(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】電流検出器及びパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20231115BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20231115BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231115BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
G01R15/18 A
G01R19/00 B
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2019084827
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】指田 和之
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】池田 康亮
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152528(JP,A)
【文献】特開2005-145744(JP,A)
【文献】特開2007-258384(JP,A)
【文献】特開2015-070085(JP,A)
【文献】特開2009-124086(JP,A)
【文献】特開2001-343401(JP,A)
【文献】特開2016-017767(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116679(WO,A1)
【文献】特開2008-010640(JP,A)
【文献】特公昭46-27234(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 19/00
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高抵抗基体と、
前記高抵抗基体に形成され、前記高抵抗基体を貫通するように検出対象電流が流れる主電流導通部と、
前記高抵抗基体に形成され、前記主電流導通部と離間した位置で前記主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備え、
前記高抵抗基体と前記主電流導通部との間、及び、前記高抵抗基体と前記コイル部との間には酸化膜が形成されており、
前記高抵抗基体が半導体基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×10
7Ωcmの範囲内にあり、
前記高抵抗基体がガラス基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×10
19Ωcmの範囲内にあることを特徴とする電流検出器。
【請求項2】
前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の浮遊容量が0.1pF~20pFの範囲内にあることを特徴とする請求項
1に記載の電流検出器。
【請求項3】
前記高抵抗基体は、FZ法又はMCZ法で形成されたシリコン基体であり、
前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~220000Ωcmの範囲内にあることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電流検出器。
【請求項4】
前記高抵抗基体は、SiC基体であり、
前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×10
7Ωcmの範囲内にあることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電流検出器。
【請求項5】
前記コイルは、前記高抵抗基体の両面に形成された導体膜を、前記高抵抗基体の厚さ方向に形成されたビアを介して接続することによって形成されたロゴスキーコイルであることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項6】
前記主電流導通部は、前記高抵抗基体の両面に形成された導体膜を、前記高抵抗基体の厚さ方向に形成されたビアを介して接続することによって形成されていることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項7】
前記コイル部で囲まれている領域において、所定の断面で見たときに、前記主電流導通部と前記コイルとの間の間隔をAとし、前記主電流導通部が形成されている領域の幅をBとしたときに、B/8<A<2Bの関係を満たすことを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項8】
前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、
前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の外側に配置されていることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項9】
前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、
前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の内側に配置されていることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項10】
前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、
前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の内側と外側とを横断するように配置されていることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項11】
前記主電流導通部が形成されている領域の面積は、平面的に見て前記コイル部で囲まれている領域の面積の4%~65%の範囲内にあることを特徴とする請求項1~1
0のいずれかに記載の電流検出器。
【請求項12】
高抵抗基体と、
前記高抵抗基体に形成され、前記高抵抗基体を貫通するように検出対象電流が流れる主電流導通部と、
前記高抵抗基体に形成され、前記主電流導通部と離間した位置で前記主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備え、
前記高抵抗基体が半導体基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×10
7Ωcmの範囲内にあり、
前記高抵抗基体がガラス基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×10
19Ωcmの範囲内にあり、
前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、
前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の内側と外側とを横断するように配置されており、
平面的に見て、前記戻し線が前記コイルで囲まれている領域の内側に配置されている部分における前記戻し線と前記コイルとの間の領域の面積は、平面的に見て、前記戻し線が前記コイルで囲まれている領域の外側に配置されている部分における前記戻し線と前記コイルとの間の領域の面積と等しいことを特徴とする電流検出器。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれかの電流検出器を備えることを特徴とするパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出器及びパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャント抵抗を備える電流検出器を用いたパワーモジュールが知られている(従来のパワーモジュール700。例えば、特許文献1参照。)。
