(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】被膜剥離装置及び巻線装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20231115BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20231115BHJP
B26D 5/08 20060101ALI20231115BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H02G1/12 068
H02G1/12 065
B26D3/00 603Z
B26D5/08 D
B26D7/18 E
(21)【出願番号】P 2019198698
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】小松原 毅伺
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 秀明
(72)【発明者】
【氏名】高島 正
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由太
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実公平6-32739(JP,Y2)
【文献】特開平11-196513(JP,A)
【文献】実開昭53-107951(JP,U)
【文献】特開平4-325813(JP,A)
【文献】特開2010-183683(JP,A)
【文献】特開2012-90489(JP,A)
【文献】特開平11-332048(JP,A)
【文献】特開昭64-71584(JP,A)
【文献】特開昭60-29704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
B26D 3/00
B26D 5/08
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上にある導線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
前記導線の表面に接触可能であって接触部位の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有する剥離工具と、
前記導線の搬送方向において前記導線に対する前記剥離工具の位置を変化させる変位機構と、
前記導線の表面に接触可能であって、前記変位機構により前記剥離工具と共に前記導線に対する位置が変化するように配置され
、前記導線に付着した塵を前記導線から除去する除去部とを備える、被膜剥離装置。
【請求項2】
前記剥離工具を導線の搬送経路に平行な回転軸周りに回転させる剥離工具駆動機構をさらに備え、
前記剥離工具は、前記回転軸周りに並ぶ複数の前記剥離刃を有し、前記剥離工具が剥離工具駆動機構により回転させられることで前記剥離刃のそれぞれを前記導線の表面に接触させるように構成されており、
前記導線は前記回転軸に沿って配置されている、請求項1に記載の被膜剥離装置。
【請求項3】
前記剥離工具を覆うハウジングと、
前記ハウジング内において前記導線の表面に向けて流体を噴出する噴出部とをさらに備える、請求項1又は2に記載の被膜剥離装置。
【請求項4】
前記搬送経路上における保持位置において前記導線を保持する保持部をさらに備え、
前記保持部により前記導線が保持された状態で、前記変位機構が、前記剥離工具と前記保持位置との距離が大きくなるように、前記剥離工具の前記導線に対する位置を変化させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の被膜剥離装置。
【請求項5】
巻枠が取り付けられる主軸を回転させる巻回部と、
前記主軸に取り付けられている巻枠に導線を送り出すヘッド部と、
前記ヘッド部よりも導線の搬送経路の上流側に配置された請求項1から
4のいずれか1項に記載の被膜剥離装置とを備える、巻線装置。
【請求項6】
巻枠が取り付けられる主軸を回転させる巻回部と、
前記主軸に取り付けられている巻枠に導線を送り出すヘッド部と、
前記ヘッド部よりも導線の搬送経路の上流側に配置された、前記搬送経路上にある導線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置とを備え、
前記被膜剥離装置は、
前記導線の表面に接触可能であって接触部位の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有する剥離工具と、
前記導線の搬送方向において前記導線に対する前記剥離工具の位置を変化させる変位機構とを有する、巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の絶縁被膜を剥離することができる被膜剥離装置及び巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被膜剥離装置としては、切断刃の刃先が内部に突出する筒体を回転させ、筒体に挿入した電線の被膜を剥離できるようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の被膜剥離装置としては、線材を2箇所でクランプしたうえで、その間の部分の線材に接触させたカッターを線材周りに回転させて線材の被膜の剥離を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-112608号公報
