(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】情報配信システムおよび情報配信方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/015 20230101AFI20231115BHJP
【FI】
G06Q30/015
(21)【出願番号】P 2020003260
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗原 亜由美
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018438(JP,A)
【文献】特開2018-008772(JP,A)
【文献】特開2006-260238(JP,A)
【文献】特開2004-295240(JP,A)
【文献】特開2004-318645(JP,A)
【文献】特開2010-079560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に存在する一以上の物品のそれぞれに関連付けられた情報を配信する情報配信システムであって、
前記物品ごとに取り付けられ
、前記一以上の物品ごとの動きを検出し、固有のタグ識別情報が記憶する無線タグと、
前記無線タグと通信可能な無線装置と、
前記物品ごとに関連付けられた情報を、前記物品ごとに取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する記憶部を有する情報処理装置と、
前記情報処理装置と通信可能な
複数の表示装置と
を含み、
前記情報処理装置は、
前記無線装置から取得した前記無線タグの情報に基づいて、前記一以上の物品のうち所定の動きをした物品が存在する場合に、前記所定の動きをした物品に関連
付けられた情報を
、前記記憶部における対応付けに基づいて抽出して前記
複数の表示装置のうち当該物品に最も近い位置にある表示装置に送信
し、
前記所定の動きは、前記エリア内の所定の場所に存在する物品が、前記所定の場所から所定距離以上離れた場所に移動する動きである、
情報配信システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記無線タグが物品の動きを所定時間以上継続して検出した場合に、前記物品が前記所定の動きをしたと判断する、
請求項
1に記載された情報配信システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記無線タグの前記エリア内の位置に応じて、前記所定時間を
異なる値に設定する、
請求項
2に記載された情報配信システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記一以上の物品のうち、前記エリア内の所定の領域内に位置し、かつ前記所定の動きをした物品が存在する場合に、前記所定の動きをした物品に関連する情報を前記表示装置に送信する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載された情報配信システム。
【請求項5】
前記無線タグは、タグ識別情報を含むパケットをブロードキャストし、
前記無線装置は、受信したパケットに含まれるタグ識別情報を前記情報処理装置に送信する、
請求項1から
4のいずれか一項に記載された情報配信システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記無線装置から取得した前記タグ識別情報を認証し、認証が成功した場合に、前記所定の動きをした物品に関連する情報を前記表示装置に送信する、
請求項1から
5のいずれか一項に記載された情報配信システム。
【請求項7】
前記無線タグは、周囲の電波からエネルギーを得て動作する、
請求項1から6のいずれか一項に記載された情報配信システム。
【請求項8】
エリア内に存在する一以上の物品に関連する情報を配信する情報配信方法であって、
前記エリア内の物品に取り付けられた無線タグが、固有のタグ識別情報を記憶し
、前記物品の動きを検出し、
無線装置が、前記無線タグと無線通信を行って前記無線タグの情報を受信し、
情報処理装置が、前記物品に関連
付けられた情報を、前記物品ごとに取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶
する記憶部を有し、前記無線装置から前記無線タグの情報を取得し、
前記情報処理装置は、物品が所定の動きをした場合に、前記無線装置から取得した前記無線タグのタグ識別情報に基づいて、前記一以上の物品のうち所定の動きをした物品が存在する場合に、前記所定の動きをした物品に関連
付けられた情報を
、前記記憶部における対応付けに基づいて抽出して複数の表示装置のうち当該物品に最も近い位置にある表示装置に送信
し、
前記所定の動きは、前記エリア内の所定の場所に存在する物品が、前記所定の場所から所定距離以上離れた場所に移動する動きである、
情報配信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報配信システムおよび情報配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプロジェクタなどの表示装置を用いて広告を表示する広告媒体であるデジタルサイネージ(Digital Signage)が、様々な場所に設置されている。デジタルサイネージを用いることで、動画や音声を用いた豊かなコンテンツの提供が可能になるとともに、デジタルサイネージの設置場所に応じた効率的な広告配信が可能になる。そのため、今後、デジタルサイネージのマーケットは、拡大が期待されている。
例えば、ネットワークを介して接続される電子機器へ広告を送信可能な管理サーバと、管理サーバより受信した広告を、画像表示装置を介して屋外に向けて表示可能な電子機器とを有する広告配信システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したデジタルサイネージは、デジタルサイネージの設置場所に応じたコンテンツ、あるいは、不特定多数ではなく特定層の消費者に向けたコンテンツを提供可能である。しかし、従来のデジタルサイネージは、個々の消費者が興味を持った商品等の物品に対して適時に適切なコンテンツを提供することはできない場合があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、個人が興味を持った物品に対して適時に適切な情報を提供可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、エリア内に存在する一以上の物品に関連する情報を配信する情報配信システムであって、前記物品ごとに取り付けられ、前記一以上の物品ごとの動きを検出し、固有のタグ識別情報を記憶する無線タグと、前記無線タグと通信可能な無線装置と、前記物品ごとに関連付けられた情報を、前記物品ごとに取り付けられている無線タグのタグ識別情報と対応付けて記憶する記憶部を有する情報処理装置と、前記情報処理装置と通信可能な複数の表示装置とを含み、前記情報処理装置は、前記無線装置から取得した前記無線タグの情報に基づいて、前記一以上の物品のうち所定の動きをした物品に関連付けられた情報を、前記記憶部における対応付けに基づいて抽出して前記複数の表示装置のうち当該物品に最も近い位置にある表示装置に送信し、前記所定の動きは、前記エリア内の所定の場所に存在する物品が、前記所定の場所から所定距離以上離れた場所に移動する動きである、情報配信システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、個人が興味を持った物品に対して適時に適切な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のコンテンツ配信システムのシステム構成を概略的に示す図である。
【
図2】実施形態のコンテンツ配信システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
【
図4】コンテンツデータベースのデータ構成例を示す図である。
【
図5】実施形態のコンテンツ配信システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図6】表示装置におけるコンテンツの表示例を示す図である。
【
図7】コンテンツ作成処理のフローチャートを示す図である。
【
図8A】表示装置におけるコンテンツの表示例を示す図である。
【
図8B】表示装置におけるコンテンツの表示例を示す図である。
【
図9】表示装置におけるコンテンツの表示例を示す図である。
【
図10】実施形態のコンテンツ配信システムにおいて複数の無線装置の配置例を示す店舗の平面図である。
【
