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特許7385471PHI6内部対照組成物、装置、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】PHI6内部対照組成物、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6848 20180101AFI20231115BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20231115BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231115BHJP
【FI】
C12Q1/6848 Z ZNA
C12M1/00 A
C12N7/00
C12N15/09 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019519265
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017075725
(87)【国際公開番号】W WO2018069267
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】62/406,166
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー シェーンブルナー
(72)【発明者】
【氏名】クワム セファ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ファンニエン
(72)【発明者】
【氏名】カレン ワン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】藤井 美穂
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-514905(JP,A)
【文献】特開2012-055311(JP,A)
【文献】Lab on a chip, 2016,Vol.16, pp.199-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CAPlus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレート剤および保存剤を含み、pH7~9で核酸増幅反応に適した緩衝液に懸濁された未改変Phi6バクテリオファージを含む内部対照として使用するための組成物であって、前記未改変Phi6バクテリオファージが、1000~1,000,000コピー/mlの濃度で存在する、前記組成物。
【請求項2】
前記緩衝液が、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリシン緩衝液、PIPES、またはHEPESから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
BSA、ゼラチン、ポリrA‐RNA、グリセロール、アミノ酸、トレハロース、カゼイン、またはポリエチレングリコールを含む群から選択される1種以上の追加の成分をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記未改変Phi6バクテリオファージが最大4×10cp/mlの濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記キレート剤がEDTAおよびEGTAから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記保存剤が、アジ化ナトリウムおよびプロクリン300から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(a)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、25mg/mlのBSA、およびそれらに含まれる最大4×10cp/mlの未改変Phi6バクテリオファージ、または、
(b)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、1%のゼラチン、およびそれらに含まれる最大4×10cp/mlの未改変Phi6バクテリオファージ、または、
(c)10mMのトリス、pH 8.0、0.1 mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、および20mg/lのポリrA‐RNA、およびそれらに含まれる最大4×10cp/mlの未改変Phi6バクテリオファージ、または、
(d)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、20mg/lのポリrA‐RNA、40%のグリセロール、およびそれらに含まれる最大4×10cp/mlの未改変Phi6バクテリオファージ
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
0日目と、45℃で最大28日間経過後とのΔCtが5~7以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
0日目と、1回以上の凍結融解サイクル後とのΔCtが5~7以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
‐ 少なくとも1つの増幅可能な標的核酸配列を含む核酸試料を提供し、
‐ 前記核酸試料を請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物と接触させ、かつ
‐ 増幅反応を開始できる酵素を用いて前記標的核酸配列を増幅すること
を含み、ここで未改変Phi6バクテリオファージ由来の未改変Phi6RNAが、定性及び/又は定量的核酸検出において、RNA標準として逆転写され、及び/又は増幅される、核酸増幅法。
【請求項11】
前記核酸試料がRNAであり、また、
‐ 逆転写を開始できる酵素を用いて前記標的核酸配列を逆転写すること、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記標的核酸配列を逆転写および増幅することが、逆転写および/または増幅反応を開始できる複数種の酵素の組み合わせを用いて、または逆転写および増幅反応を開始できる酵素を用いて実施される、請求項11の方法。
【請求項13】
(a)試料分注品を受け入れるように作られた試料導入口、
(b)請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む内部対照区画、および、
(c)試薬調製、標的の濃縮、阻害物質の除去、核酸抽出、逆転写、増幅、およびリアルタイム検出を含む核酸分析の1つ以上の工程をそれぞれ実行するように構成された、1つ以上の追加区画を備えた核酸分析領域、
を備える、試料中の核酸分析を実施するように構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
核酸増幅法に使用するために、Phi6バクテリオファージを含む組成物が開示される。核酸増幅法を実施するように構成された試料処理装置およびキット(用具一式)も開示され、この装置および/またはキットはPhi6内部対照組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、リガーゼ連鎖反応法、ポリメラーゼ・リガーゼ連鎖反応法、間隙‐LCR(Gap-LCR)法、修復連鎖反応法、3SR法、NASBA法、鎖置換増幅(SDA)法、転写媒介増幅(TMA)法およびQβ‐増幅法など、核酸を増幅するための様々な方法が開発されている。これらの方法はそれぞれ一連の複雑で繊細な工程を含み、また正確で定性分析および/または定量分析には、各工程における変動を注意深く制御することが必要である。管理標準を正確に較正し、それらが分析手順の厳密さに耐えられることも重要である。
【0003】
