(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20231115BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20231115BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q10/00
(21)【出願番号】P 2019204837
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100199277
【氏名又は名称】西守 有人
(72)【発明者】
【氏名】新里 貴史
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-127036(JP,A)
【文献】特開2017-201471(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026171(WO,A1)
【文献】特開2019-174870(JP,A)
【文献】特開2009-211611(JP,A)
【文献】特開2011-076161(JP,A)
【文献】特開2018-195127(JP,A)
【文献】特開2018-112876(JP,A)
【文献】特開2018-112875(JP,A)
【文献】特開2012-094049(JP,A)
【文献】特開2019-114172(JP,A)
【文献】特開2018-032347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108470(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0224910(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0307756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0103128(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0040181(US,A1)
【文献】特開2017-174133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムの管理を支援する管理システムであって、
過去に前記コンピュータシステムで発生したインシデントに関する情報と、当該インシデントへの対応手順と
を、対応付けて保持する保持手段と、
前記コンピュータシステムで新たに発生したインシデントに関する情報を、ユーザから取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段によって取得された情報に基づいて、新たに発生したインシデントに対応する過去のインシデントへの対応手順を前記保持手段から取得する第2取得手段と、
前記第2取得手段によって取得された対応手順を、取得された情報に基づいて更新する更新手段と、を備え
、
前記第2取得手段によって取得された対応手順は、インシデントに対応するための操作の内容であって、操作の対象を特定する部分がインシデントに応じて置換される変数で記述される、操作の内容を含み、
前記更新手段は、前記第1取得手段によって取得された情報に含まれるインシデントに応じた前記操作の対象を用いて、前記操作の内容における前記変数を置換することにより、前記第2取得手段によって取得された対応手順を更新する管理システム。
【請求項2】
前記第2取得手段によって取得された対応手順を選択可能な態様で前記ユーザに提示する提示手段と、
前記第2取得手段によって取得された対応手順が前記ユーザによって選択された場合、前記更新手段によって更新された対応手順を実行する実行手段と、をさらに備える請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記更新手段における更新の内容は、新たに発生したインシデントと当該インシデントに対応する過去のインシデントとの差分に対応する請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記第2取得手段は、機械学習により得られたモデルを用いて対応手順を取得する請求項1から
3のいずれか一項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムの管理を支援する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業や官公庁、公共団体の業務のIT化を実現するコンピュータシステムの規模は、利用者が増え、できることが増え、またIT化の度合いが増すと共に大きくなる。近年では数百台、数千台規模のコンピュータシステムも珍しくない。このようなコンピュータシステムを人手のみで管理することは現実的ではないので、例えば特許文献1や非特許文献1に記載されるようなコンピュータシステムの運用管理システムが提案されている。
【0003】
