(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン、およびガスタービンエンジンの動作方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/36 20060101AFI20231115BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20231115BHJP
F02K 3/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F02C7/36
F02C7/00 F
F02K3/04
(21)【出願番号】P 2019205894
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-07-27
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】アールティーエックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】RTX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1000 Wilson Boulevard,Arlington,VA 22209,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ディー.レケ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル イー.マッキューン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エイチ.ポリー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0369702(US,A1)
【文献】特開2004-248382(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044972(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0290265(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2199900(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F02C 7/32
F02C 7/36
F02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンであって、
コアエンジンと、
ファン部と、
太陽歯車を含む重ね合わせギアボックスであって、複数の中間ギヤが、前記太陽歯車と係合するとともに、キャリアと、前記中間ギヤを囲むリングギヤとに支持されており、前記コアエンジンが前記太陽歯車を駆動し、前記重ね合わせギアボックスからの動力が前記ファン部を駆動する、重ね合わせギアボックスと、
前記重ね合わせギアボックスの一部に結合され、前記重ね合わせギアボックスを介して前記ファン部を駆動する動力の一部を提供する電動モータと、
を備え
、
前記リングギヤは、前記中間ギヤと係合する内ギヤ歯と、前記電動モータによって駆動される駆動ギヤと係合する外ギヤ歯とを含み、
前記電動モータの非作動時には、前記リングギヤを自動的に前記ガスタービンエンジンの静止構造体に結合する一方向クラッチを含み、
前記一方向クラッチは、機械式一方向スプラグクラッチを含む、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記駆動ギヤは、前記電動モータによって駆動される駆動軸上に支持され、前記駆動軸は、前記太陽歯車を駆動するコアエンジン軸とは別個独立して設けられている、請求項
1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記ファン部は、前記重ね合わせギアボックスの前記キャリアによって駆動される軸を含む、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記電動モータは、バッテリシステムに結合され、前記コアエンジンは前記バッテリシステムを充電するための発電機を駆動する、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
海面離陸推力が、前記コアエンジンと前記電動モータとによって生成される動力によって提供される、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記コアエンジンは、前記海面離陸推力未満の最大推力容量を含む、請求項
5に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
巡航動作状態では、前記コアエンジンのみが推力を提供するように前記電動モータの動作が停止される、請求項
6に記載のガスタービンエンジン。
【請求項8】
ガスタービンエンジンであって、