個人の病気感染を確認する等、生物試料中の核酸の定性的検出は極めて重要であり、そのためには偽陰性および偽陽性の結果を最小限に抑える必要がある。従って、検出用混合物には定性的な内部対照用の核酸が添加されることがある。さらに、生物試料中のウイルスの核酸配列を定量することは、患者のウイルス量、すなわちある時点における所与の患者が保持するウイルス粒子の総量を評価するための重要な手段である。慢性感染症では、ウイルス量はウイルス複製と免疫介入による宿主クリアランスの極めて動的な平衡の関数である。ウイルス量は、診断時のウイルス複製の程度を評価するために使用でき、それは患者の疾患進行および予後の評価を提供する。また、病気の早い段階で抗ウイルス治療の効果を監視し、抗ウイルス治療の変更による影響の迅速な評価にも使用できる。
【0004】
臨床診断に適した核酸の多くはリボ核酸であり、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルス(WNV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどのRNAウイルスに由来する核酸である。したがって、試料中の標的核酸の特性を反映させるためにRNAからなる内部対照核酸を使用することが有利となる。RNAは、アルカリやリボ核酸分解酵素などの影響に対する特有の感受性のためにDNAよりも分解しやすいので、一般にRNAからなる内部対照核酸は外装粒子として提供される。外装RNA(Armored RNA(登録商標)、aRNA)技術は、バクテリオファージタンパク質の保護用外装で核酸を包むことで、前記核酸を安定化し核酸分解酵素による分解から保護する。(外装RNAは、米国テキサス州オースティンのAmbion,Inc、およびCenetron Diagnostics LLCによって開発され、米国特許第5,677,124号、第5,919,625号および第5,939,262号に含まれる)。前記aRNA構築物は分析中に完全に処理され、常温で安定であり、また比較的RNase耐性を持つ。しかし、高温ではaRNA構築物は急速に分解し分析できなくなる。前記構築物を含む製品の有効期限を延ばすため、製品の出荷後は4℃で貯蔵するため高コストである。それゆえ、定性的および/または定量的核酸検出法で使用するための耐熱性、核酸分解酵素耐性RNA標準が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で提供されるのは、定性的および/または定量的核酸検出法で使用するための耐熱性、核酸分解酵素耐性RNA標準組成物である。本明細書に記載の組成物は、30℃で110日まで、特に45℃で28日まで熱的に安定である。したがって本開示は、キレート剤および保存剤を含み、場合によりBSA、ゼラチン、ポリrA‐RNA、グリセロール、アミノ酸、トレハロース、カゼイン、またはポリエチレングリコールから選択される1種以上の追加の成分を含む、pH7~9の核酸増幅反応に適した緩衝液に懸濁した、Phi6バクテリオファージを含む組成物を提供する。
【0006】
一側面では、キレート剤および保存剤を含む、pH7~9で核酸増幅反応に適した緩衝液に懸濁した、Phi6を含む組成物を提供する。実施形態によっては、前記緩衝液は、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリシン緩衝液、PIPES、またはHEPESから選択される。特定の実施形態によっては、前記緩衝液はトリシン緩衝液である。実施形態によっては、前記組成物は、さらにBSA、ゼラチン、ポリrA‐RNA、グリセロール、アミノ酸、トレハロース、カゼイン、またはポリエチレングリコールを含む群から選択される1種以上の追加の成分を含む。実施形態によっては、前記1種以上の追加の成分は、0~25mg/mlのBSA、0~1.0%のゼラチン、0~20mg/lのポリrA‐RNA、または0~40%のグリセロールから選択される。特定の実施形態によっては、前記1種以上の追加の成分は最大40%のグリセロールを含む。実施形態によっては、前記Phi6は最大4×10cp/mlの濃度を含む。実施形態によっては、前記キレート剤はEDTAおよびEGTAから選択される。特定の実施形態では、前記組成物は0.01~1.0mMのEDTAを含む。特定の実施形態では、前記組成物は0.10mMのEDTAを含む。実施形態によっては、保存剤はアジ化ナトリウムおよびプロクリン300から選択される。特定の実施形態では、前記組成物は0.01~1.0mMのアジ化ナトリウムを含む。特定の実施形態では、前記組成物は0.05%のアジ化ナトリウムを含む。
【0007】
実施形態によっては、組成物は以下を含む。(a)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、および25mg/mlのBSA中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含む。または(b)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、および1%のゼラチン中に、4×10cp/mlのPhi6を含む。または(c)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、および20mg/lのポリrA‐RNA中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含む。または(d)10mMのトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA、0.05%のアジ化ナトリウム、20mg/lのポリrA‐RNA、および40%のグリセロール中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含む。
【0008】
実施形態によっては、前記組成物は45℃で最大28日間熱的に安定である。実施形態によっては、前記組成物は30℃で最大110日間、熱的に安定である。実施形態によっては、0日目と45℃で最大28日経過後とのΔCtは5~7未満である。実施形態によっては、0日目と1回以上の凍結融解サイクル後とのΔCtは、5~7未満である。
【0009】
別の側面では、少なくとも1種の増幅可能な標的核酸配列を含む核酸試料を備え、前記核酸試料を上記の実施形態のいずれか1つの組成物と接触させ、そして、増幅反応を開始できる酵素を用いて前記標的核酸配列を増幅することを含む、核酸増幅のための方法が提供される。
【0010】
実施形態によっては、前記核酸試料はRNAであり、逆転写を開始できる酵素を用いて前記標的核酸配列を逆転写する方法をさらに含む。
【0011】
実施形態によっては、前記標的核酸配列の逆転写および増幅は、逆転写および/または増幅反応を開始できる複数の酵素の組み合わせ、または逆転写および増幅反応を開始できる酵素を用いて実施される。実施形態によっては、Phi6バクテリオファージは、定性的および/または定量的核酸検出によっては、RNA標準として逆転写および/または増幅される。実施形態によっては、Phi6バクテリオファージは、標的核酸と同じ反応内で逆転写および/または増幅される。実施形態によっては、核酸試料内の標的核酸配列の量は、あらかじめ測定されたPhi6バクテリオファージの量に基づいて測定される。実施形態によっては、核酸増幅法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。実施形態によっては、核酸増幅法は連結した逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT‐PCR)である。実施形態によっては、前記核酸試料は、血漿、全血、尿、糞便、粘液、およびそれらの組み合わせに由来する。実施形態によっては、核酸増幅法はウイルス量分析である。特定の実施形態では、核酸増幅法はウイルス量分析であり、ここで試料はRNAウイルスである。特定の実施形態によっては、RNAウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルス(WNV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、インフルエンザウイルス、またはノロウイルスである。
【0012】
