(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】物品管理システムおよび物品管理方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20231115BHJP
H04W 4/80 20180101ALI20231115BHJP
H04W 12/06 20210101ALI20231115BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20231115BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20231115BHJP
H04W 24/00 20090101ALI20231115BHJP
【FI】
B65G1/137 A
B65G1/137 B
H04W4/80
H04W12/06
H04W64/00 173
H04W4/38
H04W24/00
(21)【出願番号】P 2020003257
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗原 亜由美
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167178(JP,A)
【文献】特開2005-025691(JP,A)
【文献】特開2016-116130(JP,A)
【文献】特開2018-073011(JP,A)
【文献】特開2018-008772(JP,A)
【文献】特開2018-116649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
H04W 4/80
H04W 12/06
H04W 64/00
H04W 4/38
H04W 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、
前記エリア内の物品に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波から電力を得て動作し、得られた前記電力を内部のエネルギーストレージに充電する無線タグと、
それぞれ固有の装置識別情報に関連付けられ、前記無線タグと通信可能な
複数の無線装置と、
前記無線装置と通信可能であり、前記エリア内の物品を識別する物品情報を、前記物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する情報処理装置とを含み、
前記無線タグは、タグ識別情報を含むパケットを周囲に送信するのに十分な電力が前記エネルギーストレージに充電されたときに、前記パケットを周囲に送信し、
前記情報処理装置は、
前記複数の無線装置から受信する装置識別情報と、前記
複数の無線装置を介して受信した前記パケットに含まれるタグ識別情報
と、前記複数の無線装置の各々が配置された前記エリア内の既知の位置情報と、に基づいて、前記エリア内に存在する物品を特定する、
物品管理システム。
【請求項2】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、
前記エリア内の物品に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波から電力を得て動作し、得られた前記電力を内部のエネルギーストレージに充電する無線タグと、
前記無線タグと通信可能な無線装置と、
前記無線装置と通信可能であり、前記エリア内の物品を識別する物品情報を、前記物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する情報処理装置とを含み、
前記無線タグは、タグ識別情報を含むパケットを周囲に送信するのに十分な電力が前記エネルギーストレージに充電されたときに、前記パケットを周囲に送信し、
前記情報処理装置は、前記無線装置を介して受信した前記パケットに含まれるタグ識別情報に基づいて、前記エリア内に存在する物品を特定
し、
前記無線タグは、前記無線装置が発する電波から電力を得て前記エネルギーストレージに充電し、
前記無線装置は、前記パケットを受信できない状態が所定時間以上継続する場合には、無線送信を開始するか、又は、送信電力を増加させる、
物品管理システム。
【請求項3】
前記無線タグは、
前記エネルギーストレージの電圧が所定の閾値以下である場合の第1モードと、
前記エネルギーストレージの電圧が前記所定の閾値以上である場合の第2モードと、で動作し、
前記第1モードでは、前記第2モードよりも実行可能な処理が制限される、
請求項1
又は2に記載された物品管理システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記パケットに含まれるタグ識別情報を認証し、認証が成功した場合に当該タグ識別情報に基づいて前記エリア内に存在する物品を特定する、
請求項1
から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項5】
前記無線タグは、前記物品の動きを検出し、検出した動きの情報とタグ識別情報とを含むパケットを周囲に送信し、
前記情報処理装置は、前記動きの情報に基づいて所定時間に所定距離以上動かされたと判断された無線タグのタグ識別情報に基づいて、前記エリア内に存在する物品を特定する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項6】
前記物品管理システムは、前記情報処理装置と通信可能な情報処理端末をさらに含み、
前記情報処理装置は、前記特定した物品の物品情報、又は当該物品情報に関連する関連情報を前記情報処理端末に送信し、
前記情報処理端末は、前記情報処理装置から受信した前記物品情報、又は前記関連情報を表示部に表示させる、
請求項
5に記載された物品管理システム。
【請求項7】
前記物品管理システムは、前記情報処理装置と通信可能な情報処理端末をさらに含み、
前記情報処理装置は、前記情報処理端末に対する物品情報の入力に応じて、当該物品情報に関連する関連情報を前記情報処理端末に送信し、
前記情報処理端末は、前記情報処理装置から受信した前記関連情報を表示部に表示させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項8】
前記物品が販売対象であって、
前記情報処理装置は、所定期間に販売された物品の販売情報を取得し、取得した販売情報に基づき、前記エリア内に存在しない物品を特定する、
請求項1から
7のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項9】
前記無線タグは、Bluetooth Low Energy(登録商標)の規格に準拠した前記パケットをブロードキャスト送信する、
請求項1から
8のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項10】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理方法であって、
前記エリア内の物品に取り付けられた無線タグが、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波から電力を得て動作し、得られた前記電力を内部のエネルギーストレージに充電し、
前記無線タグが、タグ識別情報を含むパケットを周囲に送信するのに十分な電力が前記エネルギーストレージに充電されたときに、前記パケットを周囲に送信し、
それぞれ固有の装置識別情報に関連付けられ、前記無線タグと無線通信可能な
複数の無線装置が、前記パケットを受信し、
前記エリア内の物品を識別する物品情報を、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する情報処理装置が、
前記複数の無線装置から受信する装置識別情報と、前記無線装置を介して前記パケットに含まれるタグ識別情報
と、前記複数の無線装置の各々が配置された前記エリア内の既知の位置情報と、に基づいて前記エリア内に存在する物品を特定する、
物品管理方法。
【請求項11】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理方法であって、
前記エリア内の物品に取り付けられた無線タグが、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波から電力を得て動作し、得られた前記電力を内部のエネルギーストレージに充電し、
