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特許7385382発電システム、パワーコンディショナ及びその逆潮流防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】発電システム、パワーコンディショナ及びその逆潮流防止方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/38 110
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019115402
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002932
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】今井 恭佑
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/002799(WO,A1)
【文献】特開2016-111735(JP,A)
【文献】特開平06-225459(JP,A)
【文献】特開2018-160964(JP,A)
【文献】特許第6414870(JP,B1)
【文献】特許第6364567(JP,B1)
【文献】特開2001-016783(JP,A)
【文献】特開平04-067729(JP,A)
【文献】特開2002-204531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を出力する分散型電源と、
前記分散型電源に接続され、前記直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するパワーコンディショナと、
前記負荷に接続され、前記パワーコンディショナから電力系統への逆潮流の逆電力を検出すると、逆電力検出信号を出力して前記パワーコンディショナを前記電力系統から解列させる逆電力継電器と、
を備える発電システムであって、
前記パワーコンディショナは、
前記分散型電源から出力される前記直流電力を前記交流電力に変換して前記負荷へ供給する電力変換部と、
前記電力変換部と前記電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、
前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への前記逆潮流の逆電力を検出する前記逆電力継電器から出力される解列用の前記逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電力変換部の出力電力の計測値に基づき、前記電力変換動作を制御し、前記電力変換部の起動時に、前記出力電力を増加させて、前記逆電力継電器が動作する出力電力点を検索し、前記逆電力検出信号の入力時の前記出力電力を、前記負荷の消費電力と推定して負荷消費電力推定値を求め、前記電力変換部の再起動時に、前記負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を差し引いた出力電力値を上限とした低電力運転にて前記電力変換動作を行わせる、
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記分散型電源は、
太陽光発電用の太陽電池、及び、風力発電用の電源を含む直流電源である、
ことを特徴とする請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
分散型電源から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換部と、
前記電力変換部と電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、
前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への逆潮流の逆電力を検出する逆電力継電器から出力される解列用の逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、
を有するパワーコンディショナであって、
前記制御部は、
前記電力変換部の出力電力の計測値に基づき、前記電力変換動作を制御し、前記電力変換部の起動時に、前記出力電力を増加させて、前記逆電力継電器が動作する出力電力点を検索し、前記逆電力検出信号の入力時の前記出力電力を、前記負荷の消費電力と推定して負荷消費電力推定値を求め、前記電力変換部の再起動時に、前記負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を差し引いた出力電力値を上限とした低電力運転にて前記電力変換動作を行わせる、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記低電力運転を所定時間継続できたならば、再度、前記出力電力を漸増させる再検索の動作を行い、前記逆電力継電器が動作すれば、前記負荷消費電力推定値を更新して前記電力変換部を再起動させる、
ことを特徴とする請求項3記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記所定の電力低減割合は、演算により、前記再検索の動作の都度変更する、
ことを特徴とする請求項記載のパワーコンディショナ。
【請求項6】
前記所定の電力低減割合は、運転状況、機械学習、又は、事前に定めた関数に基づいて算出する、