燃焼器部に圧縮空気を送るように構成された圧縮機部を含むコアエンジンであって、前記燃焼器部は、前記圧縮空気を燃料と混合し、前記混合された空気と燃料とを点火して、タービン部を駆動するための高エネルギーのガス流を生成するように構成され、前記タービン部は、エンジンの長手軸に沿って配置されたタービン軸を駆動するように構成される、コアエンジンと、
推進推力を生成するように構成され、軸を含むファン部と、
太陽歯車を含む重ね合わせギアボックスであって、複数の中間ギヤが前記太陽歯車と係合し、キャリア及び前記中間ギヤを囲むリングギヤに支持され、前記タービン軸が前記太陽歯車を駆動するように構成され、前記重ね合わせギアボックスからの動力が前記軸を駆動するように構成される、重ね合わせギアボックスと、
前記重ね合わせギアボックスの一部に結合され、前記重ね合わせギアボックスを介して前記ファン部を駆動する補助動力を提供する電動モータと、
前記電動モータが前記重ね合わせギアボックスの前記一部を駆動していないときに前記重ね合わせギアボックスの一部を自動的に静止構造体に結合するように構成された結合手段と、
を備え
、
前記リングギヤは、前記中間ギヤと係合する内ギヤ歯と、前記電動モータによって駆動される駆動ギヤと係合する外ギヤ歯とを含み、
前記電動モータにより駆動される前記駆動ギヤは、前記タービン軸とは独立し、前記タービン軸とは異なる速度で別個に回転可能であり、前記結合手段は、機械式一方向スプラグクラッチを含む、ガスタービンエンジン。
【請求項9】
前記海面離陸推力が、前記コアエンジンと前記電動モータとによって生成される動力によって提供され、前記コアエンジンは、前記海面離陸推力未満の最大推力容量を含む、請求項
8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
ガスタービンエンジンの動作方法であって、
コアエンジンを重ね合わせギアボックスの第1の部分に結合し、
電動モータを重ね合わせギアボックスの第2の部分に結合し、
前記重ね合わせギアボックスを介して前記コアエンジンと前記電動モータの両方からの動力でファンを駆動して離陸推力を生成し、
巡航動作状態の間は、前記重ね合わせギアボックスを介して前記コアエンジンからの動力のみでファンを駆動する、
ことを備え
、
前記重ね合わせギアボックスの前記第1の部分は、複数の中間ギヤを駆動するように係合する太陽歯車を備え、前記第2の部分は前記中間ギヤを囲むリングギヤを備え、前記方法は、前記電動モータが前記リングギヤを駆動していないことに対応して、前記リングギヤを、一方向クラッチにより自動的に前記ガスタービンエンジンの静止構造体に結合することをさらに含み、
前記一方向クラッチは、機械式一方向スプラグクラッチを含む、方法。
【請求項11】
所望のエンジン推力が前記コアエンジン単独の推力生成容量を超えることに対応して、前記電動モータを作動させて前記リングギヤを駆動し、補助動力を提供することを含む、請求項
10に記載の方法
【請求項12】
前記巡航動作状態の間、前記コアエンジンにより、前記電動モータへの電力を供給するバッテリシステムを充電することを含む、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、典型的にはファン部、圧縮機部、燃焼器部、及びタービン部を含む。圧縮機部に流入する空気は圧縮され、燃焼器部に供給され、そこで燃料と混合され、点火されて高エネルギー排ガス流を生成する。高エネルギー排ガス流は、タービン部を通って膨張し、圧縮機とファン部とを駆動する。圧縮機部は、典型的には低圧及び高圧圧縮機を含み、タービン部は低圧及び高圧タービンを含む。
【0003】
ガスタービンエンジンは、離陸し、巡航高度に上昇するための十分な推力を提供するようにサイズ設定されている。巡航状態になれば、エンジンの推力容量のほんの一部しか必要としない。したがって、ガスタービンエンジンの動作のほとんどは最大推力未満の状態で行われる。さらに、代替の電気推進システムを利用することもできるが、電動モータを駆動するバッテリによって供給されるエネルギー密度は燃料のエネルギー密度よりも大幅に低いため、ほとんどの民間航空機には実用的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービンエンジンのメーカーは、熱、伝達及び推進効率の向上を含むエンジン性能のさらなる向上を追求し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の例示的実施形態によるガスタービンエンジンは、他の可能性のなかでも特に、コアエンジン、ファン部、及び太陽歯車を含む重ね合わせ(superposition)ギアボックスを含んでいる。複数の中間ギヤが太陽歯車と係合し、キャリア、及び中間ギヤを囲むリングギヤに支持されている。コアエンジンが太陽歯車を駆動し、重ね合わせギアボックスからの動力がファン部を駆動する。電動モータが重ね合わせギアボックスの一部に結合され、重ね合わせギアボックスを介してファン部を駆動する動力の一部を提供する。
【0006】