前記無線タグが、タグ識別情報を含むパケットを周囲に送信するのに十分な電力が前記エネルギーストレージに充電されたときに、前記パケットを周囲に送信し、
前記無線タグと無線通信可能な無線装置が、前記パケットを受信し、
前記エリア内の物品を識別する物品情報を、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する情報処理装置が、前記無線装置を介して前記パケットに含まれるタグ識別情報を受信し、受信したタグ識別情報に基づいて前記エリア内に存在する物品を特定
し、
前記無線タグは、前記無線装置が発する電波から電力を得て前記エネルギーストレージに充電し、
前記無線装置は、前記パケットを受信できない状態が所定時間以上継続する場合には、無線送信を開始するか、又は、送信電力を増加させる、
物品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システムおよび物品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグは近年構築されつつあるIoT(Internet of Things)技術で活用が進んでいる。活用が検討されている分野は、物流・流通、交通、金融、FA、アミューズメント、医療、食品等、幅が広い。
例えば、IoT技術を利用したシステムの一形態として、RFIDタグを利用した、商品の在庫管理システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、商品陳列場所の複数の商品棚の各々にRFIDタグリーダライタを設け、各商品棚の各棚段に配置したアンテナをRFIDタグリーダライタに接続させ、RFIDタグリーダライタに、商品に付されたRFIDタグを非接触で読み取らせる在庫管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、RFIDタグには、内部に電池を持つアクティブタグと、内部に電池を持たないパッシブタグとがある。アクティブタグは通信可能範囲が比較的広いものの、高価であり、また、電池交換が必要であることから、店舗で扱う多数の商品の各々に取り付けるのは現実的でない。他方、パッシブタグの通信可能範囲は、UHF帯(例えば900MHz帯)の場合で3~8m程度と短い。そのため、店舗内のすべての商品を読み取るためには短い間隔で多数のアンテナを店舗内に配置し、多数のアンテナを収容する多数のリーダライタを店舗内に配置する必要があり、設置コストが嵩む。
【0005】
RFIDとは異なる近距離無線通信方式として、FeliCa(登録商標)等のNFC(Near field communication)が知られているが、通信距離が50cm以下と短く、また高価でもあり、在庫管理に不向きである。
【0006】
そこで、本発明の目的は、少ないコストで商品の在庫管理を自動で行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、前記エリア内の物品に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波から電力を得て動作し、得られた前記電力を内部のエネルギーストレージに充電する無線タグと、それぞれ固有の装置識別情報に関連付けられ、前記無線タグと通信可能な複数の無線装置と、前記無線装置と通信可能であり、前記エリア内の物品を識別する物品情報を、前記物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する情報処理装置とを含み、前記無線タグは、タグ識別情報を含むパケットを周囲に送信するのに十分な電力が前記エネルギーストレージに充電されたときに、前記パケットを周囲に送信し、前記情報処理装置は、前記複数の無線装置から受信する装置識別情報と、前記複数の無線装置を介して受信した前記パケットに含まれるタグ識別情報と、前記複数の無線装置の各々が配置された前記エリア内の既知の位置情報と、に基づいて、前記エリア内に存在する物品を特定する、物品管理システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、少ないコストで商品の在庫管理を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の在庫管理システムのシステム構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施形態の在庫管理システムにおいて複数の無線装置の配置例を示す店舗の平面図である。
【
図3】第1の実施形態の在庫管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
【
図5】在庫データベースのデータ構成例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図7】商品のエリア内の位置を特定する別の方法について説明する図である。
【
図8】第2の実施形態に係る在庫管理システムにおいて商品検索方法を示す図である。
【
図9】第2の実施形態の第1例に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図10】第2の実施形態の第2例に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図11】第3の実施形態に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図12】第4の実施形態に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において「通信可能」とは、直接的に通信が可能である場合に限られず、間接的に通信が可能である場合も含まれる。例えば、「A装置とC装置が通信可能である」とは、A装置とC装置が直接的に通信を確立してデータの送信若しくは受信を行う場合に限られず、A装置とC装置がB装置を介してデータの送信若しくは受信を行う場合も含まれる。
本開示において「物品」とは、例えば製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、商品等の有体物を意味する。以下の実施形態では、物品の一例として商品を挙げる。
本開示において「物品情報」とは、物品を他の物品と識別可能とする情報であれば如何なる情報でもよく、例えば、物品に固有のコード、シリアル番号、型式、種別等であってもよく、物品の画像情報であってもよい。
本開示において「物品情報に関連する関連情報」又は「物品に関連する関連物品」とは、目的とする物品情報若しくは物品と予め関連付けられているものに限られず、物品の取引者若しくは需要者が、目的とする物品情報若しくは物品と関連付けられることが想起可能なものであればよい。例えば、同一のデザインの商品、若しくは同一のデザインが付された、色違いの商品同士、又はサイズ違いの商品同士は、当然に関連付けられているといえる。
本開示におけるIoTタグの通信距離は一例に過ぎず、限定されない。IoTタグの通信距離は、IoTタグの用途に応じて適宜変更若しくは調整可能である。
以下、物品管理システムの実施形態である在庫管理システム1について図面を参照して説明する。
【0011】
(1)第1の実施形態
(1-1)在庫管理システムのシステム構成
先ず、
図1を参照して本実施形態の在庫管理システム1のシステム構成について説明する。
図1は、本実施形態の在庫管理システム1のシステム構成を概略的に示す図である。
図1において、本実施形態の在庫管理システム1は、店舗内の各商品に取り付けられたIoTタグT(無線タグの一例)から受信する信号を基に、ネットワークに接続された商品管理サーバ5によって在庫管理が行われるクラウド型のシステムである。なお、商品管理サーバ5は、複数の店舗の在庫管理を行うことが可能であるが、
図1では1つの店舗のみを示している。
【0012】
店舗内には、各商品のIoTタグTと、例えば無線通信を行う無線装置2が配置される。店舗内に設けられている無線装置2は、例えば各商品のIoTタグTに対して無線環境を提供することができる。無線装置2は、例えば、無線LAN(Local Area Network)装置あるいはアクセスポイント等であるが、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
後に詳述するが、IoTタグTは、周囲環境の電波を基に発電する環境発電型の装置であり、バッテリを備えていない。