ことを特徴とする請求項3又は4記載のパワーコンディショナ。
【請求項7】
前記検索から前記再検索までの時間間隔は、前記再検索の動作の都度変更する、
ことを特徴とする請求項4記載のパワーコンディショナ。
【請求項8】
前記制御部の制御機能は、前記パワーコンディショナの外部に設けた出力制御装置により実行する、
ことを特徴とする請求項3~7のいずれか1項記載のパワーコンディショナ。
【請求項9】
分散型電源から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換部と、
前記電力変換部と電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、
前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への逆潮流の逆電力を検出する逆電力継電器から出力される解列用の逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、
を有するパワーコンディショナの逆潮流防止方法であって、
前記制御部は、
定常モードにおいて、前記電力変換部を定格の最大出力値にて前記電力変換動作をさせるステップと、
前記定常モードの運転時に、前記逆電力検出信号が入力されると、前記電力変換動作を停止させて前待機モードへ移行するステップと、
前記前待機モードにおいて、第1の再起動待ち時間の間、前記電力変換動作を停止させ、前記第1の再起動待ち時間が経過すると、検索モードへ移行するステップと、
前記検索モードにおいて、前記電力変換部を再起動させて、前記電力変換部の出力電力を所定の上昇率で漸増させ、前記逆電力検出信号が入力されると、前記電力変換動作を停止させると共にこの停止時の前記出力電力の値を負荷消費電力推定値として記憶した後、後待機モードへ移行するステップと、
前記後待機モードにおいて、第2の再起動待ち時間の間、前記電力変換動作を停止させ、前記第2の再起動待ち時間が経過すると、低電力モードへ移行するステップと、
前記低電力モードにおいて、前記記憶された負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を減じた出力電力値の低電力運転にて前記電力変換部を再起動させ、所定時間が経過すあると、前記検索モードへ移行するステップと、
を実行することを特徴とするパワーコンディショナの逆潮流防止方法。
【請求項10】
前記所定の上昇率、前記所定の電力低減割合、及び前記所定時間は、
更新することを特徴とする請求項9記載のパワーコンディショナの逆潮流防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と連系運転して分散型電源電力を全て負荷へ供給する自家消費型の発電システムと、その発電システムに用いられるパワーコンディショナ(以下「PCS」という。)と、逆潮流の逆電力を検出した時にそのPCSを電力系統から解列するための逆電力継電器を用いた逆潮流防止方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの有効利用として、住宅や事業所のような負荷設備を有する施設構内に、分散型電源(例えば、太陽光発電システム、ディーゼルエンジン・ガスエンジン・ガスタービンといった回転機を利用した発電システム等)が設置されることがある。近年では、再生可能エネルギーの売電価格低下を受け、発電した電力を電力系統に売電せず、全て施設構内で消費する「自家消費」が選択される事例が増加している。このような自家消費案件においては、発電電力が逆潮流されないことの担保として、受電設備に逆電力継電器が設置される場合が多い。
【0003】
従来、自家消費型の発電システムとして、特許文献1~3には、太陽光発電システムが記載され、更に、特許文献4には、ディーゼルエンジン・ガスエンジン・ガスタービンといった回転機を利用した発電システムが記載されている。
例えば、太陽光発電システムは、太陽光を受光して直流(DC)電力を出力する太陽電池、前記直流電力を交流(AC)電力に変換して負荷へ供給するPCS、及び逆電力継電器等により構成されている。
ここで、PCSは、太陽電池から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換部と、前記電力変換部と電力系統との間を接続/遮断する開閉器(例えば、連系リレー)と、前記電力変換部の電力変換動作を制御すると共に逆電力検出信号を入力すると前記連系リレーを遮断させる制御部等、とを有している。逆電力継電器は、PCSから電力系統への逆潮流の逆電力を検出すると、逆電力検出信号を制御部へ出力してPCSを電力系統から解列させるものである。
【0004】
図6(a),(b)は、従来の逆電力防止機能なしの太陽光発電システムにおける動作波形図であり、同図(a)は全体の波形図、及び同図(b)は符号4部分の拡大図である。
図6(a),(b)において、横軸は朝・昼・夕の時刻t、縦軸は電力pである。破線1は日照従量のPCS最大発電量、実線2は負荷消費電力、及び、領域3はPCS出力電力である。
逆電力継電器は、実線2の負荷消費電力よりも破線1のPCS最大発電量が上回った時(例えば、図6(b)の黒丸の時刻t1)に、逆潮流の逆電力を検出し、太陽光発電システムを停止させる接点信号(つまり、逆電力検出信号)を出力するので、領域3のように、PCS出力電力が停止する。時刻t1から所定の再起動待ち時間Tが経過した時刻t2において、PCSが再起動する。この時、PCS最大発電量>負荷消費電力であれば、逆電力継電器により逆電力が検出され、PCS出力電力は停止状態を維持する。その後、所定の再起動待ち時間Tが経過する時刻t3,t4・・・の度に、PCSが再起動し、逆電力が検出されれば、PCS出力電力が停止状態を維持し、逆電力が検出されなければ、PCS出力電力が送出される。
