(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231115BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2019208205
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中里 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】小室 敦
(72)【発明者】
【氏名】磯部 純希
(72)【発明者】
【氏名】重田 哲
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273193(JP,A)
【文献】特開2015-104239(JP,A)
【文献】特開平06-335260(JP,A)
【文献】特開2008-295128(JP,A)
【文献】特開平09-056177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路の上アーム回路及び下アーム回路を構成する複数のスイッチング素子の駆動を制御するインバータ制御装置であって、
所定の電圧指令値に基づき、前記上アーム回路及び下アーム回路へ供給するPWMパルスを生成するPWMパルス生成部と、
前記PWMパルス生成部により出力された前記PWMパルスの1周期における前記上アーム回路への前記PWMパルスのオン時間と前記下アーム回路への前記PWMパルスのオン時間との合計時間を算出する合計値算出部と、
前記合計値算出部で算出された前記合計時間が、0よりも大きく前記PWMパルスの1周期よりも短い所定の時間範囲に含まれている場合に、前記PWMパルス生成部に異常が発生していると判定する異常判定部と、を備えるインバータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ制御装置において、
前記PWMパルス生成部は、前記上アーム回路を構成するスイッチング素子と前記下アーム回路を構成するスイッチング素子との同時オンを防止するための所定のデッドタイムを有する前記PWMパルスを生成し、
前記異常判定部は、前記合計時間が前記PWMパルスの1周期から前記デッドタイムの2倍に相当する時間を引いた時間よりも短い場合に、前記異常が発生していると判定するインバータ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインバータ制御装置において、
前記PWMパルス生成部と前記インバータ回路との間に配置されて、前記PWMパルスをバッファするバッファ回路を備え、
前記合計値算出部は、前記バッファ回路を介して出力された前記上アーム回路への前記PWMパルスのオン時間と前記下アーム回路への前記PWMパルスのオン時間とを合計して前記合計時間を算出するインバータ制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のインバータ制御装置において、
前記合計値算出部は、前記上アーム回路への前記PWMパルスのオン時間を計測する上アーム時間カウンタと、前記下アーム回路への前記PWMパルスのオン時間を計測する下アーム時間カウンタと、前記PWMパルスの1周期毎に前記上アーム時間カウンタの値と前記下アーム時間カウンタの値とを転送するコントローラとを備え、前記転送された前記上アーム時間カウンタの値と前記下アーム時間カウンタの値とに基づいて前記合計時間を算出するインバータ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインバータ制御装置において、
前記合計値算出部は、前記PWMパルスの1周期における前記上アーム時間カウンタの今回の値と前回の値を減算して前記上アーム回路への前記PWMパルスの前記オン時間を求め、前記PWMパルスの1周期における前記下アーム時間カウンタの今回の値と前回の値を減算して前記下アーム回路への前記PWMパルスの前記オン時間を求めるインバータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、モータを駆動させるために、モータの各相に対応して上アーム回路と下アーム回路を構成するスイッチング素子よりなるインバータ回路を備えている。そして、インバータ回路にPWMパルスを供給するインバータ制御装置を備え、PWMパルスによりインバータ回路のスイッチング素子をスイッチングさせることで、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換してモータを駆動している。
【0003】
近年、自動車を対象とした機能安全規格に基づいて、異常や故障を検知する必要性が高まっている。そのため、インバータ制御装置に対しても異常や故障を検知できる診断を実施する必要がある。
【0004】
特許文献1には、電流検出タイミングや指令Dutyと同期させたロジックにより、対になる上アーム回路のスイッチング素子および下アーム回路のスイッチング素子に対する上側指令信号および下側指令信号が、共にオフ指令となる同時オフが同時オフ異常判定時間以上継続した場合、上側指令信号および下側指令信号が同時オフ異常であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した、特許文献1の技術では、回路構成が複雑になり、検出のための処理負荷が大きい問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるインバータ制御装置は、インバータ回路の上アーム回路及び下アーム回路を構成する複数のスイッチング素子の駆動を制御するインバータ制御装置であって、所定の電圧指令値に基づき、前記上アーム回路及び下アーム回路へ供給するPWMパルスを生成するPWMパルス生成部と、前記PWMパルス生成部により出力された前記PWMパルスの1周期における前記上アーム回路への前記PWMパルスのオン時間と前記下アーム回路への前記PWMパルスのオン時間との合計時間を算出する合計値算出部と、前記合計値算出部で算出された前記合計時間が、0よりも大きく前記PWMパルスの1周期よりも短い所定の時間範囲に含まれている場合に、前記PWMパルス生成部に異常が発生していると判定する異常判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で検出が可能になり、検出のための処理負荷も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インバータ制御装置を含む全体のシステム構成図である。