図11】実施形態のコンテンツ配信システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図12】商品のエリア内の位置を特定する別の方法について説明する図である。
【
図13】棚配置データベースのデータ構成例を示す図である。
【
図14】実施形態に係るコンテンツ配信システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図15】複数の表示装置が店内に配置される変形例を説明する図である。
【
図16】コンテンツ配信システムの別の動作を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態であるコンテンツ配信システム1について図面を参照して説明する。本開示において「物品」とは、例えば製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、商品等の有体物を意味する。以下の実施形態では、物品の一例として商品を挙げる。また、本開示において「コンテンツ」は、画像(静止画、動画を含む)自体の他、画像を識別するための識別情報であってもよい。コンテンツは、物品に関連する情報の一例である。
本開示におけるIoTタグの通信距離は一例に過ぎず、限定されない。IoTタグの通信距離は、IoTタグの用途に応じて適宜変更若しくは調整可能である。
【0010】
(1)コンテンツ配信システムのシステム構成
先ず、
図1を参照して本実施形態のコンテンツ配信システム1のシステム構成について説明する。
図1は、本実施形態のコンテンツ配信システム1のシステム構成を概略的に示す図である。
図1において、本実施形態のコンテンツ配信システム1は、店舗内の各商品に取り付けられたIoTタグT(無線タグの一例)から受信する信号を基に、コンテンツ管理サーバ5によって店舗の表示装置8に表示すべきコンテンツCTを決定する。つまり、コンテンツ配信システム1は、デジタルサイネージ(電子看板)システムである。なお、コンテンツ管理サーバ5は、複数の店舗の各々に配置される表示装置8に表示すべきコンテンツCTを決定することが可能であるが、
図1では1つの店舗のみを例示している。
【0011】
本実施形態のコンテンツ配信システム1では、店舗内の来店者が特定の商品に興味を持ち、当該商品を手に取った場合、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に表示するように構成されている。
表示装置8は、例えば、通信機能付きの表示装置であり、表示方式は問わない。例えば、表示装置8の表示方式は、LCD(Liquid Crystal Display)若しくはOLED(Organic Electro- Luminescence Display)、又はプロジェクタ等である。
【0012】
表示装置8に表示されるコンテンツは、静止画や動画(以下、総称して「画像」という。)であり、また、画像に音声を含んだものでもよい。画像には、テキストが含まれてもよい。
コンテンツは、来店者が手に取った商品に関連しており、例えば、来店者が手に取った商品と色違いの複数の別の商品の画像、来店者が手に取った商品と組み合わせることが推奨される別の商品の画像等である。画像には、商品の詳細を説明するテキスト、商品の販売を促進させるためのテキスト、商品についてのキャンペーンを説明するテキスト等が含まれてもよい。
【0013】
図1に示すように、店舗内には、各商品のIoTタグTと、例えば各IoTタグTと無線通信を行う無線装置2と、コンテンツを表示する表示装置8とが配置される。
店舗内に設けられている無線装置2は、例えば各商品のIoTタグTに対して無線環境を提供することができる。無線装置2は、例えば、無線LAN(Local Area Network)装置、アクセスポイント等であるが、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
後に詳述するが、IoTタグTは、周囲環境の電波を基に発電する環境発電型の装置であり、バッテリを備えていない。無線装置2の数は問わないが、店舗内のすべてのIoTタグTが発電可能な無線環境を提供できると良い
IoTタグTは、動き(モーション)を検出するセンサが内蔵されている。そのため、例えば来店者が商品を手に取った場合、当該商品に取り付けられているIoTタグTが動きを検出する。
【0014】
無線装置2は、例えばビーコン信号を発信して、店舗内のIoTタグTが発電可能な無線環境を提供することが可能である。また、無線装置2は、IoTタグTから信号(パケット)を受信し、当該パケットから得られる情報を店舗サーバ3に送る。無線装置2とIoTタグTの通信距離は、例えば3~10メートルの範囲であり、店舗の大きさにもよるが、例えば無線装置2を1~2個配置することで店舗内の商品に取り付けられたIoTタグTから情報を取得可能である。
IoTタグTから送信されるパケットには、内蔵センサにより検出されたデータ(「センサデータ」という。)が含まれる。
【0015】
なお、本実施形態のコンテンツ配信システム1において、無線装置2は必須の構成要素ではなく、無線装置2がなくとも店舗内において十分に環境発電可能である場合には、無線装置2は必要ない。例えば、無線装置2がない場合であっても来店者端末によって放射される無線信号によってIoTタグTが環境発電可能であるならば、無線装置2は必要ない。また、IoTタグTは、来店者端末および無線装置2以外の他の装置(例えば、店員の携帯端末等)から送信される電波をも環境発電のために利用することができる。言い換えれば、来店者端末、あるいは来店者端末以外の他の装置によって提供される電波が環境発電のために十分でない場合に、IoTタグTは、無線装置2から放射される電波を環境発電のために利用することができる。
【0016】
IoTタグTは、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth Low Energy(登録商標)(以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等が挙げられる。
以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。この場合、無線装置2は、BLE無線端末である。
IoTタグTは、BLEの規格に準拠する場合、無線装置2に対してブロードキャスト通信を行う。具体的には、IoTタグTは、アドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャストし、無線装置2がアドバタイジングパケットを受信する。このブロードキャスト通信では、IoTタグTから無線装置2に向けて一方向のデータ送信が可能である。
後述するように、IoTタグTから無線装置2に送信されるパケットには、タグに固有のタグID(タグ識別情報の一例)とセンサデータが含まれている。
【0017】
店舗サーバ3は、無線装置2と接続されるエッジサーバであり、例えば、店舗内、あるいは、店舗外の事務所等に配置される。店舗サーバ3は、各IoTタグTのセンサデータをコンテンツ管理サーバ5に送信するように構成されている。
【0018】
コンテンツ管理サーバ5(情報処理装置の一例)は、店舗に対してクラウド型のデジタルサイネージサービスを提供するネットワークサーバであり、インターネット等のネットワークNWを介して店舗サーバ3および店舗内の表示装置8と通信可能である。後述するように、コンテンツ管理サーバ5は、店舗内の各商品に対応するコンテンツを格納するコンテンツデータベースを記憶する。
コンテンツ管理サーバ5は、店舗内で来店者が特定の商品に興味を持ち、当該商品を手に取った場合、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に送る。
すなわち、来店者が商品を手に取った場合には、当該商品に取り付けられたIoTタグのセンサデータにより当該商品が動かされたことがわかる。コンテンツ管理サーバ5は、店舗サーバ3から各IoTタグのセンサデータを取得し、特定の商品が動かされたと判断すると、対応するコンテンツを表示装置8に送る。それによって、IoTタグが取り付けられた商品に対応するコンテンツが表示装置8に表示されることになる。
【0019】
(2)コンテンツ配信システムの各装置の構成
次に、
図2~
図4を参照して、本実施形態のコンテンツ配信システム1の各装置の構成を説明する。
図2は、本実施形態のコンテンツ配信システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。
図3は、IoTタグTから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図4は、コンテンツデータベースのデータ構成例を示す図である。
【0020】
図2を参照すると、IoTタグTは、制御部11、アンテナ12、ハーベスティング部13、電圧制御部14、RFトランシーバ15、および、センサ16を含む。