前述のガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、リングギヤは、中間ギヤと係合する内歯と、電動モータによって駆動される駆動ギヤと係合する外歯とを含む。
【0007】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、駆動ギヤは、電動モータによって駆動される駆動軸に支持され、駆動軸は太陽歯車を駆動するコアエンジン軸とは別個独立して設けられている。
【0008】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、電動モータの非作動時には、一方向クラッチが、リングギヤを自動的にガスタービンエンジンの静止構造体に結合させる。
【0009】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、一方向クラッチは機械的スプラグクラッチを含む。
【0010】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、ファン部は、重ね合わせギアボックスのキャリアによって駆動される軸を含む。
【0011】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、電動モータはバッテリシステムに結合される。コアエンジンは、バッテリシステムを充電するための発電機を駆動する。
【0012】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、コアエンジンと電動モータとによって生成される動力によって海面離陸推力が提供される。
【0013】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、コアエンジンは、海面離陸推力未満の最大推力容量を含む。
【0014】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、巡航動作状態ではコアエンジンのみが推力を提供するように、電動モータの動作が停止される。
【0015】
本開示の例示的な実施形態による別のガスタービンエンジンは、他の可能性のなかでも特に、コアエンジンであって、燃焼器部に圧縮空気を送るように構成された圧縮機部を含み、燃焼器部は、圧縮空気を燃料と混合し、混合された空気と燃料とを点火してタービン部を駆動するための高エネルギーのガス流を生成するように構成される、コアエンジンを含む。タービン部は、エンジンの長手軸に沿って配置されたタービン軸を駆動するように構成されている。ファン部は、推進力を生成するように構成されている。ファン部は、軸、太陽歯車を含む重ね合わせギアボックス、及び太陽歯車と係合する複数の中間ギヤを含み、中間ギヤは、キャリア、及び中間ギヤを囲むリングギヤに支持される。タービン軸は太陽歯車を駆動するように構成され、重ね合わせギアボックスからの動力が軸を駆動するように構成されている。タービン軸は太陽歯車を駆動するように構成され、重ね合わせギアボックスからの出力は軸を駆動するように構成されている。電動モータが重ね合わせギアボックスの一部に結合され、重ね合わせギアボックスを介してファン部を駆動するための補助動力を提供する。結合手段が、電動モータが重ね合わせギアボックスの一部を駆動していないときに、重ね合わせギアボックスの一部を自動的に静止構造体に結合するように構成される。
【0016】
前述のガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、リングギヤは、中間ギヤと係合するギヤの内歯と、電動モータによって駆動されるギヤシステムと係合するギヤの外歯とを含む。
【0017】
前述のいずれかのガスタービンエンジンの別の実施形態では、電動モータによって駆動される駆動ギヤは、タービン軸から独立しており、タービン軸とは異なる速度で別個に回転可能である。結合手段は、機械式一方向スプラグクラッチを含む。
【0018】
前述のいずれかのガスタービンエンジンのさらなる実施形態では、コアエンジン及び電動モータによって生成される動力によって海面離陸推力が提供される。コアエンジンは、海面離陸推力未満の最大推力容量を含む。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によるガスタービンエンジンの動作方法は、他の可能性のなかでも特に、コアエンジンを重ね合わせギアボックスの第1の部分に結合し、電動モータを重ね合わせギアボックスの第2の部分に結合することを含む。ファンは、コアエンジンと電動モータの両方からの動力で重ね合わせギアボックスを介して駆動され、離陸推力を生成する。巡航動作状態の間、ファンはコアエンジンのみからの動力で重ね合わせギアボックスを介して駆動される。
【0020】
ガスタービンエンジンの前述の動作方法のさらなる実施形態では、重ね合わせギアボックスの第1の部分は、複数の中間ギヤを駆動するように係合された太陽歯車を含む。第2の部分は、中間ギヤを囲むリングギヤを含む。この方法は、電動モータがリングギヤを駆動しないことに対応して、リングギヤをガスタービンエンジンの静止構造体に結合することをさらに含む。
【0021】
