(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/205 20110101AFI20231115BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/237
(21)【出願番号】P 2019225607
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山下 智司
(72)【発明者】
【氏名】片山 大次郎
(72)【発明者】
【氏名】中井 一嘉
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107730(JP,A)
【文献】特開2012-111259(JP,A)
【文献】特開2019-156349(JP,A)
【文献】特開2001-030863(JP,A)
【文献】特開2009-019497(JP,A)
【文献】特開2019-166975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/205
B60R 21/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、
ガスを発生するインフレータと、
折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、
前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを保持する保持部材と、を備え、
前記折り畳まれたエアバッグは、車両前方側に配置された第1折り部と、前記第1折り部に隣接して車両後方側に配置された第2折り部と、を有し、
前記保持部材は、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部
と、前記エアバッグの初期膨張展開を抑制しない非抑制部とを有し、
前記非抑制部は、前記第1折り部を覆い、
前記抑制部は、
前記第2折り部のみを覆い、かつ、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域と第2領域とを有
し、
前記第1領域は、車幅方向の一方に位置し、
前記第2領域は、車幅方向の他方に位置することを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記第1折り部において蛇腹折り又はタック折りされており、前記第2折り部においてロール状に折り畳まれていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、車幅方向において、前記インフレータの一方側で膨張展開する第1膨張部と、前記インフレータの他方側で膨張展開する第2膨張部と、を有し、
前記第1膨張部は、前記第2膨張部よりも大きく膨張展開し、
前記第1膨張部は、前記第1領域で覆われ、
前記第2膨張部は、前記第2領域で覆われ、
前記第1領域の抑制力は、前記第2領域の抑制力よりも小さいことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載のエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、膨張展開により車両後方側に突出する2つの突出部を有し、
一方の前記突出部は、他方の前記突出部よりも大きく膨張し、
前記一方の突出部は、前記第1領域で覆われ、
前記他方の突出部は、前記第2領域で覆われ、
前記第1領域の抑制力は、前記第2領域の抑制力よりも小さいことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項5】
乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、
ガスを発生するインフレータと、
折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、
前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを収納する布製ハウジングと、を備え、
前記布製ハウジングは、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部と、前記抑制部の車幅方向の一方の端部に隣接する第1側壁部と、前記抑制部の車幅方向の他方の端部に隣接する第2側壁部と、を有し、
前記抑制部と前記第1側壁部との境界には、前記抑制部及び前記第1側壁部を構成する共通の基布が縫い合わされた第1の縫製部位が設けられ、
前記抑制部と前記第2側壁部との境界には、前記抑制部及び前記第2側壁部を構成する共通の基布が縫い合わされた第2の縫製部位が設けられ、
前記第1の縫製部位の長さは、前記第2の縫製部位の長さと異なることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項6】
乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、
ガスを発生するインフレータと、
折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、
前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを保持する帯状部材と、を備え、
前記帯状部材は、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部を有し、
前記帯状部材は、前記抑制部の車幅方向の一方の端部の幅と前記抑制部の車幅方向の他方の端部の幅とが互いに異な
り、
前記抑制部の幅は、前記一方の端部から前記他方の端部にかけて漸次大きくなっていることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置に関する。より詳しくは、自動車等の車両に取り付けられ、車両衝突時に、着座した乗員の前方で該乗員に向かって膨張展開するエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突した時にエアバッグを膨張展開させて乗員を保護するエアバッグ装置が知られている。例えば、助手席用エアバッグ装置は、車両の衝突時に、着座した乗員の前方で膨脹展開し、前方に移動する乗員を受け止めて保護するものであり、通常、助手席前方のインストルメントパネル内にエアバッグが折り畳まれて収納される。
【0003】
助手席用エアバッグ装置に関する技術として、例えば特許文献1には、上下方向複数層に圧縮され、最初に展開する上層部分とその下の下層部分から構成されるエアバッグの下層部分を内フラップで覆うことにより、上層部分をウィンドシールド側から膨張展開するエアバッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再公表特許WO2009/066404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の内フラップを用いたエアバック装置は、車両前後方向においてエアバッグの膨張展開のタイミングをコントロールすることができるが、車両左右方向(車幅方向)においてはエアバッグの膨張展開のタイミングをコントロールすることができない。すなわち、エアバッグの膨張展開のタイミングをコントロールすることができるのは1方向のみである。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、2方向において膨張展開のタイミングをコントロールすることができるエアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、ガスを発生するインフレータと、折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部を有し、前記抑制部は、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域と第2領域とを有するエアバッグ装置である。
【0008】
また、本発明の別の一態様は、乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、ガスを発生するインフレータと、折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを収納する布製ハウジングと、を備え、前記布製ハウジングは、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部と、前記抑制部の車幅方向の一方の端部に隣接する第1側壁部と、前記抑制部の車幅方向の他方の端部に隣接する第2側壁部と、を有し、前記抑制部と前記第1側壁部との境界には、前記抑制部及び前記第1側壁部を構成する共通の基布が縫い合わされた第1の縫製部位が設けられ、前記抑制部と前記第2側壁部との境界には、前記抑制部及び前記第2側壁部を構成する共通の基布が縫い合わされた第2の縫製部位が設けられ、前記第1の縫製部位の長さは、前記第2の縫製部位の長さと異なるエアバッグ装置である。
