(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】コンクリート表面評価システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
G01B11/30 A
(21)【出願番号】P 2019214535
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃敏
(72)【発明者】
【氏名】太田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】小島 文寛
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165726(JP,A)
【文献】特開2004-219214(JP,A)
【文献】特開2017-138238(JP,A)
【文献】特開2003-317112(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110390687(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
E01C 21/00-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの表面の凹凸を評価するコンクリート表面評価システムであって、
前記コンクリートの表面を三次元測定機で測定した
点群データに基づいて、所定の基準面からの凹凸量を算出する凹凸量算出部と、
前記凹凸量と所定の閾値とに基づいて、補修が必要な箇所を特定する補修箇所特定部と、
前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を出力する出力部と、を備え
、
前記点群データから作成された等値線図から不要部が削除された後に前記凹凸量が算出される
ことを特徴とする、コンクリート表面評価システム。
【請求項2】
前記基準面は、
前記不要部が削除された後の前記等値線図から抽出された3つの特徴点を含む平面である
ことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート表面評価システム。
【請求項3】
前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所と、その位置情報とを表示した補修位置画像を生成する補修位置画像生成部を備え、
前記出力部は、前記補修位置画像を記録媒体に出力する記録媒体出力部である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート表面評価システム。
【請求項4】
前記コンクリートの表面を撮影するカメラの画像に基づいて、前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を、前記カメラが撮影した画像に重畳させた重畳画像を生成する重畳画像生成部を備え、
前記出力部は、前記重畳画像を表示する表示部である
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート表面評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの表面の凹凸を評価するコンクリート表面評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの表面状態を評価する評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、カメラと、レーザ照射装置と、評価装置とを用いて、コンクリート構造物の壁面に生じたひび割れの幅を計測することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、コンクリートの表面のひび割れの幅やコンクリートの表面の傷を評価するに留まり、コンクリートの表面の凹凸を評価することができない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、コンクリートの表面の凹凸を評価することができるコンクリート表面評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のコンクリート表面評価システムは、コンクリートの表面の凹凸を評価するコンクリート表面評価システムであって、前記コンクリートの表面を三次元測定機で測定したデータに基づいて、所定の基準面からの凹凸量を算出する凹凸量算出部と、前記凹凸量と所定の閾値とに基づいて、補修が必要な箇所を特定する補修箇所特定部と、前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明のコンクリート表面評価システムでは、前記基準面は、前記コンクリートの表面を前記三次元測定機で測定した前記データにおける3つの特徴点を含む平面であってもよい。
【0009】
また、本発明のコンクリート表面評価システムでは、前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所と、その位置情報とを表示した補修位置画像を生成する補修位置画像生成部を備え、前記出力部は、前記補修位置画像を記録媒体に出力する記録媒体出力部であってもよい。
【0010】
