の構成を実現することができる。
【0045】
一方、Ag粒子が含有された合成樹脂から構成される保護電極33とすることによって、保護電極33と保護層4との密着性が十分に確保される。このため、保護電極33と保護層4との界面からの硫化ガスの侵入を防ぐことができる。また、万一、中間電極35と保護層4との界面から硫化ガスが侵入した場合、上面電極31に含まれるAg粒子よりも保護電極33に含まれるAg粒子が先に硫化する。チップ抵抗器A10の構成上、保護電極33は犠牲電極の扱いとなるため、Ag粒子の硫化により仮に保護電極33の導電性が低下した場合であっても、電極3が断線する事態は生じない。
【0046】
他方、薄片状の炭素粒子が含有された合成樹脂から構成される保護電極33とすることによって、保護電極33と保護層4との密着性が十分確保されるとともに、保護電極33自体の耐硫化性が向上する。炭素粒子は耐硫化性を有するPd粒子などよりも安価な材料であるため、耐硫化性を向上させた保護電極33の製造コストを低く抑えることができる。また、炭素粒子の形状を薄片状とすることによって、投錨効果(アンカー効果)により保護電極33と中間電極35との密着性が向上するため、チップ抵抗器A10の耐硫化性がさらに向上する。
【0047】
平面視において、基板1の側面13と保護電極33の第2端332との間に隙間dが形成されている。このような構成をとることによって、チップ抵抗器A10の製造において、保護電極833が一次溝813を跨がないように形成されるため、基材81を容易に複数の帯状体85に分割することができる。
【0048】
Ni-Cr合金から構成される側面電極34とすることによって、側面電極34は硫化しなくなる。このことは、チップ抵抗器A10の耐硫化性の向上に寄与する。
【0049】
基板1の裏面12に配置される裏面電極32は、導電性粒子320が含有された合成樹脂から構成される。導電性粒子320は、形状が薄片状であるAg粒子である。ここで、チップ抵抗器A10の使用において、チップ抵抗器A10から発生する熱に起因した熱応力が、チップ抵抗器A10と回路基板との間に介在するはんだに発生する。当該熱応力が繰り返し発生することによって、当該はんだに亀裂が発生し、断線するおそれがある。このような裏面電極32の構成をとることによって、裏面電極32が熱による膨張・収縮に追随しやすくなるため、当該熱応力が緩和される。したがって、裏面電極32によって、当該はんだに亀裂が発生することを抑制できる。また、導電性粒子320の形状を薄片状とすることによって、投錨効果により裏面電極32と中間電極35との密着性が向上するため、中間電極35による裏面電極32の保護効果がより大きくなる。
【0050】
〔第2実施形態〕
図20および図21に基づき、本開示の第2実施形態にかかるチップ抵抗器A20について説明する。これらの図において、先述したチップ抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0051】
図20は、チップ抵抗器A20の断面図である。図20の断面位置および範囲は、図4に示すチップ抵抗器A10の断面図に対応している。図21は、図20の部分拡大図である。チップ抵抗器A20の平面視の形状および大きさは、チップ抵抗器A10と同一である。
【0052】
チップ抵抗器A20においては、裏面電極32の構成がチップ抵抗器A10と異なる。
【0053】
図20および図21に示すように、本実施形態にかかる裏面電極32は、第1層321および第2層322を有する。第1層321は、基板1の裏面12に接し、かつ電気絶縁体である合成樹脂から構成される。当該合成樹脂は、たとえば可とう性エポキシ樹脂である。第2層322は、第1層321に積層され、かつ導電性粒子320が含有された合成樹脂から構成される。第2層322の構成は、チップ抵抗器A10の裏面電極32の構成と同一である。したがって、本実施形態にかかる導電性粒子320は、形状が薄片状であり、かつAgから構成される。
【0054】
チップ抵抗器A20は、チップ抵抗器A10と同一の構成をとる上面電極31、保護層4(上部保護層42)、保護電極33、側面電極34および中間電極35を備える。この場合において、保護電極33は、上面電極31および保護層4の双方に接し、かつそれぞれの一部を覆っている。このため、チップ抵抗器A20においても、側面電極34の頂部342は、保護層4に完全に接しない構成となるか、万一、保護層4に接した場合であっても、その接触面積を小さく抑えることができる。また、保護層4に接した頂部342が剥離した場合であっても、平面視において保護層4との境界に位置する保護電極33の端部(第1端331)で剥離が停止するため、保護電極33により上面電極31への硫化ガスの侵入が防止される。あわせて、保護電極33は中間電極35に覆われるため、保護電極33および中間電極35によって構成される二重遮へい構造により上面電極31への硫化ガスの侵入を防ぐことができる。したがって、チップ抵抗器A20によっても、耐硫化性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
本実施形態にかかる裏面電極32は、基板1の裏面12に接する第1層321と、第1層321に積層された第2層322を有する。第1層321は、電気絶縁体である合成樹脂から構成される。また、第2層322は、導電性粒子320が含有された合成樹脂から構成される。導電性粒子320は、形状が薄片状であるAg粒子である。このような構成をとることによって、第1層321により基板1と裏面電極32との密着性の向上を図ることができる。また、第2層322により裏面電極32と中間電極35との密着性の向上を図ることができる。したがって、基板1および中間電極35の双方との密着性が高い裏面電極32とすることができるため、回路基板に対するチップ抵抗器A20の実装強度がより向上する。
