(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20231115BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61F13/535 100
A61F13/53 300
A61F13/535 200
(21)【出願番号】P 2019192756
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】鶴永 華帆
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111032(JP,A)
【文献】特開2019-146657(JP,A)
【文献】特開2016-112232(JP,A)
【文献】特開2019-042086(JP,A)
【文献】特開2019-072425(JP,A)
【文献】特開2009-028186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、前記トップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、
非肌側の表面が起毛した基体不織布と、前記基体不織布の
非肌側の起毛面の一部を覆うカバー不織布と、前記基体不織布の起毛した繊維間に固着担持した高吸収性ポリマーとからなる高吸収性シートと、前記基体不織布の起毛面及び前記カバー不織布の非肌側面の全体を覆う親水性シートと、を有し、
前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向中央部に配置され、前記基体不織布の幅方向の寸法に対する前記カバー不織布の幅方向の寸法の比率が5%以上50%以下であり、前記カバー不織布と厚さ方向で重なる、前記基体不織布の起毛面には前記高吸収性ポリマーの非存在領域が設けられ、
前記吸収体は、平坦な状態において、35g/cm
2の荷重下で測定した厚さが0.5mm以上4.0mm以下であり、前記35g/cm
2の荷重下で測定した厚さが、無荷重状態で測定した厚さの30%以上70%以下であることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向中央部において、前記基体不織布の長手方向の一の縁辺又は途中部から、前記基体不織布の長手方向の一方の縁辺まで延びるように配置された、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記カバー不織布
の長手方向寸法は、
前記カバー不織布の幅方向寸法よりも大きい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記カバー不織布
の長手方向の両端の
平面形状が
、四角形状
、三角形状
、半円状、及
び喇叭状よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記カバー不織布がエアスルー不織布であり、厚さが0.1mm以上3.0mm以下であり、坪量が10g/m
2以上60g/m
2以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記基体不織布がエアスルー不織布であり、坪量が20g/m
2以上120g/m
2以下であり、厚さが0.3mm以上8.0mm以下であり、前記基体不織布を構成する繊維の太さが、1.8dtex以上9.0dtex以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記高吸収性ポリマーの坪量が150g/m
2以上1000g/m
2以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記親水性シートは、坪量が10g/m
2以上60g/m
2以下の親水性不織布又はティシュペーパーであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品には、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの吸収性物品、パンツタイプの吸収性物品、尿取りパッド、軽失禁パッドなど、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
これら吸収性物品を構成する吸収体として、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」とも称す)とを併用することが一般的であったが、着用時の着用感、外観及び肌触り等の向上、尿の逆戻り低減を目的として、基体となる不織布と高吸収性ポリマーからなる、いわゆる高吸収性シート(SAPシートとも称される)を吸収体として用いることもあり、高吸収性シートについて様々な検討がなされている。
【0004】
これまで検討されてきた高吸収性シートとして、例えば、特許文献1には、接着剤が塗布された第一シート及び第二シートと、第一シートと第二シートの間に配置される高吸収性ポリマーと、を備え、少なくとも第二シート上の複数の領域に対応する部位における接着剤の塗布が間欠的であるととともに、高吸収性ポリマーの幅方向の両側にて第一シートと対抗する部位に接着剤が長手方向に連続的に塗布されており、高吸収性ポリマーが長手方向に沿うストライプ状に配置されていることを特徴とする高吸収性シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、二つの高吸収性シートが長手方向に沿って折り曲げられ、それぞれの折り目が互いに対向するように二つの高吸収性シートが配された吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-158676号公報