さらに、本発明のコンクリート表面評価システムでは、前記コンクリートの表面を撮影するカメラの画像に基づいて、前記補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を、前記カメラが撮影した画像に重畳させた重畳画像を生成する重畳画像生成部を備え、前記出力部は、前記重畳画像を表示する表示部であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明のコンクリート表面評価システムは、コンクリートの表面を三次元測定機で測定したデータに基づいて、所定の基準面からの凹凸量を算出する凹凸量算出部と、凹凸量と所定の閾値とに基づいて、補修が必要な箇所を特定する補修箇所特定部と、補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を出力する出力部と、を備える。そのため、コンクリートの表面の補修が必要な箇所を知ることができ、コンクリートの全表面を補修せずに、コンクリートの表面の補修が必要な箇所だけを補修することができる。その結果、コンクリートの表面の凹凸の補修作業を効率化することができる。
【0012】
また、本発明のコンクリート表面評価システムでは、基準面は、コンクリートの表面を三次元測定機で測定したデータにおける3つの特徴点を含む平面である。そのため、基準面を容易に生成することができ、基準面からの凹凸量を容易に算出することができる。そのため、補修が必要な箇所を容易に特定することができる。
【0013】
また、本発明のコンクリート表面評価システムでは、補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所と、その位置情報とを表示した補修位置画像を生成する補修位置画像生成部を備え、出力部は、補修位置画像を記録媒体に出力する記録媒体出力部である。そのため、記録媒体に記録された補修位置画像を見ながら、作業者は、作業現場でコンクリートの表面の補修が必要な箇所を特定することができる。
【0014】
また、本発明のコンクリート表面評価システムでは、コンクリートの表面を撮影するカメラの画像に基づいて、補修箇所特定部が特定した補修が必要な箇所を、カメラが撮影した画像に重畳させた重畳画像を生成する重畳画像生成部を備え、出力部は、重畳画像を表示する表示部である。そのため、コンクリートの補正が必要な箇所をカメラで撮影した画像に重畳させて、作業現場で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する概略図である。
【
図2】実施例1のコンクリート表面評価システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の等値線図作成部によって作成された等値線図の平面図である。
【
図5】実施例1の補修位置画像が形成された用紙を表す図である。
【
図6】実施例1のコンクリート表面評価システムを使用して壁の補修をしている状況を示す図である。
【
図7】実施例1のコンクリート表面評価システムの使用例を示す表であり、
図7(a)が補正必要箇所の記録を示す表であり、
図7(b)が補正必要箇所の補修後の記録を示す表である。
【
図8】実施例1のコンクリート表面評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施例2のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する概略図である。
【
図10】実施例2のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する概略図である。
【
図11】実施例2のコンクリート表面評価システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図12】実施例2の表示部に表示される画像の例を示す図である。
【
図13】実施例2のコンクリート表面評価処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施例2のコンクリート表面評価処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるコンクリート表面評価システムを実現する実施形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
[コンクリート表面評価システムを使用する状況]
図1は、実施例1のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する概略図である。以下、実施例1のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する。
【0018】
実施例1では、鉄筋コンクリートの建物の壁1の表面の凹凸を評価する例について説明する。
【0019】
実施例1のコンクリート表面評価システム10は、
図1に示すように、型枠内に打設したコンクリートから、型枠を取り外した後のコンクリートの表面の凹凸を評価する。コンクリートの壁1の周囲には、支柱材2aや、パイプ2bや、筋交2cや、足場板2d等を有する足場2が配置される。
【0020】
作業者Bは、足場板2dに設置された三次元測定機20によって、壁1の表面を測定する。その測定データは、パーソナルコンピュータ(制御部)30で処理される。処理の結果は、出力部である記録媒体出力部40としてのプリンタから出力される。
【0021】
[コンクリート表面評価システムの機能構成]
図2は、実施例1のコンクリート表面評価システムの機能構成を示すブロック図である。
図3は、実施例1の等値線図作成部によって作成された等値線図の平面図である。
図4は、実施例1の等値線図の断面図である。
図5は、実施例1の補修位置画像が形成された用紙を表す図である。以下、実施例1のコンクリート表面評価システムの機能構成を説明する。
【0022】