【0056】
〔第3実施形態〕
図22図25に基づき、本開示の第3実施形態にかかるチップ抵抗器A30について説明する。これらの図において、先述したチップ抵抗器A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0057】
図22は、チップ抵抗器A30の平面図であり、理解の便宜上、電極3の中間電極35および外部電極36を透過している。図23は、図22に対しさらに電極3の側面電極34を透過した平面図である。図24は、図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。図25は、図24の部分拡大図である。
【0058】
チップ抵抗器A30においては、保護電極33および上部保護層42の構成がチップ抵抗器A10と異なる。
【0059】
図22図25に示すように、基板1の厚さ方向Zにおいて保護電極33は、上面電極31と側面電極34および上部保護層42とに挟まれた構成となっている。また、図25に示すように、保護電極33の第1端331が上部保護層42に接し、保護電極33の第2端332が側面電極34に接している。本実施形態においても、平面視において基板1の側面13と第2端332との間に隙間dが形成され、図23に示すように、側面電極34、中間電極35および外部電極36を透視した場合、隙間dから上面電極31が露出した構成となっている。本実施形態にかかる保護電極33は、薄片状の炭素粒子が含有された合成樹脂から構成される。当該合成樹脂は、たとえばエポキシ樹脂である。また、当該炭素粒子の厚さ方向に直交する方向の寸法は、長辺方向で5~15μm、短辺方向で2~5μmである。
【0060】
図25に示すように、第1方向Xにおける上部保護層42の両端は、ともに保護電極33の一部を覆う構成となっている。
【0061】
チップ抵抗器A30は、チップ抵抗器A10と同様の構成をとる上面電極31、側面電極34および中間電極35を備える。基板1の厚さ方向Zにおいて保護電極33は、上面電極31と側面電極34および保護層4(上部保護層42)とに挟まれた構成となっている。このような構成をとることによって、仮に側面電極34の頂部342が保護層4に接する場合であっても、頂部342は保護電極33にも接する構成となるため、頂部342が保護層4から剥離しても、頂部342が保護電極33から剥離しない。このため、チップ抵抗器A30においても、保護電極33および中間電極35によって構成される二重遮へい構造により上面電極31への硫化ガスの侵入を防ぐことができる。したがって、チップ抵抗器A30によっても、耐硫化性の向上を図ることが可能となる。
【0062】
また、薄片状の炭素粒子が含有された合成樹脂から構成される保護電極33とすることによって、保護電極33自体の耐硫化性の向上を図ることができる。炭素粒子は耐硫化性を有するPd粒子よりも安価な材料であるため、耐硫化性の向上を図った保護電極33の製造コストを低く抑えることができる。また、炭素粒子の形状を薄片状とすることによって、投錨効果(アンカー効果)により保護電極33と中間電極35との密着性が向上するため、チップ抵抗器A30の耐硫化性がさらに向上する。
【0063】
本開示は、先述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0064】
本開示は、以下の付記にかかる実施形態を含む。
[付記1]
厚さ方向おいて互いに離間した主面および裏面と、前記主面と前記裏面との間に位置する側面と、を有する基板と、
前記主面に配置された上面電極と、
前記主面に配置され、かつ前記上面電極に導通する抵抗体と、
前記抵抗体を覆う保護層と、
前記上面電極に導通する保護電極と、
側部、頂部および底部を有し、かつ前記上面電極に導通する側面電極であって、前記側部が前記側面に配置され、平面視において前記頂部および前記底部が前記主面および前記裏面にそれぞれ重なる側面電極と、
前記保護電極および前記側面電極を覆う中間電極と、
前記中間電極を覆う外部電極と、を備え、
前記保護電極が前記上面電極および前記保護層の双方に接し、かつ前記上面電極および前記保護層の各々の一部を覆っている、チップ抵抗器。
[付記2]
前記保護電極は、平面視において前記基板の前記側面に並行する第1端および第2端を有し、
前記第1端が前記保護層に接し、前記第2端が前記上面電極に接している、付記1に記載のチップ抵抗器。
[付記3]
平面視において、前記基板の前記側面と前記保護電極の前記第2端との間に隙間が形成されている、付記2に記載のチップ抵抗器。
[付記4]
前記側面電極の前記頂部は、前記保護電極に接している、付記2または3に記載のチップ抵抗器。
[付記5]
前記側面電極は、Ni―Cr合金から構成される、付記2ないし4のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記6]
前記保護電極は、金属粒子が含有された合成樹脂から構成される、付記1ないし5のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記7]
前記金属粒子は、Ag粒子を含む、付記6に記載のチップ抵抗器。
