(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】弾性粒状物及びその製造方法、それを用いた人工芝生、舗装体並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
E01C13/08
(21)【出願番号】P 2019532502
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2018026281
(87)【国際公開番号】W WO2019021837
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2017146716
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下條 正樹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】入山 圭介
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第5238415(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/080214(WO,A1)
【文献】特開2007-138644(JP,A)
【文献】特開2009-293326(JP,A)
【文献】特開2010-265593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C13/00-13/12
E01C11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含み、比重が0.9以上である、弾性粒状物
であって、前記黒色赤外線反射無機顔料が、少なくともチタン、マンガン、カルシウムの金属元素を含む顔料であり、前記弾性粒状物の黒色度が、CIE 1976 L
*
a
*
b
*
色空間のL
*
値で表して30以下である、弾性粒状物。
【請求項2】
黒色赤外線反射無機顔料を0.1~10質量%含む、請求項1に記載の弾性粒状物。
【請求項3】
更に、体質顔料を含む、請求項1又は2に記載の弾性粒状物。
【請求項4】
体質顔料が炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及びタルクから選ばれる少なくとも一種である、請求項3に記載の弾性粒状物。
【請求項5】
体質顔料を0.1~70質量%含む、請求項3又は4に記載の弾性粒状物。
【請求項6】
粒径が1~20mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の弾性粒状物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を芝糸間に充填した人工芝生。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を舗装体の一部に充填した舗装体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を舗装路の一部に充填した舗装路。
【請求項10】
少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料を混練し、成形する、弾性粒状物の製造方法であって、前記黒色赤外線反射無機顔料が、少なくともチタン、マンガン、カルシウムの金属元素を含む顔料であり、前記弾性粒状物の黒色度が、CIE 1976 L
*
a
*
b
*
色空間のL
*
値で表して30以下である、製造方法。
【請求項11】
少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料と体質顔料とを混練し、成形する、請求項10に記載の弾性粒状物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を芝糸間に充填する人工芝生の製造方法。
【請求項13】
芝糸を基布に植設し、前記植設された芝糸間に、請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を充填して粒状物層を設ける、人工芝生の製造方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を舗装体の一部に充填する舗装体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性粒状物を舗装路の一部に充填する舗装路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性粒状物及びその製造方法に関する。