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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ロボットハンド、及びロボット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231115BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019135952
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021019172
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一平
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳樹
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-213768(JP,A)
【文献】特開2015-161331(JP,A)
【文献】実開昭51-045185(JP,U)
【文献】特開2015-037173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するためのロボットハンドであって、
ベース体と、
前記基板を保持するための保持位置が規定され、その基部が前記ベース体に取り付けられるブレードと、
その中心軸が前記保持位置に存する前記基板の主面に直交し、前記ブレードの基部を前記ベース体に取り付けるための差動ネジと、を備え、
前記差動ネジは、
そのピッチが第1ピッチである第1ネジ部と、
そのピッチが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチである第2ネジ部と、
前記第1ネジ部に螺合する第3ネジ部、及び前記第2ネジ部に螺合する第4ネジ部を同軸状に有する介在部材と、を有し、
前記第1ネジ部が前記ベース体に設けられ、かつ、前記第2ネジ部が前記ブレードの基部に設けられることを特徴とする、ロボットハンド。
【請求項2】
前記差動ネジを複数本備え、
前記複数本の差動ネジは、前記保持位置に存する前記基板の主面と平行な平面内において、互いに異なる箇所に配置される、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記介在部材には、回転操作のための操作部が設けられる、請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第1及び前記第2ネジ部のうちの、一方が第1雌ネジ部、他方が第1雄ネジ部であり、
前記第3及び前記第4ネジ部のうちの、前記第1雄ネジ部と螺合する方が第2雌ネジ部、前記第1雌ネジ部と螺合する方が第2雄ネジ部であり、
前記介在部材は円筒状であり、その外壁に前記第2雄ネジ部が形成され、その内壁に前記第2雌ネジ部が形成される、請求項1乃至3のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記ベース体及び前記ブレードのうちの前記第1雌ネジ部が形成された部材を第1雌ネジ部材としたとき、
前記第1雌ネジ部材に、前記第1雌ネジ部の軸方向に直交する平面内において前記第1雌ネジ部と交わる第1スリットが形成され、
前記介在部材が、その直径方向に変形可能な変形部材である、請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のロボットハンドと、
その先端に前記ロボットハンドが設けられ、少なくとも一つの関節軸を有するロボットアームと、を備えることを特徴とする、ロボット。
【請求項7】
水平多関節型ロボットとして構成される、請求項6に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、ロボット、及び固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を保持するためのロボットハンドが知られている。このようなロボットハンドが、例えば、特許文献1のウェハ移送装置で提案されている。特許文献1のウェハ移送装置は、複数枚のウェハが収容されるカセット、及びウェハ検査のための検査装置に隣接して配置される。ウェハ移送装置は、Y字状またはU字状の複数のウェハ支持部材と、ウェハ支持部材それぞれの基端に連結され、ウェハ支持部材を支持する第1及び第2支持台と、第1及び第2支持台と連結されてウェハ支持部材を直線方向に移動させる移動装置と、を備える。
【0003】
また、従来から、差動ネジを固定するための固定装置が知られている。このような固定機構が、例えば、特許文献2のクランピング装置で提案されている。特許文献2には、差動ネジが、調整スレッジに係合されることで、コレットと接触しないことが記載されている。そして、これにより、コレットアダプタとコレットとの摩耗を最小限にできることが記載されている。また、差動ネジは、コレットアダプタ内に取り換え可能に配置されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-141158号公報
【文献】特表2014-530118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、及び基板を保持するためのその他の従来からあるロボットハンドは、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを調整するのが困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2、及び差動ネジを固定するためのその他の従来からある固定装置は、差動ネジを固定する際中に、差動ネジが移動してしまう場合があった。