【
図2】変形例におけるインバータ制御装置を含む全体のシステム構成図である。
【
図3】(A)、(B)通常運転状態における1PWM周期におけるPWMパルスである。
【
図4】(A)、(B)上アーム回路の3相短絡状態における1PWM周期におけるPWMパルスである。
【
図5】(A)、(B)下アーム回路の3相短絡状態における1PWM周期におけるPWMパルスである。
【
図6】(A)、(B)6相開放状態における1PWM周期におけるPWMパルスである。
【
図7】インバータ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】インバータ制御装置の動作を示すタイムチャートであり、エッジアライン方式においてPWMパルスが正常の場合を示す。
【
図9】インバータ制御装置の動作を示すタイムチャートであり、エッジアライン方式において下アーム回路へのPWMパルスが欠損した場合を示す。
【
図10】インバータ制御装置の動作を示すタイムチャートであり、センターアライン方式においてPWMパルスが正常の場合を示す。
【
図11】インバータ制御装置の動作を示すタイムチャートであり、センターアライン方式において下アーム回路へのPWMパルスが欠損した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、インバータ制御装置100を含む全体のシステム構成図である。
高電圧バッテリ1はコンタクタ2を介して、平滑キャパシタ3およびインバータ回路4へ電力を供給する。インバータ回路4は、後述の6つのスイッチング素子を有し、高電圧バッテリ1から得られる直流電力を交流電力に変換してモータ5を駆動する。
【0011】
インバータ回路4は、U相、V相、W相の上アーム回路を構成するスイッチング素子SW_UH、SW_VH、SW_WHを備え、U相、V相、W相の下アーム回路を構成するスイッチング素子SW_UL、SW_VL、SW_WLを備える。
【0012】
インバータ制御装置100は、制御部10、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を備える。制御部10は、合計値算出部11、異常判定部12、PWMパルス生成部13を備える。
【0013】
PWMパルス生成部13は、トルク指令、速度指令、またサーボ制御の場合は、角度位置指令などの指令値が入力され、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30を介して、上アーム回路および下アーム回路へ供給するPWMパルスを生成する。PWMパルス生成部13は、各相ごとに(U相上下アーム、V相上下アーム、W相上下アーム)PWMパルスを生成するための周期カウンタ131を内蔵する。PWMパルスの1周期はキャリア周波数と同じである。PWMパルス生成部13は、異常判定部12からの通知情報12aが正常の場合は、指令値の指示を実現するためのPWMパルスを生成する。PWMパルス生成部13は、異常判定部12からの通知情報12aが異常の場合は、上アーム回路および下アーム回路を安全状態にするPWMパルスを生成する。なお、生成するPWMパルスは、後述のエッジアライン方式とセンターアライン方式がある。
【0014】
上アームバッファ回路20は、異常判定部12からの通知情報12bが正常の場合は、PWMパルス生成部13より入力されたPWMパルスをそのまま出力する。異常判定部12からの通知情報12bが異常の場合は、PWMパルスを全オンもしくは全オフし、上アーム回路を安全状態にする。
【0015】
下アームバッファ回路30は、異常判定部12からの通知情報12cが正常の場合は、PWMパルス生成部13より入力されたPWMパルスをそのまま出力する。異常判定部12からの通知情報12cが異常の場合は、PWMパルスを全オンもしくは全オフし、下アーム回路を安全状態にする。
【0016】
合計値算出部11の演算及び異常判定部12の演算は各相ごとに(U相上下アーム、V相上下アーム、W相上下アーム)実施される。以下の説明では1相分で説明している。合計値算出部11は、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30より出力されるPWMパルスが入力される。そして、合計値算出部11は、PWMパルスの1周期における上アーム回路へのPWMパルスのオン時間と下アーム回路へのPWMパルスのオン時間との合計時間を算出する。合計値算出部11は、時間カウンタ111を内蔵する。時間カウンタ111は、上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタを有する。さらに、合計値算出部11は、オン時間RAM112を内蔵する。オン時間RAM112には、上アーム転送先RAM、下アーム転送先RAM、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAM、上アームオン時間RAM、下アームオン時間RAM、1周期格納RAMを有する。さらに、合計値算出部11は、時間カウンタ111内の値をオン時間RAM112にDMA(ダイレクトメモリアクセス)転送するDMAコントローラ113を備える。合計値算出部11は、信号線11dを介してPWMパルス生成部13と接続され、PWMパルス生成部13内の周期カウンタ131を参照する。なお、本実施形態ではDMAコントローラ113を用いた例で説明するが、DMAコントローラ113を用いることなく、例えばPWMパルス出力に同期して各RAMを直接更新するコントローラを用いてもよい。
