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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】真空用ゲートバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/18 20060101AFI20231115BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F16K3/18 E
F16K51/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019147617
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2020056498
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018180649
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 俊昭
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-71642(JP,A)
【文献】特開2003-156171(JP,A)
【文献】米国特許第6173938(US,B1)
【文献】特開2001-165350(JP,A)
【文献】特開2004-197769(JP,A)
【文献】特開2013-87814(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161387(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/18
F16K 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置したハウジング体と、このハウジング体の間に配置され、上下動作とLモーション動作を行う弁体開閉駆動体と、この弁体開閉駆動体の上部に弁体を設けたステムとを備え、各ハウジング体の内部には、シリンダ機構により上下動するピストンロッドと、このピストンロッドの上端にカム溝を有するカム部材を有し、前記弁体開閉駆動体の両側には、前記カム溝に摺動可能に案内されるカムローラと支点ローラとを有し、前記ハウジング体の内側には、前記支点ローラの上下動作を案内する上下動案内部と前記弁体開閉駆動体の上昇時に係止するストッパ部とを有し、前記弁体開閉駆動体の下部と固定側の前記ハウジング体のシリンダヘッドとの間に前記弁体開閉駆動体を開口ストロークの上端部まで上昇させるためのスプリングを備えたことを特徴とする真空用ゲートバルブ。
【請求項2】
前記シリンダ機構の内部の弁閉側と弁開側には、クッションパッキンとオリフィスから成る減速用のピストンクッション機構が設けられている請求項1に記載の真空用ゲートバルブ。
【請求項3】
前記シリンダ機構のカム溝の弁閉側のストッパ部には、クッション用弾性ブッシュが取り付けられ、更に、前記支点ローラの上下動を案内し上昇時に係止するストッパ部にはローラ受け用弾性ブッシュが取り付けられている請求項1に記載の真空用ゲートバルブ。
【請求項4】
前記スプリングの上端は、前記弁体開閉駆動体の下部凹部面に取り付け、前記スプリングの下端は、前記ハウジング体のシリンダヘッドを固定基部とし、このシリンダヘッドに取り付けた請求項1に記載の真空用ゲートバルブ。
【請求項5】
前記弁体開閉駆動体の両側と前記ハウジング体の内側に弁開閉動作の上下動作とLモーション動作を案内する動作ガイド機構を備えた請求項1に記載の真空用ゲートバルブ。
【請求項6】
前記動作ガイド機構は、前記ハウジング体に設けた固定側ガイド部材と前記弁体開閉駆動体に設けた可動側ガイド部材より成る請求項5に記載の真空用ゲートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置用として、駆動機構(アクチュエータ)が薄型シンプル構造であって、弁体の高速安定動作が可能な無摺動型の真空用ゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造装置において、例えば、真空チャンバに通じるウェハの搬送通路を開閉する仕切弁として、長尺角型の弁体などを備えた真空用ゲートバルブが用いられており、特に、この弁体のシール材とシール面との間では、開閉の際に捩れや摺動或は衝撃などが僅かでも生じると、シール材から微小なパーティクルが生じ、このようなパーティクルの発生によって、極めて高いクリーン度が要求されているウェハの搬送空間が汚染されることになる。このため、このようなパーティクルの発生を可能な限り抑制するため、従来から、この種のバルブは、弁体がシール面を締め切る際に摺動などの発生を防止するようにした所謂無摺動型ゲートバルブが用いられている。
【0003】
また近年、この種のバルブには、このような高いクリーン性(低パーティクル性)を前提として、更なる生産性の向上のため、弁体開閉動作の安定高速な動作が要求されると共に、この種のバルブを含む半導体製造装置には、可能な限り装置を適切に集積するコンパクトデザインが益々要求されている。
【0004】
この種のコンパクトに構成された無摺動型の真空用ゲートバルブとしては、例えば特許文献1~3が提案されている。これらは何れも、カム機構で作動するゲートバルブであって、バルブ内の中心位置で、1本のステム・弁体と共に変位する部材が、バルブ内に適宜配置されたスプリング部材によって、一方向へ向けて弾発された状態が保たれると共に、この弾発されている部材の左右両側には、この部材を駆動する駆動機構がコンパクトに集積された構造が採られている。
【0005】
特許文献1は、全開位置(最下部)において、レバー部材は、直下に配設された圧縮ばねで上方向へ弾発され、レバー部材の左右に設けられたカムローラがカムフレームに形成されたカム溝の上端で係止されている。バルブを閉じる際は、エアシリンダのピストンの上昇と一体的にロッドアームも上昇し、この上昇動作は、ガイド溝が、ボデー(バルブ本体)側に位置が固定されているシリンダハウジングに設けられたガイドローラに係合していくことによって平行移動が確保される。この際、レバー部材の上下2点に設けられたカムローラが、カムフレームの対応位置の上下2点に設けられたカム溝にそれぞれ嵌合していることによって、上下2点でレバー部材の姿勢が一定に支持されている。また、この平行移動に伴い、上側のカムローラに突出形成された停止ローラが、ローラフレーム内側下部に形成された凹溝に嵌合していく。
【0006】
そして、停止ローラが当該凹溝上端の当接部に当接し、この当接以降は、レバー部材(弁板)の上昇(平行移動)が係止状態となって弁板が全閉位置になると共に、圧縮ばねの弾発により、レバー部材はこの位置に維持される。更にロッドアーム(ロッド側アセンブリ)が上昇すると、この上昇が係止されているカムローラは、上昇を続けるガイド溝に沿って移動することになる。カムフレーム(ガイド溝)側は、上昇方向に垂直(水平)な方向には位置が固定されている一方で、レバー部材側はこの方向には位置ずれが可能であるから、傾斜したカム溝に沿って移動するカムローラと共に、シャフト側アセンブリは前記位置ずれにより弁板が弁シール面に向けて垂直移動することにより全閉状態となるように構成されている。よって同文献は、レバー部材の上下2点のカムローラを起点として、レバー部材・弁シャフト・弁板が全体としてカムフレームに対して平行クランク状に動作して弁を締め切るL動作型の一例である。
【0007】
特許文献2は、全開位置(最上部)において、変位ブロックは、真上に配設されたコイルスプリングで下方向へ弾発され、変位ブロックの左右上端に設けられた傾動ローラが連結ブロックのローラ溝の下端に位置している。バルブを閉じる際は、流体圧シリンダのピストンの下降と一体的にヨークも下降していく。この下降動作の間は、係合部材の下方に固着されている係合ブラケットの係合用溝部内に、変位ブロックの側面に設けられている一対のピン部材が保持されていることで、弁ディスクの移動姿勢が一定に保たれている。また、この下降動作に伴い、変位ブロックの左右下端に回転自在に設けられた一対の支持ローラが、ベース部上面に形成され上方向に向けて開口した凹部に挿入される。この際、凹部内に設けられたダンパにより、支持ローラが凹部に嵌合して係止される際の衝撃の緩和が図られている。
【0008】
そして、可動する支持ローラの下降が係止された以降は、変位ブロックの下降もこの位置で係止されると共に、コイルスプリングの弾発付勢で変位ブロックはこの位置に維持される一方で、連結ブロック(ヨーク)は下降を続けるので、傾動ローラは、下降を続けるローラ溝に沿って移動することになる。この際、連結ブロック(ローラ溝)側は下降方向へ位置決めされているが変位ブロック(弁ディスク)側は傾動可能なので、傾斜したカム溝に沿って動作する傾動ローラと共に弁ディスク側が傾動してシール面に向けて移動することにより、弁閉状態となるように構成されている。なお、弁ディスクがシール面を締め切る際には、サイドフレームの内壁部のローラ挿入溝に挿入される2対の保持ローラから成る保持機構と受圧部材との作用効果により、弁締め切り荷重の緩和が図られている。よって同文献は、変位ブロックの第1ローラ(傾動ローラ)を支点として振り子状に動作して弁を締め切るJ動作型の一例である。
【0009】
一方で、本願出願人により、特許文献3が提案されている。同文献は、全開位置(最下部)では、弁体開閉駆動体は、左右上部に設けられたスプリング受け部によって下面側からスプリングにより弾発され、スプリング受け部の上面側がカム部材の下面側に係止されている。この状態で、シリンダ機構の上昇と共に弁体開閉駆動体も上昇し、この際、少なくともスプリング受け部上面とカム部材下面とが面接触(弾発付勢)していることによって、弁体開閉駆動体の姿勢も一定に保たれている。
【0010】
そして、弁体開閉駆動体の下部に設けられた支点部位がハウジング体の下部に設けられたストッパ部に係止され、この係止以降は、スプリングの弾発力によって弁体開閉駆動体はこの位置に保持されると共に、カム部材のカム溝は上昇を続けるので、このカム溝内に嵌合している弁体開閉駆動体の左右上部に設けられたカムローラは、このカム溝(カム部材)に沿って移動し、この移動に伴って、弁体開閉駆動体は、上部の一対のカムローラを力点、下部に設けられた一対の支点部位を支点、上端に位置する弁体を作用点とした振り子(Lモーション)動作を行うことにより、弁体シール材が弁座シール面にほぼ平行に密着・押圧して全閉状態にできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5533839号公報
【文献】特許第5545152号公報