これにより、前記従来からある固定装置は、差動ネジを精確に固定できないという問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを容易に調整することが可能な、ロボットハンド、及びそれを備えるロボットを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、差動ネジを精確に固定することが可能な、固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係るロボットハンドは、基板を保持するためのロボットハンドであって、ベース体と、前記基板を保持するための保持位置が規定され、その基部が前記ベース体に取り付けられるブレードと、その中心軸が前記保持位置に存する前記基板の主面に直交し、前記ブレードの基部を前記ベース体に取り付けるための差動ネジと、を備え、前記差動ネジは、そのピッチが第1ピッチである第1ネジ部と、そのピッチが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチである第2ネジ部と、前記第1ネジ部に螺合する第3ネジ部、及び前記第2ネジ部に螺合する第4ネジ部を同軸状に有する介在部材と、を有し、前記第1ネジ部が前記ベース体に設けられ、かつ、前記第2ネジ部が前記ブレードの基部に設けられることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、本発明に係るロボットハンドは、第1ネジ部の第1ピッチと介在部材の回転数との積である第1距離と、第2ネジ部の第2ピッチと介在部材の回転数との積である第2距離との差だけ、ブレードの基部のうちの第2ネジ部が設けられた部分を移動させることができるので、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを容易に調整することが可能となる。
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る固定装置は、差動ネジを固定するための固定装置であって、前記差動ネジは、そのピッチが第1ピッチである第1ネジ部と、そのピッチが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチである第1ネジ部と、前記第1ネジ部に螺合する第3ネジ部、及び前記第2ネジ部に螺合する第4ネジ部を同軸状に有する介在部材と、を有し、前記第1ネジ部が形成された部材を第1ネジ部材とし、前記第2ネジ部が形成された部材を第2ネジ部材としたとき、前記第1及び前記第2ネジ部材の一方が、そこに形成された前記第1又は前記第2ネジ部の軸に直交する平面内において前記第1又は前記第2ネジ部と交わる第1スリットがさらに形成された第1スリット部材であり、前記第1スリット部材に、前記第1スリットの内壁同士の距離を変化させることで、前記第1スリット部材に形成された前記第1又は前記第2ネジ部と、それに螺合する前記第3又は前記第4ネジ部との遊びをなくすための固定部材が取り付けられ、前記第1及び前記第2ネジ部材の他方、又は、前記介在部材が、その直径方向に変形可能な変形部材であり、前記変形部材を直径方向に変形させることで、前記変形部材に形成された前記第1、前記第2、前記第3及び前記第4ネジ部のうちの少なくとも一つと、それに螺合する前記第1、前記第2、前記第3及び前記第4ネジ部のうちの少なくとも一つとの遊びをなくすことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、本発明に係る固定装置は、差動ネジに軸方向の外力を加えることなく、当該差動ネジを固定することができる。その結果、本発明に係る固定装置は、差動ネジを精確に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを容易に調整することが可能な、ロボットハンド、及びそれを備えるロボットを提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、差動ネジを精確に固定することが可能な、固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンド、及びそれを備えるロボットの全体構成を示す概略的な平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの概略的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るロボットハンドが備える差動装置の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るロボットハンドが備える差動装置がブレードに取り付けられたときの概略的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るロボットハンドが備えるブレードの傾きを調整する様子を示す概略図であり、(A)が前記傾きを調整する前の図、(B)が前記傾きを調整した後の図である。
図6】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの第1変形例を示す概略的な断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの第2変形例を示す概略的な断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの第3変形例を示す概略的な断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの第4変形例を示す概略的な断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る固定装置が差動ネジを固定する前の様子を示す概略図であり、(A)が軸方向に沿った断面図であり、(B)が図10(A)に示すXB矢視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る固定装置が差動ネジを固定した後の様子を示す概略図であり、(A)が軸方向に沿った断面図であり、(B)が図11(A)に示すXIB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
以下、本発明の一実施形態に係るロボットハンド、及びそれを備えるロボット、並びに固定装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるわけではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0017】