【0017】
異常判定部12は、合計値算出部11で算出された合計時間が、0よりも大きくPWMパルスの1周期よりも短い所定の時間範囲に含まれている場合に、PWMパルス生成部13に異常が発生していると判定する。異常判定部12の判定の詳細は後述する。
【0018】
モータ5が永久磁石同期モータの場合の安全状態は、片側3相短絡状態と6相開放状態の2種類があり、当該安全状態の切り分けはモータ5の回転数による。すなわち、モータ5が低速回転している場合には、異常判定部12は通知情報12aをPWMパルス生成部13へ送信し、PWMパルス生成部13は上アーム回路を短絡するPWMパルス、もしくは下アーム回路を短絡するPWMパルスを出力する。さらに、バッファ回路を用いて、PWMパルス生成部13で短絡させたアームと同じアームを短絡させる。つまり、上アーム回路を短絡させる場合には、異常判定部12は通知情報12bを上アームバッファ回路20へ送信し、上アームバッファ回路20は上アーム回路を短絡するPWMパルスを出力する。もしくは、下アーム回路を短絡させる場合には、異常判定部12は通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信し、下アームバッファ回路30は下アーム回路を短絡するPWMパルスを出力する。また、モータ5が高速回転している場合には、異常判定部12は通知情報12aをPWMパルス生成部13へ送信し、PWMパルス生成部13は上アーム回路および下アーム回路を開放するPWMパルスを出力する。さらに、上アームバッファ回路20もしくは下アームバッファ回路30を用いて、PWMパルス生成部13で開放させたアームと同じアームを開放させる。つまり異常判定部12は通知情報12bを上アームバッファ回路20へ送信し、上アームバッファ回路20は上アーム回路をオフにするPWMパルスを出力する。さらに、異常判定部12は通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信し、下アームバッファ回路30は下アーム回路をオフにするPWMパルスを出力する。
【0019】
モータ5が誘導モータの場合の安全状態は、6相開放状態がある。モータ5が誘導モータの場合には、異常判定部12は通知情報12aをPWMパルス生成部13へ送信し、PWMパルス生成部13は上アーム回路および下アーム回路を開放するPWMパルスを出力する。さらに、上アームバッファ回路20もしくは下アームバッファ回路30を用いて、PWMパルス生成部13で開放させたアームと同じアームを開放させる。つまり、異常判定部12は通知情報12bを上アームバッファ回路20へ送信し、上アームバッファ回路20は上アーム回路をオフにするPWMパルスを出力する。さらに、異常判定部12は通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信し、下アームバッファ回路30は下アーム回路をオフにするPWMパルスを出力する。
【0020】
図1において、インバータ制御装置100は、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を備え、制御部10は、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30より出力されるPWMパルスを検出している。したがって、インバータ制御装置100は、PWMパルス生成部13の故障のみならず、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30の故障も含めて検知できる。なお、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30を省略した構成であってもよく、この場合は、インバータ制御装置100は、PWMパルス生成部13の故障を検知する。
【0021】
図2は、変形例におけるインバータ制御装置100を含む全体のシステム構成図である。
図1と同一の個所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
この変形例においては、上アームバッファ回路20に、図示省略した外部制御装置より通知情報20aが入力され、下アームバッファ回路30に、外部制御装置より通知情報30aが入力される。
【0023】
上アームバッファ回路20は、通知情報20aが正常の場合は、PWMパルス生成部13より入力されたPWMパルスをそのまま出力する。通知情報20aが異常の場合は、PWMパルスを全オンもしくは全オフし、上アーム回路を安全状態にする。
【0024】
下アームバッファ回路30は、通知情報30aが正常の場合は、PWMパルス生成部13より入力されたPWMパルスをそのまま出力する。通知情報30aが異常の場合は、PWMパルスを全オンもしくは全オフし、下アーム回路を安全状態にする。
【0025】
この変形例によれば、PWMパルス生成部13の故障を検知できる他に、必要に応じて外部制御装置により、上アームバッファ回路20および下アームバッファ回路30を制御することができる。
【0026】
図3(A)、
図3(B)は、通常運転状態における上アーム回路及び下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。
図3(A)は、上アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスであり、
図3(B)は、下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。この場合、PWMパルス生成部13が正常の状態を示し、異常判定部12は異常の通知情報12a、12b、12cを出力しない。1PWM周期は通常、キャリア周波数の周期と同じである。
【0027】
図3(A)、
図3(B)に示すように、通常運転状態においては、上アーム回路と下アーム回路へ供給されるPWMパルスは反転したパルスとなっている。片方のアーム回路がオンからオフ、もしくはオフからオンへ変化するときに、上アーム回路と下アーム回路が短絡しないようにデッドタイムTdを設ける。
