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特許7385422距離センサ、検査方法、およびリフレクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】距離センサ、検査方法、およびリフレクタ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20231115BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S7/481 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019191182
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021067490
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 宙
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-288666(JP,A)
【文献】特開2002-174684(JP,A)
【文献】特開2018-136186(JP,A)
【文献】特表2001-513887(JP,A)
【文献】特開平10-100870(JP,A)
【文献】特開2009-300966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子から出射された光が対象物に反射されて受光素子に入射するまでの時間に基づいて当該対象物までの距離を検出する距離センサを検査するためのリフレクタであって、
前記発光素子から出射された光を反射する湾曲面を有する第一反射部と、
前記発光素子から出射された光を反射する平坦面を有する第二反射部と、
を備えており、
前記第一反射部は、前記第二反射部の端縁に配置されており
前記湾曲面と前記平坦面のなす角度は、可変とされている、
リフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光が対象物に反射されて受光素子に入射するまでの時間に基づいて当該対象物までの距離を検出する距離センサに関連する。本発明は、当該距離センサの検査方法、および当該検査方法に使用されるリフレクタにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、上記のような距離センサの特性を検査する方法を開示している。当該方法においては、リフレクタが使用される。リフレクタは、センサの発光素子から出射された光を反射する。反射光は、受光素子により検出される。リフレクタの位置や角度を適宜に調節することにより、正常な距離の検出がなされうる範囲(センサの視野)などが調べられうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-513887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より精細な距離センサの性能評価を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、発光素子から出射された光が対象物に反射されて受光素子に入射するまでの時間に基づいて当該対象物までの距離を検出する距離センサの検査方法であって、
前記距離センサの視野の周縁部に、当該視野から外れる方向に向かうに連れて前記距離センサから離れる方向に延びる湾曲面を有するリフレクタを配置し、
前記湾曲面に向けて前記発光素子から光を出射させ、
前記湾曲面より反射された光を、前記受光素子に入射させる。
【0006】
距離センサの視野の周縁は、物体までの距離の検出が可能である領域と不可能である領域との境界である。したがって、検出に使用される光の当該境界付近における挙動は、特に重要度の高い情報であると言える。他方、距離センサが実際に使用される場面において検出に供される物体の端縁は、湾曲していることが一般的である。より現実性の高い形状である湾曲面を視野の周縁部に配置して検査を行なうことにより、より多くの情報を取得できる。例えば、平坦面のみを有するリフレクタを用いる場合、得られる情報は、実質的に反射光の戻りがあるか否かである。他方、距離センサの視野から外れる方向に向かうに連れて距離センサから離れる方向に延びる湾曲面を用いる場合、例えば、どのように反射光の強度が減衰していくかについての情報を得ることができる。したがって、より精細な距離センサの特性の検査を可能にできる。得られた情報に基づいて、視野の周縁部において所望の挙動が得られるように、発光素子から出射される光の向きや強度を調節することもできる。
【0007】
上記の検査方法は、以下のように構成されうる。