また、それを用いた人工芝生、舗装体、舗装路並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テニス、サッカー、野球、ラグビー、ホッケー、フットサル、アメリカンフットボール、陸上競技、ゴルフ練習場等の運動施設に芝生が用いられているが、天然芝生に比べて管理が容易であることから人工芝生が広く用いられている。しかし、このような人工芝生は、天然芝生に比べて衝撃吸収性能に劣ることから、競技者が長年競技を行う間にひざ関節の故障を引き起こしたり、あるいは、転倒時などに大きな怪我を引き起こしたりする。そこで、近年、人工芝生の衝撃吸収性を高めるべく、芝糸(パイル)間に粒体を充填させた人工芝生が用いられている。例えば、特許文献1には、基材に植設された芝糸(パイル)間に硬質粒体と軟質粒体との混合物を充填することを開示している。その実施例において、具体的に、硬質粒体として粒径0.07~1.2mmの珪砂粒体を用い、軟質粒体として粒径0.5~2.5mmの天然ゴムチップ粒体を用いている。しかし、このような芝糸(パイル)間に充填した粒体は衝撃吸収性があるものの、太陽光を吸収し易く、しかも、粒体の隙間に空気を含むことから吸収した熱が放散され難いため、人工芝生の表面温度が高温となり、競技環境を大きく損なう。
【0003】
そこで、特許文献2では、ゴムチップの粒体表面に近赤外線反射層を形成して、人工芝生の表面に配置し、これにより、人工芝生が太陽光などからの輻射熱を受ける場所に敷設されても、人工芝生の表面温度が下がり快適性が低下しないことを確認している。当該特許文献では、用いられる近赤外線反射剤として、0.01~500μmの粒径を備えたTiO2、ZnO、ZnAl2O4などの金属酸化物や、雲母などの鱗片状鉱物にこれら金属酸化物を被覆したものなどの、高い明度を有するものを記載している。また、特許文献3では、熱可塑性エラストマーに炭酸カルシウム及び酸化チタンを配合して、真比重が1以上であって日射反射率が60%以上の弾性粒状体を形成し、これを人工芝生の芝糸(パイル)間に充填することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-211448号公報
【文献】特開2006-124984号公報
【文献】特許第5238415号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術では、ゴムチップの表面あるいは内部に高い明度を有する酸化チタン顔料等の近赤外線反射剤を形成しているため、人工芝生の表面温度は上昇し難いものの、近赤外線反射剤が粒体表面から剥離し易くその効果が低下するという問題がある。また、近赤外線反射剤として二酸化チタン等の高い明度を有する白色顔料を用いているため、可視光を反射し眩しさが増幅されるという問題も生じている。一方、ゴムチップとして廃自動車用タイヤや窓枠廃ゴムなどがチップ加工されたものを用いる場合、黒色のカーボンブラック等が配合されているため、近赤外線反射層を形成したとしても太陽光の吸収が生じることから、人工芝生の表面温度の抑制は十分ではないという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物(即ち、熱可塑性エラストマーの成形物の弾性粒状物)の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含み、比重が0.9以上である弾性粒状物を用いることにより、人工芝生の表面温度の上昇を十分抑制できるとともに、黒色であることから可視光の反射を抑制でき、しかも、比重が大きいことから、風雨などによる飛散や流出、水浮きを防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含み、比重が0.9以上である弾性粒状物、
(2)前記(1)に記載の弾性粒状物を芝糸間に充填した人工芝生など、
(3)熱可塑性エラストマーと少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を混練し、成形する、弾性粒状物の製造方法、
(4)前記(1)に記載の弾性粒状物を芝糸間に充填する人工芝生の製造方法など、である。
【0008】
具体的には、本発明は、下記(1)~(16)の発明を含む。
(1)熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含み、比重が0.9以上である、弾性粒状物である。
(2)黒色赤外線反射無機顔料を0.1~10質量%含む、前記(1)に記載の弾性粒状物である。
(3)黒色赤外線反射無機顔料が、少なくともチタン、マンガン、カルシウムの金属元素を含む顔料である、前記(1)又は(2)に記載の弾性粒状物である。
(4)更に、体質顔料を含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の弾性粒状物である。