無線装置2は、例えばビーコン信号を発信して、店舗内のすべてのIoTタグTが発電可能な無線環境を提供することが可能である。また、無線装置2は、IoTタグTから信号(パケット)を受信し、当該パケットから得られる情報を店舗サーバ3に送る。無線装置2とIoTタグTの通信距離は、例えば3~10メートルの範囲であり、店舗の大きさにもよるが、例えば無線装置2を1~2個配置することで店舗内のすべての商品に取り付けられたIoTタグTから情報を取得可能である。
【0013】
店舗内には複数の無線装置2が配置されることが好ましい。無線装置2の数は問わないが、店舗内のすべてのIoTタグTが発電可能な無線環境を提供できると良い。例えば
図2に示す店舗の平面図では、店舗のエリアを区画する6個の領域R1~R6が設けられる場合、各領域に対応して6個の無線装置2-1~2-6が配置される。無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、固有のID(装置識別情報の一例;以下、「装置ID」ともいう。)が割り当てられる。
図2に示す例では、無線装置2-1~2-6にそれぞれ、装置ID:G1~G6が割り当てられている。
以下、無線装置2-1~2-6に共通する事項について言及するときには、適宜「無線装置2」と表記する。
【0014】
無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、概ね、対応する領域をカバーするように、IoTタグTとの間の無線通信が可能な範囲(通信可能範囲)CA1~CA6が設定されている。例えば、店舗において領域R4に配置されている商品に取り付けられているIoTタグTは、無線装置2-4との間で無線通信が可能となるように設定される。なお、
図2は一例に過ぎず、店舗に配置される無線装置2の数、店舗のエリアを区画する領域の数、あるいは、無線装置2が配置される位置は、例えば、IoTタグTの通信可能範囲や店舗内の通信環境に応じて適宜最適化可能である。
店舗が広く店舗内に多数のIoTタグTが分散して配置される場合には、店舗内に複数の無線装置2を分散して配置することで、店舗内のすべてのIoTタグTとの通信をカバーすることができる。
【0015】
後述するように、タグIDと、タグIDを含むパケットを受信した無線装置2の装置IDとが対応付けられたデータを取得する場合には、商品管理サーバ5は、タグIDに対応する商品が、店舗のエリア内のいずれの領域に配置されているかを認識することができる。
かかる観点から、店舗のエリアを複数の領域に分割する際には、様々な基準に基づいて行うことができる。例えば、複数の領域R1~R6の各々を、商品を配置する異なる棚に対応付けて設定してもよい。この場合、商品管理サーバ5は、商品が店舗内のいずれの棚に配置されているか認識することができる。別の例では、複数の領域R1~R6のうち一部の領域を来店者が移動可能な領域(店内領域)に割り当て、一部の領域をバックヤードの領域(バックヤード領域)に割り当ててもよい。この場合、商品管理サーバ5は、商品が店内領域にあるか、又はバックヤード領域にあるか認識することができる。
【0016】
IoTタグTは、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth Low Energy(登録商標)(以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。
以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。この場合、無線装置2は、BLE無線端末である。
IoTタグTは、BLEの規格に準拠する場合、無線装置2に対してブロードキャスト通信を行う。具体的には、IoTタグTは、アドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャストし、無線装置2がアドバタイジングパケットを受信する。このブロードキャスト通信では、IoTタグTから無線装置2に向けて一方向のデータ送信のみが可能である。
【0017】
店舗サーバ3は、無線装置2と接続されるエッジサーバである。
後述するように、IoTタグTから無線装置2に送信されるパケットには、暗号化されたタグに固有のタグID(タグ識別情報の一例)が含まれている。本実施形態の在庫管理システム1では、好ましくは、店舗サーバ3が各IoTタグTのタグIDを復号し、タグIDの認証を行う。店舗サーバ3は、タグIDの認証を行うに当たって、図示しないIoTタグTの認証サーバと協働で行ってもよい。
【0018】
店員端末4(情報処理端末の一例)は、店舗の店員が所持する情報処理端末であり、限定しない例として、例えば、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンが挙げられる。店員端末4は、無線通信ネットワーク若しくは店舗内LAN(Local Area Network)(図示せず)およびネットワークNWを介して商品管理サーバ5と通信可能である。
なお、本実施形態の在庫管理システム1において、店員端末4は任意的構成要素であり、必須ではない。
【0019】
商品管理サーバ5(情報処理装置の一例)は、例えば店舗に対してクラウド型の在庫管理サービスを提供するネットワークサーバであり、インターネット等のネットワークNWを介して店舗サーバ3と通信可能である。
商品管理サーバ5は、タグIDと商品コードとを対応付けた在庫データベースを有しており、店舗サーバ3から取得するタグIDを基に、店舗内の各商品の在庫の有無を判定し、その判定結果を記録する。
【0020】
(1-2)在庫管理システムの各装置の構成
次に、
図3~
図5を参照して、本実施形態の在庫管理システム1の各装置の構成を説明する。
図3は、本実施形態の在庫管理システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。
図4は、IoTタグTから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図5は、在庫データベースのデータ構成例を示す図である。
【0021】
図3を参照すると、IoTタグTは、制御部11、アンテナ12、ハーベスティング部13、電圧制御部14、RFトランシーバ15、および、センサ16を含む。
IoTタグTの全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ12とセンサ16が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとを含む薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部13、および、電圧制御部14、RFトランシーバ15が実装される。
【0022】
制御部11はマイクロプロセッサとメモリ111を有し、IoTタグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、IoTタグTに固有の識別情報であるタグID、センサ16が出力するセンサデータを記憶する。
【0023】
ハーベスティング部13は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ131に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部13は、例えばアンテナ12が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ131に貯蔵する。エネルギーストレージ131は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0024】
ハーベスティング部13が環境発電に使用する電波は、広範囲の複数の異なる周波数帯の電波が使用可能である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべての店舗で適用可能である。そして、店舗内の商品に取り付けられているIoTタグTは、周囲環境の電波を基にしてハーベスティング部13による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、IoTタグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0025】
電圧制御部14は、制御部11およびRFトランシーバ15に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ131の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