【文献】特開2012-90489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の被膜剥離装置においては、例えば巻線を製造する場合など、搬送経路上にある導線の絶縁被膜を剥離することを、容易に行うことができないという課題があった。
【0006】
例えば、上述の特許文献1に記載の構成では、電線を回転する筐体に挿入することが必要であり、搬送経路上にある導線については対応することができない。また、上述の特許文献2に記載の構成では、2箇所を固定した線材のうち、カッターを接触させた部位の被膜を剥離することしかできず、より広い幅の被膜を剥離する場合には、時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第一の発明の被膜剥離装置は、搬送経路上にある導線の絶縁被膜を剥離する被膜剥離装置であって、導線の表面に接触可能であって接触部位の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有する剥離工具と、導線の搬送方向において導線に対する剥離工具の位置を変化させる変位機構とを備える、被膜剥離装置である。
【0008】
かかる構成により、容易に導線の絶縁被膜の剥離を行うことができる。
【0009】
また、本第二の発明の被膜剥離装置は、第一の発明に対して、剥離工具を導線の搬送経路に平行な回転軸周りに回転させる剥離工具駆動機構をさらに備え、剥離工具は、回転軸周りに並ぶ複数の剥離刃を有し、剥離工具が剥離工具駆動機構により回転させられることで剥離刃のそれぞれを導線の表面に接触させるように構成されており、導線は回転軸に沿って配置されている、被膜剥離装置である。
【0010】
かかる構成により、速やかに導線の絶縁被膜の剥離を行うことができる。
【0011】
また、本第三の発明の被膜剥離装置は、第一又は二の発明に対して、剥離工具を覆うハウジングと、ハウジング内において導線の表面に向けて流体を噴出する噴出部とをさらに備える、被膜剥離装置である。
【0012】
かかる構成により、剥離後の導線に粉塵が付着することを防止することができる。
【0013】
また、本第四の発明の被膜剥離装置は、第一から三のいずれか1つの発明に対して、搬送経路上における保持位置において導線を保持する保持部をさらに備え、保持部により導線が保持された状態で、変位機構が、剥離工具と保持位置との距離が大きくなるように、導線に対する剥離工具の位置を変化させる、被膜剥離装置である。
【0014】
かかる構成により、確実に導線の絶縁被膜を剥離することができる。
【0015】
また、本第五の発明の被膜剥離装置は、第一から四のいずれか1つの発明に対して、導線の表面に接触可能であって、変位機構により剥離工具と共に導線に対する位置が変化するように配置された除去部をさらに備える、被膜剥離装置である。
【0016】
かかる構成により、確実に導線に付着している異物を取り除くことができる。
【0017】
また、本第六の発明の巻線装置は、第一から五のいずれか1つの発明に対して、巻枠が取り付けられる主軸を回転させる巻回部と、主軸に取り付けられている巻枠に導線を送り出すヘッド部と、ヘッド部よりも導線の搬送経路の上流側に配置された被膜剥離装置とを備える、巻線装置である。
【0018】
かかる構成により、容易に導線の絶縁被膜の剥離が行われた部分を有する巻線を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による被膜剥離装置及び巻線装置によれば、容易に導線の絶縁被膜の剥離を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る巻線装置の側面図
【
図3】同巻線装置に設けられている被膜剥離装置の平面図
【
図5】同被膜剥離装置の剥離工具が設けられている部位を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、被膜剥離装置及び巻線装置等の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
なお、以下において、巻線装置の巻回部の主軸の回転軸を主軸ということがあり、当該回転軸に沿う方向を「トラバース方向」、回転軸に直交する方向を「径方向」、とそれぞれ称することがある。また、以下において、軸方向を前後方向(
図1における手前側が「前」)とし、径方向のうち水平面に垂直な方向を上下方向(
図1における上側が「上」)として、各部の形状や位置関係を説明する。また、巻線装置のトラバース部について、一の基点に対して導線の供給源から離れる側(下流側)にある点を「後段」と称することがある。なお、これらの呼び方は、実施の形態における巻線装置自体の構成を説明の便宜のために定義したものにすぎず、本発明に係る巻線装置の使用態様などについて、何ら限定するものではない。
【0023】
また、特に被膜剥離装置に着目した場合において、剥離工具の回転軸を単に回転軸と称することがある。また、当該回転軸周りの方向を周方向、当該回転軸に直交する方向を「径方向」、とそれぞれ称することがある。被膜剥離装置についても、一の基点に対して導線が搬送される方向(搬送方向)の下流側にある点を「後段」と称することがある。なお、これらの呼び方は、実施の形態における被膜剥離装置自体の構成を説明の便宜のために定義したものにすぎず、本発明に係る被膜剥離装置の使用態様などについて、何ら限定するものではない。