別の側面では、試料中の核酸分析を実施するように構成された装置が提供され、前記装置は以下を備える。
(a)試料分注品(aliquot)を受け入れるように作られた試料導入口。
(b)上記の実施形態のいずれか1種の組成物を含む内部対照区画。および、
(c)試薬調製、標的の濃縮、阻害物質の除去、核酸抽出、逆転写、増幅、およびリアルタイム検出を含む前記核酸分析の1つ以上の工程をそれぞれ実行するように構成された1つ以上の追加区画を備えた核酸分析領域。
【0013】
実施形態によっては、核酸分析はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であるか、またはそれを含む。実施形態によっては、核酸増幅法は、連結した逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT‐PCR)であるか、またはそれを含む。実施形態によっては、前記試料は血漿、全血、尿、糞便、粘液、およびそれらの組み合わせを含む。実施形態によっては、試料はユニバーサルトランスポート培地(UTMTM)に懸濁する。実施形態によっては、前記分析はウイルス量分析である。特定の実施形態では、前記分析はウイルス量分析であり、ここで試料はRNAウイルスである。特定の実施形態によっては、RNAウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルス(WNV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、インフルエンザウイルス、またはノロウイルスである。特定の実施形態では、試料中のウイルス量分析を実施するように構成された装置が提供され、この装置は、試料分注品を受け入れるように作られた試料導入口、本明細書に記載の組成物を含む内部対照区画、および試薬調製、標的の濃縮、阻害物質の除去、核酸抽出、増幅、およびリアルタイム分析を含む1つまたは複数の工程のPCR分析をそれぞれ実行するように構成された1つまたは複数の追加の区画を備えたPCR分析領域を備える。
【0014】
また、定性的および/または定量的核酸検出法におけるRNA標準として、Phi6バクテリオファージを使用することが提供される。本明細書では、定性的および/または定量的核酸検出方法におけるRNA標準としてPhi6バクテリオファージを使用することが提供され、このPhi6バクテリオファージは、キレート剤と防腐剤を含みpH7~9の間で核酸増幅反応に適した緩衝液に懸濁される。また、前記緩衝液がクエン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリシン緩衝液、PIPES、またはHEPES、特にトリシン緩衝液から選択されることが提供される。また、前記緩衝液がBSA、ゼラチン、ポリrA‐RNA、グリセロール、アミノ酸、トレハロース、カゼイン、またはポリエチレングリコールを含む群から選択される1種または複数の追加の成分をさらに含むことが提供される。また、前記1種以上の追加成分が、0~25mg/mlのBSA、0~1.0%のゼラチン、0~20mg/lのポリrA‐RNA、または0~40%のグリセロールから選択され、特に前記1種以上の追加成分が最大40%のグリセロールを含むことが提供される。また、前記Phi6が最大4×10cp/mlの濃度で含まれることが提供される。また、前記キレート剤がEDTAおよびEGTAから選択されることが提供される。また、前記組成物が0.01~1.0mMのEDTA、特に0.10mMのEDTAを含むことが提供される。また、前記防腐剤がアジ化ナトリウムおよびプロクリン300から選択されることが提供される。また、前記組成物が0.01~1.0mMアジ化ナトリウム、特に0.05%のアジ化ナトリウムを含むことが提供される。また、前記緩衝液は、
(a)10mMトリス、pH8.0、0.1mMEDTA、0.05%アジ化ナトリウム、および25mg/mlBSA中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含み、または、
(b)10mMトリス、pH8.0、0.1mMEDTA、0.05%アジ化ナトリウム、および1%ゼラチン中に、4×10cp/mlのPhi6を含み、または、
(c)10mMトリス、pH8.0、0.1mMEDTA、0.05%アジ化ナトリウム、および20mg/lポリrA‐RNA中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含み、または、
(d)10mMトリス、pH8.0、0.1mMEDTA、0.05%アジ化ナトリウム、20mg/lポリrA‐RNA、および40%グリセロール中に、最大4×10cp/mlのPhi6を含む、
ことが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】Phi6バクテリオファージの構造を示す。
図2】本明細書に記載の組成物とともに使用できる試料処理装置を示す。
図3】外装RNA組成物の高温における経時的な分解を示す。
図4a】Phi6組成物の高温における経時的な熱安定性を示す。
図4b】Phi6組成物の高温における経時的な熱安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(定義)
本明細書中で他に定義しない限り、本明細書中で使用する科学的・技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。 冠詞「1つ(a)」および「1つ(an)」は、本明細書では冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用する。例として、「1つの要素」は1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0017】
用語「検出する(detect)」、「検出すること(detecting)」、「検出(detection)」、および同様の用語は、程度、量、水準、または何かが発生する確率と同様に、工程またはその存在もしくは不在を発見または決定することを広く指すために用いられる。例えば、標的核酸配列に関して使用する場合の「検出する」という用語は、その存在、不在、水準または量、ならびにその配列の存在または不在の可能性または蓋然性の発見または決定を意味する。当然のことであるが、表現「存在または不在を検出すること」、「存在または不在の検出」および関連表現は定性的および定量的検出を含む。
【0018】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドのポリマー(例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)を指し、天然の核酸(アデノシン、グアニジン、シトシン、ウラシルおよびチミジン)、非天然の核酸、および修飾された核酸を含む。この用語は、ポリマーの長さ(例えば、モノマーの数)によって制限されない。核酸は1本鎖でも2本鎖でもよく、一般に5’‐3’ホスホジエステル結合を含むが、場合によって、ヌクレオチド類似体は他の結合を有してもよい。モノマーは典型的にはヌクレオチドと呼ばれる。「非天然ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾窒素を含む塩基、糖またはリン酸基を含むか、またはその構造中に非天然部分を有するヌクレオチドを指す。非天然ヌクレオチドの例には、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化、アミノ化、脱アミノ化、アルキル化、ベンジル化および蛍光団標識されたヌクレオチドが含まれる。
【0019】