【0028】
1PWM周期における上アーム回路へのPWMパルスのオン時間をDuty_H、下アーム回路へのPWMパルスのオン時間をDuty_Lと、1PWM周期をT_pwm、デッドタイムをTdとすると、以下の式(1)が成り立つ。
Duty_H+Duty_L=T_pwm-2*Td (1)
【0029】
図4(A)、
図4(B)は、上アーム回路の3相短絡状態における上アーム回路及び下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。
図4(A)は、上アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスであり、
図4(B)は、下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。この場合、PWMパルス生成部13が正常の状態を示し、異常判定部12は異常の通知情報12a、12b、12cを出力しない。
【0030】
図4(A)、
図4(B)に示すように、上アーム回路へのPWMパルスは常時オンで、下アーム回路へのPWMパルスは常時オフなので、以下の式(2)が成り立つ。
Duty_H+Duty_L=T_pwm (2)
【0031】
図5(A)、
図5(B)は、下アーム回路の3相短絡状態における上アーム回路及び下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。
図5(A)は、上アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスであり、
図5(B)は、下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。この場合、PWMパルス生成部13が正常の状態を示し、異常判定部12は異常の通知情報12a、12b、12cを出力しない。
図5(A)、
図5(B)に示すように、下アーム回路へのPWMパルスは常時オンで、上アーム回路へのPWMパルスは常時オフなので、以下の式(3)が成り立つ。
Duty_H+Duty_L=T_pwm (3)
【0032】
図6(A)、
図6(B)は、上アーム回路及び下アーム回路の6相開放状態における上アーム回路及び下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。
図6(A)は、上アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスであり、
図6(B)は、下アーム回路へ供給されるある相の1PWM周期におけるPWMパルスである。この場合、PWMパルス生成部13が正常の状態を示し、異常判定部12は異常の通知情報12a、12b、12cを出力しない。
【0033】
図6(A)、
図6(B)に示すように、上アーム回路および下アーム回路へのPWMパルスは常時オフなので、以下の式(4)が成り立つ。
Duty_H+Duty_L=0 (4)
【0034】
以上のように、PWMパルス生成部13が正常の状態では、式(1)~式(4)を示す。したがって、PWMパルス生成部13が異常の状態では、式(1)~式(4)を満たさない以下の式(5)によって、異常判定部12は異常の判定が可能になる。
0<Duty_H+Duty_L<T_pwm-(2*Td+α) (5)
ここで、αはマージンであり、PWMパルスの応答性、PWMパルス生成部13他の周辺回路の応答性を考慮したもので、α≧0である。
このように、式(5)を用いれば、通常運転状態、上アーム回路の3相短絡状態、下アーム回路の3相短絡状態、上アーム回路及び下アーム回路の6相開放状態の各運転状態の場合分けをする必要がなく、簡単な構成で検出可能となる。
【0035】
異常判定部12は、式(5)が成立したときにPWMパルスが異常であると判定し、異常の通知情報12a、12b、12cを出力する。
【0036】
図7は、インバータ制御装置100の動作を示すフローチャートである。
図7のステップS1で、合計値算出部11は、上アーム回路および下アーム回路へのPWMパルスの各オン時間Duty_H、Duty_Lを取得する。
【0037】
ステップS2で、合計値算出部11は、上アーム回路および下アーム回路へのPWMパルスの各オン時間Duty_H、Duty_Lの和を算出する。
ステップS3で、異常判定部12は、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たすかを判定する。式(5)の条件を満たす場合は、ステップS4へ進み、式(5)の条件を満たさない場合は、処理を終了する。
【0038】
ステップS4では、異常判定部12は、上アーム回路もしくは下アーム回路へのPWMパルスに欠損があると判定し、異常判定部12は、通知情報12aをPWMパルス生成部13へ、通知情報12bを上アームバッファ回路20へ、通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信する。
【0039】
ステップS5では、通知情報12aを受けたPWMパルス生成部13は、上アーム回路を短絡するPWMパルス、もしくは下アーム回路を短絡するPWMパルスを出力して、インバータ回路4を安全状態に移行する。また、通知情報12b、12cをそれぞれ受けた上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30は、上アーム回路、下アーム回路をオフにするPWMパルスを出力して、インバータ回路4を安全状態に移行する。ここでは、PWMパルス生成部13と上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30とで2重に安全状態への移行を制御する例で説明したが、少なくともいずれか一方を制御してもよい。
【0040】
図8は、インバータ制御装置100の動作を示すタイムチャートであり、エッジアライン方式においてPWMパルスが正常の場合を示す。
【0041】
図8(a)は、PWMパルス生成部13に内蔵された周期カウンタ131のカウント値の出力を示すものである。