[付記8]
前記保護電極は、薄片状の炭素粒子が含有された合成樹脂から構成される、付記1ないし5のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記9]
前記上面電極は、Ag粒子を含む、付記1ないし8のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記10]
前記基板の前記裏面に配置され、かつ前記側面電極に導通するとともに、導電性粒子が含有された合成樹脂を含む裏面電極をさらに備え、
前記側面電極の前記底部は、前記裏面電極に接し、
前記中間電極は、前記裏面電極を覆っている、付記1ないし9のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記11]
前記裏面電極は、
前記基板の前記裏面に接し、かつ電気絶縁体である合成樹脂から構成される第1層と、
前記第1層に積層され、かつ導電性粒子が含有された合成樹脂から構成される第2層と、を有する、付記10に記載のチップ抵抗器。
[付記12]
前記導電性粒子は、形状が薄片状であり、かつ金属から構成される、付記10または11に記載のチップ抵抗器。
[付記13]
前記金属は、Agである、付記12に記載のチップ抵抗器。
[付記14]
前記抵抗体は、RuO2またはAg―Pd合金とガラスとを含む、付記1ないし13のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記15]
前記抵抗体には、前記基板の厚さ方向に貫通するトリミング溝が形成されている、付記14に記載のチップ抵抗器。
[付記16]
前記保護層は、前記抵抗体に接する下部保護層と、前記下部保護層に積層された上部保護層と、を有し、
前記保護電極の一部が前記上部保護層に接している、付記15に記載のチップ抵抗器。
[付記17]
前記下部保護層は、ガラスを含む、付記16に記載のチップ抵抗器。
[付記18]
前記上部保護層は、エポキシ樹脂から構成される、付記16に記載のチップ抵抗器。
[付記19]
前記外部電極は、Snから構成される、付記1ないし18のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記20]
前記中間電極は、Niから構成される、付記19に記載のチップ抵抗器。
[付記21]
前記基板は、アルミナから構成される、付記1ないし20のいずれかに記載のチップ抵抗器。
[付記22]
厚さ方向において互いに離間した主面および裏面を有するシート状の基材において、前記主面に接し、かつ互いに離間した2つの領域を含む上面電極を形成することと、
抵抗体を形成することであって、前記抵抗体は、前記上面電極に接する第1および第2端を有することと、
前記抵抗体を覆う保護層を形成することと、
前記上面電極および前記保護層の双方に接する保護電極を形成することと、
前記基材を複数の帯状体に分割することであって、前記複数の帯状体は各々、前記主面と前記裏面との間に位置する側面を有することと、
前記複数の帯状体いずれか1つの前記側面に接する側面電極であって、平面視において前記主面および前記裏面に重なる部分をそれぞれ有する側面電極を形成することと、
前記保護電極および前記側面電極を覆う中間電極を形成することと、
前記中間電極を覆う外部電極を形成することと、を備える、チップ抵抗器の製造方法。
[付記23]
前記保護電極を形成することは、印刷を用いた手法により前記保護電極を形成することを含む、付記22に記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記24]
前記側面電極を形成することは、スパッタリング法により前記側面電極を形成することを含む、付記22または23に記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記25]
前記側面電極を形成することと、前記中間電極を形成することとの間に、前記帯状体を複数の個片に分割することをさらに備える、付記22ないし24のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記26]
前記中間電極を形成することおよび前記外部電極を形成することは、電解めっきにより前記中間電極および前記外部電極を形成することを含む、付記25に記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記27]
前記抵抗体を形成することの前に、前記基材の前記裏面に接し、かつ互いに離間した2つの領域から構成される裏面電極を形成することをさらに備える、付記22ないし26のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記28]
前記抵抗体を形成することは、印刷を用いた手法により前記抵抗体を形成する、付記22ないし27のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記29]
前記抵抗体を形成することは、前記基材の厚さ方向に貫通するトリミング溝を前記抵抗体に形成することを含む、付記28に記載のチップ抵抗器の製造方法。
[付記30]
前記抵抗体を形成することは、前記トリミング溝を形成することの前に、前記抵抗体に接する保護膜を形成することを含む、付記29に記載のチップ抵抗器の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25