【0005】
図7は、図6の太陽光発電システムの動作を示すタイミングチャートである。
図7において、横軸は時刻t、縦軸は電力pである。破線2Aは、負荷消費電力、実線3AはPCS出力電力である。
太陽光発電システムは、例えば、以下のタイミング(1)~(5)で動作する。
タイミング(1)において、負荷消費電力>PCS出力電力であるので、PCSが定常モードにて動作し、一定のPCS出力電力を送出する(PCS通常運転中)。タイミング(2)において、負荷消費電力の低下により、逆電力継電器により逆電力が検出されると、PCSが停止する。タイミング(3)では、所定の再起動待ち時間Tの間、PCSが停止する待機モードとなる。タイミング(4)において、PCSが再起動し、PCS出力電力が送出される。タイミング(5)において、負荷消費電力<PCS出力電力であるので、逆電力継電器により逆電力が検出され、PCSが停止する。以降、同じ動作が行われる。
【0006】
この図6及び図7のように、PCSは、日照量に応じた発電電力を出力するため、負荷消費電力に応じた出力で安定的に運転継続することはできず、単に逆電力継電器が動作して運転停止するのみとなる。そのため、負荷消費電力の少ない事業所休業日等は、発電開始の度に逆電力検出動作が繰り返されることになる。この結果、PCS出力電力が負荷消費電力を上回る期間は、逆電力検出による停止と再起動を短時間で繰り返すため、発電量は略0kWとなり、その上、再起動回数が非常に多いという欠点がある。
【0007】
このような欠点を解消するために、例えば、特許文献2,3では、負荷消費電力に追従した逆電力防止機能を有する発電システムが記載されている。
図8は、従来の負荷消費電力追従式の逆電力防止の動作を示す波形図である。
図8は、図6と同様に、横軸が朝・昼・夕の時刻t、縦軸が電力pである。破線1は日照従量のPCS最大発電量、実線2は負荷消費電力、及び、領域3はPCS出力電力である。
特許文献2,3に記載された発電システムでは、変成器、変流器、及び交流電力演算器(電力トランスデューサ等)といった電力計測設備と、外部制御装置等と、を設け、逆電力継電器の動作を抑制しつつ、負荷消費電力に追従してPCS出力電力を増大させている。これにより、負荷消費電力の急減時に、逆電力継電器によって逆電力を検出する可能性があるものの、再起動回数を減らし、発電量を増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-160964号公報
【文献】特許第06414870号公報
【文献】特許第06364567号公報
【文献】特開2001-016783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~4に記載された従来の電力システムでは、以下のような課題がある。
特許文献1~4に記載された電力システムは、自家発電設備において逆潮流防止制御による発電電力の増加を目的としているが、いずれも電力系統又は負荷の電力計測を前提とした技術である。そのため、コスト面では、変成器、変流器、交流電力演算器(電力トランスデューサ等)といった電力計測設備と、外部制御装置等の施工と、が必要になり、発電装置以外の設備費用が発生する問題が有る。既存設備を流用できる部分を除いても、交流電力演算器や計測信号の配線施工等が新たに必要となる。又、性能面では、結果的に逆電力継電器の動作回数を低減することは可能であるが、完全にこれを防ぐための具体的な技術要件には言及していない。しかも、PCS内に設けられた、電力系統との接続/遮断用の連系リレー等の開閉器において、その接点の開閉動作回数を寿命上許容される回数以下に抑えることができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発電システムは、直流電力を出力する分散型電源と、前記分散型電源に接続され、前記直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給するパワーコンディショナ(PCS)と、前記負荷に接続され、前記PCSか電力系統への逆潮流の逆電力を検出すると逆電力検出信号を出力して前記PCSを前記電力系統から解列させる逆電力継電器と、を備えている。
前記PCSは、前記分散型電源から出力される前記直流電力を前記交流電力に変換して前記負荷へ供給する電力変換部と、前記電力変換部と前記電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への前記逆潮流の逆電力を検出する前記逆電力継電器から出力される解列用の前記逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、を備えている。