図2に示すように、コンクリート表面評価システム10は、三次元測定機20と、制御部30と、記録媒体出力部40と、を備える。
【0023】
三次元測定機20は、壁1の表面を3Dスキャンして、壁1の表面の三次元測定データを点群データによって取得する。三次元測定機20によって測定された点群データは、制御部30に送信される。
【0024】
制御部30は、主たる構成として、記憶部31と、等値線図作成部32と、不要部削除部33と、特徴点抽出部34と、基準面作成部35と、凹凸量算出部36と、補修箇所特定部37と、補修位置画像生成部38と、を備える。なお、制御部30は、コンクリート表面評価システム10の全体の制御を司る。
【0025】
記憶部31は、補修箇所特定部37が使用する閾値31aを記憶する。なお、閾値31aについては、後述する。
【0026】
等値線図作成部32は、壁1の表面を三次元測定機20で測定した点群データに基づいて、
図3に示すように、例えば、高さ1.0[mm]間隔の等値線
図21を作成する。
【0027】
不要部削除部33は、
図3に示すように、等値線
図21から不要部24を削除する。不要部24としては、足場2や、ピーコン跡や、開口等に相当する極端に異なった位置にある点群データである。なお、作業者が、等値線
図21から不要部24を削除してもよい。
【0028】
特徴点抽出部34は、
図3及び
図4に示すように、不要部削除部33によって不要部24が削除された等値線
図21から、3つの特徴点22を抽出する。特徴点22は、同一の特徴を有する点であり、例えば、壁1のうち最も外側(足場2側)に突出している点とすることができる。なお、作業者が、等値線
図21から3つの特徴点22を抽出してもよい。
【0029】
基準面作成部35は、
図3及び
図4に示すように、特徴点抽出部34が抽出した3つの特徴点22を含む平面である基準面51を生成する。
【0030】
凹凸量算出部36は、壁1の表面を三次元測定機20で測定した点群データに基づいて、基準面51からの凹凸量を算出する。実施例1では、凹凸量算出部36は、基準面51からの凹量を算出する。
【0031】
補修箇所特定部37は、凹凸量算出部36が算出した凹凸量が、所定の閾値31aを超えたか否かを判断し、所定の閾値31aを超えた箇所を補修が必要な補修必要箇所23として特定する。具体的には、補修箇所特定部37は、基準面51を、所定の閾値31aである距離Hだけ壁1に近づく方向にオフセットした第2基準面52を生成し、第2基準面52を超えて、凹んでいる箇所を補修必要箇所23として特定する。距離Hは、例えば、7[mm]とすることができるが、この値に限定されるものではない。
【0032】
補修位置画像生成部38は、
図5に示すように、補修必要箇所23と、その位置情報としての通芯G1,G2とを表示した補修位置画像21Aを生成する。補修位置画像21Aには、補修必要箇所23と、不要部24と、それ以外の部分である補修不要箇所25と、通芯G1,G2とが示されている。なお、補修位置画像21Aは、補修必要箇所23と、不要部24と、通芯G1,G2とが示されてもよい。補修位置画像21Aは、記録媒体出力部40に送信される。
【0033】
記録媒体出力部40は、
図5に示すように、補修位置画像21Aが形成された記録媒体としての用紙41を出力する。すなわち、記録媒体出力部40は、補修箇所特定部37が特定した補修が必要な箇所を出力する。
【0034】
このように構成されたコンクリート表面評価システム10は、三次元測定機20によって測定された三次元測定データが制御部30に入力され、制御部30での処理情報を記録媒体出力部40に出力する。
【0035】
[コンクリート表面評価システムの使用方法]
図6は、実施例1のコンクリート表面評価システム10を使用して壁1の補修をしている状況を示す図である。
図7は、実施例1のコンクリート表面評価システム10の使用例を示す表であり、
図7(a)が補正必要箇所の記録を示す表であり、
図7(b)が補正必要箇所の補修後の記録を示す表である。以下、実施例1のコンクリート表面評価システム10の使用方法を説明する。
【0036】
作業者Bは、
図1に示すように、三次元測定機20によって、コンクリートの壁1を撮影する。そして、作業者Bは、出力された用紙41に記載された補修位置画像21Aを見ながら、
図6に示すように、コンクリートの壁1に、例えばチョーク等により、補修必要箇所23をマーカ60によって印を付ける。その後、作業者Bは、コテ等の道具Kを使用して、補修必要箇所23であるマーカ60のエリアを補修する。
【0037】
作業者Bは、補修後の壁1を、三次元測定機20によって再度撮影して、しっかりと補修がされたか否かを確認することもできる。作業者Bは、このように補修された壁1に、タイル等を接着剤等で貼り付けたりすることもできる。
【0038】
また、このようにして、補修箇所特定部37によって特定された補修必要箇所23は、
図7(a)に示すように、補修前の補修記録71として残すこともできる。また、補修必要箇所23を補修した補修箇所23Aは、
図7(b)に示すように、補修後の補修記録72として残すこともできる。
【0039】
[コンクリート表面評価システムによるコンクリート表面評価処理の流れ]
図8は、実施例1のコンクリート表面評価処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図8に基づいて、実施例1のコンクリート表面評価処理の流れについて説明する。
【0040】
図8に示すように、制御部30は、コンクリートの壁1の表面の三次元測定データを点群データによって取得する(ステップS101)。
【0041】
次いで、等値線図作成部32は、三次元測定機20で測定した点群データに基づいて、等値線
図21を作成する(ステップS102).