ガスタービンエンジンの前述のいずれかの動作方法の別の実施形態では、電動モータが作動してリングギヤを駆動し、コアエンジン単独の推力発生能力を超える所望のエンジン推力に応じて補助動力を提供する。
【0022】
ガスタービンエンジンの前述のいずれかの動作方法の別の実施形態では、巡航運転状態の間、コアエンジンにより、電動モータへの電力を供給するバッテリシステムが充電される。
【0023】
異なる実施例は図示されている特定の構成部品を有しているが、本発明の実施形態はそれらの特定の組み合わせに限定されない。一つの実施例の構成部品または機能の一部を、別の実施例の機能または構成部品と組み合わせて使用することができる。
【0024】
本明細書で開示されるこれら及び他の特徴は、以下の明細書及び図面から最もよく理解することができ、以下は図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】ガスタービンエンジンの例示的実施形態の概略図である。
【
図1B】ガスタービンエンジンの別の例示的実施形態の概略図である。
【
図2】例示的ハイブリッド推進システムの概略図である。
【
図3】重ね合わせギアボックスの例示的実施形態の概略図である。
【
図4】ハイブリッド推進システムの例示的動作サイクルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1Aは、ガスタービンエンジン20を概略的に示す。ガスタービンエンジン20は、本明細書では一般にファン部22及びコアエンジン72を組み込む2スプール式ターボファンとして開示される。コアエンジン72は、圧縮機部24、燃焼器部26、及びタービン部28を含む。ファン部22は、ナセル18内に画定されたバイパスダクト内のバイパス流路Bに沿って空気を駆動し、さらに圧縮及び燃焼器部26への連通、次いでタービン部28を介した膨張のためにコア流路Cに沿って空気を駆動する。開示される非限定的な実施形態では2スプール式ターボファン・ガスタービンエンジンとして示されているが、本明細書に記載の概念は、教示が3スプール式構造、ターボファン及びターボプロップエンジンを含む他のタイプのエンジン、ならびに石油ベース燃料を利用する他の航空機推進システムにも適用され得るため、2スプール式ターボファンでの使用に限定されないことを理解されたい。
【0027】
例示的なエンジン20は一般に、幾つかの軸受システム38を介してエンジン静止構造36に対してエンジン中心長手軸Aを中心に回転するように取り付けられた低速スプール30及び高速スプール32を含む。代替として、また追加として様々な位置の様々な軸受システム38が設けられてもよく、軸受システム38の位置は用途に応じて変更されてもよいことを理解されたい。
【0028】
低速スプール30は、一般に、第1(すなわち低圧)圧縮機44と第1(すなわち低圧)タービン46とを相互接続する内軸40を含む。内側軸40は、変速機構を介してファン部22に接続され、変速機構は、例示的なガスタービンエンジン20では、低速スプール30よりも低速でファンブレード42を駆動するギヤ構造48として示されている。高速スプール32は、第2(すなわち高圧)圧縮機52と第2(すなわち高圧)タービン54とを相互接続する外軸50を含む。例示的なガスタービン20では、高圧圧縮機52と高圧タービン54との間に燃焼器56が配置されている。エンジン静止構造36の中間タービンフレーム58は、一般に、高圧タービン54と低圧タービン46の間に配置され得る。中間タービンフレーム58は、タービン部28内の軸受システム38をさらに支持する。内軸40と外軸50は同心であり、軸受システム38を介して長手軸と同一線上にあるエンジン中央長手軸Aを中心に回転する。
【0029】
コア空気流は、低圧圧縮機44、次いで高圧圧縮機52によって圧縮され、次いで燃焼器56内で燃料と混合されて燃焼され、その後、高圧タービン54及び低圧タービン46を通して膨張される。中間タービンフレーム58は、空気流路C内にあるエアフォイル60を含む。タービン46、54は、膨張に応じてそれぞれの低速スプール30及び高速スプール32を回転駆動する。ファン部22、圧縮機部24、燃焼器部26、タービン部28、及びギヤ構造48の位置はそれぞれ変更されてもよいことが理解されよう。例えば、ギヤ構造48は、低圧圧縮機44の後方に位置してもよく、ファンブレード42は、ギヤ構造48の位置の前方または後方、またはタービン部28の後方にさえ配置されてもよい。
【0030】
一実施例におけるエンジン20は、高バイパス比のギヤード航空機エンジンである。さらなる実施形態では、エンジン20のバイパス比は約6よりも大きく、例示的な実施形態では約10よりも大きく、ギヤ構造48は、ギヤ減速比が約2.3より大きい遊星ギヤシステムなどのエピサイクリック歯車列であり、また低圧タービン46の圧力比は、約5よりも大きい。開示された一実施形態では、エンジン20のバイパス比は約10(10:1)よりも大きく、ファンの直径は低圧圧縮機44の直径よりも著しく大きく、低圧タービン46の圧力比は約5:1よりも大きい。低圧タービン46の圧力比は、排気ノズルの前の低圧タービン46の出口圧力に関連して低圧タービンの入口の前で測定される圧力比である。ギヤ構造48は、約2.3:1より大きく、約5:1未満である。しかしながら、上記のパラメータは、ギヤ構造エンジンの一実施形態の例示であるに過ぎず、本発明は、直接駆動ターボファンを含む他のガスタービンエンジンに適用可能であることを理解されたい。