コンピュータシステムの運用管理システムにおいて、管理の効率化は重要である。例えば非特許文献1に記載の運用管理システムは運用ノウハウをナレッジ化し、AIにて運用プロセスをレコメンドすることで管理の効率化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「Senju Family」、https://senjufamily.nri.co.jp/、令和1年9月12日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の運用管理システムにもまだ効率化できる余地がある。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンピュータシステムの運用管理をより効率化できる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、管理システムに関する。この管理システムは、コンピュータシステムの管理を支援する管理システムであって、過去にコンピュータシステムで発生したインシデントに関する情報と、当該インシデントへの対応手順と、対応付けて保持する保持手段と、コンピュータシステムで新たに発生したインシデントに関する情報を、ユーザから取得する第1取得手段と、第1取得手段によって取得された情報に基づいて、新たに発生したインシデントに対応する過去のインシデントへの対応手順を保持手段から取得する第2取得手段と、第2取得手段によって取得された対応手順を、取得された情報に基づいて更新する更新手段と、を備え、第2取得手段によって取得された対応手順は、インシデントに対応するための操作の内容であって、操作の対象を特定する部分がインシデントに応じて置換される変数で記述される、操作の内容を含み、
更新手段は、第1取得手段によって取得された情報に含まれるインシデントに応じた操作の対象を用いて、操作の内容における前記変数を置換することにより、第2取得手段によって取得された対応手順を更新する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンピュータシステムの運用管理をより効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る管理システムおよび管理対象システムの模式図である。
【
図2】
図1の管理システムのハードウエア構成図である。
【
図3】
図1の管理システムの機能および構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3のナレッジワークフロー保持部の一例を示すデータ構造図である。
【
図5】
図1の管理システムにおける処理の一例を示す模式図である。
【
図6】
図1の管理システムにおける一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】改善担当者の端末のディスプレイに表示されるワークフロー定義登録画面の代表画面図である。
【
図8】改善担当者の端末のディスプレイに表示されるナレッジワークフロー詳細画面の代表画面図である。
【
図9】サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるチケット起票画面の代表画面図である。
【
図10】サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるレコメンド画面の代表画面図である。
【
図11】サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるワークフロー指定画面の代表画面図である。
【
図12】サービスデスクの端末のディスプレイに表示される別のワークフロー情報表示領域の代表画面図である。
【
図13】サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるタスク内容表示画面の代表画面図である。
【
図14】サービスデスクの端末のディスプレイに表示される別のタスク内容表示画面の代表画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る管理システム2および管理対象システム4の模式図である。管理システム2は管理対象システム4の運用管理を支援する。管理対象システム4は、証券や流通などの様々な業務においてITサービスを提供するためのコンピュータシステムであり、例えば複数のコンピュータ、複数のサーバ、複数のデータベース、複数のネットワーク機器等を備える。
【0014】
管理対象システム4の運用現場には、管理対象システム4からのメッセージや稼働履歴等に加え、利用者からの要求や運用担当者の対応履歴、外部ベンダへの依頼状況等、さまざまな情報が集まる。管理システム2は、これらの情報をナレッジ化し、AIを活用した自律型運用を実現する。また、管理システム2は、サービスデスク、高度メッセージフィルタリング、ダッシュボード、レコメンド等により、業務効率化、運用品質向上を実現する。
【0015】
管理システム2は、管理対象システム4や利用者からの情報を集約し、機械学習を用いて特徴的な単語の一致度や前後イベントとの相関を分析することにより、障害対応のレコメンドや、運用ノウハウのナレッジ化を行う。例えば、管理システム2は以下の機能を有する。
・過去の類似の対応履歴とのマッチングによる、未知の障害への未然対応。
・管理対象システム4からのイベントの継続的な分析による、将来の変化の予測。
・インシデントの傾向分析による、より積極的なITサービスマネージメントの支援。
・レコメンドやナレッジについて、有効度をフィードバックすることによる、継続的な運用改善。