そして、前記制御部は、前記電力変換部の出力電力の計測値に基づき、前記電力変換動作を制御し、前記電力変換部の起動時に、前記出力電力を増加させて、前記逆電力継電器が動作する出力電力点を検索し、前記逆電力検出信号の入力時の前記出力電力を、前記負荷の消費電力と推定して負荷消費電力推定値を求め、前記電力変換部の再起動時に、前記負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を差し引いた出力電力値を上限とした低電力運転にて前記電力変換動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明のPCSは、分散型電源から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換部と、前記電力変換部と電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への逆潮流の逆電力を検出する逆電力継電器から出力される解列用の逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、を有している。
そして、前記制御部は、前記電力変換部の出力電力の計測値に基づき、前記電力変換動作を制御し、前記電力変換部の起動時に、前記出力電力を増加させて、前記逆電力継電器が動作する出力電力点を検索し、前記逆電力検出信号の入力時の前記出力電力を、前記負荷の消費電力と推定して負荷消費電力推定値を求め、前記電力変換部の再起動時に、前記負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を差し引いた出力電力値を上限とした低電力運転にて前記電力変換動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0012】
更に、本発明のPCSの逆潮流防止方法は、分散型電源から出力される直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する電力変換部と、前記電力変換部と電力系統との間を接続/遮断する開閉器と、前記電力変換部の電力変換動作を制御し、且つ、前記電力系統への逆潮流の逆電力を検出する逆電力継電器から出力される解列用の逆電力検出信号を入力すると、前記開閉器を遮断させる制御部と、を有するPCSの逆潮流防止方法である。
そして、前記制御部は、定常モードにおいて、前記電力変換部を定格の最大出力値にて前記電力変換動作をさせるステップと、前記定常モードの運転時に、前記逆電力検出信号が入力されると、前記電力変換動作を停止させて前待機モードへ移行するステップと、前記前待機モードにおいて、第1の再起動待ち時間の間、前記電力変換動作を停止させ、前記第1の再起動待ち時間が経過すると、検索モードへ移行するステップと、前記検索モードにおいて、前記電力変換部を再起動させて、前記電力変換部の出力電力を所定の上昇率で漸増させ、前記逆電力検出信号が入力されると、前記電力変換動作を停止させると共にこの停止時の前記出力電力の値を負荷消費電力推定値として記憶した後、後待機モードへ移行するステップと、前記後待機モードにおいて、第2の再起動待ち時間の間、前記電力変換動作を停止させ、前記第2の再起動待ち時間が経過すると、低電力モードへ移行するステップと、前記低電力モードにおいて、前記記憶された負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を減じた出力電力値の低電力運転にて前記電力変換部を再起動させ、所定時間が経過すると、前記検索モード(再検索モード)へ移行するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発電システム、PCS及びその逆潮流防止方法によれば、PCSの発電電力の逆潮流(逆電力)を防止しつつ、逆電力継電器の動作による、PCS内の開閉器における接点の開閉動作回数を、寿命上許容される回数以下に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1における発電システム(例えば、自家消費型の太陽光発電システム)を示す概略の構成図
図2図1の逆潮流防止方法を示すタイミングチャート
図3A図1の制御部30により制御される図2のタイミング(1)~(5)の処理内容を示すフローチャート
図3B図1の制御部30により制御される図2のタイミング(6)~(8)の処理内容を示すフローチャート
図4図1の太陽光発電システムを安定負荷で実施した場合の測定結果の一例を示す波形図
図5図1の太陽光発電システムにおける逆潮流防止の動作を示す波形図
図6】従来の逆電力防止機能なしの太陽光発電システムにおける動作波形図
図7図6の太陽光発電システムの動作を示すタイミングチャート
図8】従来の負荷消費電力追従式の逆電力防止の動作を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
(実施例1の構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施例1における発電システム(例えば、自家消費型の太陽光発電システム)を示す概略の構成図であり、同図(a)は太陽光発電システムの全体の構成図、及び、同図(b)はその太陽光発電システム内のPCSの構成図である。
この太陽光発電システムは、電力系統6から高圧の交流電力を受電する受変電盤(例えば、キュービクル)10を有している。キュービクル10には、負荷15と、分散型電源(例えば、太陽電池としての太陽電池モジュール)16に接続された複数の太陽光発電用PCS20と、が並列に接続されている。
【0017】
キュービクル10は、電力系統6に対して直列に接続された高圧遮断器11及び電圧変換用の変圧器12を有し、この変圧器12に、逆電力継電器13が分岐接続されている。逆電力継電器13は、複数のPCS20から電力系統6への逆潮流の逆電力を検出すると、逆電力検出信号S13を出力して各PCS20を電力系統6から解列させるものである。