前記湾曲面と前記発光素子の距離を変更し、
前記湾曲面に向けて前記発光素子から光を出射させ、
前記湾曲面により反射された光を、前記受光素子に入射させる。
【0008】
これにより、距離センサからの距離に応じた湾曲面における反射特性の変化に係る情報を取得できる。
【0009】
上記の検査方法は、以下のように構成されうる。
前記視野内に平坦面を有するリフレクタを配置し、
前記平坦面に向けて前記発光素子から光を出射させ、
前記平坦面により反射された光を、前記受光素子に入射させる。
【0010】
これにより、距離センサからの距離に応じた検出精度の変化に係る情報を取得できる。
【0011】
したがって、上記の目的を達成するための一態様は、発光素子から出射された光が対象物に反射されて受光素子に入射するまでの時間に基づいて当該対象物までの距離を検出する距離センサを検査するためのリフレクタであって、
前記発光素子から出射された光を反射する湾曲面を有する第一反射部と、
前記発光素子から出射された光を反射する平坦面を有する第二反射部と、
を備えており、
前記第一反射部は、前記第二反射部の端縁に配置されている。
【0012】
上記のリフレクタは、以下のように構成されうる。
前記湾曲面と前記平坦面のなす角度は、可変とされている。
【0013】
このような構成によれば、距離センサの発光素子から出射された光に対する湾曲面の反射条件を必要に応じて変更でき、湾曲面に入射する光の挙動についてより多くの情報を取得できる。
【0014】
上記の目的を達成するための一態様は、上記の検査方法により得られた検査結果に係る情報が付与されている距離センサである。
【0015】
本明細書において用いられる「光」という語は、所望の情報を検出可能な任意の波長を有する電磁波を意味する。例えば「光」は、可視光のみならず、紫外光や赤外光、ミリ波やマイクロ波を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る検査システムの構成を例示している。
図2図1の距離センサの構成の一例を示している。
図3図1の距離センサの構成の別例を示している。
図4図1の撮像装置により取得されたリフレクタの画像を例示している。
図5図1のリフレクタの別例を示している。
図6図5のリフレクタの別例を示している。
図7図5のリフレクタの別例を示している。
図8図5のリフレクタの別例を示している。
図9図8のリフレクタの別例を示している。
図10図9のリフレクタの有利性を説明するための図である。
図11図9のリフレクタの有利性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0018】
添付の図面において、矢印Fは、図示された構造の前方向を示している。矢印Bは、図示された構造の後方向を示している。矢印Uは、図示された構造の上方向を示している。矢印Dは、図示された構造の下方向を示している。矢印Lは、図示された構造の左方向を示している。矢印Rは、図示された構造の右方向を示している。
【0019】
図1は、一実施形態に係る検査システム1の構成を例示している。検査システム1は、距離センサ2の特性を検査するためのシステムである。距離センサ2は、発光素子から出射された光が対象物に反射されて受光素子に入射するまでの時間に基づいて、当該対象物までの距離を検出するように構成されている。
【0020】
符号FLは、距離センサ2の視野の左端を表している。符号FRは、距離センサ2の視野の右端を表している。本明細書で用いられる「距離センサの視野」という語は、距離センサによる距離検出が可能な領域を意味している。図示を省略するが、距離センサ2の視野について上端と下端も定義されうる。符号FCは、距離センサ2の視野の中央を表している。以降の説明においては、当該視野の中央を通過する直線FCを、必要に応じて「距離センサの光軸」と称する。
【0021】
距離センサ2の視野の左端FLは、距離センサ2の発光素子から出射される光が進みうる方向の左限に対応する。距離センサ2の視野の右端FRは、距離センサ2の発光素子から出射される光が進みうる方向の右限に対応する。同様に、距離センサ2の視野の上端と下端は、距離センサ2の発光素子から出射される光が進みうる方向の上限と下限にそれぞれ対応する。
【0022】
このような距離センサ2は、視野内の特定の方向へ向けて発光素子から光を出射する。当該方向に物体が存在する場合、発光素子から出射された光が当該物体に反射されて戻ってくる。この戻り光が距離センサ2の受光素子に入射する。距離センサ2は、発光素子から光が出射されてから戻り光が受光素子に入射するまでの時間に基づいて、当該物体までの距離を検出する。距離センサ2は、視野内の複数の方向についてこのような距離検出を行なうことにより、視野内に位置する物体の数や形状に係る情報を取得できる。
【0023】