従来のパワーモジュール700は、
図13に示すように、基板500上に配置されたスイッチング素子(パワートランジスタ)200と、スイッチング素子200と接続されている回路と接続されたワイヤ410と、電流検出器とを備える。従来のパワーモジュールにおいては、電流検出器として、シャント抵抗850を用いる。
【0003】
従来のパワーモジュール700によれば、電流検出器として、シャント抵抗850を用いるため、電流検出器のサイズを小さくすることができ、電源装置(電力変換回路)の小型化の要請にかなうパワーモジュールとなる。
【0004】
しかしながら、従来のパワーモジュール700において、シャント抵抗850は電力変換回路の主電流が流れる回路と直列に接続され、検出対象電流がシャント抵抗を流れるため、電力損失が発生する、という問題がある。
【0005】
そこで、従来、コイルを備える電流検出器が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
従来の電流検出器800は、
図14に示すように、検出対象電流が流れる主電流導通路820と離間した位置で主電流導通路820を取り囲む位置に配置されたコイル830(いわゆるロゴスキーコイル)を有するコイル部を備える。
【0007】
このようなコイルを用いた電流検出器をパワーモジュールに適用することも知られている(従来の他のパワーモジュール900。例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
従来の他のパワーモジュール900は、
図15に示すように、基板500上に配置されたスイッチング素子(IGBT)200と、スイッチング素子200と接続されたクリップリード400と、電流検出器800とを備える。電流検出器800においては、所定の位置でクリップリード400の主電流導通路820を囲むようにコイル830が配置されている。
【0009】
従来の他のパワーモジュール900によれば、所定の位置でクリップリード400の主電流導通路820を囲むようにコイル830が配置されている電流検出器800を用いるため、検出対象電流が抵抗を流れることに起因した電力損失が発生せず、シャント抵抗を用いた場合と比較して電力損失が少なくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平9-65662号公報
【文献】特開2006-189319号公報
【文献】特開2000-171491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで近年、電源装置(電力変換回路)やパワーモジュールの小型化の要請に伴い、パワーモジュール内に組み込まれる電流検出器のより一層の小型化が求められている。そこで、コイルを備える電流検出器をより一層小型化するために、シリコン基板等の基体に微細加工を施すMEMS技術を適用して電流検出器を小型化することが考えられる。
【0012】
このような電流検出器としては、シリコン基体と、シリコン基体を貫通するように検出対象電流が流れる主電流導通部と、シリコン基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルとを備える電流検出器が考えられる(背景技術に係る電流検出器。構成は
図3と同様の構成)。
【0013】
しかしながら、背景技術に係る電流検出器においては、シリコン基体の比抵抗が一般的に100Ωcm未満(例えば60Ωcm~70Ωcm程度)であるため、背景技術に係る電流検出器を電源装置(電力変換回路)に組み込んで使用した場合において接地線を介して主電流導通部にノイズ(コモンモードノイズ)が入り込んだときに、主電流導通部に入り込んだノイズがシリコン基板を通してコイル(及び積分器)に入り込んでしまい、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することが難しい、という問題がある。
【0014】
そこで、本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる電流検出器及びパワーモジュール及び電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[1]本発明の電流検出器は、高抵抗基体と、前記高抵抗基体に形成され、前記高抵抗基体を貫通するように検出対象電流が流れる主電流導通部と、前記高抵抗基体に形成され、前記主電流導通部と離間した位置で前記主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備え、前記高抵抗基体が半導体基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にあり、前記高抵抗基体がガラス基体である場合には、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×1019Ωcmの範囲内にあることを特徴とする。
【0016】
[2]本発明の電流検出器においては、前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の浮遊容量が0.1pF~20pFの範囲内にあることが好ましい。
【0017】
[3]本発明の電流検出器においては、前記高抵抗基体は、FZ法又はMCZ法で形成されたシリコン基体であり、記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~220000Ωcmの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
[4]本発明の電流検出器においては、前記高抵抗基体は、SiC基体であり、前記高抵抗基体のうち少なくとも前記主電流導通部と前記コイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にあることが好ましい。
【0019】
[5]本発明の電流検出器においては、前記コイルは、前記高抵抗基体の両面に形成された導体膜を、前記高抵抗基体の厚さ方向に形成されたビアを介して接続することによって形成されたロゴスキーコイルであることが好ましい。
【0020】
[6]本発明の電流検出器においては、前記主電流導通部は、前記高抵抗基体の両面に形成された導体膜を、前記高抵抗基体の厚さ方向に形成されたビアを介して接続することによって形成されていることが好ましい。
【0021】
[7]本発明の電流検出器においては、前記コイル部で囲まれている領域において、前記主電流導通部と前記コイル部との間の間隔をAとし、前記主電流導通部が形成されている領域の幅をBとしたときに、B/8<A<2Bの関係を満たすことが好ましい。
【0022】
[8]本発明の電流検出器において、前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の外側に配置されていることが好ましい。
【0023】
[9]本発明の電流検出器において、前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の内側に配置されていることが好ましい。
【0024】
[10]本発明の電流検出器において、前記コイル部は、前記コイルの一方の端部と接続され、前記主電流導通部を囲むように配置された戻し線をさらに有し、前記戻し線は、平面的に見て、前記コイルで囲まれている領域の内側と外側とを横断するように配置されていることが好ましい。
【0025】
[11]本発明の電流検出器においては、平面的に見て、前記戻し線が前記コイルで囲まれている領域の内側に配置されている部分における前記戻し線と前記コイルとの間の領域の面積は、平面的に見て、前記戻し線が前記コイルで囲まれている領域の外側に配置されている部分における前記戻し線と前記コイルとの間の領域の面積と等しいことが好ましい。
【0026】