【0042】
次いで、不要部削除部33は、等値線
図21から不要部24を削除する(ステップS103)。
【0043】
次いで、特徴点抽出部34は、不要部削除部33によって不要部24が削除された等値線
図21から、3つの特徴点22を抽出する(ステップS104)。
【0044】
次いで、基準面作成部35は、特徴点抽出部34が抽出した3つの特徴点22を含む平面である基準面51を生成する(ステップS105)。
【0045】
次いで、凹凸量算出部36は、三次元測定機20で測定した点群データに基づいて、基準面51からの凹凸量を算出する(ステップS106)。
【0046】
次いで、補修箇所特定部37は、基準面51からの凹凸量が所定の閾値31aを超えるか否かを判断する(ステップS107)。
【0047】
基準面51からの凹凸量が所定の閾値31aを超えると判断した場合(ステップS107でYES)、補修箇所特定部37は、基準面51からの凹凸量が所定の閾値31aを超えると判断した箇所を、補修が必要な補修必要箇所23と特定し(ステップS108)、ステップS110に進む。一方、基準面51からの凹凸量が所定の閾値31aを超えないと判断した場合(ステップS107でNO)、補修箇所特定部37は、基準面51からの凹凸量が所定の閾値31aを超えないと判断した箇所を、補修が不要な補修不要箇所25と特定し(ステップS109)、ステップS110に進む。
【0048】
次いで、補修位置画像生成部38は、補修必要箇所23と、その位置情報としての通芯G1,G2とを表示した補修位置画像21Aを生成して図面化する(ステップS110)。
【0049】
次いで、記録媒体出力部40は、補修位置画像21Aが形成された用紙41を出力して(ステップS111)、コンクリート表面評価処理を終了する。
【0050】
[コンクリート表面評価システムの作用]
次に、実施例1のコンクリート表面評価システム10の作用を説明する。実施例1のコンクリート表面評価システム10は、コンクリートの表面の凹凸を評価する。コンクリート表面評価システム10は、コンクリートの表面を三次元測定機20で測定したデータに基づいて、所定の基準面51からの凹凸量を算出する凹凸量算出部36と、凹凸量と所定の閾値31aとに基づいて、補修が必要な箇所を特定する補修箇所特定部37と、補修箇所特定部37が特定した補修が必要な箇所を出力する出力部(記録媒体出力部40)と、を備える(
図2)。
【0051】
これにより、コンクリートの表面の補修が必要な箇所を知ることができる。そのため、コンクリートの全表面を補修せずに、コンクリートの表面の補修が必要な箇所だけを補修することができる。その結果、コンクリートの表面の凹凸の補修作業を効率化することができる。
【0052】
特に、コンクリートの表面にタイル等を接着剤によって貼り付ける際に、タイル等を接着貼りすることができる程度に、コンクリートの表面を容易に平坦にすることができる。
【0053】
実施例1のコンクリート表面評価システム10では、基準面51は、コンクリートの表面を三次元測定機20で測定したデータにおける3つの特徴点22を含む平面である(
図3)。
【0054】
これにより、基準面51を容易に生成することができ、基準面51からの凹凸量を容易に算出することができる。そのため、補修が必要な箇所を容易に特定することができ、コンクリートの表面の凹凸の補修作業を効率化することができる。
【0055】
実施例1のコンクリート表面評価システム10では、補修箇所特定部37が特定した補修が必要な箇所と、その位置情報(通芯G1,G2)とを表示した補修位置画像21Aを生成する補修位置画像生成部38を備え、出力部(記録媒体出力部40)は、補修位置画像21Aを記録媒体(用紙41)に出力する記録媒体出力部40である(
図2)。
【0056】
これにより、記録媒体(用紙41)に記録された補修位置画像21Aを見ながら、作業者Bは、作業現場でコンクリートの表面の補修が必要な箇所を特定することができる。そのため、コンクリートの全表面を補修せずに、コンクリートの表面の補修が必要な箇所だけを補修することができる。その結果、コンクリートの表面の凹凸の補修作業を効率化することができる。また、コンクリートの表面の凹凸の補修が必要な箇所を記録書として残すことができる。
【実施例2】
【0057】
実施例2のコンクリート表面評価システムは、主に出力部の構成が異なる点で、実施例1のコンクリート表面評価システムと相違する。
【0058】
[コンクリート表面評価システムを使用する状況]
図9と
図10は、実施例2のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する概略図である。以下、実施例2のコンクリート表面評価システムを使用する状況を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0059】
実施例2では、
図9に示すように、作業者Bは、足場板2dに設置された三次元測定機20によって、壁1の表面を測定する。測定データは、パーソナルコンピュータ(制御部)30で処理される。また、三次元測定機20には、カメラ120が取り付けられていて、作業者Bは、カメラ120によって、壁1に取り付けられたマーカMを撮影する。マーカMの画像は、パーソナルコンピュータ(制御部)30に記憶される。