【0024】
(実施の形態1)
【0025】
実施の形態1において、巻線装置は、巻枠が取り付けられる主軸を回転させる巻回部と、主軸に取り付けられている巻枠に導線を送り出すヘッド部を搭載したトラバース部とを備えるものである。トラバース部において、ヘッド部よりも導線の搬送経路の上流側には、被膜剥離装置が配置されている。本実施の形態にかかる被膜剥離装置についての詳細な説明を行う前に、巻線装置の構成について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1に係る巻線装置1の側面図である。
図2は、同巻線装置1の平面図である。
【0027】
図1において、前から見た巻線装置1が示されている。
図1及び
図2の右端から、巻線装置1に、例えばドラム等に巻回された導線Lが巻線装置1に供給されるが、その部位の図示は省略されている。なお、導線Lとしては、絶縁被膜を有する銅線が用いられるが、これに限られるものではない。
【0028】
図1に示されるように、巻線装置1は、大まかに、制御部2と、操作入力部6と、巻回部10と、トラバース部40とを備える。
【0029】
巻回部10は、導線を巻き付けるための巻枠21を回転させて導線Lを巻き上げる(巻回する、巻き回すなどということもある。)部位である。トラバース部40は、巻枠21に導線Lを送り出す部位であって、巻回部10に連動して動作する。
【0030】
制御部2は、操作入力部6により受け付けられた作業者による操作やその他の取得した情報に基づいて、巻回部10及びトラバース部40等の動作を制御する。
【0031】
操作入力部6は、例えば種々の操作ボタンやスイッチ等が配置された操作パネルであり、作業者による操作が入力される部位である。なお、操作入力部6は、テンキーやキーボードやマウスやタッチパネル等を利用して構成されているものなど、何でもよい。操作入力部6に入力された操作は、例えば、制御部2により受け付けられる。なお、巻線装置1に通信可能に接続された他の装置において受け付けられた操作に基づく信号等を受信することにより、制御部2が当該操作を受け付けることができるように構成されていてもよい。
【0032】
制御部2は、格納部3を備える。
【0033】
格納部3は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。格納部3には、所定の設定情報が格納されている。所定の設定情報は、例えば、一の巻線20を製造する場合に実行される、巻回部10及びトラバース部40のそれぞれを同期させてシーケンス制御を行うための制御プログラムであるが、これに限られない。また、制御プログラムにより利用されるパラメータ(例えば、巻線の回転数(巻数)や、導線Lの径寸法や、ヘッド部90を変位させる位置や主軸の回転角などであるが、これに限られない)等が設定情報として格納されていてもよい。
【0034】
なお、格納部3に設定情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよく、あるいは、入力デバイスを介して入力された設定情報が格納部3で記憶されるようになってもよい。
【0035】
制御部2は、例えば、プログラマブルロジックコントローラであるが、これに限られない。制御部2は、その他のMPUやメモリ等から実現されうるコンピュータ等であってもよい。制御部2の処理手順は、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されていてもよいし、ハードウェア(専用回路)で実現されていてもよい。
【0036】
制御部2は、例えば、格納部3から読み出した設定情報に基づいてシーケンス制御を行うことにより、主軸11を回転させる制御と、巻枠21とヘッド部90との相対的な位置関係を変化させる制御とを行う。また、制御部2は、例えば、被膜剥離装置60を駆動させて導線Lの被膜を剥離させるように、被膜剥離装置60の制御を行う。
【0037】
巻回部10は、主軸11を備える。
【0038】
本実施の形態において、主軸11は、後端部において巻回部10の本体に支持されている。主軸11は、前方に突出する片持ち梁状に構成されている。主軸11は、例えば、巻回部10に設けられているモータ(図示せず)の駆動力により、回転軸を中心に回転する。本実施の形態においては、主軸11は、導線Lを巻き上げる際には、
図1に矢印R1で示される方向に回転するが、これに限られない。
【0039】
主軸11には、巻線20の巻枠21が取り付けられる。巻枠21は、導線Lが巻き付けられる部分であり、例えば樹脂等の絶縁体で構成されている。巻枠21は、主軸11の前方から主軸11の前端部近傍に配置された状態で、主軸11に対して回転しないようにして固定される。すなわち、巻枠21は、主軸11と共に回転する。
【0040】
トラバース部40は、移動フレーム41と、ボールねじ43と、支持台45と、矯正装置50と、被膜剥離装置60と、切断装置80と、ヘッド部90とを備える。トラバース部40は、巻枠21に巻き上げられる導線Lをヘッド部90に向けて導く。本実施の形態において、トラバース部40は、トラバース方向において巻枠21に対するヘッド部90を変位させる。トラバース部40の動作は、制御部2によって、巻回部10の動作と同期して行われるように制御される。