【0009】
また、本発明の更に別の一態様は、乗員の車両前方に配置されるエアバッグ装置であって、ガスを発生するインフレータと、折り畳まれて収納され、前記インフレータが発生するガスにより膨張展開するエアバッグと、前記インフレータが取付けられる取付け部を有し、前記取付け部と対向する乗員側から前記エアバッグが膨張展開可能に折り畳まれた前記エアバッグを保持する帯状部材と、を備え、前記帯状部材は、前記折り畳まれたエアバッグの一部を前記乗員側から覆い、前記エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部を有し、前記帯状部材は、前記抑制部の車幅方向の一方の端部の幅と前記抑制部の車幅方向の他方の端部の幅とが互いに異なるエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2方向において膨張展開のタイミングをコントロールすることができるエアバッグ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態を車幅方向から見たときの断面図である。
【
図2】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態を示した斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【
図5】実施形態1に係るエアバッグの平面図である。
【
図6】実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(1)を説明する平面図である。
【
図7】実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(1)を説明する、A1-A2線に沿った断面図である。
【
図8】実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(2)を説明する平面図である。
【
図9】実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(2)を説明する、B1-B2線に沿った断面図である。
【
図10】折り畳み完了後のエアバッグが布製ハウジングに収納される状態を説明する斜視図である。
【
図11】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態の、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図である。
【
図12】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態の、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【
図13】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の斜視図である。
【
図14】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図である。
【
図15】実施形態1に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【
図16】実施形態1に係るエアバッグ装置と従来のエアバッグ装置について、初期膨張展開時における左右揺動の違いを説明するグラフである。
【
図17】実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(1)を説明する平面図である。
【
図18】実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(2)を説明する平面図である。
【
図19】実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(3)及び(4)を説明する平面図である。
【
図20】実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(5)を説明する平面図である。
【
図21】実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(6)を説明する平面図である。
【
図22】実施形態2に係る帯状部材の展開図である。
【
図23】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期状態の斜視図である。
【
図24】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期状態の、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図である。
【
図25】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期状態の、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【
図26】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の斜視図である。
【
図27】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図である。
【
図28】実施形態2に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【
図29】変形例1に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【
図30】変形例2に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【
図31】変形例3に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【
図32】変形例4に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【
図33】変形例5に係るエアバッグ装置の初期状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る助手席用エアバッグ装置について説明する。
【0013】
(実施形態1)
まず、
図1及び
図2を用いて、実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態について説明する。
図1は、実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態を車幅方向から見たときの断面図である。
図2は、実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態を示した斜視図である。本明細書では、エアバッグ100に関する説明を行う際に、車両に取り付けた状態を基準とし、例えば、車両前方側Fと車両後方側(乗員側)Rを結ぶ線に沿った方向を「車両前後方向」といい、車両前方側Fと車両後方側Rを結ぶ線と直交する方向を「車幅方向」という。
【0014】
実施形態1に係るエアバッグ装置10は、助手席の前方に位置するインストルメントパネル3の上面の内側に配置され、ガスを発生するインフレータ(ガス発生装置)11と、折り畳まれて収納され、インフレータ11が発生するガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ100と、インフレータ11が取付けられる取付け部15aを有し、折り畳まれたエアバッグ100を保持する保持部材としての布製ハウジング15と、を備える。エアバッグ100は、布製ハウジング15の、取付け部15aと対向する乗員側Cから膨張展開する。なお、本明細書において、「初期状態」とは、インフレータ11の着火前、すなわちエアバッグ100の膨張展開前の収納状態を意味する。
【0015】
本実施形態において、エアバッグ100には、膨張開始直後から初期膨張展開(25ミリ秒以内)までの間、布製ハウジング15の制約を受けずに膨張する部分と、布製ハウジング15の制約を受けながら膨張する部分とが設けられる。