【文献】特開2013-42882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1やその他多くの高吸収性シートは、基体不織布と高吸収性ポリマーとをホットメルト接着剤を用いて固定するため、肌触りが硬くなることにより着用感が低下し、また、フィット性が得られないため違和感を生ずるという問題があった。また、フラッフパルプと高吸収性ポリマーで構成される従来の吸収体に比べると、高吸収性シートの多くは、基材不織布に高吸収性ポリマーが接着手段により固定されることにより、高吸収性ポリマーが高密度に存在するため、吸収時間が長くかかり、尿の拡散性に劣るため、吸収性という観点においても十分に満足できるものではなかった。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の高吸収性シートでは、上記のような構造を有することにより股間部へのフィット性の改善はなされているものの、高吸収性シート特有の肌触りが硬いという点は改善されておらず、着用感について十分に満足できるものではなかった。また、特許文献1に記載の高吸収性シートと同様に、吸収性について十分に満足できるものではなかった。
【0009】
本発明の目的は、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、基体となる不織布の態様及び高吸収性ポリマーの担持方法を従来とは変更することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(8)の吸収性物品を提供する。
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、前記トップシートに対向して配置された液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収体は、表面が起毛した基体不織布と、前記基体不織布の起毛面の一部を覆うカバー不織布と、前記基体不織布の起毛した繊維間に固着担持した高吸収性ポリマーとからなる高吸収性シートと、前記基体不織布の起毛面及び前記カバー不織布の非肌側面の全体を覆う親水性シートと、を有し、前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向中央部に配置され、前記基体不織布の幅方向の寸法に対する前記カバー不織布の幅方向の寸法の比率が5%以上50%以下であり、前記カバー不織布と厚さ方向で重なる、前記基体不織布の起毛面には前記高吸収性ポリマーの非存在領域が設けられ、前記吸収体は、平坦な状態において、35g/cm2の荷重下で測定した厚さが0.5mm以上4.0mm以下であり、前記35g/cm2の荷重下で測定した厚さが、無荷重状態で測定した厚さの30%以上70%以下であることを特徴とする、吸収性物品である。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記カバー不織布は、前記基体不織布の幅方向中央部において、前記基体不織布の長手方向の一方の縁辺又は途中部から、前記基体不織布の長手方向の他方の縁辺まで延びるように配置されている。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記カバー不織布は、前記基体不織布の長手方向寸法が前記基体不織布の幅方向寸法よりも大きい。
(4)本発明の第4の態様は、(1)~(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記カバー不織布の、前記基体不織布の長手方向の両端の形状が、略四角形状、略三角形状、略半円状、及び略喇叭状よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
(5)本発明の第5の態様は、(1)~(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記カバー不織布がエアスルー不織布であり、厚さが0.1mm以上3.0mm以下であり、坪量が10g/m2以上60g/m2以下である。
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記基体不織布がエアスルー不織布であり、坪量が20g/m2以上120g/m2以下であり、厚さが0.3mm以上8.0mm以下であり、前記基体不織布を構成する繊維の太さが、1.8dtex以上9.0dtex以下である。
(7)本発明の第7の態様は、(1)~(6)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記高吸収性ポリマーの坪量が150g/m2以上1000g/m2以下である。
(8)本発明の第8の態様は、(1)~(7)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記親水性シートは、坪量が10g/m2以上60g/m2以下の親水性不織布又はティシュペーパーである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態である吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態である吸収体の構成を模式的に示す幅方向断面図である。
【
図3】
図2に示す吸収体に備わる基体不織布及びカバー不織布の各構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す吸収体に備わる高吸収性シートの構成を模式的に示す幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付して説明を省略する。
図1は、本発明の第1実施形態である吸収性物品50の構成を模式的に示す平面図である。
図1は吸収性物品50をトップシート25側から見た平面図である。
図2は、本発明の第2実施形態である吸収体1の構成を模式的に示す幅方向断面図である。