(ロボット10)
図1は、本実施形態に係るロボットハンド、及びそれを備えるロボットの全体構成を示す概略的な平面図である。図1に示すように、ロボット10は、基板Sを保持して搬送するための水平多関節型ロボットとして構成される。具体的には、ロボット10は、収容装置Cに収容された基板Sを保持して収容装置Cから取り出す作業や、保持した基板Sを収容装置C内に収容する作業を行うことが可能である。
【0018】
ロボット10は、基台12と、基台12に設けられる上下方向に伸縮可能な昇降軸(図示せず)と、昇降軸の上端に設けられるロボットアーム20と、を備える。そして、ロボット10は、ロボットアーム20の先端に設けられるロボットハンド30Aをさらに備える。また、ロボット10は、ロボットアーム20及びロボットハンド30Aの動作を制御するためのロボット制御装置90をさらに備える。
【0019】
(基台12及びロボットアーム20)
基台12に設けられる昇降軸は、図示しないボールスクリューなどで上下方向に伸縮可能に構成される。この昇降動作は、基台12の内部に設けられるサーボモータ(図示せず)によって行われる。また、前記昇降軸は、基台12に対して鉛直方向に延びる関節軸JT2周りに回転可能に設けられており、この回転動作は、基台12の内部に設けられたサーボモータ(同前)によって行われる。
【0020】
ロボットアーム20は、各々が水平方向に延びる長尺状の部材で構成される第1リンク22、第2リンク24及び第3リンク26を有する。
【0021】
第1リンク22は、その長手方向の基端が前記昇降軸の上端に取り付けられる。第1リンク22は、前記昇降軸と一体的に昇降し、かつ、前記昇降軸の中央軸線に一致する関節軸JT2周りに前記昇降軸と一体的に回転する。
【0022】
第2リンク24は、その長手方向の基端が第1リンク22の長手方向の先端に鉛直方向に延びる関節軸JT4周りに回転可能に取り付けられる。第2リンク24の第1リンク22に対する回転動作は、第1リンク22の内部に設けられたサーボモータ(図示せず)によって行われる。
【0023】
第3リンク26は、その長手方向の基端が第2リンク24の長手方向の先端に鉛直方向に延びる関節軸JT6周りに回転可能に取り付けられる。第3リンク26の第2リンク24に対する回転動作は、第2リンク24の内部に設けられたサーボモータ(図示せず)によって行われる。
【0024】
(ロボット制御装置90)
ロボット制御装置90は、メモリ(図示せず)と、当該メモリに格納されたプログラムを実行するためのプロセッサ(同前)と、を備える。プロセッサは、上記した基台12の内部に設けられる2つのサーボモータ、第1リンク22の内部に設けられるサーボモータ、及び第2リンク24の内部に設けられるサーボモータによって、ロボット10の動作をサーボ制御することができる。
【0025】
(ロボットハンド30A)
図2は、本実施形態に係るロボットハンドの概略的な平面図である。ロボットハンド30Aは、基板Sを保持するための保持位置38が規定されたブレード32と、ブレード32の基部34に取り付けられる三つの差動装置40Aと、を備える。保持位置38が、図2において二点鎖線で示される。ブレード32には、幅方向における中心を基端から先端に延びる中心軸Lがさらに規定される。中心軸Lが、図2において一点鎖線で示される。ブレード32は、後述するベース体42(第1雌ネジ部材)に取り付けられる基部34と、基部34から分かれて先端側に延びる二つの先端部35a、35bと、を有する。
【0026】
先端部35aは、基部34の幅方向の一端から厚み方向に直交する平面内に突出し、先端部35bは、基部34の幅方向の他端から厚み方向に直交する平面内に突出する。ブレード32は、基部34及び先端部35a、35bを有することで、その厚み方向に見てY字状である。
【0027】
ロボットハンド30Aは、ブレード32の基部34に設けられ、中心軸L上を往復運動可能な可動部材36と、先端部35aに設けられる固定部材37aと、先端部35bに設けられる固定部材37bと、を有する。そして、ロボットハンド30Aは、可動部材36を中心軸Lの先端側に移動させ、可動部材36と固定部材37a、37bとで基板Sを挟むことで基板Sを保持可能である。
【0028】
図3は、本実施形態に係るロボットハンドが備える差動装置の斜視図である。図4は、同差動装置がブレードに取り付けられたときの概略的な断面図である。なお、三つの差動装置40Aは、互いに同じ構造を有する。したがって、ここでは一つの差動装置40Aについてのみ説明し、他の二つの差動装置40Aについての同様となる説明は繰り返さない。
【0029】
図3及び図4に示すように、差動装置40Aは、第3リンク26の先端に固定されるベース体42と、ブレード32の基部34をベース体42に取り付けるための差動ネジ50Aと、を有する。また、差動装置40Aは、ベース体42に対して差動ネジ50Aを固定するための固定装置80をさらに備える。
【0030】
図4に示すように、差動ネジ50Aは、その中心軸Lが保持位置38に存する基板Sの主面に直交するように配置される。差動ネジ50Aは、そのピッチが第1ピッチであり、ベース体42に穿設される第1雌ネジ部52(第1ネジ部)と、そのピッチが第1ピッチよりも小さい第2ピッチであり、ブレード32の基部34から突出する第1雄ネジ部58(第2ネジ部)と、を有する。なお、本実施形態では、第1雌ネジ部52及び第1雄ネジ部58は、それぞれ、右ネジである。
【0031】
第1雌ネジ部52は、ベース体42の幅方向における中央を高さ方向に貫通する貫通孔の内壁に形成される。第1雄ネジ部58は、ブレード32の基部34を高さ方向に貫通する貫通孔に螺合される第1ボルト55の軸部57の外壁に形成される。第1ボルト55の頭部56の基端面は、高さ方向においてブレード32の基部34の上面と同じ位置である。ブレード32は、その基部34が差動ネジ50Aを介してベース体42に取り付けられる。
【0032】
