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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/244 20190101AFI20231115BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231115BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231115BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61K33/244
A61K9/20
A61K33/26
A61K47/12
A61K47/36
A61K47/38
A61P13/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019074279
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2019182859
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2018077056
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本庄 達哉
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓真
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066119(JP,A)
【文献】特開2015-205852(JP,A)
【文献】特開2007-197373(JP,A)
【文献】特開2009-196940(JP,A)
【文献】特開2006-282551(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070845(WO,A1)
【文献】製剤の達人による製剤技術の伝承 上巻 経口投与製剤の製剤設計と製造法,2013年,pp.273-281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ランタンもしくはクエン酸第二鉄または薬学的に許容されるそれらの塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、
前記滑沢剤が錠剤の表面に偏在し、
前記滑沢剤が外部滑沢法により添加されていることを特徴とする、口腔内崩壊錠。
【請求項2】
炭酸ランタンもしくはクエン酸第二鉄または薬学的に許容されるそれらの塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、前記滑沢剤が外部滑沢法により添加されていることを特徴とする、口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記口腔内崩壊錠が、炭酸ランタンを含み、
前記炭酸ランタンが、以下の式(1)で表される炭酸ランタン水和物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の口腔内崩壊錠。
La(CO・xHO ・・・(1)
(式中、xは、3~9である。)
【請求項4】
炭酸ランタンもしくはクエン酸第二鉄または薬学的に許容されるそれらの塩の含有率が90質量%を超えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
前記口腔内崩壊錠が、炭酸ランタンを含み、
前記口腔内崩壊錠が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウムおよびクロスカルメロースナトリウムからなる群より選択される1種類以上を含み、クロスポビドンを含まないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項7】
前記口腔内崩壊錠が、炭酸ランタンを含み、
前記口腔内崩壊錠が、クロスカルメロースナトリウム含み、クロスポビドンを含まないことを特徴とする、請求項6に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項8】
炭酸ランタンもしくはクエン酸第二鉄または薬学的に許容されるそれらの塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠を製造する方法であり、
前記滑沢剤が外部滑沢法により添加される工程を含み、
前記口腔内崩壊錠は、前記滑沢剤が錠剤の表面に偏在することを特徴とする、方法。
【請求項9】
炭酸ランタンもしくはクエン酸第二鉄または薬学的に許容されるそれらの塩を含む口腔内崩壊錠において、前記口腔内崩壊錠の崩壊性を改善する、および/または前記口腔内崩壊錠の製造工程における打錠障害を改善する方法であり、
前記口腔内崩壊錠に外部滑沢法により滑沢剤を含ませることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊錠に関する。より具体的には、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)を含む口腔内崩壊錠に関する。本発明はまた、前記口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属系の医薬有効成分である炭酸ランタンは、慢性腎臓病患者の高リン血症の治療において高い有効性が示されており、それを含む医薬が国内外で販売されている。
【0003】
炭酸ランタンの製剤としては、顆粒製剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊製剤(「Orally Disintegrating Preparation:OD錠」または「口腔内崩壊錠」ともいう。)等が開発されている。なかでも、口腔内崩壊錠は、水なしで容易に服用できるために、特に、咀嚼や嚥下が困難な患者において有用である。
