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特許7385482ゲートドライバにおける低電力のサイクル・トゥー・サイクルビット転送
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-14
(45)【発行日】2023-11-22
(54)【発明の名称】ゲートドライバにおける低電力のサイクル・トゥー・サイクルビット転送
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20231115BHJP
【FI】
H02M1/08 301
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020009942
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2020120572
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】16/257,871
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516153409
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ オーストリア アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies Austria AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstr. 2, A-9500 Villach, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ グラッソ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ モリーニ
(72)【発明者】
【氏名】アメデオ パガニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ レスピーゴ
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208624(WO,A1)
【文献】特開2001-111401(JP,A)
【文献】特開2014-078859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0002060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートドライバであって、前記ゲートドライバは、
第1の電圧ドメイン内で動作するハイサイド領域と、
前記第1の電圧ドメインよりも低い第2の電圧ドメイン内で動作するローサイド領域と、
前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間に挿入され、前記第1の電圧ドメインを前記第2の電圧ドメインから分離するように構成された終端領域と、
前記ハイサイド領域内に配置され、ハイサイド電力トランジスタを駆動するように構成されたハイサイドゲートドライバと、
前記ローサイド領域内に配置され、ローサイド電力トランジスタを駆動するように構成されたローサイドゲートドライバと、
前記終端領域内に配置され、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で情報ビットを伝送するように構成された複数の終端ダイオードと、
を有し、
前記複数の終端ダイオードの各々は、前記ローサイド領域に結合されたアノードと、前記ハイサイド領域に結合されたカソードと、を含む、
ゲートドライバ。
【請求項2】
前記複数の終端ダイオードは、前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されているときに、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で情報ビットを伝送するように構成されており、
前記複数の終端ダイオードは、前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されていないときに、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間の前記情報ビットの伝送を阻止するように構成されている、
請求項1記載のゲートドライバ。
【請求項3】
前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとは、前記ローサイド電力トランジスタがターンオンされている間は整合されており、
前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとは、前記ハイサイド電力トランジスタがターンオンされている間は整合されていない、
請求項2記載のゲートドライバ。
【請求項4】
前記複数の終端ダイオードの第1の終端ダイオードペアは、前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ差動シグナリングを介して第1の情報ビットを伝送するように構成されており、
前記複数の終端ダイオードの第2の終端ダイオードペアは、前記ハイサイド領域から前記ローサイド領域へ差動シグナリングを介して第2の情報ビットを伝送するように構成されている、
請求項1記載のゲートドライバ。
【請求項5】
前記第1の情報ビットは、電流パルス情報を含み、前記ハイサイドゲートドライバは、前記第1の情報ビットを受信し、前記電流パルス情報に基づき前記ハイサイド電力トランジスタを駆動するために用いられる電流パルスの電流レベルをセットするように構成されている、
請求項4記載のゲートドライバ。
【請求項6】
前記第2の情報ビットは、前記ハイサイド電力トランジスタと前記ローサイド電力トランジスタとが結合されたインバータレッグに対応する診断情報を含む、
請求項4記載のゲートドライバ。
【請求項7】
前記診断情報は、前記インバータレッグにおける過電流状態を表す、
請求項6記載のゲートドライバ。
【請求項8】
前記ローサイド領域は、マイクロコントローラに結合されており、前記ローサイド領域は、前記マイクロコントローラから前記第1の情報ビットを受信し、前記第2の情報ビットを前記マイクロコントローラに伝送するように構成されている、
請求項4記載のゲートドライバ。
【請求項9】
前記ローサイド領域は、前記マイクロコントローラへの前記第2の情報ビットの伝送に応答して、前記マイクロコントローラから少なくとも1つの制御信号を受信するように構成されており、前記少なくとも1つの制御信号は、前記ハイサイドゲートドライバおよび前記ローサイドゲートドライバを制御するように構成されている、
請求項8記載のゲートドライバ。
【請求項10】
前記ゲートドライバは、さらに、
前記終端領域内に配置された第1の擾乱検出ダイオードと、
前記ハイサイド領域内に配置された第1のイベントセンサと、
前記終端領域内に配置された第2の擾乱検出ダイオードと、
前記ローサイド領域内に配置された第2のイベントセンサと、
を有し、
前記第1の擾乱検出ダイオードは、少なくとも1つの擾乱イベント中、前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ第1のイベント検出電流が流れるのを許可し、前記少なくとも1つの擾乱イベントが存在しないときは、前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ前記第1のイベント検出電流が流れるのを阻止するように構成されており、
前記第1のイベントセンサは、前記第1のイベント検出電流を検出し、前記第1のイベント検出電流の検出に応答して、前記複数の終端ダイオードのうち少なくとも1つの終端ダイオードを介して受信される前記ハイサイド領域への伝送を阻止するように構成されており、
前記第2の擾乱検出ダイオードは、前記少なくとも1つの擾乱イベント中、前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ第2のイベント検出電流が流れるのを許可し、前記少なくとも1つの擾乱イベントが存在しないときは、前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ前記第2のイベント検出電流が流れるのを阻止するように構成されており、
前記第2のイベントセンサは、前記第2のイベント検出電流を検出し、前記第2のイベント検出電流の検出に応答して、前記複数の終端ダイオードのうち少なくとも1つの別の終端ダイオードを介して受信される前記ローサイド領域への伝送を阻止するように構成されている、
請求項1記載のゲートドライバ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの擾乱イベントは、負のVsイベントおよび下降するdVs/dtイベントのうちの少なくとも一方を含み、Vsは、ハイサイドアース電圧である、
請求項10記載のゲートドライバ。
【請求項12】
前記ゲートドライバは、さらに、
前記ローサイド領域内に配置され、少なくとも1つのアップリンク情報ビットを伝送するように構成されたローサイド送信機と、
前記ハイサイド領域内に配置され、前記ローサイド送信機から前記少なくとも1つのアップリンク情報ビットを受信するように構成されたハイサイド受信機と、
前記ハイサイド領域内に配置され、少なくとも1つのダウンリンク情報ビットを伝送するように構成されたハイサイド送信機と、
前記ローサイド領域内に配置され、前記ハイサイド送信機から前記少なくとも1つのダウンリンク情報ビットを受信するように構成されたローサイド受信機と、
を有する、
請求項1記載のゲートドライバ。
【請求項13】
前記ハイサイド受信機は、前記少なくとも1つのアップリンク情報ビットの1つのアップリンク情報ビットを格納するように構成された第1のセット/リセット(SR)フリップフロップを含み、
前記ローサイド受信機は、前記少なくとも1つのダウンリンク情報ビットの1つのダウンリンク情報ビットを格納するように構成された第2のセット/リセット(SR)フリップフロップを含む、
請求項12記載のゲートドライバ。
【請求項14】
前記ハイサイド受信機は、2つのアップリンク信号を有する差動シグナリングを介して、前記アップリンク情報ビットを受信し、前記2つのアップリンク信号が互いに相補的な値であるという状態では、前記アップリンク情報ビットを前記第1のSRフリップフロップに格納し、前記2つのアップリンク信号が互いに相補的な値ではないという状態では、前記アップリンク情報ビットを無視するように構成されており、
前記ローサイド受信機は、2つのダウンリンク信号を有する差動シグナリングを介して、前記ダウンリンク情報ビットを受信し、前記2つのダウンリンク信号が互いに相補的な値であるという状態では、前記ダウンリンク情報ビットを前記第2のSRフリップフロップに格納し、前記2つのダウンリンク信号が互いに相補的な値ではないという状態では、前記ダウンリンク情報ビットを無視するように構成されている、
請求項13記載のゲートドライバ。
【請求項15】
前記ハイサイド受信機は、第1のイベントセンサを含み、前記第1のイベントセンサは、少なくとも1つの擾乱イベントを検出し、前記少なくとも1つの擾乱イベントの検出に応答して、前記第1のSRフリップフロップにおける前記アップリンク情報ビットの格納を阻止するように構成されており、
前記ローサイド受信機は、第2のイベントセンサを含み、前記第2のイベントセンサは、前記少なくとも1つの擾乱イベントを検出し、前記少なくとも1つの擾乱イベントの検出に応答して、前記第2のSRフリップフロップにおける前記ダウンリンク情報ビットの格納を阻止するように構成されている、
請求項13記載のゲートドライバ。
【請求項16】
前記ハイサイド受信機は、第1のイベントセンサを含み、前記第1のイベントセンサは、少なくとも1つの擾乱イベントを検出し、前記少なくとも1つの擾乱イベントの検出に応答して、前記複数の終端ダイオードのうち少なくとも1つの終端ダイオードを介して受信される前記ハイサイド領域への伝送を阻止するように構成されており、
前記ローサイド受信機は、第2のイベントセンサを含み、前記第2のイベントセンサは、前記少なくとも1つの擾乱イベントを検出し、前記少なくとも1つの擾乱イベントの検出に応答して、前記複数の終端ダイオードのうち少なくとも1つの別の終端ダイオードを介して受信される前記ローサイド領域への伝送を阻止するように構成されている、
請求項12記載のゲートドライバ。
【請求項17】
ゲートドライバのハイサイド領域とローサイド領域との間の終端領域を介して、情報ビットを伝送する方法であって、前記方法は、
第1の電圧ドメイン内で前記ハイサイド領域を動作させるステップと、
前記第1の電圧ドメインよりも低い第2の電圧ドメイン内で前記ローサイド領域を動作させるステップと、
前記終端領域内に配置された複数の終端ダイオードを介して、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で前記情報ビットを伝送するステップと、
を有し、
前記複数の終端ダイオードの各々は、前記ローサイド領域に結合されたアノードと、前記ハイサイド領域に結合されたカソードと、を含む、
方法。
【請求項18】
前記方法は、さらに、
前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されている状態では、複数の終端ダイオードを介して前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で情報ビットを伝送するステップと、