【0016】
本実施の形態では、特に、管理対象システム4で発生した障害、改善要求などのインシデントへの対応手順(以下、ワークフローと称す)のナレッジ化、およびナレッジ化されたワークフロー(以下、ナレッジワークフローと称す)を新たなインシデントに適用する際の機能を扱う。管理システム2の他の機能については、例えば特許文献1や非特許文献1に記載のシステムが有する機能と同様の機能が実現されてもよい。
【0017】
図2は、
図1の管理システム2のハードウエア構成図である。管理システム2は、メモリ10と、プロセッサ12と、通信インタフェース14と、ディスプレイ18と、入力インタフェース20と、を備える。これらの要素はそれぞれバス16に接続され、バス16を介して互いに通信する。なお、管理システム2は1台のサーバで実現されてもよいし、
図2の構成を有する複数のサーバを含んでもよい。
【0018】
メモリ10は、データやプログラムを記憶するための記憶領域である。データやプログラムは、メモリ10に恒久的に記憶されてもよいし、一時的に記憶されてもよい。プロセッサ12は、メモリ10に記憶されているプログラムを実行することにより、管理システム2の各種機能を実現する。通信インタフェース14は、管理システム2の外部との間でデータの送受信を行うためのインタフェースである。通信インタフェース14は、インターネットなどのネットワークと接続され、ネットワークを介して、管理対象システム4やサービスデスクの端末や改善担当者の端末とデータをやりとりする。ディスプレイ18は、各種情報を表示するためのデバイスである。入力インタフェース20は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。
【0019】
図3は、
図1の管理システム2の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0020】
管理システム2は、定義登録部102と、チケット受付部104と、レコメンドエンジン106と、提示部108と、更新部110と、実行部112と、ナレッジワークフロー保持部114と、を備える。管理システム2は、過去に管理対象システム4でインシデントが発生した際のワークフローをナレッジ化し、ナレッジワークフローとして蓄積する。管理システム2では、レコメンドされたナレッジワークフローが最適な対応手順をナビゲーションする。複雑な手順でも判り易くフロー表示することで、調査コマンド等の実行指示も画面から行うことが可能となる。
【0021】
定義登録部102は、過去に管理対象システム4で発生したインシデントに対するワークフローのナレッジ化を行う。定義登録部102は、過去のインシデントの内容と、それに対して実行されたワークフローと、を改善担当者に提示する。改善担当者は、提示されたワークフローを適宜修正、変更する。特に改善担当者は、ワークフローの抽象化を行う。例えば改善担当者は、ワークフローにおいて操作の対象を特定する部分を変数で記述する。定義登録部102は、改善担当者によって修正、変更されたワークフローをナレッジワークフローとして取得し、取得されたナレッジワークフローを対応する過去のインシデントと対応付けてナレッジワークフロー保持部114に登録する。
【0022】
図4は、
図3のナレッジワークフロー保持部114の一例を示すデータ構造図である。ナレッジワークフロー保持部114は、過去に管理対象システム4で発生したインシデントに関する情報と、当該インシデントに対するワークフローを基に生成されたナレッジワークフローと、対応付けて保持する。ナレッジワークフロー保持部114は、ナレッジワークフローを特定するフローIDと、ナレッジワークフローの情報と、ナレッジワークフローに対応する過去のインシデントの情報と、を対応付けて保持する。
【0023】
ナレッジワークフローの情報は、ナレッジワークフローのキー情報と、ナレッジワークフローのタイトルと、役に立った回数と、利用回数と、ナレッジワークフローの内容と、を含む。ナレッジワークフローのタイトルは、当該フローを端的に言い表すテキストを含み、例えば対応するインシデントの要約であってもよい。役に立った回数は、後述のレコメンドエンジン106によりナレッジワークフローが選択されてサービスデスクに利用されたときに、そのナレッジワークフローが役に立ったとのフィードバックを受けた回数である。利用回数は、後述のレコメンドエンジン106によりナレッジワークフローが選択されてサービスデスクに利用された回数である。ナレッジワークフローの内容について、操作の対象を特定する部分は変数で記述される。
【0024】
過去のインシデントの情報は、インシデントが発生した管理対象システム4を特定するシステムIDと、インシデントのタイトルと、それぞれがテキスト入力領域であるテキスト1およびテキスト2と、インシデントの分類と、インシデントの発生時刻と、を含む。インシデントのタイトルは、当該インシデントを端的に言い表すテキストを含み、例えばインシデントがエラーであればタイトルはエラーメッセージであってもよい。テキスト1は、インシデントについてユーザが自由にテキストを入力できる領域である。対応するナレッジワークフローにおいて変数が設定されている場合、テキスト1には、当該ナレッジワークフローがユーザによって選択された場合に変数に代入する値が入力される。分類はインシデントの分類を表し、例えばネットワーク障害であれば「NW」が、メモリ関連障害であれば「ME」が、分類として登録される。