【0004】
炭酸ランタンを含む口腔内崩壊錠として、例えば、特許文献1には、炭酸ランタンまたはその薬学的に許容される塩を70~90質量%含有する口腔内崩壊用の医薬組成物が記載されている。また、特許文献2には、炭酸ランタン水和物、一定量のタルクおよび一定量の脂肪酸および/または脂肪酸誘導体を含有する口腔内崩壊錠が記載されている。
【0005】
ところで、口腔内崩壊錠等の錠剤を製造する際に、錠剤用の粉末を圧縮する際に打錠機杵臼と錠剤間の摩擦を緩和し、スティッキング等の打錠障害を防ぐために、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤が錠剤処方の添加剤として用いられている。かかる滑沢剤は、通常、打錠工程前に打錠用の粉末に混合して用いられる(内部滑沢法)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6093829号公報(発行日:2017年3月8日)
【文献】特開2017-119655号公報(公開日:2017年7月6日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている口腔内崩壊錠は、内部滑沢法で製造されているため、打錠用の粉末に一定量の滑沢剤が含まれている。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤が錠剤の内部に過剰に含まれると、錠剤に含まれる粉末間の接着力が弱くなるために、錠剤の硬度が低下してしまうという問題が生じる場合があった。さらに、特許文献1に記載されている口腔内崩壊錠は、有効成分である炭酸ランタン水和物の含有量が90質量%を超えると、摩損度の上昇、すなわち、割れ・欠けの発生率が特に増加するという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載されている技術は、添加剤としてステアリン酸マグネシウムとタルクとを併用して、口腔内崩壊錠の問題点の一つである、貯蔵による経時的な溶出低下の問題点を解決しようとする技術であるが、内部滑沢法により上記添加剤が添加されているため、得られた錠剤が摩損し易いという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、打錠障害等の製造性の問題が改善されるとともに、速やかな崩壊性を有する新規の、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)を含む口腔内崩壊錠を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)を含む口腔内崩壊錠の製造工程において、外部滑沢法により滑沢剤を添加することにより、製造性が改善されるとともに、速やかな崩壊性を有する口腔内崩壊錠を得ることができることを初めて見出した。
【0011】
また、本発明者らは、口腔内崩壊錠中の金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)の含有量が90質量%を超える極めて高い場合であっても、外部滑沢法を採用することにより、上記と同様の効果を得ることができることを見出した。そして、これらの知見を基に、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は以下の構成を包含する。
<1>金属系の医薬有効成分または薬学的に許容されるその塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、前記滑沢剤が錠剤の表面に偏在することを特徴とする、口腔内崩壊錠。
<2>金属系の医薬有効成分または薬学的に許容されるその塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、前記滑沢剤が外部滑沢法により添加されていることを特徴とする、口腔内崩壊錠。
<3>前記金属系の医薬有効成分が、炭酸ランタンである、<1>または<2>に記載の口腔内崩壊錠。
<4>前記炭酸ランタンが、以下の式(1)で表される炭酸ランタン水和物であることを特徴とする、<3>に記載の口腔内崩壊錠。
【0012】
La(CO・xHO ・・・(1)
(式中、xは、3~9である。)
<5>前記金属系の医薬有効成分の含有率が90質量%を超えることを特徴とする、<1>~<4>のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
<6>前記滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする、<1>~<5>のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。
<7><1>または<3>~<6>のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法であり、滑沢剤が外部滑沢法により添加される工程を含むことを特徴とする、方法。
<8>金属系の医薬有効成分または薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠において、前記口腔内崩壊錠の崩壊性を改善する、および/または前記口腔内崩壊錠の製造工程における打錠障害を改善する方法であり、
前記口腔内崩壊錠に外部滑沢法により滑沢剤を含ませることを特徴とする、方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、製造性が改善され、かつ、速やかな崩壊性を有する新規の、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)を含む口腔内崩壊錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0015】
〔1.口腔内崩壊錠〕