【文献】特開2018-71642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1は、先ず、圧縮ばねはエアシリンダと一体的に上下駆動するロッドアームを起点にレバー部材を弾発するように配置されている。このため、ロッドアームの動作に伴い、圧縮ばねには、それ自身やレバー部材の慣性によって余分な伸縮が作用し、レバー部材に付勢する弾発力が乱され、もって、弁板の動作も不安定化し易くなる構造であって、特に、バルブの駆動を高速化した際には、この不安定化が顕著となる。
【0013】
また、弁板を平行移動させる際には、2対のガイドローラ(合計4個)がカムフレームのガイド溝を摺動すると共に、弁板を弁シール面に向けて垂直移動させる際には、2対(4個)のカムローラがそれぞれカム溝を摺動する上に、1対(2個)の停止ローラもローラフレームの凹溝を摺動するから、弁板をL型動作させるためには、少なくとも合計6個のローラの摺動が必須となり、よって、バルブが駆動する際に全体として摩擦摺動量が多いバルブとなっている。このため、とりわけ弁締め切りの際の荷重に大きな駆動力が必要な上に、部材間の摩損が多いことによるバルブの寿命低下や故障・作動不良、或は、パーティクルの発生のおそれがある。
【0014】
さらに、レバー部材は、上下2点のカムローラがカム溝に押圧されることにより移動するから、弁シート面に向けてほぼ平行状態が維持されたまま垂直移動することになる。このようにレバー部材は回動自由度を持たないので、同じシール力で弁板を弁シート面に押し付けようとした場合、回動自由度を持つレバー部材に比べて、シャフトの撓み量が増すことになる。よって、弁体とシート面との捩れや擦れも増加し、パーティクル発生の抑制に不利な構造である。
【0015】
しかも、ロッド側アセンブリが一体で動作するから、エアシリンダへのエア供給流路は、バルブ本体の側面位置にしか備えることができず、よって、バルブのコンパクト性を阻害すると共に、バルブ設計の選択肢も狭めている。更に、当接部への停止ローラの当接や弁シート面への締め切りの際に、これらの衝撃の緩和に関する考慮もなされていない。
【0016】
特許文献2も、先ず、上記の同文献1と同様に、コイルスプリングは可動するヨークを起点に変位ブロックを弾発するように配置されているから、弁ディスクの動作が不安定化し易くなる構造である。また、同文献2は、他の多くのカム機構を備えたゲートバルブと同様に、変位ブロック側の最下部(傾動ローラ)を支点として傾動するから、作用点と支点との距離が離れている分、弁体を弁座シール面に押し付ける動作に必要となる弁体の必要傾斜角度に無駄が生じ、よって、弁ディスクを締め切る際に生じる傾斜角度や弁ロッドの撓み量も増すので、擦れや捩れ量も増して低パーティクル性が損なわれるものとなる。
【0017】
また、少なくともダンパや保持機構・受圧部材によって、バルブ駆動や弁締め切りの際の衝撃の緩和が図られているものの、これらの構造自体が複雑化しており、よって、簡易でコンパクトなバルブ構造も損なわれている。さらに、上記の同文献1と同様に、流体圧シリンダへのエア供給流路はバルブ本体の側面位置にしか備えることができない構造となっている。
【0018】
これに対し、特許文献3は、全開から全閉までのバルブ駆動において、上下一対(合計4個)のローラを介して駆動するから、同文献1のように全体の摩擦量も最小限であり、弁体開閉駆動体には回転自由度があるから、ステムの撓み量も小さく、また、シリンダ機構が固定側のハウジング体内部に収容されているから、エア供給流路もバルブ本体の下部にも備えることができ、さらに、弁体の振り子動作も弁体開閉駆動体の下部を支点としているから、必要な傾斜角度にも無駄がない。よって同文献3は、少なくともこれらの点で、同文献1、2の上記課題を解消している。
【0019】
しかしながら、同文献3では、弁体開閉駆動体を上方向に向けて弾発する左右2つのスプリングは、スプリング受け部下面側とピストンロッドの肩部との間に介装されているから、弁体を締め切る際(カム作動ストローク)には、このスプリングをさらにピストンロッドが圧縮しなければならない。このため、カム作動ストロークにおいては、弁体を締め切ると共に、ピストンロッドに必要な駆動力も増加し、弁体を締め切る全閉位置では2本のスプリングによる大きな反発力がピストンロッドを下方向(開方向)へ付勢することになる。この反発力に抗して確実にピストンロッドを全閉状態として保持するためには、これを下方向への移動を係止するロック機構(ラッチロック)が必要となり、よって、この分バルブの構造や動作が複雑化する課題を有していた。
【0020】
また、このようにカム作動ストロークにおいてスプリングの反発力が生じるので、このカム作動ストロークは最小限に抑える必要があり、よって、このストロークを決めるカム部材のカム溝の長さを、必要に応じて長く形成することができない課題も有していた。このため、例えばピストンロッドへのエア供給を調整してバルブの駆動(昇降)速度を増加させようとした場合、カム溝が短いまま維持されていると、カム作動ストロークのスパンが不足することによって弁体を振るLモーション動作速度が必要以上に増加してしまい、弁体を締め切る際の振動や衝撃が増す課題も有していた。
【0021】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、コンパクトな構成かつ必要最小限の駆動力で弁体のシール材とシール面との捩れや摺動を抑制して高い低パーティクル性を発揮すると共に、高速駆動下であっても弁体開閉動作が安定確実であり、金属音などの衝撃音や振動を極力制限し耐久性も良好な真空用ゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、対向配置したハウジング体と、このハウジング体の間に配置され、上下動作とLモーション動作を行う弁体開閉駆動体と、この弁体開閉駆動体の上部に弁体を設けたステムとを備え、各ハウジング体の内部には、シリンダ機構により上下動するピストンロッドと、このピストンロッドの上端にカム溝を有するカム部材を有し、弁体開閉駆動体の両側には、カム溝に摺動可能に案内されるカムローラと支点ローラとを有し、ハウジング体の内側には、支点ローラの上下動作を案内する上下動案内部と弁体開閉駆動体の上昇時に係止するストッパ部とを有し、弁体開閉駆動体の下部と固定側のハウジング体のシリンダヘッドとの間に弁体開閉駆動体を開口ストロークの上端部まで上昇させるためのスプリングを備えた真空用ゲートバルブである。
【0023】
請求項2に係る発明は、シリンダ機構の内部の弁閉側と弁開側には、クッションパッキンとオリフィスから成る減速用のピストンクッション機構が設けられている真空用ゲートバルブである。
【0024】
請求項3に係る発明は、シリンダ機構のカム溝の弁閉側のストッパ部には、クッション用弾性ブッシュが取り付けられ、更に、支点ローラの上下動を案内し上昇時に係止するストッパ部にはローラ受け用弾性ブッシュが取り付けられている真空用ゲートバルブである。
【0025】
請求項4に係る発明は、スプリングの上端は、弁体開閉駆動体の下部凹部面に取り付け、スプリングの下端は、ハウジング体のシリンダヘッドを固定基部とし、このシリンダヘッドに取り付けた真空用ゲートバルブである。
【0026】
請求項5に係る発明は、弁体開閉駆動体の両側とハウジング体の内側に弁開閉動作の上下動作とLモーション動作を案内する動作ガイド機構を備えた真空用ゲートバルブである。
【0027】
請求項6に係る発明は、動作ガイド機構は、ハウジング体に設けた固定側ガイド部材と弁体開閉駆動体に設けた可動側ガイド部材より成る真空用ゲートバルブである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る発明によると、真空用ゲートバルブとしてのアクチュエータ構造を薄型でシンプルに、しかもコンパクト構造にすることができると共に、弁閉状態を確実にかつ安定的に保持することができ、高速動作を可能としたゲートバルブを提供することができる。
【0029】
請求項2又は3に係る発明によると、シリンダ機構の弁閉側と弁開側にピストンクッション機構を設けたので、高速作動時における全開や全閉の際の速度を減速でき、その際の衝撃音や振動等を抑制することが可能となり、しかも、シリンダ機構のカム溝のストッパ部にクッション用弾性ブッシュを取り付け、さらに支点ローラのストッパ部にもローラ受け弾性ブッシュを取り付けたので、高速作動時のLモーション動作の際にカムローラと支点ローラが衝突する金属音等の衝撃音や振動等を極力抑制することが可能となる。
【0030】
請求項4に係る発明によると、弁閉状態において、弁体開閉駆動体の重量やスプリングの荷重がピストンを下降させる方向に作用しないので、弁体締め付けの弾発力により弁閉状態はロックされ、操作エアを排気してもみだりに弁が開くことがない。また、スプリングにより弁体開閉駆動体の上昇を速めるために弁開側より高速作動が可能となると共に、アクチュエータ自体をコンパクトにすることができるばかりでなく、パーティクルの発生をなくすことにも大いに寄与することができる。
【0031】
請求項5又は6に係る発明によると、動作ガイド機構によってさらに安定した状態でLモーション動作が行われるので、パーティクルの発生もなくゲートバルブとしての耐久性やガイド部材としての耐久性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本例のバルブ本体を組み立てた状態における斜視図である。
図2図1における分解斜視図である。
図3】(a)は本例の弁体開閉駆動体の正面図であり(b)は(a)の側面図である。
図4】(a)は、本例のハウジング体を内側面側からみた側面図であり、(b)は(a)のIV-IV線断面図である。
図5】本例のゲートバルブ本体において、ボデーのシール面を開閉する動作を正面から見た縦断面図であり、右側は弁体の全開位置を、左側は弁体の全閉状態を示している。
図6】(a)は、弁体が全開位置の状態の縦断面図であり、(b)は、(a)の状態から弁体が上昇して全閉位置となった状態であり、(c)は、(b)の状態から弁体がLモーション動作してシール面を締め切った全閉状態を示している。
図7】本例において弁体開閉駆動体の動作を案内する上下動作ガイド部及びLモーション動作ガイド部の作用をハウジング体の内側面側から見た模式図であり、(a)は、弁体開閉駆動体が全開位置であり、(b)は、弁体開閉駆動体が全閉位置であり、(c)は、弁体開閉駆動体がLモーション動作して全閉状態の場合を示している。
図8】本発明の他例構造のハウジング体を示した縦断面図であり、(a)は、弁体開閉駆動体の全閉位置の直前附近に対応する位置にピストンが位置した状態であり、(b)は、弁体がLモーション動作する途中に対応する位置にピストンが位置した状態であり、(c)は、ピストンが上死点付近に位置した状態を、それぞれ示している。
図9図8(c)の円Cを拡大した拡大断面図である。
図10】本発明の他例構造のハウジング体を示した一部切欠断面図である。
図11】第2実施形態のバルブ本体を組み立てた状態における斜視図である。