IoTタグTの全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ12とセンサ16が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとが接続された薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部13、および、電圧制御部14、RFトランシーバ15が実装される。
【0021】
制御部11はマイクロプロセッサとメモリ111を有し、IoTタグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、IoTタグTに固有の識別情報であるタグID、センサ16が出力するセンサデータを記憶する。
【0022】
ハーベスティング部13は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ131に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部13は、例えばアンテナ12が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ131に貯蔵する。エネルギーストレージ131は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0023】
ハーベスティング部13が環境発電に使用する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべての店舗で適用可能である。そして、店舗内の商品に取り付けられているIoTタグTは、周囲環境の電波を基にしてハーベスティング部13による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、IoTタグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0024】
電圧制御部14は、制御部11およびRFトランシーバ15に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ131の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
なお、制御部11は、例えば電力モードが第1モードの場合であってもエネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上に充電された場合には、センサ16により検出されたセンサデータを、検出時刻のデータとともにメモリ111に格納してもよい。その場合、制御部11は、電力モードが第1モードから第2モードに切り替えられた時点で、メモリ111に格納していたセンサデータおよび検出時刻のデータを含むパケットを生成し、送信してもよい。それによって、エネルギーストレージ131の充電電圧が比較的低い期間におけるタグの動きの有無に関する情報を無線装置2に提供することができる。
【0025】
センサ16は、例えば、IoTタグT自体の動き(モーション)を検出する。検出されたデータ(センサデータ)は、後述するパケットに含めるためにメモリ111に一時的に格納される。センサデータは、例えばタグが動かされたか否かについて判断可能となるように構成されている。なお、センサデータは、IoTタグTの動きの程度を示す値であってもよく、IoTタグTが動いたか否かを示す2値であってもよい。
センサ16は、IoTタグTに係る重量や圧力を検出してもよい。センサ16は、ICチップに温度センサが内蔵されている場合には、温度を検出してもよい。
【0026】
制御部11は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、
図3に示すパケット構成を有する。アドバタイジングパケットは、以下では適宜、単に「パケット」という。
【0027】
図3においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれ所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)はヘッダとペイロードからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるIoTタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、本実施形態では、タグID、および、センサ16によって出力されるセンサデータを含む。
【0028】
制御部11は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0029】
RFトランシーバ15は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ12に送出する。
【0030】
アンテナ12は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。送信アンテナは、RFトランシーバ15によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波や無線装置2から送信される無線信号を受信し、ハーベスティング部13と協働してレクテナとして機能する。
【0031】
図2に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、RFトランシーバ23、および、通信部24を備える。
制御部21は、マイクロプロセッサを主体として構成され、無線装置2の全体を制御する。例えば、制御部21は、IoTタグTから受信したパケットのPDUを復号し、CRCからIoTタグT側と同一の生成多項式を用いて誤り検出を行った後、当該PDUからブロードキャストデータを抽出する。制御部21は、抽出したブロードキャストデータを店舗サーバ3に送信するように通信部24を制御する。
RFトランシーバ23は、アンテナ22でIoTタグTから受信した無線信号を検波し、ベースバンド信号に変換し、所定のデジタル復調を行ってパケットを受信する。また、RFトランシーバ23は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
通信部24は、店舗サーバ3との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0032】
前述したように、IoTタグTは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行うが、周囲環境の電波が少ない場合には、パケットの生成や無線信号の送信等の通常の動作が行われない(例えば、電力モードが第1モードの場合)。そこで、無線装置2の制御部21は、IoTタグTと通信できない状態(例えば、アドバタイジングパケットを受信できない状態)が所定時間以上継続する場合には、アンテナ22による無線送信を開始するか、又は、アンテナ22による送信電力を増加させるようにRFトランシーバ23を制御することが好ましい。それによって、IoTタグTの周囲環境の電波が増加するために電力の貯蔵が可能となり、無線装置2との無線通信を開始、あるいは再開することができるようになる。
【0033】
図2に示すように、店舗サーバ3は、制御部31、ストレージ32、および、通信部33を備える。
【0034】
制御部31は、マイクロプロセッサを主体として構成され、店舗サーバ3の全体を制御する。例えば、制御部31は、無線装置2から受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う。
認証は、例えば、ネットワークNWに接続された認証サーバ(図示せず)に問合せを行い、認証サーバから認証結果を取得することで行ってもよい。この場合、認証サーバは、例えば、IoTタグTの製造者が管理するサーバであって、製造したすべてのIoTタグTのタグIDを記憶するデータベースを有し、当該データベースを参照して、店舗サーバ3から問合せのあったタグIDの認証を行う。
【0035】
制御部31は、ブロードキャストデータに含まれるセンサデータに基づいて、対応するIoTタグT(つまり、当該ブロードキャストデータに含まれるタグIDに対応するIoTタグT)が動かされたか否か判断する。動かされたと判断した場合、制御部31は、タグモーション通知をコンテンツ管理サーバ5に送信する。タグモーション通知とは、IoTタグが動かされたことをコンテンツ管理サーバ5に通知するためのメッセージであり、動かされたIoTタグのタグIDを含む。
なお、コンテンツ管理サーバ5が複数の店舗を管理する場合には、制御部31は、タグモーション通知に店舗コードを含ませるようにする。店舗コードは、複数の店舗の中から店舗を識別するための識別情報である。
【0036】