(5)体質顔料が炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及びタルクから選ばれる少なくとも一種である、前記(4)に記載の弾性粒状物である。
(6)体質顔料を0.1~70質量%含む、前記(4)又は(5)に記載の弾性粒状物である。
(7)粒径が1~20mmである、前記(1)~(6)のいずれかに記載の弾性粒状物である。
(8)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を芝糸間に充填した人工芝生である。
(9)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を舗装体の一部に充填した舗装体である。
(10)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を舗装路の一部に充填した舗装路である。
(11)少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料を混練し、成形する、弾性粒状物の製造方法である。
(12)少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料と体質顔料とを混練し、成形する、前記(11)に記載の弾性粒状物の製造方法である。
(13)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を芝糸間に充填する人工芝生の製造方法である。
(14)芝糸を基布に植設し、前記植設された芝糸間に、前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を充填して粒状物層を設ける、人工芝生の製造方法である。
(15)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を舗装体の一部に充填する舗装体の製造方法である。
(16)前記(1)~(7)のいずれかに記載の弾性粒状物を舗装路の一部に充填する舗装路の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弾性粒状物は、熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含むことから、赤外線反射性が高く、その上、黒色であることから可視光の反射を抑制することもできる。また、弾性粒状物に配合する黒色赤外線反射無機顔料の量や体質顔料の量を調整することにより、弾性粒状物の比重を0.9以上に簡単に調節できることから、風雨などによって弾性粒状物が流出したり飛散したり、水浮きしたりするのを防ぐことができる。また、この防止は、本発明の弾性粒状物の粒径を適宜調整することにより、より効果的に行うことができる。
前記の弾性粒状物を人工芝生の基材に植設された芝糸(パイル)間に充填して用いると、当該弾性粒状物が熱可塑性エラストマーにより成形されているため、その熱可塑性エラストマーにより衝撃吸収性能を向上させ、安全性に優れたものとなるとともに、当該弾性粒状物に配合されている黒色赤外線反射無機顔料により赤外線反射性が高くなるため、それを適用した人工芝生の表面温度の上昇を十分抑制でき、その上、黒色であることから可視光の反射を抑制できる。しかも、弾性粒状物の比重を0.9以上に簡単に調節できることから、人工芝生、運動設備等の舗装体、道路の舗装路などに充填した際に、風雨などによる弾性粒状物の流出や飛散、水浮きを防ぐことができる。
前記の弾性粒状物は、少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射顔料を混練し、成形して、簡便に製造することができる。また、前記の人工芝生は、前記の弾性粒状物を芝糸(パイル)間に充填して、簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、熱可塑性エラストマーを成形した弾性粒状物の内部に少なくとも黒色赤外線反射無機顔料を含み、比重が0.9以上の弾性粒状物である。弾性粒状物は、熱可塑性エラストマーを弾性材料としているため、柔軟性を有し、優れた衝撃吸収性を有する。弾性粒状物の黒色度は、黒色赤外線反射無機顔料の種類や添加量により調整することができ、CIE 1976 L*a*b*色空間のL*値で表して30以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。弾性粒状物の赤外線反射能は、黒色赤外線反射無機顔料により調整することができ、日射反射率(780nm~2,500nm)で表して20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上が最も好ましい。弾性粒状物の比重は、黒色赤外線反射無機顔料や体質顔料の配合により0.9以上に調整することができる。弾性粒状物の比重は、1以上が好ましく、1.1~2.0(1.1以上2.0以下)がより好ましく、1.3~1.8(1.3以上1.8以下)が更に好ましい。比重が前記範囲であれば、風雨などによって弾性粒状物が流出したり飛散したり、水浮きしたりするのを防ぐことができる。