核酸増幅の1つの方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、その方法は米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、第4,800,159号、および第4,965,188号に開示されている。一般的に、PCRは選択した核酸鋳型(例えばDNAまたはRNA)に結合する2つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する。核酸分析に有用なプライマーは、標的核酸の核酸配列内の核酸合成の開始点として作用するオリゴヌクレオチドを含む。プライマーは制限酵素分解物から通常の方法で精製、または合成的に製造できる。プライマーは増幅効率を最大化するために1本鎖であることが好ましいが、プライマーは2本鎖でもよい。2本鎖プライマーは最初に変性させる、つまり鎖を分離処理する。2本鎖核酸を変性する1つの方法は加熱である。「熱安定性ポリメラーゼ」は熱的に安定であるポリメラーゼ酵素であり、つまり、それは鋳型に相補的なプライマー伸長物の形成を触媒し、2本鎖鋳型核酸を変性させるのに必要な時間高温にさらされる際不可逆的に変性しない酵素である。一般に、合成は各プライマーの3’末端で開始し、鋳型鎖に沿って5’から3’方向に進む。熱安定性ポリメラーゼは、例えば、テルムス・フラブス(Thermus flavus)、テルムス・ルーバー(T. ruber)、テルムス・テルモフィルス(T. thermophilus)、テルムス・アクアティクス(T. aquaticus)、テルムス・ラクテウス(T. lacteus)、テルムス・ルベンス(T. rubens)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、またはメタノテルムス・フェルウィドゥス(Methanothermus fervidus)から単離される。とはいえ、酵素を補充する条件であれば熱的に安定ではないポリメラーゼもPCR分析に使用できる。
【0020】
鋳型核酸が2本鎖の場合、それをPCRで鋳型として使用する前に2本の鎖の分離が必要である。鎖の分離は、物理的、化学的または酵素的手段を含む任意の適切な変性方法で達成できる。核酸の鎖を分離する1つの方法は、核酸がほぼ変性するまで(例えば、50%、60%、70%、80%、90%または95%を超える変性)核酸を加熱することを含む。鋳型核酸の変性に必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩の濃度、変性させる核酸長およびヌクレオチド組成に依存すると考えられるが、一般的には約90℃~約105℃の範囲で、温度および核酸長などの反応の特徴に応じた時間で行う。一般的に、変性は約5秒から9分の間行われる。各ポリメラーゼをそのような高温に長時間さらして機能的な酵素を失う危険性を除くため、変性工程は短いことが好ましい。特定の実施形態では、変性工程は最大30秒、例えば最大20秒、最大10秒、最大5秒、または、特に約5秒である。
【0021】
2本鎖鋳型核酸が熱で変性されると、反応混合物を標的核酸の標的配列に対する各プライマーのアニーリングを促進する温度まで冷却することができる。アニーリング温度は好ましくは約35℃~約70℃、さらに好ましくは約45℃~約65℃、さらに好ましくは約50℃~約60℃、さらに好ましくは約55℃~約58℃である。アニーリングの時間は、約10秒~約1分(例えば、約20秒~約50秒、約30秒~約40秒)でよい。これに関連し、それぞれの分析の包括性を高めるために異なるアニーリング温度の使用が有利となる場合がある。つまり、これは比較的低いアニーリング温度でプライマーが1塩基だけ適合しない配列を有する標的にも結合する可能性があることを意味し、従ってある配列の変異体も増幅することができる。これは、例えば特定の有機体が検出すべき既知または未知の遺伝的変異を持つ場合などに望ましい。一方、比較的高いアニーリング温度は、より特異性が高くなるという利点がある。何故なら、より高い温度では、正確に一致しない標的配列に対してプライマーが結合する確率が連続的に減少するからである。両者の現象から利益を得るため、本発明の実施形態によっては、上述の工程は異なる温度でアニールすることを含み、好ましくは最初に低い温度、次に高い温度でアニールすることを含むことが好ましい。例えば、最初の培養が55℃で約5サイクル行われる場合、正確に一致しない標的配列を(予備的に)増幅できる。次いで、実験の大部分で高い特異性を提供するような、例えば58℃で約45サイクル行うことができる。このように、特異性は比較的高いままで、潜在的に重要な遺伝的変異体は見逃されない。
【0022】
次いで、ポリメラーゼ活性を促進または最適化する温度に反応混合物を調整する、つまり、アニールしたプライマーから伸長反応が起こり、分析する核酸に相補的な生成物が生成するのに十分な温度に調整する。前記温度は、核酸鋳型にアニールした各プライマーから伸長産物を合成するのに十分な温度にすべきだが、伸長産物が相補的鋳型から変性するほど高くすべきでない(例えば、伸長反応の温度は一般に約40℃~80℃の範囲である(例えば、約50℃~約70℃、約60℃))。伸長反応の時間は、約10秒~約5分、好ましくは約15秒~2分、さらに好ましくは約20秒~約1分、さらに好ましくは約25秒~約35秒でよい。新たに合成した鎖は、反応の次の工程で使用できる二本鎖分子を形成する。鎖の分離、アニーリング、および伸長反応の工程は、標的核酸に対応する増幅産物を必要量合成するまで、必要に応じて何度も繰り返すことができる。反応における制限因子は、反応中に存在するプライマー、熱安定性酵素、およびヌクレオシド三リン酸エステルの量である。繰り返し工程(すなわち、変性、アニーリング、および伸長反応)は、好ましくは少なくとも1回繰り返される。検出に利用する場合、繰り返し工程の数は例えば試料の性質に依存すると考えられる。試料が核酸の複雑な混合物である場合、検出に十分な標的配列を増幅するためにはさらに繰り返し工程が必要になると考えられる。一般に、繰り返し工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40、60、さらには100回繰り返してもよい。
【0023】
PCR分析は、アニーリングおよび伸長反応の工程が同じ工程(一段階PCR)、または別々の工程(二段階PCR)で実施できる。例えばZ05DNAポリメラーゼのような適切な酵素を用いて、同一の物理的・化学的条件でアニーリングと伸長反応を同時に実施することは、各繰り返し工程における追加工程の時間を節約し、またアニーリングと伸長反応の間で温度調整する必要性を排除するという利点をもたらす。従って、一段階PCRは各分析の全体的な複雑さを軽減する。
【0024】
一般に、結果を得るまでの時間を短縮し、可能な限り早期の診断につながるので、全体的な増幅はより短い時間で達成されることが好ましい。
【0025】
本明細書中に記載の標準の使用を含む他の好ましい核酸増幅法としては、限定されないが、リガーゼ連鎖反応法(LCR、Wu D. Y. and Wallace R. B., Genomics 4 (1989) 560-69、およびBarany F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991) 189-193)、ポリメラーゼ・リガーゼ連鎖反応法(Barany F., PCR Methods and Applic. 1 (1991) 5-16)、間隙‐LCR法(WO 90/01069)、修復連鎖反応法(EP 0439182 A2)、3SR法(Kwoh D.Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 1173-1177、Guatelli J.C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990) 1874-1878、WO 92/08808)、およびNASBA法(US 5,130,238)が含まれる。また、さらに本明細書中に記載の標準は以下の方法、鎖置換増幅(SDA)法、転写媒介増幅(TMA)法、およびQβ‐増幅法(総説については、例えば、Whelen A. C. and Persing D. H., Annu. Rev. Microbiol. 50 (1996) 349-373、Abramson R. D. and Myers T. W., Curr Opin Biotechnol 4 (1993) 41-47を参照)に使用できる。
【0026】