図3は、吸収体1に備わる基体不織布11及びカバー不織布15の各構成を模式的に示す斜視図である。
図4は、吸収体1に備わる高吸収性シート10の構成を模式的に示す幅方向断面図である。
【0014】
本明細書において、吸収体1又は吸収性物品50の長手方向とは、吸収体1を備える吸収性物品50を着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、図中符号Yで示す方向である。吸収体1又は吸収性物品50の幅方向とは、長手方向に対して直交する方向であり、図中符号Xで示す方向である。吸収体1又は吸収性物品50の厚み方向とは、トップシート25、吸収体1、及びバックシート30といった各部材を積層する方向であり、図中符号Zで示す方向である。また、吸収体1又は吸収性物品50の肌側面とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側表面とは、吸収性物品50を着用したときに着用者の衣類に接触する表面又は衣類を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
[吸収性物品]
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的なものとして、例えば、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせて用いることもできる。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、
図1に示すように、これを着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート25と、トップシート25に対向して配置され、これを着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート25とバックシート30との間に配置された吸収体1と、トップシート25の肌側表面に設けられた一対のギャザーシート40と、を備えている。これにより、吸収体1は、トップシート25とバックシート30の間に挟まれた構造となり、尿等の体液は、トップシート25を通って吸収体1に吸収及び保持される。本実施形態の中には、吸収性物品50は、吸収体1がフラッフパルプを含有せず、かつ体液の吸収性及び着用感が良好である実施形態もある。
【0017】
吸収性物品50の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することにより、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等に適した吸収性物品1を得ることができる。以下、シート状の各構成部材について、順を追って詳しく説明する。
【0018】
(トップシート)
トップシート25は、吸収体1に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体1を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート25は、着用者の肌に当接する場合があることから、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0019】
また、トップシート25には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート25には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0020】
強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート25の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。トップシート25の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体1へと誘導するために必要とされる、吸収体1を覆う形状であればよい。
【0021】
(吸収体)
本実施形態の吸収体1は、
図2に示すように、高吸収性シート10と、基体不織布11の起毛面及びカバー不織布15の非肌側面のほぼ全体に接着された親水性シート20と、を有する。本実施形態の吸収体1は、高吸収性シート10と親水性シート20とのシート状積層体であり、少なくとも一部を折り曲げることなく、平坦な立体形状で用いられる。吸収性物品50を着用した場合、基体不織布11の肌側面(起毛させていない側の面)が、トップシート25に接するように設けられる。本実施形態の中でも、フラッフパルプを含まない吸収体1は、尿の逆戻りが抑制され、さらさらとした肌触りを維持しやすい。
【0022】
本実施形態の吸収体1は、成人用又は幼児用を問わず、テープタイプの吸収性物品、パンツタイプの吸収性物品、尿取りパッド、軽失禁パッドなど特に限定されることなく用途に応じて様々な吸収性物品に用いることができる。
【0023】
吸収体1の長手方向の寸法は100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。吸収体1の幅方向の寸法Dは50mm以上500mm以下であることが好ましく、66mm以上400mm以下であることがより好ましい。
【0024】
吸収体1の厚さは、平坦な状態において、35g/cm2の荷重下で測定した厚さが1.0mm以上4.0mm以下であり、1.5mm以上3.8mm以下であることが好ましい。吸収体1の35g/m2の荷重下での厚さを上記の数値範囲内とすることにより、吸収体1を備える吸収性物品50の着用感を良好なものとすることができる。なお、このときの吸収体1の厚さとは、平坦な状態において、起毛面に高吸収性ポリマー12を固着担持させた基体不織布11と、基体不織布11の起毛面と接着させた親水性シート20との合計の厚さを意味する。また、吸収体1の35g/cm2の荷重下で測定した厚さが、無荷重状態で測定した厚さの30%以上70%以下であり、40%以上60%以下であることが好ましい。厚さの比率を上記の数値範囲内とすることにより、吸収体1を備える後述の吸収性物品50の着用感を良好なものとすることができる。