図12図11における分解斜視図である。
図13】(a)は、第2実施形態のハウジング体を内側面側からみた側面図であり、(b)は、(a)のXIII-XIII線断面図である。
図14】第2実施形態のゲートバルブ本体において、ボデーのシール面を開閉する動作を正面からみた縦断面図であり、右側は弁体の全開位置を、左側は弁体の全閉状態を示している。
図15図13、14の円Eを拡大した拡大断面図である。
図16図14の円Fを拡大した拡大断面図である。
図17】第2実施形態の弁体が開口ストロークの上端位置となった状態において図14のX線の位置で弁体を切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明における真空用ゲートバルブの好ましい実施形態(本例と称する。また、「第1実施形態」とも称する。)を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本例において、一対に対向配置されたハウジング体3と、これらの間に配置され弁体25を備えた弁体開閉駆動体2から成る真空用ゲートバルブが、バルブ本体1として組み立てられた状態の外観斜視図である。図2は、図1の分解斜視図であり、図3は、本例の弁体開閉駆動体2において、一部を断面で示した正面図と側面図であり、図4(a)は、本例のハウジング体3を内側面側からみた側面図であり、同図(b)は、(a)におけるIV-IV線断面図である。
【0034】
図1、2に示すように、長尺コラム状に形成された筐体を有するハウジング体3は、左右対称的に構成された2体が、独立した一対として対向配置されており、後述するシリンダ機構9を内部に収納することで、本例の真空用ゲートバルブの駆動機構を構成している。このように、本例の真空用ゲートバルブは、対称構造のハウジング体3を2体用いているので、部品共通化も容易であると共に、これら2体は独立しているから、組立作業も簡易であり、また、駆動機構がバルブ本体1の下側でなく、左右にコンパクトに集積されているから、バルブ本体1を最適に集積できている。
【0035】
図4において、ハウジング体3の内側下部には、ストッパ部7aを有する上下動作案内部7を有している。上下動作案内部は、弁体開閉駆動体の上下動作を案内する機能を有し、ストッパ部は、弁体開閉駆動体の上昇動作を適切な位置において係止する機能を有していれば、それぞれ実施に応じて任意に構成可能である。
【0036】
本例の上下動作案内部7は、一対のハウジング体3の内側両側に、それぞれの対称位置の下端面から、軸心方向に沿って直線状に切り欠き形成された2本の縦溝であり、この溝幅は、後述の支点ローラ6の外径より僅かに大きく、支点ローラ6が僅かな遊嵌状態でほぼ抵抗なく溝内を移動可能となっている。ストッパ部7aは、上下動作案内部7の上端部に、支点ローラ6の外径と同径(円形)状に形成されており、支点ローラ6が係合して後述の弁体開閉駆動体2の上昇動を係止し、その係止状態が適切に維持可能となっている。
【0037】
図4において、ピストンロッド13は、ハウジング体3の内部に収納されており、シリンダ機構9により上下動作する。同図(b)に示すように、ピストンロッド13下端部には、ピストン14がボルトで固着されている。このピストン14の下面と上面には、それぞれ同心状にOリング14a、14bが設けられており、ピストン14の上下面をサポートしていると共に、ピストン14外径側にも摺動シール用のパッキン14cが設けられている。
【0038】
図4において、上下のエア室17、16は、シリンダ機構9の内部空間に確保され、ピストン14の外径と略同径の内径を有する筒状に形成されている。ピストン14の上側エア室17には、ハウジング体3内部に形成されたエア流路18が連通しており、図示していないエア供給源から、後述のシリンダヘッド10を介して圧縮エアを給排可能となっている。同様に、ピストン14の下側エア室16にも、シリンダヘッド10を介して圧縮エアを給排可能となっている。また、上側エア室17の上端には、ピストン軸受15がシール材15aを介して固着されており、ピストンロッド13は、このピストン軸受15にシール材15bを介して挿通している。
【0039】
図4において、カム部材8は、ピストンロッド13の上端部にボルトで固着されており、カム部材8には、長穴状のカム溝12が形成されている。カム部材の材質や形状・大きさ、或はカム溝の形状(長さや傾きなど)は、実施に応じて任意に選択可能であるが、本例のカム部材8はブロック状に形成されてピストンロッド13の軸心方向に平行に固着されており、本例のカム溝12は、後述のカムローラ5の外径より小さい幅に形成されてカムローラ5の移動を適切に係止可能な幅狭部12aを上端部に有しており、カム溝12に嵌合しているカムローラ5が移動してカム溝12からの抜けを確実に係止できると共に、カム部材8(ピストンロッド13)の軸心方向に対して、傾斜方向に向かう傾斜部12bと、平行方向に向かう平坦部12cとが形成され、この平坦部12cがカム溝12の下端部であり、この下端部は、カムローラ5の外径と同径(円形)状に形成された円弧部12dとなっている。なお、幅狭部12aのある上端側がカム溝12の弁閉側であり、その反対側がカム溝12の弁開側である。
【0040】
同図において、カム部材8は、下部にカム受けローラ19(ニードルベアリング)を有しており、このカム受けローラ19は、バルブ本体1の組み立て状態において、ハウジング体3の内面側に向けて設けられている板状のベアリングガイド20と対向して配置され、このベアリングガイド20とカム受けローラ19とが近接対向していることによってカム部材8の上下動作がサポートされる。なお、図示していないが、このカム受けローラ19と同様に、ベアリングガイド20に対向して受けることができる位置に、別のローラ部材(ボールベアリング)を設けてもよい。
【0041】
また、ハウジング体3上端部にも、カム受けローラ23(ニードルベアリング)が設けられており、このカム受けローラ23は、カム部材8が最上部付近まで上昇した際、カム部材8のカム溝12の反対側に凹設されたローラ受け部24に収容可能に配置されている。さらに、カム部材8とピストンロッド13との間には、センサードグ32が設けられており、このセンサードグ32は、図5(左側)に示す上下2カ所に配置された磁気近接センサー32との組み合わせにより、ピストンロッド13の開閉位置を検出可能となっている。
【0042】
図2、3において、弁体開閉駆動体2は、バルブ本体1の中央位置に、左右のハウジング体3の間を、後述するように上下動作及びLモーション動作可能に配置されると共に、両側上部には、一対のカムローラ5が左右対称的に設けられ、両側下部にも、一対の支点ローラ6が左右対称的に設けられている。また、本発明の弾発部材は、弁体開閉駆動体を一定方向に弾発維持可能であれば任意に選択可能であるが、本例ではコイルスプリング4を用いており、このコイルスプリング4は、弁体開閉駆動体2の下部側と、シリンダヘッド10上面側との間に介装され、バルブ本体1の組み立て状態においては、両者を弾発付勢している。
【0043】
また、通常の場合は、このスプリング4は、弁体開閉駆動体2を後述の開口ストロークLの上端部まで上昇させることができるものが用いられる。
【0044】
弁体開閉駆動体2は、本例では、軸心位置の軸着部2dと、平行な2枚の側板部2a、2bから構成された軽量かつ高い剛性を有したフレーム体であると共に、下面側には、スプリング4の上端を受ける下部凹部面2c(スプリング受け部)が設けられ、側面には、後述する一対の可動側ガイド部材22が左右対称的に設けられている。
【0045】
一対のカムローラ5は、側板部2a、2bのほぼ上端位置に左右対称的に突出して設けられ、一対の支点ローラ6も、側板部2a、2bのほぼ下端位置に左右対称的に突出して設けられており、バルブ本体1の組み立て状態(使用時)においては、カムローラ5はカム部材8のカム溝12に嵌合すると共に、支点ローラ6はハウジング体3の上下動作案内部7の溝内に嵌合している。これらは何れも、バルブ本体1の動作に支障を生じないようにそれぞれの溝内を移動可能なローラ部材として構成されていれば、その外径・長さやローラ内部構造などは、実施に応じて任意に選択可能である。
【0046】
図2、3において、弁体開閉駆動体2の上部にはステム28が固定され、このステム28の上端には弁体シール材26を有する矩形状の弁体25を備えている。ステム28の下端部は、図3(a)に示すように、円形状の軸着部2dに係合していると共に、ボルトとガイドによって、後述する弁体25がシール面31を締め切って全閉状態となる際に作用する荷重に対しても容易にガタツキを生じることがない程度に、極めて強固に固着されており、ステム28の上端部には、ホルダ27を介して弁体25が設けられ、この弁体25の片面側には、真空ゲートバルブ用として所定の材質から成る弁体シール材26が、シール面31の開口形状に適合する形状(矩形状)に設けられ、この弁体シール材26は、図5、6に示すシール面31を弁座として密着・離間可能となっている。
【0047】
ゲートバルブとして使用する際は、ステム28の外周側はウェハの搬送空間内と連通するので、所定のベローズシール構造が備えられている。本例では、図3、5に示すように、上下にベローズフランジ29a、29bを備えたベローズ29から成るベローズを用いて、上側のベローズフランジ29aはパッキンを介してボデー33に固着され、下側のベローズフランジ29bもパッキンを介してステム28外周に固着されていることによって、ステム28外周側とバルブ本体1側とを区画している。なお、図示していないが、本例のゲートバルブをドアバルブとして使用する際には、このようなベローズシール構造を有さないバルブとしても容易に構成することができる。
【0048】
図1、2、5において、シリンダヘッド10は、後述する固定側の固定基部として、バルブ本体1の底面側に設けられてバルブ本体1のベース体となっている。シリンダヘッド10の構成は、実施に応じて任意に選択可能であるが、本例では、1枚の薄板状に一体形成され、バルブ本体1の組み立て状態において、一対のハウジング体3の下端部にシール材を介して共通して固着され、かつ、シリンダ機構9に駆動エアを供給可能となっている。図2、5に示すように、本例では、シリンダヘッド10の下面側には、エア流路30aを有するブロック体30がシール材を介して固着されており、このエア流路30aは、図示しないエア供給源と連通して駆動エアを適宜給排可能となっている。なお、図5図14などにおいて、弁体25が上昇する上側がシリンダ機構9の弁閉側であり、弁体25が下降する下側がシリンダ機構9の弁開側である。
【0049】
エア流路30aは、シリンダヘッド10の内側の2つの穴部10aを介して、ハウジング体3内の流路18と連通してシリンダ機構9の一対の上側エア室17と連通していると共に、シリンダヘッド10の外側の2つの穴部10bを介して、シリンダ機構9の一対の下側エア室16と連通している。さらに、シリンダヘッド10の上面側中央位置には、コイルスプリング4の下端を受けるスプリング受け部10cが設けられている。なお、図1、2、5において、矩形板状の押さえフランジ11は、中央位置の円形状の穴部に上側のベローズフランジ29aが挿通しており、四方の角部が、ハウジング体3内側上端部にボルトで固着されている。