[12]本発明の電流検出器においては、前記主電流導通部が形成されている領域の面積は、平面的に見て前記コイル部で囲まれている領域の面積の4%~65%の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
[13]本発明のパワーモジュールは、上記[1]~[12]のいずれかの電流検出器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電流検出器及びパワーモジュールによれば、高抵抗基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部を備えるため、従来の電流検出器800及び従来の他のパワーモジュール900の場合と同様に、検出対象電流が抵抗を流れることに起因した電力損失が発生せず、シャント抵抗を用いた場合と比較して電力損失が少なくて済む。
【0029】
また、本発明の電流検出器及びパワーモジュールによれば、高抵抗基体と、高抵抗基体を貫通するように検出対象となる電流が流れる主電流導通部と、高抵抗基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備えるため、基体に微細加工を施すMEMS技術を適用した加工が可能となる。このため、主電流導通部が形成される部分の高さ(厚み)とコイルが形成される部分の高さ(厚み)の差を小さくして薄型化することや接地面積を狭くすることができ、その結果、コイルを用いた電流検出器を小型化することができる。
【0030】
また、本発明の電流検出器及びパワーモジュールによれば、高抵抗基体が半導体基体である場合には、高抵抗基体のうち少なくとも主電流導通部とコイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にあり、高抵抗基体がガラス基体である場合には、高抵抗基体のうち少なくとも主電流導通部とコイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×1019Ωcmの範囲内にあるため、主電流導通路とコイル部との間のインピーダンスが高くなる。従って、接地線を介して主電流導通部にノイズ(コモンモードノイズ)が入り込んだ場合であっても、ノイズが高抵抗基体を通してコイル、ひいては積分器に入り込むことを防ぐことができる。その結果、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0031】
その結果、本発明の電流検出器及びパワーモジュールによれば、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態1に係るパワーモジュール1を示す回路図である。なお、本発明の理解を助けるために、
図1においてはコイル部150を模式的に表現している。
【
図2】実施形態1に係るパワーモジュール1を示す図である。
図2(a)はパワーモジュール1の平面図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A断面図である。
【
図3】実施形態1に係る電流検出器100を示す図である。
図3(a)は電流検出器100の平面図及び要部拡大図であり、
図3(b)は電流検出器100の電流路(ただしコイル130を1本の線(曲線)で表現している。
図11及び
図12において同じ)をモデル化して示す図である。
【
図5】コイル130の両端に流れる電流量を説明するために示す図である。
図5(a)は、主電流導通部を流れる電流とコイルを流れる誘導電流の関係をイメージした図であり、
図5(b)は
図4における領域Cを説明するために示す図である。
図5(B)の上図は
図4における領域Cの要部拡大断面図を示し、
図5(b)の下図は電流検出器100(
図4における領域C)のモデル化された等価回路図である。
【
図6】実施形態1に係る電流検出器100におけるコモンモードノイズを説明するために示す図である。
図6の上図は
図4における領域Cの要部拡大断面図を示し、
図6の下図はコモンモードノイズが発生する回路をモデル化した等価回路である。
【
図7】比較例に係る電流検出器においてコイル部150の端子間の電圧測定を行った試験結果を示すグラフである。
図7において、実線は、比較例に係る電流検出器を用いて検出されたコイル部150の端子間の電圧の時間変化を示すグラフであり、破線は、基準例に係る電流検出器を用いて検出されたコイル部150の端子間の電圧の時間変化を示すグラフであり、一点鎖線はリセット回路の電圧の時間変化を示すグラフである。なお、
図7には、
図8との比較のために、実施例に係る電流検出器を用いてコイル部150の端子間の電圧の時間変化を二点鎖線で記載している。また、それぞれの波形の比較を容易にするために比較例に係る電流検出器の端子間の電圧以外の波形についてはコイル端電圧のスケールを変えて1枚のグラフ中に表示している。
【
図8】実施例に係る電流検出器においてコイル部150の端子間の電圧測定を行った試験結果を示すグラフである。
図8において、実線は、実施例に係る電流検出器を用いて検出されたコイル部150の端子間の電圧の時間変化を示すグラフであり、破線は、基準例に係る電流検出器を用いて検出されたコイル端の電圧の時間変化を示すグラフであり、一点鎖線はリセット回路の電圧の時間変化を示すグラフである。なお、
図7及び
図8において、基準例に係る電流検出器を用いた電圧のグラフとリセット回路の電圧のグラフは同じ波形をしている。
【
図9】実施形態1に係る電流検出器100を過電流保護回路を含む回路に適用した場合の回路図である。
【
図10】実施形態1に係る電流検出器100をDC-DCコンバータを含む回路に適用した場合の回路図である。
【
図11】実施形態2に係る電流検出器101を説明するために示す図である。
図11(a)は電流検出器101の平面図であり、
図11(b)は電流検出器101の電流路をモデル化して示す図である。
【
図12】実施形態3に係る電流検出器102を説明するために示す図である。
図12(a)は電流検出器102の平面図であり、
図12(b)は電流検出器102の電流路をモデル化して示す図である。
【
図13】従来のパワーモジュール700を示す図である。
図13中、符号201はダイオードを示す。
【
図14】従来の電流検出器800を示す図である。
図14中、符号840は戻り線を示し、符号860は電流検出部を示す。
【
図15】従来のパワーモジュール900を示す図である。
図15中、符号Bは放熱用ベース板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の電流検出器及びパワーモジュールについて、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。以下に説明する各実施形態は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成、特徴、機能等が同じ構成、要素(形状等が完全に同一ではない構成要素を含む。)については、実施形態をまたいで同じ符号を使用するとともに再度の説明を省略することがある。
【0034】
[実施形態1]
1.実施形態1に係るパワーモジュール1の構成
実施形態1に係るパワーモジュール1は、
図1に示すように、実施形態1に係る電流検出器100、スイッチング素子200、及び、制御部300を備える。スイッチング素子200は電力変換回路の一部を構成しており、スイッチング素子200と直列に接続された配線(電流路L)に流れる電流を電流検出器100を用いて検出する。
【0035】
電流検出器100は、コイル部150及び積分器160を有する。コイル部150においては、パワーモジュール1(電力変換回路)の回路中の電流路Lがコイル部150のコイル130の内側を貫通している。電流検出器100においては、検出対象となる電流路Lを流れる電流(以下、検出対象電流ということもある)が変化すると、それに伴ってコイル部150のコイル130に誘導電流が流れ、当該誘導電流を積分器160で増幅して検出対象電流を検出する。電流検出結果は制御部300に送られる。
【0036】