図8(b)は、上アーム回路へのPWMパルスを、
図8(c)は、下アーム回路へのPWMパルスを示す。エッジアライン方式は、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期してPWMパルスを出力する。
図8(b)、
図8(c)において、PWMパルスが重なっていない部分(図示の斜線部分)は、デッドタイムTdを表す。
【0042】
図8(d)、
図8(e)は、それぞれ合計値算出部11内の上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値を示す。PWMパルス生成部13より出力されるPWMパルスは、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を介して合計値算出部11へ入力される。したがって、上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値は、それぞれ、
図8(b)、
図8(c)に示す上アーム回路へのPWMパルス、下アーム回路へのPWMパルスのパルス幅に相当する時間をカウントしている。
【0043】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、合計値算出部11内のDMAコントローラにより、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期して、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送される。
図8(f)は、DMAコントローラによるDMA転送時間を、
図8(g)は、上アーム転送先RAMの値を、
図8(h)は、下アーム転送先RAMの値を示す。
図8(g)に示す上アーム転送先RAMの値は、
図8(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(1)である。
図8(h)に示す下アーム転送先RAMの値は、
図8(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(1)である。
【0044】
図8(i)、
図8(j)に示すように、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値、下アーム転送先RAMの値の前回値が記憶されているが、周期カウンタ131の1周期目Aの始めでは何も記憶されていない。前回値が何も記憶されていない場合は処理を行わない。その後、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれカウント値H_(1)、カウント値L_(1)が退避される。
【0045】
周期カウンタ131の2周期目Bのはじめに、
図8(g)に示す上アーム転送先RAMの値として、
図8(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(2)が転送される。
図8(h)に示す下アーム転送先RAMの値として、
図8(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(2)が転送される。そして、カウント値H_(2)と退避されていたカウント値H_(1)が減算され、
図8(k)に示すように、その減算値H_(2)-H_(1)が上アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Hとして、上アームオン時間RAMに記憶される。さらに、カウント値L_(2)と退避されていたカウント値L_(1)が減算され、
図8(l)に示すように、その減算値L_(2)-L_(1)が下アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Lとして、下アームオン時間RAMに記憶される。また、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値H_(2)、下アーム転送先RAMの値L_(2)が前回値として記憶される。
【0046】
そして、
図8(m)に示すように、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが1周期目Aのオン時間として1周期格納RAMに格納される。1周期目Aのオン時間が1周期格納RAMに格納されると、APIコールにより、
図7のステップS3で示した処理が実行され、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たすかを判定する。式(5)の条件を満たす場合は、
図7のステップS4以降の処理を実行する。
図8に示す例では、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たさないので、正常と判定され、ステップS4以降の処理を実行しない。なお、2周期目B以降も同様である。
【0047】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、DMAコントローラ113により、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送されるので、処理負荷を低減できる。
【0048】
図9は、インバータ制御装置100の動作を示すタイムチャートであり、エッジアライン方式において下アーム回路へのPWMパルスが欠損した場合を示す。
図9(a)は、PWMパルス生成部13に内蔵された周期カウンタ131のカウント値の出力を示すものである。
図9(b)は、上アーム回路へのPWMパルスを、
図9(c)は、下アーム回路へのPWMパルスを示す。この場合、下アーム回路へのPWMパルスは欠損している。エッジアライン方式は、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期してPWMパルスを出力する。
図9(b)、