以下、吸収体1の構成部材について詳細に説明する。
【0025】
<基体不織布>
図3は、本実施形態の吸収体1に備わる基体不織布11及びカバー不織布15の構成を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、基体不織布11の片側表面は起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート10に適度な厚みとやわらかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時のフィット感を向上させることができる。また、基体不織布11を上記のように起毛させることにより、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。その結果、高吸収性ポリマー12を固着担持させるための接着剤の使用量を少なくすることができるため、吸収性物品50全体としてのゴワゴワ感を低減できる。本実施形態の基体不織布11の長手方向及び幅方向は、吸収性物品50の長手方向及び幅方向にそれぞれ一致している。
【0026】
基体不織布11としては種々の不織布を使用でき、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の、複数の異種又は同種の不織布の積層体である複合不織布等が挙げられる。これらの不織布のうち、嵩高さの得やすいエアスルー不織布を用いることが好ましい。基体不織布11の片側表面を起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチが挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により起毛させる方法を用いることが好ましい。本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布11の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、(T2―T1)/T1×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。
【0027】
基体不織布11の長手方向の寸法は100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上700mm以下であることがより好ましい。基体不織布11の幅方向の寸法Bは50mm以上500mm以下であることが好ましく、66mm以上400mm以下であることがより好ましい。基体不織布11の厚さは、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上8.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上6.0mm以下であることがより好ましい。また、基体不織布11の坪量は、20g/m2以上120g/m2以下であることが好ましく、30g/m2以上110g/m2以下であることがより好ましい。
【0028】
基体不織布11を構成する繊維の太さは、1.8dtex以上9.0dtex以下であることが好ましく、2.0dtex以上6.0dtex以下であることがより好ましい。このように上記の数値範囲内で基体不織布11を構成する繊維の太さを調整することにより、基体不織布11の起毛した部分(起毛面)の繊維間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持しやすくなる。
【0029】
<カバー不織布>
カバー不織布15は、
図3に示すように、基体不織布11の長手方向に沿って起毛面の一部を覆うように、配置される。カバー不織布15があることで、後述する高吸収性シート10の作製において高吸収性ポリマー12を固着担持するときに、基材不織布11の、カバー不織布15と厚さ方向で重なる起毛面は、高吸収性ポリマー12の非存在領域14となる。非存在領域14に高吸収性ポリマー12が存在しないことにより、非存在領域14が疑似的なスリットの役割を果たし、体液を吸収体1に素早く拡散することができる。カバー不織布15の基材は、体液の拡散速度が速く、素早く拡散できるものであればよく、例えば、親水性不織布、特に、エアスルー不織布が好ましい。カバー不織布15は、ホットメルト接着剤により、基体不織布11の起毛面に接着されていることが好ましい。
【0030】
本実施形態のカバー不織布15は、より具体的には、
図3に示すように、基体不織布11の幅方向中央部において、基体不織布11の長手方向の一方の縁辺から他方の縁辺まで延びるように配置されているが、本実施形態に限定されず、基体不織布11の長手方向途中部からの他方の縁辺まで延びるように配置されていてもよい。基体不織布11の幅方向の寸法Bに対するカバー不織布15の幅方向の寸法Aの比率は、5%以上50%以下である。比率が50%を超える場合、吸収体1における高吸収性ポリマー12の保持量が減少することにより、吸収性能が低下する傾向がある。比率が5%未満である場合、体液を受液する位置の高吸収性ポリマー12が吸水した後に膨潤し、ゲルブロッキングが生じ、吸収体1の吸収性能が低下する傾向がある。なお、幅方向中央部に配置されるとは、基体不織布11の幅方向中央とカバー不織布15の幅方向中央が厚さ方向で一致する位置に配置されることを指す。また、基体不織布11の幅方向の寸法Bに対するカバー不織布15の幅方向の寸法Aの比率は、8%以上47%以下であることが好ましい。また、カバー不織布15は、その長手方向寸法が、その幅方向寸法よりも大きくなるように構成されている。