図2の場合、車両前方側Fに配置された第1折り部110が、布製ハウジング15の制約を受けずに膨張する部分に相当し、第1折り部110に隣接して車両後方側Rに配置された第2折り部120が、布製ハウジング15の制約を受けながら膨張する部分に相当する。布製ハウジング15は、折り畳まれたエアバッグ100のうち、取付け部15aの反対側である乗員側Cから第1折り部110および第2折り部120を覆い、エアバッグ100の初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部15bを有する。この抑制部15bは、エアバッグ100の乗員側Cへの初期膨張展開を抑制する機能を奏する部分であり、
図2の場合、布製ハウジング15のうちスリット15cよりも車両後方側Rに配置される。すなわち、折り畳まれたエアバッグ100は、抑制部15bで覆われた第2折り部120が、スリット15cよりも車両後方側Rに配置され、抑制部15bで覆われていない第1折り部110が、スリット15cよりも車両前方側Fに配置されている。
【0016】
本実施形態において、布製ハウジング15は、乗員側の面の中央に、車幅方向に沿って断続的に形成されたスリット15cを有し、膨張開始直後に、膨張するエアバッグ100の圧力によってスリット15c間の連結部15dが破断するように構成されている。連結部15dの破断によって、布製ハウジング15の乗員側Cかつ車両前方側Fには開口が形成され、該開口を通じてエアバッグ100の第1折り部110が布製ハウジング15外に展開することになる。
【0017】
一方、布製ハウジング15の乗員側Cかつ車両後方側Rに位置する抑制部15bは、車幅方向の一方の端部に隣接する布製ハウジング15の第1側壁部15x、及び、車幅方向の他方の端部に隣接する布製ハウジング15の第2側壁部15yと結合しているので、連結部15dの破断後も開口を形成することなく、エアバッグ100の第2折り部120の初期膨張展開を抑制する。このような抑制部15bが設けられることにより、エアバッグ100の抑制部15bで覆われた部分は、抑制部15bで覆われていない部分よりも初期膨張展開が抑制される。すなわち、抑制部15bで覆われた部分及び抑制部15bで覆われていない部分の両方が含まれる第1方向Z1でエアバッグ100の膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。
【0018】
また、本実施形態の布製ハウジング15は、抑制部15bと第1側壁部15xとの結合部分の長さが、抑制部15bと第2側壁部15yとの結合部分の長さと異なることにより、第1側壁部15x側と第2側壁部15y側とで抑制力が互いに異なっている。すなわち、折り畳まれたエアバッグ100を乗員側Cから見たとき、第2折り部120を覆う抑制部15bは、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有する。抑制部15bが初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有することから、第1領域15b1及び第2領域15b2の一方の領域に覆われたエアバッグ100の初期膨張展開を、他方の領域に覆われたエアバッグ100の初期膨張展開よりも抑制することができる。すなわち、抑制部15bの第1領域15b1及び第2領域15b2に覆われた部分の両方が含まれる第2方向Z2で膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。以上のように、本実施形態では、2方向においてエアバッグ100の膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
インフレータ11は、車両の衝突時に作動する。まず、車両に搭載された衝突検知センサが車両の衝突を検知すると、衝突検知センサから送られた信号をECU(Electronic Control Unit)が演算し、衝突のレベルが判定される。判定された衝突のレベルが、エアバッグ100を膨らませる場合に該当すると、インフレータ11が着火され、燃焼による化学反応でガスが発生する。発生したガスは、インフレータ11のガス噴出孔からエアバッグ100の内部に放出される。
【0020】
エアバッグ100は、袋体であり、インフレータ11の作動前は、インストルメントパネル3の上面の内側に配置された布製ハウジング15内に、折り畳まれて収納されている。インフレータ11が作動すると、エアバッグ100の内部に、インフレータ11から発生したガスが充填され、エアバッグ100は膨張する。その結果、エアバッグ100は、布製ハウジング15のスリット15c間の連結部15dを破断し、インストルメントパネル3に設けられたリッド4を押し開き、折り畳みが解かれながら車室内に膨張展開する。
【0021】
エアバッグ100は、例えば、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の糸で形成することができる。また、エアバッグ100は、耐熱性の向上や、気密性の向上等のために、シリコン等の無機物で表面が被覆されていてもよい。
【0022】
布製ハウジング15は、エアバッグ100と同じ素材で形成されていてもよく、例えば、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の糸で形成することができる。布製ハウジング15には、乗員側の面(上面)にスリット15cが設けられている。
図2に示したように複数のスリット15cが断続的に形成されたものが好適に用いられる。スリット15c間の連結部15dが膨張するエアバッグ100によって破断することでエアバッグ100の膨張展開を許容する開口が形成される。
【0023】
布製ハウジング15の下面には、インフレータ11の取付け孔である取付け部15aが設けられており、取付け部15aには、インフレータ11のガス噴出孔が設けられた部分が挿入される。エアバッグ100の内側には、インフレータ11の取付け孔が設けられた金属製の挟込プレート(
図3等で示された挟込プレート16参照)が配置されている。挟込プレートには、インフレータ11の取付け孔の周囲に、下方に向けて突出した4本のボルト17が立設されている。エアバッグ100、布製ハウジング15、金属ハウジング31、インフレータ11のフランジ部11aを、ボルト17が貫通し、ナットによって締結されることでそれぞれが固定される。
【0024】
金属ハウジング31は、側壁に設けられた複数のフック32によって、インストルメントパネル3内に突出した周壁5に取り付けられる。また、金属ハウジング31は、側面から突出した取付け部33によって、車体に取り付けられる。
【0025】
実施形態1に係るエアバッグ装置10の他の構成要素については、従来公知の助手席用エアバッグ構造を適用することができる。
【0026】
次に、実施形態1に係るエアバッグ100の膨張展開時の構成及び機能について説明する。
図3は、実施形態1に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
【0027】
膨張展開したエアバッグ100の車幅方向の中央にはインフレータ11が配置され、エアバッグ100の車幅方向の両側には、インフレータ11の一方側(具体的には、車両前方側Fに向かってインフレータ11の左側)で膨張展開する第1膨張部140と、インフレータ11の他方側(具体的には、車両前方側Fに向かってインフレータ11の右側)で膨張展開する第2膨張部150とが形成される。第1膨張部140は、膨張展開により車両後方側Rに突出する第1突出部(一方の突出部)141を有し、第2膨張部150は、膨張展開により車両後方側Rに突出する第2突出部(他方の突出部)151を有する。本実施形態では、第1突出部141が、第2突出部151よりも大きく膨張し、第1膨張部140が、第2膨張部150よりも大きく膨張展開する。
【0028】
ところで、近年、車両のスモールオーバーラップインパクト(Small Overlap Impact)やオブリークインパクト(Oblique Impact)等の斜め衝突時における乗員保護に適した、乗員の車両前方側に配置されるエアバッグ装置の開発が進められている。
図4は、車両の斜め衝突の様子を示した図である。
図4に示したように、車両1が、木や電柱等の細い障害物2へ車両1の前方部分を衝突させる斜め衝突を起こした場合、乗員6には、車両1の斜め前方に向かって移動する力が作用する。
【0029】
本実施形態のエアバッグ100は、車両前方側Fに向かってインフレータ11の左側で膨張展開する第1膨張部140が、インフレータ11の右側で膨張展開する第2膨張部150よりも大きく膨張展開するため、エアバッグ装置10を左ハンドル車両の助手席用エアバッグとして用いた場合、当該車両が運転席側で斜め衝突を起こしても車両前方側Fに向かって左斜め前方へ移動する助手席の乗員を受け止め、乗員がエアバッグ100から逸れることを防止し、乗員を適切に保護することができる。また、エアバッグ100には第1突出部141及び第2突出部151が設けられていることから、乗員がエアバッグ100から逸れることをより抑え、乗員をより適切に保護することができる。