制御部31は、タグIDの認証が成功した場合に当該タグIDを含むタグモーション通知をコンテンツ管理サーバ5に送信することが好ましい。すなわち、制御部31は、タグIDの認証が成功した場合に、所定の動きをした商品に対応するコンテンツを表示装置8に送信することが好ましい。タグIDの認証によって当該タグIDが真正であるか否かについて確認できる。そのため、真正でないタグIDをコンテンツ管理サーバ5に送信しないようにすることで、真正でないタグIDに基づいてコンテンツが表示されることがなく、デジタルサイネージの信頼性が向上する。
【0037】
ストレージ32は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、例えば、ブロードキャストデータに含まれるタグIDとセンサデータを記憶してもよい。
通信部33は、無線装置2からブロードキャストデータを受信し、制御部31に送出する。
【0038】
図2に示すように、コンテンツ管理サーバ5は、制御部51、ストレージ52(記憶部の一例)、および、通信部53を備える。
通信部53は、店舗サーバ3および表示装置8との間で通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0039】
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、コンテンツ管理サーバ5の全体を制御する。
例えば、制御部51は、店舗サーバ3からタグモーション通知を受信すると、当該タグモーション通知に含まれるタグIDに基づいて、当該タグIDに対応する商品が所定の動きをしたか否か判断する。制御部51は、店舗内の一以上の商品のうち商品が所定の動きをした商品が存在する場合に、当該所定の動きをした商品に対応するコンテンツをコンテンツデータベースから読み出して、表示装置8に送信する。
また、制御部51は、店舗サーバ3からの要求に応じて、コンテンツデータベースに新しいレコードを格納し、コンテンツデータベースから既存のレコードを削除し、又は、コンテンツデータベースにおいて既存のレコード内のコンテンツを更新する等の処理を行ってもよい。例えば、店舗サーバ3は、店舗の運営者による所定の操作に応じて、コンテンツデータベースを更新する要求をコンテンツ管理サーバ5に送信するようにプログラムされている。つまり、コンテンツデータベースの内容は、店舗サーバ3から適宜更新可能であることが好ましい。
【0040】
ストレージ52は、例えばHDDの大規模記憶装置を備え、
図4に例示するコンテンツデータベース(コンテンツDB)を記憶する。
図4のコンテンツデータベースは、1つのレコードについて「店舗コード」、「タグID」、「商品コード」、「色」、「サイズ」、「在庫有無」、「商品位置」、「コンテンツ」の各フィールドの値を有し、店舗の表示装置8の表示対象であるコンテンツを管理するためのデータベースである。
ここで、「色」および「サイズ」の各フィールドには、商品コードに対応する商品の色およびサイズを示す値が格納される。「商品位置」フィールドには、商品コードに対応する商品の店舗内の商品位置として、例えば棚ID(SA3等)が格納される。コンテンツデータベースの同一の商品コードに対応するレコード数をカウントすることで、同一の商品の数を把握できる。
なお、
図4に示した各フィールドは一例に過ぎず、商品に関する他のデータに関するフィールド(例えば、商品の種別、商品カテゴリー、通常品/限定品の区別等)を設けてもよい。
【0041】
(3)コンテンツ配信システムの動作
次に、
図5を参照して、本実施形態のコンテンツ配信システム1の動作を説明する。
図5は、本実施形態のコンテンツ配信システム1の動作を示すシーケンスチャートである。
図5のシーケンスチャートの処理は、無線装置2が店舗内の各IoTタグ(タグT1,T2,…)からパケットを受信する度に繰り返し行われる。
【0042】
無線装置2は、例えばビーコン信号を放射することで(ステップS2)、このビーコン信号により店舗内の各商品に取り付けられているタグT1,T2,…が発電可能な無線環境を提供することができる。各タグは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ(例えばキャパシタ)に貯蔵して動作する。エネルギーストレージの電圧が所定の閾値以上まで充電された場合、暗号化されたタグIDとセンサデータをブロードキャストデータとして含むパケットを生成して送信する(ステップS6)。このパケットは、ブロードキャスト送信されるアドバタイジングパケットである。
【0043】
無線装置2は、各タグから送信されるパケットを認識して受信すると、当該パケットを復号し、当該パケットに含まれるブロードキャストデータを店舗サーバ3に送信する(ステップS8)。
店舗サーバ3は、受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う(ステップS10)。タグIDの認証は、例えば、外部の認証サーバに問合せを行うことで得られる認証結果に基づいてなされる。
【0044】
タグIDの認証が成功すると店舗サーバ3は、ブロードキャストデータに含まれるセンサデータを基に、対応するタグが動かされたか否かを判断する(ステップS12)。店舗サーバ3は、タグが動かされたと判断した場合には、当該タグIDを含むタグモーション通知をコンテンツ管理サーバ5に対して送信する(ステップS14)。例えば、店舗内の来店者が商品を手に取った場合に当該商品に取り付けられたタグが動かされたと判断される。なお、コンテンツ管理サーバ5が複数の店舗を管理する場合には、店舗サーバ3は、タグモーション通知に店舗コードを含ませる。
コンテンツ管理サーバ5は、タグモーション通知に含まれるタグIDを基に、当該タグIDに対応する商品が所定の動きをしたか否か判断する(ステップS15)。ステップS15の処理は、店舗内の一以上の商品のうち所定の動きをした商品が存在するか否かを判断する処理に相当する。
来店者や店員が商品に少し触れた程度では、当該商品が所定の動きをしたと判断しないようすることが好ましい。商品に少し触れた程度で当該商品が表示装置8に表示されたとすれば、来店者が特に興味がない商品に関する情報も表示装置8に表示されることになり、サイネージの機能を果たさないためである。
このような観点から、ステップS15では、タグIDに対応する商品が所定の動きをしたか否か判断するようにしている。
【0045】
ここで、
図5のステップS2~S14の一連の処理は継続的に行われているため、ステップS15の判断は、同一のタグIDを含むタグモーション通知を連続して受信した時間に基づいて行うことができる。つまり、来店者が商品を手に取り、あるいは、商品を店舗内で移動させるような動きを行う場合には、当該商品に取り付けられているタグから、タグが動かされたことを示すセンサデータが連続的に取得される。そこで、タグが動かされたことを検出した時間、すなわち、タグが商品の動きを所定時間以上継続して検出した場合に、当該商品が所定の動きをしたと判断することができる。
【0046】
コンテンツ管理サーバ5は、商品が所定の動きをしたと判断すると(ステップS15:YES)、受信したタグモーション通知に含まれるタグIDをキーとして、コンテンツデータベース(
図4参照)から、対応するコンテンツを決定する(ステップS16)。次いでコンテンツ管理サーバ5は、ステップS16で決定したコンテンツを店舗の表示装置8に送信する(ステップS18)。表示装置8は、コンテンツ管理サーバ5からコンテンツを受信すると、当該コンテンツを表示する(ステップS20)。
【0047】
ステップS20で表示されるコンテンツは、例えば、来店者が手に取った商品(以下、「対象商品」という。)を説明する画像(商品の1又は複数の特長を説明する画像等)でもよいし、対象商品に関連する商品(「関連商品」という。)に関する画像であってもよい。関連商品は、例えば、対象商品と色違い若しくはサイズ違いの別の商品、対象商品の後継となる別の商品、又は、対象商品と組み合わせて使用することが予め定義された別の商品等である。なお、以下の説明では、関連商品に対応する商品コードを「関連商品コード」という。
図6に、ステップS20で表示される画面の例として画面G1を示す。画面G1には一例として、対象商品と、当該対象商品の関連商品とに関する情報を含むコンテンツが表示される。画面G1では、関連商品として、対象商品と色のみが異なる複数の別の商品の画像がコンテンツに含まれる。
【0048】
ステップS20で表示されるコンテンツは、対象商品及び/又は関連商品の在庫有無や店舗内の商品位置を含むようにしてもよい。この場合、対象商品に対して表示されるコンテンツは固定の情報ではなく、例えば在庫状況に応じて変化する。
【0049】
以下、
図7を参照して、コンテンツ管理サーバ5が表示装置8に送信すべきコンテンツを作成する処理について説明する。
図7は、コンテンツ作成処理を示すフローチャートであり、例えば