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠(以下、「本発明の口腔内崩壊錠」と称する。)は、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)または薬学的に許容されるその塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、前記滑沢剤が錠剤の表面に偏在する、口腔内崩壊錠である。また、本発明の口腔内崩壊錠は、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)または薬学的に許容されるその塩、および滑沢剤を含む口腔内崩壊錠であり、前記滑沢剤が外部滑沢法により添加されている、口腔内崩壊錠とも表現される。
【0016】
本明細書において「金属系の医薬有効成分」とは、金属原子を含む物質であり、かつ、医薬用途において効果を示し得る物質を意味する。本発明の一実施形態における金属系の医薬有効成分は、例えば、酸化マグネシウム、炭酸リチウム、塩化ストロンチウム、酢酸亜鉛、炭酸ランタン、クエン酸第二鉄、スクロオキシ水酸化鉄等であり得る。また、本発明の一実施形態における金属系の医薬有効成分は、好ましくは、金属系のリン吸着成分であり得る。金属系のリン吸着成分は、上記「金属系の医薬有効成分」の定義に該当し、かつ、リン吸着機能を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、炭酸ランタン、クエン酸第二鉄、スクロオキシ水酸化鉄等であり得る。本発明の一実施形態における金属系の医薬有効成分は、好ましくは、炭酸ランタンである。
【0017】
なお、上記金属系のリン吸着成分は、高リン血症の治療等において有用である。また、上記酸化マグネシウムは、制酸・緩下剤として、炭酸リチウムは、躁病・躁状態治療剤として、塩化ストロンチウムは、放射性医薬品または骨転移疼痛緩和剤として、酢酸亜鉛は、ウィルソン病治療剤(銅吸収阻害剤)または低亜鉛血症治療剤として、有用である。
【0018】
本明細書において「口腔内崩壊錠」とは、唾液または少量の水により口腔内で崩壊するように調製された製剤を意味する。
【0019】
以下、金属系の医薬有効成分の一例として、炭酸ランタンを用いて説明する。すなわち、炭酸ランタンについての説明は、炭酸ランタン以外の金属系の医薬有効成分の説明として援用される。
【0020】
本発明者らは、炭酸ランタンを含む口腔内崩壊錠について詳細に検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
・外部滑沢法により滑沢剤を添加することにより、打錠障害を回避できる。
・前記で得られた錠剤は、速やかな崩壊性を有する。
・前記で得られた錠剤は、従来品と比較して、同程度もしくは優れた硬度を示す。
・前記で得られた錠剤は、摩損等の問題を生じない。特に、炭酸ランタンの含有率が90質量%を超える場合でも、摩損等の問題を生じない。
【0021】
すなわち、炭酸ランタンを含む口腔内崩壊錠の従来品では、上述した通り、製造性の問題、摩損度の上昇(割れ・欠けの発生率の増加)の問題等があった。また、金属系の医薬有効成分(例えば、炭酸ランタン等)の打錠は、打錠障害が問題になることが多く、さらに多くの崩壊剤を加えなければ崩壊性に乏しいために、一般に困難であることが当該技術分野での技術常識であった。
【0022】
したがって、本発明者らが見出した上記の知見、すなわち、金属系の医薬有効成分である炭酸ランタンに、外部滑沢法により滑沢剤を添加して、製造性が改善されるとともに、速やかな崩壊性および優れた硬度を有し、かつ、摩損が生じない(摩損が生じにくい)、口腔内崩壊錠を製造できることは驚くべきことであった。
【0023】
本発明の口腔内崩壊錠は、上記の知見に基づく効果を奏することから、極めて有用な新規の炭酸ランタンを含む口腔内崩壊錠を提供することができる。
【0024】
本発明の口腔内崩壊錠は、滑沢剤が外部滑沢法により添加される工程を含む、方法により製造される。
【0025】
外部滑沢法は、打錠用混合物を調製する際には滑沢剤を添加せずに、滑沢剤を打錠機の上下杵および臼に噴霧(塗布)して添加する方法である。滑沢剤を上下杵および臼へ直接噴霧することで、滑沢剤の皮膜を粉末との接触面に形成することができる。本発明の口腔内崩壊錠を、外部滑沢法により滑沢剤を添加する工程を含む方法により製造することにより、上述の本発明の効果を達成できる。また、滑沢剤を打錠機の杵臼に噴霧(塗布)することは、従来の公知の方法に基づき、あるいは市販の機械を用いて行うことができる。
【0026】
本発明の口腔内崩壊錠を製造する際に使用される打錠装置としては、例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機等が挙げられる。ロータリー式打錠機としては、例えば、AQUARIUS G/LIBRA 2/VIRGO(菊水製作所)、COMPRIMA(IMA)等が使用され得る。
【0027】
本発明の一実施形態における滑沢剤は、特に限定されないが、例えば、カルナウバロウ、含水二酸化ケイ素、含水無晶形酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、重質無水ケイ酸、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミニウムゲル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セタノール、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、無水ケイ酸水加物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等であり得る。本発明の一実施形態における滑沢剤は、打錠障害軽減の観点から、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
【0028】