【0060】
次に、作業者Bは、
図10に示すように、タブレット端末140のカメラ141で、マーカMを含む壁1を撮影する。この際、
図9に示すように、パーソナルコンピュータ(制御部)30での処理の結果が、タブレット端末140の出力部としての表示部142から出力される。
【0061】
[コンクリート表面評価システムの機能構成]
図11は、実施例2のコンクリート表面評価システムの機能構成を示すブロック図である。
図12は、実施例2の表示部に表示される画像の例を示す図である。以下、実施例2のコンクリート表面評価システムの機能構成を説明する。
【0062】
図11に示すように、コンクリート表面評価システム110は、三次元測定機20と、カメラ120と、カメラ141と、制御部130と、表示部142と、を備える。
【0063】
カメラ120は、例えば一般的なタブレット端末やスマートフォンに備わるカメラとすることができる。カメラ120で撮影したマーカMの画像は、制御部130に送信される。
【0064】
カメラ141は、例えば一般的なタブレット端末やスマートフォンに備わるカメラとすることができる。カメラ120で撮影したコンクリートの壁1の画像と、マーカMの画像とは、制御部130に送信される。
【0065】
制御部130は、主たる構成として、記憶部31と、等値線図作成部32と、不要部削除部33と、特徴点抽出部34と、基準面作成部35と、凹凸量算出部36と、補修箇所特定部37と、補修必要箇所画像生成部131と、紐付け部132と、重畳画像生成部133と、を備える。なお、制御部130は、コンクリート表面評価システム110の全体の制御を司る。
【0066】
補修必要箇所画像生成部131は、補修必要箇所23を表示した補修必要箇所画像を生成する。
【0067】
紐付け部132は、補修必要箇所23を表示した補修必要箇所画像を、カメラ120で撮影したマーカMの画像と紐付けて、記憶部31に記憶する。
【0068】
重畳画像生成部133は、カメラ141で撮影したマーカMの画像に基づいて、記憶部31に記憶された補修必要箇所画像を呼び出し、補修必要箇所画像を、カメラ141で撮影したコンクリートの壁1の画像に重畳した重畳画像135を生成する。
【0069】
すなわち、重畳画像生成部133は、カメラ141が撮影した、コンクリートの壁1の表面に取り付けられたマーカMの画像に基づいて、補修箇所特定部37が特定した補修必要箇所23を、カメラ141が撮影した画像に重畳させた重畳画像135を生成する。重畳画像135は、表示部142に送信される。
【0070】
表示部142は、
図12に示すように、重畳画像135をタブレット端末140の表示部142に表示する。
【0071】
このように構成されたコンクリート表面評価システム110は、三次元測定機20によって測定された壁1の三次元測定データと、カメラ120により撮影されたマーカMの画像と、カメラ141により撮影されたマーカMと壁1の画像と、が制御部30に入力され、制御部30での処理情報を表示部142に表示する。
【0072】
[コンクリート表面評価システムの使用方法]
以下、実施例2のコンクリート表面評価システム110の使用方法を説明する。
【0073】
作業者Bは、
図9に示すように、三次元測定機20によって、コンクリートの壁1を撮影する。また、三次元測定機20に付属したカメラ120によって、コンクリートの壁1に貼り付けられたマーカMを撮影する。
【0074】
その後、作業者Bは、
図10に示すように、タブレット端末140のカメラ141でコンクリートの壁1と、コンクリートの壁1に貼り付けられたマーカMを撮影する。次いで、作業者Bは、
図12に示すように、表示部142に表示された重畳画像135を見ながら、コンクリートの壁1に、例えばチョーク等により、補修必要箇所23をマーカ60によって印を付ける。その後、作業者Bは、コテ等の道具Kを使用して、補修必要箇所23であるマーカ60のエリアを補修する。
【0075】
作業者Bは、補修後の壁1を、三次元測定機20によって再度撮影して、しっかりと補修がされたか否かを確認することもできる。作業者Bは、このように補修された壁1に、タイル等を接着剤等で貼り付けたりすることもできる。
【0076】
[コンクリート表面評価システムによるコンクリート表面評価処理の流れ]
図13と
図14は、実施例2のコンクリート表面評価処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例2のコンクリート表面評価処理の流れについて説明する。なお、実施例2のステップS203~ステップS211は、実施例1のステップ101~ステップS109に対応するため、この部分の記載を省略する。
【0077】
実施例2のコンクリート表面評価処理は、第1の処理と第2の処理とで構成される。
【0078】
図13に示すように、第1の処理を開始すると、制御部130は、カメラ141で撮影されたマーカMの画像を取得する(ステップS201)。
【0079】
次いで、制御部130は、マーカMの画像を記憶部31に記憶する(ステップS202)。