前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されていない状態では、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で前記情報ビットの伝送を阻止するステップと、
を有する、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、さらに、
前記複数の終端ダイオードのうち第1の終端ダイオードペアを用い、差動シグナリングを介して前記ローサイド領域から前記ハイサイド領域へ第1の情報ビットを伝送するステップと、
前記複数の終端ダイオードのうち第2の終端ダイオードペアを用い、差動シグナリングを介して前記ハイサイド領域から前記ローサイド領域へ第2の情報ビットを伝送するステップと、
を有する、
請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、さらに、
少なくとも1つの擾乱イベントを検出するステップと、
前記少なくとも1つの擾乱イベントの検出に応答して、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で前記情報ビットの伝送を阻止するステップと、
を有する、
請求項17記載の方法。
【請求項21】
集積回路であって、前記集積回路は、
第1の電圧ドメイン内で動作するハイサイド領域と、
前記第1の電圧ドメインよりも低い第2の電圧ドメイン内で動作するローサイド領域と、
前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間に挿入され、前記第1の電圧ドメインを前記第2の電圧ドメインから分離するように構成された終端領域と、
前記ハイサイド領域内に配置されたハイサイド回路と、
前記ローサイド領域内に配置されたローサイド回路と、
前記終端領域内に配置され、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で情報ビットを伝送するように構成された複数の終端ダイオードと、
を有し、
前記複数の終端ダイオードの各々は、前記ローサイド領域に結合されたアノードと、前記ハイサイド領域に結合されたカソードと、を含む、
集積回路。
【請求項22】
前記複数の終端ダイオードは、前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されているときに、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間で情報ビットを伝送するように構成されており、
前記複数の終端ダイオードは、前記第1の電圧ドメインと前記第2の電圧ドメインとが整合されていないときに、前記ハイサイド領域と前記ローサイド領域との間の前記情報ビットの伝送を阻止するように構成されている、
請求項21記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的には、ゲートドライバにおけるビット転送に関し、より具体的には、高電圧ゲートドライバにおける低電力のサイクル・トゥー・サイクルビット転送、およびこのビット転送を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノリシック高電圧(HV)ゲートドライバの場合、ゲートドライバは、ローサイドトランジスタスイッチを駆動するために使用される低電圧(LV)ゲートドライバと、ハイサイドトランジスタスイッチを駆動するために使用される高電圧(HV)ゲートドライバと、を含むことができる。かかる構成の場合、LVゲートドライバとHVゲートドライバとの間において非同期のディジタルデータを伝送するのが有用となり得る。レベルシフタトランジスタは、かかる伝送を実施することができるけれども、広いシリコン領域を必要とし、電力を消費する。
【0003】
したがって、シリコン領域をいっそう僅かにしか必要とせず、電力損失がいっそう僅かな、LVゲートドライバとHVゲートドライバとの間においてデータを伝送可能な改善されたシステムが望まれると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態によれば、以下のようなゲートドライバが提供される。すなわちこのゲートドライバは、第1の電圧ドメイン内で動作するハイサイド領域と、第1の電圧ドメインよりも低い第2の電圧ドメイン内で動作するローサイド領域と、ハイサイド領域とローサイド領域との間に挿入され、第1の電圧ドメインを第2の電圧ドメインから分離するように構成された終端領域と、ハイサイド領域内に配置され、ハイサイド電力トランジスタを駆動するように構成されたハイサイドゲートドライバと、ローサイド領域内に配置され、ローサイド電力トランジスタを駆動するように構成されたローサイドゲートドライバと、終端領域内に配置され、ハイサイド領域とローサイド領域との間で情報ビットを伝送するように構成された複数の終端ダイオードと、を含み、これら複数の終端ダイオードの各々は、ローサイド領域に結合されたアノードと、ハイサイド領域に結合されたカソードと、を含む。
【0005】
実施形態によればさらに、ゲートドライバのハイサイド領域とローサイド領域との間の終端領域を介して情報ビットを伝送する方法が提供される。この方法は、第1の電圧ドメイン内でハイサイド領域を動作させること、第1の電圧ドメインよりも低い第2の電圧ドメイン内でローサイド領域を動作させること、および終端領域内に配置された複数の終端ダイオードを介して、ハイサイド領域とローサイド領域との間で情報ビットを伝送することを含み、これら複数の終端ダイオードの各々は、ローサイド領域に結合されたアノードと、ハイサイド領域に結合されたカソードと、を含む。
ここで添付の図面を参照しながら実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】1つまたは複数の実施形態による電力半導体デバイスのモータ制御アクチュエータを図解した概略的なブロック図である。
図1B】1つまたは複数の実施形態によるシングルシャント電流センシングを用いる電力インバータを図解した概略図である。
図2】1つまたは複数の実施形態によるインバータ制御ユニットの概略的なブロック図である。
図3A】1つまたは複数の実施形態によるハイサイド領域とローサイド領域との間の伝送インタフェース回路を示す概略的なブロック図である。
図3B】1つまたは複数の実施形態によるハイサイド領域とローサイド領域との間の伝送インタフェース回路を示す概略的なブロック図である。
図4A】1つまたは複数の実施形態によるハイサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。
図4B図4Aに図解したハイサイド受信機回路に対応する真理値表を示す図である。
図4C】Bitxが1である場合の、図4Aに図解したハイサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。
図4D】Bitxが0である場合の、図4Aに図解したハイサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。
図5A】差動入力信号が1に等しいケースでの、1つまたは複数の実施形態によるローサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。
図5B】差動入力信号が0に等しいケースでの、1つまたは複数の実施形態によるローサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。
図6A】1つまたは複数の実施形態によるハイサイドイベントセンサを示す概略的な回路図である。
図6B】1つまたは複数の実施形態によるローサイドイベントセンサを示す概略的な回路図である。
図6C】1つまたは複数の実施形態による、差動電圧イベントまたは差動電圧フェーズが発生している期間の時間にわたり電圧Vsをプロットしたグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下では、例示的な実施形態をいっそう綿密に説明するために細部について述べる。ただし当業者に自明のとおり、実施形態をそれらの固有の細部がなくても実施することができる。その他の例において、実施形態を不明確にしないようにする目的で、周知の構造およびデバイスはブロック図の形式で示されており、または詳細図ではなく概略図として示されている。これに加え、特段の記載がない限り、以下で説明する様々な実施形態の特徴を互いに組み合わせることができる。
【0008】
さらに以下の説明中、同じまたは同様の部材、あるいは同じまたは同様の機能を有する部材には、同じまたは同様の参照符号が付されている。図中、同一の部材または機能的に同じ部材には同じ参照符号が付されているので、同一の参照符号が付された部材については、繰り返して説明しない場合もある。よって、同一または同様の参照符号を有する部材についてなされる説明は、相互に交換可能である。
【0009】
これに関連して、「頂部」、「低部」、「下方」、「前方」、「後方」、「背面」、「先頭」、「終端」、「下方」、「上方」など、方向を表す用語は、説明中の図面の向きを基準にして用いられている可能性がある。実施形態の各部分を多数の様々な向きでポジショニングできるので、方向を示す用語は例示目的で用いられており、決して限定しているわけではない。ここで理解されたいのは、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いてもよく、構造的または論理的な変更を行うことができる、ということである。よって、以下で詳述する説明を、限定という意味合いで捉えるべきではない。
【0010】
自明のとおり、ある部材が他の部材と「接続されている」または「結合されている」として言及されたならば、その部材は他の部材とじかに接続または結合されている可能性があるし、または介在する部材が存在するかもしれない。これとは対照的に、ある部材が他の部材と「じかに接続されている」または「じかに結合されている」として言及されたならば、介在する部材は存在しない。複数の部材同士の関係を表すために用いられる他の言葉も、同様に解釈されたい(例えば「の間に」と「の間にじかに」、「隣り合って」と「じかに隣り合って」など)。
【0011】
本明細書で説明する実施形態または図面に示されている実施形態において、任意の直接的な電気的接続または電気的結合を、すなわち付加的な介在部材のない任意の接続または結合を、直接的な接続または結合すなわち1つまたは複数の付加的な介在部材のない接続または結合によって実装してもよいし、あるいは例えばある特定の種類の信号を伝送するための、またはある特定の種類の情報を伝送するための、接続または結合の一般的な目標が実質的に維持される限りは、その逆も可能である。様々な実施形態による特徴を組み合わせて、さらなる実施形態を形成することができる。例えば、複数の実施形態のうちの1つに関して説明する変更または修正を、相反することが記載されていない限り、他の実施形態に適用することもできる。
【0012】
本明細書では(例えば5%以内の)僅かな製造公差を考慮するために、用語「実質的に」が使われている場合があり、このような公差は、本明細書で説明する実施形態の観点から逸脱することなく、産業において許容可能であると思われる。
【0013】
センサは、測定すべき物理量を電気信号例えば電流信号または電圧信号に変換する構成部品のことを指すことができる。物理量を例えば、シングルシャント抵抗システム内のシャント抵抗における電流または電圧とすることができる。
【0014】
信号処理回路および/または信号コンディショニング回路は、1つまたは複数の信号を1つまたは複数の構成部品から受信することができ、そこにおいて信号コンディショニングまたは処理を実施することができる。本明細書で用いられる信号コンディショニングとは、信号がさらなる処理のための次の段階の要求を満たすように、信号を操作することである。信号コンディショニングは、(例えばアナログ/ディジタル変換器を介した)アナログからディジタルへの変換、増幅、フィルタリング、変換、バイアス印加、レンジマッチング、アイソレーション、およびコンディショニング後の処理に適した信号にするために必要とされる他の任意のプロセスを含むことができる。
【0015】
したがって信号処理回路は、1つまたは複数のセンサ素子からのアナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器(ADC)を含むことができる。信号処理回路は、ディジタル信号において何らかの処理を実施するディジタル信号プロセッサ(DSP)を含むこともできる。
【0016】
電気エネルギーの変換および電気モータまたは電気機械の駆動など、自動車、民生用途および工業用途における最近のデバイスの多くの機能は、電力半導体デバイスに依拠している。いくつかの例を挙げると、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)およびダイオードは、以下に限られるものではないが、電源および電力変換器におけるスイッチを含む様々な用途のために用いられてきた。
【0017】
電力半導体デバイスは通常、デバイスの2つの負荷端子構造間の負荷電流経路に沿って負荷電流を導くように構成された半導体構造を有する。さらに負荷電流経路を、ときにはゲート電極とも呼ばれる制御電極によって制御することができる。例えば、一例としてドライバユニットからの相応の制御信号の受信に応答して、制御電極は電力半導体デバイスを、導通状態と阻止状態とのうちの一方にセットすることができる。制御信号を、制御された値を有する電圧信号または電流信号とすることができる。
【0018】