【0011】
弾性粒状物の粒径は、適宜調整することができ、例えば、1個の粒径の縦軸、横軸、幅のうち最も大きい軸径の個数平均値で表して0.5~20mm(0.5mm以上20mm以下)が好ましく、1~20mm(1mm以上20mm以下)がより好ましく、更に1~10mm(1mm以上10mm以下)がより好ましく、1~5mm(1mm以上5mm以下)が更により好ましい。粒径が前記範囲であれば、風雨などによる弾性粒状物の流出や飛散、水浮きを防ぐことができる。弾性粒状物の形状は、適宜調整することができ、円柱状、四角柱状などのチップ状が好ましく、適用場面に応じて球状、円盤状、四角板状、六角板状などとしてもよい。
【0012】
熱可塑性エラストマーは、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却すればゴム状に戻る性質を持つエラストマーであって、スチレン系、オレフィン/アルケン系、塩化ビニル系、ウレタン系、アミド系などを挙げることができる。このものは射出成形によって迅速に成形加工を行える利点がある。
【0013】
弾性粒状物に配合する黒色赤外線反射無機顔料は、黒色系であればよく、赤みがあったり、青みがあったり、緑みがあったりしてもよい。黒色度はCIE1976 L*a*b*色空間のL*値で表して35以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。前記の無機顔料の赤外線反射能は、日射反射率(780~2,500nm)で表して30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、45%以上が更に好ましい。弾性粒状物中の黒色赤外線反射無機顔料の配合量は適宜設定することができ、例えば0.1~10質量%(0.1質量%以上10質量%以下)が好ましく、0.2~7質量%(0.2質量%以上7質量%以下)がより好ましく、0.5~5質量%(0.5質量%以上5質量%以下)が更に好ましい。黒色赤外線反射無機顔料は、弾性粒状物の内部に均一に存在させるのが好ましく、弾性粒状物の内部のほかにその表面に存在させてもよい。
【0014】
このような黒色赤外線反射無機顔料としては、Fe-Cr系酸化物、Co-Al系酸化物、Ti系低次酸化物、Ti系窒化物、Ti-Mn-Ca系酸化物などが挙げられ、少なくともチタン、マンガン、カルシウムの金属元素を含む顔料は黒色度と赤外線反射能が高いため好ましく、xCaTiO3・(1-x)CaMnO3(0<x<1)で表される化合物がより好ましい。また、少なくとも、チタン、マンガン、カルシウムの金属元素を含む黒色赤外線反射顔料に他の金属元素を含有させてもよく、例えばアルミニウム元素及び/又はビスマス元素を含有させるとより好ましい。アルミニウム元素を含有させる場合、その含有量は、チタン元素(Ti)及びマンガン元素(Mn)の含有量の和に対し、原子比(モル比)、即ち、[Al]/([Ti]+[Mn])で表して0.1以下が好ましく、0.01≦[Al]/([Ti]+[Mn])≦0.1となる量がより好ましい。ここで、[Al]はアルミニウム元素のモル数を表し、[Ti]はチタン元素のモル数を表し、[Mn]はマンガン元素のモル数を表す。ビスマス元素を含有させる場合、その含有量は、チタン元素(Ti)の含有量とマンガン元素(Mn)の含有量の和に対し、原子比(モル比)、即ち、[Bi]/([Ti]+[Mn])で表して0.1以下が好ましく、0.002≦[Bi]/([Ti]+[Mn])≦0.02となる量がより好ましい。ここで、[Bi]はビスマス元素のモル数を表し、[Ti]はチタン元素のモル数を表し、[Mn]はマンガン元素のモル数を表す。[Bi]/([Ti]+[Mn])が0.002以上であると、黒色赤外線反射顔料の耐酸性の向上効果が明確に認められるようになる。
【0015】
弾性粒状物は、黒色赤外線反射無機顔料のほかに体質顔料を含めることができる。体質顔料は弾性粒状物の比重を大きくするためのものであって、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及びタルクから選ばれる少なくとも一種が好ましく用いられる。弾性粒状物中の体質顔料の配合量は0.1~70質量%(0.1質量%以上70質量%以下)が好ましく、0.1~50質量%(0.1質量%以上50質量%以下)がより好ましく、1~30質量%(1質量%以上30質量%以下)が更に好ましく、5~20質量%(5質量%以上20質量%以下)が最も好ましい。体質顔料は、弾性粒状物の内部及び表面に均一に存在させてもよく、弾性粒状物の内部に多く存在してもよい。また、弾性粒状物の比重を大きくするために、ケイ砂、石膏、セメント、骨材等の添料を適宜加えてもよい。更に、黒色度を高めるために、別種の黒色顔料(赤外線反射能を有さないもの)を配合してもよい。
