(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20231115BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
A61F13/494 113
A61F13/475 111
A61F13/494 111
(21)【出願番号】P 2019237156
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-071521(JP,U)
【文献】特開2000-271169(JP,A)
【文献】特開平11-347063(JP,A)
【文献】特開2011-206108(JP,A)
【文献】特開2018-130222(JP,A)
【文献】特開2005-287792(JP,A)
【文献】特開2008-178667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の幅方向両側において長手方向に沿って設けられ、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第一の立体ギャザーと、
前記一対の第一の立体ギャザーの幅方向外側又は内側に長手方向に沿って設けられ、高吸収性シートを含む一対の第二の立体ギャザーと、を更に備え、
前記高吸収性シートは、複合型不織布と、前記複合型不織布に担持された高吸収性ポリマーと、その幅方向の一方の端部に配設された弾性伸縮部材と、を含み、
前記複合型不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含み
、
前記第二の立体ギャザーは、前記吸収性物品の前記トップシート側表面において、長手方向に延びる一対の起立性自由端を有し、前記起立性自由端の先端及
びその近傍において、前記高吸収性シートを前記パルプ繊維ウェブの面を内側にして折り返した折返し部を更に備え
、前記折返し部で折り返され対向する高吸収性シート同士が、接着剤により接合されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記高吸収性シートは、前記複合型不織布における前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウェブとの間及び/又は前記パルプ繊維ウェブの表面に、高吸収性ポリマーを担持する、請求項1記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収性物品では、尿、便等の体液の横漏れを防止するために、立体ギャザーを利用した技術が提案されている。特に、外部への漏れ防止に関しては、以下の様々な技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ウエスト用バリヤーカフスを有する吸収性物品において、バリヤーシートを二重にしてバリヤーカフスを形成するとともに、バリヤーシート間の長手方向における遠位縁近傍と近位縁近傍とに、弾性伸縮部材をそれぞれ設ける構造が開示されている。この構造により、吸収性物品の肌側面に補助パッドを重ねた場合でも、ウエスト部での漏れが防止されると記載されている。
【0004】
特許文献2には、吸収体とギャザーシートと不透液性フィルム材と表面シートとによって囲まれ、軟便等の体液を一旦貯留可能な断面視略三角形状の空間部を備え、排泄された体液を該空間部に一旦貯留して吸収体に吸収させるように構成した吸収性物品が開示されている。この構成により、体液、特に軟便漏れが低減すると記載されている。
【0005】
特許文献3には、二対の吸収性物品において、吸収体の長手方向両側縁に沿って、不透液性のシートからなる第一の立体ギャザーと、その外側に第二の立体ギャザーとを備え、両立体ギャザーの幅方向における起立点間に間隔を設け、起立点間の部位においる透液性の表面シートを露出させる構造が開示されている。この構造により、内側の第一の立体ギャザーを超えて第二の立体ギャザーで堰き止められた体液を、露出した部位の表面シートから内部の吸収体に吸収させることができ、漏れが防止されるとともに、吸収体への捕集性が向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-293032号公報
【文献】特開2007-143874号公報
【文献】特開2011-206108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の吸収性物品では、大量の尿や軟便が一度に排出された場合には、確実に漏れを防止することは難しいという課題が依然として存在する。
【0008】
本発明の目的は、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、吸収体の長手方向両側縁に沿って形成した第一の立体ギャザーの幅方向外側又は内側に、長手方向に延び、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう)を担持した所定の複合型不織布である、高吸収性シートを含む第二の立体ギャザーを設け、かつ第二の立体ギャザーの自由端付近の高吸収性シートを折り返した折返し部を設けることにより、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、好ましい実施形態として、下記(1)~(2)の吸収性物品を提供する。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収性物品の幅方向両側において長手方向に沿って設けられ、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第一の立体ギャザーと、前記一対の第一の立体ギャザーの幅方向外側又は内側に長手方向に沿って設けられ、高吸収性シートを含む一対の第二の立体ギャザーと、を更に備え、前記高吸収性シートは、複合型不織布と、前記複合型不織布に担持された高吸収性ポリマーと、その幅方向の一方の端部に配設された弾性伸縮部材と、を含み、前記複合型不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含み、前記第二の立体ギャザーは、前記吸収性物品の前記トップシート側表面において、長手方向に延びる一対の起立性自由端を有し、前記起立性自由端の先端及その近傍において、前記高吸収性シートを前記パルプ繊維ウェブの面を内側にして折り返した折返し部を更に備える、ことを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記高吸収性シートは、前記複合型不織布における前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウェブとの間及び/又は前記パルプ繊維ウェブの表面に、高吸収性ポリマーを担持する、上記(1)の吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示す吸収性物品のX