【0030】
本実施形態の抑制部15bは、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有しており、第1領域15b1と第2領域15b2のうち、抑制力が大きい方に第1膨張部140及び第1突出部141が覆われ、抑制力が小さい方に第2膨張部150及び第2突出部151が覆われる。
【0031】
エアバッグ100には、エアバッグ100内のガスを排出するためのベントホールが設けられてもよく、ベントホールの数及び大きさは適宜選択することができる。
【0032】
続いて、本実施形態に係るエアバッグ100の折り畳み方について説明する。なお、本明細書では、車幅方向におけるエアバッグ100の側方部分を「側域」という。
【0033】
図5は、実施形態1に係るエアバッグの平面図である。
図6は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(1)を説明する平面図である。
図7は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(1)を説明する、A1-A2線に沿った断面図である。
【0034】
第1突出部141及び第2突出部151を備える上述のエアバッグ100の車両前方側Fをタック折りして
図5の状態となるように折り畳む。その後、折り畳みステップ(1)により、エアバッグ100の車両外方側の側域である第1の側域101及び車両中央側(車両設備側)の側域である第2の側域102を、それぞれ、エアバッグ100の車両幅方向を短縮するように蛇腹折りして
図6及び
図7に示した状態とする。以上のようにして、車両前後方向で互いに隣接する第1折り部110及び第2折り部120が形成されることにより、エアバッグ100は、車幅方向に短く車両前後方向に細長い形状になる。
【0035】
図8は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(2)を説明する平面図である。
図9は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳みステップ(2)を説明する、B1-B2線に沿った断面図である。
図10は、折り畳み完了後のエアバッグが布製ハウジングに収納される状態を説明する斜視図である。
【0036】
折り畳みステップ(2)において、エアバッグ100の車両前後方向を短縮するように折り畳む。具体的には、第2折り部120を、インフレータ11側に向かって折り返して重ね、先端からロール状に巻き取り、
図8及び
図9に示したように、ロール状に折り畳まれた第2折り部120を形成する。続いて、第1折り部110を、ロール状に折り畳まれた第2折り部120の周囲を覆うように折り曲げ、
図8及び
図9に示したように、リッド側先端部111を有する第1折り部110を形成する。以上の折り畳み手順により、第1折り部110がタック折りされ、第2折り部120がロール状に折り畳まれたエアバッグ100が得られ、エアバッグ100の折り畳みが完了する。折り畳みが完了したエアバッグ100は、
図10に示すように布製ハウジング15内に収納され、上述の
図2に示した状態のエアバッグ装置10が完成する。ここで、
図10に示す布製ハウジング15が有する抑制部15bは、車幅方向の一方の端部に隣接する第1側壁部15x及び他方の端部に隣接する第2側壁部15yと結合しており、抑制部15bと第1側壁部15xとの結合部分の長さL1は、抑制部15bと第2側壁部15yとの結合部分の長さL2よりも短い。
【0037】
図2に示すように、折り畳まれたエアバッグ100は、車両前方側Fに配置された第1折り部110と、第1折り部110に隣接して車両後方側Rに配置された第2折り部120と、を有し、第2折り部120は、第1領域15b1及び第2領域15b2内に位置する。このような態様とすることにより、抑制部15bで覆われておらず、車両前方側Fに配置された第1折り部110が、抑制部15bで覆われ、かつ、車両後方側Rに配置された第2折り部120よりも先に膨張展開することが可能となり、車両前後方向で初期膨張展開のタイミングをコントロールすることが可能となる。具体的には、エアバッグ100の車両前方側Fの第1折り部110が先行して車内空間に展開し、内圧が高い状態でフロントガラス(図示せず)と接触することで、エアバッグ100の上方への展開を抑制する。更に、第1領域15b1は、車幅方向の一方に位置し、第2領域15b2は、車幅方向の他方に位置する。このような態様とすることにより、エアバッグ100の第2折り部120について、車幅方向で初期膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。
【0038】
ところで、本実施形態のエアバッグ100は、上述の通り、インフレータ11の一方側で膨張展開する第1膨張部140が、インフレータ11の他方側で膨張展開する第2膨張部150よりも大きく膨張展開する。従来のエアバッグ装置においては、初期膨張展開時、エアバッグは、より大きく膨張展開する部位に対して、より小さく膨張展開する部位の方が先にガスが充満し乗員側へ膨張展開してしまうため、膨張展開時の大きさが互いに異なる部位、言い換えると、その容積が互いに異なる部位が複数存在する場合、当該複数の部位ごとに膨張展開タイミングに差が生じ、エアバッグ展開時に揺動が発生し易くなっていた。
【0039】
そこで、本実施形態では、布製ハウジング15に抑制部15bを設け、抑制部15bが、エアバッグ100の初期膨張展開時の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有することにより、エアバッグ100の膨張展開時の揺動を抑えている。布製ハウジング15が膨張展開時の揺動を抑える効果について以下に詳細を説明する。
【0040】
図2、
図11及び
図12は、それぞれ、実施形態1に係るエアバッグ装置の初期状態の、斜視図、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図、及び、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
図13、
図14及び
図15は、それぞれ、実施形態1に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、斜視図、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図、及び、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【0041】
図2及び
図11~
図15に示すように、本実施形態では、折り畳まれたエアバッグ100が、車両前方側Fに配置された第1折り部110と、第1折り部110に隣接して車両後方側Rに配置された第2折り部120と、を有し、第2折り部120は、第1領域15b1及び第2領域15b2で覆われ、第1領域15b1は、車幅方向の一方に位置し、第2領域15b2は、車幅方向の他方に位置する。更に、エアバッグ100は、第1折り部110においてタック折りされており、第2折り部120においてロール状に折り畳まれている。このような態様とすることにより、抑制部15bで覆われておらず、かつ、ロール折りよりも折り畳みが解けやすいタック折りされた第1折り部110は、第2折り部120よりも先に膨張展開を開始させて布製ハウジング15の外へ展開することができる。その後、ロール状に折り畳まれた第2折り部120についても膨張展開が開始するが、第2折り部120の中でも、第1領域15b1及び15b2のうち抑制力のより小さな領域(本実施形態では第1領域15b1)に対面する部分の膨張展開を先に開始させ、抑制力のより大きな領域(本実施形態では第2領域15b2)に対面する部分の膨張展開を遅れて開始させることができる。
【0042】
エアバッグ100は、上述の通り、車幅方向において、インフレータ11の一方側で膨張展開する第1膨張部140と、インフレータ11の他方側で膨張展開する第2膨張部150と、を有し、第1膨張部140は、第2膨張部150よりも大きく膨張展開する。更に、
図2、
図11及び
図12に示すように、エアバッグ100の第1膨張部140は、第1領域15b1に対面し、第2膨張部150は、第2領域15b2に対面し、第1領域15b1における抑制力は、第2領域15b2における抑制力よりも小さい。このような態様とすることにより、抑制力のより小さい第1領域15b1に、大きく膨張展開する第1膨張部140を配置し、かつ、抑制力のより大きい第2領域15b2に、小さく膨張展開する第2膨張部150を配置することができる。その結果、初期膨張展開時に布製ハウジング15から先に出易い第2膨張部150について、