電力トランジスタは、負荷電流を駆動するために使用することのできる電力半導体デバイスである。例えばIGBTは、そのゲート端子をアクティベートおよびディアクティベートすることによって、「オン」または「オフ」に移行させられる。ゲートおよびエミッタを介して正の入力電圧信号を印加すると、デバイスはその「オン」状態を維持することになり、他方、入力ゲート信号をゼロまたは僅かに負にすると、デバイスは「オフ」に移行させられることになる。電力トランジスタをオンおよびオフに切り替えるために、ターンオンプロセスとターンオフプロセスとが存在する。ターンオンプロセス中、デバイスをターンオンするのに十分な電圧までゲートを充電する目的で、ゲートドライバ集積回路(IC)を使用して、ゲート電流(すなわちオン電流)を、電力半導体のゲートに供給することができる(ソース)。これとは対照的にターンオフプロセス中、デバイスをターンオフするのに十分なようにゲートを放電させる目的で、ゲートドライバICを使用して、電力トランジスタのゲートからゲート電流(すなわちオフ電流)が抜き取られる(シンク)。パルス幅変調(PWM)の体系によれば、ゲートドライバICから制御信号として電流パルスを出力させることができる。したがって制御信号を、電力トランジスタを制御するためのPWMサイクル中、オン電流レベルとオフ電流レベルとの間で切り替えることができる。このことによって他方、電力トランジスタをそれぞれターンオンおよびターンオフするために、ゲート電圧が充電および放電される。
【0019】
特に、電力トランジスタのゲートは容量性負荷であり、ターンオン電流(すなわちゲートソース電流)およびターンオフ電流(すなわちゲートシンク電流)は、切り替えイベントが開始されるときの初期電流として規定される。ターンオフイベント中、(PWM周期に比べて短い)いくらかの短い時間が経過した後、ゲート電流が減少し、ゲートが0Vに達したときにゼロ値に達する。ターンオンイベント中、(PWM周期に比べて短い)いくらかの短い時間が経過した後、ゲート電流が減少し、ゲートが15Vに達したときにゼロ値に達する。本明細書で提供される実施形態によれば、ターンオン電流およびターンオフ電流の電流値を、HVゲートドライバおよびLVゲートドライバの両方についてプログラミングすることができる。例えば3ビットのコンフィギュレーション信号を用いて、ターンオン電流およびターンオフ電流の値を選定することができ、それらは3ビットの体系のもとで8つの可能なコンフィギュレーションから選定される。コンフィギュレーション信号に使用されるビット数を変更することによって、これよりも多いまたはこれよりも少ないコンフィギュレーションが可能となる。
【0020】
トランジスタは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)および金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)(例えばSiMOSFETまたはSiCMOSFET)を含むことができる。以下の実施形態ではIGBTが一例として用いられるが、自明のとおり、MOSFETをIGBTの代わりに用いることができるし、その逆もあり得る。このコンテキストにおいて、本明細書で説明する実施例のいずれか1つにおいて、IGBTの代わりにMOSFETを用いるならば、MOSFETのドレインをIGBTのコレクタの代わりに用いることができ、MOSFETのソースをIGBTのエミッタの代わりに用いることができ、さらにMOSFETのドレイン-ソース電圧VDSをIGBTのコレクタ-エミッタ電圧VCEの代わりに用いることができる。よって、任意のIGBTモジュールをMOSFETモジュールの代わりに用いることができ、その逆も可能である。
【0021】
本明細書で説明する特定の実施形態は、以下に限られるものではないが、電力変換器または電源において使用可能な電力半導体デバイスに関係する。したがって1つの実施形態によれば、電力半導体デバイスを、負荷に給電すべき負荷電流および/または個々に電源により供給される負荷電流を搬送するように、電力半導体デバイスを構成することができる。例えば半導体デバイスは、モノリシックに集積されたダイオードセルおよび/またはモノリシックに集積されたトランジスタセルなど、1つまたは複数の電力半導体セルを有することができる。かかるダイオードセルおよび/またはかかるトランジスタセルを、電力半導体モジュールに組み込むことができる。
【0022】
パワーエレクトロニクス分野においては一般に、ハーフブリッジを形成するよう適切に接続された複数のトランジスタを含む電力半導体デバイスが使用される。例えば、電動モータまたはスイッチングモード電源を駆動するために、ハーフブリッジを使用することができる。
【0023】
例えば多相インバータは、多相負荷(例えば三相モータ)に給電することによって多相電力を供給するように構成されている。例えば三相電力は、互いに120°の電気角だけ位相がずらされた3つの対称の正弦波を必要とする。対称な三相電源システムの場合、3つの導体各々が、同じ周波数および共通の基準に対し相対的に同じ電圧振幅であるが周期の3分の1の位相差を伴う交流(AC)を搬送する。この位相差ゆえに、いずれの導体における電圧も、他の導体のうち1つの導体よりも3分の1周期後かつ残りの導体よりも3分の1周期前でそのピークに達する。この位相遅延によって、平衡線形負荷に対し一定の電力の搬送がもたらされる。これによって、電動モータに回転磁界を供給することもできる。
【0024】
平衡線形負荷への給電を行う三相システムの場合、三相導体の瞬時電流の和はゼロである。換言すれば、各導体における電流の大きさは、他の2つの導体における、ただし極性が逆の電流の和に等しい。いずれかの相導体における電流の戻り経路は、他の2つの相導体である。瞬時電流により結果として電流空間ベクトルが得られる。
【0025】
三相インバータは、3つのインバータレッグすなわち三相各々に1つのレッグを含み、各インバータレッグは、互いに並列に直流(DC)電圧源に接続されている。各インバータレッグは1つのトランジスタペアを含み、例えばこれはDC/AC変換用のハーフブリッジコンフィギュレーション内に配置されている。換言すれば、各インバータレッグは、直列接続された2つの相補的なトランジスタ(すなわちハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタ)を含み、これらは1つの相負荷を駆動するために互いに相補的にオンおよびオフに切り替わる。ただし多相インバータは三相インバータに限られるものではなく、相ごとに1つのインバータレッグを伴って、二相または三相よりも多くの相を含むことができる。
【0026】
図1Aは、1つまたは複数の実施形態による電力半導体デバイスのモータ制御アクチュエータ100を図解した概略的なブロック図である。詳しくは、モータ制御アクチュエータ100は、電力インバータ1およびインバータ制御ユニット2を含む。インバータ制御ユニット2はモータ制御ユニットとして振る舞い、したがってモータコントローラまたはモータ制御ICと称することもできる。モータ制御ユニットをモノリシックICとすることができ、または2つまたはそれよりも多くのICにおいてマイクロコントローラとゲートドライバとに分割することもできる。
【0027】
モータ制御アクチュエータ100はさらに、三相U、VおよびWを含む三相モータMに結合されている。電力インバータ1は三相電流発生器であり、これはモータMを駆動するために三相電流を給電することによって三相電力を供給するように構成されている。さらに自明のとおり、電力インバータ1およびインバータ制御ユニット2を同じ回路基板上に、または別個の回路基板上に、配置することができる。
【0028】
大きさおよび位相の両方に偏差があると、モータMにおいてパワーおよびトルクの損失を引き起こす可能性がある。したがってモータ制御アクチュエータ100を、モータMに給電される電流の大きさおよび位相をリアルタイムに監視および制御し、フィードバック制御ループに基づき適切な電流バランスが維持されるのを保証するように、構成することができる。開ループのモータ制御ユニットも存在し、それを実装してもよい。
【0029】
電力インバータ1は、相補的なペアとして配置された6つのトランジスタモジュール3u、3u、3v、3v、3wおよび3w(ひとまとめにしてトランジスタモジュール3と称する)から成るスイッチングアレイを含む。相補的なペア各々は、三相モータMに位相電流を給電する1つのインバータレッグを構成している。したがって各インバータレッグは、上方の(ハイサイド)トランジスタモジュール3および下方の(ローサイド)トランジスタモジュール3を含む。各トランジスタモジュールは1つのトランジスタを含むことができ、1つのダイオード(図示せず)を含むこともできる。したがって各インバータレッグは、1つの上方のトランジスタおよび1つの下方のトランジスタを含む。負荷電流経路U、VおよびWは、相補的なトランジスタの間に配置された各インバータレッグの出力側(すなわち各ハーフブリッジの出力側)から延びており、モータMなどの負荷に結合されるように構成されている。電力インバータ1は、DC電源4(例えばバッテリまたはダイオードブリッジ整流器)およびインバータ制御ユニット2に結合されている。
【0030】
この実施例によれば、インバータ制御ユニット2は、スイッチングアレイを制御するためにモータ制御回路およびゲートドライバ回路を含む。一部の実施例によれば、インバータ制御ユニット2をモノリシックとすることができ、その場合にモータ制御回路およびゲートドライバ回路は、単一のダイに集積されている。他の実施例によれば、モータ制御回路およびゲートドライバ回路を、別個のICとして分割することができる。「モノリシック」ゲートドライバは、単一のシリコンチップ上のゲートドライバであり、さらに特定のHV技術によって形成することができる。さらにゲートドライバICを、電力インバータ1に集積してもよい。
【0031】
モータコントローラICは、モータ制御アクチュエータ100のモータ制御機能をリアルタイムで実施する。モータ制御機能は、永久磁石モータまたは誘導モータを制御することを含み、ロータポジションセンシングを必要としないセンサレス制御として、ホールセンサおよび/またはエンコーダデバイスを用いたセンサベースの制御として、あるいは(例えば比較的低い回転速度で用いられる)センサベースの制御と(例えば比較的高い回転速度で用いられる)センサレス制御との組み合わせとして、構成することができる。
【0032】
例えばインバータ制御ユニット2は、コントローラおよびドライバユニット5を含み、ドライバユニット5は、モータコントローラICとしてマイクロコントローラユニット(MCU)、および各トランジスタモジュール3のトランジスタを制御するためのドライバ信号を生成するゲートドライバICを含む。したがって負荷電流経路U、VおよびWを、トランジスタ3の制御電極(すなわちゲート電極)を制御することで、コントローラおよびドライバユニット5によって制御することができる。例えば、マイクロコンローラから制御信号を受信すると、ゲートドライバICは対応するトランジスタを、導通状態(すなわちオン状態)または阻止状態(すなわちオフ状態)のうちの一方にセットすることができる。
【0033】
ゲートドライバICが、電力トランジスタ制御信号を含む命令をマイクロコントローラから受信し、受信した命令および制御信号に従い、個々のトランジスタ3をターンオンまたはターンオフするように、ゲートドライバICを構成することができる。例えば、個々のトランジスタ3のターンオンプロセス中、ゲートを充電する目的で、ゲートドライバICを使用して、個々のトランジスタ3のゲートにゲート電流を供給することができる(ソース)。これとは対照的にターンオフプロセス中、ゲートを放電させる目的で、ゲートドライバICを使用して、トランジスタ3のゲートからゲート電流を抜き取ることができる(シンク)。
【0034】
インバータ制御ユニット2またはコントローラおよびドライバユニット5自体は、PWMコントローラ、ADC、DSP、および/またはクロック源(すなわちタイマまたはカウンタ)を含むことができ、これらは各トランジスタの状態、ひいては個々の負荷電流経路U、VおよびWにおいて供給される各相電流、を制御するためにPWM体系の実装において使用される。
【0035】
詳しくは、コントローラおよびドライバユニット5のマイクロコントローラは、磁界方向制御(FOC)アルゴリズムなどのモータ制御アルゴリズムを使用して、多相モータなどの多相負荷に出力される各相電流について、リアルタイムで電流制御を提供することができる。FOC制御に加えて速度制御ループを追加することによって、モータ速度をさらに制御することができる。したがってFOCを内側の制御ループとみなすことができ、速度制御ループを外側の制御ループとみなすことができる。一部のケースにおいてモータポジションを、速度制御ループの外側の第3の制御ループ(例えばポジション制御ループ)を用いて制御することができる。
【0036】
正確なロータポジションをリアルタイムで求めることができるように、例えばFOC中にモータ相電流を測定するのが望ましい。モータ相電流の特定を実装するために、MCU5は、シングルシャント電流センシングを使用するアルゴリズム(例えば空間ベクトル変調(SVM)、空間ベクトルパルス幅変調(SVPWM)とも称する)を採用することができる。
【0037】
さらに、同じインバータレッグにおける両方のスイッチがいかなる時点でもターンオンされないように、電力インバータ1のスイッチ3(すなわちトランジスタ)が制御され、さもないとDC電源が短絡してしまう。モータ制御アルゴリズムに従い、1つのインバータレッグ内の複数のスイッチ3を相補的に動作させることによって、この要求を満たすことができる。
【0038】