1-X
1切断線における模式断面図である。
【
図3】
図1に示す吸収性物品に備わる高吸収性シートの折返し部における構成を模式的に示す断面図である。(a)は体液吸収前の状態を示し、(b)は体液吸収後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本実施形態の吸収性物品1について詳細に説明する。
図1は、トップシート10側から見た模式平面図として、第一実施形態に係る収性物品1を示す。
図2は収性物品1のX
1-X
1切断線による模式断面図である。
図3は、高吸収性シート30の折返し部22における模式断面図であり、(a)は体液吸収前、(b)は体液吸収後を示す。各図では、各構成部材が密接しているように記載しているが、各構成部材間の少なくとも1つに1又は複数の隙間が生じる場合もある。また、各図は、吸収性物品1、2の各構成部材の長手方向及び幅方向の寸法の大小関係を規定するものではない。
【0014】
本明細書において、吸収性物品1の着用時とは、体液吸収の前後を問わず吸収性物品1を身体に装着している状態をいう。吸収性物品1は、通常衣類の内部において身体に装着されるものであるが、その少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1を着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後にわたる方向であり、図中符号Yで示す。吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対してほぼ直交する方向(幅方向)であり、図中符号Xで示す。吸収性物品1の厚み方向とは、トップシート10、吸収体11、及びバックシート12といった各構成部材の積層方向であり、図中符号Zで示す。また、吸収性物品1及び各構成部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌に接する面又は着用者の肌を臨む面を肌側面とし、着用時に着用者の衣服に接する面又は着用者の衣服を臨む面を非肌側面とする。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
吸収性物品1としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。また、アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1とを組み合わせて用いることもできる。本実施形態の吸収性物品1は特に使い捨ての紙おむつ等として好適に使用できる。吸収性物品1の、長手方向及び幅方向の寸法は特に限定されないが、それぞれ例えば100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1の寸法を前記の範囲に調整することにより、種々の用途に使用できる。
【0016】
[吸収性物品]
図1に示す本実施形態の吸収性物品1は、着用時に肌側に位置する液透過性のトップシート10と、着用時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート10とバックシート12との間に設けられた吸収体11と、第一の立体ギャザー13と、第二の立体ギャザー14と、を備える。ここで、第二の立体ギャザー14は、
図3に示すように、複合型不織布15と、複合型不織布15に担持された高吸収性ポリマー32と、先端部14aの周辺に長手方向に延びるように配設された弾性伸縮部材31と、を含む高吸収性シート30を含んでいる。また、複合型不織布15は、スパンボンド不織布20と、スパンボンド不織布20の少なくとも一方の表面に一体化された、パルプ繊維を含むパルプ繊維ウェブ21と、を含んでいる。
【0017】
本実施形態では、第二の立体ギャザー14の自由端14a及びその周辺に、高吸収性シート30のパルプ繊維ウェブ21の面を内側にして後端側に折り返した折返し部22を有している。スパンボンド不織布20上にパルプ繊維ウェブ21を積層し一体化した複合型不織布15においては、パルプ繊維ウェブ21の面には比較的微小な凹部(不図示)が形成され、該凹部には高吸収性ポリマー32を担持させ易くなっている。したがって、折返し部22の内部に高吸収性ポリマー32が脱落することなく保持され、高吸収性ポリマー32のズレ、移動が抑えられる。尚、
図3は弾性伸縮部材31の存在を強調するため図示していないが、折返し部22周辺のパルプ繊維ウェブ21の面にも高吸収性ポリマー32は担持されている。本発明者の研究によれば、このような折返し部22は特に軟便等の吸収力が高いことが、明らかになった。第二の立体ギャザー14の肌側面に固定された領域は、高吸収性ポリマー32を担持するパルプ繊維ウェブ21が1層であるのに対し、第二の立体ギャザー14の自由端14aおよびその周辺に設けられた折返し部22周辺は、パルプ繊維ウェブ21が2層であり、更に最も先端の部分は、水平方向の高吸収性ポリマー32の存在数が水平方向に最も多くなるため、体液吸収後の高吸収性シート30は、断面視で略T字型に膨潤して、横漏れ防止効果を発現する。言い換えると、膨潤後の第二の立体ギャザー14は、肌面側から自立端14aへの起立方向(Z方向)に向かうにしたがって、断面視で厚みが増し、内側に反った形となる。このため、体液は第二の立体ギャザー14によって、幅方向内側に押し返されることになる。したがって、第一の立体ギャザー13の幅方向外側又は内側に、高吸収性シート30を含みかつ前記折返し部22を有する第二の立体ギャザー14を配設することにより、第一の立体ギャザー13単独では防止し切れなかった尿や軟便等の体液の幅方向への漏れ(横漏れ)を確実に防止することができ、体液を表面シートから厚さ方向に速やかに吸収及び保持することが可能になる。その結果、吸収性物品1全体として、大量の尿や軟便等の体液が排出された場合でも、漏れ、特に横漏れを確実に防止できる。それに加えて、折返し部22内に空間が生じるように構成することにより、折返し部22内において、体液吸収後の膨潤した高吸収性ポリマー32がゲルブロッキングの壁を形成するため、吸収性物品1における幅方向への横漏れをより確実に防止することができる。