図2は、このような距離センサ2の構成の一例を示している。本例に係る距離センサ2は、第一発光素子21a、第二発光素子21b、第三発光素子21c、第一受光素子22a、第二受光素子22b、第三受光素子22c、およびプロセッサ23を備えている。
【0024】
本例においては、第一発光素子21aは、距離センサ2の視野の左端FLに対応する方向へ光L1aを出射するように構成されている。プロセッサ23が第一発光素子21aに制御信号S1aを入力すると、第一発光素子21aは、光L1aを出射する。当該方向に物体が存在する場合、当該物体に反射された光L2aが第一受光素子22aに入射するように構成されている。第一受光素子22aは、入射した光L2aの光量に応じた検出信号S2aを出力する。プロセッサ23は、第一発光素子21aより光L1aが出射されてから第一受光素子22aに光L2aが入射するまでの時間に基づいて、光L2aを生じた物体までの距離を算出する。プロセッサ23は、算出された距離に対応する距離信号DSを出力する。
【0025】
本例においては、第二発光素子21bは、距離センサ2の視野の中央FCに対応する方向へ光L1bを出射するように構成されている。プロセッサ23が第二発光素子21bに制御信号S1bを入力すると、第二発光素子21bは、光L1bを出射する。当該方向に物体が存在する場合、当該物体に反射された光L2bが第二受光素子22bに入射するように構成されている。第二受光素子22bは、入射した光L2bの光量に応じた検出信号S2bを出力する。プロセッサ23は、第二発光素子21bより光L1bが出射されてから第二受光素子22bに光L2bが入射するまでの時間に基づいて、光L2bを生じた物体までの距離を算出する。プロセッサ23は、算出された距離に対応する距離信号DSを出力する。
【0026】
本例においては、第三発光素子21cは、距離センサ2の視野の右端FRに対応する方向へ光L1cを出射するように構成されている。プロセッサ23が第三発光素子21cに制御信号S1cを入力すると、第三発光素子21cは、光L1cを出射する。当該方向に物体が存在する場合、当該物体に反射された光L2cが第三受光素子22cに入射するように構成されている。第三受光素子22cは、入射した光L2cの光量に応じた検出信号S2cを出力する。プロセッサ23は、第三発光素子21cより光L1cが出射されてから第三受光素子22cに光L2cが入射するまでの時間に基づいて、光L2cを生じた物体までの距離を算出する。プロセッサ23は、算出された距離に対応する距離信号DSを出力する。
【0027】
視野内の検出分解能を高めるためには、発光素子と受光素子の数を増やすか、発光素子と受光素子のアレイ自体を、分解能を高めたい方向へ変位させればよい。
【0028】
図3は、距離センサ2の構成の別例を示している。本例に係る距離センサ2は、発光素子21、受光素子22、プロセッサ23、および走査機構24を備えている。走査機構24は、発光素子21と受光素子22の向きを変化させる機構である。プロセッサ23は、走査機構24の動作を制御する。
【0029】
本例においては、プロセッサ23は、走査機構24の動作を制御することにより、発光素子21と受光素子22を左位置、中央位置、および右位置の間で変位させうる。左位置は、発光素子21が距離センサ2の視野の左端FLに対応する方向へ光L1を出射しうる位置である。中央位置は、発光素子が距離センサ2の視野の中央FCに対応する方向へ光L1を出射しうる位置である。右位置は、発光素子21が距離センサ2の視野の右端FRに対応する方向へ光L1を出射しうる位置である。
【0030】
プロセッサ23が発光素子21に制御信号S1を入力すると、発光素子21は、光L1を出射する。当該方向に物体が存在する場合、当該物体に反射された光L2が受光素子22に入射するように構成されている。受光素子22は、入射した光L2の光量に応じた検出信号S2を出力する。プロセッサ23は、発光素子21より光L1が出射されてから受光素子22に光L2が入射するまでの時間に基づいて、光L2を生じた物体までの距離を算出する。プロセッサ23は、算出された距離に対応する距離信号DSを出力する。
【0031】
視野内の検出分解能を高めるためには、発光素子と受光素子の数を増やすか、走査機構24による発光素子21と受光素子22の向きを変化させる角度ピッチを小さくすればよい。
【0032】
上記のような機能を有するプロセッサ23は、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどの専用集積回路の一部として実現されうる。プロセッサ23の機能は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されてもよい。汎用マイクロプロセッサの例としては、CPUやMPUが挙げられる。汎用メモリの例としては、ROMやRAMが挙げられる。