【0050】
図1に示すように、組み立て状態における本例のバルブ本体1は、バルブ機能が最適に集積されて余分な容積を持たない薄型でコンパクトに構成され、特にエア供給源をバルブ本体1の下側にコンパクトに集積できるので、バルブ本体1に並列状に他の機器を集積させることも可能となり、可能な限りの小型化が要求される半導体製造装置に好適である。
【0051】
また、図2、3、7において、後述する弁体開閉駆動体2の上下動作とLモーション動作とを案内する動作ガイド機構を備えており、具体的には、それぞれ略一定方向へ保持可能な上下動作ガイド部αとLモーション動作ガイド部βとを備えており、このような機能を有していれば、何れもバルブ本体1へ実施に応じて任意に構成可能である。本例では、図7に示すように、上下動作ガイド部α及びLモーション動作ガイド部βは、ハウジング体3内に設けたリニア状の固定側ガイド部材21と、弁体開閉駆動体2の両側に突出して設けたL字状の可動側ガイド部材22とから構成されている。
【0052】
具体的には、図7において、固定側ガイド部材21は、直線状に形成された側面部21aと、この側面部21aに交差する方向に形成された上端部21bとを有するレール状部材として、ハウジング体3内のベアリングガイド20の反対側に対向して配置されている。可動側ガイド部材22は、2枚の側板部2a、2bの対称位置に一対に固定された略L字状のブロック状部材であり、直線状の側部22aと、この側部22aに交差する方向に形成された段部22bとを有している。
【0053】
本例の上下動作ガイド部αは、固定側ガイド部材21の側面部21aと、可動側ガイド部材22の側部22aとから成り、弁体開閉駆動体2が後述のように上下動作する際には、これら側面部21aと、側部22aとは、僅かな間隙を介して対向するか、或は当接・摺動することにより、弁体開閉駆動体2の略一定角度の姿勢を保持したままの安定した上下動作を可能としている。
【0054】
本例のLモーション動作ガイド部βは、固定側ガイド部材21の上端部21bと、可動側ガイド部材22の段部22bとから成り、弁体開閉駆動体2が後述のようにLモーション動作する際には、これら上端部21bと、段部22bとは、僅かな間隙を介して対向するか、或は当接・摺動することにより、弁体開閉駆動体2に備えられた弁体25がシール面31に対して略垂直方向を保持したままの安定したLモーション動作を可能としている。なお、後述のように、弁体開閉駆動体2が常に上向きに弾発される通常の場合においては、側面部21aと側部22a、及び、上端部21bと段部22bとの間には、それぞれ僅かな間隙が形成されて両者が当接しないように、つまり、通常の場合これらは機能しなくても正常なバルブ動作となるように設定される。
【0055】
次いで、本例のゲートバルブにおいて、弁体25が全開位置から全閉位置まで上昇(上下動作)し、その後、弁体25がLモーション動作してバルブが全閉状態となるまでの作用を説明する。先ず、弁体25の全開位置から全閉位置までの動作は、図5右側から同図左側まで、図6(a)から同図(b)まで、及び図7(a)から同図(b)まで、にそれぞれ対応している。ここで、これらの図面の上下方向に合わせて、弁体25の全開位置(全開状態)とは、バルブ本体1内において、弁体25が最下部となった位置(状態)であり、全閉位置とは、弁体25が最上部となった位置である。これら弁体25の全開位置と全閉位置との間の範囲は、図6に示したシリンダ機構9のピストンストロークL(開口ストローク)に対応している。
【0056】
先ず、バルブを全開状態にするには、ハウジング体3の流路18を介して上側エア室17に圧縮エアを供給してピストン14を押し下げ、図5、6に示すように、下側エア室16の容積がなくなるシリンダの下端位置まで下降させる。この圧縮下降に伴い、スプリング4によって下方から上方へ向けて弾発されている弁体開閉駆動体2も全開位置まで下降する。
【0057】
ここで、本発明の弁体開閉駆動体は、固定側の固定基部を起点に弾発部材によって一方向に向けた弾発状態となっている。固定側の固定基部とは、外部に対して静止した状態にある本発明のバルブに対して動作(駆動)することがない部材であり、例えばハウジング体3や、上部の押さえフランジ11、下部のシリンダヘッド10、或は、図示していないバルブ本体1の筐体などが含まれる一方で、本例では少なくとも、使用の際にシリンダ機構9の上下動作と一体的に動作するカム部材8やピストンロッド13は含まれない。本例では、前述したように、シリンダヘッド10(スプリング受け部10c)を固定基部とし、このスプリング受け部10cを起点として、スプリング4上端部が弁体開閉駆動体2の下部凹部面2cを上方向に弾発させた状態となっている。
【0058】
弁体開閉駆動体2を弾発する弾発部材は、少なくともバルブの開閉に伴って上下動作するピストンロッド13に無関係な弾発状態で配置される。可動する部材からの弾発でなく、固定されている部材側を、弾発の一端となる起点とすることによって、付勢される他端となる弁体開閉駆動体2の動作と、この動作に対する弾発力の追従性が最適となり、よって、シリンダ機構を高速化しても、弁体開閉駆動体2、即ち弁体動作の安定性を確保できる。特に、従来技術(特許文献3)のように、弾発部材であるスプリングがスプリング受け部(弁体開閉駆動体)下面側とピストンロッドの肩部との間に配置されていないから、ピストンロッドが、弁体をLモーション動作させるストローク範囲であってもスプリングを圧縮させる必要がないので、弁体を閉じている間もシリンダのロック機構は必須ではなくなり、よって、バルブの構造を簡素化できると共に、カム部材のカム溝を適宜長く形成することも可能となり、よって、弁体のLモーション動作速度を適宜緩和させることも可能となる。
【0059】
このように、弁体を備えた弁体開閉駆動体を、固定基部を起点とした弾発状態とすることにより、駆動部材を起点に弾発させている従来技術に比して、駆動に伴う慣性によって弾発部材(スプリング)に余計な伸縮力が作用することがなく、一端を固定側とした常に安定した追従性の良い弾発力を与えることができ、よって、弁体の動作(上下動作やLモーション動作)が、弁体の駆動力によって余計に乱されることがなく、弁体の動作の安定化と共に駆動力の節約にもつながると共に、弾発部材の伸縮量も必要最小限に抑えてバルブの耐久性も増し、寿命の向上にも寄与する。また、弾発部材をコンパクトにバルブ本体内部に設けて簡素に弁体開閉駆動体の弾発状態を実現できると共に、容易な部品交換やメンテナンスなど、この弾発状態の調整や維持管理も容易となる。
【0060】
また、この弁体25の全開位置においては、図6(a)に示すように、弁体25とステム28、及び弁体開閉駆動体2は、同図上下方向(すなわち、シール面31に平行な方向)に対して僅かに傾斜(傾斜角度θ=0.2~0.3程度)した傾斜姿勢に保持されている。具体的には、この位置において弁体開閉駆動体2は下側から上に向けて弾発状態であり、この弾発による上昇力は、ほぼそのまま、最下部に位置しているピストンロッド13に固着されたカム部材8のカム溝12に嵌合しているカムローラ5が、カム溝12上端部の幅狭部12aに対し、係合しようとする力となっており、この幅狭部12aで弁体開閉駆動体2の上昇力が受け止められている。
【0061】
一方、このカムローラ5の幅狭部12aへの係合により、上部の一点部位で支持されているので、弁体開閉駆動体2は、この上部を中心に回転し得るが、この回転は、下部の支点ローラ6がハウジング体3の上下動作案内部7の溝内に嵌合していることで、係止される。上記のように、上下動作案内部7の溝幅と支点ローラ6の外径とはほぼ一致しているので、この全開位置においては、弁体開閉駆動体2は、ほぼガタつくことなく上下2点(カムローラ5と支点ローラ6)で支持された状態で、安定した上記傾斜姿勢が保持される。なお、図示していないが、この全開位置ではスプリング4が最も圧縮された状態なので、この状態にピストン14の位置を安定して保持できるようにするため、シリンダ機構9に適宜ロック機構を設けるようにしてもよい。
【0062】
続いて、全開位置から、上下のエア室16、17を適宜差圧調整することによって(より具体的には、上側エア室17の圧縮エアをエア排出により適宜減圧させていくことによって)、スプリング4の弾発力を開放させていくことにより、弁体開閉駆動体2を上昇させることができる。このエア圧の調整は、実施に応じて任意に可能であると共に、この調整によって、弁体開閉駆動体2の上昇速度も適宜設定可能となっている。
【0063】
通常の場合は、前述のように、弁体25の全開位置と全閉位置との間で、常にスプリング4の弾発力は途切れることがなく弁体開閉駆動体2を上向きに弾発した状態が保たれるように設定されるので、この弾発力の作用の下、Lストローク範囲内で、常にカムローラ5の幅狭部12aへの係合と、支点ローラ6の上下動作案内部7の溝幅内への(回転)係合が維持されるので、弁体開閉駆動体2とステム28及び弁体25の上記傾斜姿勢は常に安定して維持される。なお、上下動作ガイド部αに関し、弁体開閉駆動体2の傾斜姿勢が常に安定していれば、上記のように、この姿勢が維持される限り側面部21aと側部22aとは当接・摺動することがない。
【0064】
また、Lストローク範囲内で、スプリング4の上向きの弾発力が途切れてしまう場合も起こりうる。例えば、動作速度や弁体開閉駆動体2(弁体25)の重量(慣性)、或はピストン14のパッキン14cの摺動や支点ローラ6の摺動の影響などにより、カムローラ5(弁体開閉駆動体2)の上昇速度が、カム部材8(ピストンロッド13)の上昇速度より遅れることで、瞬間的ではあるが、カムローラ5が幅狭部12aへの係合から外れて、上昇の途中位置でカム溝12内を下降(カム作動)してしまう場合が起こりうる。ただし、瞬間的に離間するに過ぎない場合は、スプリング4の弾発力によって、直ちにカムローラ5の係合状態が回復するから、バルブ動作の正常な動作が損なわれることはない。
【0065】
逆に、上記のように上昇して全閉位置となった弁体25が、再び下降して全開位置となる作用は、基本的に上記の逆の動作となる。よって、弁体開閉駆動体2は、弾発部材(スプリング4)による弾発状態で、支点ローラ6が上下動作案内部7によって案内されることにより、ピストンロッド13の上下動作と一体的に上下動作可能であり、この上下動作によって、弁体25が全開位置と全閉位置との間を動作できる。
【0066】