図5のステップS16において実行される。
図7において、コンテンツ管理サーバ5は、コンテンツデータベースを参照して、タグモーション通知に含まれるタグIDに対応する商品コードと、当該商品コードに関連する関連商品コードとを特定する(ステップS30)。なお、図示しないが、商品コードと関連商品コードとの対応関係は、例えばコンテンツデータベースにおいて定義され、既知であるとする。
【0050】
コンテンツ管理サーバ5は、コンテンツデータベースを参照して以下の処理を行う。すなわち、コンテンツ管理サーバ5は、ステップS30で特定した対象商品と関連商品が、タグモーション通知に含まれる店舗コードに対応する店舗に存在するか否か(在庫があるか否か)判断する(ステップS32)。店舗に対象商品と関連商品が存在する場合には、コンテンツ管理サーバ5は、対象商品と関連商品の商品位置(棚IDによって特定される位置)と数量を特定する(ステップS34)。商品の数量を特定するために、コンテンツデータベースにおいて、同一の商品コードを含むレコード数がカウントされる。
対象商品と関連商品のうち少なくともいずれかの商品が店舗に存在しない場合には、他の店舗(つまり、タグモーション通知に含まれる店舗コードとは異なる店舗コードに対応する店舗)に在庫がある確認する(ステップS36)。コンテンツ管理サーバ5は、ステップS30~S36の処理結果に基づいて、コンテンツとなる画像を構成する(ステップS38)。ステップS38では、例えば、所定のレイアウトにステップS30~S36の処理結果に対応する画像をはめ込むことによってコンテンツとなる画像が構成される。
【0051】
図7のコンテンツ作成処理を実行することで作成されるコンテンツの表示例について、
図8および
図9に示す。
図8Aを参照すると、画面G2は、
図6の画面G1と類似のコンテンツの表示例である。
図6の画面G1と異なるのは、画面G2のコンテンツでは、関連商品の店舗における在庫の有無についての情報と、在庫有りの場合の数量の情報と、在庫無しの場合に在庫がある他の店舗についての情報とが追加された点にある。これらの情報は、固定の情報ではなく在庫状況に応じて変化する場合がある。
図8Bを参照すると、画面G3のコンテンツは、関連商品として対象商品と組み合わせることが推奨される他の商品の画像と、当該関連商品の店舗における在庫の有無についての情報と、在庫無しの場合に在庫がある他の店舗についての情報とを含む。
図9を参照すると、画面G4のコンテンツは、関連商品として対象商品と組み合わせることが推奨される他の商品の画像と、各関連商品の商品位置が示された店舗マップM1とを含む。この例では、2つの関連商品の各々について商品位置に対応する棚の位置が店舗マップM1に示される。
【0052】
(4)商品の在庫管理
上述したように、表示装置8に表示されるコンテンツに商品の在庫状況及び/又は商品位置を反映する場合、コンテンツデータベースにおける商品の在庫管理に関するデータを逐次更新することが必要である。以下では、商品の在庫管理に関するデータの更新方法について、
図10~
図14を参照して説明する。
【0053】
先ず、店舗内に複数の無線装置2を配置することで商品の在庫管理を行う方法について説明する。
図10は、本実施形態のコンテンツ配信システム1において複数の無線装置2の配置例を示す店舗の平面図である。
図10に例示する店舗の平面図では、店舗のエリアを区画する6個の領域R1~R6が設けられる場合、各領域に対応して6個の無線装置2-1~2-6が配置される。無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、固有のID(装置識別情報の一例;以下、「装置ID」ともいう。)が割り当てられる。
図10に示す例では、無線装置2-1~2-6にそれぞれ、装置ID:G1~G6が割り当てられている。
以下、無線装置2-1~2-6に共通する事項について言及するときには、適宜「無線装置2」と表記する。
【0054】
無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、概ね、対応する領域をカバーするように、IoTタグTとの間の無線通信が可能な範囲(通信可能範囲)CA1~CA6が設定されている。例えば、店舗において領域R4に配置されている商品に取り付けられているIoTタグTは、無線装置2-4との間で無線通信が可能となるように設定される。なお、
図10は一例に過ぎず、店舗に配置される無線装置2の数、店舗のエリアを区画する領域の数、あるいは、無線装置2が配置される位置は、例えば、IoTタグTの通信可能範囲や店舗内の通信環境に応じて適宜最適化可能である。
店舗が広く店舗内に多数のIoTタグTが分散して配置される場合には、店舗内に複数の無線装置2を分散して配置することで、店舗内のすべてのIoTタグTとの通信をカバーすることができる。
【0055】
後述するように、タグIDと、タグIDを含むパケットを受信した無線装置2の装置IDとが対応付けられてコンテンツ管理サーバ5に送信される場合には、コンテンツ管理サーバ5は、タグIDに対応する商品が、店舗のエリア内のいずれの領域に配置されているかを認識することができる。
かかる観点から、店舗のエリアを複数の領域に分割する際には、様々な基準に基づいて行うことができる。例えば、複数の領域R1~R6の各々を、商品を配置する異なる棚に対応付けて設定してもよい。この場合、コンテンツ管理サーバ5は、商品が店舗内のいずれの棚に配置されているか認識することができる。別の例では、複数の領域R1~R6のうち一部の領域を来店者が移動可能な領域(店内領域)に割り当て、一部の領域をバックヤードの領域(バックヤード領域)に割り当ててもよい。この場合、コンテンツ管理サーバ5は、商品が店内領域にあるか、又はバックヤード領域にあるか認識することができる。
【0056】
複数の無線装置2を店舗内に配置した場合の在庫管理の動作について、
図11のシーケンスチャートを参照して説明する。
図11のシーケンスチャートは、
図5のシーケンスチャートと同時に(並行して)実行することができる。
図11のシーケンスチャートにおいてステップS2~S6は、
図5のシーケンスチャートと同じである。ステップS8aは、
図5のシーケンスチャートのステップS8と比較して、各無線装置2から店舗サーバ3に対して、ブロードキャストデータとともに各無線装置2の装置IDが送信される点が異なる。
店舗サーバ3は、受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行った後(ステップS10)、ステップS8aで受信した装置IDとタグIDを含む在庫処理要求をコンテンツ管理サーバ5に送信する(ステップS50)。
コンテンツ管理サーバ5は、受信した在庫処理要求に含まれる装置IDとタグIDに基づいてコンテンツデータベースを更新する(ステップS52)。コンテンツデータベースの更新では、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」のまま(商品入荷時の値)とし、在庫処理要求を一定期間受信しないタグID対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とする。すなわち、コンテンツ管理サーバ5は、無線装置2が受信したパケットに含まれるタグIDに基づいて、店舗のエリア内に存在する商品を特定する。コンテンツデータベースにおいて、「在庫有無」フィールドの値が「有」であるレコードの商品コードに対応する商品が店舗に残っていることがわかる。
なお、ステップS10においてタグIDの認証が成功しない場合には、店舗サーバ3は、在庫処理要求をコンテンツ管理サーバ5に送信しない。そのため、真正でないタグIDに基づいてコンテンツデータベースが更新されることが回避され、コンテンツデータベースの信頼性が確保される。
【0057】
さらに、ステップS52のコンテンツデータベースの更新では、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「商品位置」フィールドの値を、在庫処理要求に含まれる装置IDに対応する領域(
図10参照;領域R1~R6のいずれか)を示す値としてもよいし、各領域に予め対応付けられた棚IDの値としてもよい。つまり、コンテンツ管理サーバ5は、在庫処理要求に含まれる装置IDによりタグIDを受信した無線装置2を特定することで、タグIDが位置する店舗内の位置を特定する。
コンテンツ管理サーバ5は、在庫処理要求に基づくコンテンツデータベースの更新の実行(実質的にコンテンツデータベース内の値の変更が行われない場合も含む。)の後、当該在庫処理要求に対応する在庫処理完了通知を店舗サーバ3に返す(ステップS54)。
【0058】
以上説明したようにして、コンテンツ配信システム1では、複数の店舗の各店舗から取得するタグIDに基づいて、当該タグIDに予め対応付けられている商品コードに対応する商品の在庫有無が管理されることが好ましい。