【0033】
図1に例示されるように、検査システム1は、リフレクタ11、撮像装置12、および制御装置13を備えている。撮像装置12と制御装置13は、検査装置を構成する。
【0034】
リフレクタ11は、距離センサ2の前方に配置される。リフレクタ11は、反射面11aを有している。反射面11aは、距離センサ2の発光素子から出射された光を反射可能な材料により形成されている。
【0035】
撮像装置12は、画像を取得し、当該画像に対応する画像信号ISを出力する装置である。撮像装置12は、少なくとも距離センサ2が使用する光の波長に感度を有している。撮像装置12は、リフレクタ11の反射面11aの少なくとも一部の画像を取得できるように配置される。
【0036】
制御装置13は、入力インターフェース131を備えている。入力インターフェース131は、撮像装置12から出力された画像信号ISと、距離センサ2のプロセッサ23から出力された距離信号DSを受け付ける。
【0037】
制御装置13は、プロセッサ132と出力インターフェース133を備えている。プロセッサ132は、距離センサ2の発光素子に光を出射させる制御信号CSを生成する。制御信号CSは、出力インターフェース133から出力される。
【0038】
上記のように構成された検査システム1を用いて図2に示された距離センサ2の特性を検査する例を説明する。
【0039】
リフレクタ11は、反射面11a内に距離センサ2の視野が収まるように、距離センサ2の前方に配置される。
【0040】
制御装置13は、距離センサ2の第一発光素子21aに光L1aを出射させる制御信号CSを出力する。制御信号CSを受信した距離センサ2のプロセッサ23は、制御信号S1aを出力し、第一発光素子21aに光L1aを出射させる。第一発光素子21aは、反射面11aにおける距離センサ2の視野の左端FLに対応する位置へ向けて光L1aを出射する。
【0041】
撮像装置12は、リフレクタ11の反射面11aの画像を取得する。図4は、取得される画像の一例を示している。距離センサ2が正常に動作していれば、反射面11a上に形成された光L1aの像が、画像として取得される。撮像装置12は、当該画像に対応する画像信号ISを出力する。
【0042】
図2に例示されるように、光L1aは、リフレクタ11の反射面11aにより反射され、光L2aとして第一受光素子22aに入射する。第一受光素子22aは、検出信号S2aを出力する。プロセッサ23は、検出信号S2aに基づいて、反射面11aにおける光L1aの入射位置までの距離を算出し、当該距離に対応する距離信号DSを出力する。
【0043】
制御装置13の入力インターフェース131は、画像信号ISと距離信号DSを受け付ける。制御装置13のプロセッサ132は、画像信号ISに基づいて、光L1aがリフレクタ11の反射面11aにおける特定の位置(ここでは距離センサ2の視野の左端FLに対応する位置)に入射しているかを判断する。
【0044】
制御装置13のプロセッサ132は、当該判断に基づいて、第一受光素子22aに入射した光L2aがリフレクタ11の反射面11aにおける特定の位置において反射された光であるかを検証する。
【0045】
図4に示した例においては、光L1aは、距離センサ2の視野の左端FLに対応する位置に正常に入射している。したがって、プロセッサ132は、第一受光素子22aに入射した光L2aは、正常に反射された光であると判断する。この検証の結果、第一発光素子21aと第一受光素子22aは、少なくともリフレクタ11が配置された位置における物体までの距離を正常に検出できると判断される。
【0046】
同様の処理が、第二発光素子21bと第三発光素子21cについても行なわれる。図4は、第二発光素子21bと第三発光素子21cの双方に異常がある結果として、第二受光素子22bからの検出信号S2bのみが取得されている状況を例示している。
【0047】
第三発光素子21cは、リフレクタ11の反射面11aにおける距離センサ2の視野の右端FRに対応する位置へ向けて光L1cを出射する。したがって、本来であれば、図4において破線で示されるように、視野の右端FRの近傍に光L1cの像が形成される。しかしながら、撮像装置12により取得された画像によれば、視野の中央FCの近傍に光L1cの像が形成されている。この位置に光L1cが入射することにより、反射された光L2cは、第二受光素子22bに入射しうる。よって、本来は第二発光素子21bから出射された光L1bに基づいて算出される距離が、第三発光素子21cから出射された光L1cに基づいて算出されてしまう。
【0048】