図1Bは、1つまたは複数の実施形態によるシングルシャント電流センシングを用いる電力インバータ1を図解した概略図である。詳しくは、電力インバータ1は、電力インバータ1の負のDCリンクに配置されたシャント抵抗Rsを含む。トランジスタ3u、3u、3v、3v、3wおよび3wは、スイッチとして表されており、モータMは、その相各々のための巻線と共に示されている。図1AにおけるMCU5は、シャント抵抗Rsから取り出された電流のサンプルを受け取ることができ、次いでアルゴリズム(すなわちソフトウェア)を用いて、三相電流をリアルタイムに再構築することができる。
【0039】
例えば、SVPWMは、3つのモータ相電流のセンシングを必要とするベクトル制御ベースのアルゴリズムである。シングルシャント抵抗Rsを用いることによって、DCリンク電流パルスが、正確にタイミングのとられたインターバルでサンプリングされる。シャント抵抗Rsにおける電圧降下を、インバータ制御ユニット2内部の演算増幅器によって増幅することができ、例えば1.65Vだけ上方にシフトさせることができる。結果として得られた電圧を、インバータ制御ユニット2内部のADCによって変換することができる。スイッチの目下の組み合わせに基づき、SVPWMアルゴリズムを用いてモータMの三相電流が再構築される。ADCは、PWMサイクルのアクティブなベクトル中、DCリンク電流を測定することができる。各セクタにおいて、2つの相電流測定値を得ることができる。3つの巻線電流の和はゼロになるので、3つめの相電流値を計算することができる。
【0040】
SVPWM自体は、PWMをリアルタイムで制御するためのアルゴリズムである。これはAC波形の生成に用いられ、複数のスイッチングトランジスタを用いてDC源により、三相ACにより給電されるモータを可変の速度で駆動するために用いることができる。本明細書における実施例を三相モータのコンテキストで説明するが、実施例がこれに限られるものではなく、任意の負荷体系に適用することができる。
【0041】
これに加え、自明のとおり、シングルシャント抵抗以外の他の実装形態を電流センシングのために用いることができ、また、他のモータ制御アルゴリズムを用いて負荷を制御することができ、本明細書で説明する実施形態はそれらに限られるものではない。
【0042】
図2は、1つまたは複数の実施形態によるインバータ制御ユニット200の概略的なブロック図である。インバータ制御ユニット200は、1つまたは複数のインバータレッグに設けられた電力トランジスタの導通状態を制御するように構成されており、ここでは例示的にインバータレッグ1aが示されている。インバータレッグ1aの電力トランジスタは、ハイサイドトランジスタ3Hおよびローサイドトランジスタ3Lを含み、これらは相補的なトランジスタのペアに対応する。したがってハイサイドトランジスタ3Hおよびローサイドトランジスタ3Lは、図1Aおよび図1Bに示した相補的なトランジスタのペアのうちの1つを表すものとすることができる。
【0043】
インバータ制御ユニット200は、ゲートドライバ5aおよびマイクロコントローラ5bを含み、この場合、マイクロコントローラ5bはゲートドライバ5aに電気的に結合され、両者間で情報および制御信号を伝送し、ゲートドライバ5aはインバータレッグ1aに電気的に結合され、両者間で情報および制御信号を伝送する。
【0044】
特に、ゲートドライバ5aはモノリシックゲートドライバであり、これは3つの領域すなわち、HVゲートドライバ11を含むハイサイド領域10、LVゲートドライバ21を含むローサイド領域20およびビット転送ダイオード31を含む終端領域30を含む。3つの領域10、20および30は、単一の集積回路にモノリシックに構築されている。ゲートドライバ5aを製造するために用いられる技術は、単一のシリコンダイに3つの領域すべてを構築することができ、単一のICゲートドライバを構築することができる。換言すれば、ゲートドライバ5aは、ハイサイド10およびローサイド20の双方を含む単一のチップである。ハイサイド10とローサイド20との間に終端領域30があり、この領域の主要な目的は、領域10と20とを電気的に分離することである。この特有の技術(および他の高電圧技術における)終端領域30は、ブートストラップキャパシタ7を充電するために通常はブートストラップダイオード9として用いられる大きいダイオードを含む。
【0045】
インバータ制御ユニット200はさらに、ハイサイド電源電圧Vb(すなわちハイサイド領域10の電源)、ハイサイドアース電圧Vs(すなわちハイサイド領域10のアース)、ローサイド電源電圧Vcc(すなわちローサイド領域20の電源)、ローサイドアース電圧Vss(すなわちローサイド領域20のアース)、ブートストラップキャパシタ7および終端領域30に配置されたブートストラップダイオード9を含む。典型的には、VbはVs+Vccに等しく、Vccはこの実施例では15Vである(すなわちVb-Vs=15V)。つまり通常動作中、ブートストラップキャパシタ7がハイサイドに給電することから、VbはVsよりも15V高い。DC+は正の電源レールであり、これは典型的には200~1200Vの範囲にあり、ただしこれに限られるものではない。これに加え、ローサイドスイッチ3Lがオン(かつ3Hがオフ)のとき、VsはDC-と等しい(例えばVssまたは0V)。DC-は負の電源レールであり、図示されているようにVssに短絡させることができるけれども、必ずしもそのようにしなくてもよい。このケースではVbは15V付近にあり、ブートストラップキャパシタ7はブートストラップダイオード9を介してVccにより充電されている。そうではなく、ハイサイドスイッチ3Hがオン(かつ3Lがオフ)のとき、VsはDC+に等しく、このケースではVbはDC+よりも15Vだけ高く、ブートストラップキャパシタ7はゆっくりと放電していき、ブートストラップダイオード9はオフになる。
【0046】
上述の電圧は、ハイサイド領域10がローサイド領域20よりも高い電圧または電力ドメインで動作させられるようにセットされる。例えばローサイドの(外部の)電源電圧Vccを15Vにセットすることができ、ハイサイドの電源電圧Vbを、DC+が1200Vであるならば、1215Vの最大電圧で動作させることができる。これに加え、電圧Vddは、公称(ドレイン)電源電圧のことを指し、これは内部で生成され調整された電圧である(例えば5.5V)。電圧Vddは、すべてのロジックゲートのための基準電圧として用いられる。
【0047】
ハイサイド領域10は、電力トランジスタ3Hを駆動するように構成されたHVゲートドライバ11を含む。これに加え、ハイサイド領域10は、ローサイド領域20からアップリンク伝送方向で情報ビットを受信するように構成されたハイサイド受信機12、ローサイド領域20へダウンリンク伝送方向で情報ビットを伝送するように構成されたハイサイド送信機13、マイクロコントローラ5bから(例えばパルス発生器27およびnMOSレベルシフタ28を介して)制御信号を受け取り、この制御信号をHVゲートドライバ11に伝送するように構成されたハイサイドロジック14、ハイサイド領域10における異常なイベント(例えば短絡イベント、過電流イベント、ハイサイド電源(Vb-Vs)過電圧イベント、およびハイサイド電源(Vb-Vs)過小電圧イベント)をセンシングし、それに応答してエラーフラグを生成するように構成された診断ロジックブロック15、ならびに出力バッファ16を含む。出力バッファ16は、HVゲートドライバ11の出力を増幅し、増幅された信号を制御信号として電力トランジスタ3Hに供給する役割を果たすことができる。
【0048】
制御信号を変換(すなわちレベルシフト)し、したがって低い電圧/電力ドメインから高い電圧/電力ドメインへ制御情報を転送するために、nMOSレベルシフタ28が用いられる。2つの電圧ドメイン間で情報ビットを伝送するために、終端ダイオード31が用いられる。レベルシフタは「リアルタイム」送信機である(すなわちPWM周期と比較して僅かな遅延)。他方、終端ダイオードの遅延はそれよりも大きいが、電力をそれよりも僅かにしか消費せず、所要面積も小さい。
【0049】
ローサイド領域20は、電力トランジスタ3Lを駆動するように構成されたLVゲートドライバ21を含む。これに加え、ローサイド領域20は、アップリンク伝送方向でハイサイド領域10に情報ビットを伝送するように構成されたローサイド送信機22、ダウンリンク伝送方向でハイサイド領域10から情報ビットを受信するように構成されたローサイド受信機23、マイクロコントローラ5bから制御信号を受信し、この制御信号をLVゲートドライバ21へ伝送するように構成されたローサイドロジック24、制御信号を電力トランジスタ3Lに出力するように構成された出力バッファ26、パルス発生器27ならびにnMOSレベルシフタ28を含む。
【0050】
マイクロコントローラ5bは、ローサイド領域20と同じ電圧ドメイン(すなわち電力ドメイン)にあることから、ゲートドライバ5aのローサイド領域20に電気的に結合されている。マイクロコントローラ5bは、トランジスタ3Lおよび3Hを制御するための制御信号を生成し、この制御信号をローサイド領域20でゲートドライバ5aに伝送するように構成されている。例えばゲートドライバ5aは、マイクロコントローラ5bから命令を受信し、電圧Vsと接続されたモータフェーズ(すなわちインバータレッグ)を、PWM制御信号を用いて駆動するように構成されている。これらのPWM制御信号は、ローサイド領域20においてゲートドライバ5aによって受信され、適切なロジック(例えばローサイドロジック24、またはパルス発生器27、nMOSレベルシフタ28およびハイサイドロジック14の組み合わせ)を通って、対応するHVゲートドライバ11およびLVゲートドライバ21まで送られる。制御信号がHVゲートドライバ11に到達するように、制御信号はローサイド領域20から終端領域30を介して伝送される。HVゲートドライバ11およびLVゲートドライバ21は、制御信号を受信し、この制御信号を対応する電力トランジスタ3Lおよび3Hへゲートドライバ5aの出力端子を介して出力するように構成されている。
【0051】
マイクロコントローラ5bはさらに、ローサイド領域20を介してハイサイド領域10に情報ビットを伝送し、かつローサイド領域20を介してハイサイド領域10から情報ビットを受信するように構成されている。ゲートドライバ5aのハイサイド領域10への伝送によって、マイクロコントローラ5bは、電流パルス(制御信号)の出力電流および他の同期整流のプログラミングなど、HVゲートドライバ11の1つまたは複数のパラメータをプログラミングすることができ、これによってHVゲートドライバ11がフレキシブルになり、種々の用途の環境に適したものとなる。この場合、PWM電流パルスの出力電流のハイレベルおよびローレベルを、マイクロコントローラ5bから受信された情報に従って構成することができる。
【0052】
マイクロコントローラ5bは、電流パルス(制御信号)の出力電流および他の同期整流のプログラミングなど、LVゲートドライバ21の1つまたは複数のパラメータをプログラミングするようにも構成されている。マイクロコントローラ5bおよびLVゲートドライバ21は、同じ電圧ドメインに配置されているので、コンフィギュレーション情報ビットを、ローサイドロジック24を介してLVゲートドライバ21に送信することができる。
【0053】
これに加えて、ハイサイド領域10における診断ブロック15を、異常なイベントが発生したときにそれをセンシングしてフラグを立てるように構成することができる。例えば診断ブロック15を、短絡イベントを表すインバータレッグ1aにおける過電流を検出し、かかる検出に応答してエラーフラグを生成するように、構成することができる。ローサイド領域20への伝送によって、診断ブロック15は、エラーフラグを含む診断情報をマイクロコントローラ5bに転送することができる。次いでマイクロコントローラ5bは、受信した診断情報を分析し、対抗措置を講じ、安全動作状態を迅速に復旧することができる。例えばマイクロコントローラ5bは、受信した診断情報に基づきHVゲートドライバおよびLVゲートドライバに送信される制御信号を調節することができる。
【0054】
ハイサイド領域10およびローサイド領域20は、終端領域30に配置されたビット転送ダイオード31(すなわち終端ダイオード31)を介して、2つの領域間で情報ビットを転送することができる。ローサイド領域20は、マイクロコントローラ5bも設けられている低電圧ドメインに配置されているのに対し、ハイサイド領域10は高電圧ドメインに配置されている。このためゲートドライバ5aは、2つの異なる電圧ドメインを含む。終端領域30は、高電圧ドメインを低電圧ドメインから分離し、分離終端領域と称してもよい。かくして終端領域30によって高電圧分離バリアが提供され、このバリアにおいて、2つの電圧ドメインを分離する一方で両者間の通信を可能にするために、ビット転送ダイオード31が用いられる。
【0055】
この実施例によれば、ハイサイド領域10とローサイド領域20との間で情報ビットを送信するために、マルチビット通信プロトコルが用いられる。つまり、ダウンリンク方向(ハイサイドからローサイド)に複数の通信ラインが設けられており、各通信ラインは1つの終端ダイオード31を有し、さらにアップリンク方向(ローサイドからハイサイド)に複数の通信ラインが設けられており、各通信ラインは1つの終端ダイオード31を有する。ハイサイド領域10とローサイド領域20との間で情報ビットを伝送するために終端ダイオード31が用いられるので、これを伝送ダイオードと称してもよい。各終端ダイオード31は、LVサイド領域20に(例えばローサイド送信機またはローサイド受信機のいずれかに)結合されたアノードと、HVサイド領域10に(例えばハイサイド送信機またはハイサイド受信機のいずれかに)結合されたカソードと、を有する。一部の終端ダイオード31を、ハイサイド領域10からローサイド領域20に情報ビットを伝送するように構成することができ、他の終端ダイオード31を、ローサイド領域20からハイサイド領域10に情報ビットを伝送するように構成することができる。自明のとおり、伝送されるビットの個数を、各方向で1つまたは複数のビットが伝送されるように、完全にコンフィギュレーション可能である。