【0031】
カバー不織布15の長手方向の寸法は100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。さらに、カバー不織布15の幅方向の寸法Aは2.5mm以上250mm以下であることが好ましく、3.3mm以上200mm以下であることがより好ましい。カバー不織布15の厚さは、0.1mm以上3.0mm以下が好ましく、その坪量は、10g/m2以上60g/m2以下が好ましく、15g/m2以上40g/m2以下がより好ましい。厚さが0.1mm未満、又は坪量が10g/m2未満若しくは60g/m2より大きいと、基体不織布11に固着担持された高吸収性ポリマー12全体への液体の拡散が不十分になる傾向がある。厚さが3.0mmより厚い場合、製品にしたとき硬さが出てしまい、着用時に違和感が出てしまう傾向がある。
【0032】
本実施形態のカバー不織布15は、基体不織布11の長手方向両端の平面形状が略四角形であるが、これに限定されず、例えば、略三角形状、略半球状、喇叭状(先端に向かうほど径が大きくなる形状)などでもよい。ここで、基体不織布11の長手方向両端の平面形状とは、カバー不織布15の先端部のみを幅方向に切り取った部分の形状を意味する。このように、カバー不織布15の平面形状を部分的に変更しても、非存在領域14の総面積を適宜調整することにより、本実施形態とほぼ同等又はそれ以上の効果が得られる。また、基体不織布11の四周の縁辺に沿って、枠状にカバー不織布15を設けてもよく、さらに、基体不織布11の長手方向に延びる帯状の複数のカバー不織布15を、基体不織布11の幅方向にほぼ平行に配置するように構成してもよい。
【0033】
<高吸収性シート>
図2は、本実施形態の吸収体1に用いる高吸収性シート10の幅方向断面図である。本実施形態の高吸収性シート10は、
図2に示すように、片側表面が起毛した基体不織布11と、基体不織布11の起毛面の一部を覆うカバー不織布15と、基体不織布11の起毛面の繊維間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、を有する。このように高吸収性ポリマー12が分散して固着担持されることにより、高吸収性ポリマー12だけでなく、その周辺の基体不織布11にも尿等の体液が適度に拡散又は保持されることから吸収性能が向上し、フラッフパルプの非存在下でも十分な吸収性能を確保することができる。また、上述したようにカバー不織布15が存在することで、カバー不織布15と厚さ方向で重なる基体不織布11の起毛面に高吸収性ポリマー12の非存在領域14が設けられることにより、非存在領域14が疑似的なスリットの役割を果たし、高吸収性シート10及び後述する吸収体1の吸収性能が向上する。
【0034】
<高吸収性ポリマー>
高吸収性ポリマー12としては、尿を吸収及び保持し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。また、高吸収性ポリマー12の坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保する観点から、150g/m2以上1000g/m2以下とすることが好ましい。また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさをより向上させる観点から、高吸収性ポリマー12の坪量は、300g/m2以上900g/m2以下とすることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の高吸収性ポリマー12は、粒子状(粉体)である。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の形態を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート10が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、50μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0036】
高吸収性ポリマー12は、ホットメルト接着剤により、基体不織布11の起毛面の繊維間に固着担持されていることが好ましい。基体不織布11の坪量が比較的低い場合には、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー12を基体不織布11の起毛面の繊維間に固着担持させることにより、高吸収性ポリマー12が基体不織布11の表面及び起毛した繊維という複数の部材で支持される。したがって、固着担持に要する接着剤の使用量を減少させ、接着剤に起因するゴワゴワ感の発生を抑制することができる。また、高吸収性ポリマー12の吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は10g/m2以下であることが好ましい。
【0037】
ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体やスチレン-イソプレン-スチレン系共重合体など合成ゴム系、又は、エチレン?酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法など公知の方法が利用できる。
【0038】
<親水性シート>