次いで、本例のゲートバルブにおいて、開口ストロークの上端部である全閉位置まで動作した弁体25が、Lモーション動作(振り子動作)することにより、弁体シール材26がシール面31を略平行状態のまま押圧して、バルブの全閉状態となるまでの作用を説明する。図5左側(弁体25の高さ)、図6(b)から同図(c)まで、及び図7(b)から同図(c)まで、にそれぞれ対応している。ここで、弁体25がLモーション動作する範囲は、図6に示したシリンダ機構9のピストンストロークL(Lモーション動作ストローク)に対応している。なお、図6には、開口ストロークとLモーション動作ストロークの和(L+L)である全ストロークLを示している。
【0067】
上記のように、支点ローラ6の上昇がストッパ部7aに係止された状態となった後も、カム部材8(ピストンロッド13)は上昇を続ける。なお、支点ローラ6がストッパ部7aに係合した時点で、スプリング4は弁体開閉駆動体2を上方向へ移動させることはできなくなるので、これ以降ピストンロッド13を上昇させるには、下側エア室16へ圧縮エアを供給していく必要がある。このような上下のエア室16、17の差圧調整を適切に行うことにより、必要な速度で連続的に弁体25の上下動作を行うことができる。
【0068】
図6において、通常の場合、すなわち、スプリング4による上方向への弾発が適切に保たれている場合は、この弾発力によって、支点ローラ6のストッパ部7aへの係合状態も適切に保たれ、弁体開閉駆動体2の位置(高さ)もこの位置に維持され、また、カム溝12(ピストンロッド13)がさらに上昇を続けても、上記のようにカム部材8側は同図左右方向への動作がほぼ皆無となっている。一方で、上下2点で姿勢が維持されていた弁体開閉駆動体2は、下部の支点ローラ6はストッパ部7aに係合して上方向と左右方向への動作が係止されているが、上部のカムローラ5は左右方向への移動が自由な状態であるから、カムローラ5は、カム溝12に反力と摩擦力を与えながら下降(移動)していくことになる。
【0069】
この際、カム溝12に沿って下降していくカムローラ5は、傾斜部12bに沿って動作していくことになるので、図6において、ストッパ部7aに動作が係止されている下部の支点ローラ6を支点として、この傾斜部12bの傾斜分だけ、同図横方向にカムローラ5側(弁体開閉駆動体2側)が傾動しなければならない。したがって、少なくとも傾斜部12bをカムローラ5が移動している間は、弁体25とステム28と弁体開閉駆動体2は、全体として、同図下部の支点ローラ6を支点とし、カム溝12から傾動力を受けるカムローラ5を力点とし、上端の弁体25を作用点として、Lモーション動作していくことになる。このLモーション動作の振り幅(角度)や速度は、少なくとも、カム溝12の長さや傾きなどの形状設計によって調整できる。
【0070】
また、このLモーション動作は、図6(c)に示すように、下側エア室16に圧縮エアの供給を続けてピストン14を押し上げ、上側エア室17の容積がなくなるシリンダの上端位置まで上昇させるまで継続する。この間、カムローラ5は、傾斜部12bを経て平坦部12cに達し、この平坦部12c領域内で(或は、円弧部12dとの係合により)移動が停止し、弁体25が全閉状態となる。なお、弁体25のLモーション動作とカム溝12の位置関係は、カムローラ5が傾斜部12bの途中に位置している場合に、弁体シール材26がシール面31に当接するように設定してもよく、或は、傾斜部12bと平坦部12cの境界位置で弁体シール材26がシール面31に当接するように設定してもよく、適宜に設定できる。
【0071】
より具体的には、カムローラ5が、傾斜部12bの途中位置で弁体シール材26がシール面31に当接するように弁体25の傾動を設定しておけば、ピストンストロークLの中間位置を、このシール面31当接位置に対応させることができ、よって、さらにカムローラ5を残りの傾斜部12bと平坦部12c(残りのピストンストロークL)範囲を移動させることができる。この場合、弁体25がシール面31に当接した状態から、さらにLモーション動作力(傾動による押し付け力)を与えてシール面31を押圧させるための締め付け代を、十分に確保できるようになるので、好適である。なお、平坦部12cの領域ではカムローラ5が移動しても弁体25はほぼLモーション動作せず、主に、この平坦部12cの領域は、弁体シール材26のシール面31への押圧状態を維持するロック領域として機能する。
【0072】
なお、カムローラ5がカム溝12(傾斜部12b)を移動している間、カム溝12側は、少なくとも、カムローラ5側に傾動力を与える反作用を受け、この反作用は水平方向成分が大きいから、カム部材8はハウジング体3内壁方向へ押し返されて僅かに位置ずれし得るが、上記のようにカム受けローラ19とベアリングガイド20が対向配置されているから、上下動作しながらも、カム部材8のこのような位置ずれを適切にサポートできる。
【0073】
さらに、弁体開閉駆動体2が上昇していく際に、たとえスプリング4の上方への弾発力が失われ、よってカムローラ5が自重によって幅狭部12aの係合から外れたとしても、上下動作ガイド部αの機能の発揮により、直ちに弁体開閉駆動体2の傾動が係止され、したがって弁体開閉駆動体2の傾斜姿勢は、ほぼスプリング4の弾発がある通常の場合と同様に確保される。また、この状態で弁体開閉駆動体2が全閉位置となった場合、バルブ本体1内における上端部21bの高さ位置は、段部22bの高さ位置とほぼ同じか僅かに低い位置であるから、段部22bが上端部21bの高さに到達した時点で、傾動しようとする側部22aの係止が解除されて上端部21bに乗り上げるように突出して係合し、この傾動の解除に伴い、カムローラ5はカム溝12内を移動可能となる。よって、Lモーション動作ガイド部βの機能の発揮により、弁体25のLモーション動作も、ほぼスプリング4の弾発がある通常の場合と同様に確保される。
【0074】
したがって、本発明のバルブは、通常の場合はもとより、上下動作ガイド部α及びLモーション動作ガイド部βの機能の発揮により、上記のような通常でない場合、例えば、弁体開閉駆動体2の重量と加速度の荷重を加えたスプリング荷重以下に設定していても、確実に弁体開閉駆動体2のLモーション動作が担保されるようになっている。また、上下動作ガイド部α及びLモーション動作ガイド部βは、通常は機能しない部位なので、保持部材としての耐久性も良好である。
【0075】
よって、何れの場合であっても、上下動作の間に高価な弁体シール材26がボデー33などの他の部材に接触・衝突して損傷などするおそれがないと共に、弁体開閉駆動体2がLモーション動作する際の弁体25のシール面31に対する当接姿勢・角度も適切に保持できるから、弁体シール材26がシール面31に着座・離座する際に捩れや擦れ、摺動の発生を抑制することができ、よって確実なバルブの低パーティクル性を担保できる。
【0076】
以上のように、カム機構を利用して弁体を振り子状に振って弁を閉じるLモーション動作(J動作)型のゲートバルブにおいて、多くの従来技術では、弁体とこれを備えた上下動作部材のLモーション動作の支点位置は、弁体に近い中間位置となっているが、本発明のバルブは、弁体から最も離れた下端位置に設けられている。ここで、弁体がLモーション動作して弁を閉じる前に、弁体とシール面との間に必要な距離が同じ場合、Lモーション動作の支点が弁体に近いほど、ステムに必要となるLモーション動作角度は大きくなる。Lモーション動作角度が大きいほど、全閉(締め付け)時の弁体とシール面との傾きが大きくなり、よって、弁体シール材とシール面との捩れ・擦れが増して低パーティクル性が阻害されるが、本発明のバルブは、Lモーション動作支点が弁体から最も離れて位置しているから、少なくともこのような構造的な意味で、低パーティクル性に最も好適であると言える。
【0077】
また、弁体25の全閉状態においては、上記のように弁体25はシール面31を締め付けているので、弁体25にはシール面31から、このシール面31にほぼ垂直方向に反力を受けた状態となる。特に、弁体シール材26の弾性反発力が大きい場合は、この反力が顕著となる。図6(c)に示した全閉状態で言えば、弁体25はほぼ同図右方向の反力を受けているのに対し、カムローラ5は、カム溝12の平坦部12cからほぼ同図左方向の反力を受けている。よって、弁体25と弁体開閉駆動体2とは、全体が一体的に上下で左右方向の力を受けた状態で拘束されている。さらに、通常の場合は、弁体開閉駆動体2は、下部凹部面2cからも上方向への弾発力をスプリング4から受けている。
【0078】
このため、本例のバルブは、全閉状態において、弁体開閉駆動体2には、下降力がほとんど生じないので、シリンダ機構9から圧縮エアを排出して駆動力を解除することもできる。よって、本例のバルブは、全閉状態において、弁体25の下降を防ぐロック機構を備える必要がなく、このため、バルブを簡素に構成することができると共に、全閉状態を維持するための駆動源も省略可能になる。
【0079】
さらに、この全閉状態においては、上記のように、弁体25とカムローラ5には、左右方向から逆方向の反力を受けているから、少なくとも弁体開閉駆動体2とステム28には、撓み力が作用しているが、弁体開閉駆動体2を、その材質や形状を問わず、少なくともこの全閉状態の締め付け力程度の力が作用しても、ほとんど撓むことがない程度の高い剛性を発揮するように構成しておけば、全体の撓みを低減できるので、この分、弁体25の傾きを低減できる。この場合は、全閉状態において、弁体シール材26とシール面31との傾斜や捩れ・擦れを低減できるから、バルブの低パーティクル性に更に好適である。
【0080】
よって、弁体開閉駆動体2は、スプリング4による弾発状態のまま、支点ローラ6がストッパ部7aへの係止状態が保たれたままカムローラ5がカム溝12内を移動することにより、支点ローラ6を支点、カムローラ5を力点としてLモーション動作(振り子動作)し、このLモーション動作によって弁体シール材26が作用点となってシール面31を押圧している。
【0081】
また、両側2つのハウジング体3は、左右対称構造であり、かつ、これら2体を同期させるような連結体を備えておらず、互いに独立に備えられているから、バルブの簡素化に加えて、組み立て作業の容易化にも寄与している。左右2体のハウジング体3に対する駆動エア吸排の同期は、操作エア配管流路の長さなどを同一に設定することにより、両者をほぼ同時期にエア吸排させるシンプルな構成となっている。
【0082】
上記全閉状態から、全開状態までバルブを開く際の動作は、基本的には上記全開位置から全閉状態までの動作の逆となる。特に、全閉状態では弁体シール材26がシール面31に押圧されて締め切られているから、バルブを開く際には、密着状態を引き剥がすように弁体25をシール面から離間させる必要がある場合がある。このような場合、本発明のLモーション動作ガイド部βが以下のように適切に機能する。
【0083】
すなわち、バルブを開く際には、カム作動(カムローラ5のカム溝12内の移動)のみによって弁体25をLモーション動作させるので、例えば弁体シール材26がシール面31に不均一に粘着している場合は弁体25にも不均一な力が作用し、カム作動のみでは弁体25がシール面31と平行を保ったまま剥がれ難くなり、とりわけ弁体25を下降させる力が働き易くなる。このため、弁体シール材26とシール面31との間に余計な捩れ・擦れが生じたり、或は、弁体シール材26が破壊されるおそれもあった。