なお、制御部11は、例えば電力モードが第1モードの場合であってもエネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上に充電された場合には、センサ16により検出されたセンサデータを、検出時刻のデータとともにメモリ111に格納してもよい。その場合、制御部11は、電力モードが第1モードから第2モードに切り替えられた時点で、メモリ111に格納していたセンサデータおよび検出時刻のデータを含むパケットを生成し、送信してもよい。それによって、エネルギーストレージ131の充電電圧が比較的低い期間におけるタグの動きの有無に関する情報を無線装置2に提供することができる。
【0026】
センサ16は、例えば、IoTタグT自体の動き(モーション)を検出する。検出されたデータ(センサデータ)は、後述するパケットに含めるためにメモリ111に一時的に格納される。センサデータは、例えばタグが動かされたか否かについて判断可能となるように構成されている。なお、センサデータは、IoTタグTの動きの程度を示す値であってもよく、IoTタグTが動いたか否かを示す2値であってもよい。
センサ16は、IoTタグTに係る重量や圧力を検出してもよい。センサ16は、ICチップに温度センサが内蔵されている場合には、温度を検出してもよい。
【0027】
制御部11は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。
アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、
図4に示すパケット構成を有する。アドバタイジングパケットは、以下では適宜、単に「パケット」という。
【0028】
図4においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれが所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)は、ヘッダとペイロードとからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるIoTタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、本実施形態では、タグID、および、センサ16によって出力されるセンサデータを含む。
【0029】
制御部11は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0030】
RFトランシーバ15は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ12に送出する。
【0031】
アンテナ12は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。
送信アンテナは、RFトランシーバ15によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波や無線装置2から送信される無線信号を受信し、ハーベスティング部13と協働してレクテナとして機能する。
【0032】
図3に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、RFトランシーバ23、および、通信部24を備える。
制御部21は、マイクロプロセッサを主体として構成され、無線装置2の全体を制御する。例えば、制御部21は、IoTタグTから受信したパケットのPDUを復号し、CRCからIoTタグT側と同一の生成多項式を用いて誤り検出を行った後、当該PDUからブロードキャストデータを抽出し、店舗サーバ3に送信するように、通信部24を制御する。
在庫管理システム1に複数の無線装置2が含まれている場合、制御部21は、対応する無線装置2の装置IDを上記ブロードキャストデータとともに店舗サーバ3に送信するように、通信部24を制御する。
RFトランシーバ23は、アンテナ22でIoTタグTから受信した無線信号を検波し、ベースバンド信号に変換し、所定のデジタル復調を行ってパケットを受信する。また、RFトランシーバ23は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
通信部24は、店舗サーバ3との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0033】
前述したように、IoTタグTは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行うが、周囲環境の電波が少ない場合には、パケットの生成や無線信号の送信等の通常の動作が行われない(例えば、電力モードが第1モードの場合)。そこで、無線装置2の制御部21は、IoTタグTと通信できない状態(例えば、アドバタイジングパケットを受信できない状態)が所定時間以上継続する場合には、アンテナ22による無線送信を開始するか、又は、アンテナ22による送信電力を増加させるようにRFトランシーバ23を制御することが好ましい。それによって、IoTタグTの周囲環境の電波が増加するために電力の貯蔵が可能となり、無線装置2との無線通信を開始、あるいは再開することができるようになる。
【0034】
図3に示すように、店舗サーバ3は、制御部31、ストレージ32、および、通信部33を備える。
【0035】
制御部31は、マイクロプロセッサを主体として構成され、店舗サーバ3の全体を制御する。例えば、制御部31は、無線装置2から受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う。
認証は、例えば、ネットワークNWに接続された認証サーバ(図示せず)に問合せを行い、認証サーバから認証結果を取得することで行ってもよい。この場合、認証サーバは、例えば、IoTタグTの製造者が管理するサーバであって、製造したすべてのIoTタグTのタグIDを記憶するデータベースを有し、当該データベースを参照して、店舗サーバ3から問合せのあったタグIDの認証を行う。
制御部31は、タグIDの認証が成功した場合に当該タグIDを商品管理サーバ5に送信することが好ましい。言い換えれば、タグIDの認証が成功しない場合には、制御部31は、タグIDを商品管理サーバ5に送信しないようにすることが好ましい。それによって、真正でないタグIDに基づいて在庫データベースが更新されることが回避され、在庫データベースの信頼性を向上させることができる。
【0036】
制御部31は、無線装置2からブロードキャストデータを受信する度、通信部33を介して、復号したタグIDを含む在庫処理要求を商品管理サーバ5に送信する。なお、本実施形態では、センサデータを在庫処理要求に含めることは必須ではない。
【0037】
ストレージ32は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、例えば、対応する店舗に入荷された商品の商品コードと、当該商品に取り付けられているIoTタグのタグIDとを対応付けて記憶する。
通信部33は、無線装置2からブロードキャストデータを受信し、制御部31に送出する。
【0038】
例えば、各店舗では、商品を入荷する度に、当該商品の商品コードと、当該商品に取り付けられているタグIDとを、BLE通信が可能な店員の携帯端末(図示せず)で読み取り、店舗サーバ3に送信する。商品コード(物品情報の一例)は、JANコード等の商品を特定する情報である。
店舗サーバ3の制御部31は、商品コードとタグIDを対応付けてストレージ32に記憶するとともに、商品管理サーバ5における在庫管理のために、店舗コード、商品コード、および、タグIDを含む商品登録要求を、通信部33を介して商品管理サーバ5に送信する。店舗コードは、商品管理サーバ5が複数の店舗の在庫管理を行う場合に、各店舗を特定するためのコードである。
【0039】
図3に示すように、店員端末4は、制御部41、ストレージ42、操作入力部43、表示部44、第1通信部46、および、第2通信部47を備える。
制御部41は、マイクロプロセッサを主体として構成され、店員端末4の全体を制御する。例えば、制御部41は、所定のプログラムを実行し、店舗サーバ3を介して商品管理サーバ5に対して、在庫データベースの更新要求を含む様々な要求を送信する。制御部41はまた、所定のプログラムを実行することで、店舗サーバ3を介して商品管理サーバ5から、例えば、在庫データベースに基づく商品在庫に関する表示データを受信し、表示部44に表示する。それによって、店員は、所望のタイミングで店舗の商品在庫を確認することができる。