【0025】
図3に戻り、チケット受付部104は、管理対象システム4で新たに発生したインシデントに関する情報を、サービスデスクから取得する。サービスデスクは、管理対象システム4で新たにシステム障害などのインシデントが発生すると、エラーメッセージの内容や障害の分類が入力されたチケットを生成または起票する。チケット受付部104は、生成されたチケットを受け付ける。
【0026】
レコメンドエンジン106は、チケット受付部104が受け付けたチケットの内容に基づいて、新たに発生したインシデントに対応するナレッジワークフローをナレッジワークフロー保持部114から取得する。レコメンドエンジン106は、ナレッジワークフロー保持部114からナレッジワークフローを選択する際、機械学習により得られたモデルを用いる。機械学習およびそのモデル自体は、公知の機械学習の技術を用いて実現されてもよい。
【0027】
レコメンドエンジン106は、例えばチケットに記載されたエラーメッセージの内容および障害の分類をモデルに入力する。モデルは、入力されたエラーメッセージの内容および障害の分類と、ナレッジワークフロー保持部114に登録されているインシデントの情報と、の一致度、すなわち新たなインシデントと過去のインシデントとの類似度合い、を算出する。レコメンドエンジン106は、ナレッジワークフロー保持部114に登録されているインシデントについて算出された一致度を、当該インシデントに対応するナレッジワークフローのスコアとして登録する。レコメンドエンジン106は、スコアが高い方から所定数のナレッジワークフローを、推薦ナレッジワークフローとして出力する。
【0028】
提示部108は、レコメンドエンジン106によって出力された推薦ナレッジワークフローを、選択可能な態様でサービスデスクに提示する。提示部108は、推薦ナレッジワークフローの情報を含む画面を生成し、生成された画面を、サービスデスクの端末のディスプレイに表示させる。
【0029】
更新部110は、レコメンドエンジン106によって出力された推薦ナレッジワークフローを、チケット受付部104が受け付けたチケットの内容に基づいて更新する。更新部110における更新の内容は、新たに発生したインシデントと、当該新たに発生したインシデントに対して選ばれた推薦ナレッジワークフローに対応する過去のインシデントとの差分に対応する。例えば、更新部110は、推薦ナレッジワークフローの変数を、チケット受付部104が受け付けたチケットに含まれる特定の値で置き換える。更新の詳細は後述する。
【0030】
実行部112は、提示部108によってサービスデスクに提示された推薦ナレッジワークフローのうちのひとつがサービスデスクによってによって選択された場合、選択された推薦ナレッジワークフローを更新部110に出力する。実行部112は、更新部110によって更新された推薦ナレッジワークフローを取得し、取得された推薦ナレッジワークフローを実行する。
【0031】
図5は、
図1の管理システム2における処理の一例を示す模式図である。ナレッジワークフローの管理フェーズにおいて、定義登録部102はナレッジワークフローのモデル502をナレッジワークフロー保持部114に登録する。モデル502には、ナレッジワークフローの内容として「工程1:%txt1%にpingコマンドを打つ」が記述されている。ナレッジワークフローにおいてpingコマンドを打つ対象を特定する部分は「%txt1%」という予約語で記述されている。
【0032】
モデル502は、コピー登録操作により複製可能となっている。モデル502は、デプロイされるたびにリビジョンがインクリメントされ、別の定義(プロセス)として登録される。
図5には三つのプロセス504、506、508が図示されている。
【0033】
インシデントへの対応フェーズにおいて、チケット受付部104はチケット510を受け付ける。チケット510には、インシデントの内容として「ネットワーク不通エラー」が記載され、発見者として「t-xxxx@xyz.co.jp」が記載され、発生サーバとして「Server001」が記載されている。「Server001」は、チケット510の後述のテキスト1入力領域に記載される。テキスト1入力領域は、「%txt1%」という予約語に対応する。
【0034】
レコメンドエンジン106がチケット510の内容に対してプロセス508を推薦ナレッジワークフローとして選択し、提示部108が後述のレコメンド画面においてプロセス508をサービスデスクに提示する。サービスデスクがレコメンド画面からプロセス508を選択して、開始の指示を入力すると、更新部110は、チケット510に対する子レコードとしてインスタンス512を作成する。更新部110は、プロセス508からインスタンス512を作成する際、予約語「%txt1%」を、チケット510のテキスト1入力領域に入力された値「Server001」に置き換える。その結果、インスタンス512の内容は「工程1:Server001にpingコマンドを打つ」を含むこととなり、実行可能な形式になる。
【0035】
モデル502の基となった過去のインシデントでは、予約語「%txt1%」の部分は具体的なサーバの名称(例えば、「Server022」など)であったが、定義登録部102における抽象化により具体的なサーバの名称が予約語「%txt1%」に置き換えられている。そして、新たなインシデントに対して実行されるインスタンス512では、その予約語「%txt1%」が新たなインシデントに対応する「Server001」に置き換えられている。このように、