【0080】
ステップS212では、補修必要箇所画像生成部131は、補修必要箇所23を表示した補修必要箇所画像を生成する。
【0081】
次いで、紐付け部132は、補修必要箇所23を表示した補修必要箇所画像を、カメラ120で撮影したマーカMの画像と紐付けて(ステップS212)、記憶部31に記憶してコンクリート表面評価の第1の処理を終了する。
【0082】
その後、
図14に示すように、第2の処理を開始すると、制御部130は、カメラ141で撮影したコンクリートの壁1とマーカMの画像を取得する(ステップS301)。
【0083】
次いで、重畳画像生成部133は、カメラ141で撮影したマーカMの画像に基づいて、記憶部31に記憶された補修必要箇所画像を呼び出し(ステップS302)、補修必要箇所画像を、カメラ141で撮影したコンクリートの壁1の画像に重畳した重畳画像135を生成する(ステップS303)。
【0084】
次いで、表示部142は、重畳画像135を表示して(ステップS304)、コンクリート表面評価の第2の処理を終了する。
【0085】
[コンクリート表面評価システムの作用]
次に、実施例1のコンクリート表面評価システム110の作用を説明する。実施例1のコンクリート表面評価システム110は、コンクリートの表面を撮影するカメラ141の画像に基づいて、補修箇所特定部37が特定した補修が必要な箇所を、カメラ141が撮影した画像に重畳させた重畳画像135を生成する重畳画像生成部133を備え、出力部は、重畳画像135を表示する表示部142である(
図9)。
【0086】
これにより、コンクリートの補正が必要な箇所をカメラ141で撮影した画像に重畳させて、作業現場で表示することができる。そのため、作業者Bは、作業現場でコンクリートの表面の補修が必要な箇所を容易に特定することができる。その結果、コンクリートの表面の凹凸の補修作業を効率化することができる。
【0087】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0088】
以上、本発明のコンクリート表面評価システムを実施例1,2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、各実施例の組み合わせや、追加等は許容される。
【0089】
実施例1及び実施例2では、特徴点22は、壁1のうち最も外側(足場2側)に突出している点とする例を示した。しかし、特徴点は、同一の特徴を有する点であればよく、例えば、壁1のうち最も内側に凹んでいる点としてもよい。
【0090】
実施例1及び実施例2では、所定の閾値31aを7[mm]とする例を示した。しかし、所定の閾値31aは、この態様に限定されるものではない。
【0091】
実施例1及び実施例2では、凹凸量算出部36は、基準面51からの凹量を算出する例を示した。しかし、凹凸量算出部は、基準面からの凸量を算出してもよい。
【0092】
実施例1では、記録媒体出力部40をプリンタとする例を示した。しかし、記録媒体出力部としては、光ディスクやフラッシュメモリー等であってもよい。
【0093】
実施例1では、出力部を記録媒体出力部40とする例を示した。しかし、出力部は、画像を表示する表示部としてもよい。
【0094】
実施例1では、位置情報を通芯とする例を示した。しかし、位置情報は、この態様に限定されず、例えば、窓枠等の建物の特徴部分であってもよい
【0095】
実施例2では、表示部142として、タブレット端末140の表示部とする例を示した。しかし、表示部は、この態様に限定されず、例えば、ヘッドアップディスプレイ装置の表示部としてもよいし、スマートフォンの表示部としてもよいし、パーソナルコンピュータのディスプレーとしてもよい。
【0096】
実施例2では、三次元測定機20に備えられたカメラ120でマーカMの画像を取得する例を示した。しかし、マーカMの画像を、三次元測定機によって取得するようにしてもよい。
【0097】
実施例1及び実施例2では、本発明のコンクリート表面評価システムによって、型枠を取り外した後のコンクリートの表面の凹凸を評価する例を示した。しかし、本発明のコンクリート表面評価システムによって、補修後のコンクリートの表面の凹凸を評価してもよいし、コンクリートの表面に張り付けられたタイル等の凹凸を評価してもよい。
【0098】
実施例1及び実施例2では、本発明のコンクリート表面評価システムによって、鉄筋コンクリートの建物の壁1の表面の凹凸を評価する例を示した。しかし、本発明のコンクリート表面評価システムは、コンクリートの柱や、梁や、床や、屋根等に適用することもできるし、橋やトンネル等の構造物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 コンクリート表面評価システム
20 三次元測定機
21A 補修位置画像
22 特徴点
31a 閾値
36 凹凸量算出部
37 補修箇所特定部
38 補修位置画像生成部
40 記録媒体出力部(出力部の一例)
51 基準面
G1,G2 通芯(位置情報の一例)
133 重畳画像生成部
135 重畳画像
141 カメラ
142 表示部(出力部の一例)