負荷15は、キュービクル10と複数のPCS20との間に接続され、そのキュービクル10及び複数のPCS20から交流電力を受電して駆動する装置である。太陽電池モジュール16は、複数の太陽電池を有し、太陽光を直流電力に変換して複数のPCS20へ供給する電源である。
【0018】
各PCS20は、太陽電池モジュール16とキュービクル10との間に直列に接続された遮断器21、電力変換部22、開閉器(例えば、連系リレー)23、及び遮断器24を有している。電力変換部22には、制御部30が接続され、更に、その制御部30に、操作表示部35が接続されている。
遮断器21は、太陽電池モジュール16と電力変換部22との間を接続/遮断するものである。電力変換部22は、太陽電池モジュール16から遮断器21を介して供給される直流電力を交流電力に変換して負荷15へ供給するものであり、供給された直流電力を所定の直流電力に変換するDC/DCコンバータ22aと、その変換された所定の直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータ22bと、を有している。DC/DCコンバータ22a及びDC/ACインバータ22bは、例えば、複数のスイッチング素子等を有するスイッチング電源装置により、それぞれ構成されている。連系リレー23は、駆動信号S30cにより、DC/ACインバータ22bと遮断器24との間を接続/遮断(即ち、接点を開閉)するものである。遮断器24は、連系リレー23とキュービクル10との間を接続/遮断するものである。
【0019】
制御部30は、電力変換部22の電力変換動作、連系リレー23の接続/遮断、及び操作表示部35の動作等を制御するものであり、逆電力継電器13から出力される逆電力検出信号S13と、電力変換部22のPCS出力電力Poutが図示しない電力センサによって計測された出力電力計測値po等と、を入力し、電力変換部22内のDC/DCコンバータ22aのDC/DC変換動作を制御するためのスイッチング用の駆動パルスS30aと、電力変換部22内のDC/ACインバータ22bのDC/AC変換動作を制御するためのスイッチング用の駆動パルスS30bと、連系リレー23を接続/遮断するための駆動信号S30c等と、を出力する機能を有している。
【0020】
制御部30は、中央処理装置(以下「CPU」という。)や個別回路等で構成された制御部本体31と、出力電力計測値poを入力してデジタル信号等に変換する出力電力計測部32と、電力変換部22の再起動時間等を計測するタイマ33と、制御部本体31の出力信号を駆動して駆動パルスS30a,S30bを出力するトランジスタ等で構成された駆動部34等と、により構成されている。
制御部本体31は、出力電力計測部32の出力信号に基づき、駆動部34を介して電力変換部22の電力変換動作を制御し、電力変換部22の起動時に、PCS出力電力Poutを増加させて、逆電力継電器13が動作する出力電力点をサーチ(検索)し、逆電力検出信号S13の入力時のPCS出力電力Poutを、負荷15の消費電力と推定して負荷消費電力推定値を求め、タイマ33の出力信号に基づき、駆動部34を介して電力変換部22を再起動する時に、負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を差し引いた出力電力値を上限とした低電力運転にて電力変換動作を行わせる機能を有している。
【0021】
制御部本体31は、以下の(i)~(iv)のような機能も有している。
(i) 前記低電力運転を所定時間継続できたならば、再度、PCS出力電力Poutを漸増させる再検索の動作を行い、逆電力継電器13が動作すれば、前記負荷消費電力推定値を更新して電力変換部22を再起動させる。
(ii) 前記所定の電力低減割合は、演算により、前記再検索の動作の都度変更する。
(iii) 前記所定の電力低減割合は、運転状況、機械学習、又は、事前に定めた関数に基づいて算出する。
(iv) 前記検索から前記再検索までの時間間隔は、前記再検索の動作の都度変更する。
操作表示部35は、遮断器21,24の接続/遮断や、制御部30の動作開始等の指令値を入力すると共に、PCS20の動作状態等を表示する機能を有している。
【0022】
なお、PCS20の外部には、出力制御装置36が設けられることもある。この出力制御装置36は、制御部30に代えて、或いは、制御部30と共に、その制御機能を実行する装置である。
【0023】
(実施例1の逆潮流防止方法の概要)
本実施例1におけるPCS20の逆潮流防止方法は、制御部30の制御により、以下のステップ1~6により実行される。
ステップ1の定常モードM1において、制御部30は、駆動パルスS30a,S30bによって電力変換部22をスイッチング動作させ、この電力変換部22に対して定格の最大出力値にて電力変換動作をさせる。
ステップ2において、制御部30は、定常モードM1の運転時に、逆電力継電器13で検出された逆電力検出信号S13が入力されると、電力変換部22の電力変換動作を停止させて前待機モードM2へ移行する。
ステップ3の前待機モードM2において、制御部30は、第1の再起動待ち時間T1の間、電力変換部22の電力変換動作を停止させ、この再起動待ち時間T1が経過すると、検索モードM3へ移行する。
【0024】
ステップ4の検索モードM3において、制御部30は、電力変換部22を再起動させてPCS出力電力Poutを所定の上昇率で漸増させ、逆電力検出信号S13が入力されると、電力変換部22の電力変換動作を停止させると共に、この停止時のPCS出力電力Poutの値を負荷消費電力推定値として記憶した後、後待機モードM4へ移行する。