ストレージ42は、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、制御部41によって実行される各種のプログラムを格納する。
【0040】
操作入力部43は、各種のプログラムを実行するために店員から操作入力を受け付ける入力インタフェースであり、表示部44の表示パネルに設けられるタッチパネル入力部であってもよい。
表示部44は、例えばLCD(Liquid Crystal Panel)等の表示パネルと、表示パネルの駆動回路とを含み、制御部41によるプログラムの実行結果を表示する。
第1通信部46は、例えば、第2通信部47よりも狭い通信範囲で対象物と無線通信を行うものであり、例えば各IoTタグTからBLEプロトコルに従って送信されるパケットを受信するように構成されている。
第2通信部47は、店舗サーバ3と通信を行うための通信インタフェースである。
【0041】
図3に示すように、商品管理サーバ5は、制御部51、ストレージ52、および、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、商品管理サーバ5の全体を制御する。
ストレージ52は、例えばHDDの大規模記憶装置を備え、
図5に例示する在庫データベース(在庫DB)を記憶する。
通信部53は、店舗サーバ3との間で通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0042】
図5の在庫データベースは、1つのレコードについて「店舗コード」、「タグID」、「商品コード」、「色」、「サイズ」、「在庫有無」、「商品位置」の各フィールドの値を有し、各店舗の商品の在庫の有無を管理するためのデータベースである。ここで、「色」および「サイズ」の各フィールドには、商品コードに対応する商品の色およびサイズを示す値が格納される。「商品位置」フィールドには、商品コードに対応する商品の店舗内の領域(例えば、
図2の領域R1~R6のいずれかの領域)を示す値が格納される。在庫データベースの同一の商品コードに対応するレコード数をカウントすることで、同一の商品の数を把握できる。
なお、
図5に示した各フィールドは一例に過ぎず、商品に関する他のデータに関するフィールド(例えば、商品の種別、商品カテゴリー、通常品/限定品の区別等)を設けてもよい。
【0043】
例えば、制御部51は、店舗サーバ3から商品登録要求を受信すると、当該商品登録要求に含まれる店舗コード、商品コード、および、タグIDを基に、在庫データベースの1レコードを作成する(このとき、「在庫有無」フィールドの値は「有」とする)。
また、制御部51は、店舗サーバ3からタグIDを含む在庫処理要求を受信すると、当該在庫処理要求に含まれるタグIDを基に在庫データベースを更新する。すなわち、制御部51は、無線装置2が受信したパケットに含まれるタグIDを店舗サーバ3を介して取得し、取得したタグIDに基づいて、店舗のエリア内に存在する商品を特定することによって、在庫データベースを更新する。
在庫処理要求に無線装置2の装置IDが含まれている場合には、制御部51は、特定された商品がエリア内のいずれの領域に存在するかについても特定する。
【0044】
(1-3)在庫管理システムの動作
次に、
図6を参照して、本実施形態の在庫管理システム1の動作を説明する。
図6は、本実施形態の在庫管理システム1の動作を示すシーケンスチャートである。
図6のシーケンスチャートでは、開始前に店舗の各商品に対応するレコードがすべて、商品管理サーバ5の在庫データベースに作成済みである場合を想定する。
図6のシーケンスチャートの処理は、無線装置2が店舗内の各IoTタグ(タグT1,T2,…)からパケットを受信する度に繰り返し行われる。
【0045】
無線装置2は、例えばビーコン信号を放射することで(ステップS2)、店舗内の各商品に取り付けられているタグT1,T2,…が発電可能な無線環境を提供することができる。各タグは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ(例えばキャパシタ)に貯蔵して動作する。エネルギーストレージの電圧が所定の閾値以上まで充電された場合、タグIDとセンサデータをブロードキャストデータとして含むパケットを生成して送信する(ステップS6)。このパケットは、ブロードキャスト送信されるアドバタイジングパケットである。
【0046】
無線装置2は、各タグから送信されるパケットを認識して受信すると、当該パケットに含まれるPDUを復号するとともに、PDUに含まれるブロードキャストデータを抽出して店舗サーバ3に送信する(ステップS8)。このとき、無線装置2は、自身の装置IDも店舗サーバ3に送信してもよい。
店舗サーバ3は、受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う(ステップS10)。タグIDの認証は、例えば、外部の認証サーバに問合せを行うことで得られる認証結果に基づいてなされる。
【0047】
タグIDの認証が成功すると店舗サーバ3は、ステップS8で受信した装置IDとタグIDを含む在庫処理要求を商品管理サーバ5に送信する(ステップS12)。
商品管理サーバ5は、受信した在庫処理要求に含まれる装置IDとタグIDに基づいて在庫データベースを更新する(ステップS14)。在庫データベースの更新では、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」のまま(商品入荷時の値)とし、在庫処理要求を一定期間受信しないタグID対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とすることができる。すなわち、商品管理サーバ5は、無線装置2が受信したパケットに含まれるタグIDに基づいて、店舗のエリア内に存在する商品を特定する。在庫データベースにおいて、「在庫有無」フィールドの値が「有」であるレコードの商品コードに対応する商品が店舗に残っていることがわかる。
なお、ステップS10においてタグIDの認証が成功しない場合には、店舗サーバ3は、在庫処理要求を商品管理サーバ5に送信しない。そのため、真正でないタグIDに基づいて在庫データベースが更新されることが回避され、在庫データベースの信頼性が確保される。
【0048】
さらに、ステップS14の在庫データベースの更新では、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「商品位置」フィールドの値を、在庫処理要求に含まれる装置IDに対応する領域(
図2参照;領域R1~R6のいずれか)を示す値とする。つまり、商品管理サーバ5は、在庫処理要求に含まれる装置IDによりタグIDを受信した無線装置2を特定することで、タグIDが位置する店舗内の領域を特定する。
【0049】
商品管理サーバ5は、在庫処理要求に基づく在庫データベースの更新の実行(実質的に在庫データベース内の値の変更が行われない場合も含む。)の後、当該在庫処理要求に対応する在庫処理完了通知を店舗サーバ3に返す(ステップS16)。
なお、商品管理サーバ5は、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応する商品コードの商品の商品位置を示す領域がわかるため、タグIDに対応する商品コードと、商品位置を示す領域の情報とを店員端末4に送信してもよい。その場合、店員端末4は、店舗における商品の位置がわかるように、店舗のフロアのマップ(
図2参照)を表示してもよい。このとき、店舗で扱う商品が多い場合には、例えば、店員端末4上で店員が商品をフィルタリングして表示可能とする(例えば、特定の商品ジャンルのみを表示可能とする等)ことが好ましい。
【0050】
以上説明したようにして、本実施形態の在庫管理システム1では、複数の店舗の各店舗から取得するタグIDに基づいて、当該タグIDに予め対応付けられている商品コードに対応する商品の在庫有無が管理されるクラウド型サービスが提供される。
本実施形態の在庫管理システム1では、各IoTタグTが店舗内の無線環境によって環境発電を行うため、IoTタグTはバッテリを内蔵する必要がなく、比較的安価である。
また、実施形態のIoTタグTは、例えば無線装置2との通信に省電力の通信プロトコルであるBLEを利用し、エネルギーストレージに十分な電力が充電されたときに、タグIDを含むパケットをブロードキャストする。そのため、無線装置2を特定のタグとの間で近接させる必要はなく、少ない数の無線装置2により店舗内の各IoTタグTからパケットを受信し、タグIDを取得することができる。そのため、従来よりも少ないコストで大量の商品の在庫管理を自動で行うことができる。