【0056】
図3Aおよび図3Bは、1つまたは複数の実施形態によるハイサイド領域とローサイド領域との間の伝送インタフェース回路を示す概略的なブロック図である。詳しくは、図3Aには、ローサイド送信機22からハイサイド受信機12への終端ダイオード31を介したアップリンク伝送が図解されており、図3Bには、ハイサイド送信機13からローサイド受信機23への終端ダイオード31を介したダウンリンク伝送が図解されている。受信機ノードは本明細書では、受信機側の受信経路への入力ノード(すなわち終端ダイオードのカソードに結合されたハイサイド受信機のノード、および終端ダイオードのアノードに結合されたローサイド受信機のノード)として定義される。受信機ノードは、図全体を通してN1およびN2として識別される。
【0057】
リアルタイム伝送が不要であるならば(例えば1つのPWMサイクル中に1回、数ビットの伝送で十分であるならば)、ハイサイド領域10へ、およびハイサイド領域10から、情報ビットを伝送するための可能な解決手段は、分離終端領域30を横断するように設けられた終端ダイオード31を使用することである。終端ダイオード31は、ブートストラップダイオード9と比べると幅が狭い。例えばブートストラップダイオード9は典型的には、ブートストラップキャパシタを迅速に充電する目的で、低い抵抗を有する。したがってブートストラップダイオード9は、できる限り低い抵抗を達成するために、終端領域30とほぼ同じ幅(ミリメータ範囲)である。伝送ダイオード31はそうではなく、ブートストラップダイオード9のために終端領域の大部分を残すために、できる限り狭い面積しか占有しないのが望ましい。したがって終端ダイオード31を、(例えば12μmまたはそれよりも狭い幅を有する)利用できる限り小型の技術を用いて形成することができる。この理由から、終端ダイオード31を最小幅ダイオードと称してもよい。このため終端ダイオード31は、ゲートドライバが実装される技術の最小技術ノードによって規定された最小幅を有することができ、フローティングHVウェルがローのときに(すなわち下方の電力スイッチ3Lがオンのときに)、情報ビットを伝送するように構成されている。1つの実施例によれば、終端ダイオード31は、12μmまたはそれよりも狭い幅の最小幅を有することができる。
【0058】
フローティングHVウェルがローのとき(すなわちローサイド電力スイッチ3Lがオンのとき)、VsはVssに等しく、または実質的に等しく(すなわちVs≒Vss)、VccはVbに等しく、または実質的に等しく(Vcc≒Vb)、伝送インタフェース回路を通して差動伝送が可能である。この状況においてPWMサイクル中、ローサイド電力スイッチ3Lがオンであるときに、電圧ドメインが整合されている、と言うことができる。電圧ドメインが整合されているときには、2つの最小幅終端ダイオード31を順方向バイアスすることができ、接合部を越えてビットを伝播させることができる。アップリンク伝送またはダウンリンク伝送は、電圧ドメインが整合されているときだけしか起こり得ず、ハイサイド電力スイッチがオンのときにはいかなる伝送も妨げられる。なぜならばこのケースでは、終端ダイオード31が逆方向バイアスされるからである。
【0059】
電圧Vsは、マイクロコントローラ5bによって課されるパルス幅変調と同期して変化する。例えば電力トランジスタ3Hがターンオンされ、電力トランジスタ3Lがターンオフされると、VsはDC+と等しくなり、または実質的に等しくなり、これは典型的には200~1200Vの範囲にあるが、これに限られるものではない。通常動作中、VbはVsよりも15Vだけ高い。これに加え、電力トランジスタ3Lがターンオンされ、電力トランジスタ3Hがターンオフされると、VsはDC-(例えばVssまたは0V)と等しくなり、または実質的に等しくなる。かくしてVsは、PWM命令に従ってDC+とDC-との間で交番する。マイクロコントローラ5bによって課されるPWMは、各電力トランジスタ3Hおよび3Lに対しターンオン/オフのサイクルを指示する。その結果、電圧ドメインが整合されているとき(すなわち電力トランジスタ3LがオンでありV≒Vssのとき)、PWMは電圧Vsのデューティサイクルも指示する。インバータレッグ1aのVsノードと接続された誘導負荷は、PWM電圧で駆動される。
【0060】
終端ダイオード31の動作の領域は、2つの電圧すなわち送信機出力レベルとVsのレベルとに依存する。送信機出力レベルは、転送することが意図された入力ビットによって制御される一方、Vsのレベルは、電力スイッチ3Hに作用するハイサイドドライバ11によって制御され、電力スイッチ3H自体は、(パルス発生器27およびnMOSレベルシフタ28を用いることで)VsにPWMを課すマイクロコントローラ5bによって制御される。
【0061】
あとで説明するように、真の伝送を偽の伝送から弁別するためにエラー補正伝送プロトコルが導入され、この場合、偽の伝送は、dV/dt(ダイオードとキャパシタの結合)中および負のVs(-VsまたはNegVs)イベント中、終端ダイオード31にわたって発生する。負のVsイベントが発生するのは、ハイサイド電位Vsがアースを大きく下回ったときである。したがってdV/dtおよびNegVsセンシング回路も含まれている。
【0062】
図4Aは、1つまたは複数の実施形態によるハイサイド受信機回路を示す概略的なブロック図である。図4Bは、図4Aに図解したハイサイド受信機回路に対応する真理値表を示す図である。詳しくは、ハイサイド受信機回路は、図2に示したハイサイド受信機12において実装されており、ローサイド送信機22から終端ダイオード31を介して、入力信号Bitx(すなわち情報ビット)に対応する差動信号ペアを有する差動伝送を受信する。
【0063】
ハイサイド受信機回路は、シュミットトリガ41a、シュミットトリガ41b、プルダウン抵抗Ra-down、プルダウン抵抗Rb-down、イベントセンサ42(すなわちdV/dtイベントおよびNegVsイベントのセンサ)、XORゲート43、3ポートANDゲート44、3ポートANDゲート45、0→1遅延ゲート46、0→1遅延ゲート47、およびセット/リセット(SR)フリップフロップ48を含む。
【0064】
ローサイドにおいて、終端領域30を通して各情報ビットを伝送するために差動シグナリングが用いられる。詳しくは、ローサイド送信機22のローサイド送信機回路は、入力信号の相補ビットBitxおよびBitx!として差動信号ペアを出力するように構成された2つのバッファ22aおよび22bを含む。バッファ22bを、ビットBitxを相補ビットBitx!に反転する反転器とすることができる。別の言い方をすれば、ローサイド送信機回路は、マイクロコントローラ5bから、または(ゲートドライバ5aの内部または外部の)メモリから、入力信号Bitxを受信し、この信号を2つの相補信号に変換するように構成されている。相補信号は、伝送ビットを送信するために使用される差動信号ペアである。両方のバッファ22aおよび22bを、増幅器として用いることもできる。
【0065】
ハイサイド受信機回路12のトポロジーおよびロジックは、真の伝送を偽の伝送から弁別する目的で設計されている。高電圧ドメインと低電圧ドメインとの間で電圧Vsがいきなり切り替わる動作によってゲートドライバは、信頼性のあるビット転送を動作させるには過酷な環境になる。寄生電流および電圧降下に起因して、データが改竄される可能性がある。ハイサイド電圧ドメインがローサイド電圧ドメインに整合されている限りは(すなわち下方の電力スイッチ3Lがオンであるときには)、ならびに伝送に及ぼす擾乱が存在しない限りは、伝送されたビットをSRフリップフロップに書き込むことができる。
【0066】
各PWMサイクル中、VsはPWM周期の一部分についてハイであり、PWM周期の残りの部分についてローに切り替わる。Vs=DC-(例えばVs=Vss)の場合のみ、伝送が起こり得るので、終端ダイオードを介して情報をうまく伝送するためには、Vsがロー(Vs=Vss)である時間は、「0→1遅延」(例えば素子46および47参照)に何らかの他の伝播遅延(例えばダイオードターンオン遅延、寄生抵抗および寄生容量に起因する受信機入力ノードN1、N2における遅延、ならびにシュミットトリガおよびロジックゲートの伝播遅延)を加えた時間よりも長いのが望ましい。素子46および47によってもたらされる「0→1遅延」は、あとで述べる3入力ANDゲートの出力側に現れるかもしれない場合によっては起こり得るスプリアスグリッチを除去するために導入される。伝送と同時にNegVsイベントをフィルタリングして除去し、ローフェーズのごく最初の部分でリンギングできるようにするために、「0→1遅延」時間を、この遅延時間に伝播遅延を加えた時間が上述の要求を満たすように、選定することができる。ただし、PWMサイクルのたびに伝送することと、偽の伝送を拒否することの間には、トレードオフがある。
【0067】
入力信号Bitxは、ハイサイド受信機12の出力バッファに書き込まれるべき情報を表す。ローサイド送信機22は、2つの相補的な(すなわち差動の)ビットBitxおよびBitx!を、差動伝送として伝送する。これら2つのビットは互いに相補的な値でなければならず、真の伝送を偽の伝送から弁別するのを支援するために用いられる。例えば、2つのビットが同一であるならば、受信機回路12は、伝送が偽の伝送であると判定することができ、自身の出力バッファを更新しない。このため、単一の情報ビットを伝送するために2つの終端ダイオード31aおよび31bが用いられ(すなわち各情報ビットのために2つの終端ダイオード31が用いられ)、負のdV/dtイベントおよび/またはNegVsイベントを検出するために、イベントセンサ42によって別の終端ダイオード31sが用いられる。
【0068】
図4Aに示されている受信機回路12は、単一の経路AおよびBを有する差動受信機分枝を用いて、信号伝送ビット(例えばBitx)を伝送するための構成を示す。この装置によれば、3つの情報ビット(例えばBitx、BityおよびBitz)がローサイドにより伝送されるとしたならば、各々が自身のSRフリップフロップを備える付加的な差動受信機分枝が追加されることになる。各差動受信機分枝は、同様の手法でイベントセンサ42の出力を共有することができ、したがってそれに結合可能である。この場合、イベントセンサ信号経路Sを、各差動受信機分枝の各ANDゲートに結合することができる。したがって3つのビット伝送のために、情報ビットを伝送するための3つのペアとイベントセンサ42のための1つとを含む、7つの終端ダイオード31が用いられることになる。
【0069】
上述のように、2つのビットBitxおよびBitx!は、有効な伝送のために互いに相補的な値でなければならない。受信機回路12は、差動ディジタル電圧信号を読み出し、Bithoxとして1つのビットをハイサイド出力バッファに格納する。これに加え、SRフリップフロップ48への書き込みが許可されるとき、イベントセンサ42の出力はハイ(すなわちS=1)である。つまり、負のdV/dtまたはNegVsイベントが存在しなければ、書き込みが許可される。イベントセンサ42の出力をイベント信号Sと称することができ、この信号は、書き込みがイネーブルの期間である書き込み(有効)イベントが存在しているのか否か、または書き込みがディスエーブルの期間である無効イベントが存在しているのか否か、を表す。負のdV/dtイベントおよびNegVsイベントは、無効イベントと呼ばれる。
【0070】
図4Bに示されている真理値表は、受信機回路の様々な段階における変数ごとに1つの列を規定しており、この場合、Bithoxにおける有効ビットは0または1として表されており、無効ビットは「*」として表されている。無効ビットを、電圧ドメインが整合されていないこと(例えばハイサイドスイッチ3Hがオンであるとき)の結果であるか、またはイベントセンサ42により検出されたエラーに起因する結果のいずれか、とすることができる。無効ビットが発生すると、SRフリップフロップ48は書き込まれず、出力バッファは更新またはリフレッシュされない。
【0071】
シュミットトリガにおいて上限値を超えた入力電圧によって、シュミットトリガはその出力を論理値1に変化させるのに対し、下限値を下回る入力電圧によって、シュミットトリガはその出力を論理値0に変化させる。
【0072】
プルダウン抵抗Ra-downおよびRb-downの機能に戻ると、終端ダイオード31aまたは31bがオフのとき、各抵抗は受信機ノードにおける受信機入力をハイサイドにおけるVsに結び付ける。例えば、ハイサイドスイッチ3Hがオンのとき、受信機入力を1200Vに結び付けることができる。
【0073】
電圧ドメインが整合されているとき、ローサイドスイッチ3Lはオンであり、Vsは実質的にVss(すなわち0V)に等しい。この条件のもとで、VbもおおよそVccに等しい。この条件においてのみ、終端ダイオードを意図的に選択的にターンオンさせることができる。すなわちダイオード31aはオン、ダイオード31bはオフ、またはその逆。他のすべての条件において、ダイオードは同時に常にすべてがオンであり、またはすべてがオフである。
【0074】