親水性シート20は、吸収性物品50を着用した場合に吸収体1の最も非肌側に位置し、親水性シート20の肌側面と、高吸収性シート10の非肌側面(基体不織布11の起毛面及びカバー不織布15の非肌側面)と、を接着することにより、高吸収性ポリマー12が吸収体1の外へ漏れることを防止することができ、着用時の肌触りも向上させることができる。親水性シート20としては、ティシュペーパー、吸収紙、スパンボンド不織布やエアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができ、入手性やコストの観点から親水性不織布又はティシュペーパーを用いることが好ましい。また、親水性シート20の坪量は、10g/m2以上60g/m2以下とすることが好ましく、13g/m2以上50g/m2以下とすることがより好ましい。なお、高吸収性シート10の起毛面を親水性シート20と接着する際には、高吸収性シート10と親水性シート20とを、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固定することが好ましい。
【0039】
<吸収体の製造方法>
吸収体1の製造方法としては、特に制限はないが、次の方法が一例として挙げられる。まず、基体不織布11の片側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。その後、ホットメルト接着剤等によりカバー不織布15を基体不織布11の起毛した面に接着させる。次に、高吸収性ポリマー12をホットメルト接着剤等により、基体不織布11の起毛した部分の繊維間に固着担持させる。カバー不織布15により、カバー不織布15の下に高吸収性ポリマー12の非存在領域14が設けられ、吸収体1のスリットのような役割を果たす。その後、基体不織布11の起毛面側と親水性シート20とをホットメルト接着剤等で接着し、高吸収性シート10を得る。
【0040】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体1が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの積層体等の、異種又は同種の樹脂フィルムの積層体である複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の、異種又は同種の不織布の積層体である複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。
【0041】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の観点から、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止する観点から、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0042】
(立体ギャザー)
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横漏れを防止する。立体ギャザー40は、吸収性物品50を着用したときに、トップシート25の肌側表面の幅方向両端部近傍において、吸収性物品50の長手方向に延びるように立設された一対の部材である。吸収性物品50の幅方向における立体ギャザー40の一端はバックシート30に固定され、その幅方向途中部はトップシート25に固着され、他端はトップシート25に固定されない自由端となるように、立体ギャザー40が配置される。
【0043】
立体ギャザー40は、例えば、シート状の立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの幅方向両端部に固定され、長手方向に延びるように設けられた弾性部材と、を備え、弾性部材が固定された領域が前述の自由端となる。弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー40が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。なお、立体ギャザーシートと弾性部材とを一体成形してもよい。
【0044】
立体ギャザー40に用いられる弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられ、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の、異種又は同種の不織布の積層体である不記号不織布等が使用される。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザー40を備えていない形態をも含んでいる。
【0045】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品50の製造方法としては、上記のようにして得られた吸収体1をトップシート25とバックシート30との間に挟持し、トップシート25の上に立体ギャザー40を設置し、トップシート25とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0046】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
<吸収体及び吸収性物品の作製>
(1)高吸収性シートの作製
まず、エアスルー不織布(坪量40g/m2、幅方向の寸法60mm、長手方向の寸法400mm)を用意し、基体不織布の片側表面を回転ノコ刃で物理的に起毛させて、基体不織布を作製した。次いで、カバー不織布(坪量15g/m2、幅方向の寸法30mm、長手方向の寸法400mm)を、ホットメルト接着剤により基体不織布の幅方向両端からそれぞれ15mmの距離を空けて、基体不織布の幅方向中央部に接着した。その後、基体不織布の起毛面に高吸収性ポリマー(坪量380g/m2)を分散させ、ホットメルト接着剤により、基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持させ、高吸収性シートを得た。
【0049】
(2)吸収体の作製
親水性シートとしてスパンボンド不織布(坪量10g/m2、幅方向の寸法60mm、長手方向の寸法400mm)を用意し、上記で得られた高吸収性シートにおける基体不織布の起毛面側と、ホットメルト接着剤を塗布した親水性シートとを接着し、吸収体を得た。