用語「プライマー(primer)」は、適切な条件で核酸ポリメラーゼによるポリヌクレオチド鎖合成の開始点として作用する短い核酸(オリゴヌクレオチド)を示す。一般的に、ポリヌクレオチド合成および増幅反応は、適切な緩衝液、dNTPおよび/またはrNTP、および1種または複数の任意の補因子を含み、適切な温度で実施される。一般的に、プライマーは、標的配列に対して少なくとも実質的に相補的な1か所以上の標的ハイブリダイズ領域を含む。一般的に、この領域は約15~約40ヌクレオチド長である。「プライマー対(primer pair)」とは、標的配列の反対の鎖に相補的であり、標的配列を増幅するように設計された順方向プライマーおよび逆方向プライマー(5’および3’プライマーと呼ばれることもある)を示す。順方向および逆方向プライマーは、標的配列上で互いに増幅可能な距離、例えば約10~5000ヌクレオチド、または約25~500ヌクレオチド以内に配置される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「プローブ(probe)」とは、特異的な対象である標的生体分子に選択的に結合することができる任意の分子を意味し、例えば、プローブは目的の核酸配列に結合、捕捉またはハイブリダイズする。
【0028】
「相補的」または「相補性」という用語は、ポリヌクレオチド中の核酸が第二のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成する能力を示す。例えば、配列5’‐A‐G‐T‐3’(RNAの場合5’‐A‐G‐U‐3’)は配列3’‐T‐C‐A‐5’(RNAの場合3’‐U‐C‐A‐5’)と相補的である。相補性は、一部の核酸のみ塩基対により一致する部分的なものか、または全ての核酸が塩基対により一致する完全なものでもよい。プローブまたはプライマーは標的配列と少なくとも部分的に相補的であれば、標的配列に対して「特異的」であると見なされる。条件によるが、標的配列に対する相補性の程度は、一般的には、プライマーなどの短い核酸のほうが(例えば、80%超、90%超、95%超、またはそれ以上)長い配列よりも高い。
【0029】
用語「増幅条件」または同様の表現は、本明細書中で上記するように、プライマーのハイブリダイゼーションおよび鋳型依存的伸長反応を可能にする核酸増幅反応(例えば、PCR増幅)における条件を示す。「アンプリコン(amplicon)」という用語は、標的核酸配列の全てまたは断片を含み、任意の適切な増幅法による試験管内増幅の産物として形成される核酸分子を示す。様々なPCR条件は、PCR Strategies (Innis et al., 1995, Academic Press, San Diego, CA) at Chapter 14、PCR Protocols : A Guide to Methods and Applications (Innis et al., Academic Press, NY, 1990)に記載されている。
【0030】
「試料」または「生物試料」という用語は、個体由来の核酸を含む、または含むと推定される任意の組成物を示す。この用語は、細胞、組織、または血液から精製または分離された成分、例えば、DNA、RNA、タンパク質、無細胞試料、または細胞分解物を含む。一実施形態では、試料は全血試料である。本明細書中で使用する場合、「全血試料」は血漿または血小板などの成分が除去されていない身体から採取した血液を含む。一般的に、試料は抗凝固剤の添加以外には修飾されない。また、試料は他の種類の生物試料、例えば、血漿、血清、血液成分(軟膜)、および乾燥血斑を示すこともある。また、試料は細胞株を含む個体から得られた細胞の試験管内培養物の構成要素および成分を含んでもよい。さらに、生物試料のさらに具体的な例は、糞便、粘膜スワブ、組織吸引物、組織均質化物、細胞培養物および細胞培養上清(真核生物および原核生物の細胞培養物を含む)、尿、唾液、痰、および脳脊髄試料を含む。
【0031】
本明細書に記載の内部対照組成物は、標的核酸の量の決定に用いる基準となる「定量標準核酸」として働くことができる。この目的のために、定量標準核酸は、標的核酸と共に全ての試料調製工程で処理される。さらに、定量標準核酸は同一の反応混合物内において前記分析法で処理される。それは、標的核酸の存在下または非存在下の両方において、直接的または間接的に検出可能なシグナルを生成しなければならない。この目的のために、定量標準核酸の濃度は、例えば標的濃度が非常に高い場合でも、感度を妨害せず検出可能なシグナルを生成するために各試験で最適化しなければならない。各分析の検出限界(LOD、下記参照)に関し、「定量標準核酸」の濃度範囲は、20~5000×LOD、特に20~1000×LOD、そして具体的には20~5000×LODである。反応混合物中の定量標準核酸の最終濃度は、達成された定量測定の範囲に依存する。
【0032】
「検出限界」すなわち「LOD」は、試料中の核酸の検出可能な最低量または濃度を意味する。低い「LOD」は高感度に対応し、逆も同様である。通常「LOD」は単位「cp/ml」によって表され、特に核酸がウイルス核酸である場合には、「cp/ml」またはIU/mlのいずれかによって表される。「cp/ml」は「1ミリリットル当たりの複製数」を意味し、「複製(copy)」は各核酸の複製である。IU/mlは「国際単位/ml」を表し、WHO規格を示す。
【0033】
ある組成物が「熱的に安定」であるとは、それが中程度の熱に耐えられる場合、例えば、繰り返し回数(サイクル数)の閾値(Ct)を著しく損失せずに37~60℃の温度で200日間耐えられる場合を示す。リアルタイムPCRでは、蛍光シグナルが蓄積することで陽性反応を検出し、Ct値は蛍光シグナルが閾値、つまりシグナルが背景水準を上回る点を超えるのに必要なサイクル数として定義される。Ctは試料中の標的核酸の量に反比例する。ΔCtは、関心対象の配列のCtと内部対照のCtの差に対応する。一実施形態では、本明細書に記載の内部対照組成物のΔCtは、45℃で最大28日間1~3以下であり、より具体的にはΔCtは45℃で最大28日間1以下である。さらに、本明細書に記載の組成物は、-80℃~4℃の1回以上の凍結融解サイクル後に熱的に安定である。
【0034】
(組成)
バクテリオファージΦ6(Phi6)は、分節ゲノムおよびエンベロープを有する2本鎖RNAウイルスである。aRNAのような1本鎖RNAゲノムとは異なり、Phi6はタンパク質キャプシドと脂質膜の2層の保護層を有する。これを図1に示す。
【0035】
Phi6は、核酸増幅分析における使用に適した任意の培地中に製剤化できる。一実施形態では、最大約4×10cp/mlの凍結乾燥Phi6が適切な緩衝液、例えばクエン酸基剤、グリシン基剤、トリシン基剤の緩衝液、ならびにPIPES、およびHEPESにpH7~9で懸濁される。核酸増幅法ではリン酸緩衝液は避けるべきである。特定の実施形態では、緩衝剤は例えば5~20mM、具体的には8~12.5mM、そして特に10mM、およびpH7~9、具体的にはpH8のトリス‐HClである。
【0036】
また、前記製剤はキレート剤、例えばEDTAまたはEGTA、および保存剤、例えばNaNまたはプロクリン300を含んでもよい。特定の実施形態では、前記製剤はEDTAおよびNaNを含む。一実施形態では、キレート剤は0.01~1.0mMのEDTA、例えば0.1mMのEDTAであり、防腐剤は0.01~1.0mMのアジ化ナトリウム、例えば0.05%のNaNである。
【0037】
1種以上の追加成分を前記製剤に含んでもよく、限定されないが、0~25mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)、0~3%のゼラチン、0~100mg/lのポリRNA、0~40%のグリセロール、0~25mg/mlの例えばグルタミン等のアミノ酸、トレハロース、カゼイン、5~40%のポリエチレングリコール(PEG)などを含んでもよい。
【0038】
特定の実施形態では、内部対照の保存液は1000~1,000,000cp/mlの凍結乾燥Phi6、より具体的には100,000~750,000cpを含むことができる。
表1は、適切なPhi6製剤の非限定的な例を提示する。
【表1】
【0039】
Phi6組成物は、45℃で最大28日間、50℃で最大14日間、および30℃で最大110日間安定である。さらに、前記製剤は1回以上の凍結融解サイクル、例えば-80℃~4℃の間で耐性がある。