差動ネジ50Aは、介在部材60Aをさらに備える。介在部材60Aは、円筒状の部分と、円筒状の部分のブレード32側の端部に形成される円環状の操作部66と、を有する。前記円筒状の部分は、その外壁に第1雌ネジ部52に螺合する第2雄ネジ部62(第3ネジ部)が形成され、その内壁に第1雄ネジ部58に螺合する第2雌ネジ部64(第4ネジ部)が形成される。第2雄ネジ部62と第2雌ネジ部64は同軸状である。操作部66は、回転操作のために設けられる。操作部66は、前記円筒状の部分と軸方向が一致し、前記円筒状の部分と同じ内径であり、かつ、前記円筒状の部分よりも外径が大きい。
【0033】
再び図2を参照して、三つの差動装置40Aは、保持位置38に存する基板Sの主面と平行な平面内において、互いに異なる箇所に配置される(複数本の差動ネジは、保持位置に存する基板の主面と平行な平面内において、互いに異なる箇所に配置される)。具体的には、三つの差動装置40Aのうちの一つは、ブレード32の基部34の基端の幅方向における一端に配置される。また、三つの差動装置40Aのうちの他の一つは、ブレード32の基部34の基端の幅方向における他端に配置される。そして、三つの差動装置40Aのうちのさらに他の一つは、ブレード32の基部34の中央の幅方向における一端に配置される。
【0034】
(ブレード32の傾きを調整する態様の一例)
図5に基づき、ブレード32の傾きを調整する態様の一例について説明する。また、本実施形態に係るロボットハンド30Aが奏する効果についても併せて説明する。図5は、本実施形態に係るロボットハンドが備えるブレードの傾きを調整する様子を示す概略図であり、(A)が前記傾きを調整する前の図、(B)が前記傾きを調整した後の図である。
【0035】
ここで、図5は、ロボットハンド30Aの基部34を中心軸Lに直交する平面で切断したときの断面図である。図5において、左側がブレード32の先端部35aが設けられる側であり、右側がブレード32の先端部35bが設けられる側である。そして、ブレード32の先端部35bが、ブレード32の先端部35aよりも高くなった状態で、ブレード32が傾いていることとする。
【0036】
上記のようなブレード32の傾きを調整するために、ブレード32の先端部35bを低くする。具体的には、図5において右側に配置される差動装置40Aの操作部66を反時計回りに回転させることで、介在部材60Aを下方へと進行させる。
【0037】
換言すれば、介在部材60Aをベース体42に対して相対的に第1距離だけ下方へと移動させ、かつ、介在部材60Aをブレード32に対して相対的に前記第1距離よりも小さい第2距離だけ下方へと移動させる。ここで、前記第1距離は、第1雌ネジ部52の第1ピッチと介在部材60Aの回転数との積である。また、前記第2距離は、第1雄ネジ部58の第2ピッチと介在部材60Aの回転数との積である。
【0038】
本実施形態に係るロボットハンド30Aは、上記のように操作部66を回転させることで、前記第1距離と前記第2距離の差だけ、ブレード32の基部34のうち第1雄ネジ部58が設けられた部分を下方へと移動させることができるので、ブレード32の傾きを容易に調整することが可能となる。
【0039】
特に、例えば、収容装置Cが、高さ方向に密集した状態で複数の基板Sを収納しているような場合、ブレード32が収容装置C内で収容装置Cの内壁や基板Sと衝突しないように、事前にブレード32の傾きを精確に調整しておく必要がある。このときの精度は、近年の基板Sの小型化に伴い、いっそうの向上が望まれている。しかし、現状は、例えば、単に人手でブレード32に外力を加えてブレード32の傾きを調整している。これにより、ブレード32の傾きを調整するのに相当な手間がかかってしまう。そこで、本実施形態に係るロボットハンド30Aを用いることで、作業時間の短縮や、労力の低減などの効果を得ることができ、ブレード32の傾きを容易に精度よく調整することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、複数の差動装置40A(換言すれば、複数本の差動ネジ50A)が、保持位置38に存する基板Sの主面と平行な平面内において互いに異なる箇所に配置されるので、例えば、差動装置40Aが一つのみ設けられる場合と比較して、ブレード32の傾きをいっそう容易に調整することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、介在部材60Aに回転操作のための操作部66が設けられるので、ブレード32の傾きをいっそう容易に調整することが可能となる。
【0042】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0043】
(第1変形例)
図6は、上記実施形態に係るロボットハンドの第1変形例を示す概略的な断面図である。なお、本変形例に係るロボットハンド30Bは、差動ネジ50Bの構造を除き、上記実施形態に係るロボットハンド30Aと同じ構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0044】
図6に示すように、本変形例に係る差動ネジ50Bは、そのピッチが第1ピッチであり、ベース体42に穿設される第3雌ネジ部102(第1ネジ部)と、そのピッチが第1ピッチよりも小さい第2ピッチであり、ブレード32に穿設される第4雌ネジ部104(第2ネジ部)と、を有する。なお、本変形例では、第3雌ネジ部102及び第4雌ネジ部104は、それぞれ、右ネジである。
【0045】
第3雌ネジ部102は、ベース体42の幅方向における中央を高さ方向に貫通する貫通孔の内壁に形成される。第4雌ネジ部104は、ブレード32を高さ方向に貫通する貫通孔の内壁に形成される。
【0046】
本実施形態では、介在部材60Bが、円板状の操作部66と、操作部66の中央からベース体42側に突出し、第3雌ネジ部102に螺合する第3雄ネジ部106(第3ネジ部)と、操作部66の中央からブレード32側に突出し、第4雌ネジ部104に螺合する第4雄ネジ部108(第4ネジ部)と、を有する。第3雄ネジ部106と第4雄ネジ部108は同軸状である。
【0047】
本変形例に係るロボットハンド30Bは、上記構造の差動ネジ50Bを備えることで、上記実施形態に係るロボットハンド30Aと同様の効果を奏する。
【0048】
(第2変形例)