【0050】
(3)吸収性物品の作製
上記で得られた吸収体の基体不織布側にトップシート(坪量25g/m2、幅70mm、長手400mm)を、また、親水性シート側に通気性ポリエチレンフィルム(坪量23g/m2、幅70mm、長手400mm)をホットメルト接着剤でそれぞれ接着し、実施例1の吸収性物品を得た。
【0051】
(実施例2)
カバー不織布として幅方向の寸法15mm、長手方向の寸法400mmのエアスルー不織布を使用する以外は、実施例1と同様にして、吸収体及び実施例2の吸収性物品を作製した。
【0052】
(実施例3)
カバー不織布として幅方向の寸法6mm、長手方向の寸法400mmのエアスルー不織布を使用する以外は、実施例1と同様にして、吸収体及び実施例3の吸収性物品を作製した。
【0053】
(比較例1)
幅方向の寸法60mm、長手方向の寸法400mmの、実施例1と同様に起毛した基体不織布及び親水性シートを使用し、カバー不織布を配置しない以外は、実施例1と同様にして、吸収体及び比較例1の吸収性物品を作製した。
【0054】
(比較例2)
エアスルー不織布(坪量20g/m2)/高吸収性ポリマー(坪量280g/m2)/エアスルー不織布(坪量20g/m2)/高吸収性ポリマー(坪量100g/m2)/スパンレース不織布(坪量20g/m2)を積層したシート(幅方向の寸法はすべて60mm、長手方向の寸法はすべて400mm)を吸収体として用いた。なお、比較例2で用いた各エアスルー不織布については、実施例1で用いた基体不織布のような起毛処理は行わなかった。この吸収体を用いる以外は実施例1と同様にして、比較例2の吸収性物品を作製した。
【0055】
(比較例3)
高吸収性ポリマー(坪量380g/m2)とフラッフパルプ(坪量400g/m2)との混合物をティシュペーパー(16g/m2)で覆い、幅方向寸法60mm、長手方向寸法400mmの略矩形状に成形し、吸収体として用いた。この吸収体を用いる以外は実施例1と同様にして、比較例3の吸収性物品を作製した。
【0056】
(比較例4)
いずれも幅方向寸法が70mm、長手方向寸法が400mmの、実施例1と同様に起毛させた基体不織布及び親水性シートを使用して、高吸収性ポリマーを坪量135g/m2で分散させて高吸収性シートを作製し、カバー不織布を配置しない以外は、実施例1と同様にして、吸収体及び比較例4の吸収性物品を作製した。
【0057】
<測定項目>
実施例1~3及び比較例1~4で得られた吸収体又は吸収性物品を用いて、下記の吸収速度、逆戻り量及び吸収体の厚さを測定した。また、下記の官能評価を行った。それぞれの結果を表1に示す。なお、表1では、高吸収性ポリマーを「SAP」とする。
【0058】
(吸収速度)
実施例1~3及び比較例1~4の吸収体に、46g/cm2の加圧下で、内径30mmの筒より40mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度1回目として計測した。3分経過後、再度40mlの0.9質量%生理食塩水(37℃)を注水し、生理食塩水が吸収体表面へ吸収されるまでの時間(秒)を吸収速度2回目として計測した。数値が小さいほど、吸収性に優れることを意味する。
【0059】
(逆戻り量)
実施例1及び比較例1~4の吸収体に、生理食塩水200mlを注水し、注水してから10分後に35gf/cm2の荷重でろ紙を吸収体表面に圧着させ、1分間でろ紙に逆戻りした水分量(g)を測定した。逆戻り量(g)は、前記方法で食塩水を逆戻りさせたろ紙の重量から、ろ紙自体の重量を減じたものである。逆戻り量が少ないほど、吸収体がドライな状態であることを示す。
【0060】
(吸収体の厚さ)
実施例1~3及び比較例1~4の吸収体に、圧力を加えないときの厚さ(無荷重厚さ)と、所定の圧力(ここでは35g/cm2)を負荷したときの厚さ(荷重厚さ)を測定した。なお、35g/cm2の荷重下での厚さは、吸収性物品におもりを乗せた状態のおもりの所定位置の高さから、おもり自体における同所定位置の高さを減じた値として求められる。また、厚さ比率(=荷重厚さ/無荷重厚さ)を求めた。
【0061】
(官能評価)
8人のパネラーの協力の下、実施例1及び比較例1~3の各吸収体を用いたテープ止めタイプの吸収性物品を着用した場合の、着用感(フィット感、やわらかさ)と吸収性(吸収性物品外への漏れ(外漏れ)、さらさら感)について、「良い」又は「悪い」の2択で官能評価を行った。着用者は8時間使用し、日常動作における評価を行い、その結果を表1に示した。なお、外漏れについて、「良」は漏れないことであり、「悪い」は漏れが発生することである。
〇:「良い」を選んだ着用者が6人以上8人以下のとき
△:「良い」を選んだ着用者が3人以上5人以下のとき
×:「良い」を選んだ着用者が1人若しくは2人のとき、又は「良い」を選んだ着用者が1人もいないとき
【0062】
【0063】
実施例1~3は、やわらかさ、フィット感、外漏れ(吸収性物品外への漏れなさ)及びさらさら感のいずれも良好であった。一方で、カバー不織布を有しない高吸収性シートを1枚のみ用いた比較例1はフィット感及びさらさら感に劣っていた。基体不織布と高吸収性ポリマーを積層した比較例2はやわらかさ及びフィット感に大きく劣り、吸収性物品外への漏れも発生していた。フラッフパルプを用いた比較例3は、さらさら感に大きく劣った。また、坪量の小さい高吸収性ポリマーを用いた比較例4はフィット感に劣り、吸収性物品外への漏れも発生していた。
【0064】
以上より、本発明の吸収性物品によれば、フラッフパルプを含有せず、吸収性及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 吸収体
10 高吸収性シート
11 基体不織布
12 高吸収性ポリマー
14 非存在領域
15 カバー不織布
20 親水性シート
25 トップシート
30 バックシート
40 立体ギャザー
50 吸収性物品