【0016】
本発明の弾性粒状物の製造方法は、少なくとも熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料、必要に応じて体積顔料などを混練し、成形する。熱可塑性エラストマーは、加熱により軟化して流動性を示すため、加熱して流動性のある熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料等とを混練してもよいし、熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料等とを加熱しながら混練してもよい。混練機は、ニーダー、回転ミキサー等の混練機を用いることができる。
次に、得られた混練物を適当な大きさに成形して、弾性粒状物を製造する。成形機は、押出し成形、射出成形等の成形機を用いることができる。得られた成形物は、必要に応じて乾燥してもよい。このようにして、弾性粒状物の内部に黒色赤外線反射無機顔料を存在させることができ、形状、粒径等適宜調整することができる。
【0017】
次に、本発明の人工芝生用充填材は、前記の弾性粒状物を芝糸(パイル)間に充填したものである。人工芝生は、従来のものを用いることができ、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂製の人工芝糸(パイル)を基布に対して適宜の方法で植設することにより製造される。この芝糸(パイル)間に本発明の弾性粒状物を充填する。弾性粒状物の量は適宜設定することができ、充填層を形成する程度が好ましく、弾性粒状物と下記の剛性粒状物の合計量として一般には人工芝糸(パイル)の高さの半分程度の厚みに充填する量がより好ましい。本発明の弾性粒状物を充填した弾性粒状物層と、ケイ砂などの剛性粒状物を充填した剛性粒状物層との二層構造とする場合、弾性粒状物層は、下層である剛性粒状物層を充分に覆い隠し太陽光を反射する程度の厚みにするのが好ましく、例えば充填層が合計6cmであれば、そのうち0.6~1.2cm程度は弾性粒状物層であることがより好ましい。このような人工芝生は、従来の方法により前記の弾性粒状物を芝糸(パイル)間に充填して製造することができ、芝糸(パイル)を基布に植設し、前記植設された芝糸(パイル)間に、前記の弾性粒状物を充填して粒状物層を設けるのが好ましい。
【0018】
次に、本発明の舗装体は、前記の弾性粒状物を運動施設等の舗装体の一部に充填したものである。陸上競技場、ゴルフ場などの運動施設の舗装体には、ポリウレタンゴムチップなどが用いられるが、それに代えて本発明の弾性粒状物を用いるものである。陸上競技場の弾性舗装体部分の構造は、表面からエンボストップ層(0.8~3mm)、上塗層(2~4mm)、弾性ベース層(8~10mm)、アスコン層(40~70mm)、及び採石層(100~150mm)から構成される。そして、エンボストップ層及び弾性ベース層に本発明の弾性粒状物を充填する。弾性粒状物の充填量は適宜設定することができ、層を形成する程度、即ち、充填層を形成する程度が好ましい。このような舗装体は、従来の方法により前記の弾性粒状物を運動施設等の舗装体の一部に充填して製造することができる。充填する際、弾性粒状物を加熱してもよい。
【0019】
次に、本発明の舗装路は、前記の弾性粒状物を道路の舗装路の一部に充填したものである。道路の舗装路は、アスファルトやインターロッキングブロックなどが用いられており、運動施設の舗装体と同じように、ポリウレタンゴムチップなども用いられる場合がある。それらに代えて本発明の弾性粒状物を用いるものであり、舗装路の表面層に本発明の弾性粒状物を充填する。舗装路として、道路のほかに、公園、施設、駐車場等の道や鉄道の踏み切り、桟橋等に適用することができ、舗装路にあるマンホールの蓋にも適用することができる。弾性粒状物の充填量は適宜設定することができ、充填層を形成する程度が好ましい。このような舗装路は、従来の方法により前記の弾性粒状物を道路の舗装路の一部に充填して製造することができる。充填する際、弾性粒状物を加熱してもよい。
【0020】
前記の人工芝生、舗装体、舗装路などに本発明の弾性粒状物を充填させる際に、通常用いられる着色顔料、骨材、セメント等を併用してもよい。
【0021】
本発明の弾性粒状物は、赤外線反射性が高く、黒色であることから可視光の反射を抑制できるため、人工芝生、舗装体、舗装路のほかに種々の用途に用いることができる。例えば、表面温度が高温となりやすい建築物の屋上に敷き詰めたり、屋根や壁に固定したりすることもできる。また、橋梁等の構造物、駅、空港、港等の施設にも適用することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