【0040】
(分析システムおよび試料処理装置)
本明細書に記載の対照材料は、任意の手動の増幅分析法、または自動化された核酸増幅システムもしくは試料調製システムで使用できる。一実施形態では、対照材料は、限定されないが、the cobas(登録商標) 6800/8800 System、the cobas(登録商標) 4800 System、the cobas(登録商標) AmpliPrep Instrument、the cobas(登録商標) LIAT(登録商標) System、the cobas(登録商標) p630 Instrument、the cobas(登録商標) s201 System、the cobas(登録商標) TaqMan(登録商標) 48 Analyzer、the cobas(登録商標) TaqMan(登録商標) Analyzer、the LightCycler(登録商標) 1536 System、the LightCycler(登録商標) 2.0 System、the LightCycler(登録商標) 480 System、the LightCycler(登録商標) 96 System、the MagNA Pure 96 System、the MagNA Pure Compact System、the MagNA Pure LC 2.0 System、または、the FLOW Solution (例として、www.molecular.roche.com/systemsを参照)を含む、任意の適切な市販のPCR機器および/または試料調製システムで使用できる。
【0041】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、核酸増幅技術を実施するように構成した試料処理装置で使用される。生物試料から抽出した核酸は、上記方法のいずれかを用いて核酸を増幅することでさらに処理できる。特定の実施形態では、有機体から抽出した核酸はRNAであり、それらの処理は、TthポリメラーゼとTaqポリメラーゼ、または逆転写酵素とTaqポリメラーゼなどの酵素の組み合わせを用いた、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT - PCR)法を含む。実施形態によっては、切れ目の入った環状核酸プローブをT4DNAリガーゼまたはAmpligaseTMおよびガイド核酸を使用して環状化し、続いて、試験管内選択工程の後に閉環状プローブの形成を検出できる。そのような検出は、当業者に公知の酵素を使用して、PCR、TMA、RCA、LCR、NASBAまたはSDARによって実施することができる。例示的な実施形態において、核酸の増幅は、蛍光標識核酸プローブまたはDNA挿入色素、ならびに核酸増幅の間の蛍光強度の増加を検出できる分子分析装置の光度計または電荷結合素子を用いて、リアルタイムで検出することができる。これらの蛍光標識プローブは、当業者に周知の検出機構(すなわち、TaqManTM、molecular beaconsTM、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブ、scorpionTMプローブ)を使用し、一般的に、特定の核酸の合成または存在を検出するため、蛍光消光と蛍光消光の解除またはレポーター分子間の蛍光エネルギー移動を利用する。
【0042】
一実施形態では、本明細書に開示されている組成物は、微視的尺度から巨視的尺度の流路、反応室、保存容器、検出および処理領域を内蔵する装置で使用される。前記装置は、例えば、米国特許第6,440,725号、米国特許第6,783,934号、米国特許第6,818,185号、米国特許第6,979,424号、米国特許第8,580,559号 、および米国特許第8,940,526号に記載され、Cepheid Corp., Idaho Technology, Inc.、および/またはBiofire Diagnostics, Inc.などから入手可能な装置である、カートリッジ、装置、容器、またはパウチ(小袋)でもよい。
【0043】
例えば、前記装置は、米国特許出願公開第201000056383号の図1に示すように、細胞分解領域、核酸調製領域、第一段階増幅領域、第二段階増幅領域を含む内蔵型核酸分析用パウチでよい。前記パウチは、様々な大きさの様々な流路および膨出部(blister)を備え、試料が系および様々な領域を通って流れ、それに従って処理されるように配置している。試料処理は、パウチ内に配置されたさまざまな膨出部で起きる。処理領域内および処理領域間で試料を移動させる多数の流路が設けられている一方、試料に流体および試薬を送達し、または試料からそのような流体および試薬を除去する他の流路が設けられている。パウチ内の液体は、圧力、例えば空気圧によって膨出部間を移動する。この特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、組成物を収容するように構成され、組成物が試料処理の流れに組み込まれ、それに従って処理されるように1つまたは他の流路および膨出部と流体連結するように構成された内部対照区画に提供される。
【0044】
別の例では、装置は米国特許第9,322,052号の図3図5および図9に記載されているような内蔵型核酸分析カートリッジでよい。カートリッジは、とりわけ、試料導入口を通して導入した流体試料を保持する試料室、洗浄溶液を保持する洗浄室、分解試薬を保持する試薬室、分解室、使用済み試料および洗浄液を受け入れる廃棄室、中和剤を保持する中和剤室、およびマスターミックス(例えば、増幅試薬および蛍光プローブ)を保持し、試薬およびプローブを流体試料から分離した検体と混合するマスターミックス室、反応容器、および検出室を含む複数の反応室を備える。この実施形態では、本明細書に記載の組成物は、組成物を収容するように構成され、1つまたは他の流路および膨出部と流体連結するように構成された内部対照区画内に提供される。
【0045】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、米国特許第7,718,421号に記載されたような試料処理装置で実施される。米国特許第7,718,421号に記載されたような分割化装置は、生物試料を受け取り、保管、処理、かつ/または分析する簡便な容器を備える。特定の実施形態では、分割化装置は複数の処理工程を含む試料処理手順を容易にする。特定の実施形態では、試料は試料装置に収集してもよく、次いで装置は装置およびその内容物を操作して試料を処理する分析装置内に配置される。
【0046】
特定の実施形態は、破断可能なシールで区画に分割されている可撓性装置を含む。個々の区画は、試料を処理する様々な試薬および緩衝剤を含むことができる。保持器具及び駆動装置は、様々な組み合わせ、および様々なタイミングで装置に加えられ、流体の動きを指示し、かつ破断可能なシールを破ることができる。この破断可能なシールを破ることで、内部装置の表面が流体の流れを実質的に妨げることがないようにできる。一実施形態では、生物試料の流れは、処理が進行するにつれて装置の遠位端に向けてもよく、一方、廃液の流れは、試料があった装置の開口部に向かって反対方向に動かしてもよい。最初に試料注入口は固定機構を備えた蓋によって、場合によっては恒久的に密閉することができ、廃液室を蓋の内部に配置して保存用の廃液を受け取ることができる。この方法の大きな利点は、未処理試料が接触した表面と処理済み試料が接触しないことである。その結果、未処理試料に存在する微量の反応抑制剤が装置の壁を覆っても、処理済み試料を汚染する可能性は低い。
【0047】
試料処理装置を図2に示し、それは16、110、120、130、140、150、160、170、180、および/または190などの複数の区画に構成され、圧縮によって実質的に平らになっている透明な可撓性装置10を含むことができる。一実施形態では、装置は少なくとも2つの区画を有することができる。一実施形態では、装置は少なくとも3つの区画を有することができる。可撓性装置は、約2~105℃における操作上の機能性、試料、標的および試薬との適合性、低い気体透過性、最小の蛍光特性、および/または圧縮および屈曲を繰り返すサイクル中の弾力性を提供できる。装置は様々な材料で作られてよく、限定されない例としてポリプロピレンまたはポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリオレフィン共重合体、および/または適切な特性を提供する他の材料が含まれる。