【0051】
本実施形態の在庫管理システム1では、店員端末4は、商品管理サーバ5から、例えば、在庫データベースに基づく商品在庫に関する表示データを受信して表示する。そのため、店員は、店員端末4を操作することによって、店舗の開店時、閉店時、あるいは所望のタイミングで店舗の商品在庫を確認することができる。店員端末4は、所定の間隔で商品管理サーバ5から商品在庫に関する表示データを受信して表示するようにしてもよい。
【0052】
本実施形態の在庫管理システム1では、店舗内の商品に取り付けられているIoTタグTは、周囲環境の電波を基にした環境発電で得られる電力で動作する。そのため、従来のパッシブタグとは異なり、周囲環境に存在する電波によって給電されて動作するため、常に近くに給電のためにリーダライタを固定配置させる必要がない。
商品管理サーバ5は、IoTタグTのタグIDに対応付けられている商品コードに対応する商品の在庫を管理する。そのため、本実施形態の在庫管理システム1を、アパレル分野において衣服、靴等の商品の在庫管理に利用する場合には、以下の利点がある。
アパレル分野の商品価値は季節やトレンドに大きく影響するため、商品のライフサイクルが短い。また、商品の販売が流行や地域性にも左右されることから、需要予測が難しい。また、アパレル分野の商品の種類はサイズや色によって分類され、商品の数が膨大になる。よって、アパレル分野では、商品の在庫を常に管理し、適正な在庫を保つ必要がある。そこで、本実施形態の在庫管理システム1を適用することが有用である。在庫管理システム1では、商品管理サーバ5は、店舗内の各商品に取り付けられているタグのタグIDを逐次取得していることから、店舗の管理者は、店舗内の各商品の在庫について正確かつ迅速に把握できる。そのため、店舗内の商品を適正な在庫に保つことができる。
店舗で売れなかった商品を別の店舗(例えばアウトレット店)で販売する場合、固有のタグIDが商品コードに紐付いているため、在庫データベースを更新する(例えば、
図5で「店舗コード」フィールドの値を変更する)ことで、容易に在庫管理を継続することができる。
【0053】
店舗内に複数の無線装置2が配置される場合、
図2に例示したように、各無線装置2の通信可能範囲が、店舗のエリアを区画する複数の領域の各々をカバーするように各無線装置2を配置し、無線装置2の装置IDを商品が存在するエリア内の領域を特定する方法について説明した。しかし、商品のエリア内の位置を特定する方法は、その限りではない。
商品のエリア内の位置を特定する別の方法について、
図7を参照して説明する。
図7では、
図2と同様に、6個の無線装置2-1~2-6が店舗のエリア内に配置されている場合を例示する。
この方法では、各無線装置2は、タグからパケットを受信すると、自身の装置IDと、当該タグからパケットを受信したときの受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator)値)と、当該パケットから得られたブロードキャストデータとを店舗サーバ3に送信する。例えば、
図7において、タグTからパケットを受信したときのRSSI値は、無線装置2-1,2-2,2-4,2-5においてそれぞれ、S
R1,S
R2,S
R4,S
R5である。なお、この例では、無線装置2-3,2-6でのRSSI値は微小であると仮定して無視している。
店舗サーバ3は、各無線装置2のRSSI値を取得すると、RSSI値が最大である無線装置2を特定し、特定した無線装置2の装置IDを在庫処理要求に含めるようにする。それによって、商品管理サーバ5は、タグTが取り付けられている商品の商品位置を示す領域(
図7では、領域R1~R6のいずれか)がわかる。例えば
図7では、S
R2が最大のRSSI値となり、商品位置が領域R2内にあることが特定される。この方法の場合も、商品管理サーバ5は、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応する商品コードと、商品位置を示す領域の情報とを店員端末4に送信し、店員端末4が、店舗における商品の位置をフロアマップ上で表示するようにしてもよい。
【0054】
複数の無線装置2におけるRSSI値を利用して商品位置をさらに精度良く特定することもできる。具体的には、距離に応じた電波の減衰特性を利用し、各端末でのRSSI値に基づいてタグTと各無線装置2との距離を推定し、三角測量法によりタグTを測位する。
例えば
図7において、店舗サーバ3は、各無線装置2のRSSI値を取得した後、大きい順に3個のRSSI値(例えば、S
R1,S
R2,S
R5)と各RSSI値に対応する無線装置2の既知の位置情報とに基づいて、三角測量法によりタグTを測位することができる。また、店舗内の電波の伝播環境は一般に理想的な自由空間ではないため、4個以上の任意の数の無線装置2を単一のタグTの測位に利用することで、さらにタグTの測位精度を高めることもできる。
【0055】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態に係る在庫管理システム1について、第1の実施形態との相違点に着目し、
図8~
図10を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る在庫管理システムにおいて商品検索方法を示す図であり、第1例と第2例を示す。
図9は、本実施形態の第1例に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
図10は、本実施形態の第2例に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【0056】
(2-1)商品検索方法
本実施形態の在庫管理システム1の構成は、第1の実施形態(
図3参照)と同じであるが、店員が在庫商品を検索可能に構成されている点が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、商品検索方法として2つの例が示される。
図8を参照すると、商品検索方法の第1例は、店員が店舗内の商品を手に取ることで店員端末4に当該商品に関する情報が画面G2に表示されるように構成される。この例では、店員が商品を手に取ることで、当該商品が選択されたことになる。
図8を参照すると、商品検索方法の第2例は、店員が店員端末4の画面G1上で特定の商品を選択することで、第1例と同様に、当該商品に関する情報が画面G2に表示されるように構成される。画面G1では、例えば、衣服、靴、鞄等の商品カテゴリー別に複数の商品の中からいずれかの商品を選択可能なプルダウンメニューを含む。いずれかの商品を選択した状態で検索ボタンb1を操作することで、画面G2が表示される。なお、リセットボタンb2は、商品の選択状態をキャンセルするためのボタンである。
画面G2では、選択された商品に対する検索結果として、選択された商品、及び/又は、選択された商品に関連する情報が表示される。選択された商品に関連する情報として、例えば、選択された商品の商品位置に関する情報、選択された商品の他の店舗での在庫有無に関する情報、選択された商品に関連する他の商品に関する情報等が挙げられる。
【0057】
(2-2)第1例での動作(
図9)
先ず、本実施形態の在庫管理システム1において商品検索方法の第1例の動作について、
図9を参照して説明する。
この例では、IoTタグTが生成し、送信するパケットには、IoTタグT自体の動きを示すセンサデータが含まれる(ステップS4,S6)。つまり、
図8において店員SCが商品を手に取った場合、当該商品に取り付けられているIoTタグTが動きを検出し、動かされたか否かを示すセンサデータ(動きの情報の一例)がブロードキャストされるパケットに含まれる。
店員端末4は、タグからのパケットを受信し、店員端末4に固有の識別情報である端末IDと、タグIDとセンサデータを含むブロードキャストデータとを店舗サーバ3に送信する(ステップS9)。
【0058】
店舗サーバ3は、ブロードキャストデータとともに受信するデータが装置IDであるか、あるいは端末IDであるか等に基づいて、タグIDの認証の後に
図6の一連の処理(ステップS12以降の在庫処理要求の処理)を行うのか、あるいは
図9のステップS20以降の処理を行うのか判断してもよい。