【0084】
これに対して、本発明のバルブにおいては、弁体シール材26をシール面31から引き剥がす際に、弁体25を下降させる力が生じても、Lモーション動作ガイド部βにより、弁体開閉駆動体2(弁体25)は、少なくとも下方向への動作は直ちに係止される。また、弁体25はシール面31から略平行を保って離間し易くもなる。少なくとも、弁体25が下がることにより弁体25とシール面31との間に捩れ・擦れが生じるおそれはない。
【0085】
さらに、本発明のバルブは通常、弁体開閉駆動体2が常にバルブを閉じる方向(上方向)に弾発されているから、シリンダ機構9の弁閉方向(上昇方向)への駆動力を、この弾発部材(スプリング4)がサポートできる。よって、弁閉動作速度を適切に上げることができると共に、上記のように、全閉状態のシール力もサポートでき、弁閉状態を維持するためのロック機構も省略可能となる。
【0086】
さらに、本発明のバルブでは、上記動作ガイド機構をバルブに備えることにより、たとえスプリング4の弾発力が失われた場合であっても、弁体開閉駆動体2の上下動作とLモーション動作を確保することができるから、この観点から見れば、弾発部材(スプリング4)や固定基部(シリンダヘッド10)を有さないバルブとして構成することも可能である。すなわち、スプリング4やシリンダヘッド10を有しておらず、弁体開閉駆動体2と、シリンダ機構9を備えたハウジング体3とから上記同様に構成された真空用ゲートバルブを得ることも可能である。
【0087】
続いて、本発明の第1実施形態の他例構造を説明する。図8は、この他例構造である別のシリンダ機構9の断面図を、図9は、図8(c)における円C内を拡大した拡大断面図を、図10は、他例構造のハウジング体46の一部切欠断面図を、それぞれ示している。
【0088】
前述の本例のバルブにおいて、全開位置から全閉位置まで、弁体25が上昇する速度を上げ過ぎた場合には、支点ローラ6がストッパ部7aに衝突する際に、この衝突による衝撃が大きくなり過ぎてバルブ本体1やボデー33に振動が生じる場合があった。また、同様に、弁体25をLモーション動作させる速度を上げ過ぎた場合にも、弁体シール材26がシール面31に着座する際に、この着座による衝撃が大きくなりすぎて弁体シール材26が損傷したりパーティクルを生じる場合があった。これに対して、全ストロークLにおけるバルブの平均開閉速度を適切に高速に維持しながらも、このような課題に対応するためには、少なくとも支点ローラ6がストッパ部7aに当たる前後と、弁体シール材26がシール面31に当たる前後において、適切に動作を減速させる必要がある。
【0089】
このため、以下の他例構造では、上下動作において、弁体開閉駆動体2の支点ローラ6がストッパ部7aに当たる動作と、Lモーション動作において、弁体25がシール面31に当たる動作と、を緩和できる緩和機構を備えている。図8に示した他例のバルブでは、この緩和機構は、カム溝44の長さをピストンロッド36のLモーション動作ストロークLが全ストロークLの25~35%となるように形成したカム部材37、シリンダ機構35内のピストン45に設けたピストンクッション機構γ、又はピストンロッド36のピストン軸受38に設けたオリフィス41、の何れか1つ又はこれらの任意の組み合わせから成る。なお、この緩和機構以外の他例構造は、前述した第1実施形態のバルブの構造と同様に構成されている。
【0090】
他例のカム部材37では、ピストンロッド36のLモーション動作ストロークLが全ストロークLの25~35%となるように、カム溝44の長さを調整している。前述の本例のバルブと同様に、他例のバルブにおいても、図示しないカムローラが幅狭部との係合から解除されてカム溝44内を溝に嵌合しながら移動し、カム溝44の下端の円弧部と係合して全閉状態となるまでが、Lモーション動作ストロークLとなる場合には、カム溝44の全長が、ほぼそのままピストンロッド36がLモーション動作ストロークLの高さ分に対応することになるから、カム溝44の長さを適宜調整することにより、容易にLモーション動作ストロークLが全ストロークLの25~35%となるように設定することができる。
【0091】
例えば、ピストンロッド36のLモーション動作ストロークLが、全ストロークLの16%程度と短く設定された場合には、Lストロークの動作速度はLストロークの動作速度より1/5程度に減速されたが、上記のように25~35%程度に長く設定した場合は、弁体のLモーション動作速度をさらに1/8~1/12程度(短く設定された前述の場合と比較して1.6~2.4倍)まで減速させることができる。このように長く設定した場合は、例えば全開状態から全閉状態までの動作速度を、0.8~1.0秒から0.4~0.5秒程度まで高速化したとしても、弁体がシール面に衝突する際の振動は、カム溝の長さ調整を施していない従来のゲートバルブにおける衝突振動と同程度に抑えられることが確認されている。
【0092】
さらに、カム溝44(カム部材37の高さ方向)の長さを長くすることに伴って、カム部材37による弁体のLモーション動作力(弁体がシール面を押圧する締付力)を、適切に高めることも可能となる。このため、必要な締付力が同じ場合、必要なシリンダ機構35の駆動力が小さくなるので、ピストン45の径を小型化でき、よって、バルブ本体を更にコンパクトな薄型に構成することも可能となる。
【0093】
次に、図8、9に示すように、他例のバルブは、シリンダ機構35内の緩和機構として、ピストンロッド36内のピストン45に設けたピストンクッション機構γと、ピストンロッド36のピストン軸受38に設けたオリフィス41とを備えている。ただし、これらの構造以外は、前述の本例のバルブと同様に構成されている。
【0094】
図8、9において、他例のピストン軸受38は、上側エア室42の内周上端にシール材を介して固着され、ピストンロッド36は、このピストン軸受38の挿通部38cにシール材を介して軸支されているが、この挿通部38cの同図下側には、内径が拡径された拡径部38aが形成され、ピストンロッド36外周面との間に隙間が確保されている。また、ピストン軸受38内部には、上側エア室42と連通するハウジング体46内の流路(不図示)と連通可能に、エア流路38bが形成されており、このエア流路38bは、拡径部38a内に繋がっている。
【0095】
図8、9において、ピストンクッション機構γは、クッションパッキン39と、ロッド挿入部40との組み合わせより成る。クッションパッキン39はVパッキン又はUリングであり、他例のピストン軸受38の拡径部38aの開口側に谷側をピストン45に向けて設けられている。この他例構造では、図9に示すように、クッションパッキン39の外径側は断面L字形状の金具に固着されており、このクッションパッキン39をピストン軸受38の拡径部38aの開口部に固定する際は、この金具と一体的に開口部へ向けて圧入固定される。
【0096】
また、ロッド挿入部40は、ボルトを挿通して固着されているピストンロッド36を被覆するように、ピストン45の一部を延設した筒状部分であり、ピストン45側には薄肉状に括れた小径部40b(ニゲ部)が形成され、この小径部40bに続いて小径部40bに対して僅かに一定厚肉状に形成された大径部40aが形成されている。
【0097】
図8、9において、オリフィス41は、上側エア室42内とピストン軸受38内部のエア流路38bとを繋ぐエア流路として、所定の細径でピストン軸受38下部側に設けられている。
【0098】
次いで、他例のバルブにおいて、緩和機構によって全開位置から全閉状態までの間にバルブの動作速度が緩和される作用を説明する。なお、ゲートバルブとしての全開と全閉との間の作用(弁開閉動作)は、前述の本例のバルブと同様である。
【0099】
図8(a)は、他例のバルブにおいて、ピストンロッド36が、図示しない支点ローラがストッパ部に当たる直前の位置にある状態(ピストン45が開口ストロークLの上端位置より僅かに下の位置)を示したシリンダ機構35の断面図であり、ピストン45が下端部にある全開位置から同図(a)に示す位置までは、本例のバルブに比べて高速でピストンロッド36を上昇させている。
【0100】
次に、図8(b)は、同図(a)からピストンロッド36がさらに上昇し、ロッド挿入部40の大径部40aが、クッションパッキン39と摺動している状態を示しており、この状態は、図示しない弁体がシール面に向かってLモーション動作している途中に対応する。ピストンクッション機構γの機能の発揮、すなわち、大径部40aとクッションパッキン39との摺動によって、同じ駆動力であってもピストンロッド36の上昇速度を減少させることができる。そして、大径部40aがクッションパッキン39を通過した後は、クッションパッキン39は小径部40bに抜けるが、小径部40bはクッションパッキン39とほぼ接触しないように設定されているので、ピストンロッド36の上昇速度は再び増加することになる。
【0101】
ピストンクッション機構γの構成、すなわち、クッションパッキン39の種類や特性、或は、大径部40aの外径や長さなどは、実施に応じて任意に設定可能であるが、同図の他例のバルブでは、大径部40aとクッションパッキン39とが摺動するピストンロッド36のストローク(減速ストローク)には、開口ストロークの上端位置である支点ローラがストッパ部に当たる位置(係止ポイント)と、Lモーション動作ストロークの中間位置である弁体がシール面に当たる位置(弁体当接ポイント)とを、それぞれ含めるように設定している。すなわち、図6で説明すると、L1の上端位置が係止ポイントであり、L2の途中位置に弁体当接ポイントが存在するが、減速ストロークは、これら2点をカバーするように設定されている。このように設定すれば、ピストンクッション機構γの緩衝作用により、何れのポイントにおいても、動作を適切に減速することができる。
【0102】
次に、図8(c)、9は、同図(b)に続いて、クッションパッキン39が小径部40bへ抜けた後に再び高速動作に戻って上昇し、ピストン45が上端位置に到達してバルブが全閉状態に至った状態を示している。上記のように、減速ストロークに弁体当接ポイントが含まれるので、同図(b)から(c)までの動作は、概ね弁体がシール面に当たった後に、シール面を押圧させるためのストロークに対応している。このように、図8(a)~(c)までの一連の動作は、高速から減速、減速から再び高速に動作し、いわば3段変速動作となっている。本来はバルブ動作の高速化が主目的であって、減速緩和は衝突や振動に対する手当てに過ぎないから、減速は最小限に抑える必要があるが、上記のような簡易なピストンクッション機構γの導入により、必要な範囲に対して容易に最低限の減速動作を導入又は調整することができ、減速時間の適切な低減を達成できる。
【0103】