【0018】
以下、トップシート10、吸収体11、第一の立体ギャザー13、及び第二の立体ギャザー14の順で、シート状又は板状の各構成部材について詳細に説明する。なお、各構成部材は、シート状及び板状以外の立体形状を有していてもよい。
【0019】
(トップシート)
トップシート10は、体液がトップシート10を透過して吸収体11に移動するような液透過性を備えた基材から構成される。トップシート用の液透過性基材としては、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンド等の同種又は異種の不織布を積層した複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液の吸収体11への移行性、吸収性物品1内での体液の拡散性等の観点から、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンド複合不織布等の親水性不織布が好ましい。
【0020】
トップシート10には、例えば液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。エンボス加工や穿孔加工は、公知の方法で制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0021】
本実施形態のトップシート10の坪量は特に限定されないが、強度、加工性及び液戻り量の観点から、好ましくは15g/m2以上200g/m2以下、より好ましくは18g/m2以上40g/m2以下である。トップシート10の形状は特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体11へと誘導するために必要とされる、吸収体11を覆う形状であればよい。
【0022】
(吸収体)
トップシート10及びバックシート12の間に配置される吸収体11は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものが挙げられる。吸収体11の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、その坪量は、好ましくは50g/m2以上800g/m2以下である。
【0023】
吸収体11に使用される高吸収性ポリマー(SAP)としては、体液を吸収及び保持し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。吸収体11のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、10g/m2以上500g/m2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体11における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。繊維形態に成形したSAPを使用することもできる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体11の形状の安定化の目的から、吸収体11をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
吸収体11は、2層以上の吸収体からなるものでもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層したものでもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じでもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0026】
(バックシート)
バックシート12は、吸収体11が保持している体液が衣類を濡らしたり、皮膚表面に付着したりしないような通気性又は非通気性の液不透過性基材からなる。バックシート用基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂からなるフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布との積層体である複合不織布、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布とスパンボンド不織布との積層体である複合不織布などが挙げられる。これらの中でも、体液の横漏れ防止の観点から、通気性、非通気性の不透液性のプラスチックフィルムが好ましい。
【0027】
バックシート12の坪量は特に限定されないが、強度及び加工性の観点から、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート12には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を付与する方法としては特に限定されず公知の方法を採用できるが、例えば、バックシート用基材である樹脂フィルムを多孔質化する方法、バックシート用基材にエンボス加工を施す方法などが挙げられる。樹脂フィルムを多孔質化する方法の一例としては、樹脂にフィラーを含有させてフィルム化し、得られたフィルムからフィラーを除去する方法等が挙げられる。フィラーとしては例えば炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。
【0028】
(第一の立体ギャザー)