店舗サーバ3は、ブロードキャストデータとともに受信するデータが端末IDである場合、受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行った後(ステップS10)、ブロードキャストデータに含まれるセンサデータを基にタグが動かされたか否か判断する(ステップS20)。
【0059】
ステップS20では、例えば、センサデータに含まれるタグが動かされたか否かについての情報に基づいて、タグが所定時間内に所定距離以上動かされたか否か判断される。すなわち、商品を手に取って移動させているような場合には、商品に取り付けられているタグからタグが動かされていることを示すセンサデータが連続的に取得される。そこで、タグが動かされたことを検出した時間、すなわち、タグが商品の動きを所定時間以上継続して検出した場合に、タグが所定時間内に所定距離以上動かされたと判断してもよい。
また、タグの移動距離を測定するために、
図7を参照して示したように、店舗サーバ3が、複数の無線装置2からRSSI値を取得することでタグの現在位置を逐次特定し、特定したタグの現在位置の情報を基に、タグが所定時間内に所定距離以上動かされたか否か判断してもよい。それによって、タグが所定時間内に所定距離以上動かされたと判断することもできる。
【0060】
店舗サーバ3は、タグが動かされていない場合には(ステップS20:NO)、
図6のステップS12の処理と同様に、在庫処理要求を商品管理サーバ5に送信してもよい。
タグが動かされている場合(ステップS20:YES)、店舗サーバ3は、端末IDとタグIDを含む商品検索要求を商品管理サーバ5に送信する(ステップS22)。商品管理サーバ5は、商品検索要求を受信すると、商品検索要求に含まれるタグIDをキーとして、在庫データベースに対する商品検索を実行する(ステップS24)。
【0061】
ステップS24の商品検索では、例えば、商品管理サーバ5は、商品検索要求に含まれるタグIDに対応する商品コードを特定するとともに、当該商品コードに関連する情報(関連情報)を特定してもよい。
例えば、商品検索では、在庫データベースにおいて、タグIDに対応する商品位置の情報を関連情報として特定してもよい。この場合、商品管理サーバ5は、在庫データベースの「商品位置」フィールドを参照し、商品検索要求に含まれるタグIDに対応する商品コードの商品が店内領域にあるか、バックヤード領域にあるか認識できる。さらに、店舗のエリア内の複数の領域の各々がエリア内に配置された棚に対応付けられている場合には、商品管理サーバ5は、商品検索要求に含まれるタグIDに対応する商品コードの商品が店舗内のいずれの棚にあるか認識することができる。
ステップS24の商品検索では、例えば、商品管理サーバ5は、在庫データベースにおいて、タグIDに対応する商品の他の店舗での在庫有無に関する情報を関連情報として特定してもよい。
ステップS24の商品検索では、例えば、商品管理サーバ5は、タグIDに対応する商品以外の商品に関する情報を関連情報として特定してもよい。例えば、タグIDに対応する商品がブラウスである場合には、タグIDに対応するブラウスとは色違い若しくはサイズ違いの別の商品、又は、タグIDに対応するブラウスに合う(若しくは、タグIDに対応するブラウスと組み合わせることが推奨される)別の商品(例えば、パンツ、スカート等)を、タグIDに対応するブラウスの関連情報としてもよい。
【0062】
商品管理サーバ5は、店舗サーバ3を介して、ステップS24で実行した商品検索の検索結果を、処理対象の端末ID(つまり、ステップS22の商品検索要求に含まれる端末ID)に対応する店員端末4に送信する(ステップS26)。店員端末4は、検索結果を受信すると、
図8の画面G2に例示したように検索結果を表示部44に表示させる(ステップS28)。
以上の処理によって、店舗内で店員は、店舗内で在庫内容を確認したい商品を手に取ることで、当該商品に対応する検索結果の情報を店員端末4上で確認することができる。そのため、店員は、来店者の要望に対して応答すること、又は、他店から商品を取り寄せたりすること等が迅速にできる利点がある。
【0063】
(2-3)第2例での動作(
図10)
次に、本実施形態の在庫管理システム1において商品検索方法の第2例の動作について、
図10を参照して説明する。
第2例の商品検索方法は、第1例と比較して、商品検索要求が店舗サーバ3ではなく店員端末4から送信される点が異なる。そして、商品検索要求を送信するトリガーは、店舗の店員による店員端末4に対する商品の選択入力である(ステップS30)。例えば、
図8の第2例に例示したように、店員端末4は、商品検索を行うためのプログラムを実行し、表示パネル上に店舗で扱う様々な商品を選択可能とするためのユーザインタフェースを提供する。店員端末4は、ユーザ(店員)による選択入力を受け付けると、自端末の端末IDと、選択された商品の商品コードとを含む商品選択要求を、店舗サーバ3を介して商品管理サーバ5に送信する(ステップS32)。
【0064】
商品管理サーバ5は、商品検索要求を受信すると、商品検索要求に含まれる商品コードをキーとして、在庫データベースに対する商品検索を実行する(ステップS34)。ステップS34の商品検索では、
図9のステップS24と同様に、商品コードに対応する商品位置の情報、商品コードに対応する商品の他の店舗での在庫有無に関する情報、商品コードに対応する商品に関連する他の商品に関する情報等が、商品コードに関連する情報(関連情報)として特定されてもよい。
商品管理サーバ5は、ステップS34で実行した商品検索の検索結果を、店舗サーバ3を介して、処理対象の端末ID(つまり、ステップS32の商品検索要求に含まれる端末ID)に対応する店員端末4に送信する(ステップS36)。店員端末4は、検索結果を受信すると、その検索結果を表示する(ステップS38)。
【0065】
以上の処理によって、店舗内で店員は、店舗内外で店員端末4を操作することで、在庫内容を確認したい商品に対応する検索結果の情報を店員端末4上で確認することができる。そのため、店員は、第1例と同様に、来店者の要望に対して応答すること、又は、他店から商品を取り寄せたりすること等が迅速にできる利点がある。
【0066】
(3)第3の実施形態
次に、第3の実施形態に係る在庫管理システム1について、第1の実施形態との相違点に着目し、
図11を参照して説明する。
図11は、本実施形態に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
本実施形態では、在庫管理システム1がPOS(Point of Sale)システムと連携することで、在庫データベースが適切であるか否かを判断するように構成されている。POSシステムについては図示しないが、ネットワークNWを介して店舗サーバ3と通信可能なサーバによって構成されてもよい。POSシステムは、店舗のレジでの精算結果、つまり、商品の販売内容を示すPOSデータ(販売情報の一例)が蓄積されたPOSデータベースを有する。図示しないが、POSデータベースは、1つのPOSデータに対応するレコードにおいて、例えば「販売時刻」、「商品コード」、「レジ番号」の各フィールドの値を格納する。
【0067】
図11を参照すると、本実施形態の在庫管理システム1の動作は以下のとおりである。
先ず、店舗の店員が店員端末4上で所定の指示入力を行うと、店員端末4は、当該指示入力を受け付け(ステップS40)、自端末の端末IDを含む突合要求を店舗サーバ3に送信する(ステップS42)。突合とは、商品管理サーバ5の在庫データベースと、POSシステムのPOSデータベースとを突き合わせることである。突合要求を受信すると店舗サーバ3は、商品管理サーバ5およびPOSシステムに対してデータ要求を送信する(ステップS44,S46)。データ要求に応じて、商品管理サーバ5は、在庫データベースを店舗サーバ3に送信し(ステップS48)、POSシステムは、POSデータベースを店舗サーバ3に送信する(ステップS50)。
【0068】
次いで、店舗サーバ3は、ステップS48で受信した在庫データベースと、ステップS50で受信したPOSデータベースとを突合させる突合処理を行う(ステップS52)。具体的には、例えば、前回の突合要求から今回の突合要求の間に、在庫データベースにおいて「在庫有無」フィールドの値が「有」から「無」に変化したレコードの商品コードと、その間にPOSデータベースに蓄積されたPOSデータに含まれる商品コードとが、数も含めて一致するか否か判断される。店舗サーバ3は、ステップS52の処理結果である突合結果を、処理対象の端末ID(つまり、ステップS42の突合要求に含まれる端末ID)に対応する店員端末4に送信し(ステップS54)、店員端末4は、受信した突合結果を表示する(ステップS56)。