本発明の一実施形態において、外部滑沢法によって口腔内崩壊錠に添加される滑沢剤の量は、口腔内崩壊錠の質量を基準として、例えば、1質量%未満であり、好ましくは、0.5質量%以下であり、より好ましくは、0.1質量%以下である。滑沢剤の添加量が上記好ましい範囲であると、得られた口腔内崩壊錠の崩壊時間が短くなるという利点を有する。
【0029】
本発明の口腔内崩壊錠は、滑沢剤が錠剤の表面に偏在している。本明細書において「滑沢剤が錠剤の表面に偏在している」とは、錠剤の表層部および/またはその近傍に滑沢剤が偏って存在していることを意味する。本発明の一実施形態において、滑沢剤の錠剤表面への偏在は、錠剤の表面に滑沢剤の全含有量の半分を超える量が偏って存在していればよい。滑沢剤が錠剤の表面に偏在しているか否かについては、高精度で表面のエッチング処理が可能である集束イオンビーム法を用いて調製した錠剤断面サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することや、近赤外分光法(NIR)イメージング法を用いて錠剤表面と錠剤断面の滑沢剤の分布を比較することにより評価することができる。
【0030】
本発明の口腔内崩壊錠において、滑沢剤が錠剤の表面に偏在する理由としては、本発明の口腔内崩壊錠の製造が、上述の通り、外部滑沢法により滑沢剤が添加されることによる。すなわち、外部滑沢法では、打錠する前の打錠用混合物には滑沢剤は含まれておらず、打錠機の杵臼の表面に付着した滑沢剤が、打錠の際に錠剤の表面に付着することになる。このため、必然的に、錠剤内部に比して、錠剤表面により多くの滑沢剤が偏在するといえる。すなわち、外部滑沢法で製造された口腔内崩壊剤は、上記のSEM観察を行うまでもなく、滑沢剤が錠剤の表面に偏在しているといえる。
【0031】
本発明の一実施形態における炭酸ランタンは、以下の式(1)で表される炭酸ランタン水和物である。
【0032】
La(CO・xHO ・・・(1)
(式中、xは、3~9である。)
前記式(1)で表される炭酸ランタン水和物は、物理的性質、化学的性質および生物学的性質が公知であるため、本発明の口腔内崩壊錠に含まれる炭酸ランタンとして好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態における炭酸ランタンは、上記式(1)中のxが、3~9である。
【0034】
本発明の一実施形態における炭酸ランタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有率は、特に限定されないが、好ましくは、50質量%以上であり、より好ましくは、70質量%以上であり、とりわけ好ましくは、75質量%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上であり、さらに好ましくは、90質量%を超える量である。炭酸ランタンまたは薬学的に許容されるその塩の含有率が70質量%以上であると、一度に多量の炭酸ランタンを服用することが可能となり、患者の負担が軽減されるという利点を有する。また、本発明の口腔内崩壊錠は、90質量%を超える極めて多量の炭酸ランタンまたは薬学的に許容されるその塩を含有することができるため、90質量%を超える含有率では錠剤の摩損度等に問題が生じていた従来品と比べて、極めて有利である。
【0035】
本発明の口腔内崩壊錠の硬度は、特に限定されないが、後述する実施例に記載の方法に基づき評価した場合に、例えば、80N以上であり、好ましくは、100N以上である。口腔内崩壊錠の硬度が80N以上であれば、輸送時等における物理的破損を回避できるという利点を有する。
【0036】
本発明の口腔内崩壊錠の崩壊時間は、特に限定されないが、後述する実施例に記載の方法に基づき評価した場合に、例えば、30秒以下であり、好ましくは、15秒以下である。口腔内崩壊錠の崩壊時間が30秒以下であれば、口腔内崩壊錠として適した崩壊性(崩壊速度)を有するという利点を有する。
【0037】
本発明の口腔内崩壊錠は、前記滑沢剤に加えて、さらに他の添加剤を含み得る。そのような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、結合剤(例えば、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カンテン等)、賦形剤(例えば、D-マンニトール、乳糖、白糖、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、リン酸カルシウム、ソルビット、結晶セルロース等)、崩壊剤(例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、バレイショデンプン等)、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、エチルセルロース等)、甘味剤(アスパルテーム、果糖、サッカリン、スクラロース、白糖、D-ソルビトール、ブドウ糖、アセスルファムカリウム等)等が挙げられる。
【0038】
前記添加剤の含有率は、特に限定されることなく、従来公知の技術に基づいて、適宜設定され得る。例えば、崩壊剤の含有率は、例えば、3~10質量%であり、好ましくは、4~7質量%であり、より好ましくは、5~6質量%である。崩壊剤の含有率が3質量%以下であると、崩壊剤としての効果が得られず、10質量%以上であると有効成分を高含量含む製剤とすることができない。
【0039】
本発明の口腔内崩壊錠の成形は、特に限定されることなく、どのような形状も採用することができる。本発明の口腔内崩壊錠は、例えば、円形、楕円形、球形、棒状型、ドーナツ型の形状等であり得る。また、本発明の口腔内崩壊錠は、積層錠、有核錠等であってもよく、錠剤の表面がコーティング剤により被膜されていてもよい。
【0040】
本発明の口腔内崩壊錠は、高リン血症治療剤として、とりわけ、慢性腎臓病患者における高リン血症治療剤として、使用することができる。
【0041】