dV/dtおよびNegVsは両方とも、「コモンモードイベント」である。これらによって偽の差動伝送が生成されるべきではないが、ダイオードおよび受信機は同一ではなく、ミスマッチが存在する可能性がある。このミスマッチゆえに、特定のぎりぎりの環境においてdV/dtおよびNegVsの双方によって、ダイオードの(例えば差動ペアの)一方のみにおいて受信機のターンオンに十分な電流を強制し、誤った伝送が生成される可能性がある。伝送を無効にするために用いられるセンサは、受信機(すなわち抵抗Ra-downおよびシュミットトリガ41a)と類似しているが、起こり得るいかなるミスマッチであっても克服するために、意図的にいっそう高い感度である。
【0075】
電圧ドメインが整合される状態に戻ると、ダイオードがオンのとき、受信機ノードにおける電圧はシュミットトリガの上限値を超えて上昇する。このことが生じるのは、Vs=Vss=0Vであり、ローサイドにおける送信機22が論理値1(Vforward=(Vcc-Vs)>Von=1V)を伝送しているときだけである。換言すれば、終端ダイオードを順方向バイアスできるのは、バッファ22aまたは22bの出力が1のときだけである。バッファ22aまたは22bの出力が0のとき、終端ダイオードは逆方向バイアスされたままであり、ターンオフされている。
【0076】
ローサイドスイッチ3Lがオンのとき、Vccは15Vに等しく、Vsは0Vに等しいので、終端ダイオードは、その入力が論理値1のときに伝送可能である。したがってVsが0Vに等しいならば、入力ビットBitxが1のときに終端ダイオード31aが伝送可能であり、入力ビットBitxが0のとき(すなわちBitx!が1のとき)、終端ダイオード31bが伝送可能である。
【0077】
ローサイドからハイサイドへの伝送中、ローサイドからハイサイドへ終端ダイオード31aまたは31bを介して電流が流れる。この電流は、ローサイドからの電流を、終端ダイオード、プルダウン抵抗を介して、Vsへと低減させる。シンク電流により生じるプルダウン抵抗両端の電圧降下(ΔV)は、受信機ノードにおける電圧がシュミットトリガ上限値よりも大きいまま維持されるようなものである。例えば、受信機ノードにおける電圧を、終端ダイオードがオンのときにシュミットトリガ上限値を超えるように、構成することができる。シュミットトリガの上限値を超えるこの電圧の検出に応じて、シュミットトリガは論理値1を出力することができる。
【0078】
終端ダイオードがオフのとき(すなわちハイサイド電力トランジスタ3Hがオンのとき)、受信機ノードにおける電圧はVs(例えば1200V)に等しく、これは入力ビットBitxにかかわらず、アノードにおける電圧よりも大きい。例えば、アノードにおける電圧は、バッファ22aまたは22bの出力が1のとき、最大で15Vとすることができる。したがって、終端ダイオードを介して強い逆方向バイアスが存在し、これらの環境のもとでは終端ダイオードを通る通信チャネルが完全に阻止される。
【0079】
ビットBitxおよびBitx!は相補的であるので、終端ダイオード31aおよび31bのうちの一方は順方向バイアスされることになるのに対し、他方は逆方向バイアスされることになる。ここで述べておくと、ダイオードの直列抵抗(例えば約10KΩ)によって、プルダウン抵抗(および他の実施形態ではプルアップ抵抗)の最小値が制限される。これによって、終端ダイオードをオンおよびオフに切り替える際の遅延に起因する最小伝送時間に制約が生じる可能性がある。
【0080】
これとは対照的に、電圧ドメインが整合されていないときには、ハイサイドスイッチ3Hはオンであり、Vsはハイのまま維持され、終端ダイオード31aおよび31bの両方は、結果として逆方向バイアスされる。このケースでは、情報ビットの伝送は阻止される。
【0081】
図4Cには、Bitx=1である場合の、図4Aに図解したハイサイド受信機回路の概略的なブロック図が示されている。これとは対照的に図4Dには、Bitx=0である場合の、図4Aに図解したハイサイド受信機回路の概略的なブロック図が示されている。これらの図からわかるようにBitx=1の場合、終端ダイオード31aは順方向バイアスされ(すなわちオンであり)、終端ダイオード31bは逆方向バイアスされる(すなわちオフである)。
【0082】
シュミットトリガ41aおよび41bは、その入力ビットをその出力側に転送するように構成されている。したがってその入力側で受信された論理値ハイ「1」ビットは、論理値ハイ「1」ビットとして出力され、その入力側で受信された論理値ロー「0」ビットは、論理値ロー「0」ビットとして出力される。
【0083】
XORゲート43は、シュミットトリガ41aおよび41bから出力されるビットが相補的になるのを保証するように構成されている。これは、電圧Vsがローであるのを保証するということであり、電圧Vsがローであるということは、電圧ドメインが整合されていること、および偽の伝送を引き起こす可能性のある干渉または他のエラーが存在しないことを表す。例えば電圧Vsがハイであれば、両方のシュミットトリガ41aおよび41bの出力が論理値0であり、このことは電圧ドメインが整合されていないことを表す。SRフリップフロップ48への書き込みがイネーブルになるのは、XORゲート43の出力が論理値1のときだけである。したがって電圧Vsがハイであるときは、SRフリップフロップ48の書き込みがXORゲート43によって阻止される。
【0084】
ANDゲート44および45は各々3つの入力信号、すなわちイベントセンサ42からの信号、XORゲート43からの信号、および対応するシュミットトリガ41aまたは41bからの信号、を受信する。イベントセンサ42の出力は、負のdV/dtイベントまたはNegVsイベントの発生を除いて、ハイである。したがってイベントセンサ42の出力は、SRフリップフロップ48への書き込みが許可されているときにはハイ(すなわちS=1)であり、SRフリップフロップ48への書き込みがディスエーブルのときにはロー(すなわちS=0)である。これに加え、上述のように、SRフリップフロップ48への書き込みがイネーブルになるのは、XORゲート43の出力が論理値1のときだけである。
【0085】
イベントセンサ42およびXORゲート43の出力が両方ともハイであるケースでは、SRフリップフロップ48は、Bitxのビット値に依存してセットまたはリセットされる。Bitx=1であれば、ANDゲート44は論理値1を出力し、ANDゲート45は論理値0を出力する。このケースでは、SRフリップフロップ48のセット入力は、遅延ゲート46による0→1遅延後、ハイ(イネーブル)になる。その結果、SRフリップフロップ48の出力が、論理値1(すなわちBithox=1)にセットまたはリフレッシュされる。このケースでは、SRフリップフロップ48のリセット入力はローになり、出力バッファへの書き込みに作用を及ぼさない。
【0086】
遅延ゲート46によって「0→1遅延」が導入され、これによって、3入力ANDゲート44の出力側に現れるかもしれない場合によっては起こり得るスプリアスグリッチが除去される。例えば、XORゲート43のトポロジーに起因して、XORゲート43の入力が(例えば11から00に)同時に切り替わると、入力遷移中に短時間、XORゲート43が0ではなく1を出力するような正のグリッチが現れるという事態が発生する可能性がある。「0→1遅延」は、XORゲート43の出力のセットリングにかかる時間よりも長い期間にセットされる。このようにして、3入力ANDゲート44の出力における「0→1遅延」よりも短いいかなる変化も無視され、フィルタリングにより除去され、したがってXORゲート43における入力遷移中に発生する可能性のあるスプリアスグリッチをフィルタリング除去するために使用することができる。これらのスプリアスグリッチをフィルタリングしないと、グリッチがSRフリップフロップ48に伝播して、Bithoxに誤ったビットが格納されてしまうおそれがある。
【0087】
これとは逆に、Bitx=0のとき、ANDゲート44は論理値0を出力し、ANDゲート45は論理値1を出力する。このケースでは、SRフリップフロップ48のリセット入力は、遅延ゲート47による0→1遅延後、ハイ(イネーブル)となる。その結果、SRフリップフロップ48の出力が、論理値0(すなわちBithox=0)にセットまたはリフレッシュされる。このケースでは、SRフリップフロップ48のセット入力はローとなり、出力バッファへの書き込みに作用を及ぼさない。
【0088】
遅延ゲート46と同様の手法で、遅延ゲート47によって「0→1遅延」が導入され、これによって、3入力ANDゲート45の出力側に現れるかもしれない場合によっては起こり得るスプリアスグリッチが除去される。例えば、XORゲートのトポロジーに起因して、XORゲート43が(例えば11から00に)同時に切り替わると、入力遷移中に短時間、XORゲート43が0ではなく1を出力するような正のグリッチが現れるという事態が発生する可能性がある。「0→1遅延」は、XORゲート43の出力のセットリングにかかる時間よりも長い期間にセットされる。このようにして、3入力ANDゲート45の出力における「0→1遅延」よりも短いいかなる変化も無視され、フィルタリングにより除去され、したがってXORゲート43における入力遷移中に発生する可能性のあるスプリアスグリッチをフィルタリング除去するために使用することができる。これらのスプリアスグリッチをフィルタリングしないと、グリッチがSRフリップフロップ48に伝播して、Bithoxに誤ったビットが格納されてしまうおそれがある。
【0089】
SRフリップフロップ48のセット入力またはリセット入力のいずれかをイネーブルにするためにANDゲート44および45により出力されるイネーブル信号を、ストローブ信号と称する場合もある。
【0090】
上述の点を考慮して、ハイサイド受信機回路12は以下の特徴を有する。
【0091】
ハイサイド受信機回路12は、差動ディジタル信号(矩形パルス)を読み出し、1つのビットを格納する。
【0092】
接合部の漂遊容量およびハイサイド電圧レベル(I=C*dV/dt)の急峻な変化により発生する著しい寄生電流などの擾乱イベントに起因して、エラーが発生する可能性がある。擾乱イベントは、負のdV/dtイベントおよびNegVsイベントを含む。負のdV/dtイベントの間、Vsが下降していく遷移中に終端ダイオード31のダイオード容量が充電および放電させられることによって、寄生電流が誘導される。SRフリップフロップ48への偽の伝送の書き込みを阻止するために、これらの「コモンモード」擾乱イベントを検出することができる。
【0093】
終端ダイオードの寄生抵抗による分割作用にかかわらず伝送を可能にするために、プルアップ/ダウン負荷およびインバータ閾値を慎重に選定するのが望ましい。
【0094】
大きいdVs/dt電流および負のVsによって受信機側において、スパイク(アノードまたはカソードに接続されたトランジスタのための電圧保護ダイオード)およびグリッチが引き起こされる。差動伝送および対称な経路によって、コモンモード擾乱に起因するエラーの可能性が最小化される。
【0095】
dVs/dtイベントおよびNegVsイベントの検出に特化されたセンサは、差動分枝(プルアップ/プルダウン抵抗、終端ダイオード、温度等)におけるミスマッチによって導入されるオフセットを補償し、このようなミスマッチは、微小擾乱が存在しているときに誤った伝送を生じさせる可能性がある。センサは、dV/dtおよびNegVsが存在しているときに伝送を阻止する。
【0096】
シュミットトリガは、ノイズのある入力が存在しているときにクリーンな出力を送出する。
【0097】
センサノードは本明細書では、受信機側のイベントセンサに対する入力ノードとして定義される。受信機ノードは本明細書では、受信機側の受信経路への入力ノード(すなわち終端ダイオードのカソードに結合されたハイサイド受信機のノード、および終端ダイオードのアノードに結合されたローサイド受信機のノード)として定義される。センシングノードは、より高いインピーダンスを有することから受信機ノードよりも感度が高く、これによって偽の伝送を遮ることができる。偽の伝送が起こると、SRフリップフロップ48の出力状態が同じまま維持され、出力バッファにおける直前の有効なデータが維持される。特に、SRフリップフロップ48のセット入力およびリセット入力が両方とも論理値0にセットされると、SRフリップフロップ48の出力状態が、出力バッファに格納された直前の有効なデータと同じものを維持する。
【0098】
強い差動信号(所望のビット)によって遷移を引き起こすことができる一方、例えばdV/dt電流またはVs発振などのコモンモード信号は、大規模擾乱または微小擾乱のいずれかに対して、偽の伝送を引き起こす可能性がほとんどない。「0→1遅延」のフィルタリング時間よりも僅かにしか持続しないいかなるグリッチも、ストローブ信号における「0→1遅延」によって除去される。したがって、ハイサイド電圧ドメインがローサイド電圧ドメインに整合されており、コモンモード擾乱が伝送に作用を及ぼさない限りは、次のPWMサイクルまで、伝送されたビットBitxをSRフリップフロップ48に格納することができる。この技術によれば、オフ期間が「0→1遅延」よりも長い1つのPWMサイクルにおいて、ビットを安全にリフレッシュまたは変更することができる。さらに電圧Vsがハイであるとき、両方の受信機ノード(すなわちシュミットトリガ41aおよび41bの入力ノード)が両方とも引き下げられるので、XOR43によって書き込みが阻止される。このケースでは、電圧Vsがハイであるとき、電圧ドメインが次に整合されるまで、出力バッファにおける直前の有効なビットが維持される。
【0099】
図5Aには、差動入力信号が1に等しいケースでの、1つまたは複数の実施形態によるローサイド受信機回路の概略的なブロック図が示されている。これとは逆に、図5Bには、差動入力信号が0に等しいケースでの、1つまたは複数の実施形態によるローサイド受信機回路の概略的なブロック図が示されている。詳しくは、ローサイド受信機回路は、図2に示したローサイド受信機23において実装されており、ハイサイド送信機13から終端ダイオード31を介して、入力信号Bitx(すなわち情報ビット)に対応する差動信号ペアを有する差動伝送を受信する。