図7は、上記実施形態に係るロボットハンドの第2変形例を示す概略的な断面図である。なお、本変形例に係るロボットハンド30Cは、差動ネジ50Cの構造を除き、上記実施形態に係るロボットハンド30A、及びその変形例に係るロボットハンド30Bと同じ構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0049】
図7に示すように、本変形例に係る差動ネジ50Cは、そのピッチが第1ピッチであり、ベース体42に突設される第5雄ネジ部110(第1ネジ部)と、そのピッチが第1ピッチよりも小さい第2ピッチであり、ブレード32に突設される第6雄ネジ部112(第2ネジ部)と、を有する。なお、本変形例では、第5雄ネジ部110及び第6雄ネジ部112は、それぞれ、右ネジである。
【0050】
第5雌ネジ部114は、ベース体42の幅方向における中央から突出する軸部の外壁に形成される。第6雄ネジ部112は、ブレード32の基部34から突出する軸部の外壁に形成される。
【0051】
本変形例では、介在部材60Cが、円柱状の部分と、当該円柱状の部分の軸方向における中央に設けられ、当該円柱状の部分と同軸状である円板状の操作部66と、を有する。そして、操作部66の直径は、前記円柱状の部分のそれよりも大きい。
【0052】
介在部材60Cの円柱状の部分には、軸孔が形成される。そして、当該軸孔の内壁のベース体42側の部分に第5雄ネジ部110と螺合する第5雌ネジ部114(第3ネジ部)が形成され、当該軸孔の内壁のブレード32側の部分に第6雄ネジ部112と螺合する第6雌ネジ部116(第4ネジ部)が形成される。第5雌ネジ部114と第6雌ネジ部116は同軸状である。
【0053】
本変形例に係るロボットハンド30Cは、上記構造の差動ネジ50Cを備えることで、上記実施形態に係るロボットハンド30Aと同様の効果を奏する。
【0054】
(第3変形例)
図8は、上記実施形態に係るロボットハンドの第3変形例を示す概略的な断面図である。なお、本変形例に係るロボットハンド30Dは、差動ネジ50Dの構造を除き、上記実施形態に係るロボットハンド30A、及びその変形例に係るロボットハンド30B、30Cと同じ構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0055】
図8に示すように、本変形例に係る差動ネジ50Dは、そのピッチが第1ピッチであり、ベース体42に突設される第7雄ネジ部118(第1ネジ部)と、そのピッチが第1ピッチよりも小さい第2ピッチであり、ブラケット70に突設される第7雌ネジ部120(第2ネジ部)と、を有する。なお、本変形例では、第7雄ネジ部118及び第7雌ネジ部120は、それぞれ、右ネジである。
【0056】
第7雄ネジ部118は、ベース体42の幅方向における中央から突出する軸部の外壁に形成される。第7雌ネジ部120は、ブラケット70の基端の幅方向における中央を高さ方向に貫通する貫通孔の内壁に形成される。
【0057】
本実施形態では、介在部材60Dが、円柱状の部分と、当該円柱状の部分の軸方向における中央に設けられ、当該円柱状の部分と同軸状である円板状の操作部66と、を有する。そして、操作部66の直径は、前記円柱状の部分のそれよりも大きい。
【0058】
介在部材60Dの円柱状の部分には、軸孔が形成される。そして、当該軸孔の内壁に第7雄ネジ部118と螺合する第8雌ネジ部122(第3ネジ部)が形成される。また、介在部材60Dの円柱状の部分の操作部66よりもブレード32側の外壁に第7雌ネジ部120と螺合する第8雄ネジ部124が形成される。第8雌ネジ部122と第8雄ネジ部124は同軸状である。
【0059】
本変形例に係るロボットハンド30Dは、上記構造の差動ネジ50Dを備えることで、上記実施形態に係るロボットハンド30Aと同様の効果を奏する。
【0060】
(第4変形例)
図9は、上記実施形態に係るロボットハンドの第4変形例を示す概略的な断面図である。なお、本変形例に係るロボットハンド30Eは、差動ネジ50Eの構造を除き、上記実施形態に係るロボットハンド30A、及びその変形例に係るロボットハンド30B~30Dと同じ構造を備える。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0061】
図9に示すように、本変形例に係る差動ネジ50Eは、そのピッチが第1ピッチであり、ベース体42に突設される第9雄ネジ部126(第1ネジ部)と、そのピッチが第1ピッチよりも小さい第2ピッチであり、ブレード32の基部34に突設される第9雌ネジ部128(第2ネジ部)と、を有する。なお、本変形例では、第9雄ネジ部126及び第9雌ネジ部128は、それぞれ、右ネジである。
【0062】
第9雄ネジ部126は、ベース体42の幅方向における中央から突出する軸部の外壁に形成される。第9雌ネジ部128は、ブレード32の基部34を高さ方向に貫通する貫通孔の内壁に形成される。
【0063】
本実施形態では、介在部材60Eが、円柱状の部分と、当該円柱状の部分の軸方向における中央に設けられ、当該円柱状の部分と同軸状である円板状の操作部66と、を有する。そして、操作部66の直径は、前記円柱状の部分のそれよりも大きい。
【0064】
介在部材60Dの円柱状の部分には、底面(すなわち、ベース体42側の面)の中央から上面(すなわち、ブレード32側の面)の近傍まで凹部が穿設され、当該凹部の内壁に、第9雄ネジ部126と螺合する第10雌ネジ部130が形成される。また、介在部材60Dの円柱状の部分の上面の中央に軸部が突設され、当該軸部の外壁に、第9雌ネジ部128と螺合する第10雄ネジ部132が形成される。
【0065】
本変形例に係るロボットハンド30Eは、上記構造の差動ネジ50Eを備えることで、上記実施形態に係るロボットハンド30Aと同様の効果を奏する。
【0066】
(その他の変形例)
上記実施形態では、ベース体42と第3リンク26が別部材である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、第3リンク26がベース体として構成されてもよい。これにより、第3リンク26自体に第1ネジ部が形成されてもよい。
【0067】