図13~
図15に示すように、初期膨張展開時において布製ハウジング15から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が布製ハウジング15から出るタイミングと第2膨張部150が布製ハウジング15から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0043】
より具体的には、布製ハウジング15内に折り畳まれたエアバッグ100が収納されている
図2に示すエアバッグ装置10が、車両の衝突により作動すると、エアバッグ100は、インフレータ11が発生したガスにより急激に膨張する。まず、初期状態のエアバッグ100内にガスが入り少し膨張すると、リッド側先端部111が車室側に押され、布製ハウジング15に設けられた連結部15dを破断しリッド4のティアライン(薄肉部)を割り、リッド4の展開ドアを押し開く。具体的には、エアバッグ100は、
図13~
図15に示したように、車室内に飛び出し、更に膨張することが可能になる。エアバッグ100が膨張展開し始めるエアバッグ展開初期(初期膨張展開時)においては、ガスが入りやすい部分から順に膨張する。すなわち、折り畳みが解けやすいタック状に折り畳まれた車両前方側部分(第1折り部110)が先に膨張して連結部15dを破断し、次いでロール状に折り畳まれた車両後方部分(第1膨張部140及び第2膨張部150が含まれる第2折り部120)についてもロール折りが解け始める。ここで、エアバッグ100の第1領域15b1における抑制力は、エアバッグ100の第2領域15b2における抑制力よりも小さい。そのため、初期膨張展開時において、
図15に示した第2領域15b2側のエアバッグ100の第2膨張部150の膨張展開は、
図14に示した第1領域15b1側のエアバッグ100の第1膨張部140の膨張展開よりも抑えられる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、
図13~
図15に示すように、初期膨張展開時において布製ハウジング15から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が布製ハウジング15から出るタイミングと第2膨張部150が布製ハウジング15から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0044】
実施形態1に係るエアバッグ装置及び従来のエアバッグ装置について、エアバッグの初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を測定し、結果を比較した。
図16は、実施形態1に係るエアバッグ装置と従来のエアバッグ装置について、初期膨張展開時における左右揺動の違いを説明するグラフである。
図16のグラフにおいて、縦軸は、車両の衝突後の経過時間を示しており、25ms後から50ms後の測定データが図示されている。
図16のグラフにおいて、横軸は、エアバッグの乗員を受け止める乗員受け部(
図3における乗員受け部160)の幅方向中心である中心位置を示すために用いられており、膨張展開時の所望の中心位置を0mmと表示している。エアバッグの中心位置は、エアバッグの第1膨張部(左気室)140及び第2膨張部(右気室)150のそれぞれに配置したターゲットの動きを計測し、その中点を求めることによって決定した。
図16では、横軸方向の移動量が小さい測定データほど、エアバッグの左右方向の揺動が小さいことを意味している。
【0045】
図16のグラフに示した従来のエアバッグ装置は、エアバッグ100を覆う抑制部15bが、いずれの領域についても初期膨張展開の抑制力が同じであること以外は、実施形態1のエアバッグ装置10と同様の構成を有する。従来のエアバッグ装置では、エアバッグの第2膨張部(右気室)150の膨張展開が早いため、
図16に示すように、初期膨張展開時の左右の揺動が左側に寄る。一方、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1及び第2領域15b2を有する本実施形態のエアバッグ装置10は、第1膨張部(左気室)140が配置された第1領域15b1における抑制力が、第2膨張部(右気室)150が配置された第2領域15b2における抑制力よりも小さいため、より早く膨張展開し易い第2膨張部(右気室)150の膨張展開を抑えることが可能である。その結果、
図16に示すように、従来のエアバッグ装置の場合には、中心位置が右側から左側に大きく移動し、60mm程度の揺動を生じたのに対して、本実施形態のエアバッグ装置10の場合には、中心位置の左側への移動が減って所望の位置(0mm)から大きく外れなくなり、揺動量が20mm程度となり、初期膨張展開時の左右の揺動を抑制することができた。
【0046】
図2及び
図3等に示すように、本実施形態では、エアバッグ100は、膨張展開により車両後方側Rに突出する2つの突出部(第1突出部141及び第2突出部151)を有し、第1突出部141は、第2突出部151よりも大きく膨張する。2つの突出部が折り畳まれて布製ハウジング15に覆われたとき、第1突出部141は、抑制部15bの第1領域15b1内に位置し、第2突出部151は、第2領域15b2内に位置し、第1領域15b1における抑制力は、第2領域15b2における抑制力よりも小さい。このような態様とすることにより、抑制力のより小さい第1領域15b1に、より大きく膨張する第1突出部141を配置し、かつ、抑制力のより大きい第2領域15b2に、より小さく膨張する第2突出部151を配置することができる。その結果、より小さく膨張するために初期膨張展開時に布製ハウジング15から先に展開し易い第2突出部151について、布製ハウジング15から出るタイミングを遅らせ、初期膨張展開時において、第1突出部141が布製ハウジング15から出るタイミングと第2突出部151が布製ハウジング15から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0047】
次に、布製ハウジング15についてより詳細に説明する。
図1、
図2及び
図13に示すように、布製ハウジング15は、折り畳まれたエアバッグ100の取付け部15aに対向する乗員側Cからエアバッグ100の一部を覆いエアバッグ100の初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部15bと、抑制部15bの車幅方向の一方の端部に隣接する第1側壁部15xと、抑制部15bの車幅方向の他方の端部に隣接する第2側壁部15yと、を有し、抑制部15bと第1側壁部15xとの境界には、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が縫い合わされた第1の縫製部位15x1が設けられ、抑制部15bと第2側壁部15yとの境界には、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が縫い合わされた第2の縫製部位15y1が設けられ、第1の縫製部位15x1の長さは、第2の縫製部位15y1の長さと異なる。このような態様とすることにより、抑制部15bの第1側壁部15x側と第2側壁部15y側とで、互いに異なる抑制力を実現することが可能となる。すなわち、エアバッグ装置に備えられた折り畳まれたエアバッグ100を取付け部15aと対向する乗員側Cから平面視したとき、抑制部15bで覆われたエアバッグ100は、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2に覆われる。その結果、抑制部15bで覆われた領域15bx及び抑制部15bで覆われていない領域15byの両領域が含まれる第1方向Z1で膨張展開のタイミングをコントロールすることができると共に、抑制部15bの第1領域15b1及び第2領域15b2の両領域が含まれる第2方向Z2で膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。以上のように、本実施形態では、2方向においてエアバッグ100の膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。
【0048】