【0048】
例示的な実施形態では、1種以上の試薬を乾燥物および/または液体として装置区画内に保存できる。試薬が乾燥物で保存できる実施形態では、溶液を隣接する区画に保存し、試薬溶液の再構成を容易にすることができる。一般的な試薬の例は、分解試薬、溶出緩衝液、洗浄緩衝液、DNase阻害剤、RNase阻害剤、プロテイナーゼ阻害剤、キレート剤、中和剤、カオトロピック塩溶液、洗剤、界面活性剤、抗凝固剤、発芽溶液、イソプロパノール、エタノール溶液、抗体、核酸プローブ、ペプチド核酸プローブ、およびホスホチオエート核酸プローブを含む。試薬の1種がカオトロピック塩溶液である実施形態では、好ましい成分は、グアニジニウムイソシアネート、またはグアニジニウム塩酸塩、またはそれらの組み合わせである。実施形態によっては、試料が投入される開口部に対して試薬が装置内に貯蔵される順序は、試験管を使用する方法で試薬が使用される順序を反映する。好ましい実施形態では、試薬は試料の予め選択された成分に特異的に結合できる物質を含む。例えば、物質は核酸に特異的に結合してもよく、または核酸プローブが特定の塩基配列を有する核酸に特異的に結合してもよい。
【0049】
装置区画からの信号のリアルタイム検出は、ブロック490などのブロックに接続する光度計、分光計、CCDなどの感知器492(図2)を使用することで達成できる。例示的な実施形態では、駆動装置392によって圧力が装置区画190に加えられ、装置区画190の形状を適切に定めることができる。信号の方式は、蛍光のような特定の波長の光の強度、スペクトル、および/または細胞の画像または量子ドットのような人工要素でよい。蛍光検出のため、光学系からの励起光を用いて反応を照射し、放出光を光度計で検出できる。特定の波長を有する複数の信号を検出するために、専用の検出回線または分光計で異なる波長の信号を直列または並列に検出できる。
【0050】
(キット)
実施形態によっては、本明細書に記載の組成物は、キット(用具一式)またはその構成要素に含まれる。本明細書中で意図するキットは、本明細書中に記載されるような標的核酸配列を特異的に増幅、捕捉、標識化/変換または検出するための少なくとも1つの装置を含む任意の製品(例えば、包装物または容器)を含み、本明細書に記載の組成物は、装置に含まれるか、または別個のキット構成要素、バイアルまたは容器として提供される。さらに、キットは取扱説明書、補充試薬、対照材料、および/または本明細書に記載の増幅方法またはその工程で使用される構成要素または部品を含むことができる。1つ以上のキット構成要素を別個の構成要素、例えば一緒に包装された別個のバイアルまたは容器としてキットに含めることができ、または1つ以上のキット構成要素を同じバイアルまたは容器内のキットに含めることができる。
【0051】
そのようなキットは、試料調製手順の間に使用される構成要素、例えば、96穴または384穴型の微量滴定プレート、または例えばEppendorf, Hamburg, Germanyにより製造される通常の試験管、および本明細書に記載の対照材料を用いた核酸増幅を実施するための他の全ての試薬を含むことができる。また、キットは核酸に対する親和性を有する固体支持体、例えばシリカ表面を有する材料を含むことができる。一実施形態では、固体支持体は、例えば磁性ガラス粒子を含む。さらに、または追加的に、キットはプロテアーゼ試薬、および例えば細胞の分解を可能にするカオトロピック剤、洗剤またはアルコールまたはそれらの混合物を含む分解緩衝液を含むことができる。キットのこれらの構成要素は、試験管または保存容器中に別々に提供してもよい。構成要素の性質に応じて、これらは単一の試験管または保存容器に入れて提供してもよい。
【0052】
さらに、つまり追加的に、前記キットは核酸が結合する際の磁性ガラス粒子の洗浄工程に適した洗浄溶液を含むことができる。この洗浄溶液は、緩衝溶液中にエタノールおよび/またはカオトロピック剤を含んでもよく、または上記のようにエタノールおよび/またはカオトロピック剤を含まないpHが酸性の溶液を含んでもよい。洗浄溶液または他の溶液は、使用前に希釈しなければならない保存溶液として提供されることが多い。
【0053】
さらに、前記キットは磁性ガラス粒子に結合した核酸を溶出するための溶離剤または溶出緩衝液、すなわち溶液または緩衝液(例えば、10mM トリス、1mM EDTA、pH8.0)または純水を含んでもよい。さらに、核酸の精製に使用する追加の試薬または緩衝溶液があってもよい。
【0054】
特定の実施形態では、前記キットは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を含む。また、キットは逆転写酵素活性を有する酵素を含んでもよい。別の実施形態では、キットは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性および逆転写酵素活性を有するポリメラーゼ酵素を含む。
【0055】
(方法および使用)
本明細書に記載の組成物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルス(WNV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどを含むがこれらに限定されない任意のウイルス病原体を分析するために使用できる。また、組成物は他の形態のRNA、例えば、非ウイルス性生物(例えば、ヒト、細菌など)由来のmRNAまたはmiRNAを検出するためにも使用できる。特定の実施形態では、組成物を使用して、HIV‐1およびHIV‐2を含むHIVの任意の病原性株、ならびにその任意の群または亜型、ならびに肝炎またはサイトメガロウイルスを検出できる。例えば、組成物はHIV‐1のM群、N群、O群、P群、およびそれらの組み合わせを分析する分析法に使用できる。特定の例では、組成物はHIV‐1のM群および/またはO群、および任意に選択される1種または複数のさらなるHIV‐1の群を分析するために使用される。これらの組成物は、亜型A、A1、A2、CRF19、B、C、D、F、G、CRF02_AG、H、CRF04_cpx、J、K、およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないHIV‐1の1種以上の亜型を分析するためにも使用できる。 さらに、この方法はHIV‐2、A~H群、特にHIV‐2A群およびB群の検出にも使用できる。さらに、A型、B型またはC型を含むがこれらに限定されない肝炎も本明細書に記載の組成物を使用して分析でき、特にB型またはC型肝炎を本明細書に記載の組成物を使用して分析できる。
【実施例
【0056】
(実施例1)
(試料処理装置における全血からのウイルスRNAの単離および検出)
RNAの単離および配列検出は、可剥性シールで分割され、かつ事前に充填された試薬を含む9つの区画を有する可撓性装置と、その中に収納された廃液保存容器を有する蓋を含む管1(図2)で達成される。装置の1つの区画または小区分から他所への流体の流れは、装置の1つ以上の区画または小区分内に動作可能に接続した1つ以上の駆動装置および保持器具が選択的に係合することで本明細書に記載のように制御される。装置の第1区画は全血試料を受け入れることができる。装置の追加的な区画は以下の構成要素を以下の順序で含む。
【表2】
【0057】
ウイルスRNAの分離と検出のため、100μlの全血を第1区画に充填する。次に、装置の蓋を閉め、cobas(登録商標) LIAT(登録商標) Analyzer (Roche Molecular Systems, Pleasanton, CAから入手可能)に挿入される。試料処理は以下の工程を含むことができる。