本発明の口腔内崩壊錠の投与量は、患者の状態や体重等によっても異なるが、口腔内崩壊錠に含まれるランタンの量を基準として、成人1日当たり、例えば、約100mg~10g、好ましくは、約500mg~5g、より好ましくは、約750mg~2.25gであり得る。また、本発明の口腔内崩壊錠の投与回数は、例えば、1日1~数回、好ましくは、1日3回であり得る。
【0042】
また、本発明の一実施形態において、金属系の医薬有効成分または薬学的に許容されるその塩を含む口腔内崩壊錠において、前記口腔内崩壊錠の崩壊性を改善する、および/または前記口腔内崩壊錠の製造工程における打錠障害を改善する方法であり、前記口腔内崩壊錠に外部滑沢法により滑沢剤を含ませることを特徴とする、方法を提供する。
【0043】
〔2.製造方法〕
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称する。)は、前記1.に記載の口腔内崩壊錠を製造する方法であり、滑沢剤が外部滑沢法により添加される工程を含む、方法である。
【0044】
本発明の製造方法は、外部滑沢法により滑沢剤を添加する工程を含んでいれば、その他の工程は特に限定されない。前記その他の工程としては、従来公知の任意の方法が使用され得る。
【0045】
本発明の一実施形態において、外部滑沢法による滑沢剤の添加工程は、前記1.に記載の外部滑沢法による添加工程であり得る。
【0046】
また、本発明の口腔内崩壊錠は、前記本発明の製造方法により製造された口腔内崩壊錠であり得る。
【0047】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0048】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0049】
[測定および評価方法]
実施例および比較例における各評価を、以下の方法で行った。
【0050】
(1.杵/杵臼の状態の評価)
杵1本あたり200錠の打錠を行った。杵の状態の評価では、打錠後に、杵の表面を目視にて観察した。評価は、上杵および下杵の各々について行った。打錠前と比較して、杵が曇ったり、杵への錠剤の付着が認められたりした場合を「×」と評価した。一方、打錠前後で変化がない場合を「○」と評価した。また、杵臼の状態の評価では、上杵、下杵および臼について評価を行った。打錠前と比較して、杵が曇ったり、杵臼への錠剤の付着が認められたりした場合を「×」と評価した。一方、打錠前後で変化がない場合を「○」と評価した。
【0051】
(2.錠剤の状態の評価)
杵1本あたり200錠の打錠を行った。打錠後に、錠剤表面を目視にて観察した。評価は、錠剤上面および錠剤下面の各々について行った。また、比較例6、7および実施例6、7では、前記に加えて、錠剤の帯についても評価を行った。錠剤表面または錠剤の帯に光沢がない場合を「×」と評価した。一方、錠剤表面または錠剤の帯に光沢がある場合を「○」と評価した。なお、本評価は、(1.杵の状態の評価)と同様、定性的なスティッキングの評価である。スティッキングが発生すると、錠剤表面の粉が杵に付着することで、反対に錠剤の表面の光沢がなくなるため、本評価により、スティッキングの有無を評価できる。
【0052】
(3.錠剤硬度)
錠剤硬度計TBH425(ERWEKA社製)を用いて、錠剤硬度を測定した。錠剤硬度の測定は、製造直後、25℃/相対湿度75%/室温で5日間保管後、40℃/相対湿度75%/室温で5日間保管後、および60℃(湿度および温度は制御なし)で5日間保管後について行った。硬度の測定は、N=3で行い、その平均値を錠剤硬度とした。
【0053】
(4.崩壊試験)
第16改正日本薬局方に記載されている崩壊試験法にしたがい試験を行った。試験液として水を用いた場合の崩壊時間(秒)を測定することにより、錠剤の崩壊性を評価した。崩壊時間の測定は、製造直後、25℃/相対湿度75%/室温で5日間保管後、40℃/相対湿度75%/室温で5日間保管後、および60℃(湿度および温度は制御なし)で5日間保管後について行った。崩壊試験は、N=3で行い、その平均値を崩壊時間とした。
【0054】
[比較例1]
炭酸ランタン8水和物、クロスポビドン、トウモロコシデンプンおよびアスパルテームを、表1に記載の量で袋内に投入し、混合した。続いて、前記袋内にステアリン酸マグネシウムを、表1に記載の量で投入し、混合した。その後、直径10mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機(VIRGO、菊水製作所社製)を用いて、12kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表1中、比較例1の「微量」は、0.1質量%以下の量を、内部滑沢法で添加したことを示す。すなわち、前記打錠用混合物中に、0.1質量%以下の量のステアリン酸マグネシウムが含まれていることを示す。
【0055】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例2]
ステアリン酸マグネシウムの量を「5.9mg」に変更し、トウモロコシデンプンの量を「3.54mg」に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、錠剤を得た。
【0057】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
[比較例3]
クロスポビドンをデンプングリコール酸ナトリウムに変更した以外は、比較例2と同様の方法により、錠剤を得た。
【0059】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
[実施例1]
炭酸ランタン8水和物、クロスポビドン、トウモロコシデンプンおよびアスパルテームを、表1に記載の量で袋内に投入し、混合した。その後、直径10mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機を用いて、微量のステアリン酸マグネシウムを噴霧しながら、12kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表1中、実施例1の「微量」は、0.1質量%以下の量を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。以下、実施例2~4において同様である。