図9(c)において、PWMパルスが重なっていない部分(図示の斜線部分)は、デッドタイムTdを表す。
【0049】
図9(d)、
図9(e)は、それぞれ合計値算出部11内の上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値を示す。PWMパルス生成部13より出力されるPWMパルスは、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を介して合計値算出部11へ入力される。したがって、上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値は、それぞれ、
図9(b)、
図9(c)に示す上アーム回路へのPWMパルス、下アーム回路へのPWMパルスのパルス幅に相当する時間をカウントしている。この場合、下アーム回路へのPWMパルスは欠損しているので、
図9(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値はゼロである。
【0050】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、合計値算出部11内のDMAコントローラ113により、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期して、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送される。
図9(f)は、DMAコントローラによるDMA転送時間を、
図9(g)は、上アーム転送先RAMの値を、
図9(h)は、下アーム転送先RAMの値を示す。
図9(g)に示す上アーム転送先RAMの値は、
図9(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(1)である。
図9(h)に示す下アーム転送先RAMの値は、
図9(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(1)である。
【0051】
図9(i)、
図9(j)に示すように、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値、下アーム転送先RAMの値の前回値が記憶されているが、周期カウンタ131の1周期目Aの始めでは何も記憶されていない。前回値が何も記憶されていない場合は処理を行わない。その後、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれカウント値H_(1)、カウント値L_(1)が退避される。カウント値L_(1)はゼロである。
【0052】
周期カウンタ131の2周期目Bのはじめに、
図9(g)に示す上アーム転送先RAMの値として、
図9(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(2)が転送される。
図9(h)に示す下アーム転送先RAMの値として、
図9(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(2)が転送される。カウント値L_(2)はゼロである。そして、カウント値H_(2)と退避されていたカウント値H_(1)が減算され、
図9(k)に示すように、その減算値H_(2)-H_(1)が上アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Hとして、上アームオン時間RAMに記憶される。さらに、カウント値L_(2)と退避されていたカウント値L_(1)が減算され、
図9(l)に示すように、その減算値L_(2)-L_(1)が下アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Lとして、下アームオン時間RAMに記憶される。下アーム回路のオン時間Duty_Lはゼロである。また、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値H_(2)、下アーム転送先RAMの値L_(2)が前回値として記憶される。
【0053】
そして、
図9(m)に示すように、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが1周期目Aのオン時間として1周期格納RAMに格納される。1周期目Aのオン時間が1周期格納RAMに格納されると、APIコールにより、
図7のステップS3で示した処理が実行され、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たすかを判定する。この場合は下アーム回路のオン時間Duty_Lはゼロであるため、オン時間の和Duty_H+Duty_Lは、式(5)の条件を満たすので、
図7のステップS4以降の処理を実行する。すなわち、異常判定部12は、通知情報12aをPWMパルス生成部13へ、通知情報12bを上アームバッファ回路20へ、通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信する。PWMパルス生成部13は、上アーム回路を短絡するPWMパルス、もしくは下アーム回路を短絡するPWMパルスを出力して、インバータ回路4を安全状態に移行する。なお、2周期目B以降も同様である。
【0054】
図10は、インバータ制御装置100の動作を示すタイムチャートであり、センターアライン方式においてPWMパルスが正常の場合を示す。
【0055】
図10(a)は、PWMパルス生成部13に内蔵された周期カウンタ131のカウント値の出力を示すものである。
図10(b)は、上アーム回路へのPWMパルスを、
図10(c)は、下アーム回路へのPWMパルスを示す。センターアライン方式は、上アーム回路へのPWMパルスの中央と周期カウンタ131のカウントの中央が同期する。
図10(b)、
図10(c)において、PWMパルスが重なっていない部分(図示の斜線部分)は、デッドタイムTdを表す。
【0056】
図10(d)、