第一の立体ギャザー13は、例えば、吸収性物品1の使用者が排泄した体液の横漏れを防止するために設けられる。本実施形態の第一の立体ギャザー13は、吸収性物品1の長手方向に沿って幅方向両端部周辺にそれぞれ設けられ、幅方向一端がバックシート12の肌側面の幅方向両側端部周辺に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両側端部近傍に固定され、幅方向他端が折り曲げ自在の起立性自由端13aである。第一の立体ギャザー13の固定位置は本実施形態に限定されず、例えば、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10の幅方向両端部、バックシート12の非肌側面の幅方向両端部等から、それぞれの幅方向外方に延伸し、折り曲げ自在の一対の部材として構成してもよい。
【0029】
第一の立体ギャザー13としては、例えば、立体ギャザーシート(不図示)と、立体ギャザーシートの幅方向端部周辺に長手方向に沿って配置された弾性伸縮部材(不図示)と、を含む形態が挙げられる。弾性伸縮部材を前記のように配置することにより、第一の立体ギャザー13の自由端13aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能に構成することができる。立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。第一の立体ギャザー13の坪量は、例えば、10g/m2~100g/m2である。
【0030】
(第二の立体ギャザー)
第二の立体ギャザー14は、高吸収性シート30を含み、吸収性物品1の長手方向に沿って配置され、幅方向の一端部が第一の立体ギャザー13の幅方向外側においてバックシート12の肌側面に固定され、幅方向の他端が起立性自由端14aとなり、自由端14a及びその周辺には、高吸収性シート30のパルプ繊維ウェブ21の面を内側にして固定端側(後端)に折り返した折返し部22を有する。本実施形態では、折返し部22は内部空間である閉空間40を有しているが、これに限定されず、対向するパルプ繊維ウェブ21の面が部分的に又は全体的に密接していてもよい。第二の立体ギャザー14の固定位置(又は取付け位置)は本実施形態に限定されず、例えば、幅方向の一端部の固定位置としては、バックシート12の非肌側面、トップシート10とバックシート12との袋体の幅方向端部周辺、トップシート10の肌側面の幅方向端部周辺等が挙げられる。また、本実施形態では、第二の立体ギャザー14は第一の立体ギャザー13の幅方向外側に設けられているが、これに限定されず、第一の立体ギャザー13の幅方向内側に設けてもよく、それによって、本実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0031】
高吸収性シート30は、
図3に示すように、複合型不織布15と、自由端14a近傍に配設された弾性伸縮部材31と、複合型不織布15の表面及び/又は内部に担持された高吸収性ポリマー32と、を含む。複合型不織布15は、尿や軟便等の体液を素早く吸収できると共に、複合型不織布15に担持された高吸収性ポリマー32は親水性を有するパルプ繊維の近傍に接触隣在し、パルプ繊維に一時保水した水分を効率よく吸収することで高い体液吸収能力を有し、複合型不織布15によって集められた体液をこれに接触した高吸収性ポリマー32が効率よく吸収及び保持する。また、
図3(b)に示すように、折返し部22においては、体液吸収後の膨潤した高吸収性ポリマー32がゲルブロッキングの壁を形成することができるため、吸収するほど第二の立体ギャザーは防漏性が高まる。また、膨潤した高吸収性ポリマー32はパルプ繊維ウェブ21の表面の凹凸の凹部に維持され易い為、体液吸収後でも、第二の立体ギャザー14の起立性自由端14a側から固定端側に向かうズレや移動が軽減され、高吸収性ポリマー32の安定した壁を形成することができる。したがって、第二の立体ギャザー14周辺に体液が到達しても、第二の立体ギャザー14よりも幅方向外側への体液の漏出(体液の横漏れ)がほぼ確実に防止できる。尚、折り返し部で折り返され、対向するシート同士で接着剤を用いて接合してもよいが、吸収性を阻害しない程度の量であることが好ましい。また、第一、第二の立体ギャザー13、14同士をウルトラソニックやヒートシール等の既存の技術により厚さ方向又は水平方向に延びる格子状模様で接合させ、格子状内には接合部を設けない小区画を設けてもよい。このようにすることで、着用時の強い衝撃で、起立性自由端14a側から固定端側に落下する高吸収性ポリマーをその位置に保持することができる。
【0032】
本実施形態では、第一の立体ギャザー13から横漏れした体液は、第一の立体ギャザー13の外側にある第二の立体ギャザー14に吸収及び保持される。一方、第二の立体ギャザー14の自由端14a周辺は、横漏れした体液と共に、トップシート10からの戻り体液が漏出し易い。戻り体液は横漏れの一因にもなる。これに対し、第二の立体ギャザー14の自由端14aの一部を、高吸収性ポリマー32を担持したパルプ繊維ウェブ21の面を内側にして折返した折返し部22を有している。したがって、体液吸収の前後を問わず、高吸収性ポリマー32の移動やずれを防止しつつ、高吸収性ポリマー32の量を多い目に設定できる。これにより、自由端13a周辺から漏れ出してその吸収が難しい体液でも、比較的簡単に吸収及び保持することができる。このように、二重の横漏れ防止機構を設けることにより、横漏れをほぼ確実に防止できる。
【0033】
本実施形態の複合型不織布15は、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21との一体化物である。ここで、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21とが一体化されているとは、具体的には通常の使用においては、主にパルプ繊維ウェブ21に含まれるパルプ繊維が複合型不織布15から容易に脱落しないことを意味する。特にウォータージェットによりパルプ繊維がスパンボンド不織布20に水流交絡されている場合は、パルプ繊維の複合型不織布15からの脱落は非常に起こりにくい。該一体化物の好ましい実施形態としては、例えば、スパンボンド不織布20の一面において、スパンボンド不織布20を構成する繊維の一部と、パルプ繊維ウェブ21を構成するパルプ繊維の一部とが互いに絡み合ってスパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21とが強固に固着し、かつスパンボンド不織布20の他面において、パルプ繊維の一部がスパンボンド不織布20を厚み方向に貫いて露出した形態が挙げられる。このような一体化物は、例えば、水流交絡法により得ることができる。