【0061】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
[実施例2]
クロスポビドンを低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、錠剤を得た。
【0063】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0064】
[実施例3]
クロスポビドンをデンプングリコール酸ナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、錠剤を得た。
【0065】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
[実施例4]
クロスポビドンをクロスカルメロースナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、錠剤を得た。
【0067】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
[参考例1]
クロスカルメロースナトリウム33.0mgおよびタルク5.9mgを加え、ステアリン酸マグネシウムの量を「1.18mg」に変更した以外は、比較例1と同様の方法により、錠剤を得た。
【0069】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
[結果]
内部滑沢法により微量のステアリン酸マグネシウムを添加した比較例1では、下杵への打錠用混合物の付着が見られた。また、錠剤表面には光沢が見られなかった。これらの結果より、比較例1では、打錠障害が生じていることが分かった。
【0073】
また、内部滑沢法により1質量%のステアリン酸マグネシウムを添加した比較例2では、打錠障害は見られなかったものの、得られた錠剤の崩壊性に問題が生じた。
【0074】
一方、外部滑沢法によりステアリン酸マグネシウムを添加した実施例1~4では、打錠障害を生じることなく、かつ、速やかな崩壊性を示した。さらに、錠剤の硬度も、従来品(比較例)と比較して、同程度もしくは優れた硬度を示した。
【0075】
また、特許文献2に記載の錠剤について評価を行ったところ、打錠障害が生じており、かつ、安定性試験後の崩壊性においても崩壊遅延が生じるか、またはそもそも崩壊しないことが分かった(参考例1)。さらに、比較例2および参考例2の結果より、内部滑沢法によりステアリン酸マグネシウムを添加した場合には、崩壊剤の種類に関係なく、安定性試験後の崩壊遅延が生じることが分かった。
【0076】
[比較例4]
炭酸ランタン4水和物、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアスパルテームを、表3に記載の量で袋内に投入し、混合した。続いて、前記袋内にステアリン酸マグネシウムを、表3に記載の量で投入し、混合した。その後、直径12mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機(VELA、菊水製作所社製)を用いて、20kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表3中、比較例4の「微量」は、0.1質量%以下の量を、内部滑沢法で添加したことを示す。すなわち、前記打錠用混合物中に、0.1質量%以下の量のステアリン酸マグネシウムが含まれていることを示す。
【0077】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表4に示す。
【0078】
[比較例5]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量を「14.0mg」に変更し、ステアリン酸マグネシウムの量を「10.0mg」に変更した以外は、比較例4と同様の方法により、錠剤を得た。
【0079】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表3に示す。
【0080】
[実施例5]
炭酸ランタン4水和物、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアスパルテームを、表3に記載の量で袋内に投入し、混合した。その後、直径12mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機を用いて、微量のステアリン酸マグネシウムを噴霧しながら、20kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表3中、実施例5の「微量」は、0.1質量%以下の量を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。
【0081】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表4に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
[結果]
比較例4および5と、実施例5との比較により、炭酸ランタンの4水和物を用いた場合も、炭酸ランタンの8水和物を用いた場合(実施例1~4)と同様に、外部滑沢法により、打錠障害を生じることなく、かつ、速やかな崩壊性を示した。さらに、錠剤の硬度も、従来品(比較例)と比較して、同程度もしくは優れた硬度を示した。
【0085】
[比較例6]