スイッチング素子200は、適宜のスイッチング素子を用いることができ、実施形態1においては、MOSFET(Metal―Oxide―Semiconductor Field―Effect Transistor)を用いる。スイッチング素子200のゲート電極には制御部300が接続されており、制御部300からの信号によってスイッチング素子200がオンオフされる。
【0037】
制御部300は、電流検出器100の検出結果に基づいてスイッチング素子200のオンオフを制御する。
【0038】
実施形態1に係るパワーモジュール1は、
図2に示すように、電流検出器100、スイッチング素子200、制御部300が基板500上に配置されており、スイッチング素子200のソース電極Sと、電流検出器100の主電流導通部120とがクリップリード400(接続子)によって接続されている。実施形態1に係るパワーモジュール1においては、電流検出器100、スイッチング素子200、制御部300及びクリップリード400は、耐熱性・高絶縁性の樹脂やセラミックス等により形成された樹脂(図示せず。)で樹脂封止されている。なお、実施形態1に係るパワーモジュール1は、従来の他のパワーモジュール900の場合のようにクリップリード400の周りにコイルを巻くことはないため、従来の他のパワーモジュール900の場合よりも高さが低くなっている。
【0039】
2.実施形態1に係る電流検出器100の構成
電流検出器100は、
図2及び
図3に示すように、高抵抗基体110と、主電流導通部120と、コイル部150と、積分器160とを備える。
【0040】
高抵抗基体110は、半導体基体であり、具体的には、FZ(Floating Zone)法で形成されたシリコン基体である。高抵抗基体110の比抵抗(主電流導通部120とコイル部150との間の領域の比抵抗を含む)は、100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にある。実施形態1において、高抵抗基体110は、FZ(Floating Zone)法で形成されたシリコン基体であるため、特に、100Ωcm~220000Ωcmであることが好ましい。高抵抗基体110の比抵抗が、100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にある理由は後述する。
【0041】
高抵抗基体110の中央部には、主電流導通部120が形成され、周辺部にはコイル部150が形成されている。高抵抗基体110において、高抵抗基体110と主電流導通部120との間、及び、高抵抗基体110とコイル130との間には酸化膜114a,114bが形成されており(
図4参照。)、酸化膜114a,114bの厚さは、0.1μm~10μmの範囲内にある。また、主電流導通部120とコイル部150との間の領域の浮遊容量が0.1pF~20pFの範囲内にある。
【0042】
主電流導通部120においては、高抵抗基体110を貫通するように検出対象電流が流れる。主電流導通部120は、
図4に示すように、高抵抗基体110の両面に形成された導体膜121,122を、高抵抗基体110の厚さ方向に並列に複数形成されたビア123を介して接続することによって形成されたものである。主電流導通部120は、電力変換回路(例えば、後述する
図9や
図10に示す回路)の配線の一部と接続されている。
【0043】
コイル部150は、コイル130と戻し線140とを有する。
【0044】
コイル130は、主電流導通部120と離間した位置で主電流導通部120を取り囲む位置に配置されている(
図3参照。)。一方の端部が外部端子T1と接続されており、そこから、高抵抗基体110の外周部(主電流導通部120の周囲)に沿って、らせん状(進行方向に向かって時計回りに旋回するらせん状)に高抵抗基体110の厚さを径としたコイルが形成されている。そして、高抵抗基体110の外周部(主電流導通部120の周囲)に沿ってほぼ一周した位置で他方の端部が戻し線140と接続されている。
【0045】
コイル130は、高抵抗基体110の両面に形成された導体膜131,132を、高抵抗基体110の厚さ方向に並列に複数形成されたビア133,134を介して接続することによって形成されたものである。
図3(a)に示すように導体膜131は直線状の形状をしているのに対して、導体膜132が段差状に折れ曲がった形状をしている。
【0046】
コイル130は、空芯コイルであるロゴスキーコイルである。このため、インピーダンスが小さく、電流測定による電力損失が小さくなる。また、磁束が飽和せず大電流の測定に対応することができる。
【0047】
戻し線140は、一方の端部がコイル130と接続され、主電流導通部120及びコイル130を囲むように、平面的に見て、コイル130で囲まれている領域の外側に配置され、他方の端部が外部端子T2と接続されている(
図3(a)及び
図3(b)参照。)。従って、コイル部150においては、外部端子T1から高抵抗基体110(主電流導通部120)を囲むようにコイル130がほぼ一周し、そこから、折り返してコイル130の外側をほぼ一周して外部端子T2と接続されている(
図3(b)参照。)。
【0048】
なお、ロゴスキーコイルの特性上、コイルで囲まれた面積を貫く磁束に対応した誘導電流が生じるが、戻し線140によって、戻し線で囲まれた面積を貫く逆向きの磁束に対応した逆方向成分の誘導電流が生じて打ち消しあうため、主電流導通部120に導通する電流を正確に検出することができる。
【0049】
コイル部150で囲まれている領域において、主電流導通部120とコイル部150との間の間隔をAとし、主電流導通部120が形成されている領域の幅をBとしたときに、B/8<A<2Bの関係を満たす(
図4参照。)。また、主電流導通部120が形成されている領域の面積は、平面的に見てコイル部150で囲まれている領域の面積の4%~65%の範囲内にある。
【0050】
積分器160は、後述する
図5(b)の下図に示すように、オペアンプIC1と、抵抗R1,R2,R3,R4,R5と、コンデンサC2と、スイッチResetを有し、コイル130を流れる電流に基づいて主電流導通部120に流れる電流を検出する。このような構成とすることにより、比較的微弱な磁束変化による電流を増幅した状態で検出できることから、主電流導通部120を流れる電流を検出し易くなる。
【0051】
3.高抵抗基体110の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にある理由
次に、高抵抗基体110の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にある理由(特に高抵抗基体110の比抵抗が100Ωcm以上である理由)について説明する。
【0052】
(1)コイルの端子間を流れる電流Ic
まず、主電流導通部120を検出対象電流Ilが流れたとき(電流変化が起こったとき)にコイル部150の端子間(積分器160の端子間)に流れる電流Icを見積る(
図5(a)参照。)。
一般に、電力変換回路(電源装置)にロゴスキーコイルを用いた電流検出器を用いる場合において、主電流導通部120に検出対象電流Ilが流れたとき(電流変化が起こったとき)にコイル部150のコイル130に生じる誘導起電力は1mV~100mV程度であり、積分器160の入力インピーダンス(R1+R2)はおよそ1kΩである。このことから、オームの法則により、主電流導通部120を検出対象電流Ilが流れたときにコイル部150の端子間(積分器160の端子間)に流れる電流Icは、およそ1μA~100μA程度となる。
従って、積分器160の端子間に流れるノイズ電流Incは、コイル部150の端子間(積分器160の端子間)に流れる電流Icの10%以下である0.1μAであることが望ましい。
【0053】
(2)コモンモードノイズのノイズ電流Inl及びノイズ電圧Vnl
次に、実施形態1に係るパワーモジュール(及び背景技術に係る電流検出器)を用いて、コイル部150に生じるコモンモードノイズのノイズ電流及びノイズ電圧を算出する。
【0054】
まず、電力変換回路に実施形態1に係る電流検出器(背景技術に係る電流検出器)を配置した場合のパワーモジュールの等価回路をモデル化する。
【0055】