図10(e)は、それぞれ合計値算出部11内の上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値を示す。PWMパルス生成部13より出力されるPWMパルスは、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を介して合計値算出部11へ入力される。したがって、上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値は、それぞれ、
図10(b)、
図10(c)に示す上アーム回路へのPWMパルス、下アーム回路へのPWMパルスのパルス幅に相当する時間をカウントしている。
【0057】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、合計値算出部11内のDMAコントローラにより、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期して、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送される。
図10(f)は、DMAコントローラによるDMA転送時間を、
図10(g)は、上アーム転送先RAMの値を、
図10(h)は、下アーム転送先RAMの値を示す。
図10(g)に示す上アーム転送先RAMの値は、
図10(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(1)である。
図10(h)に示す下アーム転送先RAMの値は、
図10(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(1)である。なお、下アーム時間カウンタのカウント値L_(1)は、直前のPWMパルスの後半と、今回のPWMパルスの前半をカウントしている。
【0058】
図10(i)、
図10(j)に示すように、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値、下アーム転送先RAMの値の前回値が記憶されているが、周期カウンタ131の1周期目Aの始めでは何も記憶されていない。前回値が何も記憶されていない場合は処理を行わない。その後、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれカウント値H_(1)、カウント値L_(1)が退避される。
【0059】
周期カウンタ131の2周期目Bのはじめに、
図10(g)に示す上アーム転送先RAMの値として、
図10(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(2)が転送される。
図10(h)に示す下アーム転送先RAMの値として、
図10(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(2)が転送される。そして、カウント値H_(2)と退避されていたカウント値H_(1)が減算され、
図10(k)に示すように、その減算値H_(2)-H_(1)が上アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Hとして、上アームオン時間RAMに記憶される。さらに、カウント値L_(2)と退避されていたカウント値L_(1)が減算され、
図10(l)に示すように、その減算値L_(2)-L_(1)が下アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Lとして、下アームオン時間RAMに記憶される。また、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値H_(2)、下アーム転送先RAMの値L_(2)が前回値として記憶される。
【0060】
そして、
図10(m)に示すように、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが1周期目Aのオン時間として1周期格納RAMに格納される。1周期目Aのオン時間が1周期格納RAMに格納されると、APIコールにより、
図7のステップS3で示した処理が実行され、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たすかを判定する。式(5)の条件を満たす場合は、
図7のステップS4以降の処理を実行する。
図10に示す例では、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たさないので、正常と判定され、ステップS4以降の処理を実行しない。なお、2周期目B以降も同様である。
【0061】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、DMAコントローラ113により、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送されるので、処理負荷を低減できる。
【0062】
図11は、インバータ制御装置100の動作を示すタイムチャートであり、センターアライン方式において下アーム回路へのPWMパルスが欠損した場合を示す。
【0063】
図11(a)は、PWMパルス生成部13に内蔵された周期カウンタ131のカウント値の出力を示すものである。
図11(b)は、上アーム回路へのPWMパルスを、
図11(c)は、下アーム回路へのPWMパルスを示す。この場合、下アーム回路へのPWMパルスは欠損している。センターアライン方式は、上アーム回路へのPWMパルスの中央と周期カウンタ131のカウントの中央が同期する。
図11(b)、
図11(c)において、PWMパルスが重なっていない部分(図示の斜線部分)は、デッドタイムTdを表す。
【0064】
図11(d)、
図11(e)は、それぞれ合計値算出部11内の上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値を示す。PWMパルス生成部13より出力されるPWMパルスは、上アームバッファ回路20、下アームバッファ回路30を介して合計値算出部11へ入力される。したがって、上アーム時間カウンタ、下アーム時間カウンタのカウント値は、それぞれ、