他方、第二発光素子21bは、リフレクタ11の反射面11aにおける距離センサ2の視野の中央FCに対応する位置へ向けて光L1bを出射する。したがって、本来であれば、図4に破線で示されるように、視野の中央FCの近傍に光L1bの像が形成される。しかしながら、撮像装置12により取得された画像によれば、反射光がいずれの受光素子にも入射し得ない位置に光L1bの像が形成されている。結果として、第三受光素子22cにはいずれの発光素子から出射された光も入射せず、距離の算出がなされない。
【0049】
第二受光素子22bに入射した光に基づく距離の算出は行なわれているものの、画像信号ISに基づく検証が行なわれた結果として、第二発光素子21bと第三発光素子21cの双方について光の出射方向の補正が必要であることが明らかになっている。
【0050】
すなわち、受光素子に入射した光を反射したリフレクタ11の反射面11aの画像を参照することにより、当該光が正常な経路を通じて当該受光素子に入射したものであるかを検証できる。また、受光素子に光が正常に入射しなかった場合の原因の特定を容易にできる。これにより、受光素子への光の入射の有無や、受光素子に入射した光に基づく距離の検出結果のみに基づいて光センサの特性の判断がなされる場合と比較して、より精細な特性の検査を可能にできる。
【0051】
なお、図1に例示されるように、リフレクタ11と距離センサ2の距離を変更しながら複数回の検査が行なわれることが好ましい。これにより、距離センサ2からの距離に応じた検出精度の変化に係る情報を取得できる。リフレクタ11が距離センサ2から十分離れると、距離センサ2の視野がリフレクタ11の反射面11aに収まらなくなる場合がある。そのような場合は、リフレクタ11の左右方向における位置と上下方向における位置を適宜に変更すればよい。
【0052】
図1に例示されるように、撮像装置12は、その光軸Aが距離センサ2の光軸(視野の中央FCを通る直線)と平行に延びるように配置されることが好ましい。
【0053】
このような構成によれば、撮像装置12と距離センサ2の視差が前述の検証に与える影響を抑制できる。
【0054】
あるいは、透明なリフレクタ11を用いることにより、反射面11aを挟んで距離センサ2と対向するように撮像装置12を配置してもよい。
【0055】
このような構成によれば、撮像装置12の光軸と距離センサ2の光軸が一致するような配置を実現できる。この場合、撮像装置12と距離センサ2の視差を解消できるので、前述した検証の精度の低下をさらに抑制できる。
【0056】
撮像装置12は、画角を変更可能に構成されうる。画角は、撮像されるリフレクタ11の反射面11aの面積に応じて定められうる。例えば、図4において符号R1で示されるように反射面11aの全体を撮像する必要がある場合、広角レンズを使用するなどして画角が大きくされる。他方、符号R2で示されるように反射面11aの一部を拡大して撮像する必要がある場合、望遠レンズを使用するなどして画角が小さくされる。
【0057】
このような構成によれば、検証の目的に応じて適切な画像が取得されうる。例えば、反射面11aにおけるより広範囲の一覧性が検証に必要とされる場合、像の歪みは相対的に大きくなるものの、広い画角が優先される。他方、より精細な反射面11aにおける光の入射位置の検証が必要とされる場合、像の歪みを小さくするために狭い画角が優先される。換言すると、撮像装置12の画角は、検証において許容される像の歪みに基づいて定められうる。
【0058】
図5は、距離センサ2の特性の検査に使用されうるリフレクタ11の別例を示している。本例に係るリフレクタ11の反射面11aは、二つの湾曲面11bと平坦面11cを含んでいる。二つの湾曲面11bは、リフレクタ11の左右方向における両端部に配置されている。すなわち、反射面11aは、リフレクタ11の左右方向における両端部において湾曲している。
【0059】
距離センサ2が実際に使用される場面において検出に供される物体の端縁は、湾曲していることが一般的である。湾曲面11bを端部に有するリフレクタ11を検査に使用することにより、より現実使用時に近い環境における距離センサ2の特性について検査結果を得ることができる。
【0060】
より具体的には、各湾曲面11bは、距離センサ2の視野から外れる方向に向かうに連れて距離センサ2から離れる方向に延びている。また、二つの湾曲面11bは、平坦面11cの左右方向における両端縁に配置されている。各湾曲面11bは、第一反射部の一例である。平坦面11cは、第二反射部の一例である。
【0061】
この場合、距離センサ2の視野の左端FLおよび右端FRの近傍に湾曲面11bが位置するようにリフレクタ11を配置し、距離センサ2の発光素子から出射された光を湾曲面11bに入射させることが好ましい。距離センサ2の視野の左端FLと右端FRの各々は、距離センサ2の視野の周縁部の一例である。
【0062】