主電流導通部120及びコイル部150は、それぞれ接地された導体とみなすことができる。また、高抵抗基体110と主電流導通部120との間の酸化膜114aは、高抵抗基体の本体部112と主電流導通部120との間のコンデンサとみなすことができ、高抵抗基体110とコイル部150(コイル130)との間の酸化膜114bは、高抵抗基体110とコイル130との間のコンデンサとみなすことができる。従って、高抵抗基体110の本体部112の内部抵抗をRとして考えると、
図5(b)の下図のような等価回路でモデル化して表すことができる。
なお、コイル部150は積分器160と接続されている。
【0056】
ここで、主電流導通部120(主電流導通部120が接続されている電力変換回路)は接地されており、一方で、コイル部150及び積分器160も接地されていることから、コモンモードノイズが発生するおそれがある。
【0057】
すなわち、
図6に示すように、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール(電力変換回路)は、外部のノイズ源Nから、電力変換回路の接地線E1、主電流導通部120、酸化膜114a、高抵抗基体110の本体部112、酸化膜114b、コイル部150、コイル部150の接地線E2を経由してノイズ源Nに戻ってくる回路を構成する(言い換えると、浮遊静電容量を介して漏れた電流がノイズ源に戻っていく回路を構成する)。このため、外部のノイズ源Nから主電流導通部120にノイズ(コモンモードノイズ)が混入するおそれがある。
【0058】
ここで、電流検出器として、低抵抗シリコン基板(比抵抗ρ=1mΩcm)を用いた背景技術に係る電流検出器を用いて測定系を実際に構成し、積分器160に現れた電圧をモニターした。すると、ノイズ周波数f=1MHz程度、ノイズ電圧Vnc=1V程度のノイズが確認された。積分器160の入力インピーダンス(R1+R2)は、一般的な入力インピーダンスである1kΩ程度であるため、オームの法則から、主電流導通部120に混入するノイズ電流Inlを算出すると、ノイズ電流Inl=1mAとなる。
【0059】
次に、モデル化された等価回路を用いて、主電流導通部120に混入するノイズのノイズ電圧Vnlを算出する。
図6の下図のモデル化された等価回路から、主電流導通部120とコイル130との間の複素インピーダンスZを表すと、以下の式(1)のように表すことができる。
【数1】
(式(1)中、Caは、酸化膜114aの静電容量を示し、Cbは、酸化膜114bの静電容量を示し、Rは高抵抗基体110における主電流導通部120とコイル130との間の内部抵抗を示す。)
【0060】
ここで、上記したように測定されたノイズ周波数fが1MHz程度であるから、ω=2πf≒6.28×10
6(rad/sec)程度となる。また、測定系の酸化膜114及び116のコンデンサの静電容量は、2000pFであり、抵抗Rは、以下の式から10mΩである。
【数2】
【0061】
これらの値を式(1)に代入すると、複素インピーダンスZ=-100j(Ω)となる。従って、複素インピーダンスの大きさ|Z|=100Ωとなる。
【0062】
従って、接地線E2から主電流導通部120に回り込んだノイズ電圧Vnlは、Vnl=Inl×Z≒0.1V程度である。
【0063】
なお、ノイズ周波数fが1MHz程度であったのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、インバータやコンバータが動作している場合、その周辺でも他のインバータやコンバータ等の装置が動作している場合が多く、これらの装置から発生したノイズが接地線E1を介して主電流導通部120に回り込むことが多い。そして、このような主電流導通部120に回り込むノイズは、多くの場合、他のインバータやコンバータ等の装置の動作周波数及びその高周波成分が原因になっているため、ノイズ周波数はおよそ、kHz~MHzのオーダーになると考えられる。
【0064】
(3)電流検出が可能となるのに必要な高抵抗基体の比抵抗の算出
上記(1)で記載したように、検出電流は、1μA~100μAであるため、適切な電流検出のためには、積分器160に突入する電流を最低値1μAの10%以下である0.1μA以下とすることが望ましい。
【0065】
ここで、積分器160に突入する入力端子は2端子あり、積分器160のオペアンプは差動積分器であることから、2端子に極端に電流成分が分かれることは考えにくく、ある程度電流成分が打ち消しあう(同相の場合にはほとんど打ち消しあう)と考えられる。これらの不均衡は通常10%を超えることはないため、主電流導通部120に突入するノイズ電流Inlが、1μA程度であっても積分器160の2端子に生じるノイズ電流Incは大きくても0.1μA程度となる。
【0066】
上記(2)で記載したようにノイズ電圧Vnlは0.1Vである。これを用いて、主電流導通部120に突入するノイズ電流Inlが1μAとなるときのインピーダンスを算出する。
【0067】
複素インピーダンスZは以下の式(1)で表される。
【数1】
ここで、測定対象となる電流やノイズは高周波の交流成分であることから、式(1)のコンデンサに関する第1項及び第3項はほとんど0になる。このため、複素インピーダンスZ≒Rが成り立つ。
したがって、オームの法則に、ノイズ電圧Vnlを0.1V、ノイズ電流Inlを1μAと代入して抵抗Rを算出すると、高抵抗基体110の抵抗Rは100000Ωとなる。
【0068】
高抵抗基体の比抵抗をρ(Ωcm)とし、コイルの形状等の幾何学的形状を考慮すると以下の式(3)が成り立つ。
【数3】
式(3)から高抵抗基体110の比抵抗ρを算出すると、ρ=10000Ωcmとなる。
【0069】
従って、コモンモードノイズを主電流導通部120とコイル部150との間の高抵抗基体110によってのみフィルタリングするとすれば、高抵抗基体110の比抵抗ρはρ=10000Ωcm以上とする必要がある。
【0070】
上記の内容は一般的な使用状況で電力変換回路を用いた場合に基づいたものであり、想定しているノイズ源Nからのコモンモードノイズには、例えば接地位置から積分器160までの間の電流導通路において、別の電気機器からのノイズが混入したり、さらにまた別の電気機器から発する電磁波に起因した電磁波ノイズ等に起因したコモンモードノイズも含まれている。
従って、接地抵抗の引き下げや積分器160から接地位置までの距離を短くする等の手段によりコモンモードノイズを低減する状況下で本発明の電流検出器及びパワーモジュールを用いる場合には、高抵抗基体の比抵抗をより低くすることができる。しかし、そのようなコモンモードノイズを低減する手段を用いた場合であってもノイズを多く見積もって2桁オーダーで低減するのが限度であるため、このような場合であっても高抵抗基体の比抵抗ρは100Ωcm以上とする必要がある。
なお、上限が1×107Ωcmであるのは、これ以上高抵抗の高抵抗基体を製造するのは実際上困難であるからである。
【0071】
なお、積分器160のオペアンプIC1差動増幅器であるため、積分器160に接続されている両端子にコモンモードノイズが入った場合、差動によってノイズが完全に打ち消しあう可能性もあるが、現実には、両端子に均等にノイズが入ることは極めて稀であり、測定対象となる電流を大きく超えたノイズが混入し、測定対象となる電流を測定することが難しい。従って、主電流導通部120から混入したノイズをコイル130に影響させないことが必要になる。
また、仮に両端子に同相のコモンモードノイズが入ったとしても、オペアンプIC1の出力電圧が電源電圧付近まで上昇してしまい、同相入力範囲を超える場合には非線形になってしまい、この場合でも測定対象となる電流を測定することが難しい。
従って、いずれにしても主電流導通部120から混入したノイズをコイル130に影響させないことが必要になる。よって、高抵抗基体の比抵抗ρは100Ωcm以上とする必要がある。
【0072】
4.試験例
試験例は、「実施形態1に係る電流検出器100は、ノイズがコイル部150に入り込むことを防ぐことができ、主電流導通部120に流れる電流を高い精度で測定することができる」ことを確かめるための試験例である。
【0073】
(1)電流検出器について
実施例に係る電流検出器は、実施形態1に係る電流検出器と同様の構成の電流検出器である。但し、実施例に係る電流検出器において、高抵抗基体の比抵抗は10000Ωcmであり、コイル部150はリセット回路付きの積分器と接続されている。