上記実施形態では、ブレード32と、第1ボルト55とが別部材である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ブレード32と、第1ボルト55とが一体的に形成されてもよい。これにより、ブレード32自体に第2ネジ部が形成されてもよい。
【0068】
上記実施形態では、ブレード32の先端部35bが、ブレード32の先端部35aよりも高くなった状態で、ブレード32が傾いている状態を調整する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ブレード32の先端部35aが、ブレード32の先端部35bよりも高くなった状態で、ブレード32が傾いている状態も同様に調整することが可能である。さらに、ブレード32の先端が同ブレード32の基端よりも低くなった状態や高くなった状態で、ブレードが傾いている状態を調整するために、ブレード32の基部34の中央の幅方向における一端に配置される差動装置40Aの操作部66を回転操作してもよい。
【0069】
上記実施形態では、ロボットハンド30Aが、保持位置38に存する基板Sの主面と平行な平面内において互いに異なる箇所に、三つの差動装置40Aを備える場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ロボットハンド30Aは、一つ又は二つの差動装置40Aを備えてもよいし、四つ以上の差動装置40Aを備えてもよい。
【0070】
上記実施形態では、ロボットハンド30Aが、その基部34に設けられ、ブレード32の中心軸L上を往復運動可能な可動部材36と、その先端部35a、35bに設けられる固定部材37a、37bと、で基板Sを挟むことで当該基板Sを保持する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ロボットハンド30Aは、基板Sを乗載、又は吸着する等して当該基板Sを保持してもよい。
【0071】
上記実施形態では、ロボットアーム20が、三つの関節軸JT2、JT4、JT6を有する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ロボットアーム20は、一つ又は二つの関節軸を有してもよいし、四つ以上の関節軸を有してもよい。
【0072】
上記実施形態では、ブレード32が、基部34、及び先端部35a、35bまで一つの部材で一体的に形成される場合について図示した。しかし、この場合に限定されず、例えば、ブレード32の基部34のうち差動ネジ50Aが設けられる部分のみ別部材で形成され、当該別部材とブレード32のその他の部分とが互いに固定されてもよい。また、ブレード32は、三つ以上の部材に分けて形成され、それらが互いに固定されることで構成されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ロボット10が、ロボットハンド30A及び第3リンク26をそれぞれ一つずつ備える場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、ロボット10は、複数のロボットハンド30A、及び当該複数のロボットハンド30Aそれぞれに接続される第3リンク26(すなわち、複数の第3リンク26)を備えてもよい。このような場合、複数の第3リンク26は、それぞれ、その長手方向の基端が関節軸JT6周りに独立して回転可能であってもよい。
【0074】
そして、このような場合、例えば、単に人手でブレード32に外力を加えて当該ブレード32の傾きを調整してしまうと、当該ブレード32の数が多くなる分だけ、当該ブレード32の傾きを調整するのに相当な手間がかかってしまう。したがって、上記のようにロボットハンド30Aが複数設けられる場合、作業時間をいっそう短縮することができ、労力をさらに低減することが可能となる。
【0075】
(固定装置80)
図10及び図11に基づき、上記実施形態で説明した差動ネジ50Aを固定するための固定装置80について説明する。図10は、上記実施形態に係る固定装置が差動ネジを固定する前の様子を示す概略図であり、(A)が軸方向に沿った断面図であり、(B)が図10(A)に示すXB矢視図である。図11は、同固定装置が差動ネジを固定した後の様子を示す概略図であり、(A)が軸方向に沿った断面図であり、(B)が図11(A)に示すXIB矢視図である。
【0076】
上記実施形態で説明したように、差動ネジ50Aは、そのピッチが第1ピッチである第1雌ネジ部52(第1ネジ部)と、そのピッチが前記第1ピッチよりも小さい第2ピッチである第1雄ネジ部58(第2ネジ部)と、を有する。また、差動ネジ50Aは、円筒状であり、その外壁に形成されて第1雌ネジ部52に螺合する第2雄ネジ部62(第3ネジ部)、及びその内壁に形成されて第1雄ネジ部58に螺合する第2雌ネジ部64(第4ネジ部)を同軸状に有する介在部材60Aをさらに有する。
【0077】
固定装置80は、第1雌ネジ部52が形成されるベース体42(第1ネジ部材、第1スリット部材)に形成され、第1雌ネジ部52の軸に直交する平面内において当該第1雌ネジ部52と交わる第1スリット82を備える。また、固定装置80は、ベース体42に、第1スリット82の内壁同士の距離を近づけることで(第1スリットの内壁同士の距離を変化させることで)、ベース体42に形成された第1雌ネジ部52と、それに螺合する介在部材60A(変形部材)の第2雄ネジ部62との遊びをなくすための第2ボルト85(固定部材)をさらに備える。
【0078】
第2ボルト85は、その軸部87が前記差動ネジ50Aの軸方向に直交する平面内において第1スリット82と交差するように配置される。
【0079】
固定装置80は、介在部材60Aの軸方向におけるベース体42側の端部に形成された二つの第2スリット68をさらに備える。二つの第2スリット68のうちの一方は、介在部材60Aをベース体42側の端部から見たとき、介在部材60Aの中心を通る第1直線上に形成される。また、二つの第2スリット68のうちの他方は、介在部材60Aをベース体42側の端部から見たとき、介在部材60Aの中心を通る第2直線上に形成される。そして、前記第1直線と前記第2直線とは互いに直交する。
【0080】