クエン酸第二鉄、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアスパルテームを、表5に記載の量で袋内に投入し、混合した。続いて、前記袋内にステアリン酸マグネシウムを、表5に記載の量で投入し、混合した。その後、直径8.5mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機(VELA、菊水製作所社製)を用いて、12kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表5中、比較例6の「微量」は、0.1質量%以下の量を、内部滑沢法で添加したことを示す。すなわち、前記打錠用混合物中に、0.1質量%以下の量のステアリン酸マグネシウムが含まれていることを示す。
【0086】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表6に示す。
【0087】
[比較例7]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量を「2.35mg」に変更し、ステアリン酸マグネシウムの量を「5.02mg」に変更した以外は、比較例6と同様の方法により、錠剤を得た。
【0088】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表6に示す。
【0089】
[実施例6]
クエン酸第二鉄、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびアスパルテームを、表5に記載の量で袋内に投入し、混合した。その後、直径8.5mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機を用いて、微量のステアリン酸マグネシウムを噴霧しながら、6.5kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得た。なお、表5中、実施例6の「微量」は、0.1質量%以下の量を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。
【0090】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表6に示す。
【0091】
[実施例7]
クエン酸第二鉄の量を「139.54mg」に変更し、トウモロコシデンプン20.16mgを加えた以外は、実施例6と同様の方法により、錠剤を得た。
【0092】
得られた錠剤について、前記の評価方法に基づき、杵の状態、錠剤の状態、錠剤硬度および崩壊性を評価した。結果を表6に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
[結果]
比較例6および7と、実施例6との比較により、クエン酸第二鉄を用いた場合も、炭酸ランタンを用いた場合(実施例1~5)と同様に、外部滑沢法により、打錠障害を生じることなく、かつ、速やかな崩壊性を示した。さらに、錠剤の硬度も、従来品(比較例)と比較して、同程度もしくは優れた硬度を示した。
【0096】
また、実施例1~7の結果より、錠剤に含まれる金属系の医薬有効成分の量に関係なく、上記の効果を奏することが分かった。
【0097】
[処方例1]
炭酸ランタン4水和物、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アスパルテームおよびステアリン酸マグネシウムを、表7に記載の量で袋内に投入し、混合する。その後、直径12mmの杵に前記混合物(打錠用混合物)を投入し、ロータリー式打錠機を用いて、微量のステアリン酸マグネシウムを噴霧しながら、20kNの打錠圧で打錠を行い、錠剤を得る。すなわち、表7で示す処方量により、錠剤を得る。
【0098】
[処方例2]
炭酸ランタン4水和物、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アスパルテームおよびステアリン酸マグネシウムの各量を、処方例1の各成分の2倍量とした以外は、処方例1と同様の方法により、錠剤を得る。すなわち、表7で示す処方量により、錠剤を得る。
【0099】
[処方例3]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースのグレードをNBD-022に変更した以外は、実施例5と同様の方法により、錠剤を得る。すなわち、表7で示す処方量により、錠剤を得る。なお、表7中、処方例3の「微量」は、0.1質量%以下の量を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。
【0100】
[処方例4]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量を「適量(471.45mg)」に変更し、アスパルテームの量を「14.4mg」に変更し、ステアリン酸マグネシウムの量を「0.15mg」に変更し、クロスポビドンを加えないこと以外は、処方例3と同様の方法により、錠剤を得る。すなわち、表7で示す処方量により、錠剤を得る。得られる錠剤の錠剤径は、14mmである。なお、表7中、処方例4の「微量」は、0.1質量%以下の量(具体的には、0.01質量%(0.15mg))を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。
【0101】
[処方例5]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの量を「適量(293.27mg)」に変更し、アスパルテームの量を「12.6mg」に変更し、ステアリン酸マグネシウムの量を「0.13mg」に変更し、クロスポビドンを加えないこと以外は、処方例3と同様の方法により、錠剤を得る。すなわち、表7で示す処方量により、錠剤を得る。得られる錠剤の錠剤径は、13mmである。なお、表7中、処方例5の「微量」は、0.1質量%以下の量(具体的には、0.01質量%(0.13mg))を、外部滑沢法で添加したこと(杵に噴霧したこと)を示す。
【0102】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の一実施形態に係る口腔内崩壊錠は、製造性が改善され、かつ、速やかな崩壊性を有するため、金属系の医薬有効成分、例えば、炭酸ランタン等の新規製剤として好適に利用することができる。