また、オリフィス41に関しては、図8(b)、9に示すように、上側エア室42内のエアは、ピストンロッド36が上昇している間は圧縮されるから、エア流路38bを介して適切に排出されなければならないが、クッションパッキン39がピストンロッド36の外周面に接触・摺動しており、しかもVパッキン39の谷側が上側エア室42に向いているから、この谷側にエア圧が作用するとさらにVパッキン39とピストンロッド36との接触が強まり、よって、これらの間をエアはほぼ連通できず、エア流路38bの拡径部38a側の開口からはエアはほぼ排出されない。
【0104】
このため、上側エア室42のエアは、オリフィス41へ流入することになるが、このオリフィス41は、所定の細径に形成されてエアの排出を絞っている。よって、オリフィス41は、ピストンロッド36上昇の際に、上側エア室42のエアの排出を適宜緩和することができる。この緩和によって、上側エア室42の内圧の減圧速度が適切に緩和され、よって、ピストンロッド36の上昇速度の緩和に寄与できる。
【0105】
なお、ピストンクッション機構γの機能が発揮されない間、つまり、小径部40bがクッションパッキン39と対向する位置にある間は、クッションパッキン39とピストンロッド36外周面との間には隙間が生じるようになっているから、この隙間を通って、上側エア室42のエアは、ピストンロッド36の上昇時に排出されるので、この間は、オリフィス41の緩和機能は働かないようになっている。
【0106】
さらに、全閉状態から全開位置まで、すなわち、全ストロークLの上端位置から下端位置までの間は、上記のピストンクッション機構γやオリフィス41による緩和機能は働かないようになっている。特にピストンクッション機構γに関しては、クッションパッキン39は、山側を上側(挿通部38c側)に向けて装着されているから、弁を開く際にピストンロッド36が下降して大径部40aがクッションパッキン39と接触しても、ピストンロッド36の動作を妨げる摺動力はほとんど生じず、また、エアもスムーズに通過することができ、よって、全ストロークの間上端から下端位置までスムーズに下降することができる。
【0107】
以上のように、他例構造では、簡易な構成の組み合わせのみで構成された緩和機構を備えることによって、支点ローラがストッパ部に衝突する際の衝撃や、弁体シール材がシール面に衝突する際の衝撃を適切に緩和させることができ、バルブ開閉の際の振動や弁体シール材からのパーティクルの発生を抑制することができると共に、バルブの開閉速度も適宜高速化させることができる。また、バルブストロークの範囲、すなわち、緩和対象となる各動作に応じて、適切な緩和機構として選択することができる。なお、弁体を揺動(振り子動作)させるLモーション動作は、カム溝を長く設けるだけでも減速させることができるが、上述したように、カム溝を長くする手段を採らなくても(他の緩和手段によっても)、適切に減速させることができることは勿論であって、この場合は、バルブのサイズも適切にコンパクトに抑えることが可能である。
【0108】
図10は、上記他例構造のハウジング体46の内側面下部を拡大した一部切欠断面である。同図では、点線で示した他例構造における支点ローラ49の上昇を係止するストッパ部48aとして、クッションパッド48を用いたクッション構造により、支点ローラ49のストッパ部48aへの衝突を緩和するようにしている。このクッション構造も、上記の緩和機構に適宜含めてバルブを構成してもよい。
【0109】
具体的には、他例の上下動作案内部47の上端部位に、ボルト50aでブッシュ50をハウジング体46に固着し、このブッシュ50に、ボルト48bでクッションパッド48を固着して、前記クッション構造が設けられる。クッションパッド48の下端面48aは、支点ローラ49の上昇を係止するストッパ部48aとなる。同図には、上死点位置で上昇が係止された状態の支点ローラ49を示しており、この支点ローラ49との係合により、ストッパ部48aは、やや円弧状に弾性変形して支点ローラ49を受け止めている。このような弾性変形により、支点ローラ49のストッパ部48aとの衝突が緩和される。
【0110】
続いて、図11~17において、本発明の第2実施形態を以下詳述する。この第2実施形態は、上記第1実施形態の改良形態であり、基本的な構造や作用は共通するため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。図11は、図1と同様に、第2実施形態のバルブ本体1の組み立て状態の斜視図であり、図12も、図2と同様に、図11の分解斜視図である。
【0111】
第2実施形態は、図8~10(第1実施形態の他例構造)において述べた第1実施形態の緩和機構と同様の観点で改良している。すなわち、弁体25の高速な開閉動作において顕著となる衝撃音や振動をさらに低減するための改良を第1実施形態に施したものが第2実施形態であり、第2実施形態の緩和機構は、弁体25の昇降動において、支点ローラ6のローラ受け用弾性ブッシュ48(ストッパ部7aのクッションパッド48)に対する衝突に加え、この逆の動作、つまりカム溝12上端のストッパ部(幅狭部12a)とカムローラ5との衝突を緩衝すると共に、Lモーション動作において、弁体25がシール面31に当たる動作、つまり全閉の際にピストン14のピストン軸受15に対する接近に加え、逆に、全開の際にピストン14のシリンダヘッド10に対する接近を緩和できるように構成している。
【0112】
具体的には、先ず、図10に示したクッション構造(第1実施形態の他例構造)と同様のクッション構造を設けた。このクッション構造により、上下動案内部7が短くなるため、必要な開口ストロークを確保するため、図11、12に示すように、第2実施形態のバルブ本体1は、図1、2に示した第1実施形態のバルブ本体1に比較して、全体がやや縦長に設けられる。勿論、部材の寸法・形状の変更は、実施に応じて適宜選択可能である。また、カム部材8のカム溝12の寸法・形状を適宜変更すると共に、このカム溝12のカムローラ5が係合する位置に、ゴム又は樹脂から成るブッシュ12eを設けた。さらに、シリンダ機構9には、第1実施形態と異なるピストンクッション機構δを、シリンダ機構9のストロークの両端側に2つ備えた。このピストンクッション機構δは、クッションパッキン39とオリフィス41(10d)によりピストン14の昇降動を減速するように構成される。
【0113】
先ず、図12、13において、上下動案内部7のストッパ部7aの位置には、クッション構造(ローラ受け用弾性ブッシュ48)を設けている。図12、13に示した第2実施形態のクッション構造は、図10に示したクッション構造と実質的に同一の構造と作用を有するため、同一部分には図10におけるものと同一符号を付してその説明は省略する。ただし、本発明のクッション構造は、この構造に限られず、上昇する支点ローラ6の動作を適切に緩衝できる構造を適宜選択できる。
【0114】
次に、図12、13に示すように、第2実施形態のカム部材8のカム溝12には、クッション用弾性ブッシュ12eを設けており、ブッシュ12eを緩衝部材として用いている。特に、弁体25が全閉位置にある状態において、カムローラ5が幅狭部(ストッパ部)12aに係合していない状態から、カム部材8(ピストンロッド13)が下降してカムローラ5が幅狭部12aに係合する際(Lモーション動作ストロークから開口ストロークに移行する際)、カム溝12の上端部にカムローラ5が衝突するが、この衝突を緩衝できる位置にブッシュ12eを埋設している。具体的には、図13(a)に示すように、幅狭部12aと傾斜部12bとが繋がる断面円弧状の曲面部分に設けており、開口ストロークにおいて、カムローラ5がカム溝12に係合により与える押圧力も緩和できる位置に設けている。カム部材8のその他の構造は、第1実施形態の構造と実質的に同一である。
【0115】
続いて、シリンダ機構9内の緩和機構としてクッションパッキン39とオリフィス41でピストン14を減速させるピストンクッション機構δ、δを備えている。図15は、全閉する際にピストン14の動作を緩和するピストンクッション機構δの部分拡大断面図を示しており、図13(b)、14の円E内の範囲を示している。なお、このピストンクッション機構δは、図9に示した第1実施形態の他例構造のピストンクッション機構γと基本的な構造や作用は共通するため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0116】
図15において、ピストン軸受15は、上側エア室17の上端内周面にシール材(Oリング15a)を介して固着され、ピストンロッド13は、このピストン軸受15の中心に開口した挿通部にシール材(環状Vパッキン)などの軸受部材を介して軸支されているが、この挿通部の同図下側には、内径が拡径された拡径部15cが形成され、ピストンロッド13外周面との間に環状の隙間が確保されており、後述するピストン14のロッド挿入部14dが挿入可能となっている。また、ピストン軸受15内部には、上側エア室17と連通するハウジング体3内の流路18と連通可能に、エア流路15dが形成され、このエア流路15dは、拡径部15c内に繋がっている。
【0117】
図15において、ピストンクッション機構δは、少なくともクッションパッキン39と、ロッド挿入部14dとから成り、さらにオリフィス41も含む。また、第2実施形態のピストン14は、図4(b)に示した第1実施形態のピストン14と異なり、上面と下面のOリング14a、14bを有していない。また、第2実施形態のピストン14のロッド挿入部14dは、図8、9に示した他例構造(第1実施形態)のピストン45のロッド挿入部40と異なり、クッションパッキン39のニゲ部を有しておらず、クッションパッキン39の内径側と摺動できる略単一の外径で筒状に延設されている。さらに、第2実施形態のピストン14には、第1実施形態のピストン14、45と異なり、ピストン14下面側(エア室16側)にもロッド挿入部14eが延設されている。このロッド挿入部14eも、クッションパッキン39のニゲ部を有しておらず、クッションパッキン39の内径側と摺動できる略単一の外径で筒状に延設されている。
【0118】
図15において、拡径部15cの長さは、ロッド挿入部14dの長さと略等しく、拡径部15cの最奥部には、環状のロッド挿入部14dの先端部を受け止めて緩衝するため、緩衝部(Oリング15e)が環状に設けられている。また、同図の第2実施形態のオリフィス41は、図9に示した略単一内径のオリフィス41と異なり、図15に示すように、エア流路15d側に小径の穴部が開口し、この穴部からテーパ状にエア流路が拡径し、このテーパ状のテーパ部から略単一内径の大径部に繋がり、この大径部が上側エア室17に開口している。よって、同図のオリフィス41は、エア流路側の穴部と、この穴部に繋がるテーパ部と、このテーパ部に繋がる大径部から成る。
【0119】