本実施形態のコンテンツ配信システム1では、各IoTタグTが店舗内の無線環境によって環境発電を行うため、IoTタグTはバッテリを内蔵する必要がなく、比較的安価である。
また、実施形態のIoTタグTは、例えば無線装置2との通信に省電力の通信プロトコルであるBLEを利用し、環境発電によりエネルギーストレージに十分な電力が充電されたときに、タグIDを含むパケットをブロードキャストする。そのため、無線装置2を特定のタグとの間で近接させる必要はなく、少ない数の無線装置2により店舗内の各IoTタグTからパケットを受信し、タグIDを取得することができる。そのため、少ない設置コストで大量の商品の在庫管理を自動で行うことができる。
【0059】
次に、商品のエリア内の位置を特定する別の方法について、
図12を参照して説明する。
図12では、
図10と同様に、6個の無線装置2-1~2-6が店舗のエリア内に配置されている場合を例示する。
この方法では、各無線装置2は、タグからパケットを受信すると、自身の装置IDと、当該タグからパケットを受信したときの受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator)値)と、当該パケットから得られたブロードキャストデータとを店舗サーバ3に送信する。例えば、
図12において、タグTからパケットを受信したときのRSSI値は、無線装置2-1,2-2,2-4,2-5においてそれぞれ、S
R1,S
R2,S
R4,S
R5である。なお、この例では、無線装置2-3,2-6でのRSSI値は微小であると仮定して無視している。
店舗サーバ3は、各無線装置2のRSSI値を取得すると、RSSI値が最大である無線装置2を特定し、特定した無線装置2の装置IDを在庫処理要求に含めるようにする。それによって、コンテンツ管理サーバ5は、タグTが取り付けられている商品の商品位置を示す領域(
図12では、領域R1~R6のいずれか)がわかる。例えば
図12では、S
R2が最大のRSSI値となり、商品位置が領域R2内にあることが特定される。
【0060】
複数の無線装置2におけるRSSI値を利用して商品位置をさらに精度良く特定することもできる。具体的には、距離に応じた電波の減衰特性を利用し、各端末でのRSSI値に基づいてタグTと各無線装置2との距離を推定し、三角測量法によりタグTを測位する。
例えば
図12において、店舗サーバ3は、各無線装置2のRSSI値を取得した後、大きい順に3個のRSSI値(例えば、S
R1,S
R2,S
R5)と各RSSI値に対応する無線装置2の既知の位置情報とに基づいて、三角測量法によりタグTを測位することができる。また、店舗内の電波の伝播環境は一般に理想的な自由空間ではないため、4個以上の任意の数の無線装置2を単一のタグTの測位に利用することで、さらにタグTの測位精度を高めることもできる。
【0061】
店舗サーバ3は、在庫処理要求に、タグIDに対応するタグの位置情報(店舗内のXY座標の値)を含めるようにする。コンテンツ管理サーバ5は、在庫処理要求に含まれるタグの位置情報を基に、例えば
図13の棚配置データベースを参照して、該当するタグIDに対応する商品の商品位置として棚IDを特定し、コンテンツデータベースを更新する。
棚配置データベースの構成例を
図13に示す。
図13の棚配置データベースは、1つのレコードについて「店舗ID」、「棚ID」、「店舗内フロアの領域」の各フィールドの値を有し、店舗フロアの領域と店舗内の棚との対応関係を管理するためのデータベースである。棚配置データベースには、各店の棚IDによって特定される棚が占める店舗内フロアの領域が定義される。
図13では、例えば、店舗フロアの領域の4点のXY座標によって棚の矩形範囲が規定される。
【0062】
なお、例えば来店者や店員等によって商品がピックアップされている等、商品が動かされている場合には、当該商品を在庫有りと判断しないようにすることが好ましい。つまり、店舗内で動かされていない商品のみを在庫有りとして判断することが好ましい。商品が動かされている場合、例えば、来店者が当該商品を試着し、若しくは購入する可能性や、店員が商品の入れ替え作業等を行っている可能性がある。そのため、例えば店員が来店者に対して確実に購入可能な商品の在庫を案内するために、動かされていない商品を把握できると好都合である。
このような好ましい在庫管理について
図14のシーケンスチャートを参照して説明する。
【0063】
図14は、
図6のシーケンスチャートのステップS10以降の部分に代替する動作を示している。
タグIDの認証が成功すると店舗サーバ3は、受信したブロードキャストデータに含まれるセンサデータを参照し、タグが動かされたか否かに基づいて在庫フラグの値を決定する。在庫フラグの値が「1」であることは、対象となるタグに対応する商品が棚に配置され、動かされていない状態であることを意味する。具体的には、店舗サーバ3は,タグが動かされておらず、タグが動かされてから所定時間経過したという条件を満たした場合(ステップS60:NO、かつステップS64:YES)に限り、在庫フラグの値を「1」とする(ステップS66)。店舗サーバ3は、当該条件を満たさない場合には、在庫フラグの値を「0」とする(ステップS62)。
なお、タグが動かされてから所定時間経過したことを条件に含めているのは、所定時間が動かされていないことが確認できれば、いったん動かされた商品も棚に戻されて動かなくなったと判断できるためである。しかし、その限りではなく、ステップS60のみによって在庫フラグの値を決定してもよい。
【0064】
店舗サーバ3は、タグIDと在庫フラグを含む在庫処理要求をコンテンツ管理サーバ5に送信する(ステップS68)。コンテンツ管理サーバ5は、受信した在庫処理要求に含まれるタグIDおよび在庫フラグに基づいてコンテンツデータベースを更新する(ステップS70)。コンテンツデータベースの更新では、在庫処理要求に含まれる在庫フラグの値が「1」である場合、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」とする。逆に、在庫処理要求に含まれる在庫フラグの値が「0」である場合、在庫処理要求に含まれるタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とする。
コンテンツ管理サーバ5は、コンテンツデータベースの更新の実行の後、ステップS68の在庫処理要求に対応する在庫処理完了通知を店舗サーバ3に返す(ステップS72)。
【0065】
以上説明したようにして、本実施形態のコンテンツ配信システム1では、店舗内の各商品には、モーションセンサを含むIoTタグが取り付けられる。そして、各タグから送信されるパケットに含まれるセンサデータに基づいて、来店者が商品を手に取った場合等、店舗内の一以上の商品のうち所定の動きをした商品が存在するか否か判断される。所定の動きをした商品が存在する場合、コンテンツ管理サーバ5は、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に送信し、表示装置8でコンテンツが表示される。そのため、店舗内で来店者が興味を持った商品に対して適時に適切なコンテンツを提供可能である。
【0066】
(5)変形例
(5-1)変形例1
図5のシーケンスチャートにおいてステップS15では、コンテンツ管理サーバ5が、商品が所定の動きをしたか否か判断するが、この判断手法についての変形例について説明する。
本変形例では、商品が所定の動きをしたか否かについて、店舗内に配置される撮像装置を利用して判断する。撮像装置は、例えばデジタルビデオカメラであるが、デジタルスチルカメラでもよい。撮像装置は店舗サーバ3と通信可能であり、店舗内で撮像した画像を逐次、店舗サーバ3に送信する。店舗サーバ3は、撮像装置から受信した画像を解析して、商品が所定の動きをしたか否か判断する。画像解析では、例えば、商品が洋服であれば来店者が店舗内の商品をハンガーから取る動作や、商品の値札を確認する動作、あるいは、商品を店内の鏡の前で体に合わせる動作等、予め決められた動作パターンのいずれかに該当するか判断される。この判断では、例えば、人工知能を利用してもよい。
【0067】
店舗サーバ3は、商品が所定の動きをしたと判断した場合、コンテンツ管理サーバ5に通知する。コンテンツ管理サーバ5は、商品が所定の動きをしたと判断したことが店舗サーバ3から通知されたタイミング、あるいは当該タイミングの前後の所定期間内にタグモーション通知を受信した場合に、当該タグモーション通知に含まれるタグIDに対応する商品が所定の動きをしたと判断する。つまり、撮像装置によって得られる画像の解析では、何らかの商品が所定の動きをしたことは判断できるが、当該商品を特定することはできない。そのため、コンテンツ管理サーバ5は、画像解析に基づく通知とタグモーション通知のタイミングに基づいて、所定の動きをした商品を特定する。