距離センサ2の視野の周縁は、物体までの距離の検出が可能である領域と不可能である領域との境界である。したがって、検出に使用される光の当該境界付近における挙動は、特に重要度の高い情報であると言える。より現実性の高い形状である湾曲面11bを視野の周縁部に配置して検査を行なうことにより、より多くの情報を取得できる。例えば、平坦面のみを有するリフレクタを用いる場合、得られる情報は、実質的に反射光の戻りがあるか否かである。他方、距離センサ2の視野から外れる方向に向かうに連れて距離センサ2から離れる方向に延びる湾曲面11bを用いる場合、例えば、どのように反射光の強度が減衰していくかについての情報を得ることができる。したがって、より精細な距離センサ2の特性の検査を可能にできる。得られた情報に基づいて、視野の周縁部において所望の挙動が得られるように、発光素子から出射される光の向きや強度を調節することもできる。
【0063】
なお、図5に例示されるように、湾曲面11bと距離センサ2の距離を変更しながら複数回の検査が行なわれることが好ましい。これにより、距離センサ2からの距離に応じた湾曲面11bにおける反射特性の変化に係る情報を取得できる。リフレクタ11の左右方向における位置と上下方向における位置を適宜に変更することにより、距離センサ2の周縁部以外の領域においても、距離センサ2の発光素子から出射された光を湾曲面11bに入射させることができる。
【0064】
図6に例示されるように、湾曲面11bと平坦面11cのなす角度θは、可変とされうる。本例においては、角度θは、リフレクタ11を上下方向から見たときに、湾曲面11bにおける距離センサ2の視野の最も内側に位置する点P1と最も外側に位置する点P2を結ぶ直線が、平坦面11cとなす角度として定義されている。
【0065】
このような構成によれば、距離センサ2の発光素子から出射された光に対する湾曲面11bの反射条件を必要に応じて変更でき、湾曲面11bに入射する光の挙動についてより多くの情報を取得できる。
【0066】
図1図5に例示されるように、制御装置13のプロセッサ132は、出力インターフェース133を通じて、距離センサ2の特性に係る検査結果を出力できる。この検査結果に対応する情報は、距離センサ2に付与されうる。例えば、当該情報は、距離センサ2に搭載されたメモリにデータとして格納され、必要に応じて読み出し可能とされうる。あるいは、当該情報は、距離センサ2に張り付けられたラベル上にて文字やコードの形態で表示されうる。
【0067】
これまで説明したプロセッサ132の機能は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサの例としては、CPUやMPUが挙げられる。汎用メモリの例としては、ROMやRAMが挙げられる。プロセッサ132の機能は、専用集積回路の一部により実現されてもよい。専用集積回路の例としては、マイクロコントローラ、FPGA、ASICなどが挙げられる。
【0068】
上記の距離センサ2は、視野内に位置する物体の距離を二次元的に取得する各種装置の一部を構成しうる。そのような装置の例としては、LiDAR(Light Detecting and Ranging)装置、TOF(Time of Flight)カメラ、ミリ波レーダ(複数個の使用が必須)などが挙げられる。これらの装置は、例えば移動体に搭載されて当該移動体の外部の情報を検出するために使用されうる。移動体の例としては、車両、鉄道、飛行体、航空機、船舶などが挙げられる。これらの装置が搭載される移動体は、運転者を必要としなくてもよい。
【0069】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0070】
図5に例示されたリフレクタ11は、左右方向の両端部に湾曲面11bが設けられている。しかしながら、図7に例示されるように、湾曲面11bは、リフレクタ11の上下方向の両端部に設けられてもよい。
【0071】
図5に例示されたリフレクタ11は、平坦面11cを有している。しかしながら、距離センサ2の視野の周縁部に配置される湾曲面11bのみを備えたリフレクタも採用されうる。このような構成によっても、距離センサ2の視野の周縁部における湾曲した物体に入射した光の挙動を調べることができる。
【0072】
図5に例示されたリフレクタ11は、左右方向に延びる単一の平坦面11cを有している。しかしながら、図8に例示されるように、リフレクタ11は、左右方向に対して前後方向に傾斜した一対の平坦面11cを有しうる。このような構成は、例えば、左右方向に配列された一対の距離センサ2の視野を重複させてセンシングを行なう構成の検査に使用されうる。同様に、リフレクタ11は、上下方向に対して前後方向に傾斜した一対の平坦面11cを有しうる。このような構成は、例えば、左右方向に配列された一対の距離センサ2の視野を重複させてセンシングを行なう構成の検査に使用されうる。
【0073】