【0031】
バイパス比が高いため、バイパス流Bによってかなりの量の推力が提供される。エンジン20のファン部22は、特定の飛行条件、典型的には約マッハ0.8及び約35,000フィート(10,668メートル)での巡航に対して設計されている。エンジンが、-最適な燃料消費率(「バケット巡航推力燃料消費率(TSFC)」として知られる)を有するマッハ0.8、高度35,000フィート(10,668メートル)の巡航条件は、エンジンがその最小点で発生する推力のlbfで割った、燃焼される燃料のlbmの業界標準パラメータである。「低ファン圧力比」は、ファン出口ガイドベーン(FEGV)装置のない、ファンブレードのみに亘る圧力比である。限定されない一実施例による本明細書に開示の低ファン圧力比は約1.45未満である。「低修正ファン先端速度」は、フィート/秒単位の実際のファン先端速度を、業界標準の温度補正[(Tram°R)/(518.7°R)]0.5で割ったものである。非限定的な一実施形態により本明細書に開示される「低修正ファン先端速度」は、約1150フィート/秒(350.5メートル/秒)未満である。
【0032】
例示的なガスタービンエンジンは、非限定的な一実施形態では約26枚未満のファンブレード42を備えるファン部22を含む。別の非限定的な実施形態では、ファン部22は、約20枚未満のファンブレード42を含む。さらに、開示される一実施形態では、低圧タービン46は、34で概略的に示される約6つを超えないタービンロータを含む。別の非限定的な例示的実施形態では、低圧タービン46は約3つのタービンロータを含む。ファンブレード42の数と低圧タービンロータの数との比は、約3.3~約8.6である。例示的な低圧タービン46は、ファン部22を回転させる駆動力を提供し、したがって、低圧タービン46のタービンロータ34の数とファン部22のブレード42の数との関係は、動力伝達効率が向上した例示的なガスタービンエンジン20を示す。
【0033】
例示的なエンジン20は、高推力要求条件の間にコアエンジン72と組み合わせてギヤ構造48の一部を駆動する駆動ギヤ70を回転させる電動モータ66を有する、62で一般に示されるハイブリッド推進システムを含む。高推力要求状態には、最大推力を利用して高度を上げて航空機を操縦する離陸及び着陸動作が含まれる。航空機が巡航高度に達すると、必要な推力の量は離陸時に必要な推力よりも大幅に少なくなる。したがって、巡航時には、電動モータ66は停止し、コアエンジン72がギヤ構造48を介してファン部22を駆動する。ハイブリッド推進システム62は電動モータ66からの動力で、コアエンジン72により生成される動力を補い、コアエンジン72のサイズと動力容量を縮小することを可能にする。電動モータ66は、高推力要求動作の間、コアエンジン72からの動力を補う。
【0034】
図1Aの開示された例示的な実施形態では、電動モータ66は、エンジン軸Aに平行な軸68を介して駆動ギヤ70を駆動する。
図1Bを参照すると、20’で示される別のエンジンの実施形態は、駆動軸66’を含み、駆動軸66’は、エンジン軸Aと交差するように配置され、ギヤ構造48に配置された被動ギヤに対応する駆動ベベルギヤ70を駆動する。さらに、例示的モータ66、66’は異なる向きで示されているが、他のギヤ構造48に対する電動モータ66、66’の位置及び向きは本発明の意図及び範囲内にある。
【0035】
引き続き
図1を参照しつつ
図2及び3を参照すると、ギヤ構造48は、低圧タービン46によって駆動される内軸40に結合された太陽歯車74を有する重ね合わせギアボックスである。太陽歯車74は、回転キャリア78によって支持された複数の中間ギヤ76と係合する。リングギヤ80は中間ギヤ76を囲み、駆動ギヤ70と係合する。リングギヤ80は、
図2に概略的に示されるリングギヤ軸88に結合されている。リングギヤ軸88は、軸受94によってリングギヤ80と共に回転するように支持されている。
【0036】
リングギヤ軸88は、駆動ギヤ70のギヤ歯と係合する外ギヤ歯82を含む。内ギヤ歯84は、中間ギヤ76と係合する。リングギヤ軸88は、結合手段を介してエンジン静止構造体36に選択的に結合される。開示された一実施例では、結合手段は機械式一方向スプラグクラッチ86である。一例としてスプラグクラッチが開示されているが、他の構成も本開示の意図及び範囲内にある。クラッチ86は駆動ギヤ70の回転を可能にし、リングギヤ軸80を回転させる。しかし、クラッチ86は、電動モータ66が作動していないときに中間ギヤ76によるリングギヤ80の駆動を防止する。例示的な一方向機械式クラッチ86は、外部アクチュエータまたはコントローラなしで駆動ギヤ70を介した電動モータ66の逆駆動を自動的に防止する。
【0037】