本実施形態では、より大きく膨張展開するエアバッグ100の第1膨張部140が、布製ハウジング15の第1側壁部15x側に位置し、より小さく膨張展開するエアバッグ100の第2膨張部150が布製ハウジング15の第2側壁部15y側に位置し、第1の縫製部位15x1の長さが、第2の縫製部位15y1の長さよりも短い。このような態様とすることにより、抑制部15bの第1側壁部15x側に、抑制力のより小さな第1領域15b1を設け、抑制部15bの第2側壁部15y側に、抑制力のより大きな第2領域15b2を設けることができる。その結果、より大きく膨張展開する第1膨張部140は抑制力のより小さな第1領域15b1内に位置し、より小さく膨張展開する第2膨張部150は抑制力のより大きな第2領域15b2内に位置することとなるため、より小さく膨張展開するために初期膨張展開時に布製ハウジング15から先に出易い第2膨張部150について、初期膨張展開時において布製ハウジング15から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が布製ハウジング15から出るタイミングと第2膨張部150が布製ハウジング15から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0049】
次に、布製ハウジング15の縫製手順について説明する。
図17~
図21は、それぞれ、実施形態1に係る布製ハウジングの縫製ステップ(1)~(6)を説明する平面図である。
【0050】
布製ハウジング15は、
図17に示す基布200を縫製することにより得られる。基布200は、車幅方向に対して垂直な方向に並んで配置された第1平面部210と第2平面部220と、を有する。第1平面部210と第2平面部220とは、車幅方向に沿った対称軸201に対して互いに略線対称な形状であり、対称軸201上の2箇所の連結部15dで互いに連結されている。
【0051】
縫製ステップ(1)では、
図17に示すように、基布200の第2平面部220の車幅方向における両端部を、車幅方向を短縮するように折り畳む。具体的には、縫製ステップ(1)において、
図23に示すように、第2平面部220の車幅方向における両端部を対称軸201の中心に向かってそれぞれ谷折りし、
図18に示した状態とする。このように第2平面部220の車幅方向の長さを短縮することにより、後述する第1平面部210の角部の縫製を行い易くする。
【0052】
続いて、縫製ステップ(2)において、第1平面部210の車幅方向における一方側211及び他方側212を、それぞれ、対称軸201に向かって斜めに(好ましくは、対称軸201に対する折り目の角度が45度となるように)折り畳む。具体的には、縫製ステップ(2)において、
図18に示したように、第1平面部210の一方側211に位置する、対称軸201から遠い側の角部211aを対称軸201の中心付近に合わせて、一方側211を山折りし、
図19に示すように、対称軸201近傍の端部に、一方側211の基布が部分的に重なり合った三角形状の角部211bを形成する。同様に、第1平面部210の他方側212に位置する、対称軸201から遠い側の角部212aを対称軸201の中心付近に合わせて、他方側212を山折りし、
図19に示すように、対称軸201近傍の端部に、他方側212の基布が部分的に重なり合った三角形状の角部212bを形成する。以上のようにして、
図19に示した状態(ただし、2箇所の三角形状の角部211b及び212bは縫製されていない状態)とする。
【0053】
続いて、縫製ステップ(3)において、
図19に示すように、三角形状の角部211bで重なる2枚の布を縫製して第1の縫製部位15x1を形成し、三角形状の角部212bで重なる2枚の布を縫製して第2の縫製部位15y1を形成し、
図19に示した状態とする。ここで、
図19に示すように、一方側211の対称軸201付近及び他方側212の対称軸201付近が抑制部15bを形成し、山折りにより折り込まれた一方側211の少なくとも一部が第1側壁部15xを形成し、山折りにより折り込まれた他方側212の少なくとも一部が第2側壁部15yを形成するため、縫製ステップ(3)において、第1の縫製部位15x1は、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が山折りされつつ縫い合わされた縫製部位となり、第2の縫製部位15y1は、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が山折りされつつ縫い合わされた縫製部位となる。なお、後述するように、本実施形態の布製ハウジング15の縫製では、最後に、内側の面が外側に向くよう基布200を折り返すため、完成された布製ハウジング15では、第1の縫製部位15x1は、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が布製ハウジング15の内側へ谷折りされつつ縫い合わされた縫製部位となり、第2の縫製部位15y1は、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が布製ハウジング15の内側へ谷折りされつつ縫い合わされた縫製部位となる。
【0054】
続いて、縫製ステップ(4)において、
図19に示すように、第1平面部210の折り畳まれた一方側211及び他方側212をそれぞれ展開し、かつ、第2平面部220の車幅方向の折り畳みを展開し、
図20に示した状態とする。
【0055】
続いて、縫製ステップ(5)において、
図20に示すように、第2平面部220の車幅方向の両端部が、それぞれ、第1平面部210の車幅方向の両端部に合わさるよう対称軸201で山折りして第1平面部210と第2平面部220とを重ね合わせ、
図21に示した状態(ただし、第1平面部210と第2平面部220とは互いに縫い合わされていない状態)とする。
【0056】
続いて、縫製ステップ(6)において、
図21に示すように、第1平面部210と第2平面部220とが重なった車幅方向の両端部を縫製し、第1平面部210と第2平面部220とを縫い合わせる。最後に、内側の面が外側に向くように基布200を折り返し、布製ハウジング15が形成される。そして、上述の
図10に示すように、布製ハウジング15内に折り畳まれたエアバッグ100が収納される。このように、布製ハウジング15の縫製後に布製ハウジング15を反転することにより、車両やリッド4への取付け時に、三角形状の角部211b及び212bが邪魔になるのを防ぐことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、保持部材としての布製ハウジング15は、折り畳まれたエアバッグ100の一部を乗員側Cから覆い、エアバッグ100の初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部15bを有し、抑制部15bは、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有する。このような態様とすることにより、抑制部15bで覆われた領域15bxに位置するエアバッグ100の初期膨張展開を、抑制部15bで覆われていない領域15byに位置するエアバッグの初期膨張展開よりも抑制することができる。すなわち、抑制部15bで覆われた領域15bx及び抑制部15bで覆われていない領域15byの両領域が含まれる第1方向Z1で膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。また、抑制部15bで覆われたエアバッグ100は、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域15b1と第2領域15b2とを有することから、エアバッグの第1領域15b1及び第2領域15b2の一方の領域の初期膨張展開を、他方の領域の初期膨張展開よりも抑制することができる。すなわち、抑制部15bで覆われた第1領域15b1及び第2領域15b2の両領域が含まれる第2方向Z2で膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。以上のように、本実施形態では、2方向においてエアバッグ100の膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。
【0058】
(実施形態2)
実施形態2に係るエアバッグ装置は、上記保持部材の構造が、上記実施形態1に係るエアバッグ装置とは異なる。すなわち、実施形態2において、エアバッグの初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部を有する保持部材は、折り畳まれたエアバッグ100を覆うハウジングではなく、折り畳まれたエアバッグ100を部分的に留めておく帯状の部材である。帯状の部材が設けられる場合、エアバッグを収納する通常のハウジングは設けられなくてもよいし、帯状の部材とともに設けられてもよい。
【0059】
図22~
図28を用いて、実施形態2におけるエアバッグ装置10について具体的に説明する。
図22は、実施形態2に係る帯状部材の展開図である。
図23~