本変形例のように、商品が所定の動きをしたか否かの判断の際に画像解析を利用することで、商品が所定の動きをしたかの判断の精度を向上させることができる。
タグモーション通知に基づくステップS15(
図5)による商品の所定の動きの有無の判断と、画像解析による当該商品の所定の動きの有無の判断とを組み合わせることで、所定の動きをしたかの判断の精度をさらに向上させることができる。例えば、ステップS15(
図5)によって商品の所定の動きがあると判断し、かつ画像解析によって当該商品の所定の動きがあると判断した場合に、当該商品が所定の動きをしたと判断してもよい。
【0068】
(5-2)変形例2
本変形例では、店舗内にコンテンツ管理サーバ5と通信可能な複数の表示装置8が配置される場合において、所定の動きをした商品に対応するコンテンツを、複数の表示装置8の中からいずれかの表示装置8に選択的に表示される。
図15に、複数の表示装置8-1~8-6が配置される例示的な店舗の平面図を示す。
図15の平面図は、
図10と同様の平面図であり、店舗内の領域R1~R6にそれぞれ表示装置8-1~8-6が配置されている。なお、以下の説明では、表示装置8-1~8-6に共通した事項について言及するときには「表示装置8」と表記する。
【0069】
特に大型の店舗の場合には、多くの来店者に対応するために複数の表示装置8を店舗内に配置することが好ましい。このように複数の表示装置8が店舗内に配置される場合、所定の動きをした商品から最も近い位置に存在する表示装置8に、当該商品に対応するコンテンツを表示させることが好ましい。所定の動きをした商品の位置から離れた位置にある表示装置8に当該商品に対応するコンテンツを表示したとしても、当該商品を手に取った来店者が表示装置8に表示されたコンテンツを見ない可能性があるためである。
【0070】
本変形例では、
図10に示したように、店舗内には、例えば領域R1~R6をカバーする無線装置2-1~2-6が配置される。
図5のステップS8では、各無線装置2は店舗サーバ3に対して、ブロードキャストデータとともに、自身の装置IDを店舗サーバ3に送信する。ステップS14で送信されるタグモーション通知には、タグIDと装置IDの組合せが含まれる。コンテンツ管理サーバ5は、ステップS16において、商品が所定の動きをしたと判断した場合、当該商品に対応するタグIDとタグモーション通知において組み合わせられた装置IDとに基づいて、表示装置8-1~8-6の中からいずれかの表示装置を特定する。コンテンツ管理サーバ5は、特定した表示装置に対してコンテンツを送信する。
本変形例では、無線装置2-1~2-6のいずれかの無線装置の装置IDと、当該無線装置の通信可能範囲内にあるタグのタグIDとが、タグモーション通知に含まれる情報として組み合わせられる。当該タグIDに対応するタグは、複数の表示装置8-1~8-6の中で、組み合わせられた装置IDに対応する無線装置と同じ領域内にある表示装置8と最も近い位置にある。したがって、所定の動きをした商品に対応するコンテンツは、複数の表示装置8-1~8-6のうち当該商品に最も近い表示装置8に送信されることになる。
例えば、
図15に示した例では、タグTが取り付けられた商品が所定の動きをしたと判断された場合、タグTのパケットを受信した無線装置2-2の装置IDに基づいて表示装置8-2が特定される。その結果、コンテンツ管理サーバ5は、表示装置8-1~8-6の中から表示装置8-2にのみコンテンツを送信する。したがって、大型の店舗においても来店者に対して適切なコンテンツを提供することができる。
なお、タグの位置のXY座標は、
図12を参照して説明したように、複数の無線装置2を用いてより正確に算出することができる。そこで、算出されたタグの位置(XY座標)と、店舗内の各表示装置8の位置(既知のXY座標)との距離を算出することで、タグに最も近い表示装置8、すなわち、当該タグが取り付けられた商品に最も近い表示装置8を特定することもできる。
【0071】
(5-3)変形例3
本変形例では、店舗エリア内の一以上の商品のうち、店舗エリア内の所定の領域内に位置し、かつ所定の動きをした商品が存在する場合に、当該記所定の動きをした商品に対応するコンテンツが表示装置8に表示される。この場合、店舗内には1つの表示装置8のみが配置されてもよいし、
図15に示したように複数の表示装置8が配置されてもよい。
ここで、「所定の領域」とは、例えば、効果的にサイネージを利用するために設定されることが好ましい。例えば、所定の領域は、表示装置8の周囲の一定の領域や、商品を確認するための鏡の周囲の一定の領域等である。
本変形例では、コンテンツ管理サーバ5は、商品が店舗内の所定の領域内に位置し、かつ所定の動きをした場合に、商品に対応するコンテンツを表示装置8に送信する。
【0072】
例えば、所定の動きをした商品が鏡の近くに位置する場合には、来店者が当該商品を体に合わせて鏡を見ており、当該商品に興味を持っていることが考えられる。その場合、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に表示することで、来店者に効果的に追加の情報を提供することができる。
また、所定の動きをした商品が表示装置8の近くに位置する場合には、当該商品を手に取った来店者が表示装置8に表示されるコンテンツを見る可能性が高くなるため、サイネージを効果的に活用できる。商品を手に取った来店者から離れた位置でコンテンツを表示した場合、来店者が当該コンテンツを見ない可能性がある。
なお、所定の動きをした商品の位置を特定することは、当該商品に取り付けられているタグの位置を特定することと同じである。例えば
図12を参照して説明したように、複数の無線装置2を利用してタグの位置を特定することができる。
【0073】
(5-4)変形例4
図5のシーケンスチャートのステップS15では、タグが動かされたことを検出した時間(検出時間)が所定時間以上である場合に、当該商品が所定の動きをしたと判断する例について説明したが、この検出時間に対する所定時間は、タグの店舗エリア内の位置に応じて異なる値に設定してもよい。例えば、所定の動きをした商品が店舗内のレジに位置する場合、当該商品は、レジでの精算手続きのために動かされていると考えられる。その場合には、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に表示する必要がない。そこで、商品が店舗内のレジに位置する場合には、当該商品が所定の動きをした場合であっても当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に表示せず、他の来店者のために表示装置8を活用することが好ましい。
そこで、商品が例えばレジ等の所定の範囲に位置する場合には、当該商品が所定の動きをしたか否かについての判断に使用する所定時間を、商品が他の範囲に位置する場合よりも長くすることが好ましい。なお、商品の位置を特定することは、例えば
図12を参照して説明したように、複数の無線装置2を利用したタグの位置の特定方法を利用することができる。
【0074】
(5-5)変形例5
本変形例は、来店者のスマートフォン等の携帯端末を利用する例である。
例えば、携帯端末を所持する来店者が商品を手に取った場合、当該商品に取り付けられているタグからのパケットは、来店者の携帯端末で受信してもよい。パケットを受信した来店者の携帯端末は、来店者のユーザIDを含むメッセージをコンテンツ管理サーバ5に送信する。それによって、所定の動きをした商品とユーザIDとをコンテンツ管理サーバ5において関連付けることができる。その場合、商品購入を促進するために、来店者の携帯端末に対して、ユーザIDに関連付けられた商品に関する情報を送信することができる。
また、コンテンツ管理サーバ5は、来店者の携帯端末でタグからのパケットを受信した場合に、表示装置8に対してコンテンツを送信するようにしてもよい。
【0075】
別の観点では、来店者の携帯端末が例えば加速度センサ等のモーションセンサを内蔵する場合には、携帯端末に内蔵されるセンサを活用して、商品が所定の動きをしたか否かについての情報を取得するようにしてもよい。例えば、来店者の携帯端末は、タグからのパケットを受信した場合、内蔵するセンサの検出値に基づいて、タグが取り付けられた商品が所定の動きをしたか否か判断する。次いで携帯端末は、タグからのパケットと、商品が所定の動きをしたか否かの判断結果とをコンテンツ管理サーバ5に送信する。このように、携帯端末に内蔵されるセンサを組み合わせることで、商品が所定の動きをしたか否かについての判断精度を向上させることができる。
【0076】
(5-6)変形例6
本変形例では、コンテンツ管理サーバ5は、店舗内で来店者が手に取った商品(つまり、所定の動きをした商品)に対応する商品コードと、来店者が手に取らなかった商品(つまり、所定の動きをしなかった商品)に対応する商品コードとを含む来店者動向データを記憶する。この来店者動向データは、