ステップ5の後待機モードM4において、制御部30は、第2の再起動待ち時間T2の間、電力変換部22の電力変換動作を停止させ、その再起動待ち時間T2が経過すると、低電力モードM5へ移行する。
ステップ6の低電力モードM5において、制御部30は、記憶されたPCS出力電力Poutの値から所定の電力低減割合を減じた出力電力値の低電力運転にて電力変換部22を再起動させ、所定時間T3が経過すると、検索モード(即ち、再検索モード)M6へ移行する。
【0025】
なお、前記所定の上昇率、前記所定の電力低減割合、及び前記所定時間T3は、更新される。
【0026】
以上のようなPCS20の逆潮流防止方法におけるタイミングチャートを図2に示す。
図2は、図1の逆潮流防止方法を示すタイミングチャートであり、横軸は時刻t、及び縦軸は電力pである。図2中の破線41は負荷消費電力Pc、及び、実線42はPCS出力電力Poutである。
図2の逆潮流防止方法では、制御部30の制御により、以下のタイミング(1)~(8)で動作する。
【0027】
タイミング(1)において、負荷消費電力Pc>PCS出力電力Poutであるので、PCS20が定常モードM1にて動作し、定格の最大出力値のPCS出力電力Poutを送出する(PCS通常運転中)。定常モードM1では、太陽電池モジュール16から出力された直流電力が、複数のPCS20へ入力される。各PCS20において、入力された直流電力が、遮断器21を通して電力変換部22へ供給される。電力変換部22内のDC/DCインバータ22aでは、制御部30から供給された駆動パルスS30aによりスイッチング動作して、供給された直流電力を所定の直流電力に変換し、DC/ACインバータ22bへ出力する。DC/ACインバータ22bでは、制御部30から供給された駆動パルスS30bによりスイッチング動作して、入力された所定の直流電力を交流電力に変換し、この変換した定格の最大電力値のPCS出力電力Poutを出力する。PCS出力電力Poutは、制御部30から供給された駆動信号S30cにより接続状態(接点が閉状態)になっている連系リレー23と、制御部30の制御により接続状態になっている遮断器24と、を通してキュービクル10側の負荷15へ供給される。負荷消費電力Pcの不足分は、電力系統6から供給される交流電力が、キュービクル10内の高圧遮断器11を通して、変圧器12により変圧され、負荷15へ供給される。
【0028】
負荷消費電力Pcが低下するタイミング(2)において、複数のPCS20から電力系統6方向へ逆潮流の逆電力が流れ、この逆電力が逆電力継電器13により検出され、この逆電力継電器13から逆電力検出信号S13が出力されて各PCS20内の制御部30へ供給される。すると、制御部30の制御によって電力変換部22の電力変換動作が停止すると共に、制御部30から出力される駆動信号S30cによって連系リレー23が遮断され(接点が開状態になり)、PCS出力電力Poutがゼロ(0)になる。
タイミング(3)において、前待機モードM2になり、逆電力検出信号S13によりタイマ33が動作し、第1の再起動待ち時間T1が計測される。再起動待ち時間T1が所定値になるまで、制御部30の制御によって電力変換部22の電力変換動作が停止し、PCS出力電力Poutがゼロ(0)になる。
再起動待ち時間T1が経過したタイミング(4)において、検索モードM3になる。検索モードM3では、制御部30から出力される駆動パルスS30a,S30bによって電力変換部22が再起動すると共に、制御部30から出力される駆動信号S30cによって連系リレー23が接続状態になる。電力変換部22の再起動では、制御部30の制御により、PCS出力電力Poutが所定の上昇率で漸増する。
【0029】
増加するPCS出力電力Poutが負荷消費電力Pcに達する出力電力点のタイミング(5)において、逆電力継電器13により逆電力が検出されて逆電力検出信号S13が出力され、制御部30へ入力される。制御部30の制御により、電力変換部22の電力変換動作が停止し、この停止時のPCS出力電力Poutが負荷消費電力推定値として制御部30内の制御部本体31等に記憶される。逆電力検出信号S13によりタイマ33が動作して第2の再起動待ち時間T2が計測される。
タイミング(6)において、後待機モードM4になり、再起動待ち時間T2が所定値になるまで、電力変換動作の停止によりPCS出力電力Poutがゼロ(0)になる。
再起動待ち時間T2が経過したタイミング(7)において、低電力モードM5になる。低電力モードM5では、タイマ33で計測される所定時間T3の間、制御部30の制御により、前記記憶された負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を減じた出力電力値の低電力運転にて、電力変換部22を再起動させる。
所定時間T3が経過したタイミング(8)において、再検索モードM6になる。再検索モードM6では、制御部30の制御により、低電力運転時の出力電力値から、更に、PCS出力電力Poutが所定の上昇率で漸増する。
【0030】
前記と同様に、増加するPCS出力電力Poutが負荷消費電力Pcに達する出力電力点のタイミング(5)において、逆電力継電器13により逆電力が検出されて逆電力検出信号S13が出力され、電力変換部22の電力変換動作が停止し、この停止時のPCS出力電力Poutが記憶される。