介在部材60Aは、上記のような二つの第2スリット68を有することで、その直径方向に変形可能であり、第2ボルト85が介在部材60Aを直径方向に縮めることで(変形部材を直径方向に変形させることで)、介在部材60Aに形成された第2雄ネジ部62及び第2雌ネジ部64と、それに螺合する第1雌ネジ部52及び第1雄ネジ部58との遊びをなくす。
【0081】
本実施形態に係る固定装置80は、第1スリット82の内壁同士が互いに近づくことに伴い、第1雌ネジ部52が直径方向に縮まるように変形する。これにより、差動ネジ50Aに軸方向の外力を加えることなく、当該差動ネジ50Aを固定することができる。その結果、本発明に係る固定装置80は、差動ネジ50Aを精確に固定することが可能となる。
【0082】
特に、例えば、本実施形態のように、ブレード32の傾きを調整するために差動ネジ50Aが用いられるとき、固定装置80が有効である。すなわち、例えば、ブレード32の傾きを調整したあとに、差動ネジ50Aの軸方向における端部にナットを取り付けて当該差動ネジ50Aを固定するような場合、差動ネジ50Aに軸方向の外力が加わるので、ブレード32が再び傾いてしまう。一方、本実施形態に係る固定装置80を用いて差動ネジ50Aを固定することで、差動ネジ50Aに軸方向の外力が加わらないので、ブレード32が再び傾いてしまうことがない。
【0083】
また、本実施形態に係る固定装置80は、ベース体42に固定部材として第2ボルト85を取り付けるので、簡単な構造で第1スリット82の内壁同士を互いに近づけることが可能となる。
【0084】
さらに、本実施形態に係る固定装置80は、介在部材60Aの軸方向におけるベース体42側の端部に形成された二つの第2スリット68を備えるので、第1スリット82の内壁同士が互いに近づくことに伴い、介在部材60Aが直径方向に縮まるように変形可能である。これにより、差動ネジ50Aの第1雌ネジ部52、第2雌ネジ部64、第1雄ネジ部58及び第2雄ネジ部62が互いに強固に固定される。また、二つの第2スリット68が上記のように配置されることで、介在部材60Aの回転位置に依存せず、介在部材60Aが直径方向に縮まるように変形可能である。
【0085】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0086】
上記実施形態では、ベース体42に第1雌ネジ部52(第1ネジ部)が形成され、当該ベース体42を第1ネジ部材とし、ブレード32に第1雄ネジ部58(第2ネジ部)が形成され、当該ブレード32を第2ネジ部材とした。そして、ベース体42(第1ネジ部材)に第1スリット82が形成され、当該ベース体42を第1スリット部材とした。
【0087】
しかし、この場合に限定されず、第1ネジ部が雄ネジで第2ネジ部が雌ネジであってもよく、第1及び第2ネジ部の両方が雄ネジであってもよく、又は、第1及び第2ネジ部の両方が雌ネジであってもよい。また、ベース体42が第2ネジ部を形成された第2ネジ部材であり、ブレード32が第1ネジ部を形成された第1ネジ部材であってもよい。
【0088】
上記実施形態では、介在部材60Aが変形部材であり、第2ボルト85(固定部材)が介在部材60Aを直径方向に縮めることで、介在部材60Aに形成された第2雄ネジ部62及び第2雌ネジ部64と、それに螺合する第1雌ネジ部52及び第1雄ネジ部58との遊びをなくす場合について説明した。
【0089】
しかし、この場合に限定されず、例えば、図6に示すロボットハンド30Bのように、ブレード32(第1及び第2ネジ部材の他方)が変形部材であり、固定部材がベース体42(第1スリット部材)とブレード32(変形部材)とに掛け渡されることで、第1スリット82の内壁同士の距離を近づけ、かつ、ブレード32を差動ネジ50Bの直径方向に縮めてもよい。このようにして、差動ネジ50Bが固定されてもよい。
【0090】
また、例えば、図7に示すロボットハンド30Cのような場合、ブレード32(第1及び前記第2ネジ部材の他方)が変形部材であり、固定部材がベース体42(第1スリット部材)とブレード32(変形部材)とに掛け渡されることで、第1スリット82の内壁同士の距離を広げ、かつ、ブレード32を差動ネジ50Bの直径方向に広げてもよい。これにより、ベース体42に突設される第5雄ネジ部110、及びブレード32に突設される第6雄ネジ部112それぞれも直径方向に広がる。このようにして、差動ネジ50Cが固定されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、介在部材60Aの軸方向におけるベース体42側の端部に二つの第2スリット68が形成される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、介在部材60Aの側面などに第2スリット68が形成されてもよい。また、介在部材60Aに第2スリット68が形成されなくても、例えば、介在部材60Aが可撓性を有する材料で形成されればよい。上記したような介在部材60Aは、二つの第2スリット68が形成される場合と同様に、直径方向に縮まるように変形可能である。
【0092】
上記実施形態では、固定部材が第2ボルト85である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、固定部材は、第1スリット82の内壁同士が互いに近づくようにベース体42(第1部材)に取り付けられるのであれば、例えば、ベース体42を幅方向の両端から内側に締め付ける締結部材であってもよいし、その他の固定部材であってもよい。
【0093】
(まとめ)
本発明に係るロボットハンドは、基板を保持するためのロボットハンドであって、ベース体と、前記基板を保持するための保持位置が規定され、その基部が前記ベース体に取り付けられるブレードと、その中心軸が前記保持位置に存する前記基板の主面に直交し、前記ブレードの基部を前記ベース体に取り付けるための差動ネジと、を備え、前記差動ネジは、そのピッチが第1ピッチである第1ネジ部と、そのピッチが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチである第2ネジ部と、前記第1ネジ部に螺合する第3ネジ部、及び前記第2ネジ部に螺合する第4ネジ部を同軸状に有する介在部材と、を有し、前記第1ネジ部が前記ベース体に設けられ、かつ、前記第2ネジ部が前記ブレードの基部に設けられることを特徴とする。