図11(b)、
図11(c)に示す上アーム回路へのPWMパルス、下アーム回路へのPWMパルスのパルス幅に相当する時間をカウントしている。この場合、下アーム回路へのPWMパルスは欠損しているので、
図11(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値はゼロである。
【0065】
上アーム時間カウンタ、および下アーム時間カウンタのカウント値は、合計値算出部11内のDMAコントローラ113により、周期カウンタ131のカウントの立ち上がりに同期して、上アーム転送先RAM、および下アーム転送先RAMへ転送される。
図11(f)は、DMAコントローラによるDMA転送時間を、
図11(g)は、上アーム転送先RAMの値を、
図11(h)は、下アーム転送先RAMの値を示す。
図11(g)に示す上アーム転送先RAMの値は、
図11(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(1)である。
図11(h)に示す下アーム転送先RAMの値は、
図11(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(1)である。
【0066】
図11(i)、
図11(j)に示すように、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値、下アーム転送先RAMの値の前回値が記憶されているが、周期カウンタ131の1周期目Aの始めでは何も記憶されていない。前回値が何も記憶されていない場合は処理を行わない。その後、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれカウント値H_(1)、カウント値L_(1)が退避される。カウント値L_(1)は略ゼロである。
【0067】
周期カウンタ131の2周期目Bのはじめに、
図11(g)に示す上アーム転送先RAMの値として、
図11(d)に示す上アーム時間カウンタのカウント値H_(2)が転送される。
図11(h)に示す下アーム転送先RAMの値として、
図11(e)に示す下アーム時間カウンタのカウント値L_(2)が転送される。カウント値L_(2)はゼロである。そして、カウント値H_(2)と退避されていたカウント値H_(1)が減算され、
図11(k)に示すように、その減算値H_(2)-H_(1)が上アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Hとして、上アームオン時間RAMに記憶される。さらに、カウント値L_(2)と退避されていたカウント値L_(1)が減算され、
図11(l)に示すように、その減算値L_(2)-L_(1)が下アーム回路へのPWMパルスのオン時間Duty_Lとして、下アームオン時間RAMに記憶される。下アーム回路のオン時間Duty_Lは略ゼロである。また、上アーム退避用RAM、下アーム退避用RAMには、それぞれ上アーム転送先RAMの値H_(2)、下アーム転送先RAMの値L_(2)が前回値として記憶される。
【0068】
そして、
図11(m)に示すように、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが1周期目Aのオン時間として1周期格納RAMに格納される。1周期目Aのオン時間が1周期格納RAMに格納されると、APIコールにより、
図7のステップS3で示した処理が実行され、オン時間の和Duty_H+Duty_Lが式(5)の条件を満たすかを判定する。この場合は下アーム回路のオン時間Duty_Lは略ゼロであるため、オン時間の和Duty_H+Duty_Lは、式(5)の条件を満たすので、
図7のステップS4以降の処理を実行する。なお、2周期目B以降は下アーム回路のオン時間Duty_Lはゼロであるため、オン時間の和Duty_H+Duty_Lは、式(5)の条件を満たす。すなわち、異常判定部12は、通知情報12aをPWMパルス生成部13へ、通知情報12bを上アームバッファ回路20へ、通知情報12cを下アームバッファ回路30へ送信する。PWMパルス生成部13は、上アーム回路を短絡するPWMパルス、もしくは下アーム回路を短絡するPWMパルスを出力して、インバータ回路4を安全状態に移行する。なお、2周期目B以降も同様である。
【0069】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)インバータ制御装置100は、インバータ回路4の上アーム回路及び下アーム回路を構成する複数のスイッチング素子SW_UH、SW_VH、SW_WH、SW_UL、SW_VL、SW_WLの駆動を制御し、所定の電圧指令値に基づき、上アーム回路及び下アーム回路へ供給するPWMパルスを生成するPWMパルス生成部13と、PWMパルスの1周期における上アーム回路へのPWMパルスのオン時間と下アーム回路へのPWMパルスのオン時間との合計時間を算出する合計値算出部11と、合計値算出部11で算出された合計時間が、0よりも大きくPWMパルスの1周期よりも短い所定の時間範囲に含まれている場合に、PWMパルス生成部13に異常が発生していると判定する異常判定部12とを備える。これにより、簡単な構成で検出が可能になり、検出のための処理負荷も小さくなる。
【0070】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1・・・高電圧バッテリ、2・・・コンタクタ、3・・・平滑キャパシタ、4・・・インバータ回路、5・・・モータ、10・・・制御部、11・・・合計値算出部、12・・・異常判定部、13・・・PWMパルス生成部、20・・・上アームバッファ回路、30・・・下アームバッファ回路、100・・・インバータ制御装置、時間カウンタ111、オン時間RAM112、DMAコントローラ113、周期カウンタ131、SW_UH、SW_VH、SW_WH、SW_UL、SW_VL、SW_WL・・・スイッチング素子。