次いで、ピストンクッション機構δを説明する。図16は、全開する際にピストン14の動作を緩和するピストンクッション機構δの部分拡大断面図を示しており、図14の円F内の範囲を示している。また、図12、14には、この第2実施形態のシリンダヘッド10が示されている。なお、このピストンクッション機構δも、図9に示した第1実施形態の他例構造のピストンクッション機構γと基本的な構造や作用は共通するため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0120】
図16において、ピストンクッション機構δ2は、少なくともクッションパッキン39と、ロッド挿入部14eとから成り、さらにオリフィス10dも含む。第2実施形態のシリンダヘッド10には、ピストンクッション機構δを構成するため、下側エア室16内とブロック体30のエア流路30aとの間を連通するオリフィス10dと、クッションパッキン39と、このクッションパッキン39と同心状に下側エア室16内に向けて開口しておりロッド挿入部14eを収容できる円柱凹状の収容部10eと、全開状態においてピストン14が下死点まで下降した際、ピストン14をピストンロッド13の先端面に固着しているボルト51を緩衝できる環状のパッキン10fと、がシリンダヘッド10に設けられている。また、エア流路30aは、収容部10e内にも連通している。
【0121】
図16において、収容部10eの長さ(深さ)は、ロッド挿入部14eの長さと略等しく、パッキン10fの外径は、ボルト51の外形と略等しい。また、同図のピストンクッション機構δ2のオリフィス10dは、上記ピストンクッション機構δのオリフィス41(図15)と異なり、下側エア室16側に小径の穴部が開口し、この穴部からテーパ状にエア流路が拡径し、このテーパ状のテーパ部から略単一内径の大径部に繋がり、この大径部がエア流路30aに開口している。よって、ピストンクッション機構δ2のオリフィス10dは、エア流路側の穴部と、この穴部に繋がるテーパ部と、このテーパ部に繋がる大径部から成る。
【0122】
なお、図17は第2実施形態に用いている弁体25の断面図であり、弁体25が全閉位置にある状態で、図14のX線の位置における切断面を示している。図14、17に示すように、弁体25は、ステム28先端部にボルト52等を介して固着された弁体ホルダ27に対し、ボルト53、54を介して固着されているため、弁体25は、ステム28に対して左右対称位置の2カ所の固定面53a、54aで弁体ホルダ27に固着している。また、図17に示すように、弁体25の背面25aと、弁体ホルダ27の正面27aとの間には、クリアランスGが確保されている。ここで、弁体ホルダ27は、撓みや捩れがほとんど生じない強度で構成しており、全閉状態において弁体25がシール面31を締め切る場合を含めて、第2実施形態のバルブを使用する間、クリアランスGは常に維持されるように構成されている。
【0123】
このため、全閉状態において弁体25を締め付けた際に、左右対称な2か所の固定面53a、54aを介して、これらの位置で2本のステムで締め切った場合と同様の締め付け作用を与えることができると共に、ステム28に撓みが生じても、この撓みの影響は、弁体25の中央部の撓みとして反映され、よって、弁体25全体の撓みを均一化することができ、弁体シール材26によるシール面31への締め付けを均一化させることができ、シール性を高めることができる。
【0124】
最後に、第2実施形態の作用を説明する。図13(a)は、第2実施形態のハウジング体3を内側面側からみた側面図であり、(b)は、(a)のXIII-XIII線断面図である。図14は、第2実施形態において、ボデー33のシール面31を開閉する動作を正面からみた縦断面図であり、右側は弁体の全開位置を、左側は弁体の全閉状態を示している。
【0125】
ここで、緩和機構を除いて、第2実施形態においても、図14右側(全開状態)と同図左側(全閉状態)との間の動作は、第1実施形態と共通しているので、その説明を省略する。すなわち、第2実施形態においても、全開位置から全閉位置までの開口ストロークにおいては、弾発部材4による弾発により弁体開閉駆動体2を介してカムローラ5がカム溝12(幅狭部12a)に係合しており、支点ローラ6がストッパ部7a(ブッシュ48)に係止された後は、支点ローラ6を支点とし、カムローラ5が力点としてカム溝12に沿って案内されることで、弁体(シール材26)を作用点として振り子状のLモーション動作を生じ、カムローラ5がカム溝12の下端部に到達して、弁体シール材26によるボデー33のシール面31への締め付けが完了して全閉状態に至る。全閉状態から全開状態までの動作は、この逆の動作である点も共通する。よって、以下、第2実施形態の作用は、図13、14を用いて、緩和機構の作用を中心に説明する。
【0126】
図13(a)において、第2実施形態のカム溝12にはブッシュ12eを設けているので、バルブのLモーション動作ストロークにおいてカム溝12の傾斜部12bから幅狭部12aに至って係合する際に、同図(a)に2点鎖線で示したように、カムローラ5がブッシュ12eに受け止められ、カム溝12との衝突が低減される。よって、バルブの衝撃音や振動を低減できる。なお、この動作は、第1実施形態のバルブでいえば、図6(c)(図7(c))から図6(b)(図7(b))までの動作に対応する。
【0127】
図15において、ピストンクッション機構δの作用は、基本的に図8~10に示す第1実施形態における作用と同様である。すなわち、バルブを閉じる方向へ弁体25が向かい、ピストン14が上昇する際に、ロッド挿入部14dが、クッションパッキン39の内径側と摺動しながら拡径部15cに挿入されていき、この摺動によって、ピストン14の上昇が減速される。これに伴い、クッションパッキン39がロッド挿入部14d外周面に密接している間は、上側エア室17は、Oリング15a、Oリング14cとクッションパッキン39によって密封状態となりつつ、その内部のエアは、オリフィス41を通過してエア流路15dを介してエア流路18へ抜けていくことになるので、このオリフィス41で流出が絞られるエアの圧縮効果によっても、ピストン14の上昇が減速されることになる。よって、ピストンクッション機構δは、クッションパッキン39とオリフィス41とでピストン14の上昇を減速する。なお、ロッド挿入部14dが、クッションパッキン39と摺動していない間は、上側エア室17内は、拡径部15cを介してエア流路15dと連通しているので、密封状態とはならず、よって、前記減速効果は発揮されない。
【0128】
ここで、ロッド挿入部14dには、図9に示したロッド挿入部40と異なり、小径部40b(ニゲ部)がないため、第1実施形態の他例構造と異なり、クッションパッキン39と摺動している間は常に摩擦力により減速効果が働く。図15において、このロッド挿入部14dの長さ、すなわち、ロッド挿入部14dとクッションパッキン39とが摺動するストローク(上昇減速ストローク)は、実施に応じて適宜選択できるが、この上昇減速ストロークは、ピストン14の上死点(全閉状態)位置からロッド挿入部14d(拡径部15c)の長さ分に対応することになる。よって、この上昇減速ストロークの長さを、ピストン14の上死点位置(図15)からLモーション動作ストローク(L)より長く設定すれば、開口ストロークにおけるピストン14の位置(高さ)が、支点ローラ6がブッシュ48(48a)に係止される位置(係止ポイント)に到達するより前に、ロッド挿入部14dがクッションパッキン39に到達して摺動が開始するので、ピストンクッション機構δによって支点ローラ6のブッシュ48への衝突も緩衝できる。逆に、上昇減速ストロークの長さをLモーション動作ストロークより短く設定すれば、ピストンクッション機構δの緩衝効果は、ピストン14が係止ポイントに至る際には発揮されない。
【0129】
図16において、ピストンクッション機構δ2の作用は、基本的に図15のピストンクッション機構δ1の作用と同様である。すなわち、バルブを開く方向へ弁体25が向かい、ピストン14が下降する際に、ロッド挿入部14eが、クッションパッキン39の内径側と摺動しながら収容部10eに挿入されていき、この摺動によって、ピストン14の下降が減速される。これに伴い、クッションパッキン39がロッド挿入部14e外周面に密接している間は、下側エア室16は、Oリング14cとクッションパッキン39によって密封状態となりつつ、その内部のエアは、オリフィス10dを通過してエア流路30aへ抜けていくことになるので、このオリフィス10dで流出が絞られるエアの圧縮効果によっても、ピストン14の下降が減速されることになる。よって、ピストンクッション機構δ2は、クッションパッキン39とオリフィス10dとでピストン14の下降を減速する。さらに、ピストン14の下死点位置では、図16に示すように、パッキン10fがボルト51を受け止める。なお、ロッド挿入部14eが、クッションパッキン39と摺動していない間は、下側エア室16内は、収容部10eを介してエア流路30aと連通しているので、密封状態とはならず、よって、前記減速効果は発揮されない。



【0130】
なお、ロッド挿入部14eとクッションパッキン39とが摺動するストローク(下降減速ストローク)も、ピストンクッション機構δの場合と同様である。すなわち、下降減速ストロークは、ピストン14の下死点(全開状態)位置からロッド挿入部14e(収容部10e)の長さ分に対応し、実施に応じて適宜、その長さを設定できる。
【0131】
ところで、本発明の真空用ゲートバルブには、動作ガイド機構(固定側ガイド部材21、可動側ガイド部材22)を有さなくても、良好に使用できるので、動作ガイド機構は、必ずしも必要ではない。
【0132】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0133】
1 バルブ本体
2 弁体開閉駆動体
2c 下部凹部面
3 46 ハウジング体
4 コイルスプリング(弾発部材)
5 カムローラ
6 49 支点ローラ
7 47 上下動作案内部
7a 48a ストッパ部
8 37 カム部材
9 35 シリンダ機構
10 シリンダヘッド(固定基部)
12 44 カム溝
12a 幅狭部(ストッパ部)
12e ブッシュ(クッション用弾性ブッシュ)
13 36 ピストンロッド
14 45 ピストン
15 38 ピストン軸受
21 固定側ガイド部材(動作ガイド機構)
21a 側面部(上下動作ガイド部)
21b 上端部(Lモーション動作ガイド部)
22 可動側ガイド部材(動作ガイド機構)
22a 側部(上下動作ガイド部)
22b 段部(Lモーション動作ガイド部)
25 弁体
26 弁体シール材
28 ステム
31 シール面
39 クッションパッキン(ピストンクッション機構)
40 14d 14e ロッド挿入部(ピストンクッション機構)
41 10d オリフィス
48 ローラ受け用弾性ブッシュ(クッション構造)
開口ストローク
α 上下動作ガイド部
β Lモーション動作ガイド部
γ δ δ ピストンクッション機構
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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図17