前記と同様に、タイミング(6)において、後待機モードM4になり、再起動待ち時間T2が所定値になるまで、電力変換動作の停止によりPCS出力電力Poutがゼロ(0)になる。
前記と同様に、再起動待ち時間T2が経過したタイミング(7)において、低電力モードM5になり、前記記憶された負荷消費電力推定値から所定の電力低減割合を減じた出力電力値の低電力運転にて、電力変換部22を再起動させる。
以降、前記と同様の動作が行われる。
【0031】
なお、本実施例1の図2における逆潮流防止方法の特徴は、少なくとも、検索モードM3及び低電力モードM5を有しておれば良く、より処理精度を向上させるために、他の定常モードM1、前待機モードM2、後待機モードM4、及び、再検索モードM6を設けることが望ましい。
又、本実施例1の変形例として、前記タイミング(4)における所定の上昇率と、前記タイミング(7)において減じる所定の電力低減割合と、前記タイミング(8)における所定時間T3は、任意で変更、或いは、自動で更新可能にしても良い。
【0032】
(実施例1の逆潮流防止方法の詳細)
図3A及び図3Bは、図1の制御部30により制御される図2のタイミング(1)~(8)の処理内容を示すフローチャートである。そのうち、図3Aは、タイミング(1)~(5)のフローチャート、図3Bは、タイミング(6)~(8)のフローチャートである。
図1の制御部30内の制御部本体31は、図3A及び図3BのステップST1において、周期起動すると、ステップST2へ進み、モード判定を行う。この判定結果が、図3Aの初期状態の定常モードM1の場合にはステップST11へ進み、図3Aの前待機モードM2の場合にはステップST21へ進み、図3Aの検索モードM3又は再検索モードM6の場合にはステップST31へ進み、図3Bの後待機モードM4の場合にはステップST41へ進み、図3Bの低電力モードM5の場合にはステップST51へ進む。
【0033】
図3Aの定常モードM1の場合、ステップST11において、制御部本体31は、低電力時逆電力検出回数を「0」に設定した後、ステップST12へ進み、逆電力継電器13が逆電力を検出しているか否かの判定を行う。逆電力を検出していない時には(N)、ステップST15へ進み、制御部本体31は、定常移行条件を満足しているか否かの判定を行う。定常移行条件としては、例えば、操作表示部35による本機能を解除する操作が行われている、又は、日付が変わる、かのいずれかである。ステップST15において、定常移行条件を満足していない時には(N)、ステップST17へ進み、逆潮流防止処理を終了する。ステップST15において、定常移行条件を満足している時には(Y)、ステップST16ヘ進み、制御部本体31は、モードを初期状態の定常モードM1に設定し、前記のステップST11~ST16を繰り返した後、ステップST17へ進み、逆潮流防止処理を終了する。
前記ステップST12において、逆電力を検出している時には(Y)、制御部本体31は、逆電力検出回数を「1」に設定し、ステップST14へ進み、前待機モードM2へ移行する。
【0034】
図3Aの前待機モードM2へ移行した場合、ステップST21において、制御部本体31は、出力電力計測部32の出力信号に基づき、電力変換部22の運転が開始されているか否かの判定を行い、運転が開始されていない時には(N)、前記ステップST15へ進む。
ステップST21において、運転が開始されている時には(Y)、ステップST22へ進む。ステップST22において、制御部本体31は、第1の再起動待ち時間T1の間、検索モード出力指令値を「0%」に設定し、検索モードM3へ移行する。
【0035】
図3Aの検索モードM3へ移行した場合、ステップST31において、制御部本体31は、逆電力継電器13が逆電力を検出しているか否かの判定を行う。逆電力を検出していない時には(N)、ステップST35へ進み、制御部本体31は、出力指令値が「100%」に到達しているか否かの判定を行う。出力指令値が「100%」に到達していない時には(N)、ステップST37へ進み、制御部本体31は、検索モード出力指令値を増加させてPCS出力電力Poutを所定の上昇率で漸増させ、その後、前記ステップST15へ進む。ステップST35において、出力指令値が「100%」に到達している時には(Y)、ステップST36へ進み、制御部本体31は、検出後出力指令値を「100%」に設定した後、低電力モードM5へ移行する。
前記ステップST31において、逆電力を検出している時には(Y)、ステップST32へ進み、制御部本体31は、逆電力検出回数を加算して出力電力点を求めた後、ステップST33へ進む。ステップST33において、制御部本体31は、検出後出力指令値に、現在の検索モード出力指令値を代入して負荷消費電力推定値を求め、この負荷消費電力推定値を記憶した後、ステップST34へ進み、後待機モードM4へ移行する。
【0036】
図3Bの後待機モードM4へ移行した場合、ステップST41において、制御部本体31は、出力電力計測部32の出力信号に基づき、電力変換部22の運転が開始されているか否かの判定を行う。電力変換部22の運転が開始されていない時には(N)、前記ステップST15へ進む。電力変換部22の運転が開始されている時には(Y)、ステップST42へ進み、第2の再起動待ち時間T2の間、タイマ33が、所定時間T3の低電力モード滞在時間の計測を開始し、制御部本体31は、低電力モードM5へ移行する。
【0037】
図3Bの低電力モードM5へ移行した場合、ステップST51において、制御部本体31は、低電力時逆電力検出回数と、逆電力検出回数と、検出後出力指令値と、を用いて、電力変換部22の出力電力値(=負荷消費電力推定値-所定の電力低減割合)に対応する低電力モード出力指令値と、再検索開始時間と、をそれぞれ算出する。