比較例に係る電流検出器は、基本的には実施形態1に係る電流検出器100と同様の構成を有するが、高抵抗基体に代わりに比抵抗が1mΩcmであるシリコン基板を用いる点で実施形態1に係る電流検出器100と異なる電流検出器(すなわち、背景技術に係る電流検出器と同じ構成)である。
基準例に係る電流検出器は、一般的なロゴスキーコイルを用いた電流検出器(岩通製のロゴスキーコイル電流プローブSS282)である。基準例に係る電流検出器は、接地して使用しないため、コモンモードノイズの影響を受けることなく検出対象の電流を検出することができるため、本試験例の基準例とする。
【0074】
(2)試験方法
比較例に係る電流検出器又は実施例に係る電流検出器の主電流導通部120に、時刻t0からt1までの所定期間、交流電圧(5V,5Hz/3μs)を印加して主電流導通部120に電流を流す。このとき、コイル部150の端子間(積分器160の端子間)の電圧を検出し、プロットして、基準と比較する。
なお、本試験例においては、時刻t1において主電流導通部120に流れる電流をオフにするとともにリセット回路からの信号で積分器に印加する電圧をオフにしている。
【0075】
(3)試験結果
基準例に係る電流検出器においては、
図7及び
図8に示すように、時刻t0において、コイル部150の端子間の電圧が大きく立ち上がり、時刻t1まで一定のレベルを維持している。なお、基準例に係る電流検出器においては、リセット回路からのオフ信号に影響されないため、時刻t1以降は徐々に減衰している。
【0076】
比較例に係る電流検出器においては、
図7に示すように、時刻t0直後に2.7V程度まで大きく立ち上がった後、1.5V程度に急激に減衰し、その後、徐々に低下しており、基準例とは大きく異なる波形となった。また、実施例に係る電流検出器のコイル部150の端子間の電圧(
図7の2点鎖線参照。)よりも100倍程度高い電圧を検出している。
【0077】
このことから、比較例に係る電流検出器においては、主電流導通部に入り込んだノイズを検出していると考えられ、検出対象電流は当該ノイズに埋もれてしまい、正確に検出することが困難であることが分かった。
【0078】
実施例に係る電流検出器においては、
図8に示すように、時刻t0で20mV程度まで立ち上がった後、約20mV~22mVの範囲内を維持し、時刻t1におけるリセット回路のオフ信号によって、大きく減衰し、0になっている。波形は、検出対象となる時間t0から時刻t1においては、基準例に係る電流検出器とほぼ同様の波形となった。また、比較例に係る電流検出器のコイル端電圧よりもかなり低い電圧となっている。
【0079】
このことから、実施例に係る電流検出器においては、主電流導通部にノイズが入り込んだとしても、高抵抗基体110でフィルタリングされ、コイル(及び積分器)に入り込んでしまうことを防ぐことができたことがわかった。
【0080】
この結果、実施形態1に係る電流検出器は、ノイズがコイル部150に入り込むことを防ぐことができ、主電流導通部120に流れる電流を高い精度で測定することができることがわかった。
【0081】
5.実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の効果
実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、高抵抗基体110に形成され、主電流導通部120と離間した位置で主電流導通部120を取り囲む位置に配置されたコイル130を有するコイル部150を備えるため、従来の電流検出器800及び従来の他のパワーモジュール900の場合と同様に検出対象電流が抵抗を流れることに起因した電力損失が発生せず、シャント抵抗と比較して電力損失が少なくて済む。
【0082】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、高抵抗基体110と、高抵抗基体110を貫通するように検出対象となる電流が流れる主電流導通部120と、高抵抗基体110に形成され、主電流導通部120と離間した位置で主電流導通部120を取り囲む位置に配置されたコイル130を有するコイル部150とを備えるため、基体に微細加工を施すMEMS技術を適用した加工が可能となる。このため、主電流導通部120が形成される部分の高さ(厚み)とコイル130が形成される部分の高さ(厚み)の差を小さくして薄型化することや接地面積を狭くすることができる。その結果、コイルを用いた電流検出器を小型化することができる。
【0083】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、高抵抗基体110が半導体基体である場合には、高抵抗基体110のうち少なくとも主電流導通部120とコイル部150との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にあるため、主電流導通部120とコイル部150との間のインピーダンスが高くなる。従って、接地線を介して主電流導通部120にノイズ(コモンモードノイズ)が入り込んだ場合であっても、ノイズが高抵抗基体110を通してコイル、ひいては積分器に入り込むことを防ぐことができる。その結果、主電流導通部120に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0084】
よって、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0085】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、上記した構成を有するため、高抵抗基体110そのものがノイズフィルタとしての役割をすることになり、一般的にノイズ対策として必要なYコンデンサやコモンモードチョーク等を用いなくても電流検出におけるノイズの影響を低減することができる。
【0086】
ところで、従来のパワーモジュール900においては、所定の位置でコイル830をクリップリード400に巻き付ける必要があるため、
図15に示すように、クリップリード400の高さを低くすることが難しく、パワーモジュールを小型化・薄型化することが困難である。
これに対して、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、同一の高抵抗基体110に形成された、主電流導通部120とコイル130を有するコイル部150とを備えるため、コイル130をクリップリード400に巻きつける必要がなく、パワーモジュールをより一層小型化・薄型化することができる。
【0087】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、主電流導通部120とコイル部150との間の領域の浮遊容量が0.1pF~20pFの範囲内にあるため、高抵抗基体110をノイズが通過し難くすることができる。
【0088】
なお、主電流導通部120とコイル部150との間の領域の浮遊容量を0.1pF以上としたのは、当該浮遊容量が0.1pF未満の電流検出器を作成するのが実際上困難であるからであり、主電流導通部120とコイル部150との間の領域の浮遊容量を20pF以上としたのは、当該浮遊容量が20pFを超えた場合には、高抵抗基体110をノイズが通過しやすくなってしまうからである。
【0089】
実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、高抵抗基体110は、FZ法で形成されたシリコン基体であるため、従来一般的に用いられてきたシリコン基板に用いるMEMS技術を十分に活用することができる。また、高抵抗基体110のうち少なくとも主電流導通部120とコイル部150との間の領域の比抵抗が100Ωcm~220000Ωcmの範囲内にあるため、接地線を介して主電流導通部120にノイズ(コモンモードノイズ)が入り込んだ場合であっても、ノイズが高抵抗基体110を通してコイル部150、ひいては積分器160に入り込むことを確実に防ぐことができる。その結果、主電流導通部に流れる電流をより高い精度で測定することができる。
【0090】