図5に示される例では、過去のインシデントに対するワークフローをナレッジワークフローに抽象化する際、操作を記述する部分はそのまま(具体的なまま)維持し、操作の対象を特定する部分を予約語等の変数に変換することで抽象化している。これにより、過去のインシデントに似た新たなインシデントが発生した際に、チケットに操作の対象を入力することにより、簡単に新たなインシデントに対する有効なワークフローを生成することができる。
【0036】
以上の構成による管理システム2の動作を説明する。
図6は、
図1の管理システム2における一連の処理の流れを示すフローチャートである。管理システム2は、チケットの起票を受け付ける(S602)。管理システム2は、ステップS602で受け付けたチケットに類似する過去のチケット(インシデント)に対応するナレッジワークフローを取得する(S604)。管理システム2は、ステップS604で取得されたナレッジワークフローをサービスデスクに提示する。取得されたナレッジワークフローがサービスデスクによって選択されない場合(S606のN)、例えばサービスデスクが新たにワークフローを作成する場合、ワークフロー再利用に係る処理は終了する。取得されたナレッジワークフローがサービスデスクによって選択された場合(S606のY)、管理システム2は、選択されたナレッジワークフローの変数を、ステップS602で受け付けたチケットに記載の対応する値で置き換える(S608)。管理システム2は、変数を置換した後のナレッジワークフローを実行する(S610)。
【0037】
図7は、改善担当者の端末のディスプレイに表示されるワークフロー定義登録画面700の代表画面図である。定義登録部102は、改善担当者から新たなナレッジワークフローの生成要求を受け付けると、ワークフロー定義登録画面700を生成する。ワークフロー定義登録画面700は白紙の状態で提供されてもよいし、改善担当者が元とする過去のワークフロー/過去のインシデントを指定した場合には当該ワークフロー/インシデントがインポートされた形で提供されてもよい。
【0038】
ワークフロー定義登録画面700は、フロータイトル入力領域712と、インシデント情報入力領域702と、ナレッジワークフロー情報入力領域704と、登録ボタン714と、を有する。インシデント情報入力領域702は、過去のインシデントの各種情報を入力する領域を有する。ナレッジワークフロー情報入力領域704は、部品領域706と、ワークフロー生成領域708と、タスク情報指定領域710と、を有する。改善担当者は、部品領域706に表示される複数の部品のなかから使用する部品を、ドラッグアンドドロップでワークフロー生成領域708の所望の位置に配置する。ワークフロー生成領域708は、前後関係の編集や分岐の設定をグラフィカルに行えるよう構成される。タスク情報指定領域710は、ワークフロー生成領域708で指定されているタスクのパラメータを指定する領域である。タスク情報指定領域710は、対応者や完了条件などのパラメータを選択肢形式で提示することで、そのようなパラメータを簡易に設定可能に構成される。
【0039】
定義登録部102は、ワークフロー定義登録画面700での入力が完了し、登録ボタン714が押し下げられると、インシデント情報入力領域702に入力されたインシデントの情報と、ナレッジワークフロー情報入力領域704に入力されたナレッジワークフローの情報と、を取得し、ナレッジワークフロー保持部114に登録する。
【0040】
このように、ワークフロー定義登録画面700を用いることにより、ナレッジワークフローの登録が管理システム2内で完結する。また、パラメータのうちの適切なものについて、マスタデータベースからの選択操作で設定可能とすることで、テキスト入力を不要とすることができる。これらにより、ナレッジワークフローの作成にかかる時間を短縮することができる。
【0041】
図8は、改善担当者の端末のディスプレイに表示されるナレッジワークフロー詳細画面716の代表画面図である。定義登録部102は、改善担当者から既登録のナレッジワークフローの詳細確認要求を受け付けると、ナレッジワークフロー詳細画面716を生成する。ナレッジワークフロー詳細画面716には、ナレッジワークフロー保持部114に登録されているナレッジワークフローのうちの指定されたひとつの情報が表示される。
【0042】
図9は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるチケット起票画面718の代表画面図である。チケット受付部104は、サービスデスクからチケット起票要求を受け付けると、チケット起票画面718を生成する。チケット起票画面718は、新たに発生したインシデントについて、当該インシデントが発生したシステムの名称またはシステムIDの入力を受け付けるシステム入力領域720と、当該インシデントのタイトルの入力を受け付けるタイトル入力領域722と、テキストの入力を受け付けるテキスト1入力領域724と、テキストの入力を受け付けるテキストエリア1入力領域726と、当該インシデントの分類の入力を受け付ける分類入力領域728と、を有する。サービスデスクは、チケット起票画面718に新たなインシデントの情報を入力し、登録ボタン730を押し下げる。すると、チケット受付部104は、チケット起票画面718に入力された情報を新たなインシデントの情報として受け付ける。