【0041】
移動フレーム41は、例えば、略水平の板状部を有している。移動フレーム41は、支持台45の上方に配置されており、支持台45に対してトラバース方向に変位可能である。移動フレーム41は、レールを介して、支持台45に対してトラバース方向にスライド可能である。本実施の形態においては、トラバース方向が移動方向となるように配置されたボールねじ43によって、移動フレーム41がトラバース方向に変位するように構成されている。なお、ボールねじ43は、制御部2による制御動作(駆動電流の供給など)に従って動作する図示しないモータ等により駆動されるが、これに限られない。
【0042】
移動フレーム41には、矯正装置50と、被膜剥離装置60と、切断装置80と、ヘッド部90とが、導線Lの搬送経路に沿ってこの順に配置されている。矯正装置50と、被膜剥離装置60と、切断装置80と、ヘッド部90とは、移動フレーム41とともに、トラバース方向に変位可能に配置されている。すなわち、トラバース部40は、巻回部10に対して、ヘッド部90をトラバース方向に変位させることができるように構成されている。
【0043】
なお、本実施の形態において、2本の導線L1,L2が一筋の導線Lとしてまとめられてヘッド部90から巻枠21に送り出される。導線L1,L2のそれぞれは、その供給源(例えば、導線L1,L2が巻回されたドラムなど)からトラバース部40に、別々に引込まれる。トラバース部40では、2本の導線L1,L2を一筋にまとめてヘッド部90から送り出すことができるように設けられている。なお、本実施の形態において、矯正装置50及び被膜剥離装置60は、導線L1と導線L2とをそれぞれ別の搬送経路において処理するように構成されており、切断装置80及びヘッド部90は、1つの搬送経路を通るように一筋にまとめられた導線L(導線L1,L2)をまとめて処理するように構成されている。
【0044】
矯正装置50は、移動フレーム41上において最も導線L1,L2の供給源に近い位置(上流側)に配置されている。矯正装置50は、例えば、搬送経路上の導線L1について接触するように配置された複数のローラと、導線L2について接触するように配置された複数のローラとにより、導線L1,L2の巻癖をそれぞれ矯正する。
【0045】
被膜剥離装置60は、矯正装置50の後段に配置されている。被膜剥離装置60は、導線L1,L2のそれぞれの外表面の絶縁被膜を除去可能に構成されている。被膜剥離装置60の詳細な構成については、後述する。
【0046】
切断装置80は、被膜剥離装置60よりも後段側に設けられている。切断装置80は、中央ローラ89と、クランプローラ81と、カッター85とを備える。切断装置80は、導線Lを切断する機能を有する。
【0047】
中央ローラ89は、被膜剥離装置60の後段に配置されている。中央ローラ89は、被膜剥離装置60を経由した導線L1,L2を1つの搬送経路にまとめて(1本に揃えて)、後段に送る。
【0048】
クランプローラ81は、上下に配置された2つのローラで導線Lを挟むことができるように構成されている。クランプローラ81は、2つのローラにより導線Lを挟んだ状態で、少なくとも一方のローラを回転しないようにロックすることにより、導線Lが搬送経路上で移動しないように固定することが可能である。なお、クランプローラ81は、導線Lにローラを接触させたり導線Lからローラを離間させたりすることができるように構成されており、導線Lを巻き上げている最中には2つのローラを離間させておくように構成されているが、これに限られるものではない。
【0049】
本実施の形態において、クランプローラ81は、導線Lをローラで挟持した状態でそのローラを駆動することにより、導線Lを巻枠21に向けて送り出すことができるように構成されている。例えば、巻き始めとなる導線Lの端部を巻枠21に送り出すために、クランプローラ81が用いられる。なお、これに限られず、クランプローラ81のローラはロックされているかフリーローラとなって従動するかのいずれかの状態をとるように構成されていてもよい。
【0050】
カッター85は、切断刃により搬送経路上の導線Lを挟み切ることができるように構成されている。
【0051】
切断装置80は、導線Lの切断時などに、クランプローラ81で導線Lを挟んで固定する。そして、その状態で、カッター85により導線Lを切断する。これにより、確実に、所定の位置で導線Lを切断することができる。
【0052】
ヘッド部90は、切断装置80の後段に配置されている。ヘッド部90は、ヘッドローラ91と、アクチュエータ95とを備える。ヘッドローラ91は、2本の導線L1,L2が1本に揃えられてなる導線Lを巻枠21に向けて送り出す。
【0053】
本実施の形態において、ヘッドローラ91は、移動フレーム41に軸支された腕部により支持されている。腕部と移動フレーム41との間には、アクチュエータ95が取り付けられている。すなわち、ヘッドローラ91の位置は、アクチュエータ95により変更可能となっている。本実施の形態においては、アクチュエータ95によりヘッドローラ91の上下方向の位置を変位させることができるように構成されている。アクチュエータ95は、通常の巻回範囲内に導線Lを巻回するとき、巻枠21に供給される導線Lのテンショナーとして機能するといえるが、このような機能を有していなくてもよい。なお、アクチュエータ95としては、例えば、空気圧により作動するエアシリンダが用いられるが、油圧により作動するもの、電磁力により作動するものなど、種々のものを用いることができる。