【0100】
ローサイド受信機回路は、3ステージローサイド受信機コア51a、3ステージローサイド受信機コア51b、プルアップ抵抗Ra-up、プルアップ抵抗Rb-up、イベントセンサ52(すなわちdV/dtイベントおよびNegVsイベントのセンサ)、XORゲート53、3ポートANDゲート54、3ポートANDゲート55、0→1遅延ゲート56、0→1遅延ゲート57、およびSRフリップフロップ58を含む。3ステージローサイド受信機コア51aは、上限値および下限値により構成されたシュミットトリガと同様に振る舞い、閾値レベルと比較して受信機ノードにおける電圧に基づき、論理値ハイまたは論理値ローの出力を生成する。
【0101】
ハイサイドにおいて、終端領域30を通して各情報ビットを伝送するために差動シグナリングが用いられる。詳しくは、ハイサイド送信機13のハイサイド送信機回路は、入力信号(Bitx)の差動バージョンを、Bitx自体およびその相補ビットBitx!として出力するように構成された2つのバッファ13aおよび13bを含む。バッファ13bを、ビットBitxをその相補ビットBitx!に反転する反転器とすることができる。別の言い方をすれば、ハイサイド送信機回路は、入力信号Bitxを診断ブロック15から受信し、この信号を2つの相補ビットに変換するように構成されている。この符号化(差動ビットへの変換)によって、偽の伝送の検出および拒否が可能となる。両方のバッファ22aおよび22bを、増幅器として用いることもできる。
【0102】
図4Aに図解したハイサイド受信機回路と同様に、ローサイド受信機回路23のトポロジーおよびロジックは、真の伝送を偽の伝送から弁別する目的で設計されている。高電圧ドメインと低電圧ドメインとの間で電圧Vsがいきなり切り替わる動作によってゲートドライバは、信頼性のあるビット転送を動作させるには過酷な環境になる。寄生電流および電圧降下に起因して、データが改竄される可能性がある。ハイサイド電圧ドメインがローサイド電圧ドメインに整合されている限りは(すなわち下方の電力スイッチ3Lがオンであるときには)、ならびに伝送に及ぼす擾乱が存在しない限りは、伝送されたビットをSRフリップフロップに書き込むことができる。
【0103】
XORゲート53、3ポートANDゲート54、3ポートANDゲート55、0→1遅延ゲート56、0→1遅延ゲート57、およびSRフリップフロップ58は、図4A図4Dとの関連で説明したこれらの片割れと実質的に同様に動作する。図5Aおよび図5Bのケースでは、SRフリップフロップ58は、書き込みがイネーブルである限り、入力ビットBitxに従って、出力ビットBitloxをローサイド出力バッファに出力する。
【0104】
終端ダイオード31sは、負のdV/dtイベント中、逆方向バイアスされている一方、電流は、ダイオードの寄生容量両端の電圧変動に起因して、いずれにしてもダイオードに流れ込む可能性がある。これに加え、負のdv/dt電流と同じ方向を有する大きい順方向バイアス電流に起因して、NegVsイベントが引き起こされる。したがってイベントセンサ52の出力は、SRフリップフロップ58への書き込みが許可されているときにはハイ(すなわちS=1)であり、SRフリップフロップ58への書き込みがディスエーブルのときにはロー(すなわちS=0)である。これに加え、SRフリップフロップ58への書き込みがイネーブルになるのは、XORゲート53の出力が論理値1のときだけであり、このことは電圧ドメインが整合されていることを表す。
【0105】
3ステージローサイド受信機コアにおいて上限値を超えた入力電圧によって、3ステージローサイド受信機コアはその出力を論理値1に変化させるのに対し、下限値を下回る入力電圧によって、3ステージローサイド受信機コアはその出力を論理値0に変化させる。
【0106】
正のdV/dtイベントの間、終端ダイオード31における寄生電流は、ダイオードがオンのとき伝送方向に対し逆方向に進み、したがって受信機は両方とも0出力を送出する(すなわちXORへの入力は両方とも0である)ので、書き込みはディスエーブルである。
【0107】
プルアップ抵抗Ra-upおよびRb-upの機能に戻ると、終端ダイオード31aまたは31bがオフのとき、各抵抗は受信機ノードにおける受信機入力をローサイドにおけるVddに結び付ける。例えば、Vddを内部的に生成され調整された5.5Vの電圧とすることができ、ハイサイドスイッチ3Hがオンのとき、受信機入力を5.5Vに結び付けることができる。
【0108】
電圧ドメインが整合されているとき、ローサイドスイッチ3Lはオンであり、Vsは実質的にVss(すなわち0V)に等しい。ダイオードがオンのとき、受信機ノードにおける電圧は、3ステージローサイド受信機コアの下限値を下回る。このことが生じるのは、Vs=Vss=0Vであり、ハイサイドにおける送信機13が論理値0(Vforward=(Vdd-Vs)>Von=1V)を伝送しているときだけである。換言すれば、終端ダイオードを順方向バイアスできるのは、バッファ13aまたは13bの出力が0のときだけである。したがってVsが0Vに等しいならば、入力ビットBitxが0のときに終端ダイオード31aが伝送可能であり、入力ビットBitxが1のとき(すなわちBitx!が0のとき)、終端ダイオード31bが伝送可能である。バッファ13aまたは13bの出力が1のとき、終端ダイオードは逆方向バイアスされたままであり、ターンオフされている。
【0109】
ハイサイドからローサイドへの伝送中、ローサイドからハイサイドへ終端ダイオード31aまたは31bを介して電流が流れる。この電流は、ローサイドからの電流を、Vddからプルアップ抵抗および終端ダイオードを介して、ハイサイドに向かって低減させる。シンク電流により生じるプルアップ抵抗両端の電圧降下(ΔV)に起因して、受信機ノードにおける電圧は、0Vよりも高い電圧レベルにあるが、3ステージローサイド受信機コアの下限値よりも低い。例えば下限値電圧を3Vとすることができ、これをハーフスケール電圧とすることができる。終端ダイオードがオフであれば、受信機ノードにおける電圧はVddに等しい。
【0110】
ハイサイド増幅器/バッファ13aおよび13bへの電源電圧は、VbおよびVsである。したがって、増幅器/バッファからの論理値ハイの出力(すなわち論理値1)はVbに等しく(すなわちVs+Vcc)、他方、増幅器/バッファからの論理値ローの出力(すなわち論理値0)はVsに等しい。
【0111】
電圧ドメインが整合されていないとき、Vsは最大ハイサイド電圧(例えば1200V)に等しく、論理値1が出力されているとき、ハイサイド増幅器/バッファの出力はVb(例えば1215V、ただしVcc=15V)に等しく、または論理値0が出力されているときはVs(例えば1200V)に等しい。いずれのケースであっても、VccまたはVddなどの局所的な電源は、例えば5.5Vに等しいにすぎず、かつ終端ダイオードがオフであることから、終端ダイオードを介して強い逆方向バイアスが存在する。これらの環境のもとでは、終端ダイオードを通る通信チャネルが完全に遮られる。これに加え、ダイオードがオフのときには、受信機ノードがプルアップ抵抗によってVdd(例えば5.5V)に結び付けられるので、受信機ノードにおける電圧は、3ステージローサイド受信機コアにより論理値ハイレベルで認識される。3ステージローサイド受信機コア自体は、論理値ハイを出力する。
【0112】
他方、電圧ドメインが整合されているならば、VsはVss(すなわち0V)に等しい。このケースでは、VbはVs+15V(すなわち0V+15V)に等しいので、ハイサイド増幅器/バッファの出力は、論理値1を出力しているときはVb(例えば15V)に等しく、論理値0を出力しているときはVs(例えば0V)に等しい。バッファ13aまたは13bが論理値0(すなわちVsが0Vに等しいならば0V)を出力しているケースでは、受信機ノード(すなわち終端ダイオードのアノード)に存在しているいっそう高い電圧(すなわちVdd-ΔV)に起因して、対応する終端ダイオード31aおよび31bが順方向バイアスされる。終端ダイオードがターンオンすると、受信機ノードにおける電圧が3ステージローサイド受信機コアの下限値を下回るようになり、3ステージローサイド受信機コアは論理値0を出力する。
【0113】
図6Aには、1つまたは複数の実施形態によるハイサイドイベントセンサの概略的な回路図が示されている。詳しくは、このハイサイドイベントセンサは、図4Aに示されたイベントセンサ42の一例であり、これは終端ダイオード31sのカソードに結合された入力側と、ANDゲート44および45に結合された出力側と、を有する。イベントセンサ42は、真の伝送を偽の伝送と弁別するために用いられる信号Sを生成するように構成されており、ここでS=1は、SRフリップフロップへの書き込みがイネーブルである、ということを表し、S=0は、書き込みが許可されていない、またはディスエーブルである、ということを表す。
【0114】
図6Bには、1つまたは複数の実施形態によるローサイドイベントセンサの概略的な回路図が示されている。詳しくは、このハイサイドイベントセンサは、図5Aに示されたイベントセンサ52の一例であり、これは終端ダイオード31sのアノードに結合された入力側と、ANDゲート54および56に結合された出力側と、を有する。イベントセンサ52は、真の伝送を偽の伝送と弁別するために用いられるイベント信号Sを生成するように構成されており、ここでS=1は、SRフリップフロップへの書き込みがイネーブルである、ということを表し、S=0は、書き込みが許可されていない、またはディスエーブルである、ということを表す。
【0115】
図6Cには、1つまたは複数の実施形態による、差動電圧イベントまたは差動電圧フェーズが発生している期間の時間にわたり(すなわち1つのPWMサイクルにわたり)電圧Vsをプロットしたグラフが示されている。詳しくは、このグラフには、以下のイベントの発生が描かれている。すなわち、イベントセンサ42および52により書き込みがディスエーブルにされている期間である負のdV/dtイベント、イベントセンサ42および52により書き込みがディスエーブルにされている期間であるNegVsイベント、電圧ドメインが整合されており、ハイサイドおよびローサイドの受信機回路により書き込みがイネーブルにされている期間であるローVsイベント、XORゲート43、53の入力が等しいため、これらのXORゲートにより書き込みがディスエーブルにされている期間である正のdV/dtイベント、さらに電圧ドメインが整合されておらず、XORゲート43、53の入力が等しいため、これらのXORゲートにより書き込みがディスエーブルにされている期間であるハイVsイベント。結果として、ローサイドおよびハイサイドの受信機回路により書き込みがイネーブルにされている期間の間だけが、ローVsイベント中である。
【0116】
図6Aに戻ると、終端ダイオード31sは、負のdV/dtイベント中、逆方向バイアスされている一方、電流は、ダイオードの寄生容量両端の電圧変動に起因して、いずれにしてもダイオードに流れ込む可能性がある。これに加え、負のdv/dt電流と同じ方向を有する大きい順方向バイアス電流に起因して、NegVsイベントが引き起こされる。イベントセンサ42は、この電流の流れを検出し、それに応答して自身の出力を論理値0に変化させるように構成されている。
【0117】
Vsが下降していくフェーズ(すなわち負のdV/dtイベント)およびNegVsイベントによって、イベントセンサ42のツェナダイオードとダイオードとから成る装置61がターンオンさせられ、これによってイベントセンサの反転器62の出力が、論理値1から論理値0に切り替えられる。単一のダイオード63によって、反転器62が正のdV/dt電流から保護される。感度範囲を拡げ、ローフェーズにおけるVs発振を予備フィルタリングする目的で、反転器62は、出力の強いプルダウン(すなわち広幅の/短いnmos)および弱いプルアップ(小幅の/長いpmos)を有するように設計されたCMOS反転器である。このようにすれば反転器62は、伝送を阻止するために自身の出力Sを強制的にローにするのが迅速になり、伝送を許可するためにSをハイに引っ張るのが緩慢になる。例えば反転器62を、そのゼロ閾値が受信ノードにおけるシュミットトリガのゼロ閾値よりも低くなるように設計することができる。その結果として、感度および予備フィルタリングが向上する。抵抗64は、センシングノード(すなわち反転器62への入力)を引き下げ、これによって定常状態の条件(すなわちVsがハイであるのかまたはローであるのか)が確認される。
【0118】
正のdV/dt、すなわちVsが上昇するフェーズは、イベントセンサ42によるイベント検出のためには重要ではない。それというのも、偽の伝送は受信機回路のトポロジーにより実質的に回避され、ゲートドライバは先行するフェーズにおいて(すなわちローVsフェーズにおいて)、所望の電流能力にすでにセットされているからである。この場合、プルダウン抵抗Ra-downおよびRb-downを介してコモンモード電流が強制的に流され、これらの抵抗によってハイサイド受信機12における両方の受信機ノードがVsを下回るように引き下げられる。かかる信号は、シュミットトリガによりXORよりも手前で拒否される。それというのも両方のノードN1およびN2が、シュミットトリガ閾値とはかけ離れて、局所的なアースを下回るように移行させられ、SRフリップフロップ48の上書きが不可能になるからである。換言すれば、両方のシュミットトリガは、それらの入力がシュミットトリガの正の閾値から隔たるように移行するので、0を出力する。この場合に当然ながら、XORの出力は0となり、フリップフロップの上書きが不可能にされる。
【0119】