電動モータ66、駆動軸68及び駆動ギヤ70は、エンジンの長手軸Aから離間した軸16に沿って配置される。それによって電動モータ66は、内軸40に対して別個独立して回転可能である。さらに、モータ66、駆動軸68及び駆動ギヤ70は、内軸40とは異なる速度で回転可能であり、重ね合わせギアボックス48を介して補助動力を提供する。
【0038】
駆動ギヤ70は、所望量の推進推力を生成するのに必要な補助動力を提供するように定められた速度でリングギヤ80を駆動するようにサイズ設定されている。したがって、駆動ギヤ70とリングギヤ80との間のギヤ比は、電動モータ66がファン部から航空機の動作に必要な推進推力を生成するのに必要な補助動力を提供できるようなギヤ比である。
【0039】
電動モータ66は、90で概略的に示されるバッテリシステムに蓄積された電気エネルギーによって電力供給される。バッテリシステム90は、任意の既知の電力蓄積手段及びシステムを含み得る。バッテリシステム90は、コアエンジン72によって動力が供給される発電機手段92に結合されるものとして開示されている。発電機手段92は、バッテリシステム90を充電して、電動モータ66を駆動するのに所望のレベルの電力を維持する。発電機92は、バッテリシステム90を継続的に充電することができるか、最小限の推力要求の動作状態の間にバッテリシステム90を充電するように作動させることができる。発電機92は、高推力要求状態の間は切り離され、コアエンジン72が推進推力の生成にすべて動力を集中できるようにできる。低推力要求動作状態の間、発電機92は、バッテリシステム90を充電するように、コアエンジン72によって電力供給されることができる。他の充電スキーム及び手段も利用でき得、それは本開示の意図内であることが理解されよう。
【0040】
離陸の際などの高推力要求状態での動作では、電動モータ66とコアエンジン72の両方が、重ね合わせギアボックス48に動力入力を提供する。コアエンジン72は、内軸40を介して太陽歯車74を駆動する。次いで太陽歯車74は、中間ギヤ76を駆動し、中間ギヤ76は、ファン軸46に結合されたキャリア78を回転させる。電動モータ66は、キャリア78の回転をさらに駆動するためにリングギヤ80を駆動し、ファン42を駆動して所望の推進推力を生成するために必要な動力を提供する。
【0041】
低推力要求状態での動作中、コアエンジン72は太陽歯車74を駆動し、それによって中間ギヤ76及びキャリア78を駆動する。キャリア78は、ファン軸64及びファン42を駆動する。電動モータ66は停止され、クラッチ86が作動して、軸Aを中心としたリングギヤ80の回転を防止する。したがって、重ね合わせギアボックス48は、コアエンジン72のみによって動力が供給される。コアエンジン72は、発電機92を駆動して、高推力要求状態中に発電機の駆動に必要な電力レベルを維持するようにバッテリシステム90を充電することができる。
【0042】
図2及び
図3を引き続き参照しつつ
図4を参照すると、開示された航空機の動作サイクルにわたる推力要求を示すグラフが94で示されている。時間98を考慮した推力96が異なる動作状態について示されている。最大の推力要求は、100で示される離陸及び上昇動作状態の間である。高推力要求動作状態の間は、電動モータ66が作動され、コアエンジン72によって提供される動力を補う。電動モータ66は、開示されたこの実施例では102で示されるように、巡航状態時に推力要求が低下するまで動作を維持する。巡航状態102の間に、コアエンジン72は単独で動作して必要な推力を生成するための動力を提供する。巡航状態102での推力要求はピーク推力状態よりも低いため、電動モータ66は動力を補うために必要とされない。さらに、開示されたコアエンジン72は、巡航状態102の間に必要な推力を生成するのに必要な十分な動力を提供するようにサイズ設定されている。したがって、コアエンジン72が巡航状態時によって効率的に動作するようにサイズ設定され、構成できるように、コアエンジン72のサイズ及び推力容量が縮小されている。
【0043】
理解されるように、各動作サイクル中の動作時間のほとんどは、低推力巡航動作状態である。したがって、コアエンジン72は、巡航状態中に推力を提供するのに十分な動力のみを提供するようにサイズ設定されてもよい。電動モータ66は、より高い推力要求状態の間に動力を補うために作動する。
【0044】
着陸動作状態の間、電動モータ66は、コアエンジン72の動力を補うために再作動させることができる。電動モータ66は、異なる推力要求に対応するために重ね合わせギアボックス48への動力入力を変更することができる。コアエンジン72の動力容量を超える推力要求に応じて、他の動作期間中に電動モータ66を再作動させることができることをさらに理解されたい。
【0045】
したがって、開示されたハイブリッド推進システム62は、高推力要求操作に対応するための利用可能な出力を維持しつつ、コアエンジンサイズを縮小することを可能にする。
【0046】
例示的な実施形態が開示されたが、当業者は、本開示が単なる材料規格ではなく、一定の修正が本開示の範囲内にあることを認識するであろう。そのため、本開示の範囲と内容を定めるには、以下の請求項を検討する必要がある。