【0054】
このように構成されている巻線装置1は、巻枠21が取り付けられている主軸11を回転させるとともに、トラバース方向において、巻枠21とヘッド部90との相対的な位置関係を変化させることにより、巻枠21に導線Lを巻き付けていく。このような動作は、制御部2による制御に基づいて行うことができる。
【0055】
次に、本実施の形態にかかる被膜剥離装置60の構成例について説明する。被膜剥離装置60は、導線Lの搬送方向において、導線Lに対する剥離工具70の位置を変化させる変位機構62を備えている。また、本実施の形態において、被膜剥離装置60は、回転軸周りに複数の剥離刃73が配置された剥離工具70を回転させて、導線Lの被膜を剥離するように構成されている。変位機構62は、例えば、導線Lの搬送経路上における保持位置において導線Lを保持する保持部により導線Lが保持された状態で、剥離工具70と保持位置との距離が大きくなるように導線Lに対する剥離工具70の位置を変化させるが、これに限られるものではない。
【0056】
なお、被膜剥離装置60は、剥離工具70を覆うように設けられたハウジング65内において導線Lの外表面に向けて流体を噴出する噴出部66を備えるが、これに限られるものではない。また、本実施の形態において、被膜剥離装置60は、剥離工具70と共に変位する、導線Lの外表面に接触可能な除去部67,68を備えるが、これに限られるものではない。
【0057】
図3は、同巻線装置1に設けられている被膜剥離装置60の平面図である。
図4は、同被膜剥離装置60を示す側面図である。
【0058】
被膜剥離装置60は、移動台61、変位機構62、剥離工具駆動機構63、駆動軸64、第1除去部67、第2除去部68、挟持部(保持部の一例)69、剥離工具70、及びカップリング71などを備える。
【0059】
移動台61は、移動フレーム41の上部に配置されている。移動台61は、トラバース軸に垂直な方向であって移動フレーム41の上面に平行な方向(水平方向)に、移動フレーム41に対してスライド可能に配置されている。すなわち、移動台61は、導線L1,L2の搬送経路に平行な方向(搬送方向)にスライド可能に配置されている。例えば、移動台61は、移動フレーム41に設けられた1以上のレールに沿って、移動フレーム41に対して変位可能に配置されている。
【0060】
変位機構62は、例えば、ボールねじ及びそれを駆動するモータを含む。変位機構62は、例えば、モータを回転させることによりボールねじを駆動することで、移動フレーム41に対する移動台61の位置を変化させる。例えば、ボールねじは導線L1,L2の搬送方向に平行な方向に配置されており、ボールねじの回転に伴って、移動台61が搬送方向の下流側又は上流側に変位するようになっている。なお、変位機構62の構成はこれに限られず、例えばラック及びピニオンなどを備える機構や、移動台61に繋がれたワイヤを巻き上げたり巻き戻したりする機構などにより、移動フレーム41に対して移動台61の位置を変位させることが可能であればよい。
【0061】
なお、本実施の形態において、後述するように、剥離工具70は移動台61上にある。すなわち、変位機構62は、導線L1,L2の搬送方向において、剥離工具70の位置を変化させることができる。
【0062】
本実施の形態において、被膜剥離装置60のうち、駆動軸64、第1除去部67、第2除去部68、挟持部69、剥離工具70、及びカップリング71は、2つの導線L1,L2のそれぞれの搬送経路に対応するように、各搬送経路に一組ずつ設けられている。すなわち、駆動軸64、第1除去部67、第2除去部68、挟持部69、剥離工具70、及びカップリング71は、2つずつ設けられている。
【0063】
剥離工具70は、導線L1,L2の搬送経路に沿って設けられている。後述するように、剥離工具70は、搬送される導線L1,L2の外周面に剥離刃73(
図5に示す)の先端部を接触させながら回転することで、導線L1,L2の外周面を覆っている絶縁性のある被膜を剥離(除去)する。剥離工具70は、その中央を回転軸方向に貫通する穴を有しており、剥離工具70の中央を、導線L1,L2が貫通可能である。なお、剥離工具70の構成はこれに限られるものではない。
【0064】
剥離工具70は、駆動軸64の回転に伴って回転する。駆動軸64は、後述のように剥離工具駆動機構63に取り付けられている。駆動軸64を、剥離工具駆動機構63の出力軸ということもできる。駆動軸64は、例えば、筒形状を有しており、駆動軸64の中央を、導線L1,L2が貫通可能である。
【0065】
本実施の形態において、剥離工具70と駆動軸64との間には、それぞれ、カップリング71が配置されている。換言すると、剥離工具70は、カップリング71を介して、剥離工具駆動機構73からの駆動力が伝達される駆動軸64に取り付けられている。なお、カップリング71としては、例えばミスアライメントを許容するためのスリットが設けられているものが用いられるが、樹脂等によりミスアライメントを許容するように構成されたものであったり、他の構造によりミスアライメントを許容するものであってもよい。また、ミスアライメントを許容しないものであってもよい。
【0066】