図25は、それぞれ、実施形態2に係るエアバッグ装置の初期状態の、斜視図、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図、及び、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
図26~
図28Cは、それぞれ、実施形態2に係るエアバッグ装置の初期膨張展開時の、斜視図、第1領域側のC1-C2線に沿った断面図、及び、第2領域側のD1-D2線に沿った断面図である。
【0060】
図23~
図25に示すように、本実施形態の上記保持部材としての帯状部材20は、インフレータが取付けられる取付け部20aを有し、取付け部20aと対向する乗員側Cから折り畳まれたエアバッグ100を保持する。エアバッグ100は、帯状部材20の、取付け部20aと対向する位置から膨張展開する。
【0061】
本実施形態において、エアバッグ100には、膨張開始直後から初期膨張展開までの間、帯状部材20の制約を受けずに膨張する部分と、帯状部材20の制約を受けながら膨張する部分とが設けられる。
図23~
図25の場合、車両前方側Fに配置された第1折り部110が、帯状部材20の制約を受けずに膨張する部分に相当し、第1折り部110に隣接して車両後方側Rに配置された第2折り部120が、帯状部材20の制約を受けながら膨張する部分に相当する。帯状部材20は、折り畳まれたエアバッグ100が有する、取付け部20aと対向する乗員側Cからエアバッグ100の一部を覆い、エアバッグ100の初期膨張展開を部分的に抑制する抑制部20bを有する。この抑制部20bは、エアバッグ100の初期膨張展開を抑制する機能を奏する部分である。折り畳まれたエアバッグ100を乗員側Cから見たとき、抑制部20bで覆われた領域20bxと抑制部20bで覆われていない領域20byとは、車両前後方向に互いに対向して配置され、抑制部20bで覆われた領域20bxが車両後方側Rに、抑制部20bで覆われていない領域20byが車両前方側Fに配置される。
【0062】
本実施形態において、帯状部材20は、乗員側Cの面の中央付近に、車幅方向に沿って帯状に設けられており、膨張開始直後に、膨張展開するエアバッグ100の圧力によって帯状部材20の位置が乗員側Cの面内の車両後方側Rにずれて、帯状部材20の乗員側Cの面内の車両前方側Fでエアバッグがより膨張し易くなり、エアバッグ100の第1折り部110が帯状部材20外に展開することになる。
【0063】
一方、帯状部材20が有する抑制部20bは、エアバッグ100の第2折り部120の初期膨張展開を抑制する。帯状部材20は、抑制部20bの車幅方向の一方の端部の幅20x1と抑制部20bの車幅方向の他方の端部の幅20y1とが互いに異なる。このような態様とすることにより、抑制部20bの一方の端部と他方の端部とで、互いに異なる抑制力を実現することが可能となる。すなわち、エアバッグ装置10が備える折り畳まれた抑制部20bは、初期膨張展開の抑制力が互いに異なる第1領域20b1と第2領域20b2とを有することができる。その結果、抑制部20bに覆われた領域20bx及び抑制部20bに覆われていない領域20byの両領域が含まれる第1方向Z1で膨張展開のタイミングをコントロールすることができると共に、抑制部20bで覆われた第1領域20b1及び第2領域20b2の両領域が含まれる第2方向Z2で膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。以上のように、本実施形態では、2方向においてエアバッグ100の膨張展開のタイミングをコントロールすることができる。
【0064】
具体的には、エアバッグ100は、上述の通り、車幅方向において、インフレータ11の一方側で膨張展開する第1膨張部140と、インフレータ11の他方側で膨張展開する第2膨張部150と、を有し、第1膨張部140は、第2膨張部150よりも大きく膨張展開する。更に、
図23~
図25Cに示すように、エアバッグ100の第1膨張部140は、第1領域20b1内に位置し、第2膨張部150は、第2領域20b2内に位置し、第1領域20b1における抑制力は、第2領域20b2における抑制力よりも小さい。このような態様とすることにより、抑制力のより小さい第1領域20b1に、より大きく膨張展開する第1膨張部140を配置し、かつ、抑制力のより大きい第2領域20b2に、より小さく膨張展開する第2膨張部150を配置することができる。その結果、より小さく膨張展開するために初期膨張展開時に帯状部材20から先に出易い第2膨張部150について、
図26~
図28に示すように、初期膨張展開時において布製ハウジング15から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が帯状部材20から出るタイミングと第2膨張部150が帯状部材20から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0065】
より具体的には、折り畳まれたエアバッグ100が帯状部材20によって保持されているエアバッグ装置10が、車両の衝突により作動すると、エアバッグ100は、インフレータ11が発生したガスにより急激に膨張する。まず、初期状態のエアバッグ100内にガスが入り少し膨張すると、リッド側先端部111が車室側に押され、帯状部材20を変形させる。これにより、エアバッグ100は、
図26~
図28に示したように、車室内に飛び出し、更に膨張することが可能になる。エアバッグ100が膨張展開し始めるエアバッグ展開初期(初期膨張展開時)においては、ガスが入りやすい部分から順に膨張する。すなわち、折り畳みが解けやすいタック折りされた車両前方側部分(第1折り部110)が先に膨張して帯状部材20を変形させ、次いでロール状に折り畳まれた車両後方部分(第1膨張部140及び第2膨張部150が含まれる第2折り部120)についてもロール折りが解ける。ここで、エアバッグ100の第1領域20b1における抑制力は、エアバッグ100の第2領域20b2における抑制力よりも小さい。そのため、初期膨張展開時において、
図28に示した第2領域20b2側のエアバッグ100の第2膨張部150の膨張展開は、
図27示した第1領域20b1側のエアバッグ100の第1膨張部140の膨張展開よりも抑えられる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、
図26~
図28に示すように、初期膨張展開時において帯状部材20から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が帯状部材20から出るタイミングと第2膨張部150が帯状部材から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0066】
(変形例1)
上記実施形態1及び2のエアバッグ装置10が備えるエアバッグ100は、車幅方向の中央にインフレータ11が配置され、インフレータ11の一方側及び他方側にそれぞれ第1膨張部140及び第2膨張部150を備え、第1膨張部140及び第2膨張部150はそれぞれ第1突出部141及び第2突出部151を備えるが、エアバッグ100の形状はこれに限定されない。
図29は、変形例1に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。例えば、エアバッグ100は、
図29の本変形例のエアバッグ100に示すように、車幅方向の中央に対して他方側寄りにインフレータ11が配置され、すなわち、インフレータ11に対して第1膨張部140及び第2膨張部150が左右非対称に配置され、かつ、第1膨張部140及び第2膨張部150はそれぞれ突出部を備えていなくてもよい。このような態様とすることにより、第2膨張部150よりも大きく膨張展開する第1膨張部140を、第2領域よりも抑制力の小さい第1領域側へ配置し、第1膨張部140よりも小さく膨張展開する第2膨張部150を、第1領域よりも抑制力の大きい第2領域側へ配置することが可能となる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、初期膨張展開時において保持部材から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が保持部材から出るタイミングと第2膨張部150が保持部材から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。
【0067】
(変形例2)
図30は、変形例2に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