【0034】
複合型不織布15に含まれるスパンボンド不織布20としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、当該不織布を構成する繊維の材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布20は、これらの材質からなる合成樹脂繊維を用いて作製されたものであり、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。スパンボンド不織布20の坪量は特に限定されないが、引っ張り強度と触感の柔らかさの観点から、7g/m2以上20g/m2以下である。
【0035】
パルプ繊維ウェブ21としては、パルプ繊維を主体とする不織布を特に限定なく使用でき、さらに、スパンボンド不織布20の表面に水流交絡法によりパルプ繊維を吹き付けることにより形成されるパルプ繊維ウェブ21でもよい。ここで使用されるパルプ繊維としては特に限定されないが、好ましくはラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)である。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維ウェブの坪量は特に限定されないが、例えば、均一性、触感、吸収性等の観点から、好ましくは30g/m2以上70g/m2以下である。
【0036】
複合型不織布15における、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21との重量構成比は、例えば、体液の吸収性や拡散性等の観点から、(スパンボンド不織布20の重量/パルプ繊維ウェブ21の重量)として、40/60重量%以上10/90重量%以下である。この範囲とすることにより、スパンボンド不織布20によるパルプ繊維ウェブ21の支持性と、パルプ繊維ウェブ21の吸収性とがバランスよく高水準で両立し、体液の横漏れ防止に有効である。
【0037】
また、複合型不織布15について、テンシロンでの引張強度試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力(引張強度)は特に限定されないが、好ましくは1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下である。
【0038】
本実施形態の複合型不織布15は、例えば、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21と、を積層して一体化する工程と、得られた積層体を必要に応じてロールなどを用いて加圧及び/又は加熱する工程と、を含む製造方法により作製することができる。また、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21とを接着剤を用いるか又は縫製により一体化してもよい。また、スパンボンド不織布20に対し、ウォータージェット(水流)とともにパルプ繊維ウェブを構成するパルプ繊維を噴射する水流交絡工程、を含む製造方法によっても、複合型不織布15が得られる。複合型不織布15にはエンボス加工を施してもよい。
【0039】
前述した製造方法のなかでも、外観、触感の柔らかさと強度の両立の観点から、水流交絡法を利用する方法が好ましい。水流交絡工程では、外観、触感の柔らかさと効率のバランスの観点から、ウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であることが好ましく、且つウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0040】
複合型不織布15に担持される高吸収性ポリマー32は、吸収体11に用いられる高吸収性ポリマーと同じものをいずれも使用できる。高吸収性ポリマー32は、例えば、スパンボンド不織布20とパルプ繊維ウェブ21との層間、パルプ繊維ウェブ21の層中、パルプ繊維ウェブ21表面等から選ばれる1又は2か所以上に、公知の方法に従って担持される。中でも、パルプ繊維ウェブ21表面に粒子状の高吸収性ポリマー32を担持させることにより、第一の立体ギャザー13とのズレが少なくなり、横漏れしてきた体液に対して、第一、第二の立体ギャザー13、14が協働して対処可能になり、横漏れを確実に防止できる。高吸収性ポリマー32の形状は本実施形態では粒子状であるが、これに限定されず、繊維状等でもよい。
【0041】
弾性伸縮部材31は、自由端14aの周辺又は近傍において、長手方向に沿って配設される。弾性伸縮部材31としてはこの技術分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。弾性伸縮部材31の配設により、自由端14aに起立性が付与される。
【0042】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート12、吸収体11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート12とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定した上で、第一の立体ギャザー13を所定の位置に固定し、さらにその幅方向外側及び/又は幅方向内側に第二の立体ギャザー14を固定することで、吸収性物品1を製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0043】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 吸収性物品
10 トップトート
11 吸収体
12 バックシート
13 第一の立体ギャザー
13a 自由端
14 第二の立体ギャザー
14a 自由端
15 複合型不織布
16 折返し部内面
20 スパンボンド不織布
21 パルプ繊維ウェブ
22 折返し部
30 高吸収性シート
31 弾性伸縮部材
32 高吸収性ポリマー
40 折返し部の内部空間