剥離工具駆動機構63は、例えば、モータと、プーリー、ベルト、及び歯車などとで構成される駆動力伝達機構を有する。剥離工具駆動機構63には、2つの導線L1,L2の搬送経路に対応する2つの駆動軸64が取り付けられている。剥離工具駆動機構63は、2つの駆動軸64をそれぞれ回転させることで、剥離工具70を回転させる。すなわち、剥離工具駆動機構63は、剥離工具70を導線L1,L2の搬送経路に平行な回転軸周りに回転させる。なお、本実施の形態において、剥離工具駆動機構63は1つのモータを駆動させることで2つの駆動軸64を回転させることができるように構成されているが、これに限られない。
【0067】
第1除去部67は、剥離工具70の後段に配置されている。第1除去部67は、搬送経路にある導線L1,L2を側方から挟むように配置された2つの除去パッドを有している。除去パッドは、例えば不織布であるが、これに限られない。第1除去部67は、図示しない駆動機構(例えば、電磁力又は空気圧を利用したアクチュエータなどであるが、これに限られない)により、除去パッドで導線L1,L2を挟む閉状態と、除去パッドが導線L1,L2に接触しない開状態とのいずれかの状態をとることができる。第1除去部67が閉状態であるときに、導線L1,L2が搬送方向に搬送されたり後述のように移動台61が変位したりして導線L1,L2と第1除去部67との位置関係が変化することにより、第1除去部67により導線L1,L2の外表面が拭き取られる。これにより、導線L1,L2に付着した被膜の削りかす等が除去される。
【0068】
第2除去部68は、第1除去部68の後段に配置されている。第2除去部68は、搬送経路にある導線L1,L2が貫通するように構成されたケースの内部に、導線L1,L2に接触する拭き取り部材(例えば、ブラシなど)が収納された構造を有している。導線L1,L2が搬送方向に搬送されたり後述のように移動台61が変位したりして導線L1,L2に沿って第2除去部68が相対的に移動することとなり、導線L1,L2に付着した被膜の削りかす等が除去される。なお、第2除去部68はケースの内部に拭き取り部材が収納されている構造を有しているので、導線L1,L2の外表面から除去された塵等が周囲に飛散することがなく、導線L1,L2の周囲に塵等が付着することによるトラブルの発生を防止することができる。
【0069】
このように、本実施の形態においては、導線L1,L2の外表面に接触可能であって、変位機構62により剥離工具70と共に導線L1,L2に対する位置が変化するように配置された、2つの除去部67,68が設けられているが、これに限られない。第1除去部67と第2除去部68とのうち、いずれか一方が設けられていてもよい。
【0070】
挟持部69は、第2除去部68の後段に配置されている。挟持部69は、例えば搬送経路上の導線L1,L2を挟み込んだまま保持することが可能である。すなわち、挟持部69は、搬送経路上における保持位置(挟持部69により導線L1,L2を挟み込むことができる位置)において導線L1,L2を保持する保持部として機能する。挟持部69は、例えば、2つの部材間の距離を変更することにより導線L1,L2を挟持するか開放するかを切り替え可能であるが、これに限られない。例えば、挟持部69は、導線L1,L2を挟み込む2つのローラについて回転可能な状態か回転をロックした状態かを切り替えることにより、導線L1,L2を搬送方向に変位しないように保持するか搬送方向に変位可能にするかを切り替え可能であってもよい。
【0071】
ここで、本実施の形態において、被膜剥離装置60は、ハウジング65及び噴出部66を有している。ハウジング65及び噴出部66も、導線L1,L2のそれぞれの搬送経路に1組ずつ対応するように、合計2組が設けられている。
【0072】
ハウジング65は、例えば、剥離工具70及びカップリング71を覆うように構成されている。ハウジング65は、移動台61上に配置されている。ハウジング65の内部で剥離工具70が回転することにより、発生した削りかすなどの粉塵がハウジング65の外部に飛散することが防止される。これにより、導線L1,L2の周囲に塵等が付着することによるトラブルの発生を防止することができる。
【0073】
噴出部66は、ハウジング65内において導線L1,L2の外表面に向けて流体を噴出する。本実施の形態において、噴出部66は、例えば、空気を導線L1,L2に吹き付けることにより、導線L1,L2の外表面に付着している粉塵等を導線L1,L2から吹き飛ばす。なお、流体は空気に限られず、例えば窒素ガス等、他の気体を用いてもよし、液体であってもよい。
【0074】
なお、噴出部66に加えて、又は噴出部66に代えて、ハウジング65の内部において流体を吸引する吸引部が設けられていてもよい。吸引部を設けることにより、ハウジング65の内部において発生した粉塵等を吸引してハウジング65の内部から取り除き、粉塵等がハウジング65の内部において導線L1,L2に再付着したりハウジング65の外部に流出したりすることを防止することができる。
【0075】
図5は、同被膜剥離装置60の剥離工具70が設けられている部位を示す斜視図である。
【0076】
剥離工具70は、ホルダ72、剥離刃73、回動軸74、及び規制部材75を有している。
【0077】
本実施の形態において、剥離工具70は、剥離工具駆動機構63により回転することで、複数(例えば3つ)の剥離刃73のそれぞれの先端部分(刃部分)を導線L1,L2の外表面に接触させ、剥離刃73の接触部位の被膜を剥離するように構成されている。
【0078】