図5図7、および図8に例示されたリフレクタ11は、いずれも両端部に湾曲面11bを備えている。しかしながら、いずれか一方の端部のみに湾曲面11bを備えた構成も採用しうる。図8に例示されたリフレクタ11については、両端部に設けられた一対の湾曲面11bに加えてあるいは代えて、一対の平坦面11cの境界部分11dに湾曲面を設けてもよい。
【0074】
図5を参照して説明した湾曲面11bを用いた検査においては、撮像装置12の使用は必須ではない。
【0075】
図9に例示されるように、一対の平坦面11cの各々が回動可能であり、左右方向に対してなす角度が可変であるリフレクタ11も採用されうる。両平坦面11cの回動中心は、距離センサ2の視野の中央FCに対応する位置に配置される。一対の平坦面11cの角度変更は、視野の中央FCに対して左右対称になされることが好ましい。各平坦面11cの端部に上記の湾曲面11bが設けられてもよい。
【0076】
このような構成を有するリフレクタ11の有利性について、図10図11を参照しつつ説明する。これらの図に例示されるリフレクタ11は、単一の平坦面11cを有している。図10に示される例は、距離センサ2の光軸が前後方向に正しく揃えられている状態を示している。図11に示される例は、距離センサ2の光軸が前後方向に対して傾いている状態を示している。
【0077】
図10において実線で示される位置にリフレクタ11が配置された場合、距離センサ2から出射された全ての光ビームがリフレクタ11の反射面11aに入射している。この場合、視野の中央FCに入射した光ビームの像を中心として、左右対称に並んだ複数の光ビームの像が検出される(図の上部に実線の丸で示されている)。同図において二点鎖線で示される位置にリフレクタ11が配置された場合、距離センサ2から出射された複数の光ビームの一部がリフレクタ11の反射面11aに入射する。しかしながら、距離センサ2の光軸が前後方向に揃えられているので、検出される複数の光ビームの像は、やはり視野の中央FCに入射した光ビームの像を中心として左右対称に並ぶ(図の上部に一点鎖線の丸で示されている)。
【0078】
図11において実線で示される位置にリフレクタ11が配置された場合、距離センサ2から出射された全ての光ビームがリフレクタ11の反射面11aに入射している。この場合、視野の中央FCに入射した光ビームの像を中心として、左右対称に並んだ複数の光ビームの像が検出される(図の上部に実線の丸で示されている)。しかしながら、同図において二点鎖線で示される位置にリフレクタ11が配置された場合、距離センサ2の光軸が前後方向に対して傾いているので、検出される複数の光ビームの像の配列は、視野の中央FCに入射した光ビームに対して左右対称でなくなる(図の上部に一点鎖線の丸で示されている)。ユーザは、リフレクタ11を前後方向に移動させることによって、距離センサ2の光軸が前後方向に正しく揃えられてない事実を認識できる。
【0079】
図9に示される例においては、距離センサ2の光軸が前後方向に対して傾いている。同図において実線で示される角度で一対の平坦面11cが配置された場合、距離センサ2から出射された全ての光ビームがリフレクタ11の一対の平坦面11cに入射している。この場合、視野の中央FCに入射した光ビームの像を中心として、左右対称に並んだ複数の光ビームの像が検出される(図の上部に実線の丸で示されている)。しかしながら、同図において二点鎖線で示される角度で一対の平坦面11cが配置された場合、距離センサ2の光軸が前後方向に対して傾いているので、両平坦面11cの間で光ビームの入射の仕方が相違する。結果として、検出される複数の光ビームの像の配列は、視野の中央FCに入射した光ビームに対して左右対称でなくなる(図の上部に一点鎖線の丸で示されている)。
【0080】
このような構成によれば、ユーザは、一対の平坦面11cの角度を変更することにより、リフレクタ11を前後方向に移動させることなく、距離センサ2の光軸が前後方向に正しく揃えられてない事実を認識できる。したがって、図10図11に例示された構成を有するリフレクタ11と比較すると、検査の作業性を高めることができる。
【符号の説明】
【0081】
1:検査システム、11:リフレクタ、11a:反射面、11b:湾曲面、11c:平坦面、12:撮像装置、13:制御装置、2:距離センサ、21:発光素子、21a:第一発光素子、21b:第二発光素子、21c:第三発光素子、22:受光素子、22a:第一受光素子、22b:第二受光素子、22c:第三受光素子、A:撮像装置の光軸、FC:距離センサの視野の中央(距離センサの光軸)FL:距離センサの視野の左端、FR:距離センサの視野の右端、IS:画像信号、L1、L1a、L1b、L1c、L2、L2a、L2b、L2c:光、θ:湾曲面と平坦面のなす角度
図1
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図10
図11