図6Bを参照すると、負のdV/dt中、ダイオード31sは逆方向バイアスされるが、終端ダイオードの寄生容量の放電に起因して電流がダイオード31s中を流れる可能性があり、これによって、負のdV/dt電流が寄生容量の放電に由来すること、およびNegVs電流が順方向バイアスされたダイオードに由来することを除き、負のVsのケースのようにイベントセンサがトリガされる。正のdV/dtに応答して、ダイオード31sは反転器66の入力ノードを(保護ダイオード67によりクランプされて)Vccよりも高く引き上げ、イベントセンサの出力側では何も起こらない。したがってdV/dt電流でない限り、または典型的にはNegVsイベントに関連づけられた大きい直流バイアス電流ピークでない限り、終端ダイオードを介して電流は流れない。
【0120】
Vsが下降していくフェーズ(すなわち負のdV/dtイベント)およびNegVsイベントによって、イベントセンサ52のツェナとダイオードとから成る装置65がターンオンさせられ、これによってイベントセンサ52の反転器66の出力が、論理値0から論理値1に切り替えられる。イベント信号Sをエラーフラグ(S=0)に変換して、受信機回路23のロジックの残り(例えばANDゲート54および55)がエラーフラグを適切に認識して処理できるようにする目的で、反転器66の出力を反転させるために別の反転器69が用いられる。単一のダイオード67によって、反転器66が正のdV/dt電流から保護される。感度範囲を拡げ、ローフェーズにおいてVs発振を予備フィルタリングする目的で、反転器66は、出力の強いプルアップ(すなわち広幅の/短いpmos)および弱いプルダウン(小幅の/長いnmos)を有するように設計されたCMOS反転器である。このようにすれば、反転器66は、伝送を阻止するために自身の出力Sを強制的にローにするのが迅速になり、伝送を許可するためにSをハイに引っ張るのが緩慢になる。例えば反転器66を、そのゼロ閾値が受信ノードにおけるシュミットトリガのゼロ閾値よりも低くなるように設計することができる。その結果として、感度および予備フィルタリングが向上する。抵抗68は、センシングノード(すなわち反転器66への入力)を引き上げ、これによって定常状態の条件(すなわちVsがハイであるのかまたはローであるのか)が確認される。
【0121】
正のdV/dt、すなわちVsが上昇するフェーズは、イベントセンサ52によるイベント検出のためには重要ではない。それというのも、偽の伝送は受信機回路のトポロジーにより実質的に回避され、ゲートドライバは先行するフェーズにおいて(すなわちローVsフェーズにおいて)、所望の電流能力にすでにセットされているからである。この場合、プルアップ抵抗Ra-upおよびRb-upを介してコモンモード電流が強制的に流され、ローサイド受信機23における両方の受信機ノードが、Vccよりも高く引き上げられる(すなわち保護ダイオード67によりVccよりも1つのダイオードの降下だけ高くクランプされる)。かかる信号はXORゲートにより拒否される。それというのもXORゲートの入力は同じであり、その結果としてSRフリップフロップ58の上書きが不可能になるからである。
【0122】
例えば、正のdV/dtイベントの発生中、ローサイド受信機23の両方の受信機ノードが、Vccよりも高く引き上げられるが、3ステージ受信機コアが感応するのは、入力ノードN1およびN2が、Vccと比較して引き下げられたときだけである。したがってXORゲート53の出力は論理値0であり、これによって両方のANDゲート54および55の出力が論理値0にさせられ、SRフリップフロップ58の書き込みまたはリフレッシュが阻止される。
【0123】
dVs/dtの値のほんの僅かなインターバルにわたり、ミスマッチに起因する偽の伝送が発生する可能性がある。電流に対しいっそう感度が高いことから、イベントセンサ42および52は、偽の伝送であるとしていかなる伝送も阻止するように構成されている。
【0124】
上述の点を考慮して、電圧ドメインが整合されているときに(Vs≒VssかつVb≒Vcc)、ハイサイド領域10とローサイド領域20との間において双方向でビットを伝送するために、全体として小さい複数のHV終端絶縁ダイオードを使用することができ、この場合、各ダイオードは、特定のアップリンク方向またはダウンリンク方向における伝送を担う。これによって、既存のビット転送の解決手段に比べて、僅かな遅延はあるけれども、シリコン領域および電力損失量が低減される。かかる装置構成は、電力モジュール内部のゲートドライバの内部回路に実装されるという、利点も有する。
【0125】
高電圧ゲートドライバは典型的には、外部の電力スイッチを駆動するために使用される1つの単一出力電流レベルを有するように設計されている。適正な出力電流レベルの選定は簡単ではなく、ゲートドライバ設計開発において何度も繰り返さざるを得ない。単一のゲートドライバ設計において動的に、電流パルス(制御信号)の電流レベルの変更およびリコンフィギュレーションが可能であれば、1つのシステムがすべてのアプローチに適合するようになり、これによっていっそうフレキシビリティになり、かつ市販に至るまでの時間が改善されるようになる。
【0126】
例えばゲート電流が小さすぎると、遅延および電力スイッチへの電力損失が大きくなり、これらは両方とも不都合な結果をもたらす。他方、電流が多すぎると電力スイッチが速くなって電磁干渉が引き起こされ、これによって近くの電子回路が妨害され、特定の標準への準拠が妨げられるおそれがある。したがって本明細書で説明するコンセプトを用い、マイクロコントローラ5bにより決定されるように、ハイサイドドライバ自体の出力電流をコンフィギュレーションするために、マルチビットコンフィギュレーションメッセージ(例えば3ビットメッセージ)をローサイドからハイサイドへ送信することができる。
【0127】
これは並列伝送のケースであるので、マルチビットコンフィギュレーションメッセージを構成するビットすべてが同時に伝送される。これらのビットのうちの各々1つは、その差動バージョンに変換された後(入力ビットBitxはBitx自体とその相補ビットBitx!とから成るビットペアに変換される)、特化された終端ダイオードペアおよび特化された差動受信機に供給される。差動受信機各々の終端におけるSRフリップフロップ48(図4A)は、Bitxに等しい単一のビットバーションを格納する。
【0128】
これに加え、ローサイドドライバの出力電流をコンフィギュレーションするためにも同じビットが用いられるが、このことは簡単である。それというのもマイクロコントローラ5bはローサイドとダイレクトに結合されており、HV通信が不要だからである。
【0129】
同じゲートドライバIC5aにおいて、脱飽和診断および他の異常なイベントの検出のために、ハイサイドからローサイドへの逆方向の通信を使用することもできる。脱飽和は、低オームの短絡が発生して電流が(一例として)最大負荷電流の10倍に達したときなどのような、電力スイッチにおける著しく高い強度の過電流である。脱飽和イベントがハイサイドで発生したならば、単一の警告ビットをハイサイドからローサイドに、さらに最終的にはマイクロコントローラ5bに、伝送することができる。
【0130】
これまで種々の実施形態について説明してきたが、当業者に自明のとおり、本開示の範囲内でさらに多くの実施形態および実装形態が可能である。例えば、2つの電圧ドメインを有するモノリシックゲートドライバICのコンテキストで実施形態が説明されているけれども、ドメイン間の情報通信が役に立つ、終端領域によって分離された2つの電圧ドメイン(HVおよびLV)を有する他のモノリシック集積回路に、このコンセプトを適用することもできる。したがって本発明は、添付の請求項およびそれらの等価物を踏まえた場合を除き、限定されるべきではない。上述の構成部品または構造(アセンブリ、デバイス、回路、システム等)によって実行される様々な機能に関して、かかる構成部品を説明するために使われる用語(「手段」についての言及を含む)は、本明細書において図解した本発明の例示的な実装形態における機能を実行する開示された構造に構造的にたとえ等価でなくても、別段の記載がない限りは、既述の構成部品の特定の機能(すなわち機能的に等価である機能)を実行する任意の構成部品または構造に対応することが意図されている。
【0131】
さらに、以下の請求項はこれによって詳細な説明に組み込まれ、ここで各請求項は1つの別個の例示的な実施形態として自立し得るものである。各請求項が1つの別個の例示的な実施形態として自立し得るのに対し、ある従属請求項が請求項において1つまたは複数の他の請求項との特定の組み合わせを指す可能性があるにもかかわらず、他の例示的な実施形態は、その従属請求項とさらに別の各従属請求項または独立請求項の保護対象との組み合わせを含むこともできる、ということを言及しておく。かかる組み合わせは、ある特定の組み合わせを意図していないことが明記されていない限り、本明細書において提案されるものである。さらに、ある請求項が直接的に他の任意の独立請求項にたとえ従属させられていなくても、その独立請求項に対するその請求項の特徴も含まれることが意図されている。
【0132】
本明細書または請求項において開示された方法を、それらの方法の個々の動作各々を実行するための手段を有するデバイスによって実装できる、ということをさらに言及しておく。
【0133】
さらに理解されたいのは、本明細書または請求項に開示されている複数の動作または機能の開示を、特定の順序でなければならないと解釈してはならない、ということである。よって、複数の動作または機能の開示は、かかる動作または機能を技術的な理由から取り替えることができない場合を除き、それらを特定の順序に限定するものではない。さらに一部の実施形態によれば、単一の動作は複数の下位の動作を含むことができ、または単一の動作を複数の下位の動作に分割することができる。明示的に排除されていない限り、かかる下位の動作を包含し得るものであり、上述の単一の動作の開示の一部とすることができる。
【0134】
特定の実装形態の要求に応じて、本明細書において提供される実施形態をハードウェアまたはソフトウェアで実装することができる。この実装形態を、ディジタル記憶媒体、例えばフロッピディスク、DVD、ブルーレイ、CD、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリ、を用いて実施することができ、このディジタル記憶媒体には、個々の方法が実施されるようにプログラミング可能なコンピュータシステムと協働する(または協働可能である)、電子的に可読の制御信号が格納されている。したがって、ディジタル記憶媒体をコンピュータ可読とすることができる。
【0135】
命令を、1つまたは複数のプロセッサによって実行することができ、例えば1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他の等価の集積論理回路またはディスクリート論理回路によって実行することができる。したがって、本明細書において使用される用語「プロセッサ」は、前述の構造のうち任意の構造、または本明細書において説明した技術の実装に適した他の任意の構造のことを指す。これに加え、一部の態様によれば、本明細書で説明した機能を、専用のハードウェアモジュールおよび/またはソフトウェアモジュール内に設けることができる。また、この技術を、1つまたは複数の回路または論理素子において完全に実装することができる。
【0136】
したがって、本開示において説明した技術を、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせとして実装することができる。例えば、説明した技術の様々な態様を、1つまたは複数のプロセッサにおいて実装することができ、このプロセッサは、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、または他の任意の等価の集積回路もしくはディスクリート論理回路、ならびにかかるコンポーネントの任意の組み合わせを含む。
【0137】
ハードウェアを含む制御ユニットが、本開示において説明した技術のうちの1つまたは複数を実行することもできる。かかるハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアを、本開示において説明した様々な技術をサポートするために、同一のデバイス内または別個のデバイス内に実装することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体が、そこに格納されたプログラムコードまたはプログラムアルゴリズムを含み、これが実行されると、コンピュータプログラムは方法のステップを実施するように、この非一時的コンピュータ可読媒体にソフトウェアを格納することができる。
【0138】
これまで様々な例示的な実施形態を開示してきたが、当業者に自明のとおり、本発明の着想および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示したコンセプトの利点の一部を達成する様々な変更および修正を行うことができる。当業者に自明のとおり、同じ機能を実行する他の構成部品に適切に置き換えてもよい。ここで理解されたいのは、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を用いてもよく、構造的または論理的な変更を行うことができる、ということである。たとえ明示的に言及されていないとしても、1つの特定の図面を参照して説明した特徴を、他の図面の特徴と組み合わせることができる、という点に留意されたい。全般的な発明のコンセプトに対するかかる修正は、添付の請求項およびそれらの法的な等価物によってカバーされることが意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C