実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、コイル130は、高抵抗基体110の両面に形成された導体膜131,132を、高抵抗基体110の厚さ方向に形成されたビア133,134を介して接続することによって形成されたロゴスキーコイルであり、高抵抗基体110の厚みを利用してコイルを形成することとなるため、基体上にコイルを配置した電流検出器の場合と比較して、電流検出器(コイル)の厚みを薄くする(高抵抗基体とほぼ同じ厚さ)ことができる。また、平板の厚みが比較的一定であることからコイル130の径を均一に形成し易くなる。
【0091】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、主電流導通部120は、高抵抗基体110の両面に形成された導体膜121,122を、高抵抗基体110の厚さ方向に形成されたビア123を介して接続することによって形成されているため、主電流導通部120が高抵抗基体110の所定の位置(中央)に安定して配置されることとなる。また、コイルと主電流導通部との位置関係にずれが生じにくいため、安定して電流検出を行うことができる。さらに、ビアの本数を増やすことで大電流を検出することもできる。
【0092】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、コイル部150で囲まれている領域において、主電流導通部120とコイル部150との間の間隔をAとし、主電流導通部120が形成されている領域の幅をBとしたときに、B/8<A<2Bの関係を満たすため、主電流導通部120とコイル部150との間を十分に離間することができ、主電流導通部120にノイズが入り込んだ場合でも、高抵抗基体110をノイズフィルタとして活用できる。従って、高抵抗基体110を通してコイル部150、ひいては積分器160にノイズが入り込むことを防ぐことができる。
【0093】
なお、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1において、B/8≦Aとしたのは、B/8>Aとした場合には、主電流導通部120とコイル部150とが近くなりすぎて、高抵抗基体110をノイズフィルタとして活用することが難しいからであり、A≦2Bとしたのは、A>2Bとした場合には、主電流導通部120とコイル部150との間隔が広すぎて主電流導通部120を流れる電流をコイル部150で精度よく検出することが難しいからである。
【0094】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、コイル部150は、コイル130の一方の端部と接続され、主電流導通部120を囲むように配置された戻し線140を有し、戻し線140は、平面的に見て、コイル130で囲まれている領域の外側に配置されているため、戻し線140がコイル130による電流検出の邪魔にならず、設計が容易になる。また、戻し線140をコイル130の近くにすることで、主電流導通部120に流れる電流を検出する際の検出誤差を小さくすることができる。
【0095】
また、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1によれば、主電流導通部120が形成されている領域の面積は、平面的に見てコイル部150で囲まれている領域の面積の4%~65%の範囲内にあるため、主電流導通部120とコイル部150との間を十分に離間することができ、主電流導通部120にノイズが入り込んだ場合でも高抵抗基体110をノイズフィルタとして活用できる。従って、ノイズがシリコン基板を通してコイル部150、ひいては積分器160に入り込むことを防ぐことができる。
【0096】
なお、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1において、主電流導通部120が形成されている領域の面積を、平面的に見てコイル部150で囲まれている領域の面積の4%以上としたのは、平面的に見てコイル130で囲まれている領域の面積の4%未満とした場合には、主電流導通部120に導通可能な電流が小さく、コイル部150で正確に電流を検出することが難しいからであり、主電流導通部120が形成されている領域の面積を、平面的に見てコイル部150で囲まれている領域の面積の65%以下としたのは、平面的に見てコイル部150で囲まれている領域の面積の65%を超える場合には、主電流導通部120とコイル130とが近くなりすぎて、高抵抗基体110をノイズフィルタとして活用することが難しいからである。
【0097】
[適用例]
実施形態1に係る電流検出器100を適用するパワーモジュール1の回路としては、例えば、DC-DCコンバータ及びPFC回路を含む回路において、スイッチング素子200に過電流が流れないように監視するのに用いることができる(
図9参照。)。また、同期整流回路において、電流検出器の検出結果に基づいてスイッチング素子200aとダイオードD1のどちらかに流す電流を切り替えることで(スイッチング素子200bとダイオードD2についても同様)、同期整流を実現するのに用いることができる(
図10参照。)。その他、適宜の回路において電流検出器を用いることができる。
【0098】
[実施形態2]
実施形態2に係る電流検出器(図示せず)及びパワーモジュールにおいては、基本的には実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と構成を有するが、高抵抗基体として、ガラス基体を用いる点で実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なる。
【0099】
実施形態2に係る電流検出器及びパワーモジュールにおいては、高抵抗基体のうち少なくとも主電流導通部とコイルとの間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×1019Ωcmの範囲内にある。なお、高抵抗基体のうち主電流導通部とコイルとの間の領域の比抵抗が1×1019Ωcm以下としたのは、当該比抵抗が1×1019Ωcmを超える場合にはガラス基体が帯電しやすくなり、帯電することによる不具合を起こすおそれがあるからである。
【0100】
このように、実施形態2に係る電流検出器及びパワーモジュールは、高抵抗基体として、ガラス基体を用いる点で実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なるが、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合と同様に、高抵抗基体と、高抵抗基体を貫通するように検出対象となる電流が流れる主電流導通部と、高抵抗基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備えるため、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0101】
また、実施形態2に係る電流検出器及びパワーモジュールによれば、高抵抗基体は、ガラス基体であるため、ノイズフィルタとして使用できる高抵抗の基体であり、かつ、技術ノウハウが蓄積されつつあるガラス基体に対するMEMS加工技術を用いることができる。
【0102】
なお、実施形態2に係る電流検出器及びパワーモジュールは、高抵抗基体として、ガラス基体を用いる点以外の点においては実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0103】
[実施形態3]
実施形態3に係る電流検出器101及びパワーモジュールにおいては、基本的には実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と構成を有するが、戻し線の構成が実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る電流検出器101においては、戻し線140aは、平面的に見て、コイル130aで囲まれている領域の内側に配置されている(
図11(a)参照。)。
【0104】