すなわち、ホルダ72は、カップリング71を介して駆動軸64に取り付けられている。ホルダ72は回転軸方向に貫通する穴部を有しており、導線L1,L2が内部を貫通するように構成されている。
【0079】
2つの剥離刃73は、回転軸周りに(周方向に)、略等間隔に並んでいる。剥離刃73の搬送方向下流側には、導線L1,L2に接触しうる刃部分が設けられている。剥離刃73は、搬送方向における中間部においてホルダ72に対して回動可能に、ホルダ72に支持されている。剥離刃73を支持する回動軸74は、例えば、剥離工具70の回転軸に対して略垂直な平面内に含まれるものであり、剥離刃73が回動軸74を中心に回動することで、刃部分が導線L1,L2に接触したり離間したりするようになっている。剥離刃73のうち、回動軸74よりも上流側の部分は、ウエイトとして機能する。すなわち、剥離工具70が回転軸周りに回転したときに作用する遠心力により、回動軸74よりも上流側の部分が径方向外側に向けて変位することに伴って剥離刃73が回動し、刃部分が径方向内側に押し付けられる。これにより、導線L1,L2に刃部分が押し付けられた状態が維持される。
【0080】
規制部材75は、剥離工具70の上流側の部位に配置されている円板状の部材である。規制部材75には、各剥離刃73の上流側の端部が係合する溝が形成されている。これにより、規制部材75に形成された溝に沿って、各剥離刃73が回動するようになっている。本実施の形態において、規制部材75は、ホルダ72に対して周方向に回転可能に配置されており、また、各溝は径方向とは所定の角度をなすように形成されている。このように形成された規制部材75により、3つの剥離刃73のそれぞれの刃部分と導線L1,L2の外表面との距離が略均一になるように、各剥離刃73の回動軸74周りの回動が規制される。
【0081】
図6は、同被膜剥離装置60の動作の一例を説明する図である。
【0082】
図6において、第1除去部67が閉状態である場合をハッチングを付すことにより示しており、また、挟持部69が導線L1,L2を挟持している場合をハッチングを付すことにより示している。
図6において、各部は模式的に示されており、ハウジング65及び噴出部66等の図示は省略されている。
【0083】
本実施の形態において、被膜剥離装置60は、挟持部69により導線L1,L2のそれぞれを挟み込んで保持した状態で、剥離工具70を駆動させながら剥離工具70を上流側に変位させることにより、搬送経路上にある導線L1,L2の一部分の被膜を、剥離工具70を変位させた幅にわたって除去することができる。なお、被膜の除去を行わない部位が搬送される場合には、第2除去部68を除く被膜剥離装置60の各部が導線L1,L2にほとんど接触しないように構成されているが、これに限られない。
【0084】
図6においてステップS11として示されるように、被膜の剥離が行われる際には、例えば、主軸11の回転が停止される。導線L1,L2の搬送が一旦停止される。そして、挟持部69により導線L1,L2のそれぞれが挟み込まれ、保持される。また、第1除去部67が開状態から閉状態とされ、導線L1,L2の外表面に除去パッドが接触している状態となる。そして、剥離工具70の回転が開始され、あわせて噴出部66からの空気の噴出も開始される。
【0085】
次に、ステップS12に移る。すなわち、挟持部69により導線Lが保持された状態で、変位機構62が駆動され、剥離工具70と保持位置(すなわち、挟持部69による保持が行われている位置)との距離が大きくなるように、導線L1,L2に対する剥離工具70の位置が変化する。本実施の形態においては、変位機構62の駆動に伴って移動台61が搬送方向上流側に変位する。なお、図において二点鎖線は変位前の移動台61の位置を示す。
【0086】
このように、剥離刃73が導線Lの外周面に接触するように剥離工具70が回転しながら、剥離工具70が導線L1,L2に対して変位するため、導線L1,L2の外周面の剥離領域LSの範囲で、確実に被膜が剥離される。剥離領域LSの長さは、移動台61が移動した距離D1に等しくなる。そのため、剥離領域LSの長さは、例えば制御部2によって変位機構62の駆動を制御することにより、適宜設定可能である。また、剥離により生じた粉塵が剥離領域LSの付近で導線L1,L2に付着しても、閉状態とされた第1除去部67及びその後段の第2除去部68により、粉塵が導線L1,L2から除去される。これにより、導線L1,L2に粉塵が付着していない状態で導線L1,L2を下流側に搬送することができる。
【0087】
このようにして剥離領域LSの作成が終了すると、ステップS13に移る。すなわち、剥離工具70の回転や空気の噴出は停止し、第1除去部67は開状態になる。また、挟持部69による挟持は開放される。これにより、導線L1,L2を、搬送方向に搬送することができる。また、変位機構62が駆動され、移動台61が搬送方向下流側に移動する。これにより、被膜の剥離が行われる前の状態に戻る。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態においては、被膜除去装置60により、搬送経路に位置しており剥離工具70を貫通する導線L1,L2の外表面の被膜を、導線L1,L2に対する剥離工具70の位置を変化させることにより、容易に剥離することができる。搬送方向における剥離領域LSの長さを比較的長く確保することができるため、速やかに被膜剥離を行うことができる。
【0089】