【0043】
図10は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるレコメンド画面732の代表画面図である。チケット起票画面718の登録ボタン730が押し下げられると、ディスプレイの表示はチケット起票画面718からレコメンド画面732へと遷移する。レコメンド画面732は、チケット起票画面718で受け付けたチケットの情報を表示するチケット情報表示領域734と、レコメンド情報表示領域736と、を有する。レコメンド情報表示領域736には、チケット起票画面718で受け付けたチケットの情報に応じてレコメンドエンジン106により取得された推薦ナレッジワークフローの情報がスコアと共に表示される。レコメンド情報表示領域736は、スコアの順に推薦ナレッジワークフローの情報を表形式で表示する。
【0044】
図11は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるワークフロー指定画面738の代表画面図である。レコメンド画面732のレコメンド情報表示領域736においてひとつの推薦ナレッジワークフローが選択されると、ディスプレイの表示はレコメンド画面732からワークフロー指定画面738へと遷移する。ワークフロー指定画面738は、レコメンド情報表示領域736と、レコメンド情報表示領域736で選択された推薦ナレッジワークフローの情報を表示するワークフロー情報表示領域740と、を有する。レコメンド情報表示領域736において選択された推薦ナレッジワークフローに対応するエントリは斜線や色つけ等で強調して表示される。
【0045】
ワークフロー情報表示領域740は、選択された推薦ナレッジワークフローのタイトルおよび他の情報を表示するタイトル等表示領域742と、選択された推薦ナレッジワークフローの内容を表示するフロー内容表示領域744と、を有する。サービスデスクがフロー内容表示領域744に表示されるワークフローの内容を確認し、開始ボタン746を押し下げると、更新部110は選択された推薦ナレッジワークフローを更新し、実行部112は更新された推薦ナレッジワークフローを実行する。
【0046】
図12は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示される別のワークフロー情報表示領域748の代表画面図である。ワークフロー情報表示領域748のフロー内容表示領域750に表示される推薦ナレッジワークフローは三つのタスク752、754、756からなる。
【0047】
図13は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示されるタスク内容表示画面758の代表画面図である。
図12のフロー内容表示領域750においてコマンド実行タスク754が選択されると、
図13のタスク内容表示画面758が表示される。タスク内容表示画面758は、コマンドの内容を表示するコマンド内容表示領域760と、コマンドのパラメータの情報を表示するコマンドパラメータ情報表示領域762と、コマンドの実施情報を表示する実施情報表示領域764と、を有する。コマンドパラメータ情報表示領域762および実施情報表示領域764に表示される情報は、サービスデスクによる入力により任意に変更または更新可能に構成される。
【0048】
図14は、サービスデスクの端末のディスプレイに表示される別のタスク内容表示画面766の代表画面図である。
図12のフロー内容表示領域750において承認タスク756が選択されると、
図14のタスク内容表示画面766が表示される。
【0049】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクや半導体メモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶する半導体メモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解される。
【0050】
本実施の形態に係る管理システム2によると、過去のインシデントに対するワークフローをナレッジ化する際に、適切な抽象化を行うことで、新たに発生したインシデントに対して過去のワークフローを再利用する際の書き直しの手間を省くことができる。これにより、より効率的にナレッジを活用できる運用管理システムを提供できる。
【0051】
また、
図11から
図14の例に示されるように、本実施の形態では、ワークフローをグラフィカルに表示することで、複雑な手順でも画面を見ながら障害対応をフォローすることができる。また、調査コマンド等の実行も画面から指示を行うことができる。また、適切なルールを設定することにより、自動で診断および復旧コマンドを実施することも可能になる。
【0052】
以上、実施の形態に係る管理システム2の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解される。
【符号の説明】
【0053】
2 管理システム、 4 管理対象システム、 102 定義登録部、 104 チケット受付部、 106 レコメンドエンジン、 108 提示部、 110 更新部、 112 実行部、 114 ナレッジワークフロー保持部。