ここで、低電力モード出力指令値は、例えば、次式(I)により計算される。
低電力モード出力指令値=
100%-(低電力モード中の逆電力検出回数×10%) (I)
但し、低電力モード出力指令値;任意の下限値でリミット(制限)
又、再検索開始時間は、例えば、次式(II)により計算される。
再検索開始時間=15分×2 (II)
但し、k;逆電力検出回数
再検索開始時間;任意の上限値でリミット(制限)
ステップST51の計算が終わると、ステップST52へ進む。ステップST52において、電力変換部22が動作して所定の出力電力値(=負荷消費電力推定値-所定の電力低減割合)のPCS出力電力Poutを出力する。制御部本体31は、タイマ33の計測時間に基づき、所定時間T3の低電力モード滞在時間が、再検索開始時間に到達したか否かを判定し、再検索開始時間に到達していない時には(N)、ステップST54へ進む。ステップST54において、制御部本体31は、逆電力継電器13による逆電力検出の有無を判定し、逆電力が検出されていない時には(N)、前記ステップST15へ進み、逆電力が検出されている時には(Y)、ステップST55へ進む。ステップST55において、制御部本体31は、逆電力検出回数と、低電力時逆電力検出回数と、をそれぞれ算出し、前待機モードM2へ移行する。
ステップST52において、再検索開始時間に到達している時には(Y)、ステップST53へ進む。ステップST53において、制御部本体31は、検索モード出力指令値に、低電力モード出力指令値を代入し、図3Aの再検索モードM6のステップST31へ移行する。
【0038】
(実施例1の測定結果)
図4は、図1の太陽光発電システムを安定負荷で実施した場合の測定結果の一例を示す波形図である。
図4において、横軸は朝昼夜の時刻t、縦軸は日照倍率(%)である。例えば、縦軸の日照倍率100%は、電力10kWに相当する。破線41Aは日照倍率、太線42Aは安定した構内負荷15A(kW)、及び、実線43AはPCS出力電力Poutである。
図4の測定条件は、例えば、以下の通りである。
動作初期のPCS出力電力Poutの減少率(初期減力率)=90%
再検索時間:1回目=15分、2回目=30分、3回目=1時間、
4回目=2時間、5回目=4時間
PCS出力電力Poutの変化レート:毎秒1%の出力電力増加
再起動待ち時間:5秒
この図4の測定結果から、以下のことが分かる。
実線43AのPCS出力電力Poutは、太線42Aの安定した構内負荷15Aを上限として、破線41Aの日射倍率に追従してその構内負荷15Aへ供給されている。
【0039】
図5は、図1の太陽光発電システムにおける逆潮流防止の動作を示す波形図である。
図5において、横軸は朝昼夜の時刻t、縦軸は電力pである。破線41はPCS最大電力量(日照従量)、実線42は負荷消費電力、及び、領域43はPCS出力電力Poutである。
この図5の動作波形から、以下のことが分かる。
発電量として、負荷変動が少ない時間帯(例えば、朝、昼の休業時間、及び夕)ほど、実線42で示される負荷消費電力の数割(減少%)手前で安定的に発電している。連系リレー23が遮断状態(接点が開状態)から接続状態(接点が閉状態)になる再起動回数として、再検索時間と、PCS出力電力Poutの減少率(減力率)と、の調整により、連系リレー23の開閉回数を制限できる。そのため、連系リレー23の開閉動作回数を、寿命上許容される回数以下に抑制できる。更に、追加設備として、従来の特許文献2,3のような電流センサ、電圧センサ、電力計、及び専用制御装置といった追加設備が不要になる。そのため、実用において中程度の効果を発揮しつつ、追加設備や施工コスト(費用)を削減できる。
【0040】
(実施例1の効果)
本実施例1の太陽光発電システム、PCS20及びその逆潮流防止方法によれば、PCS20の発電電力の逆潮流を防止しつつ、逆電力継電器13の動作による、PCS20内の連系リレー23における接点の開閉動作回数を、寿命上許容される回数以下に抑えることができる。しかも、追加設備が不要になるので、追加設備や施工コスト(費用)を削減できる。
【0041】
(変形例)
本発明は、上記実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)~(c)のようなものがある。
(a) 図1のPCS20は、機能を向上させるために、他の構成要素を付加したり、或いは、図示以外の構成に変更しても良い。
(b) 図3A及び図3Bのフローチャートは、処理を簡略化するために、一部のステップを省略したり、機能を向上させるために、他のステップを付加したり、或いは、図示以外のフローに変更しても良い。
(c) 本発明は、分散型電源として、太陽電池モジュール16に代えて、風力発電用電源等の直流電源を用いた発電システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
6 電力系統
10 キュービクル(受変電盤)
13 逆電力継電器
15 負荷
16 太陽電池モジュール
20 PCS(パワーコンディショナ)
22 電力変換部
22a DC/DCコンバータ
22b DC/ACインバータ
23 連系リレー(開閉器)
30 制御部
31 制御部本体
32 出力電力計測部
33 タイマ
36 出力制御装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8