(1)試料分解。第1の保持器具を除く全ての保持器具は装置上で閉められている。第1区画と動作可能に接続した駆動装置を用いて血液量を区画内で約100μlに保持するように調整した後、関連する区画の保持器具を用いて第1区画を閉じる。第2区画と動作可能に接続した駆動装置は、全体的または部分的に、第2区画の第1小区分を圧縮して可剥性シールを破り、対照材料と試料を混合する。第1小区分と動作可能に接続した駆動装置は、小区分を交互に圧縮して対照材料と試料を混合することができる。その区画/小区分内の関連する駆動装置および保持器具を係合させることで、試料は第3区画に移動し、試料が下流の試料と混合するのを防ぐために保持器具が第3区画の上で閉められ、次に第4区画に移動して試料と分解緩衝液を混合する。第3区画と第4区画の混合物を50℃で2分間培養する。
(2)核酸の捕捉。分解培養後、駆動装置はそれらが対応する区画を交互に圧縮し、混合物を室温で2分間攪拌および培養し、DNAが粒子に結合するのを促進する。次に、区画に近い磁気源により磁場を発生させ、懸濁溶液中の粒子を捕捉する。駆動装置は、区画を交互に圧縮して粒子を捕獲することができる。駆動装置および保持器具は連続的に開閉され、未結合の試料および廃液を廃液保存容器に移動させる。
(3)洗浄。捕捉工程に続き、洗浄工程を行うことで、粒子および今後試料処理に用いる区画から残留組織片および反応抑制剤を除去する。希釈を利用した洗浄をエタノール洗浄緩衝液で行い、薄層流を利用した洗浄をMES洗浄緩衝液で行う。最初に保持器具と駆動装置が開き、次に駆動装置が閉じてエタノール緩衝液が第5区画に移動し、保持器具を閉める。磁場を止め、駆動装置および少なくとも1つの隣接する駆動装置でそれらの対応する区画を交互に圧縮し、粒子を再懸濁する流れを生成する。次に磁場を発生させ、実質的に全ての粒子を捕捉し、液体を廃液保存容器に移動する。最初の洗浄が完了した後、MES洗浄緩衝液をある区画から別の区画に移動させ、対応する駆動装置および保持器具を順次稼働および開放して緩衝液を操作し、流路を通る洗浄緩衝液が実質的に層流になるようにする。洗浄が完了すると、駆動装置および保持器具が閉じられ、実質的に全ての廃液が廃液保存容器に移動する。
(4)核酸の溶出。溶出緩衝液は、前述と同様の手順で第7区画から移動する。磁場を切り、粒子を第4区画と第5区画の間の流れによって溶出緩衝液中に再懸濁する。粒子懸濁液を定常流または撹拌条件のもと95℃・2分間培養する。磁場を発生させ、実質的に全ての粒子を固定化し、溶出した核酸溶液を稼働装置および保持器具を順次開閉して第7区画に移動させる。駆動装置で第7区画を圧縮し、溶出した核酸溶液の容量を40μlに調整し、次いで保持器具を装置に対して閉じてDNA抽出工程を完了することができる。
(5)核酸の増幅および検出。次いで、核酸溶液を第8区画に移動させ、37℃で1分間UNG280と共に混合および培養し、生物試料中に存在する可能性がある、あらゆる混入PCR産物を分解する。培養後、温度を95℃に上げて核酸およびUNGを2分間変性させる。次に、核酸溶液を第9区画に移し、RT‐PCR試薬と65℃で10分間混合した後、60℃で培養してホットスタートPCRを開始する。95℃で2秒間、および60℃で15秒間を50回繰り返す典型的な2温度増幅分析は、第8区画を95℃、第9区画を60℃に設定し、関連する駆動装置を開閉して反応混合液を区画間で交互に移動させることで実施できる。95℃で2秒間、60℃で10秒間、および72℃で10秒間を50回繰り返す典型的な3温度増幅分析は、第7区画を95℃、第8区画を72℃、および第9区画を60℃に設定し、関連する駆動装置を開閉して反応混合液を区画間で交互に移動させることで実施できる。第9室に光学的に接続した光度計などの検出素子は、レポーター色素に由来するリアルタイムの蛍光発光を装置壁の一部を通して監視できる。分析完了後、試験結果が報告される。
【0058】
(実施例2)
(LightCycler 480を用いた試料中のウイルスRNAの単離および検出)
HIV‐1M (50000cp/ml、Roche)の試料を、LightCycler 480 (Roche Molecular Systems)を用いて分析する。試料調製のため、以下の試薬、ReservCyt(Thin Prepから入手可能)、K3 EDTA Plasma、およびPCR neg.(Rocheから入手可能)を希釈剤として使用する。
【0059】
試料をK3 EDTA Plasma中で最終濃度100cp/mlに希釈し、一晩保存する(血漿希釈液は-60℃~-90℃、PreservCyt希釈液は2~8℃で保存する)。
【0060】
試料(500μl)および希釈剤(350μl)を手動で深いウェルプレートに加え、三重分析のために各試料を3つの異なるウェルに分注する。50μlの内部対照核酸(Phi6対照組成物であり、最大4×10cp/mlの新たに培養したPhi6、10mMトリス、pH8.0、0.1mMEDTA、0.05%アジ化ナトリウム、20mg/lポリrA‐RNA、40%グリセロールを含む)を手動で分注する。試料調製は、米国特許第8,609,340号の図1に示される方法(その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる)に従う作業手順に従って、以下の試薬を使用してHamilton Star (Hamilton, Bonaduz, CH)で行われる。
【表3】
【0061】
最終工程の後、Hamilton Star装置の処理ヘッドは、増幅試薬を含有するそれぞれのマスターミックス(Mmx)を各ウェルに添加し(例えば、米国特許第8,609,340号に開示されているMmx)、単離した核酸を含む溶液とMmxを混合後、得られた各混合物を微量滴定プレートの対応するウェルに移し増幅を実施する。
【0062】
増幅および検出のため、微量滴定プレートは自動プレート密封機で密封され、プレートはLightCycler 480に移される。以下を特徴とするPCRが使用される。
【表4】
【表5】
【0063】
PCRサイクルは2つの測定に分けられ、両方の測定は一段階設定(アニーリングと伸長反応を組み合わせる)で行う。1回目に55℃で5サイクル行い、わずかに適合しない標的配列を予備増幅し包括性を向上させ、一方、2回目の測定の45サイクルはアニーリング/伸長温度を58℃にすることで特異性の向上を提供する。
【0064】
(実施例3)
(外装RNAの熱安定性の評価)
外装RNA(aRNA)の熱安定性を試験するため、さまざまなロットのpEF070 aRNAについて耐性試験を実施した(以下のロット、PD6701、RD4675、RD4676、およびSV6610を試験した)。所定の濃度で各ロットを分注したものを、ある範囲の温度(4~45℃)で長期間保管した。結果を図3に示す。0日目は4つのロットすべてのCtが約32.5を示し、時間経過および高い温度で、測定可能なCtは急速に低下し、45℃・4週間で試験した4つのロットのうち3つで完全に失われた。
【0065】
(実施例4)
(Phi6組成物の熱安定性の評価)
Phi6の熱安定性を試験するため、異なる緩衝液中の精製Phi6の培養物について耐性試験を実施した。簡単に説明すると、完全に処理を制御した所定濃度の分注品を、ある範囲の温度(4~45℃)で長期間保存し、性能(複製数の維持)について評価した。性能はqPCRにおけるCtおよび振幅測定で測定した。
【0066】
濃度設定のため、Phi6を連続希釈して動的領域を作成し、Ctおよび振幅をcobas(登録商標) LIAT(登録商標) analyzerで計算した(n=3)。プライマー‐プローブ配列および熱サイクル条件の用例を以下に提供する。
【表6】
【表7】
【0067】
Ctが約29.5~30.0のものを使用し、表1に提供する各緩衝剤組成物にPhi6を連続希釈した。RNAに基づくcobas(登録商標)分析用に、各緩衝液中のPhi6をCt範囲に希釈した後、各緩衝液の条件で使い捨て滅菌分注品を作製した。次に、これらの使い捨て分注品を4℃、30℃、37℃、および45℃に設定した温度監視可能な培養器に保管した。
【0068】
結果を図4(a)に示す(下図はCt、上図は振幅)。試験結果は、トリス緩衝液を使用すると、Phi6バクテリオファージが現在の標準的なaRNAよりもかなり安定であることを示している。加えて、最大40%のグリセロールの添加は、本加速保管試験においてPhi6製剤の熱安定性をさらに改善した(図4(b)参照)。
図1
図2
図3
図4a
図4b
【配列表】
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