図30の本変形例のエアバッグ100は、車幅方向の中央に対して他方側寄りにインフレータ11が配置され、すなわち、インフレータ11に対して第1膨張部140及び第2膨張部150が左右非対称に配置され、かつ、第1膨張部140及び第2膨張部150がそれぞれ第1突出部141及び第2突出部151を備える。このような態様とすることにより、より大きく膨張展開する第1膨張部140をより抑制力の小さい第1領域側へ配置し、より小さく膨張展開する第2膨張部150をより抑制力の大きい第2領域側へ配置することが可能となる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、初期膨張展開時において保持部材から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が保持部材から出るタイミングと第2膨張部150が保持部材から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。また、エアバッグ100には第1突出部141及び第2突出部151が設けられていることから、乗員がエアバッグ100から車両中央側及び車両外方側に逸れることをより抑え、乗員をより適切に保護することができる。
【0068】
(変形例3)
図31は、変形例3に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
図31の本変形例のエアバッグ100は、車幅方向の中央に対して他方側寄りにインフレータ11が配置され、すなわち、インフレータ11に対して第1膨張部140及び第2膨張部150が左右非対称に配置され、第1膨張部140は第1突出部141を備え、かつ、第2膨張部150は突出部を備えていない。このような態様とすることにより、より大きく膨張展開する第1膨張部140をより抑制力の小さい第1領域側へ配置し、より小さく膨張展開する第2膨張部150をより抑制力の大きい第2領域側へ配置することが可能となる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、初期膨張展開時において保持部材から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が保持部材から出るタイミングと第2膨張部150が保持部材から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。また、エアバッグ100には第1突出部141が設けられていることから、乗員がエアバッグ100から車両中央側に逸れることをより抑え、乗員をより適切に保護することができる。
【0069】
(変形例4)
図32は、変形例4に係るエアバッグが膨張展開した状態を車両上方から見たときの図である。
図32の本変形例のエアバッグ100は、車幅方向の中央にインフレータ11が配置され、すなわち、インフレータ11に対して第1膨張部140及び第2膨張部150が左右対称に配置され、第1膨張部140は第1突出部141を備え、かつ、第2膨張部150は突出部を備えていない。このような態様とすることにより、より大きく膨張展開する第1膨張部140をより抑制力の小さい第1領域側へ配置し、より小さく膨張展開する第2膨張部150をより抑制力の大きい第2領域側へ配置することが可能となる。その結果、より小さく膨張展開する第2膨張部150について、初期膨張展開時において保持部材から出るタイミングを遅らせ、第1膨張部140が保持部材から出るタイミングと第2膨張部150が保持部材から出るタイミングとの差を縮めることが可能となり、エアバッグ100の初期膨張展開時における車幅方向(左右方向)の揺動を抑えることが可能となる。また、エアバッグ100には第1突出部141が設けられていることから、乗員がエアバッグ100から車両中央側に逸れることをより抑え、乗員をより適切に保護することができる。
【0070】
(変形例5)
上記実施形態1及び2のエアバッグ装置10が備えるエアバッグ100は、第1折り部110がタック折りされるが、第1折り部110の折り方はこれに限定されない。
図33は、変形例5に係るエアバッグ装置の初期状態の斜視図である。例えば、第1折り部110は、
図33に示すように蛇腹折りされてもよい。このような態様とすることにより、ロール折りよりも折り畳みが解けやすい蛇腹折りで折られた第1折り部110は、第2折り部120よりも先に膨張展開を開始させて保持部材(布製ハウジング15、帯状部材20)の外へ展開することができる。
【0071】
(変形例6)
上記実施形態1及び2のエアバッグ装置10が備えるエアバッグ100は、第1の側域101及び第2の側域102がそれぞれ蛇腹折りされて車両幅方向が短縮されるが、第1の側域101及び第2の側域102の折り方はこれに限定されない。例えば、第1の側域101及び第2の側域102は、タック折りされてもよい。第1の側域101及び第2の側域102をタック折りする場合も、蛇腹折りする場合と同様の効果を得ることができる。
【0072】
(変形例7)
上記実施形態1では、布製ハウジング15を縫製する際、基布200を縫い合わせた後に反転しているため、抑制部15bと第1側壁部15xとの境界に設けられた第1の縫製部位15x1は、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が布製ハウジング15の内側へ谷折りされつつ縫い合わされた縫製部位となるが、縫製部位15x1の態様はこれに限定されない。布製ハウジング15を縫製する際、基布200を縫い合わせた後に反転しなくてもよく、この場合、第1の縫製部位15x1は、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が単に縫い合わされた縫製部位となる。また、布製ハウジング15を縫製する際、三角形状の角部211bを外側に出してもよく、この場合も、第1の縫製部位15x1は、抑制部15b及び第1側壁部15xを構成する共通の基布が単に縫い合わされた縫製部位となる。ここで、三角形状の角部211bを外側に出すには、縫製ステップ(5)において、第2平面部220の車幅方向の両端部が、それぞれ、第1平面部210の車幅方向の両端部に合わさるよう対称軸201で谷折りして第1平面部210と第2平面部220とを重ね合わせて縫製すればよい。
【0073】
また、上記実施形態1では、布製ハウジング15を縫製する際、基布200を縫い合わせた後に反転しているため、抑制部15bと第2側壁部15yとの境界に設けられた第2の縫製部位15y1は、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が布製ハウジング15の内側へ谷折りされつつ縫い合わされた縫製部位となるが、第1の縫製部位15x1と同様に、縫製部位15y1の態様はこれに限定されない。布製ハウジング15を縫製する際、基布200を縫い合わせた後に反転しなくてもよく、この場合、第2の縫製部位15y1は、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が単に縫い合わされた縫製部位となる。また、布製ハウジング15を縫製する際、三角形状の角部212bを外側に出してもよく、この場合も、第2の縫製部位15y1は、抑制部15b及び第2側壁部15yを構成する共通の基布が単に縫い合わされた縫製部位となる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に記載された内容に限定されるものではない。各実施形態に記載された構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜削除されてもよいし、追加されてもよいし、変更されてもよいし、組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1:車両
2:障害物
3:インストルメントパネル
4:リッド
5:周壁
6:乗員
10:エアバッグ装置
11:インフレータ
11a:フランジ部
15:布製ハウジング
15a、20a、33:取付け部
15b、20b:抑制部
15b1、20b1:第1領域
15b2、20b2:第2領域
15bx、20bx:抑制部で覆われた領域
15by、20by:抑制部で覆われていない領域
15c:スリット
15d:連結部
15x:第1側壁部
15x1:第1の縫製部位
15y:第2側壁部
15y1:第2の縫製部位
16:挟込プレート
17:ボルト
20:帯状部材
20x1、20y1:幅
31:金属ハウジング
32:フック
100:エアバッグ
101:第1の側域
102:第2の側域
110:第1折り部
111:リッド側先端部
120:第2折り部
140:第1膨張部
141:第1突出部
150:第2膨張部
151:第2突出部
160:乗員受け部
200:基布
201:対称軸
210:第1平面部
211:一方側
211a、212a:角部
211b、212b:三角形状の角部
212:他方側
220:第2平面部
C:乗員側
F:車両前方側
L1、L2:長さ
R:車両後方側
Z1:第1方向
Z2:第2方向