【0069】
受信した突合結果が、ステップS52で商品コードが一致しないことを示す場合(例えば、POSデータとして販売実績がないにもかかわらず商品の在庫が減っている場合等)、店員端末4は、警告表示を行うことが好ましい。それによって店員は、商品コードが一致しないことを認識することができ、その原因を探る契機となる。
なお、突合処理を実行するための店員による指示入力(ステップS40)は、任意のタイミングで行うことができる。
また、
図11のシーケンスチャートでは、店舗サーバ3が突合処理を実行する場合について示したが、その限りではない。商品管理サーバ5が、POSシステムからPOSデータベースを取得して、突合処理を実行してもよい。あるいは、店員端末4が店舗サーバ3を介して、商品管理サーバ5およびPOSシステムからそれぞれ在庫データベースおよびPOSデータベースを取得し、突合処理を実行してもよい。
【0070】
(4)第4の実施形態
次に、第4の実施形態に係る在庫管理システムについて、第1の実施形態との相違点に着目し、
図12を参照して説明する。
図12は、本実施形態に係る在庫管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
第1の実施形態の在庫管理システム1では、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応する商品コードの商品を在庫有りとする場合について説明した。本実施形態の在庫管理システムでは、第1の実施形態と異なり、例えば来店者や店員等によって商品がピックアップされている等、商品が動かされている場合には、当該商品を在庫有りと判断しない。つまり、本実施形態では、店舗内で動かされていない商品のみを在庫有りとして判断される。商品が動かされている場合、例えば、来店者が当該商品を試着し、若しくは購入する可能性や、店員が商品の入れ替え作業等を行っている可能性がある。そのため、例えば店員が来店者に対して確実に購入可能な商品の在庫を案内するために、動かされていない商品を把握できると好都合である。
【0071】
本実施形態の在庫管理システムの動作は、
図6のシーケンスチャートと比較してステップS10以降の動作が異なる。その相違部分を
図12に示してある。
タグIDの認証が成功すると店舗サーバ3は、受信したブロードキャストデータに含まれるセンサデータを参照し、タグが動かされたか否かに基づいて在庫フラグの値を決定する。在庫フラグの値が「1」であることは、対象となるタグに対応する商品が棚に配置され、動かされていない状態であることを意味する。具体的には、店舗サーバ3は,タグが動かされておらず、タグが動かされてから所定時間経過したという条件を満たした場合(ステップS60:NO、かつステップS64:YES)に限り、在庫フラグの値を「1」とする(ステップS66)。店舗サーバ3は、当該条件を満たさない場合には、在庫フラグの値を「0」とする(ステップS62)。
なお、タグが動かされてから所定時間経過したことを条件に含めているのは、所定時間が動かされていないことが確認できれば、いったん動かされた商品も棚に戻されて動かなくなったと判断できるためである。しかし、その限りではなく、ステップS60のみによって在庫フラグの値を決定してもよい。
【0072】
店舗サーバ3は、タグIDと在庫フラグを含む在庫処理要求を商品管理サーバ5に送信する(ステップS68)。商品管理サーバ5は、受信した在庫処理要求に含まれるタグIDおよび在庫フラグに基づいて在庫データベースを更新する(ステップS70)。在庫データベースの更新では、在庫処理要求に含まれる在庫フラグの値が「1」である場合、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」とする。逆に、在庫処理要求に含まれる在庫フラグの値が「0」である場合、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とする。
商品管理サーバ5は、在庫データベースの更新の実行の後、ステップS68の在庫処理要求に対応する在庫処理完了通知を店舗サーバ3に返す(ステップS72)。
なお、第1の実施形態と同様に、在庫処理要求には無線装置2の装置IDを含めてもよい。その場合には、店員端末4において、店舗における商品の位置を店舗のフロアのマップに表示することが可能となる。
【0073】
以上、物品管理システムおよび物品管理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、上述した実施形態において、IoTタグは、無線装置2、店員端末4、および、来店者端末のうち少なくともいずれかから放射される電波を基に発電することが可能である。
【0074】
例えば、上述した実施形態において、無線装置2は、アクセス権限のあるIoTタグTからのパケットのみを受信できるようにしてもよい。店舗内には、来店者が所持しうる携帯端末や無線タグが、BLEのプロトコル等、無線装置2とIoTタグTとの間で行われている無線通信プロトコルと同じプロトコルでデータを送信し、当該データを無線装置2が受信する可能性がある。そこで、無線装置2が受信すべきパケットと、受信する必要がないデータとを区別するために、IoTタグTから送信されるパケットには、アクセス権限を示すデータ(アクセス権限データ)を含めるようにすることが好ましい。この場合、上述した実施形態において無線装置2は、パケットを受信する度に、受信したパケットに含まれるアクセス権限データを確認し、自身にアクセス権限がないパケットを破棄する。
【0075】
上述した実施形態において、店舗サーバ3の機能は、店舗に設けられたスマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ等によって実現することもできる。例えば、店員端末4に店舗サーバ3の機能を含めるようにしてもよく、その場合、店舗サーバ3は必要ない。
また、商品管理サーバ5が店舗サーバ3の機能を有してもよく、その場合も店舗サーバ3は必要ない。
【0076】
なお、上述した実施形態において、無線装置2は必須の構成要素ではなく、無線装置2がなくとも店舗内において十分に環境発電可能である場合には、無線装置2は必要ない。例えば、無線装置2がない場合であっても来店者端末によって放射される無線信号によってIoTタグが環境発電可能であるならば、無線装置2は必要ない。また、IoTタグは、来店者端末および無線装置2以外の他の装置(例えば、店員の携帯端末等)から送信される電波をも環境発電のために利用することができる。言い換えれば、来店者端末、あるいは来店者端末以外の他の装置によって提供される電波が環境発電のために十分でない場合に、IoTタグは、無線装置2から放射される電波を環境発電のために利用することができる。
【0077】
上述した実施形態では、物品管理システムおよび物品管理方法をアパレル分野に適用した場合について説明したが、食品、医薬品、化粧品等の他の商品を扱う分野にも適用可能である。適用される分野に応じて、在庫データベースの形式は異なる場合がある。例えば、食品分野の在庫データベースの各レコードには、商品コードに対応して消費期限(賞味期限)の値が含まれうる。医薬品分野の在庫データベースの各レコードには、商品コードに対応して有効期限の値が含まれうる。また、医薬品分野において、所定数の医薬品を含む1つの梱包物に対してIoTタグを取り付ける場合には、在庫データベースの各レコードには、梱包物内の医薬品の数量の値が含まれうる。
消費期限や有効期限等によって期限管理される商品を管理する場合には、商品管理サーバが定期的に消費期限や有効期限を監視し、期限が近付いた商品の商品コード、数量、商品位置を店員端末に通知することが好ましい。
【符号の説明】
【0078】
1…在庫管理システム
T…IoTタグ
11…制御部
111…メモリ
12…アンテナ
13…ハーベスティング部
131…エネルギーストレージ
14…電圧制御部
15…RFトランシーバ
16…センサ
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RFトランシーバ
24…通信部
3…店舗サーバ
31…制御部
32…ストレージ
33…通信部
4…店員端末
41…制御部
42…ストレージ
43…操作入力部
44…表示部
46…第1通信部
47…第2通信部
5…商品管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
NW…ネットワーク