また、このような被膜除去装置60を用いることにより、容易に、導線の絶縁被膜が剥離された巻線を製造することができる。例えば、巻線の巻き始めから所定の回転数だけ主軸が回転したときに、主軸を停止させて被膜除去装置60により絶縁被膜の除去を行う。すなわち、導線L1,L2のうち、巻線の巻き終わりと次の巻線の巻き始めとなる部分が被膜除去装置60に差し掛かったときに、当該部位について被膜の除去を行い、剥離領域LSを形成する。そして、剥離領域LS部分で切断装置80により導線Lの切断を行うことで、巻き終わり部分の被膜が既に剥離されている導線Lを巻き付ける作業のみで、絶縁被膜が剥離された巻線を製造することができる。また、次の巻線の巻き始め部分もすでに被膜が剥離されているので、容易に次の巻線を製造することができる。
【0090】
(その他)
【0091】
なお、本実施の形態における制御動作は、ソフトウェアで実現してもよい。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布してもよい。また、このソフトウェアをCD-ROMなどの記録媒体に記録して流布してもよい。なお、本実施の形態における、導線の外表面に接触可能であって接触部位の絶縁被膜を剥離する剥離刃を有する剥離工具と、導線の搬送方向において、導線に対する剥離工具の位置を変化させる変位機構とを備える被膜剥離装置を動作させるために用いられるソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、被膜剥離装置60又は巻線装置1のコンピュータで実行されるプログラムであって、コンピュータに、剥離刃を回転させる第1のステップと、剥離刃を回転させる第1のステップを行った後で、変位機構を動作させて剥離工具の導線に対する相対的な位置を変化させる第2のステップとを実行させるための、プログラムである。
【0092】
なお、以上の実施の形態では、トラバース方向において巻枠の位置が固定されており、ヘッド部が変位することによって巻枠とヘッド部との相対的な位置関係が変化するように構成されているが、これに限られない。例えば、トラバース方向において、ヘッド部の位置が固定されており、巻枠が変位することにより、巻枠とヘッド部との相対的な位置関係が変化するように構成されていてもよいし、巻枠とヘッド部との両方がトラバース方向において変位可能になっていてもよい。
【0093】
被膜剥離時において、剥離工具よりも搬送方向上流側で導線が挟持部等により保持され、剥離工具が搬送方向下流側に変位することにより導線の一部分の被膜が剥離されるようにしてもよい。
【0094】
また、被膜剥離時の被膜剥離装置の動作は上述のものに限られず、あくまで、導線が剥離工具に対して相対的に変位すればよい。例えば、搬送方向における剥離工具の位置は不変であり、導線が搬送方向又はその反対の方向に搬送されることにより導線の一部分の被膜が剥離されるようにしてもよい。この場合、導線を搬送するための構成を、変位機構として把握することが可能である。
【0095】
このような構成を有する巻線装置は、変圧器において用いられる巻線の製造に用いられるものに限られない。すなわち、材質を問わず、巻枠に線材を巻き付ける作業を必要とする製品を製造するために広く適用可能である。
【0096】
また、上記実施の形態において、制御部等の各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、又は長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、又は、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、又は、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0097】
また、上記実施の形態において、制御部等の各構成要素で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、又は、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において、制御部等の各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、又は、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現されうる。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0099】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0100】
上述の実施の形態の構成そのものに限られず、上述の実施の形態のそれぞれの構成要素について、適宜、他の構成要素と置換したり組み合わせたりしてもよい。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明にかかる被膜剥離装置及び巻線装置は、容易に導線の絶縁被膜の剥離を行うことができるという効果を有し、被膜剥離装置及び巻線装置として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 巻線装置、60 被膜剥離装置、62 変位機構、63 剥離工具駆動機構、65 ハウジング、66 噴出部、67 第1除去部、68 第2除去部、69 挟持部(保持部の一例)、70 剥離工具、73 剥離刃、L 導線