【0094】
上記構成によれば、本発明に係るロボットハンドは、第1ネジ部の第1ピッチと介在部材の回転数との積である第1距離と、第2ネジ部の第2ピッチと介在部材の回転数との積である第2距離との差だけ、ブレードの基部のうちの第2ネジ部が設けられた部分を移動させることができるので、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを容易に調整することが可能となる。
【0095】
前記差動ネジを複数本備え、前記複数本の差動ネジは、前記保持位置に存する前記基板の主面と平行な平面内において、互いに異なる箇所に配置されてもよい。
【0096】
上記構成によれば、本発明に係るロボットハンドは、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きをいっそう容易に調整することが可能となる。
【0097】
前記介在部材には、回転操作のための操作部が設けられてもよい。
【0098】
上記構成によれば、本発明に係るロボットハンドは、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きをいっそう容易に調整することが可能となる。
【0099】
例えば、前記第1ネジ部は、前記ベース体及び前記ブレードのいずれか一方に穿設される第1雌ネジ部として構成され、前記第2ネジ部は、前記ベース体及び前記ブレードのいずれか他方から突出する第1雄ネジ部として構成され、前記介在部材は、円筒状であり、その外壁に前記第3ネジ部として第2雄ネジ部が形成され、その内壁に前記第4ネジ部として第2雌ネジ部が形成されてもよい。
【0100】
前記ベース体及び前記ブレードのいずれかに対して前記差動ネジを固定するための固定装置をさらに備え、前記固定装置は、前記ベース体及び前記ブレードのいずれか一方に穿設され、前記差動ネジの軸方向に直交する平面内において、前記第1及び前記第2雌ネジ部、並びに前記第1及び前記第2雄ネジ部と交わるスリットと、前記スリットの内壁同士が互いに近づくように前記ベース体及び前記ブレードのいずれか一方に取り付けられる固定部材と、を有してもよい。
【0101】
上記構成によれば、スリットの内壁同士が互いに近づくことに伴い、第1雌ネジ部が直径方向に縮まるように変形する。これにより、差動ネジに軸方向の外力を加えることなく、当該差動ネジを固定することができる。その結果、本発明に係るロボットハンドは、差動ネジを精確に固定することが可能となる。
【0102】
本発明に係るロボットは、上記いずれかの構成を有するロボットハンドと、その先端に前記ロボットハンドが設けられ、少なくとも一つの関節軸を有するロボットアームと、を備えることを特徴とする。
【0103】
上記構成によれば、本発明に係るロボットは、上記いずれかの構成を有するロボットハンドを備えるので、基板を保持するための保持位置が規定されたブレードの傾きを容易に調整することが可能となる。
【0104】
例えば、水平多関節型ロボットとして構成される、請求項7に記載のロボット。
【0105】
本発明に係る固定装置は、差動ネジを固定するための固定装置であって、前記差動ネジは、そのピッチが第1ピッチである第1雌ネジ部と、そのピッチが前記第1ピッチとは異なる第2ピッチである第1雄ネジ部と、円筒状であり、その外壁に形成されて前記第1雌ネジ部に螺合する第2雄ネジ部、及びその内壁に形成されて前記第1雄ネジ部に螺合する第2雌ネジ部を同軸状に有する介在部材と、を有し、前記第1雌ネジ部が形成される第1部材に穿設され、前記差動ネジの軸方向に直交する平面内において、前記第1及び前記第2雌ネジ部、並びに前記第1及び前記第2雄ネジ部と交わるスリットと、前記スリットの内壁同士が互いに近づくように前記第1部材に取り付けられる固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0106】
上記構成によれば、本発明に係る固定装置は、スリットの内壁同士が互いに近づくことに伴い、第1雌ネジ部が直径方向に縮まるように変形する。これにより、差動ネジに軸方向の外力を加えることなく、当該差動ネジを固定することができる。その結果、本発明に係る固定装置は、差動ネジを精確に固定することが可能となる。
【0107】
前記固定部材は、その軸部が前記差動ネジの軸方向に直交する平面内において前記スリットと交差するように配置されるボルトとして構成されてもよい。
【0108】
上記構成によれば、本発明に係る固定装置は、簡単な構造でスリットの内壁同士を互いに近づけることが可能となる。
【0109】
少なくとも前記介在部材の軸方向における前記第1部材側の端部に形成された凹部をさらに備えてもよい。
【0110】
上記構成によれば、スリットの内壁同士が互いに近づくことに伴い、介在部材が直径方向に縮まるように変形可能である。これにより、差動ネジの第1雌ネジ部、第2雌ネジ部、第1雄ネジ部及び第2雄ネジ部が互いに強固に固定される。
【符号の説明】
【0111】
10 ロボット
12 基台
20 ロボットアーム
22 第1リンク
24 第2リンク
26 第3リンク
30 ロボットハンド
32 ブレード
34 基部
35 先端部
36 可動部材
37 固定部材
38 保持位置
40 差動装置
42 ベース体
50 差動ネジ
52 第1雌ネジ部
55 第1ボルト
56 頭部
57 軸部
58 第1雄ネジ部
60 介在部材
62 第2雄ネジ部
64 第2雌ネジ部
66 操作部
68 凹部
80 固定装置
82 第1スリット
85 第2ボルト
87 軸部
90 ロボット制御装置
102 第3雌ネジ部
104 第4雌ネジ部
106 第3雄ネジ部
108 第4雄ネジ部
110 第5雄ネジ部
112 第6雄ネジ部
114 第5雌ネジ部
116 第6雌ネジ部
118 第7雄ネジ部
120 第7雌ネジ部
122 第8雌ネジ部
124 第8雄ネジ部
126 第9雄ネジ部
128 第9雌ネジ部
130 第10雌ネジ部
132 第10雄ネジ部
C 収容装置
L 中心軸
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11