ミキサー中に、熱可塑性エラストマー(スチレン系樹脂エラストマー)と黒色赤外線反射無機顔料(石原産業製SG-101 xCaTiO3・(1-x)CaMnO3(0<x<1)で表される化合物)1.0質量%を加熱混練し、次いで、押出成形機によって直径2mm程度の円柱形状に押し出し、約2~3mm程度の長さに切断した円柱形状の成形物(試料A)を得た。
【0024】
実施例2
ミキサー中に、熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料(石原産業製SG-101 xCaTiO3・(1-x)CaMnO3(0<x<1)で表される化合物)1.0質量%と炭酸カルシウム49質量%を加熱混練し、次いで、押出成形機によって直径2mm程度の円柱形状に押し出し、約2~3mm程度の長さに切断した円柱形状の成形物(試料B)を得た。
【0025】
実施例3
ミキサー中に、熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料(石原産業製SG-101 xCaTiO3・(1-x)CaMnO3(0<x<1)で表される化合物)1.0質量%と炭酸カルシウム24質量%を加熱混練し、次いで、押出成形機によって直径2mm程度の円柱形状に押し出し、約2~3mm程度の長さに切断した円柱形状の成形物(試料C)を得た。
【0026】
実施例4
ミキサー中に、熱可塑性エラストマーと黒色赤外線反射無機顔料(石原産業製SG-101 xCaTiO3・(1-x)CaMnO3(0<x<1)で表される化合物)1.0質量%と硫酸バリウム24質量%を加熱混練し、次いで、押出成形機によって直径2mm程度の円柱形状に押し出し、約2~3mm程度の長さに切断した円柱形状の成形物(試料D)を得た。
【0027】
比較例1
ミキサー中に、熱可塑性エラストマーとカーボンブラック(黒色度L*が7、日射反射率が6%)1.0質量%を加熱混練し、次いで、押出成形機によって直径2mm程度の円柱形状に押し出し、約2~3mm程度の長さに切断した円柱形状の成形物(試料E)を得た。
【0028】
実施例及び比較例で得られた試料の柔軟性、比重、低可視光反射性、黒色度、日射反射率、表面温度を評価した結果を表1に示す。柔軟性の評価は、作製した試料を指先で押しつぶし、その手触り感で良好な柔軟性を有しているかどうかを判断した。比重は、JIS K 7112の水中置換法を用いて測定した。低可視光反射性は、試料を屋外の太陽光が照射される場所において観察した。黒色度はCIE 1976 L*a*b*色空間のL*値で評価した。日射反射率(波長780~2,500nm)は、弾性粒状体と同一組成の原料によってシート状試料を作成し、島津製作所製の紫外・可視・近赤外分光光度計 UV-3150を用い、JIS A 5759に基づく方法で測定した。表面温度の評価は、作成した試料120gをプラスチック製トレーに入れ(厚み1cm)、上部47cmから赤外線ランプを照射し、60分経過後の表面温度を測定した。
【0029】
【0030】
実施例の試料は、その内部に黒色赤外線反射無機顔料、体質顔料を有していることを確認した。また、表1に示すとおり、実施例の試料は、良好な柔軟性と低可視光反射性を有しており、比重が0.9以上となっていた。日射反射率、黒色度が良好で、表面温度も比較例に比べて、約10℃の温度差が確認された。一方、比較例1は、日射反射率が低く、表面温度も高くなったことを確認した。
【0031】
人工芝生として、それぞれ200mm×130mmの四角形とし、ロングパイルの人工芝(材質:ポリオレフィン、芝丈:63mm)の芝間に、6号ケイ砂(使用量:30kg/m2)を充填し、その上に実施例1、実施例2(使用量:11kg/m2)を充填する、ケイ砂とゴムチップの粒状物の2層構造となるように試料を作製した。
実施例及び比較例で得られた人工芝生試料の衝撃吸収性、低可視光反射性、表面温度を評価した結果を表2に示す。衝撃吸収性の評価は、作製した試料を余暇に置いて踏みしめて、その感触で判断した。低可視光反射性は、試料を屋外の太陽光が照射される場所において観察した。表面温度の評価は、作成した試料を机の上に置き、上部47cmから赤外線ランプを照射し、60分経過後の表面温度を測定した。
【0032】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の弾性粒状物は、赤外線反射性が高く、それを適用した人工芝生などの表面温度の上昇を十分抑制できるとともに、黒色であることから可視光の反射を抑制でき、しかも、比重が大きいことから風雨などによる飛散や流出、水浮きを防止できるので、人工芝生、舗装体、道路舗装路などの充填材に用いることができる。