すなわち、外部端子T1から高抵抗基体110(主電流導通部120)を囲むようにコイル130がほぼ一周し、そこから、折り返してコイル130の内側をほぼ一周して外部端子T2と接続されている(
図11(b)参照。)。
【0105】
このように、実施形態3に係る電流検出器101及びパワーモジュールは、戻し線の構成が実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なるが、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合と同様に、高抵抗基体と、高抵抗基体を貫通するように検出対象となる電流が流れる主電流導通部と、高抵抗基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備えるため、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0106】
また、実施形態3に係る電流検出器101及びパワーモジュールによれば、戻し線140aは、平面的に見て、コイル130aで囲まれている領域の内側に配置されているため、接地面積が比較的狭くて済む。
【0107】
なお、実施形態3に係る電流検出器101及びパワーモジュールは、戻し線の構成以外の点においては実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0108】
[実施形態4]
実施形態4に係る電流検出器102及びパワーモジュールにおいては、基本的には実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と構成を有するが、戻し線の構成が実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なる。実施形態4に係る電流検出器102において、戻し線140bは、平面的に見て、コイル130bで囲まれている領域の内側と外側とを横断するように配置されている(
図12(a)参照。)。
【0109】
実施形態4に係る電流検出器102において、戻し線140bは、外部端子T1からほぼ一周したコイル130bの端部と接続されており、そこから折り返して、コイル130bで囲まれている領域の内側に配置される。そして、コーナーごとにコイル130bで囲まれている領域の内側から外側、又は外側から内側に横断して、主電流導通部120の周囲をほぼ一周し、外部端子T2と接続される。
【0110】
実施形態4に係る電流検出器102においては、平面的に見て、戻し線140bがコイル130bで囲まれている領域(
図12(a)の電流検出器102の上側の領域及び下側の領域)の内側に配置されている部分における戻し線140bとコイル130bとの間の領域(
図12(b)における領域A参照。)の面積は、平面的に見て、戻し線140bがコイル130bで囲まれている領域の外側に配置されている部分(
図12(a)の電流検出器102の左側の領域及び右側の領域)における戻し線140bとコイル130bとの間の領域(
図12(b)における領域B参照。)の面積と等しくなる。
【0111】
このように、実施形態4に係る電流検出器102及びパワーモジュールは、戻し線の構成が実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合とは異なるが、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1の場合と同様に、高抵抗基体と、高抵抗基体を貫通するように検出対象となる電流が流れる主電流導通部と、高抵抗基体に形成され、主電流導通部と離間した位置で主電流導通部を取り囲む位置に配置されたコイルを有するコイル部とを備えるため、小型でありながら、主電流導通部に流れる電流を高い精度で測定することができる。
【0112】
また、実施形態4に係る電流検出器102及びパワーモジュールによれば、戻し線140bは、平面的に見て、コイル130bで囲まれている領域の内側と外側とを横断するように配置されているため、コイル130bで囲まれた領域を貫く磁束によって生じる誘導電流と、戻し線140bで囲まれた面積を貫く磁束によって生じる誘導電流とが打ち消しあうため、主電流導通部120に導通する電流を正確に検出することができる。
【0113】
また、実施形態4に係る電流検出器102及びパワーモジュールによれば、平面的に見て、戻し線140bがコイル130bで囲まれている領域の内側に配置されている部分における戻し線140bとコイル130bとの間の領域の面積は、平面的に見て、戻し線140bがコイル130bで囲まれている領域の外側に配置されている部分における戻し線140bとコイル130bとの間の領域の面積と等しいため、コイル130bで囲まれた領域を貫く磁束によって生じる誘導電流と、戻し線140bで囲まれた面積を貫く磁束によって生じる誘導電流とをより均等に打ち消しあうため、主電流導通部に導通する電流をより正確に検出することができる。
【0114】
なお、実施形態4に係る電流検出器102及びパワーモジュールは、戻し線の構成以外の点においては実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る電流検出器100及びパワーモジュール1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0115】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0116】
(1)上記各実施形態において記載した構成要素の数、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0117】
(2)上記各実施形態においては、一周巻いたら先に進み次の一周を巻くことを繰り返してコイル130を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。コイル130が、半周巻いたら先に進み次の半周を巻くことを繰り返してコイルを形成してもよいし、そのほかの周期で巻いてコイル130を形成してもよい。
【0118】
(3)上記実施形態1,3及び4において、高抵抗基体は、FZ法で形成されたシリコン基体であるが、本発明はこれに限定されるものではない。高抵抗基体は、MCZ法で形成されたシリコン基体であってもよいし、比抵抗が100Ωcm~220000Ωcmの範囲内にある、その他の方法で形成されたシリコン基体であってもよい。なお、シリコン基体において、比抵抗の上限を220000Ωcmとしたのは、物性的にこれ以上の比抵抗を有するシリコン基体を製造することが困難だからである。
【0119】
(4)上記実施形態1,3及び4において、高抵抗基体をシリコン基体としたが、本発明はこれに限定されるものではない。高抵抗基体をSiC基体としてもよい。この場合には、高抵抗基体のうち少なくとも主電流導通部とコイル部との間の領域の比抵抗が100Ωcm~1×107Ωcmの範囲内にある必要がある。高抵抗がSiC基体である場合にはバンドギャップが広く比抵抗が高い基体としやすいだけでなく、近年、SiC基体に対するMEMS加工技術も進んできており、加工しやすい。
また、GaN基体、サファイア基体等のシリコン基体やSiC基体以外の半導体基体であってもよい。
【0120】
(5)上記各実施形態において、矩形の半導体基体を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。多角形の半導体基体や円形の半導体基体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1,900…パワーモジュール、100,100a、101,102,800…電流検出器、110…高抵抗基体、112…本体部、114,114a、114b…酸化膜、120,820…主電流導通部、121,122,131,132…導体膜、123,124,133,134…ビア、130、130a、130b,830…コイル、140,140a、140b…戻し線、150…コイル部、160…積分器、200,200a,200b…スイッチング素子、300…制御部、400…クリップリード(接続子)、500…基板、E1,E2…接地線