図5のステップS15の判断結果を、処理対象のタグIDに対応うる商品コードごとに整理したデータである。
また、本変形例では、コンテンツ管理サーバ5は、図示しないPOS(Point of Sale)システムと接続される。POSシステムは、店舗のレジでの精算結果、つまり、商品の販売内容を示すPOSデータが蓄積されたPOSデータベースを有する。図示しないが、POSデータベースは、1つのPOSデータに対応するレコードにおいて、例えば「販売時刻」、「商品コード」、「レジ番号」の各フィールドの値を格納する。
本変形例では、コンテンツ管理サーバ5は、来店者動向データと、POSデータベースとに基づいて、来店者が手に取ったものの購入しなかった商品と、来店者が手に取ってもいないし購入もしていない商品とを特定する。このように、来店者が商品を手に取ったか否かについての情報と、当該商品が購入された否かについての情報とを関連付け、取得した情報を統計的に処理することで、商品自体に問題があるのか、商品の陳列位置が悪いのかといった商品の配置に関する情報を分析することが可能となる。分析結果を店舗サーバに配信し、あるいは店舗の担当者に通知することで、商品の陳列位置の改善や、商品の販促についての検討を店舗の担当者が行うことも可能となる。
【0077】
(5-7)変形例7
上述した商品の所定の動きは、店舗エリア内の所定の場所に存在する商品が、当該所定の場所から所定距離以上離れた場所に移動する動きであってもよい。すなわち、商品が所定の動きをしたか否かの判断は、例えば、来店者が店舗内において所定の場所に存在する商品を当該所定の場所から所定距離以上離れた場所に移動させる動きであるか否かに基づいて行われてもよい。ここで、商品を所定距離以上離れた場所に移動させる動きは、例えば、棚にある商品を来店者が手に取るといった動作や、棚にある商品を来店者が店舗内の鏡(図示せず)の前まで運ぶ動作に対応する動きである。そのような所定の動きを商品がした場合には、来店者が当該商品に興味を持っていると考えられるため、当該商品に対応するコンテンツを表示装置8に表示させることが好ましい。
商品が移動した距離は、
図12を参照して説明したように、逐次、店舗内の各タグの位置を測位することで取得することができる。コンテンツ管理サーバ5は、各タグの測位結果を基に、各タグに対応する商品に対応する商品位置(
図4参照)から所定距離離れた場所に移動したことを検出することで、当該商品が所定の動きをしたと判断する。
【0078】
以上、コンテンツ配信システムおよびコンテンツ配信方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、実施形態で説明した技術的事項、各変形例で個別に説明した技術的事項は、適宜組み合わせることができる。
上述した実施形態において、IoTタグは、無線装置2、店員端末、および、来店者端末のうち少なくともいずれかから放射される電波を基に発電することが可能である。
【0079】
上述した実施形態において、複数の店舗に対してデジタルサイネージサービスを提供してもよい。
その場合、店舗サーバ3は、タグモーション通知をコンテンツ管理サーバ5に送信するときには、当該タグモーション通知に、タグIDとともに店舗IDを含めるようにする。そして、コンテンツ管理サーバ5は、タグモーション通知に含まれる店舗IDに対応する店舗の表示装置8にコンテンツを送信する。
【0080】
上述した実施形態では、コンテンツ管理サーバ5によって、店舗に対してクラウド型のデジタルサイネージサービスを提供する場合について説明したが、その限りではなく、オンプレミスで運用することも可能である。その場合、店舗サーバ3が、コンテンツ管理サーバ5の機能を有するように構成する。つまり、情報処理装置としての店舗サーバ3は、コンテンツデータベースを保持し、タグが動かされたと判断すると、当該タグのタグIDに対応するコンテンツを表示装置8に送信するように構成する。
【0081】
上述した実施形態では、コンテンツ管理サーバ5のコンテンツデータベースにおいて、コンテンツ自体を記憶する場合について説明したが、その限りではない。コンテンツデータベースでは、コンテンツを識別するコンテンツIDを記憶し、コンテンツ管理サーバ5は、コンテンツIDを表示装置8に送信してもよい。その場合、表示装置8は、コンテンツIDに対応付けてコンテンツ自体を記憶し、コンテンツ管理サーバ5から受信したコンテンツIDに対応するコンテンツを読み出して表示する。この場合において、コンテンツを記憶することとコンテンツIDを記憶することは、実質的に同義である。
【0082】
上述した実施形態では、
図5を参照してコンテンツ配信システム1の動作を説明したが、この限りではない。
図5に示す動作では、無線装置2が、タグから受信するパケットに含まれるPDUを復号する場合について示したが、その限りではない。無線装置2は、タグから受信したパケットに含まれるPDUを店舗サーバ3に送信し、店舗サーバ3においてPDUを復号してもよい。この場合、店舗サーバ3は、図示しないタグ管理サーバにおいて一定周期で更新される復号情報(例えば鍵)を取得し、PDUの復号を行う。
【0083】
コンテンツ配信システムの別の動作例を
図16に示す。
図16に示すコンテンツ配信システムでは、店舗サーバ3に代えてタグ管理サーバが含まれる。タグ管理サーバは、店舗等で流通する商品に取り付けられるタグを管理するためのサーバであり、タグIDの認証サーバとして機能してもよい。
図16に示すシーケンスチャートが
図5と異なるのは、以下の点である。すなわち、無線装置2は、タグからパケットを受信すると、パケットに含まれるPDUをタグ管理サーバに送信する(ステップS8b)。タグ管理サーバは、受信したPDUを復号し、PDUから抽出したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う(ステップS10)。さらに、タグ管理サーバは、タグが動かされたか否か判断し(ステップS12)、その判断結果に応じてタグモーション通知をコンテンツ管理サーバ5に送信する(ステップS14)。ステップS15以降の動作は、
図5と同じである。
【0084】
上述した実施形態において、無線装置2は、アクセス権限のあるIoTタグTからのパケットのみを受信できるようにしてもよい。店舗内には、来店者が所持しうる携帯端末や無線タグが、BLEのプロトコル等、無線装置2とIoTタグTとの間で行われている無線通信プロトコルと同じプロトコルでデータを送信し、当該データを無線装置2が受信する可能性がある。そこで、無線装置2が受信すべきパケットと、受信する必要がないデータとを区別するために、IoTタグTから送信されるパケットには、アクセス権限を示すデータ(アクセス権限データ)を含めるようにすることが好ましい。この場合、上述した実施形態において無線装置2は、パケットを受信する度に、受信したパケットに含まれるアクセス権限データを確認し、自身にアクセス権限がないパケットを破棄する。
【0085】
上述した実施形態において、コンテンツ管理サーバ5が店舗サーバ3の機能を有してもよく、その場合も店舗サーバ3は必要ない。逆に、店舗サーバ3がコンテンツ管理サーバ5の機能を有してもよい。
【0086】
上述した実施形態では、コンテンツ配信システムおよびコンテンツ配信方法をアパレル分野に適用した場合について説明したが、食品、医薬品、化粧品等の他の商品を扱う分野にも適用可能である。適用される分野に応じて、コンテンツデータベースに含まれる情報や形式は異なる場合がある。例えば、食品分野のコンテンツデータベースの各レコードには、商品コードに対応して消費期限(賞味期限)の値が含まれうる。医薬品分野のコンテンツデータベースの各レコードには、商品コードに対応して有効期限の値が含まれうる。また、医薬品分野において、所定数の医薬品を含む1つの梱包物に対してIoTタグを取り付ける場合には、コンテンツデータベースの各レコードには、梱包物内の医薬品の数量の値が含まれうる。
消費期限や有効期限等によって期限管理される商品を管理する場合には、コンテンツ管理サーバが定期的に消費期限や有効期限を監視し、期限が近付いた商品の商品コード、数量、商品位置を最新のコンテンツに反映させることが好ましい。
【符号の説明】
【0087】
1…コンテンツ配信システム
T…IoTタグ
11…制御部
111…メモリ
12…アンテナ
13…ハーベスティング部
131…エネルギーストレージ
14…電圧制御部
15…RFトランシーバ
16…センサ
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RFトランシーバ
24…通信部
3…店舗サーバ
31…制御部
32…ストレージ
33…通信部
5…コンテンツ管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
8…表示装置
81…制御部
82…ストレージ
83…表示部
84…通信部
NW…ネットワーク